特許第6333266号(P6333266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333266交差点における衝突の危険性を評価する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333266
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】交差点における衝突の危険性を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20180521BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/00 624C
   B60R21/00 624B
   B60R21/00 624D
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-535084(P2015-535084)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公表番号】特表2015-536004(P2015-536004A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】FR2013052218
(87)【国際公開番号】WO2014053735
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】1259493
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(73)【特許権者】
【識別番号】515089253
【氏名又は名称】アンスティテュート ナシヨナル ド ルシャルシュ アン アンフォルマティック エ タン オートマティック
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーヴル,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】イバネズ−グズマン,ジャヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ロジエ,クリスティヤン
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−210051(JP,A)
【文献】 特開2008−090663(JP,A)
【文献】 特表2006−500664(JP,A)
【文献】 特開2007−241729(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0195241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60R 21/00 − 21/13
B60R 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に接近している第1の車両と前記交差点を通過走行する少なくとも1台の第2の車両との間における衝突の危険性を評価する方法において、前記第1の車両が測定手段および計算手段を備える方法であって、
前記測定手段および前記計算手段により、前記第1の車両および前記第2の車両のそれぞれの位置を判定するステップであって、当該ステップは、固有受容測定センサ、外受容測定センサおよび共有データによって実行されるデータ取得ステップからなり
前記計算手段により、前記第1の車両および前記第2の車両の運転者の意図を、前記交差点に入るときに停止するかどうかに関して、ならびに前記交差点から出るときに前記運転者のそれぞれが向かうつもりの方向を推定するために操作に関して、推定するステップであって、前記運転者の前記意図は、前記車両に関して利用可能なデータとコンテキストとを確率論的な形で組み合わせることによって推定され、それによって、前記データと当該データの解釈とにおける不正確さを考慮することを可能にし
前記計算手段により、前述の2つのステップによってもたらされた結果と、前記交差点で適用可能な交通規則に従って、前記第1の車両および前記第2の車両が停止する必要性を推定するステップであって、当該ステップは、優先権を有する車両の到達前に、優先権を持たない車両がその操作を実行するのに十分な時間を有する確率を計算することを可能にするギャップアクセプタンスの確率論的モデルに基づいており
前記計算手段により、前記第1の車両と前記第2の車両の間における衝突の危険性を推定するステップであって、前記推定が、停止しようという前記車両の意図と、前記車両が停止する必要性との比較に基づいているステップと、を有することを特徴とする評価方法。
【請求項2】
