特許第6333363号(P6333363)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333363流体保管タンクを断熱するための自立式ケースおよびこのようなケースの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333363
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】流体保管タンクを断熱するための自立式ケースおよびこのようなケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20180521BHJP
   B65D 90/02 20060101ALI20180521BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20180521BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F17C3/04 E
   B65D90/02 B
   B63B25/08 N
   B63B25/16 P
   B63B25/16 F
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-517651(P2016-517651)
(86)(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公表番号】特表2016-524678(P2016-524678A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】FR2014051211
(87)【国際公開番号】WO2014195602
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】1355271
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペロー オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】デルトル ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ドラノエ セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ウヴラール フローラン
(72)【発明者】
【氏名】キャピテーヌ ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー ニコラス
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−137421(JP,A)
【文献】 特開2007−168397(JP,A)
【文献】 特開平04−279334(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175526(JP,U)
【文献】 米国特許第03331174(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
B63B 25/08
B63B 25/16
B65D 90/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体密封膜を備えた流体保管タンクに対して断熱を実現することが意図された自立式ケース(3、7)を製造するための方法であって、
−ベースパネル(10)およびカバーパネル(11)を供給するステップと、
−複数の担持ウェブ(14)を製造するステップであって、各々の担持ウェブ(14)に関して、
○繊維強化プラスチック母材を含む複合材料を金型(21)内に配置すること、
○前記担持ウェブ(14)を前記ベースパネル(10)および/または前記カバーパネル(11)に固定することが意図された固定要素(22、23、27、29)を前記金型(21)の内部に挿入すること、および
○複合材料を成形し、このステップにおいて前記固定要素(22、23、27、29)が前記担持ウェブ(14)の集合の中に据えられることを含むステップと、
−前記ベースパネル(10)および前記カバーパネル(11)が前記ケース(3、7)の厚さの方向に離間され前記担持ウェブ(14)が厚さ方向に延在するように、前記ベースパネル(10)と前記カバーパネル(11)との間に前記担持ウェブ(14)を介挿し、前記固定要素(22、23、27、29)を利用して前記担持ウェブ(14)を前記ベースパネル(10)および/または前記カバーパネル(11)に固定するステップと、
−前記担持ウェブ(14)の間に形成された複数の区画(15)に熱絶縁ライニングによってライニングを施すステップとを含む製造方法。
【請求項2】
担持ウェブ(14)の製造において、
