(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333248
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】流電陽極および腐食防止方法
(51)【国際特許分類】
C23F 13/16 20060101AFI20180521BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20180521BHJP
C23F 13/18 20060101ALI20180521BHJP
C23F 13/20 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
C23F13/16
C23F13/02 L
C23F13/18
C23F13/20 A
【請求項の数】27
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-524710(P2015-524710)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公表番号】特表2015-527493(P2015-527493A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】EP2013065179
(87)【国際公開番号】WO2014019863
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】61/677,164
(32)【優先日】2012年7月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック アール. グッドウィン
【審査官】
萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−097049(JP,A)
【文献】
特表2002−536544(JP,A)
【文献】
実公昭41−014683(JP,Y1)
【文献】
国際公開第02/016670(WO,A2)
【文献】
特表平08−511581(JP,A)
【文献】
特表2002−528647(JP,A)
【文献】
実公昭36−013727(JP,Y1)
【文献】
特開平06−340986(JP,A)
【文献】
特開2002−220685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00−13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
犠牲アノード基体において、
該犠牲アノード基体は、
第1犠牲金属と、
当該第1犠牲金属よりも電気化学的に陰ではない第2犠牲金属と、
前記第1犠牲金属および前記第2犠牲金属を包囲するケーシング材料と、
前記アノード基体の前記ケーシング材料に接触接続するように配置されて、圧縮性かつ接着性を有し、前記アノード基体の前記第1犠牲金属および/または前記第2犠牲金属からの腐食生成物の吸収が可能である、電気的またはイオン絶縁性の接着スペーサと、
を有しており、
前記第1犠牲金属および前記第2犠牲金属は、鋼よりも電気化学的に陰である、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項2】
請求項1に記載の犠牲アノード基体において、
さらに、前記アノード基体に電気的に接続されておりかつ前記ケーシング材料から突出している、少なくとも1つの延長された電気導体を有する、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項3】
請求項1に記載の犠牲アノード基体において、
前記アノード基体は、前記第2犠牲金属からなる2つの層の間に挟まれた前記第1犠牲金属の層を有する、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項4】
請求項1に記載の犠牲アノード基体において、
前記第1犠牲金属は、マグネシウムまたはマグネシウム合金を有する、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項5】
請求項1に記載の犠牲アノード基体において、
前記第2犠牲金属には、亜鉛または亜鉛合金を有する、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項6】
請求項1に記載の犠牲アノード基体において、
前記第1犠牲金属は、マグネシウムまたはマグネシウム合金を有しており、
前記第2犠牲金属は、亜鉛または亜鉛合金を有する、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項7】
請求項2に記載の犠牲アノード基体において、
前記第1犠牲金属は、円筒形に巻かれた有孔の平坦な金属を有しており、
前記第2犠牲金属は、円筒形に巻かれた有孔の平坦な金属を有しており、かつ、前記第1犠牲金属の周りに形成されており、
前記第1犠牲金属はマグネシウムまたはマグネシウム合金を有しており、かつ、前記第2犠牲金属は亜鉛または亜鉛合金を有する、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項8】
犠牲アノード基体において、
該犠牲アノード基体は、
鋼よりも電気化学的に陰である第1犠牲金属と、
当該第1犠牲金属よりも電気化学的に陰でない第2犠牲金属と、
前記第1犠牲金属および/または前記第2犠牲金属を包囲するケーシング材料と、
前記アノード基体の前記ケーシング材料に接触接続するように配置されて、圧縮性かつ接着性を有し、前記アノード基体の前記第1犠牲金属および/または前記第2犠牲金属からの腐食生成物の吸収が可能である、電気的またはイオン絶縁性の接着スペーサと、
