(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333359
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】アルキルトリチルフェニルエーテル類
(51)【国際特許分類】
C07C 43/205 20060101AFI20180521BHJP
C10L 1/185 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
C07C43/205 CCSP
C10L1/185
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-506651(P2016-506651)
(86)(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公表番号】特表2016-520549(P2016-520549A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】US2014033004
(87)【国際公開番号】WO2014165776
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】61/808,672
(32)【優先日】2013年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・バターリック
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・デイヴィット・グリーン
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・スウェド
【審査官】
高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第101037381(CN,A)
【文献】
特開平04−316543(JP,A)
【文献】
特開平06−041399(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/177987(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0019939(US,A1)
【文献】
Hunan Daxue Xuebao, Ziran Kexueban,2007年,34(3),64−66
【文献】
Chem. Eur. J.,2004年,10,6361−6368
【文献】
J. Am. Chem. Soc.,1996年,118,4931−4951
【文献】
Eur. J. Org. Chem.,2011年,5971−5980
【文献】
Journal of the Chemical Society ,1955年,3089−92
【文献】
Tetrahedron letters,2013年,54(22),2870−2873
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/205
C10L 1/185
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物であって、
【化1】
式中、R
1及びR
2が、独立して、C
1〜C
6アルキルを表し、R
3が、C
1〜C
6アルキルであり、R
4が、C
1〜C
18アルキルまたはC
4〜C
18ヘテロアルキルであり、mが0、1、2、または3であり、nが1、2、または3であり、
m+nが2、3、4、または5であり、j、k、p、q、r、及びsが、独立して、0、1、または2であり、但し、j、k、p、q、r、及びsのうちの少なくとも1つが0ではない、前記化合物。
【請求項2】
nが1または2であり、mが0または1であり、m+nが2または3であり、j、p及びrが0または1であり、k、q、及びsが0である、請求項1に記載の前記化合物。
【請求項3】
R4が、C2〜C12飽和アルキルである、請求項2に記載の前記化合物。
【請求項4】
R1及びR2が、独立して、水素またはC1〜C4アルキルを表す、請求項3に記載の前記化合物。
【請求項5】
R3が、C3〜C6アルキルである、請求項4に記載の前記化合物。
【請求項6】