−複合材料の複数のプレートが前記金型(21)の中に配置され、
−前記固定要素(22、23、27、29)が、複合材料の2つの隣接するプレート間に配置される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
流体密閉膜を備えた流体保管タンクを断熱するように意図された自立式ケース(3、7)であって、
−前記ケース(3、7)の厚さ方向に離間されたベースパネル(10)およびカバーパネル(11)と、
−前記ベースパネル(10)と前記カバーパネル(11)との間に介挿され、複数の区画(15)を画定するように厚さ方向に延在する複数の担持ウェブ(14)と、
−前記担持ウェブ(14)の間に配置された前記区画(15)の内部に延在する熱絶縁ライニングとを備え、
前記担持ウェブ(14)は、複合材料を成形することによって製造され、この複合材料は繊維強化熱可塑性母材を含み、前記ベースパネル(10)および/または前記カバーパネル(11)に固定することを目的としそれぞれの成形ステップにおいて前記担持ウェブ(14)の集合の中に据えられる固定要素(22、23、27、29)を有する自立式ケース(3、7)。
【請求項4】
前記固定要素が、前記担持ウェブ(14)の集合の中に据えられる先のとがった金属ロッド(22)であり、前記金属ロッド(22)の各々が前記ベースパネル(10)または前記カバーパネル(11)の中に埋め込まれる、請求項3に記載のケース(3、7)。
【請求項5】
前記固定要素が、ねじ山付きの内孔を備えたブシュ(27)であり、各々が、前記ベースパネル(10)または前記カバーパネル(11)を通過するねじ山付きの要素(28)と協働する、請求項3に記載のケース(3、7)。
【請求項6】
前記固定要素が、前記担持ウェブ(14)の集合の中に据えられる木製の薄板(29)であり、前記木製の薄板の各々が、前記ベースパネル(10)または前記カバーパネル(11)に当接して固定される、請求項3に記載のケース(3、7)。
【請求項7】
前記木製の薄板(29)が、ステープルによって前記ベースパネルまたは前記カバーパネルに当接して固定される、請求項6に記載のケース(3、7)。
【請求項8】
前記固定要素が、L字型の固定タブ(23)であり、各々が前記担持ウェブ(14)の集合に埋め込まれた翼(24)と、前記ベースパネル(10)または前記カバーパネル(11)に当接して延在し前記ベースパネル(10)または前記カバーパネル(11)に固定されるねじ(26)の通過を可能にする開口が備わった翼(25)とを備える、請求項3に記載のケース(3、7)。
【請求項9】
前記担持ウェブ(14)が、前記ベースパネル(10)および前記カバーパネル(11)それぞれに面して配置された前記担持ウェブ(14)の2つの縁部に沿って延びる負荷分散プレート(16a、16b)を有し、前記ベースパネルおよび/または前記カバーパネルのための前記固定要素(22、23、27、29)が、前記負荷分散プレート(16a、16b)において前記担持ウェブ(14)の集合の中に据えられる、請求項3から8のいずれか一項に記載のケース(3、7)。
【請求項10】
前記担持ウェブ(14)が、複数の波形を有し、その軸が、前記ベースパネル(10)および前記カバーパネル(11)に垂直に延びる、請求項3から9のいずれか一項に記載のケース(3、7)。
【請求項11】
互いに隣り合って配置された請求項3から10のいずれか一項に記載の複数のケース(3、7)を備える断熱バリア(2、6)と、前記断熱バリアにもたれる密閉膜(5、9)とを備えた流体密封で断熱された流体保管タンク。
【請求項12】
流体を輸送するための船(70)であって、二重船郭(72)と、前記二重船郭内に配置された請求項11に記載のタンク(71)とを備える船(70)。
【請求項13】
流体が、絶縁されたパイプライン(73、79、76、81)を通って浮動式または陸上ベースの保管設備(77)から前記船のタンク(71)に、または前記船のタンク(71)から前記浮動式または陸上ベースの保管設備(77)に伝えられる、請求項12に記載の船(70)に積載および荷降ろしするための方法。
【請求項14】
請求項12に記載の船(70)と、前記船の船郭内に設置された前記タンク(71)を浮動式または陸上ベースの保管設備(77)に接続するように配置された断熱されたパイプライン(73、79、76、81)と、前記断熱パイプラインを通って、前記浮動式または陸上ベースの保管設備から前記船のタンクに、または前記船のタンクから前記浮動式または陸上ベースの保管設備に流体を推進させるポンプとを備える、流体を移動させるためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温流体などの流体を保管および/または輸送することを目的とした、膜を備えた流体密封であり断熱されたタンクの分野に関する。
【0002】