を有しており、
前記アノード基体は円筒形の形状を有しており、当該円筒形は、前記アノード基体の一方の側面の長さに延在するC字形の凹部を備えた、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項9】
請求項8に記載の犠牲アノード基体において、
前記アノード基体は、前記第1犠牲金属の1つの層と、前記第2犠牲金属の1つの層とを有する、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項10】
請求項8に記載の犠牲アノード基体において、
前記第1犠牲金属は、マグネシウムまたはマグネシウム合金を有しており、
前記第2犠牲金属は、亜鉛または亜鉛合金を有している、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項11】
請求項8に記載の犠牲アノード基体において、
前記第1犠牲金属は、前記第2犠牲金属によって少なくとも部分的に覆われている、
ことを特徴とする犠牲アノード基体。
【請求項12】
コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
該アセンブリは、
第1および第2犠牲金属を有するアノード基体と、
当該アノード基体と鉄筋用鋼部材とを電気的に接続するための少なくとも1つの電気導体と、
前記アノード基体の前記ケーシング材料に接触接続するように配置されて、圧縮性かつ接着性を有し、前記アノード基体の前記第1犠牲金属および/または前記第2犠牲金属からの腐食生成物の吸収が可能である、電気的またはイオン絶縁性の接着スペーサと、
を有しており、
前記第1犠牲金属は、鋼よりも電気化学的に陰であり、
前記第2犠牲金属は、前記第1犠牲金属よりも電気化学的に陰ではなく、
前記第1犠牲金属および/または前記第2犠牲金属は、ケーシング材料によって少なくとも部分的に覆われている、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項13】
請求項12に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
前記第1犠牲金属は、マグネシウムまたはその合金を有しており、
前記第2犠牲金属は、亜鉛またはその合金を有する、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項14】
請求項12に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
前記第1および第2犠牲金属はそれぞれ、少なくとも1つの有孔のストリップを有する、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項15】
請求項12に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
前記第1犠牲金属は中実体を有しており、
前記第2犠牲金属は少なくとも1つの有孔のストリップを有する、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項16】
請求項12に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
前記ケーシング材料は多孔性のモルタルである、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項17】
請求項12に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
前記絶縁性の接着スペーサは、前記アノード基体の前記鉄筋の間に配置され、かつ、前記アノード基体の前記鉄筋に接触接続する、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項18】
請求項12に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
前記絶縁性のスペーサは、圧力感知式接着剤を有する、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項19】
請求項12に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
前記アノード基体および前記鉄筋に電気的に接続される少なくとも1つの延長された電気導体を含む、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項20】
請求項19に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するためのアセンブリにおいて、
延長された金属導体は、前記アノードアセンブリに電気的に接続されており、かつ、前記ケーシング材料の対向する2つの面から突出している、
ことを特徴とするアセンブリ。
【請求項21】
コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法において、
該方法には、
犠牲アノードアセンブリを、鉄筋コンクリート構造体内の鉄筋に電気的に接続するステップが含まれており、前記アノードアセンブリは、異なる材料の少なくとも2つの犠牲金属からなるアノード基体と、前記アノード基体の前記ケーシング材料に接触接続するように配置されて、圧縮性かつ接着性を有し、前記アノード基体の前記犠牲金属からの腐食生成物の吸収が可能である、電気的またはイオン絶縁性の接着スペーサと、を有しており、
前記少なくとも2つの犠牲金属はそれぞれ、鋼よりも電気化学的に陰であり、前記アノード基体は、ケーシング材料に少なくとも部分的に覆われており、
前記方法にはさらに、