前記交差点で適用可能な交通規則に関する情報が、静的なデジタル環境マップ、前記第1の車両とインフラに位置する通信モジュールとの通信、および前記外受容測定センサのうちから選択される、少なくとも1つの情報手段によって、前記第1の車両に伝達されることを特徴とする、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記適用可能交通規則が、交通標識および交通信号灯のうちから選択される、少なくとも1つの手段によって示され、前記規則が、前記交差点での指定制限速度、一時停止標識、進入禁止標識および先方優先通行標識のうちから選択される、少なくとも1つの情報を提供することを特徴とする、請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記衝突の危険性の評価が、前記車両のうちの1台がその停止すべきときに停止しようという意図を有さない確率の計算に対応することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記第1の車両および前記第2の車両のそれぞれの位置を判定する前記ステップが、前記車両の向き、その速度、およびその制御機構に対する運転者の動作のうちから選択される、前記第1の車両および前記第2の車両のそれぞれに関する少なくとも1つの補足パラメータを判定するステップによって補完されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記第1の車両および前記第2の車両の位置を判定する前記ステップと、少なくとも1つの補足パラメータを判定する前記ステップが、前記第1の車両上に担持される前記固有受容測定センサおよび前記外受容測定センサによって、および/または前記車両間のワイヤレス通信リンクによって、実行されることを特徴とする、請求項5に記載の評価方法。
【請求項7】
前記固有受容測定センサが、GPSタイプのナビゲーション装置、およびCANタイプのバスを介して伝送されるデータのうちから選択される、少なくとも1つのセンサを備えることを特徴とする、請求項6に記載の評価方法。
【請求項8】
前記外受容測定センサが、車載カメラ、レーダおよびレーザのうちから選択される、少なくとも1つのセンサを備えることを特徴とする、請求項6または7に記載の評価方法。
【請求項9】
前記第1の車両に担持される中央処理装置によって制御されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項10】
前記検出された危険性に適合するように前記車両の走行動作に影響を及ぼすことを目的とした意思決定を行うステップを含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点における衝突の危険性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点は、道路網の中で最も危険な区域である。一例として、2004年に、ヨーロッパでの事故の43%は交差点で発生した。交差点は、とりわけ年配の運転者にとっては、特に不安を引き起こす区域でもある。年配の運転者は時として、場面を分析し、状況のコンテキスト(背景)に適した判断を行うことが困難である。したがって、交差点における衝突の危険性を正確に推定する能力を有する安全システムの開発に、大きな関心が集まっている。このような安全システムは、運転者が交差点に接近しそこを通過走行する際に、その運転者の状況認識を高めるために利用でき、したがってその交差点の存在によって引き起こされるストレスを低減させ、その区域における安全性を向上させうる。
【0003】
この技術的な問題については次のように要約できる。車両は、以下の情報を経時的に蓄積する。
−車両の状態に関する情報。手段は車両の固有受容(性)センサである。例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)ナビゲーション装置や、そのCAN(Control Area Network:コントロール・エリア・ネットワーク)バスで伝送されるデータなど。
−車両の環境に関する情報。手段は以下の通りである。
・車載の外受容センサ。例えばカメラやレーダなど。
・他の車両および/または道路インフラに統合された通信モジュールとの通信リンク。例えばタイプIEEE802.11pの通信規格など。
【0004】
車両はまた、静的なデジタル環境マップを有する。環境マップは、例えば道路網の2Dマップや環境の3D点群など、多くの様々な形式をとりうる。この環境マップは、例えば道路や車線、制限速度や交通標識の存在等の各交差点における適用可能な規則など、コンテキストに関する情報を含む。
【0005】
したがって、交差点における衝突の危険性を推定するために、実際の状況を再構成して潜在的な危険性を評価するには、上記の情報およびデータを全て、空間的および時間的に組み合わせる必要がある。
【0006】
しかしながら、上記手法を採用する際にしばしば見られる問題は、このデータ/情報の信頼性の欠如である。これは特に、センサに固有の測定誤差、位置特定誤差、および地図の誤差に起因する。さらに、交差点は依然として複雑な区域である。そこでは車両の経時的進展が、車両の物理的特性よりも運転者の意図に依存し、それによってデータの解釈が困難となり、多数の不確実性に支配される。