膜を備えた流体密封で断熱されたタンクは特に、およそマイナス162℃前後で大気圧において保管される液化天然ガス(LNG)の保管に使用される。このようなタンクは、陸上に設置される、または浮動式設備に設置される場合がある。浮動式設備の場合、タンクは、液化天然ガスの輸送、または浮動式設備の推進力のための燃料として機能する液化天然ガスを収容すること、が意図される場合もある。
【背景技術】
【0003】
引例FR 2 877 639は、タンク壁を備えた流体密封で断熱されたタンクが、浮動式設備の支持構造に固定され、タンクの内側から外側に厚みの方向で、液化天然ガスと接触することが意図された一次流体密封バリア、一次絶縁バリア、二次流体密封バリア及び支持構造にしっかりと固定された二次絶縁バリアを連続して提示することを記載している。
【0004】
絶縁バリアは、複数の隣接する平行六面体の熱絶縁ケースを備える。平行六面体のケースは、合板ベースパネルと、合板カバーパネルと、ベースパネルとカバーパネルの間に介挿された複数の担持ウェブとを備える。担持ウェブは、波形になっており、ベースおよびカバーパネルに直交する方向で圧縮力に対する優れた抵抗力を保証するために複合材料から形成され、これによりタンク内に含まれる液体によって及ぼされる水圧に抵抗する。ケースはまた、担持ウェブの間に配置される区画の内側に延在する熱絶縁ライニングで満たされる。
【0005】
担持ウェブは、接着、ステープル留めまたは封入作業によって前記ベースおよびカバーパネルに結合される。しかしながら担持ウェブをベースパネルおよびカバーパネルに結合するための方法のいずれも、信頼性および/または組み立ての単純さの点において十分に満足のいくものではない。特に、この種の組み立てに通常利用されるステープル留めのシステムは、担持ウェブ材料の複合的な性質を鑑みて望ましくない。実際、ステープルによって複合材料の壁をベースおよびカバーパネルに固定することは、ウェブの強度を低下させる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】FR 2 877 639
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が根拠とする概念は、流体保管タンクを断熱するための自立式のケースを製造するための方法を提供することであり、この場合、担持ウェブをベースおよび/またはカバーパネルへと固定することは、単純かつ信頼できる方法で達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によると、本発明は、流体密封膜を備えた流体保管タンクに関して断熱を実現するように意図された自立式のケースを製造するための方法を提供しており、前記方法は、
−ベースパネルおよびカバーパネルを供給するステップと、
−複数の担持ウェブを製造するステップであって、各々の担持ウェブに関して
○繊維強化プラスチック母材を含む複合材料を金型内に配置すること、
○担持ウェブをベースパネルおよび/またはカバーパネルに固定するように意図された固定要素を金型の内部に挿入すること、および
○複合材料を成形し、このステップにおいて固定要素が前記担持ウェブの集合の中に据えられることを含むステップと、
−ベースパネルおよびカバーパネルがケースの厚さの方向に離間され、担持ウェブが厚さ方向に延在するように、ベースパネルとカバーパネルの間に担持ウェブを介挿し、前記固定要素を利用して担持ウェブをベースパネルおよび/またはカバーパネルに固定するステップと、
−担持ウェブの間に配置された複数の区画に熱絶縁ライニングによってライニングを施すステップとを含む。
【0009】
よって、担持ウェブは、固定要素が担持ウェブの構造上の完全性を損なわないため、信頼できる方法でベースパネルおよび/またはカバーパネルに結合させることができ、その強度がベースパネルおよび/またはカバーパネルに固定することによって低下しない。
【0010】
特定の一実施形態によると、方法は、担持ウェブの製造において、
−複合材料の複数のプレートが金型の中に配置され、
−固定要素が複合材料の2つの隣接するプレートの間に配置されることを実現する。
【0011】
一実施形態によると、複合材料は、熱形成または熱圧縮によって形成される。
【0012】
一実施形態によると、本発明はまた、流体密封膜を備えた流体保管タンクを断熱するように意図された自立式のケースを提供し、前記ケースは、
−ベースパネルおよびカバーパネルと、
−前記ベースパネルと前記カバーパネルとの間に介挿され、複数の区画を画定するように厚さ方向に延在する複数の担持ウェブと、
−担持ウェブの間に配置された前記区画の内部に延在する熱絶縁ライニングとを備え、
担持ウェブは、複合材料を成形することによって製造され、この複合材料は繊維強化熱可塑性母材を含み、ベースパネルおよび/またはカバーパネルに固定することを目的としそれぞれの成形中において担持ウェブの集合の中に据えられる要素を有する。