少なくとも1つの電気導体により、前記アノード基体を鉄筋用鋼部材に電気的に接続するステップが含まれている、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法において、
さらに、前記コンクリート構造体に形成された孔に前記アノードアセンブリを挿入するステップが含まれている、
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法において、
さらに、
前記鉄筋に接触接続して前記犠牲アノード基体を配置するステップを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法において、
前記アノードは、有孔の少なくとも2つのストリップの形態をした犠牲金属である、
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項21に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法において、
前記少なくとも2つの犠牲金属は、電気化学的に活性な金属または金属合金を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項21に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法において、
前記電気化学的に活性な金属は、リチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛またはクロムおよびこれらの組み合わせまたは合金を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項21に記載の、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法において、
さらに、
前記コンクリート構造体の前記鉄筋から離れる塩素イオンの移動を生じさせるのに有効な量で、異なる材料の少なくとも2つの犠牲金属からなる犠牲アノードを準備するステップを有しており、
前記異なる材料の1つはマグネシウムである、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
腐食は、高速道路、橋および建造物から、オイルおよびガス、化学処理ならびに水および廃水処理システムに至る世の中のインフラストラクチャのほとんどすべての側面に対して極めて大きな経済的および環境的な影響を及ぼす。腐食を防ぐためのならびに補修および交換のための腐食の世界規模の直接費用の最近の推定は、1.8兆米ドルまたは工業先進諸国の国内総生産GDP(gross domestic product)の3から4パーセントを上回っているのである。
【0002】
2001年の米国連邦道路管理局の資金援助による腐食の費用に関する研究、"Corrosion Cost and Preventive Strategies in the United State"は、腐食の年間の直接費用は、驚異的な2760億米ドルにもなるとした。この研究には、輸送インフラストラクチャ、電力産業、車両および倉庫保管を含めた数多くの経済セクタがカバーされている。
【0003】
総費用が直接費用と間接費用とを加えて6000億米ドルまたはGDPの6%を上回るとした場合に、腐食の間接費用は内輪に見ても上記の直接費用に等しいと推定されている。上記の研究では詳細に記録が残されている費用だけが使用されていたため、上記の費用は内輪の見積もりであると考えられる。重大な損害の原因となることおよび公衆安全に対する脅威に加え、腐食はさまざまな活動を混乱させ、また損なわれた資産の大規模な修繕および取り替えが必要である。
【0004】
米国における道路および橋のインフラストラクチャは崩壊し続けており、数千の橋が危険であり、取り替えまたは大きな修繕が必要であると評価されている。これらのケースの多くにおいて、腐食は重大な影響を及ぼして安全性を蝕んでいる。腐食防止対策は、別の問題の発生を助長し得る。アメリカのインフラストラクチャの老化を扱うためにさまざま方策が講じられている。例えば、2009年3月に採用された下院法案H.R.1682、"Bridge Life Extension Act 2009"は、フェデラルファンドが新たな橋を建造するかまたは既存の橋の機能回復しようとする場合に腐食によって生じる損害を回避または軽減するための計画を提出するように州に求めることにもなるのである。
【0005】
多くの鉄筋コンクリート建造物は早発性の劣化に見舞われている。コンクリートに埋め込まれる鉄筋は初期段階では、その表面に安定した酸化膜を形成することによって腐食から保護されている。この薄膜は、すなわち不動態化層は、高アルカリ性コンクリート間隙水と鋼との間の化学反応によって形成される。このアルカリ性条件によって得られる不動態化は、塩素が存在することによって崩壊され得る。塩素イオンは局所的に上記の金属を非不動態化して活発な金属溶解を促進させる。この鋼の腐食は一般的に、腐食がはじまる閾値に塩素イオンが達するまでは無視することができる。この閾値濃度は、例えば、鋼のミクロ環境、間隙溶液pH、間隙溶液における他のイオンからの干渉、鉄筋用鋼の電位、酸素濃度およびイオン移動度などの多くの要因に依存する。塩化物は、これが腐食反応においては消費されないが、活性状態にとどまって再度腐食反応に加わることによって触媒として作用するのである。
【0006】