石油炭化水素または生物由来の液体燃料をマーキングするための方法であって、前記方法が、式(I)を有する少なくとも1つの化合物を前記石油炭化水素または生物由来の液体燃料に添加することを含み、
【化2】
式中、R
1及びR
2が、独立して、C
1〜C
6アルキルを表し、R
3が、C
1〜C
6アルキルであり、R
4が、C
1〜C
18アルキルまたはC
4〜C
18ヘテロアルキルであり、mが0、1、2、または3であり、nが1、2、または3であり、j、k、p、q、r、及びsが、独立して、0、1、または2であり、但し、j、k、p、q、r、及びsのうちの少なくとも1つが0ではなく、式(I)を有する化合物のそれぞれが、0.01ppm〜20ppmのレベルで存在する、前記方法。
【請求項7】
nが1または2であり、mが0または1であり、j、p、及びrが0または1であり、k、q、及びsが0である、請求項6に記載の前記方法。
【請求項8】
R4が、C2〜C12飽和アルキルである、請求項7に記載の前記方法。
【請求項9】
R1及びR2が、独立して、水素またはC1〜C4アルキルを表す、請求項8に記載の前記方法。
【請求項10】
R3が、C3〜C6アルキルである、請求項9に記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体炭化水素ならびに他の燃料及び油をマーキングするための方法において有用な新規化合物に関する。
【0002】
各種の化学マーカーでの石油炭化水素ならびに他の燃料及び油のマーキングは、当技術分野において周知である。種々の化合物ならびにマーカーの検出のための非常に多くの技術、例えば吸光分光法及び質量分析法がこの目的のために使用されている。例えば、米国特許第7,858,373号は、液化炭化水素ならびに他の燃料及び油のマーキングにおいて使用される種々の有機化合物の使用を開示している。しかし、これらの生成物のためのさらなるマーカー化合物の必要性は常にある。マーカーの組み合わせは、マーキングされた生成物のためのコードを形成する量の比を用いた、デジタルマーキングシステムとして用いられ得る。燃料及び潤滑剤マーカーとして有用なさらなる化合物は、利用可能なコードを最大限に生かすために望ましいであろう。本発明により扱われる問題は、液化炭化水素ならびに他の燃料及び油をマーキングするために有用なさらなるマーカーを見出すことである。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、式(I)を有する化合物を提供し、
【0005】
式中、R
1及びR
2は、独立して、C
1〜C
6アルキルを表し、R
3は、C
1〜C
6アルキルであり、R
4は、C
1〜C
18アルキルまたはC
4〜C
18ヘテロアルキルであり、mは0、1、2、または3であり、nは1、2、または3であり、j、k、p、q、r、及びsは、独立して、0、1、または2であり、但し、j、k、p、q、r、及びsのうちの少なくとも1つは0ではない。
【0006】
本発明は、石油炭化水素または生物由来の液体燃料をマーキングするための方法をさらに提供し、該方法は、該石油炭化水素または生物由来の液体燃料に、式(I)を有する少なくとも1つの化合物を添加することを含み、
【0008】
式中、R
1及びR
2は、独立して、C
1〜C
6アルキルを表し、R
3は、C
1〜C
6アルキルであり、R
4は、C
1〜C
18アルキルまたはC
4〜C
18ヘテロアルキルであり、mは0、1、2、または3であり、nは1、2、または3であり、j、k、p、q、r、及びsは、独立して、0、1、または2であり、但し、j、k、p、q、r、及びsのうちの少なくとも1つは0ではなく、式(I)を有する各化合物は、0.01ppm〜20ppmのレベルで存在する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特別の定めのない限り、割合は重量パーセント(重量%)及び温度は℃である。濃度は、重量/重量基準で計算される百万分率(「ppm」)、または重量/体積基準(mg/L)のいずれかで、好ましくは重量/体積基準で表される。用語「石油炭化水素」は、主に炭化水素組成物を有する生成物を指すが、少量の酸素、窒素、硫黄、またはリンを含有してもよく、石油炭化水素は、原油ならびに石油精製過程から派生する生成物を含み、それらには、例えば原油、潤滑油、作動液、ブレーキ液、ガソリン、ディーゼル燃料、ケロシン、ジェット燃料、及び暖房用の油が含まれる。