【0013】
これらの実施形態によると、このようなケースは、以下の特徴の1つまたは複数を含む可能性がある。
−固定要素は、担持ウェブの集合の中に据えられる先のとがった金属ロッドであり、各々の金属ロッドがベースパネルまたはカバーパネルの中に埋め込まれる。
−固定要素は、ねじ山付きの内孔を備えたブシュであり、各々が、ベースパネルまたはカバーパネルを通過するねじ山付きの要素と協働する。
−固定要素は、担持ウェブの集合の中に据えられる木製の薄板であり、各々の木製の薄板は、ベースパネルまたはカバーパネルに当接して固定される。
−木製の薄板が、ステープルによってベースパネルまたはカバーパネルに当接して固定される。
−固定要素はL字型の固定タブであり、各々が担持ウェブの集合に埋め込まれた翼と、ベースパネルまたはカバーパネルに当接して延在しベースパネルまたはカバーパネルに固定されるねじの通過を可能にする開口が備わった翼とを備える。
−担持ウェブは、ベースパネルおよびカバーパネルそれぞれに面して配置された前記担持ウェブの2つの縁部に沿って延びる負荷分散プレートを有し、ベースパネルおよび/またはカバーパネルのための固定要素が、負荷分散プレートにおいて担持ウェブの集合の中に据えられる。
−担持ウェブは、複数の波形を有し、その軸は、ベースパネルおよびカバーパネルに垂直に延びる。
【0014】
一実施形態によると、本発明はまた、互いに隣り合って配置された上記に挙げた複数のケースを備える断熱バリアと、断熱バリアにもたれる密閉膜とを備えた流体密封で断熱された流体保管タンクを提供する。
【0015】
このようなタンクは、例えばLNGを保管するための陸上ベースの保管設備の一部を形成する場合がある、あるいは沿岸の水中または沖合の浮動構造、具体的にはLNGタンカー、浮動式の保管および再ガス化ユニット(FSRU)、浮動式の製作物、保管および陸揚げユニット(FPSO)およびその他に設置される場合もある。
【0016】
一実施形態によると、流体を輸送するための船は、二重船郭と、二重船郭内に配置された上記に記載したタンクとを備える。
【0017】
一実施形態によると、本発明はまた、このような船に積載したり、荷降ろししたりするための方法を提供し、この場合流体は、絶縁されたパイプラインを通って浮動式または陸上ベースの保管設備から船のタンクに、または船のタンクから浮動式または陸上ベースの保管設備に伝えられる。
【0018】
一実施形態によると、本発明はまた、流体を移動させるためのシステムを提供し、該システムは、前記船と、船郭内に設置されたタンクを浮動式または陸上ベースの保管設備に接続するように配置された絶縁されたパイプラインと、絶縁パイプラインを通って浮動式または陸上ベースの保管設備から船のタンクに、または船のタンクから浮動式または陸上ベースの保管設備に流体を推進させるポンプとを備える。
【0019】
本発明は本発明の複数の特定の実施形態の以下の記載からさらに適切に理解され、そのさらなる目的、詳細および利点がより明らかになると思われ、これは添付の図面を参照して、単なる例示として提示されており、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態によるタンク壁の簡素化された斜視図である。
図2図1からのタンク壁の絶縁ケースの簡素化された平面図である。
図3】担持ウェブの側面図である。
図4図3の面IV−IVに沿った断面図である。
図5】担持ウェブの製造のステップを示す図である。
図6】担持ウェブの製造のステップを示す図である。
図7】第1の実施形態による、担持ウェブのベースパネルに対する組み立てを示す断面図である。
図8】第2の実施形態による、担持ウェブのベースパネルに対する組み立てを示す断面図である。
図9】第3の実施形態による、担持ウェブのベースパネルに対する組み立てを示す断面図である。
図10】第4の実施形態による、担持ウェブのベースパネルに対する組み立てを示す断面図である。
図11図10の組立体を示す斜視図である。
図12】第5の実施形態による、担持ウェブのカバーパネルに対する組み立てを示す線図の断面図である。
図13】第6の実施形態による、担持ウェブのカバーパネルに対する組み立てを示す断面図である。
図14図13の組立体の斜視図である。
図15】第7の実施形態による、担持ウェブのカバーパネルおよびベースパネルに対する組み立てを示す絶縁ケースの断面図である。
図16図15の第7の一変形形態を示す断面図である。
図17】第8の実施形態による、ウェブのベースパネルに対する組み立ての斜視図であり、担持ウェブが透明に示される図である。
図18図17における組立体の一変形形態を示す線図の断面図である。
図19】第9の実施形態による、担持ウェブのベースパネルに対する組み立ての上からの図である。
図20図19の組立体の上からの図である。
図21】第10の実施形態による、担持ウェブのベースパネルに対する組み立ての上からの図である。