【0007】
一般に、交差点における衝突の危険性を推定するために提案される方法は、今後の軌道を予測することを意図した車両の物理モデルに基づいている。この物理モデルは動力学的なものでも、運動学的なものでもよい。したがって、上記の危険性は、こういった今後の軌道に関する衝突発生の関数として計算される。このタイプの方法は以下の2つの制約を有する。
−短期的な衝突のみに適用可能であるという制約がある。これは、上記物理モデルが短期的にのみ有効なためである。実際、長期的に信頼性がある形で軌道を予測可能にするには、より高いレベルで、例えば操作しようという運転者の意図を組み込んだり、交通規則だけでなく交差点のジオメトリやトポロジなどのコンテキストを考慮したりすることによって、その状況を検討する必要があるはずである。
−計算時間の観点からコストがかかるという制約がある。これは、交差点に存在する全ての車両の潜在的な軌道を予測する必要があり、これらの軌道間の交点を検出する必要があるためである。この計算時間の長さは、安全関連アプリケーションの実時間制約に適合しない。
【0008】
特許文献1に記載の方法など、他のより包括的な方法は、例えば、運転者が右折もしくは左折する、または直進し続ける可能性があると仮定することによって、交差点に接近する際の運転者の意図を考慮することに基づいている。このとき、潜在的に危険な状況の評価は、この意図を、交差点に存在する全ての車両の軌道の予測と関連付け、これらの軌道の交点を評価することによって行われる。この方法は、上述の方法よりも包括的かつ正確であるが、やはり計算時間を大量に消費し、安全関連アプリケーションの即時的な実行にはもはや適していないようである。
【0009】
本発明による、交差点における衝突の危険性を評価する方法は、その危険性の評価に関して、短縮した計算段階を実行しながらも、安全関連アプリケーションの実時間制約に完全に適合した厳密かつ正確な診断を提示する。つまり、この方法は、品質および性能と、向上した実行速度を両立させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第2012/0016581号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はその目的として、交差点に接近している第1の車両と上記交差点を通過走行する少なくとも1台の第2の車両との間における衝突の危険性を評価する方法を有し、上記第1の車両は測定手段および計算手段を備える。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による方法の主な特徴は、上記方法が、
上記第1の車両および上記第2の車両のそれぞれの位置を判定するステップと、
上記第1の車両および上記第2の車両の運転者の意図を、上記交差点に入るときに停止するかどうかに関して、ならびに上記交差点から出るときに上記運転者のそれぞれが向かうつもりの方向を推定するために操作に関して、推定するステップと、
前の2つのステップによってもたらされた結果と、上記交差点で適用可能な交通規則に従って、上記第1の車両および上記第2の車両が停止する必要性を推定するステップと、
上記第1の車両と上記第2の車両の間における衝突の危険性を推定するステップであって、上記推定が、停止しようという各車両の意図と、その各車両が停止する必要性との比較に基づいているステップとを有することである。
【0013】
かかる方法により、第1の車両と少なくとも1台の第2の車両との衝突の危険性を、それらの車両の潜在的な軌道を評価しそれらの交点を判定する必要なく、推定することが可能になる。したがってこの方法は、誤差の発生源を構成しうる過度に長く過度に複雑な計算の使用を回避し、安全関連アプリケーションの実時間制約に完全に適合する。第1の車両がソース車両であり、本発明による方法における様々なステップを実施する測定手段および計算手段を装備するものとする。表記「第2の」は、第1の車両を、交差点を通過走行する他の車両と区別するために使用される。表記「走行する」は同様に、第2の車両が特定の車線上で、交差点に進入中、またはその交差点で静止している、またはその交差点から出かかっている可能性があることを意味する。第2の車両はまた、交差点へのアクセスを可能にする、第1の車両が存在する車線と同じ車線上で、その第1の車両の前方に位置する可能性もある。上記交差点で適用可能な交通規則は、任意のタイプの交通標識、または交通信号灯によって示されうる。かかる方法は、例えば上記車両の全ての電気もしくは電子機器を管理するための中央処理装置など、適切なソフトウェアを有する車載コンピュータによって制御されるものとする。
【0014】
有利には、上記交差点で適用可能な交通規則が、静的なデジタル環境マップ、上記第1の車両とインフラに位置する通信モジュールとの通信、および外受容センサのうちから選択される、少なくとも1つの情報手段によって、上記第1の車両に伝達される。