本発明のマーカー化合物は、石油炭化水素または生物由来の液体燃料に添加されてもよく、後者の例はバイオディーゼル燃料、エタノール、ブタノール、エチルtert−ブチルエーテルまたはそれらの混合物である。20℃で液体状態である場合、物質は液体であると見なされる。バイオディーゼル燃料は、脂肪酸アルキルエステル、特にメチルエステルの混合物を含有する生物由来の燃料である。バイオディーゼル燃料は、典型的には未使用または再利用いずれかの植物油のエステル交換により生成されるが、動物性脂肪も用いてよい。エタノール燃料は、エタノールを純粋な形で、または石油炭化水素、例えば「ガソホール」と混合して含有する任意の燃料である。「アルキル」基は、直鎖、分岐または環状の配列で1から22個の炭素原子を有する置換または非置換のヒドロカルビル基である。アルキル基上の1つまたは複数のOHあるいはアルコキシ基の置換は許容され、他の基は本明細書中の他所で指定した場合には許容され得る。好ましくは、アルキル基は飽和である。好ましくは、アルキル基は非置換である。好ましくは、アルキル基は直鎖または分岐である。「ヘテロアルキル」基は、1つまたは複数のメチレン基がOまたはSによって置き換えられているアルキル基である。好ましくは、ヘテロアルキル基は、1から6個、好ましくは1個から4個、好ましくは1個から3個のOまたはS原子を含有する。OまたはSによって置き換えられたメチレン基は、対応するアルキル基における2個の他の炭素原子に結合されている。好ましくは、ヘテロアルキル基はS原子を含有しない。ヘテロアルキル基は、OH、SHまたはC1〜C18のアルコキシ基、好ましくはOHまたはC1〜C6のアルコキシ基、好ましくはヒドロキシまたはC1〜C4のアルコキシ基によって置換されていてよい。ヘテロアルキル基の例には、2から6単位の酸化アルキレン(好ましくは2から4、好ましくは2または3)を有する酸化エチレン、酸化プロピレンまたは酸化ブチレンのオリゴマーならびに末端ヒドロキシまたはC1〜C6のアルコキシ基(好ましくはヒドロキシもしくはC1〜C4のアルコキシ、好ましくはヒドロキシもしくはメトキシ、好ましくはヒドロキシ)が含まれ、酸化エチレンオリゴマーの例は、−{(CH2)2O}iR2(式中、iは2から6の整数であり、R2は水素またはC1〜C6のアルキル)である。好ましくは、iは2から4、好ましくは2または3である。好ましくは、R2は水素またはC1〜C4のアルキル、好ましくは水素またはメチル、好ましくは水素である。好ましくは、本発明の化合物は、元素をそれらの自然に存在する同位体の比率で含有する。
【0010】
好ましくは、R
1及びR
2は、独立して、C
1〜C
4アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、好ましくはメチルである。好ましくは、R
1及びR
2は飽和されている。R
1、OR
1、R
2及びOR
2は、これらが結合しているベンゼン環上の任意の有効な位置にあってもよく、好ましくは、全ての4つのベンゼン環が結合している四級炭素に対してメタ及びパラである位置にあってもよい。好ましくは、j、k、p、q、r、及びsは、独立して、0または1である。好ましくは、k、q、及びsは0である。好ましくは、q=sかつp=rである。好ましくは、jは1である。好ましくは、p及びrは、1である。好ましくは、R
4はC
2〜C
12アルキルまたはC
4〜C
12ヘテロアルキルであり、好ましくはC
2〜C
12アルキル、好ましくはC
3〜C
12アルキル、好ましくはC
4〜C
12アルキル、好ましくはC
4〜C
10アルキル、好ましくはC
6〜C
10アルキルである。好ましくは、R
4は飽和されている。好ましくは、R
4は直鎖または分岐鎖であり、好ましくは直鎖である。好ましくは、R
3はC
2〜C
6アルキルであり、好ましくはC
3〜C
6アルキル、好ましくはC
4〜C
6アルキル、好ましくはC
3〜C
4アルキル、好ましくはsec−ブチル、t−ブチルまたはイソプロピルである。好ましくは、R
3は飽和されている。好ましくは、R
3は直鎖または分岐鎖であり、好ましくは分岐鎖である。R
3及びOR