鉄筋コンクリート建造物への損傷は主に、コンクリートを通って鉄筋の周囲領域に塩素イオンが浸透することによって発生する。塩化物含有硬化促進剤のようなコンクリート配合物への添加物を含め、多くの塩素供給源が存在する。塩化物はまた、海洋条件または凍結防止塩のような建造物の周囲環境にも含まれ得る。塩化物が存在することは、コンクリートそれ自体に直接的な不利な作用を及ぼすことはないが、鉄筋の腐食を実際に促進させる。鉄筋に形成される腐食生成物は、この鉄筋よりも大きな空間を占め、これによって内部からコンクリートに圧力を及ぼす。この内圧は、時間と共にまた最終的にはコンクリートの割れおよび剥離を生じさせる。鉄筋の腐食はまた、この鉄筋の強度を低下させて、コンクリート建造物の荷重容量を低下させてしまうのである。
【0007】
塩素イオン濃度とは別の他の要因も鋼の腐食速度に影響を及ぼし、これにはpH,酸素利用性、鋼の電位、周囲のコンクリートの固有抵抗が含まれている。これらの要因は互いに作用を及ぼし合って、1つの要因を制限することは必ずしも腐食を停止させず、また1つの要因の閾値レベルに接近する複数のレベルは、互いに相乗効果を及ぼして腐食を許してしまうのである。例えば、塩化物レベルが高い場合であっても不十分な酸素しか利用できない場合には、腐食は発生しないことになる。pHが低下すると、腐食に対する塩化物閾値が低下する。極めて固有抵抗の高いコンクリートでは、炭酸塩化および塩化物浸透が遅くなるだけではなくイオン流が一層困難になることによって腐食反応は低減される。別の任意の反応と同様に腐食作用には温度も関係している。
【0008】
コンクリートにおける鉄筋のカソード式防食は、殊にコンクリート内に塩素イオンが極めて大きな濃度で存在する場合に、金属に対する防食を行うために使用される手法である。カソード式防食には、カソードとして作用する鉄筋と1つの回路を形成することが必要であり、このカソードはアノードと電気的に接続される。十分に大きな電位差が存在する場合、このカソードの腐食は低減されるかまた阻止される。
【0009】
外部電源カソード式防食およびガルバニ電池の両方を用いてアノードとカソードとの間に電位差を形成することは公知である。外部電源カソード式防食には、アノードを使用することと、外部DC電源またはAD電源および整流器を使用して電流を加えることとが必要である。この電源は、継続的な電力消費、モニタリングおよび所要のメンテナンスに伴うコストおよび信頼性の点から大きな課題になっている。
【0010】
カソード式防食はまたガルバニ電池によって行うこともでき、このガルバニ電池では、犠牲アノードおよびカソードを形成する異なる材料の結果として電位が発生する。犠牲カソード防食は、ある金属が、より反応性に富む、または一層陽極化し易い金属と結合される際に行われる。このアノードは、電源を使用することなしに防食電流を供給することができる犠牲金属から構成される。電源を使用されることなしに防食電流が供給されるのは、使用中に行われる反応が熱力学的に有利であるためである。犠牲アノードシステムの欠点は、利用可能な防食電流が制限され、または寿命が制限されていることである。犠牲アノードは、腐食の進行またはガルバニック金属の消費が生じ易く、一般的には腐食の程度に依存して、ある時点での交換が必要である。
【0011】
鉄筋コンクリート建造物の腐食は、人間の生活を脅かし、補修に大きな費用がかかるため、新たな腐食防止技術を実現して将来の数世代にわたってインフラストラクチャを保護したいという要求を満たす改善されたシステムおよび方法が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ガルバニックカソード式防食システムの実施例の断面図である。
【
図2】犠牲アノードが埋め込まれた、鉄筋コンクリート構造体における修復部位を示す図である。
【
図3】ガルバニックカソード式防食システムの一実施例の断面図である。
【0013】
詳細な説明
ここに提供されるのは、ガルバニックアノードアセンブリおよびコンクリート構造体における鉄筋用鋼の腐食を保護するための方法であり、この方法では、コンクリート構造体における鉄筋用鋼のカソード式防食の原理に基づくシステムが使用される。
【0014】
複数の実施例によれば、犠牲アノード基体は、(a)第1犠牲金属と、(b)第1犠牲金属よりも電気化学的に陰ではない第2犠牲金属と、(c)第1犠牲金属および/または第2犠牲金属を包囲するケーシング材料とから構成されており、第1犠牲金属および第2犠牲金属は、鋼よりも電気化学的に陰である。
【0015】
別の複数の実施形態によれば、犠牲アノード基体は、(a)鋼よりも電気化学的に陰である第1犠牲金属と、(b)第1犠牲金属よりも電気化学的に陰ではない第2犠牲金属と、(c)第1犠牲金属および/または第2犠牲金属を包囲するケーシング材料とから構成されており、上記のアノード基体は、このアノード基体の一方の側面の長さに実質的に沿って延在するC字形の凹部を備えた実質的に円筒形の形状を有する。
【0016】
別の複数の実施形態によれば、コンクリート構造体における鉄筋の腐食を低減するためのシステムは、(a)第1犠牲金属および第2犠牲金属を含むアノード基体を有しており、第1犠牲金属は、鋼よりも電気化学的に陰であり、第2犠牲金属は第1犠牲金属よりも電気化学的に陰でなく、(b)第1および第2犠牲金属は、ケーシング材料によって少なくとも部分的に覆われており、(c)少なくとも1つの延長された電気導体は、上記のアノード基体に電気的に接続されており、かつ、上記のケーシング材料から突出しており、(d)鉄筋用鋼は上記の少なくとも1つの延長された電気導体に接続されている。
【0017】
別の複数の実施例によれば、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法には、異なる材料の少なくとも2つの犠牲金属からなる犠牲アノード基体を、鉄筋コンクリート構造体内の鉄筋に電気的に接続するステップを有しており、上記の異なる材料はそれぞれ、鋼よりも電気化学的に陰であり、上記のアノード基体は、少なくとも部分的にケーシング材料に覆われている。
【0018】