【0015】
好ましくは、上記の適用可能な交通規則が、交通標識および交通信号灯のうちから選択される、少なくとも1つの手段によって示され、上記規則が、上記交差点での指定制限速度、一時停止標識、進入禁止標識および先方優先通行標識(yield sign)のうちから選択される、少なくとも1つの情報を提供する。
【0016】
好ましくは、上記衝突の危険性の評価が、上記車両のうちの1台がその停止すべきときに停止しようという意図を有さない確率の計算に対応する。例として、衝突の危険性は実際、一時停止標識が存在することから交差点で停止する必要がある第2の車両が、低減した速度で移動し続けることによってこの一時停止標識を無視する場合に著しく高くなる。
【0017】
有利には、上記第1の車両および上記第2の車両のそれぞれの位置を判定する上記ステップが、上記車両の向き、その速度、およびその制御機構に対する運転者の動作のうちから選択される、上記第1の車両および上記第2の車両に関する少なくとも1つの補足パラメータを判定するステップによって補完される。このリストは網羅的なものではなく、存在する車両の状態に関する補足詳細を提供できる利用可能な他のパラメータによって補完されうる。例として、制御機構に対する運転者の動作は、ブレーキペダルまたはアクセルペダルに対する圧力の印加によって示されうる。
【0018】
有利には、上記第1の車両および上記第2の車両の位置を判定する上記ステップと、少なくとも1つの補足パラメータを判定する上記ステップが、上記第1の車両上に担持される固有受容/外受容測定センサによって、かつ/または上記車両間のワイヤレス通信リンクによって、実行される。留意すべき点は、固有受容センサが第1の車両に組み込まれ、それらが上記車両の実際の状態に関する情報を提供すること、外受容センサも第1の車両に担持され、それらが各第2の車両に関する情報を提供することである。ワイヤレス通信リンクは、車両間および/または車両とインフラに存在する通信モジュールとの間の情報交換を可能にする。例えば、IEEE802.11p通信規格が利用されうる。
【0019】
好ましくは、上記固有受容センサが、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)タイプのナビゲーション装置、およびCAN(Control Area Network:コントロール・エリア・ネットワーク)タイプのバスを介して伝送されるデータのうちから選択される、少なくとも1つのセンサを備える。このリストは網羅的なものではなく、特に、様々な技術を有する他のタイプのナビゲーション装置を含みうる。
【0020】
好ましくは、上記外受容センサが、車載カメラ、レーダおよびレーザのうちから選択される、少なくとも1つのセンサを備える。
【0021】
有利には、本発明による危険性を評価する方法が、上記第1の車両に担持される中央処理装置によって制御される。上記中央処理装置は、車両内に存在する全ての電気もしくは電子機器を制御する。この中央処理装置に必要なのは、適当なソフトウェアを提供することだけであり、適当なソフトウェアとは、上記方法における各種ステップを制御できるよう、第1の車両と各第2の車両の間における衝突の危険性の正確な診断を提供するように、その各ステップを考慮したソフトウェアである。
【0022】
有利には、上記方法が、上記検出された危険性に適合するように上記車両の走行動作に影響を及ぼすことを目的とした意思決定を行うステップを含む。実際に、本発明による評価方法の主な利点の1つは、車両もその車両の乗員も安全な状態にするように車両の走行動作に対して修正が加えられることである。この修正は、車両の制御機構に対する自動動作によって、または車両の運転者に向けたメッセージによって、実現されうる。このメッセージは、視覚、聴覚または触覚の信号のうちから選択される信号の形式をとりうる。
【0023】
本発明による危険性評価方法は、高速かつ正確であり、したがって、安全関連アプリケーションに関連する実時間制約に完全に適合するという利点を提供する。つまり、交差点に接近する際の危険状況がこの方法によって検出されると、ADASタイプの先進運転支援システムが、例えば自動ブレーキ動作の実行に移行しうる。さらに、車両の軌道ではなく運転者の意図を考慮することによって、より優れた場面の分析と、より信頼性がある長期的衝突予測が本発明による方法により可能になる。最後に、本発明による方法は、確率論的な手法に基づいているという利点を有し、それによって、入力データとそのデータの解釈とにおけるあらゆる不正確さを考慮することが可能になる。
【0024】
交差点における2台の車両間の衝突の危険性を評価する方法の好ましい実施形態の詳細な説明については、図1〜3を参照して以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による方法における各ステップを詳述する概要図である。
図2】交差点における第1の状況の概略図である。