図22図21の組立体の側面図である。
図23図21の組立体の断面図である。
図24】第11の実施形態による、担持ウェブのベースパネルに対する組み立てを示す斜視図である。
図25図24の組立体の上からの図である。
図26図24の組立体の側面図である。
図27図24の組立体の断面図である。
図28】LNGタンカーのタンクおよびこのタンクの積載および荷降ろし用ターミナルの簡素化された線図による描写である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、流体密封で断熱されたタンクの壁を示している。このようなタンクの一般的な構造は、よく知られており、多面体の形態を有する。よってタンクの全ての壁は同様の一般的な構造を有すると仮定して、タンク壁のある区域のみを記載する。
【0022】
タンクの壁は、タンクの外側から内側に、支持構造1と、互いに隣接して支持構造1上に配置され、二次保持要素4によってそこにしっかりと固定された熱絶縁ケース3から形成された二次断熱バリア2と、ケース3によって保持される二次密閉膜5と、互いに隣り合わせに配置され一次保持要素8によって二次密閉膜5にしっかりと固定された熱絶縁ケース7によって形成される一次断熱バリア6と、ケース7によって保持されタンク内に含まれる極低温流体と接触することが意図された一次密閉膜9とを備える。
【0023】
支持構造1は、詳細には自立式金属プレートである、またはより一般的には好適な機械特性を備えた任意のタイプの剛性の仕切りであってよい。支持構造は具体的には、船郭またな二重船郭によって構成されてよい。支持構造は、タンクの全体の形状を画定する複数の壁を備える。
【0024】
一次および二次密閉膜9および5は、例えば隆起した縁部を備えた金属条板の連続するストリップから形成され、前記条板は、それぞれの隆起した縁部によってケース3、7のカバーに固定された平行な溶接支持部に溶接される。金属条板は、例えばInvar(登録商標)で作製され、すなわち鉄とニッケルの合金で作製され、その膨張係数は、1.2 .10−6から2.10―6−1の間である。
【0025】
二次断熱バリア2のケース3と、一次断熱バリア6のケース7は、同一のまたは異なる構造を有する場合があり、同一または異なる寸法を有する場合がある。
【0026】
図2を参照して、二次断熱バリア2および/または一次断熱バリア6のケース3、7の全体構造を記載することにする。ケース3、7は実質的に、平行六面体の様な矩形の形態を有する。ケース3、7は、ベースパネル10と、カバーパネル11とを備え、これらは互いに平行である。ベースパネル10およびカバーパネル11は、例えば合板でできている。その内側面に、カバーパネル11は、密閉膜の金属条板の溶接支持部を収容するための溝12を有する。
【0027】
複数のスペーサ要素が、ベースパネル10とカバーパネル11の間に、そこに直交するように介挿される。複数のスペーサ要素は、まず2つの対向する側壁12、13を備え、次に複数の担持ウェブ14を備える。担持ウェブ14は、2つの側壁12、13間に前記側壁12、13に直交する方向で互いに平行して配置される。
【0028】
熱絶縁ライニングを収容するための区画15が、担持ウェブ14の間に設けられる。
【0029】
熱絶縁ライニングは、好適な断熱特性を備えたいずれの材料で作製されてもよい。例えば熱絶縁ライニングは、パーライ、ガラスウール、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、エーロゲルまたはその他などの材料から選択される。
【0030】
担持ウェブ14は、それぞれの概ね長手方向のいずれかの側に対して突起を有するように波形になっている。各々の波形はよって、ベースパネル10およびカバーパネル11に直交する軸に沿って延在する。示される実施形態において、波形は、実質的に正弦波である。しかしながら他の形態の波形も可能である。例えば、波形は、具体的には三角形の歯または矩形のノッチの形態を採る場合もある。その形状のおかげで、このような波形になる担持ウェブ14は、大きな厚さを必要とせず、高い座屈耐性を有する。周期的な構造を備えた波形によって圧縮強度の優れた均一性を可能にするが、特定の局所化された機械的要件を満たすために非周期的な波形を設けることも可能である。
【0031】
図3および図4は、担持ウェブ14を図示している。ベースパネル10およびカバーパネル11に沿って延びるその縁部に沿って、担持ウェブ14は、負荷分散プレート16a、16bを備える。上部プレート16aは、カバーパネル11にもたれるように意図された平坦な面を有し、下部プレート16bは、ベースパネル10にもたれるように意図された平坦な面を有する。プレート16a、16bは、2つのプレート16a、16b間に延在するその主要な部分において担持ウェブ14の壁の厚さより大きな幅を有する。よって負荷分散プレート16a、16bは、担持ウェブ14と、ベースパネル10およびカバーパネル11の間により大きな支持面を提供することによって、特定の区域に応力が集中するのを阻止する。負荷分散プレートは、図3または図4に示されるように平行六面体の形態を有する場合がある。このケースにおいて、プレート16a、16bの幅は、波形の振幅と等しくなってよい。図17図20または図24に示される他の実施形態において、負荷分散プレート16a、16bは、それ自体が波形を有する場合がある。