別の複数の実施例において、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法には、異なる材料の少なくとも2つの犠牲金属からなる犠牲アノード基体を、鉄筋コンクリート構造体内の鉄筋の近傍でカソード式防食部内に位置決めすることが含まれており、上記の異なる材料はそれぞれ、鋼よりも電気化学的に陰であり、上記のアノード基体は少なくとも部分的にケーシング材料に覆われている。
【0019】
カソード式防食は、鉄筋コンクリート構造体に埋め込まれる鋼の腐食をコントロールするために応用することができる。本発明のカソード式防食システムは、アノードと上記の鉄筋との間に電解質電位差を形成するように動作する。この差分により、電気接続を介して電流が流れ、また上記のコンクリートおよび/またはケーシング材料を通してイオンが十分に流れるようにし、これによって上記のアノードの腐食を発生させる一方で、鉄筋バーの腐食を阻止するかまたはこれを低減させるのである。
【0020】
カソード式防食は、上記の金属表面におけるアノード部位または能動的な部位を、カソード部位または受動的な部位に変換することにより、コンクリートにおける鉄筋の腐食を阻止する。外部電源カソード式防食によってアノードとカソードとの間に電位差を形成するためには、非犠牲アノードおよび印加された電流を使用する必要がある。外部電源システムには、外部電源によって形成される電流と、配線と、このシステムを動作可能状態に維持することを保証するためのモニタリングとが必要である。
【0021】
犠牲カソード式防食は、ガルバニ電池によって提供することができ、このガルバニ電池では、犠牲アノードおよびカソードを形成する異なる材料によって上記の電位が生じる。アノード基体は犠牲材料から形成され、この犠牲材料は、外部電流を必要とすることなしに、鋼材料に対して腐食する。これは犠牲システムと称される。なぜならば流電陽極は、犠牲になって構造的な鋼を腐食から保護するからである。上記の犠牲アノードは、防食すべき金属表面に電気的に接続されかつ電解作用によって優先的に消費される腐食可能な金属部分である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明の犠牲アノードアセンブリにより、鉄筋用鋼の代わりに陽極反応が発生するための場所が提供される。これにより、上記のガルバニックシステムが機能する限り、鉄筋用鋼に代わってアノードが劣化するのである。
【0023】
本発明の複数の様相によれば、ガルバニックシステムが提供され、ここでは、外部電源を設けるかまたは使用することなく、鋼に対して腐食する少なくとも2つの犠牲金属からアノード基体が形成される。このアノード基体は、ケーシング材料によって少なくとも部分的に覆うことができる。いくつかの実施形態では、延長された複数の金属導体を上記のアノード基体に接続することができ、またこの延長されたこれらの金属導体は、上記のケーシング材料から突出して、アノード基体をコンクリートに埋め込まれた鉄筋用鋼に電気的に接続する。
【0024】
酸化生成物は、アノードが腐食するにつれて、アノードの犠牲金属の表面に析出し得る。これらの腐食生成物を取り除かない場合、これらの腐食生成物は、電解質を通るイオンの流れをブロックすることによって電気化学反応を妨げる。このことは、アノードの不動態化として知られている。これらの酸化生成物を可溶性にすることにより、上記のアノードは意図したように機能し続けることが可能である。上記の腐食生成物の可溶性は、上記のケーシング材料によってコントロールされる。ケーシング材料により、アノード基体の犠牲金属の表面から腐食生成物を除去するためのメカニズムが得られると共に、鉄筋(カソード)から腐食性の犠牲金属アノードにイオンが流れるためのイオンの通り道が得られるのである。
【0025】
上記の犠牲金属の腐食/酸化生成物を除去するためにケーシング材料において使用される公知のメカニズムには、pH活性化と、湿潤剤および潮解剤と組み合わせた触媒塩の使用と、高分子電解質とのキレート化などがある。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、ケーシング材料には、例えば多孔性のモルタルが含まれ得る。択一的には上記のケーシング材料にはイオン伝導性の圧縮性材料が含まれ、ここでこのマトリクスは十分に圧縮可能であり、これによって犠牲金属アノードの腐食の生成物を吸収する。ケーシング材料は、例えば、ハロゲン化物、キレート化またはpHによる適切な活性化学の材料とすることが可能であり、また腐食の生成物の吸収を可能にする十分な多孔性の材料とすることで可能であり、これによって不動態化が阻止するかまたは低減される。
【0027】
別の複数の実施形態において、上記のケーシング材料は湿潤性、潮解性および/または吸湿性の材料とすることが可能であり、これによって十分な水分を吸収してアノードの周囲で導電性を維持し、これによってこのアノードの耐用年数中に電流の十分な出力が保証され、またアノードとカソード(鉄筋)との間の界面が電気化学的に活性な状態に保たれるようにする。
【0028】
複数の実施例によれば、上記の流電陽極基体用の適切なケーシング材料は、約75%の石膏、約20%のベントナイトおよび約5%の硫化ナトリウムの混合物から構成される。このケーシング材料により、アノードの自己消費を低減する均一な環境が得られる。任意の特定の理論に束縛されることなく、上記の硫化塩により、アノード基体の金属である亜鉛が活性化され、またベントナイト粘土が湿潤剤として作用することが考えられる。
【0029】
別の実施例では、2重作用アノードアセンブリまたは基体が提供され、ここではより電気化学的に活性な犠牲金属によって高い初期活性状態が形成されて、付着した鉄筋用鋼の周りにアルカリ性の、塩化物のない環境が形成される。高い活性状態のこの初期段階に続き、電気化学的により非活性な犠牲金属を使用する長期の防食が行われ、これによって上記の最初のより電気化学的に活性な金属が消費または不動態化される。