図3】交差点における第2の状況の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による危険性評価方法が、第1の車両で測定手段および計算手段を使用することによって実施され、上記車両の電気もしくは電子機器を管理するための中央装置である中央処理装置によって制御される。
【0027】
そのような、第1の車両と交差点を通過走行する少なくとも1台の第2の車両との間における衝突の危険性を評価する方法は、例えば交差点から500m未満の距離において、その交差点へのアクセスを可能にする車線を走行する全ての車両が対象であり、
上記第1の車両および各第2の車両のそれぞれの位置と、上記車両のそれぞれの状態に関する情報を提供することを可能にする各種パラメータとを判定するステップと、
上記第1の車両および各第2の車両の運転者の意図を、上記交差点に入るときに停止するかどうかに関して、ならびに上記交差点から出るときに上記運転者のそれぞれが向かうつもりの方向を推定するために操作に関して、推定するステップと、
これらの2つのステップによってもたらされた結果と、上記交差点で適用可能な交通規則に従って、上記第1の車両および各第2の車両が停止する必要性を推定するステップと、
これらの2つのステップによってもたらされた結果に従って、上記第1の車両と各第2の車両の間における衝突の危険性を推定するステップであって、上記推定が、停止しようという各車両の意図と、その各車両が停止する必要性との比較に基づいているステップと、
上記検出された危険性に適合するように上記車両の走行動作に影響を及ぼすことを目的とした意思決定を行うステップとを有する。この意思決定により、車両の制御機構に対する自動動作、または車両の運転者に向けたメッセージが行われうる。このメッセージは、視覚、聴覚または触覚の信号のうちから選択される信号の形式をとりうる。上記車両の制御機構は、例えば、点滅する方向指示器の状態、アクセルペダル、ブレーキペダル、該当する場合はクラッチペダルおよびそれによって繋げられる変速機の変速比を含む。
【0028】
図1を参照すると、上記第1の車両および各第2の車両のそれぞれの位置と、上記車両のそれぞれの状態に関する情報を提供することを可能にする各種パラメータとを判定するステップが、固有受容センサ、外受容センサおよび共有データによって実行されるデータ取得ステップからなる。このデータ取得ステップにより、第1の車両で、それ自体の状態およびその静的/動的な環境に関する情報を経時的に蓄積することが可能になる。センサの数およびそれらのタイプは制限されないが、唯一の制約は、これらのセンサが、第1の車両および各第2の車両の少なくとも1つの位置測定値を提供しなければならないということである。ただし、各車両の状態に関する情報を提供する補足情報は全て、運転者の意図のより優れた推定に通じるので有用である。例として、固有受容センサは、GPSタイプのナビゲーション装置、またはCANバスで伝送されるデータで構成されうる。外受容センサは、例えばカメラやレーダ、レーザなどに代表されうる。共有データは、例えばタイプIEEE802.11pの通信規格などの、他の車両との通信リンクおよび/または道路インフラに統合された通信モジュールとの通信リンクを介して得られうる。各車両の位置に加えて、例えば上記車両の空間における向きやそれらの速度、車両の制御機構に対する運転者の動作などの、その他のパラメータが、交差点における各運転者の意図からの評価の作成を可能にする重要な情報源を構成しうる。
【0029】
前のステップで収集された情報およびデータのおかげで、本発明による方法は、上記第1の車両および各第2の車両の運転者の意図を、上記交差点に入るときに停止するかどうかに関して、ならびに上記交差点から出るときに上記運転者のそれぞれが向かうつもりの方向を推定するために操作に関して、推定するステップを実施する。実際、衝突の危険性を評価できるためには、車両が交差点で停止するつもりかどうかと、交差点に到達したときに向かうつもりの方向を知ることが重要である。したがって、データ取得の第1のステップによって、交差点で停止する/しないという各運転者の意図を予測すること、交差点を出るときに各運転者が向かいたい方向を知ることが可能になる。
【0030】
第1の車両および各第2の車両が停止する必要性を推定するステップは、前の2つのステップによってもたらされた結果と、上記交差点で適用可能な交通規則に従って実行される。交差点で適用可能な交通規則は、例えば一時停止標識や進入禁止標識、先方優先通行標識(yield sign)、指定最高制限速度などの交通標識、および/または交通信号灯によって示されうる。上記交差点で適用可能なこれらの交通規則は、静的なデジタル環境マップなどの情報、第1の車両と道路インフラに位置する通信モジュールとの通信、およびレーダや車載カメラなどの外受容センサによって、第1の車両に伝達される。
【0031】
第1の車両と各第2の車両の間における衝突の危険性を推定するステップは、停止しようとする各車両の意図と、その各車両が停止する必要性との比較に従って実行される。