4は、これらが結合しているベンゼン環上の任意の有効な位置にあってもよく、好ましくは、全ての4つのベンゼン環が結合している四級炭素に対してメタ及びパラである位置にあってもよい。好ましくは、nが1である場合、OR
4はパラ位にある。好ましくは、mは0、1、または2であり、好ましくは0または1である。好ましくは、nは1または2であり、好ましくは1である。好ましくは、mは1でありかつnは1である。好ましくは、nは2でありかつmは0である。j、k、p、q、r、s、m及びnのうちのいずれかが0である場合、結合される置換基は存在せず、例えば、mが0である場合、R
3は存在しない。
【0011】
本発明の化合物をマーカーとして使用する場合において、好ましくは、マーキングされる液体に添加されるそれぞれの化合物の最小量は、少なくとも0.01ppm、好ましくは少なくとも0.02ppm、好ましくは少なくとも0.05ppm、好ましくは少なくとも0.1ppm、好ましくは少なくとも0.2ppmである。好ましくはそれぞれのマーカーの最大量は、50ppm、好ましくは20ppm、好ましくは15ppm、好ましくは10ppm、好ましくは5ppm、好ましくは2ppm、好ましくは1ppm、好ましくは0.5ppmである。好ましくはマーカー化合物の最大総量は、100ppm,好ましくは70ppm、好ましくは50ppm、好ましくは30ppm、好ましくは20ppm、好ましくは15ppm、好ましくは12ppm、好ましくは10ppm、好ましくは8ppm、好ましくは6ppm、好ましくは4ppm、好ましくは3ppm、好ましくは2ppm、好ましくは1ppmである。好ましくは、マーカー化合物は、マークされた石油炭化水素または生物由来の液体燃料において視覚的な手段によって検出可能ではない、すなわち、色または他の特徴を肉眼で目視観測することにより、マーカー化合物を含有することを判定することは可能ではない。好ましくは、マーカー化合物は、それが添加される石油炭化水素または生物由来の液体燃料において、石油炭化水素または生物由来の液体燃料自体の構成物質、あるいはその中で用いられる添加剤のいずれとしても、通常は存在しないものである。
【0012】
好ましくは、マーカー化合物は、少なくとも3のlog P値を有し、ここでPは1−オクタノール/水の分配係数である。好ましくは、マーカー化合物は、少なくとも4、好ましくは少なくとも5のlog P値を有する。実験に基づいて決定されていない及び文献における報告がされていないlog P値は、Meylan,W.M & Howard,P.H.,J.Pharm.Sci.,vol.84、83−92(1995)に開示されている方法を用いて概算することができる。好ましくは石油炭化水素または生物由来の液体燃料は、石油炭化水素、バイオディーゼル燃料またはエタノール燃料、好ましくは石油炭化水素またはバイオディーゼル燃料、好ましくは石油炭化水素、好ましくは原油、ガソリン、ディーゼル燃料、ケロシン、ジェット燃料または灯油、好ましくはガソリンである。
【0013】
好ましくは、マーカー化合物は、クロマトグラフの技術、例えばガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、濾紙クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、イオン交換及び分子排除クロマトグラフィーを用いて石油炭化水素または生物由来の液体燃料の構成物質からそれらを少なくとも部分的に分離することにより検出される。クロマトグラフィーは、(i)質量スペクトル分析及び(ii)FTIRのうちの少なくとも1つが後に続く。マーカー化合物の識別情報は、好ましくは質量スペクトル分析により測定される。好ましくは、質量スペクトル分析は、石油炭化水素または生物由来の液体燃料においていかなる分離も行うことなく、マーカー化合物を検出するために用いられる。あるいは、マーカー化合物は、例えば石油炭化水素または生物由来の液体燃料のより揮発性である成分の一部を蒸留することにより、分析に先立って濃縮されてもよい。
【0014】
