【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [刊行物] ・ 平成26年5月9日発行、信学技報,vol.114,no.36,OCS2014−4,pp.19−24,2014年5月 ・ 平成26年1月27日発行、OpticsExpress,2014.01.27,Vol.22,Issue 2,pages 1971−1980 [学会発表]・ 平成26年5月16日開催、光通信システム研究会2014年5月研究会、機械振興会館地下3階研修2号室 [ウェブサイト] ・ 平成26年4月掲載、http://www7b.biglobe.be.jp/▲〜▼kaz_kikuchi/final−2014_03.pdf ・ 平成26年1月23日掲載、https://www.osapublishing.org/oe/abstract.cfm?uri=oe−22−2−1971
【文献】
Kazuro Kikuchi,Electronic polarization-division demultiplexing based on digital signal processing in intensity-modu,Optics Express,米国,OSA,2014年 1月27日,Vol. 22, Issue 2,pages.1971-1980,<検索日2014.07.31>,インターネット<URL:http://www.opticsinfobase.org/view_article.cfm?gotourl=http%3A
【文献】
菊池和朗,平成25年度研究報告書,平成25年度研究報告,日本,2014年 4月,文献[a3],<検索日2014.07.31>,インターネット<URL:http://www7b.biglobe.ne.jp/~kaz_kikuchi/final-2014_03.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る光学系10を示す図である。光学系10は、送信器100、受信器200、及び伝送路300を備えている。詳細を後述するように、送信器100は、偏波多重多値強度変調(DP−M−IM:Dual Polarization Multilevel Intensity Modulation)信号を出力する。DP−M−IM信号は、伝送路300(例えば、光ファイバ)を介して、受信器200に送られる。受信器200は、DP−M−IM信号を受け付けるとともに、後述するようにDP−M−IM信号を復調する。なお、DP−M−IM信号は、例えば、PAM2(2−level Pulse Amplitude Modulation)又はPAM4(4−level Pulse Amplitude Modulation)である。
【0013】
図2は、
図1に示した送信器100の構成の一例を示す図である。本図に示す例において、送信器100は、クロック110、第1PG(Pattern Generator)122、第2PG124、第1LD(Laser Diode)132、第2LD134、λ/2波長板140、反射板150、及びPBC(Polarization Beam Combiner)160を備えている。
【0014】
第1LD132及び第2LD134は、それぞれ直線偏光を出力する。そして第1LD132の強度変調は、第1PG122によって制御されている。一方第2LD134の強度変調は、第2PG124によって制御されている。この場合に、第1LD132の強度変調及び第2LD134の強度変調は、独立に制御されている。そして本図に示す例では、第1PG122及び第2PG124は、タイミングが共通のクロック110によって制御されている。
【0015】
第1LD132から出力された直線偏光は、PBC160に達する。一方、第2LD134から出力された直線偏光は、λ/2波長板140及び反射板150を介してPBC160に達する。この場合に第2LD134からの偏光は、λ/2波長板140によって、振動面が第1LD132からの偏光に対して90°傾くようになる。そして、第1LD132から出力された直線偏光と第2LD134から出力された直線偏光がPBC160で多重化する。これにより、送信器100からDP−M−IMが出力される。
【0016】
DP−M−IM信号は、送信器100から出力される時点(伝送路300(
図1)に入射する前)において以下のストークスパラメータを有している。
【数1】
ただし、
【数2】
である。δは、x偏波及びy偏波の位相差を示す。そしてストークスベクトル[S
1,in,S
2,in,S
3,in]
Tの大きさは、
【数3】
である。
【0017】
なお、送信器100の構成は、本図に示す例に限定されるものではない。例えば、送信器100に含まれるレーザダイオードの数は1つのみであってもよい。この場合、レーザダイオードから出力される光を分波する。そして分波された光の各々に強度変調を適用する。さらに分波された光の一方をλ/2波長板に通す。その後分波された光を合波する。このような方法であっても、DP−M−IM信号を生成することができる。
【0018】
図3は、