【0030】
別の複数の実施形態では、第1犠牲金属は、電気化学的により非活性な第2犠牲金属に付着させることができる。電気化学的により活性な第1犠牲金属により、陽極反応を開始するための初期の大きなガルバーニ電流を供給することができる。電気化学的により非活性な第2犠牲金属は、長期間にわたって鉄筋用鋼を十分に防食するための十分な電流を供給することができる。本発明のアノードアセンブリは、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、これらの合金などの犠牲金属の組み合わせを含み得る。
【0031】
さらに別の複数の実施形態において、上記の第1犠牲金属はマグネシウムを含み得る。アノード基体のこのマグネシウム部分は迅速に反応して、初期の分極強さを生じさせ、上記の鋼の周りにアルカリ性環境を形成する。この初期の分極によって強制的に、鋼鉄から離脱して塩素イオンが拡散する。上記のアノード基体のマグネシウム部分は消費されるかそうでなければ使い尽くされるため、例えば亜鉛である第2犠牲金属は、鉄筋用鋼の受動的な条件を維持するように作用する。このシステムにより、複雑な配線、バッテリまたは外部電源のない外部電源システムの利点が得られる。
【0032】
所定の複数の実施形態によれば、上記のアノード基体には第1犠牲金属および第2犠牲金属が含まれており、第1および第2犠牲金属は共に、コンクリート構造体に埋め込まれている鉄筋よりも一層電気化学的に活性である。第1犠牲金属は、第2犠牲金属に比べて一層電気化学的に活性である。一層電気化学的に活性な第1金属(例えばマグネシウム)または金属合金は、上記の電気化学的に一層非活性な第2金属(例えば亜鉛)または金属合金と鉄筋との間に配置される。このような構成の下で、一層電気化学的に活性な第1金属(吸収されていないかまたは可溶性でない場合)から形成される酸化生成物はさらに、一層電気化学的に非活性な第2金属の腐食の電荷の分散を増大させる。ここでこれは、層またはスペーサを絶縁するのと同様なやり方で、鋼イオンパスに至る第2金属の直接の導体パスをさらに絶縁することによって行われる。このようにして上記のマグネシウムの酸化生成物は、上記の絶縁スペーサの全体的な有効性を高める傾向を有し得る。上記のマグネシウムの酸化からの膨張性の生成物も、鉄筋用鋼とアノードとの間で解放されて、周囲の修繕用モルタルまたはコンクリート構造体に結び付き得る膨張力を生成するのではなく、むしろ上記の絶縁スペーサの圧縮性接着剤に入るのである。
【0033】
複数の実施形態によれば、上記のアノードアセンブリは、円筒形または円筒形の一部分に巻かれる有孔の実質的に平坦な第1犠牲金属と、同様に成形されかつ第1金属に被着することの可能な有孔の実質的に平坦な第2犠牲金属とを有することができる。有孔の犠牲金属により、アノード材料の表面積が増大し、これによってアノードの効率が増大する。別の複数の実施形態では上記の第1および/または第2犠牲金属は
中実体を含むことができる。
【0034】
別の複数の実施例では、アノードアセンブリは、種々異なるサイズの鉄筋に容易に位置決めされる構成を有することができる。アノード基体の一方の側面は、例えば一般的なC字形断面のような、長手方向に延在する凹部を含み得る。この形状は、鉄筋バーの種々異なる直径および曲率になじみ、結果的に上記の鋼へのアノード基体の確実かつ再現可能な取り付けが行われる。別の複数の実施形態において上記のアノードアセンブリは、例えば、U字形、V字形、正方形または半円の断面のような別の断面を有し得る。
【0035】
本発明の複数の様相によれば、第1および第2アノードの表面積は、上記の構造体を防食するのに十分な電流を放電するのに有効であり、また上記のアノードの重量は、電流を放電する場合に所望の耐用年数に持ちこたえるのに十分である。本発明の流電陽極システムは、被着した隣接鋼の初期腐食活動度に基づく自己調節性のシステムである。第1および/または第2犠牲金属からの腐食生成物もまた、アノードの周りの電荷の分散を最適化するための電気またはイオンパススペースと作用し得る。
【0036】
腐食速度は、腐食が鉄橋用鋼の腐食であるかまたは犠牲アノードの腐食であるかとは無関係に、温度、湿度、イオン環境および導電率に依存する。上記の犠牲アノードの材料は、鋼に防食のためのカソード電荷を供給するため、鋼に比べて優先的に腐食するように選択することができる。腐食条件が一層に有利になると、アノードの腐食速度が増大し、鋼に対する防食が正比例して増大する。この競合的な化学反応において、上記の有利な反応により、誘導される電荷によって第2の反応が発生することを阻止することができる。
【0037】
別の複数の実施形態において、上記の犠牲アノードアセンブリは、スペーサを使用して上記の鉄筋用鋼に付着させることができる。さらに別の複数の実施形態においてこのスペーサは、ポリマーのスペーサを含むことが可能である。さらに別の複数の実施形態においてスペーサは、絶縁性の接着ポリマスペーサを含むことができ、例えば圧力感知式両面テープ、ブチルロープコーキング、シリコーンパテ、成形用接着剤などを含むことができるがこれに限定されない。両面テープは、両面に接着剤がコーティングされた任意の圧力感知式テープである。上記の絶縁性の接着スペーサは、アノードの位置決めを容易にし、これ対し、上記の延長された電気コネクタ(例えば、金属製バインド線)は上記の鉄筋に固定される。上記の絶縁性の接着スペーサは、電気的な絶縁およびイオンの絶縁の両方を行うことでき、また電気的なパススペーサまたはイオンのパススペーサとして機能して、アノードの周りの電荷の分散を最適化することができる。別の複数の実施形態において、上記のスペーサは、両面接着式発泡テープを含むことが可能である。この発泡テープは、腐食生成物を吸収することができ、例えば、マグネシウム腐食から腐食生成物を迅速に形成する。