好ましくは、複数のマーカー化合物が存在する。多数のマーカー化合物の使用は、石油炭化水素または生物由来の液体燃料への石油炭化水素または生物由来の液体燃料の元の及び他の特徴を特定するために用いられ得るコードされた情報の組み込みを容易にする。コードは、識別情報及び相対量、例えば、マーカー化合物の固定整数比を含む。1種、2種、3種またはそれ以上のマーカー化合物を、コードを形成するために用いてよい。本発明によるマーカー化合物は、他の種類のマーカー、例えば、米国特許第6,811,575号、米国特許出願公開第2004/0250469号及び欧州特許出願公開第1,479,749号に開示されているものを含める、吸光分光法により検出されるマーカーと組み合わせてもよい。マーカー化合物は、石油炭化水素または生物由来の液体燃料内に直接入れられるか、あるいは他の化合物、例えば潤滑剤のための耐摩耗添加剤、ガソリンのための洗浄剤などを含有する添加剤パッケージ内に入れられ、添加剤パッケージは石油炭化水素または生物由来の液体燃料に添加される。
【0015】
本発明の化合物は、当該技術分野において周知の方法、例えば、置換エステルのアリールグリニヤール試薬を用いた反応及び置換フェノールを用いたアリール化、それに続く塩基の存在下の有機ハロゲン化物を用いたアルキル化によって調製されてもよい。例えば、トリチル化フェノールエーテルは、以下の反応スキームに従って調製されてもよく、ここでは、簡略化のために、j、p、及びrは1であり、かつk、q及びsは0である。全ての他の符号は、上記で定義された通りである。より複雑な置換パターンを有する生成物は、同一のプロセスを用いて対応する出発原料から調製され得る。代替合成において、置換または非置換のベンゾフェノンを、置換または非置換のフェニルグリニヤール試薬と反応させ、トリチルアルキルフェノールを生成させ、ついでこれをR
4Xと反応させる。
【実施例】
【0017】
共通の実験用試薬及び溶媒は、Sigma−Aldrich、Fluka、VWR、Acros、またはFisher Scientificから得て、受領したままの状態で用いた。安息香酸エステル、グリニヤール試薬及びフェノールは、Sigma−Aldrichから得た。
【0018】
分析手法
IR分析:IR分析は、Nicolet 560 FTIR分光器を用いて実施した。液体試料については、小液滴を、2つのKBrプレートの間できれいなフィルムとして鋳造した。IRスペクトルは、4cm
−1のスペクトル解像度で、4000から400cm
−1までの伝送モードで獲得した。Happ−Genzel型アポダイゼーション関数を使用した。
【0019】
NMR分析:
1H及び
13C NMRスペクトルの両方を、4.7Tで動作するBruker 200 NMR分光器を用いて獲得した。
1Hスペクトルは、8.2秒の蓄積時間及び2.0KHzのスイープ幅を用いて得られ、
13Cスペクトルは、4.7秒の蓄積時間及び7.0KHzのスイープ幅を用いて得られた。メタノール−d
4を、典型的には溶媒として使用した。化学シフトは、
1Hについては3.30ppmにおける、
13Cについては59.05ppmにおける溶媒共鳴を用いて参照された。
【0020】
GPC分析:合成反応の進行を追跡するための及び生成物純度を決定するためのGPC分析を、PerkinElmer Series 200 HPLCを用いて行った。2つのPolymer Laboratories pLgelカラムを直列で使用した:1)300mm×7.5mm、3μ、100Å;2)300mm×7.5mm、5μ、50Å。これら2つのカラムの前にガードカラムがある。カラムは35℃で維持される。移動相は、2mL/分の流量にての100%のTHFである。UV検出は270nmで行われる。プログラム実行時間は10分である。
【0021】
GC分析:合成反応の進行を追跡するための及び生成物純度を決定するためのGC分析を、FID検出器を装備したHewlett Packard Model 6890Nガスクロマトグラフィーを用いて行った。カラムは、Thermo Scientific TR5、7メートル×0.32mm×0.25μmのフィルムであった。実行プログラムは、50℃のオーブンで1分間の初期保持時間で開始し、続いて温度を10℃/分にて280℃まで徐々に上昇させ、20分間の最終保持時間で行った。注入ポート温度及び検出器温度は双方とも275℃であった。試料注入サイズは1μLであって、キャリアーガスは、1mL/分のヘリウムであった。
【0022】
融点:融点をMel−Temp装置を用いて決定し、補正は行われなかった。
【0023】
アルキルトリチルアルコールの合成
一般合成手順:以下の実施例は、アルキルトリチルアルコールの全ての合成に使用される代表的な手順である。合成データは、以下の表1に概説されている。