【0032】
運転者の意図は、車両に関して利用可能なデータとコンテキストとを、確率論的な形で組み合わせることによって推定され、それによって、このデータとその解釈とにおける不正確さを考慮することが可能になる。このステップで、場面の意味的な記述(意味記述,semantic description)を、詳細にはだれが、どんな確率で、何をしようという意図を有しているのか?という問いに答えることによって、得ることが可能になる。
【0033】
すでに文献には、ギャップアクセプタンスの確率論的モデルが存在している。こういったモデルは、優先権を有する車両の到達前に、優先権を持たない車両がその操作を実行するのに十分な時間を有する確率の計算に使用可能である。こういったモデルを交差点で適用可能な交通規則と組み合わせることによって、この手法では、車両がその交差点で停止すべきかどうかを確率論的な形で推定する。
【0034】
一例として、第1の車両Aが先方優先通行タイプの交差点に接近している状況を取り上げると、この車両が停止する必要性の推定は、以下のように定められる。
1.交差点への入口に到達する時刻tまで、車両Aの位置を予測する。例えばこの目的のために、「一定速度」タイプのモデルが使用されうる。
2.車両Aに対する優先権を有する全ての第2の車両Bに対して、同じ演算を実行する。つまり、交差点への入口に到達する時刻tまで、車両Aよりも優先権を有する各車両Bの位置の予測を繰り返す。「一定速度」タイプのモデルが車両Bにも同様に使用されうる。
3.各優先車両Bごとに時刻tとtを比較することによって、各優先車両Bの到達前に車両Aがその操作を実行するのに利用可能な最短の時間間隔を特定する。
4.車両Aが停止する必要性が、前のステップで計算された時間間隔が操作の実行に十分でない確率として、計算される。この目的のために、ギャップアクセプタンスの確率論的モデルが使用されうる。
【0035】
最後に、衝突の危険性を評価する方法が、上記検出された危険性に適合するように上記車両の走行動作に影響を及ぼすことを目的とした意思決定を行うステップを含む。例として、第1の車両のために計算された衝突確率が高い場合であるが、その車両が交差点に接近する際その速度が一定のままの場合、車両を停止させるため、またはその速度を大幅に低減させるために、先進運転支援システムで自動的にブレーキペダルを作動させることができる。
【0036】
図2に、交差点における危険シナリオの例が示されている。車両1および3が、一定の速度で交差点に接近しており、標識に従って優先権を有している。車両4が、一時停止標識で停止している。車両2が、前方へ移動しており、車両1および3に占有される車線の途中にあって、その速度が増加しているものとする。
【0037】
・データの取得
各センサが、連続的な車両の位置に関するデータと、場合により、上記車両の向き、速度、方向指示器の点滅状態などに関する情報とを提供する。
【0038】
・危険性を推定するアルゴリズム
・運転者の意図の推定
車両、交差点のジオメトリおよび標識のために利用可能な情報を組み合わせることによって、本発明による方法により、運転者1および3の意図が停止せずに交差点を通過走行することにあり、運転者4の意図が運転者3に譲ることにあり、運転者2の意図が待機せずに右折することにあることを、確率論的な形で推定することが可能になる。
・危険性の推定
推定された意図を交差点で適用可能な交通規則と比較することによって、本発明による方法により、運転者の意図が優先権を規定する規則と相容れない確率を計算することが可能になる。この確率は運転者1、3および4に対しては低く、運転者2に対しては高くなる。というのは、運転者2には、交差点に車両1が到達する前にその操作を実行するために利用できる時間が十分にないからである。
【0039】
・意思決定アルゴリズム
車両2が危険を示す確率がかなり大きくなることから、意思決定を行う必要がある。採用される動作は、いくつかの要因、つまり危険性の値、切迫した衝突の危険性が存在するかどうかの評価による状況の構成、関与している各車両の速度、車両で利用可能な警告手段または制御手段によって決まる。この手段は例えば、視覚や聴覚、触覚の警告装置または車両の自動ブレーキ要素のためのアクチュエータなどである。
【0040】
図3に、交差点における非危険シナリオの例が示されている。車両1および3が、一定速度で交差点に接近しており、優先権を有する。車両2および4が、一時停止標識で停止している。
【0041】
・データの取得
このステップは、前記の危険シナリオのために説明したものと全く同じ方法で行われる。
【0042】
・危険性を推定するアルゴリズム
・運転者の意図の推定
この場合、本発明による方法により、運転者2の意図が運転者1に譲ることであることを、確率論的な形で推定することが可能になる。
・危険性の推定
運転者の意図が優先権を規定する規則と相容れない確率は、全ての運転者に対して低い。
【0043】
・意思決定アルゴリズム
どの車両も危険を示していないことから、動作は不要である。
図1
図2
図3