【0032】
担持ウェブは、ガラス繊維強化熱可塑性母材を有する複合材料で作製される。
【0033】
担持ウェブ14の製造方法を図5および図6に関連して記載する。
【0034】
図5に示される第1の段階において、中間製品が、複合材料のプレートの形態で製造される。これを行なうために、二重ベルトのプレス17にガラス繊維18および熱可塑性樹脂19が供給される。熱可塑性樹脂19は、押出しフィルムまたは粉体の形態で二重ベルトプレス17に装填されてよい。ガラス繊維18は、所望の長さに切断されたガラス繊維コイルの形態で提供される。熱可塑性樹脂19およびガラス繊維18は、二重ベルトプレス17内で併せて薄層にされる。二重ベルトプレス17からの出口において、切断デバイスによって複数のプレートを得ることが可能である。一実施形態において熱可塑性樹脂はポリプロピレンをベースとしている。
【0035】
このようなプレートは、熱可塑性母材と、ガラス繊維フェルトまたはマットとでできた複合的な構造を有する。このような複合的な構造は、ガラス繊維マット強化熱可塑性物質に対してGMTと呼ばれる。
【0036】
その後図5に示されるように複合材料のプレートが形成される。これを行なうために、複合材料のプレートはオーブン20で加熱され、その後金型21の中に配置され、そこでそれらは圧力の印加によって成形されることになる。このようにして形成された担持ウェブはその後冷却される。担持ウェブ14は、このように、複合材料プレートを加熱し、その後加圧下で深絞りすることによって熱圧縮によって形成される。別の実施形態において、担持ウェブはまた、熱形成によって、すなわち温度と真空の条件下で複合材料プレートのフラックスによって製造される場合もある。
【0037】
図7から図11に示される実施形態において、担持ウェブ14をベースパネル10および/またはカバーパネル11に固定するための要素が、成形作業中に金型21に挿入される。よって担持ウェブ14は、固定要素を覆うように成形される。換言すると固定要素は、それぞれの成形作業において担持ウェブ14の集合の中に据えられる。
【0038】
一実施形態において、担持ウェブ14は、複数の複合材料プレートのスタックから作製され、固定要素は、2つの隣接する複合材料プレート間に挟まれるように金型21内に配置される。よって固定要素は、担持ウェブ14の集合5の中に好適に据えられる。
【0039】
図7に示される実施形態において、担持ウェブは、ステープルまたは爪タイプの先のとがった金属ロッド22であり、その成形作業中に担持ウェブ14の集合の中に据えられる。金属ロッド22はベースパネル10に埋め込まれ、これにより担持ウェブ14のベースパネル10に対する固定を確実にする。同様に担持ウェブ14はまた、その縁部に沿ってカバーパネル11に当接するようにこのような金属ロッド22を有し、これは担持ウェブ14の集合の中に据えられ、カバーパネル11に固定される。
【0040】
図8に示される実施形態において、担持ウェブ14の集合の中に据えられる固定要素は、L字型の固定タブ23であり、前記ウェブ14のいずれかの側で側面に配置される。L字型の固定ウェブ23は各々、担持ウェブ14の集合に埋め込まれた第1の翼24と、前記担持ウェブ14の外部に向かって横向きに突出する第2の翼25とを備える。第2の翼25は、ベースパネル10にもたれ、開口が備わっている。ねじ26が前記開口を通過し、担持ウェブ14の固定作業を確実にするためにベースパネル10に固定される。同様にカバーパネル11と協働する担持ウェブ14の縁部が、このようなL字型の固定タブ23と適合される場合もある。
【0041】
図9に示される実施形態において、集合の中に据えられる固定要素は、ねじ山付きの内孔を備えたブシュ27である。ブシュ27は、ベースパネル10内に形成された開口およびブシュ27の反対側の開口を通過するねじ山付き要素、例えばねじ28と協働する。同様に、担持ウェブ14の他方の縁部に、このようなブシュ27が備わる場合もある。
【0042】
図10および図11に示される実施形態において、木製の薄板29が、前記担持ウェブ14の全長にわたって長手方向に、それぞれの負荷分散プレート16a、16bに沿って延在しており、前記14の集合の中に据えられる。木製の薄板29は、矩形断面を有し、カバーパネル11またはベースパネル10にもたれるように意図された平坦な面を備える。一実施形態において、木製の薄板29は、ステープル留めによってカバーパネル11またはベースパネル10に固定される。よって、ステープルが、複合材料の中に直接取り込まれることはない。