【0024】
フェニルジ−m−トリルメタノール[95938−57−1](mmMTritOH):500mLの4つ首フラスコに、磁気撹拌棒、60mLの添加漏斗、及び4つのガラス栓を取り付けた。装置を125℃のオーブン内で一晩乾燥させた。オーブンから取り出す際に、装置を迅速に組み立てて、窒素流下で室温まで冷却した。このフラスコに、THF(0.2モル)中の1.0M m−トリル塩化マグネシウム200mLを充填した。添加漏斗に、30mLの乾燥THF中の13.63グラム(0.1モル)安息香酸メチルを充填した。窒素ブランケット下で、安息香酸メチル溶液を、撹拌グリニヤール溶液に約2.5時間にわたって滴加した。添加中に、グリニヤール溶液は、黄褐色から紫色に変化した。添加開始後すぐに、約37℃までの発熱が観察された。反応混合物速度がこの温度でまたはこれ以下に保持するよう、添加速度を調整した。添加完了後、反応混合物温度を2.5時間にわたって60℃まで増加させた。その後、反応混合物を室温で数日間にわたって撹拌した。反応混合物の試料のGC分析は、未反応の安息香酸エステルの存在を示した。GC分析によって生成物の形成を監視しながら、反応混合物を60〜65℃まで再加熱した。約10時間後に、未反応エステルの量は、2面積%をわずかに超え、mmMTritOHの量は、>85面積%であった。反応混合物を、水中10体積%の硫酸100mLと約300グラムの氷の混合物に注いだ。約100mLのエーテルを添加し、氷が溶解するまで混合物を撹拌した。混合物を分液漏斗に移し、層を分離させた。水層を1×50mLのエーテルで抽出し、エーテル層を合わせた。合わせたエーテル層を、2×50mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液で、次いで2×50mLの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。エーテル溶液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させて、次いでこれを濾過し、回転蒸発によって溶媒を除去し、26.33グラムのmmMTritOHを粘性琥珀色油状物として得た。収率=91.3%。GC分析による生成物純度は、>91面積%であった。生成物構造を、IR、
1H−ならびに
13C−NMR、及びGC/MS分析によって確認した。
【0025】
アルキルトリチルフェノールの合成
一般合成手順:以下の実施例は、アルキルトリチルフェノールの全ての合成に使用される代表的な手順である。合成データは、以下の表2に概説されている。
【0026】
2−(sec−ブチル)−4−(ジフェニル)(p−トリル)メチル)フェノール(pMS4):100mLの3つ首フラスコに、磁気撹拌器及び窒素ブランケットを備える還流冷却器を取り付けた。フラスコに、6.86グラム(0.025モル)のジフェニル(p−トリル)メタノール(pMTritOH:[5440−76−6]と、3.76グラム(0.025モル)のo−sec−ブチルフェノールと、50mLの氷酢酸を充填した。混合物を室温にて窒素下で撹拌し、透明な黄色溶液を得た。この溶液に、5mLの濃硫酸を添加した。透明な黄色酢酸水溶液は、すぐに濃い赤褐色に変化した。反応混合物を、GPC分析によって反応の進行を監視しながら、室温で撹拌した。6日後に、未反応で残るo−sec−ブチルフェノールの量は、約7面積%まで減少し、存在するmMS4の量は、約83面積%まで増加した。反応混合物を、約250mLの水に注ぎ、約150mLのトルエンを添加した。混合物を室温で約1時間撹拌し、その後、混合物を分液漏斗に移した。層を分離させ、水層を1×50mLのトルエンで抽出し、トルエン層を合わせた。トルエン溶液を1×100mLの水、及び1×100mLの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。トルエン溶液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させて、これを濾過し、溶媒を回転蒸発によって除去し、10グラムのpMS4を粘性暗赤色油状物として得た。収率は100%であり、GPC分析による生成物純度は82面積%であった。生成物構造を、IR、
1H−ならびに