【0038】
付加的には上記の接着剤は、鉄筋用鋼が十分に清浄されていない場合には付着できない。このことは、この鋼のさらなる清浄が必要になり得ることを示す。
【0039】
アノードと鉄筋部材とを接近させれば、鉄筋の一層離れた部分に適用される防食および作用を犠牲にして、犠牲アノードの近傍におけるガルバニック作用(したがって「過防食」保護)を増大させることができる。非導電性バリアは、大量の電流がカソード式防食装置のすぐ傍の鉄筋用鋼に直接放出されることを阻止することができる。このような放出は、例えば修復パッチの外部で、鉄筋用鋼に流れる電流の量を低減するため、望ましくない。進行中の腐食を防止するためにここではこれが極めて必要である。また隣接する鋼への電流の放出は、全体的な電流を増大させて、アノードの有効な寿命を不必要に短くしてしまうことにもなり得るのである。
【0040】
アノードは、作用の増大によって動作中に不動態化することもあり、これによって酸化生成物は、例えば、吸収、溶解よりも早く析出するかまたはケーシング材料におけるキレート化のメカニズムによりこれらが運び出され得る。アノードを鋼から離すことにより、防食電流の強度を低減し、アノードが不動態化される傾向を低減することができる。
【0041】
複数の実施形態によれば、例えばアノードと鉄筋用鋼との間に配置される非導電性バリアにより、この鋼の隣接領域へのピーク電流が低減され、アノードアセンブリの取り付け個所からより離れた個所において比較的電流の大きい領域を容易に形成することができる。これにより、全体として一層効率の高いアノードアセンブリを提供することができる。
【0042】
複数の実施形態では、絶縁スペーサ、または別の非導電性バリアは、アノード/鋼接触接続領域を越えて、例えば、数センチメートルの距離だけ延在することが可能である。上記のアノードは、鉄筋用鋼のカソード式防食近接部内に配置することができ、またこの鋼から、例えばアノードが付着された鋼をこのアノードによって十分に防食できる最大間隔だけ離すことができる。このアノード効率は長い間隔で増大させることができるため、比較的個数の少ないアノードを使用した構造体のカソード式防食に対し、複数のアノード間の間隔を一層大きく離すことができる。
【0043】
本発明の複数の様相は、鉄筋を露出させるために既存のコンクリートの一部分が掘削される補修と、流電陽極アセンブリおよび離散の補修パッチを含む配置とに適用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記のアノードアセンブリはコンクリートに埋め込まれ、その設置は、コンクリートの機能回復に伴う通常の製造業務と両立し得る。これらの手順には、鉄筋の少し下の深さまで損傷したコンクリートを掘削し、鉄筋にアノードアセンブリを被着し、適当な埋込または補修モルタルにより、掘削したコンクリート領域の埋め戻することが含まれ得る。
【0045】
多くの公知の流電陽極は、コンクリート修復構成において不都合なスペースを占有する。いくつかの実施例によれば、本発明の犠牲アノードシステムは、短い鉄筋用鋼に合致するように成形され、この鉄筋用鋼の近傍に配置することができる。この構成により、密集した修復領域における得られる上記の間隔が最適化され、一層小さくかつ一層安価なコンクリートの修復が可能になる。
【0046】
別の複数の実施例によれば、コンクリート構造体内の鉄筋の腐食を低減するための方法には、異なる金属の少なくとも2つの犠牲金属からなる2重作用の犠牲アノードアセンブリを準備するステップが含まれており、これらの異なる金属はそれぞれ、鋼よりも電気化学的に陰である。上記のアノードは、少なくとも部分的にケーシング材料内に入れることができる。延長された電気導体は、バインド線は、上記のアノード基体に接続されており、上記のケーシング材料から突出している。上記の2重作用のアノードアセンブリは、コンクリート構造体に形成される孔内に挿入可能である。例えば圧力感知式両面テープであるがこれに限定されない接着ポリマスペーサが、上記のアノードアセンブリのケーシング材料と、鉄筋の表面との間に配置される。このアノードアセンブリは、上記の延長された電気導体を鉄筋に巻き付けることによって所定の位置に固定される。
【0047】
上記の固定されたアノードアセンブリは、この技術分野において埋込モルタル(embedment mortar)と称されることの多いある種のセメント質の修復用モルタルのような適当な低抵抗性材料によって埋め戻される。択一的には、上記の固定したアノードアセンブリを封止するために低抵抗性のモルタルを使用することができ、この場合には、上記の低抵抗性埋込モルタルによって上記の固定されたアノードアセンブリが封止されるのであれば、高抵抗性の修復用材料内に埋め込むことができ、これによって上記の修復領域に隣接する元々のコンクリートへのイオンの伝導路が得られる。
【0048】
図1Aに示したように、カソード式防食システム100は、犠牲傾向がより弱い金属106と、犠牲傾向がより強い犠牲金属104とを含むアノード基体102から構成されるアノードアセンブリを含むことができる。いくかの実施形態では、アノード基体102は、犠牲傾向がより弱い金属104の2つの層間に挟まれた、犠牲傾向がより強い多い金属106の層から構成することができる。別の複数の実施形態においてアノード基体102は、犠牲傾向がより強い金属104の2つの層間に挟まれた、犠牲傾向がより弱い金属106の層から構成することができる。アノード基体102は、少なくとも部分的にケーシング材料108によってコーティングするかまたはこのケーシング材料で覆うことができる。延長された電気導体116,118は、アノード基体102に接続されており、ケーシング材料108から突出している。設置中、絶縁性の接着スペーサ110をアノード基体102と鉄筋用鋼114との間に配置することができる。絶縁性の接着スペーサ110は、アノード基体102を鉄筋用鋼114に固定する。絶縁性の接着スペーサ110は、アノードアセンブリ102に接着してこのアノードアセンブリを所定の位置に保持するのに対し、電気導体116,118は、図示のように鉄筋用鋼114に固定される。