【0043】
図12における実施形態において、担持ウェブ14は、カバーパネル10およびベースパネル11と担持ウェブ14のプレート16a、16bの間に挿入された爪板30を利用してベースパネル10およびカバーパネル11に固定される。このような爪板30は、キャリアプレートと、カバーパネル10またはベースパネル11内に設置された第1の連続する爪31と、担持ウェブ14のプレート16a、16b内に設置された第2の連続する爪32とを備える。
【0044】
図13および図14における実施形態において、ベースパネル10およびカバーパネル11に当接するように固定されたレール33によって担持ウェブ14は、ベースパネル10およびカバーパネル11に固定される。レールは、担持ウェブ14のプレート16a、16bを収容するように配置される。レール33は、プレート16a、16bを横方向に誘導することが可能な2つの側部木製ストリップ34によって形成される。側部ストリップ34にもたれる2つの保持ストリップ35によって、負荷分散プレートをベースパネル10およびカバーパネル11に直交する方向に保持することが可能になる。このような組み立てを可能にするために、担持ウェブ14はまず、そのプレート16a、16bをレール33の中に摺動させることによってベースパネル10とカバーパネル11の間に介挿され、その後、担持ウェブ14のセットが位置決めされた際、ケース3、7の側縁部12、13を設置することができる。
【0045】
図15の実施形態は、レール36が、ベースパネル10およびカバーパネル11内に直接設けられた溝によって形成される点で、図13および図14の実施形態と異なる。
【0046】
図16の実施形態において、ベースパネル10およびカバーパネル11内に形成されたレール37は、蟻継ぎの形態を採る。
【0047】
図17および図18の実施形態において、担持ウェブ14は、フック38によって固定され、その一方の湾曲した端部は、担持ウェブのプレートと協働することで、担持ウェブをベースパネル10およびカバーパネル11に当接するように保持する。示されない実施形態において、フック38は、弾性フックであり、「クリッピング」によって弾性式の適合を可能にする。図17に示される実施形態において、フック38は剛性であり、ベースパネル10またはカバーパネル11を通して取り込むことができる木製の楔39を利用して担持ウェブ14を保持するために所定に位置で動かないようにする。
【0048】
図18は、保持フック38が各々、タンクの厚さ方向に、担持ウェブ14から横方向に突出する舌部41のいずれかの側に配置された2つの顎39、40を備える実施形態を示している。
【0049】
図19および図20の実施形態において、担持ウェブ14は、円筒形ロッドを備える固定要素42によってベースパネル10またはカバーパネル11に固定され、この円筒形ロッドは、円筒形ロッドのものより大きな直径を備えたその2つの端部ヘッドにおいて支えている。担持ウェブ14は、円筒形ロッドの直径より大きく、ヘッドの直径より小さい短い寸法を有する長円の穴43を備えた金属性の部品を担持し、前記長円の穴43は、固定要素42のヘッドのものより大きな直径を備えた円形の穴44によって伸張される。同様にベースパネル10または反対側のカバーパネル11は、円形の開口46によって伸張された長円の穴45を有する。パネル10、11の長円の穴45と円形開口46の結合は、担持ウェブ14に設けられた長円の穴43と円形開口44の結合に対して頭−尾結合になるように配置される。組み立てを確実にするために、担持ウェブ14およびベースパネル10またはカバーパネル11によってそれぞれ保持される円形開口44、46が整列されることで、固定要素のヘッドがパネル10、11および金属部品を通り抜けて通過することが可能になる。その後担持ウェブ14がパネル10、11に対して摺動することで、長円の穴45、43の端部において円筒形ロッドを捕える。
【0050】
図21から図23の実施形態において、担持ウェブ14は、ピン47が中を通り抜けるように挿入される開口を有する。ピン47は2つの端部を有し、これらは前記担持ウェブ14のいずれかの側に配置され、ベースパネル10またはカバーパネル11内に固定されたステープル48と協働する溝を有することでピン47の固定を確実にする。
【0051】