13C−NMR、及びGC/MS分析によって確認した。
【0027】
アルキルトリチルフェニルエーテルの合成
一般合成手順:以下の実施例は、アルキルトリチルフェニルエーテルの全ての合成に使用される代表的な手順である。合成データは、以下の表3に概説されている。
【0028】
((3,4−ビス(ヘキシルオキシ)フェニル)(p−トリル)メチレン)ジベンゼン(pM3,4−6):100mLの3つ首フラスコに、磁気撹拌器、窒素ブランケットを備える還流冷却器、及び温度制御器及び熱電対を備える加熱用マントルを取り付けた。フラスコに、3.67グラム(0.01モル)の4−(ジフェニル(p−トリル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール(pM3,4)と、1.41グラム(0.21モル)の85%水酸化カリウムペレットと、25mLのジメチルスルホキシドとを充填した。混合物を窒素下で撹拌し、105℃に加熱した。水酸化カリウムペレットの全てが溶解するまで、加熱及び撹拌を続けた。暗い赤褐色の溶液を得た。反応混合物を55℃まで冷却し、3.30グラム(0.02モル)のブロモヘキサンを一度に添加した。同時に66℃までの発熱を観察した。次いで反応混合物を65℃に維持し、GC分析によって監視した。2時間後には、pM3,4はほとんど残っていなかった。反応混合物を、約250mLの、水酸化カリウムの数個のペレットと数グラムの塩化ナトリウムを含有する水に注いだ。約150mLのトルエンを添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を分離漏斗に移し、層を分離させた。水層を1×50mLのトルエンで抽出し、トルエン層を合わせた。このトルエン溶液を1×75mLの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、その後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を回転蒸発によって除去し、3.80グラムのpM3,4−6を暗赤色油状物として得た。収率は71%であった。GC分析による純度は>90面積%であった。生成物構造を、IR、
1H−ならびに
13C−NMR、及びGC/MS分析によって確認した。
【0029】
候補物質評価試験
GC/MS試験:アルキルトリチルフェニルエーテルのストック溶液を、ジクロロメタン(DCM)中で調製した。これらのDCM溶液を用いて、GC保持時間及びMSフラグメンテーションパターンを確立した。GC保持時間及びMSフラグメンテーションデータの概要を以下の表4に概説する。
GC/MSパラメータ:
−カラム:Agilent DB 35m、15.0m×0.25mm×0.25μ
−流量:1.5mL/分。He キャリアーガス
−オーブン:初期:100℃
−温度勾配1:280℃まで20℃/分、保持:10分
−温度勾配2:340℃まで20℃/分、保持:6分
−注入口温度:280℃
−挿入部:スプリットレス、ガス抜き:15分間、不活性化された単一のテーパ状のガラスウール、5062−3587
−注入容積:3μL、粘度:5秒、プランジャー:高速
−質量移動ライン温度:280℃
−MS四重極温度:200℃、MSソース温度:250℃
−溶媒遅延:18.5分
【0030】
溶解性試験:アルキルトリチルフェニルエーテルの溶解特性を、0.1グラムの試験試料を0.9グラムの溶媒と混合することによって決定した。混合物を60℃に数分間温め、均質な溶液にした。溶液を室温に再び冷却し、次いでこれらを−10℃の冷凍庫に配置した。溶液を、結晶化が発生しているかどうかを見るために毎日チェックした。評価された溶媒は、ADVASOL 200H(Advanced Aromaticsからの混合芳香族溶媒)、ADVASOL 200H ND(Advanced Aromaticsからのナフタレンの少ない混合芳香族溶媒)、シクロヘキサン、及びo−sec−ブチルフェノール(OSBP)であった。溶解性データを、以下の表5に概説する。
【0031】
評価概要:アルキルトリチルフェニルエーテルのGC保持時間、GC/MSフラグメンテーション及び溶解性性能の結果は、全てが燃料マーカーとしての用途に好ましかった。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】