【0049】
図1Bに示したように、カソード式防食システム100は、アノード基体102から構成されるアノードアセンブリを含みことができ、このアノード基体は、犠牲傾向がより弱い金属106の層と、犠牲傾向がより強い金属104の層とを含む。一実施形態において犠牲傾向がより強い金属104は、犠牲傾向がより弱い金属106と、鉄筋用鋼114との間に配置することが可能である。アノード基体102は少なくとも部分的にケーシング材料108によってコーティングするかまたはケーシング材料によって覆うことが可能である。延長された電気導体116,118はアノード基体102に接続されており、またケーシング材料108から突出している。設置中、絶縁性の接着スペーサ110をアノード基体102と鉄筋用鋼114との間に配置することができる。絶縁性の接着スペーサ110は、アノード基体102を鉄筋用鋼114に固定する。絶縁性の接着スペーサ110は、アノードアセンブリ102に接着してアノードアセンブリを所定の位置に保持するのに対し、電気導体116,118は図示のように鉄筋用鋼114に固定される。
【0050】
図2を参照すると、カソード式防食法200には、鉄筋コンクリート構造体204に補修パッチ202を形成するステップが含まれている。アノードアセンブリ102は、例えば、接着スペーサ110によって補強金属に貼り付けられており、延長された電気導体116,118によって鉄筋用鋼114に固定されている。
【0051】
図3Aに示したように例示的なカソード式防食システム300には、犠牲傾向がより弱い金属306および犠牲傾向がより強い金属304を含むアノード基体302からなるアノードアセンブリを含むことができる。犠牲傾向がより弱い金属306は、犠牲傾向がより強い金属304を部分的に包囲することができる。アノード基体302の形状は実質的に円筒形とすることができ、この円筒形は、例えばC字形、V字形またはU字形の、上記のアノード基体の一方の側面の長さに実質的に延在する凹部を有する。アノード基体302は、ケーシング材料308によって少なくとも部分的にコーティングするかまたは覆うことができる。設置中、このアノード基体は、鉄筋用鋼314の近傍のカソード式防食部内に配置することができ、接着スペーサ310は、アノードアセンブリ302と鉄筋用鋼314との間に配置することができる。接着スペーサ310は、アノードアセンブリ302を鉄筋用鋼314に固定し、このアノードアセンブリを所定の位置に保持する。
【0052】
ここで
図3Bを参照すると、例示的なカソード式防食システム300は、アノード基体302から構成されるアノードアセンブリを含むことができ、このアノード基体302には、犠牲傾向がより弱い金属306と、犠牲傾向がより強い金属304とが含まれている。犠牲傾向がより弱い金属306は、犠牲傾向がより強い金属304を部分的に覆うことができる。アノード基体302は、実質的に円筒形とすることができ、この円筒形は、実質的にアノード基体の一方の側面の長さにわたって延在する、例えば、C字形、V字形またはU字形の凹部を有する。このアノード基体302は、ケーシング材料308によって少なくとも部分的にコーティングされるかまたは覆うことができる。いくつかの実施形態において、犠牲傾向がより弱い金属306は、ケーシング材料308によって覆うことでき、また犠牲傾向がより強い金属304は、ケーシング材料308および接着スペーサ310に接触して配置することができる。別の複数の実施形態では、犠牲傾向がより小さい金属は、ケーシング308によって覆うことができ、犠牲傾向がより強い金属304は、ケーシング材料308の外側表面と、絶縁性の接着スペーサ310との間に配置することができ、この際にスペーサ310は鉄筋用鋼314に接触している。設置中、アノード基体は、鉄筋用鋼314の近傍のカソード式防食部内に配置することができ、接着スペーサ310は、アノードアセンブリ302と、鉄筋用鋼314との間に配置することができる。接着スペーサ310は、アノードアセンブリ302を鉄筋用鋼314に固定し、所定の位置にアノードアセンブリを保持する。
【0053】
本発明は、電源、広範囲にわたる配線またはモニタリングを必要としないため、公知の外部電源カソード式防食システムの欠点を克服しており、また公知の犠牲アノードの電流が不足するおよび耐用年数が短いという短所を克服している。2つの犠牲金属を使用することにより、鉄筋用鋼の初期の分極に対してより大きな電流が供給されると共に、その後はカソード式防食を維持するためのより小さい電流が一層長く持続する。より活性の高い金属による鉄筋用鋼の初期の分極は、塩素イオンを除去し、防食される鉄筋用鋼の近傍におけるアルカリ度を回復させる傾向がある。つぎに上記の第2犠牲金属は単に、これらの受動的な条件を維持するだけでよく、これにより、2重の作用の電気防食が得られるのである。
【0054】
ここまで上記のアノードアセンブリ、カソード式防食システムおよびカソード式防食方法を種々異なる実施例に関連して説明したが、これを逸脱することなく、ここで説明したのと同じ機能を実行するため、別の類似の実施形態を使用できることおよび上記の複数の実施形態に対して複数の変更および付加を行い得ることは明らかである。上記の複数の実施形態は必ずしも択一的な選択肢ではない。それは種々異なる実施形態は、所望の特性を提供するために組み合わせることができるためである。したがって本発明のカソード式防食システムおよび防食法は、任意の単一の実施形態に限定すべきでなく、むしろ添付した請求項の詳細にしたがう範囲において解釈すべきである。