図24から図27の実施形態において、木製の楔49が、担持ウェブ14のいずれかの側に配置され、ベースパネル10またはカバーパネル11に固定されることで担持ウェブ14を横方向に楔止めする。示される実施形態において、プレート16a、16bは、波形を有する。よって楔49は、プレート16a、16bの波形と相補的な波形形態を有し、そのため担持ウェブ14のその長手方向における移動を妨げる。最終的に、担持ウェブ14のベースパネル10およびカバーパネル11に直交する方向での移動を妨害するために、楔49は、担持ウェブ14内に配置された相補的な形態の空洞と協働する突出部50を有する場合がある。示される実施形態では、突出部は、蟻継ぎの形態を有する。別の実施形態において、突出部はまた、下部プレート16bより上または上部プレート16aより下に突出することにより、上部プレート16aまたは下部プレート16bをそれぞれ、ベースパネル10またはカバーパネル11に当接して保持する場合もある。
【0052】
担持ウェブ14がカバーパネル11およびベースパネル10に固定された後、担持ウェブ14の間に形成された区画15の中に熱絶縁ライニングを位置決めすることができる。しかしながらこのようなステップが実施される順番は重要ではない。具体的には、熱絶縁ライニングと担持ウェブ14を事前に組み立て、その後、担持ウェブ14をベースパネル10およびカバーパネル11に固定することも可能である。別の実施形態によると、担持ウェブ14をベースパネル10またはカバーパネル11の一方に固定し、その後担持ウェブ14の間に形成された区画15に、例えば発泡体の射出によってライニングを施し、その後ベースパネル10またはカバーパネル11の他方を担持ウェブ14に固定することによって自立式ケースを閉鎖することも可能である。
【0053】
自立式ケースの製造に関する上記に記載した技法は、例えば陸上ベースの設備、または例えばLNGタンカーまたは同様のものなどの浮動構造におけるLNGタンクの一次断熱バリアおよび/または二次断熱バリアを形成するために、様々な種類のタンクにおいて使用される可能性がある。
【0054】
図28を参照すると、LNGタンカー70の簡素化された図面が、船の二重船郭72内に設置された全体的に多面的な形態の流体密封で断熱されたタンク71を示している。タンク71の壁は、タンク内に含まれるLNGと接触することが意図された一次流体密封バリアと、一次流体密封バリアと船の二重船郭72との間に配置された二次流体密封バリアと、一次流体密封バリアと二次流体密封バリアとの間、ならびに二次流体密封バリアと二重船郭72との間にそれぞれ配置された2つの断熱バリアとを備える。
【0055】
それ自体が既知のやり方において、船の上部デッキに配置された積み荷/荷降ろしパイプライン73は、好適なコネクタを利用して浮動式または港ベースのターミナルに接続させることで、LNGの積み荷をタンク71から、またはタンク71へと移動させることができる。
【0056】
図28は、積載および荷降ろしステーション75と、水中パイプライン76と、陸上ベースの設備77とを備える浮動式ターミナルの一例を示す。積載および荷降ろしステーション75は、固定式の沖合設備であり、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78とを備える。可動アーム74は、積載および荷降ろしパイプライン73に接続することができる断熱された可撓性のホース79の束を保持する。配向可能な可動アーム74は、全てのサイズのタンカーに適合させることができる。接続パイプ(図示せず)が、タワー78の内部に延びている。積載および荷降ろしステーション75によって、タンカー70が陸上ベースの設備77から積載されるまたは陸上ベースの設備77へと荷降ろしすることが可能になる。これは、液化ガス保管タンク80と、水中パイプライン76によって積載および荷降ろしステーション75に接続された接続パイプ81とを備える。水中パイプライン76によって、積載または荷降ろしステーション75と陸上ベースの設備77の間で液化ガスを長い距離にわたって、例えば5kmにわたって移動させることが可能になり、これによりLNGタンカー70が積載および荷降ろし作業中海岸から長い距離のところに留まることが可能になる。
【0057】
液化ガスを移動させるのに必要な圧力を形成するために、船70内に搭載されたポンプが使用される、および/または陸上ベースの設備77に設置されたポンプ、および/または積載および荷降ろしステーション75に適合されたポンプが使用される。
【0058】
本発明を複数の特定の実施形態に関連して記載してきたが、それは決してそこに限定されるものではなく、記載される手段の全ての技術的均等物ならびにその組み合わせが本発明の範囲内にあるならば、それらも含む。
【0059】
動詞「備える(comprise)」または「包含する(contain)」または「含む(include)」およびその活用形は、クレームに記述されるもの以外の要素またはステップの存在を除外しない。ステップの要素に関する不定冠詞「a」の使用は、そうでないことが特定されなないかぎり、複数のこのような要素またはステップの存在を除外しない。
【0060】
クレーム中で、括弧内のいかなる参照符号も、クレームの限定として解釈すべきではない。
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