図1に示した受信器200の構成を示す図である。受信器200は、ストークスアナライザ210、クロック230、ADC(Analog−to−Digital Converter)240、及びDSP(Digital Signal Processor)250(信号処理装置)を備えている。
【0019】
ストークスアナライザ210は、DP−M−IM信号のストークスベクトルSを取得するための光学機器である。本図に示す例において、ストークスアナライザ210に入力されたDP−M−IM信号は4つに分岐される。これら4つの信号は、第1PD(Photo Diode)222、第2PD224、第3PD226、及び第4PD228をそれぞれ備える第1ブランチ、第2ブランチ、第3ブランチ、及び第4ブランチに入力される。
【0020】
第1ブランチでは、第1PD222によってDP−M−IM信号のパワーS
0が測定される。第2ブランチでは、信号が偏光子212(角度0°)を介して第2PD224に入力される。このため、第2PD224では、x方向の直線偏波成分強度I
xが測定される。第3ブランチでは、信号が偏光子214(角度45°)を介して第3PD226に入力される。このため、第3PD226では、x軸に対して45°の直線偏波成分強度I
45°が測定される。第4ブランチでは、信号がλ/4波長板216及び偏光子218(角度45°)を介して第4PD228に入力される。このため、第4PD228では、右旋円偏波成分強度I
Rが測定される。
【0021】
以上により求めた成分S
0、I
x、I
45°、及びI
Rを用いて、受信器200側におけるストークスベクトルSは次のように示すことができる。
【数4】
【0022】
第1ブランチ〜第4ブランチに入力された信号は、それぞれ第1PD222〜第4PD228において電気信号に変換される。そしてこれらの電気信号は、ADC240に送られる。さらにADC240に送られた信号は、DSP250に送られる。なお、本図に示す例では、第1PD222から出力された信号がクロック230に送られる。クロック230は、サンプリングのタイミングを決めている。本図に示す例においては、信号のパワーS
0を用いてクロック230が抽出されている。
【0023】
図4は、
図3に示したDSP250(信号処理装置)の構成を示すブロック図である。DSP250は、ストークスベクトル取得部252、偏波状態(SOP:State Of Polarization)追従部254、偏波分離部256、及び識別部258を備えている。
【0024】
ストークスベクトル取得部252は、DP−M−IM信号の受信器200(
図1)における規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を取得する。さらにストークスベクトル取得部252は、DP−M−IM信号のパワーS
0(n)を取得する。SOP追従部254は、基準ベクトルv
0を生成する。基準ベクトルv
0は、DP−M−IM信号の受信器200(
図1)でのSOPが表されるストークス空間(ポアンカレ球)内において規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の変動に応じて規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)に又は規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の反転ベクトル−S(n)/S
0(n)に追従した単位ベクトルである。偏波分離部256は、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)、パワーS
0(n)、及び基準ベクトルv
0に基づいてDP−M−IM信号の送信器100(
図1)におけるx偏波強度|E
x|及びy偏波強度|E
y|を算出する。識別部258は、x偏波強度|E
x|及びy偏波強度|E
y|のそれぞれのレベルを識別する。例えば、DP−M−IM信号がPAM4である場合、識別部258は、x偏波強度|E
x|を4レベルに識別し、かつy偏波強度|E
y|を4レベルに識別する。以下、詳細に説明する。
【0025】
ストークスベクトル取得部252は、ストークスアナライザ210(
図3)及びADC240(
図3)を介してDP−M−IM信号の受信器200側でのストークスベクトルS(n)(式(6))を取得する。本図において、nはサンプルの番号を示している。詳細には、送信器100(
図1)から受信器200(
図1)には、DP−M−IM信号の複数のサンプルが送られている。この場合にストークスベクトル取得部252は、複数のストークスベクトルS(n)を取得している。さらに、ストークスベクトル取得部252は、受信器200側の信号のパワーS
0(n)を取得する。このようにして、ストークスベクトル取得部252は、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を算出する。
【0026】
SOP追従部254は、基準ベクトルv
0を生成する。基準ベクトルv
0は、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)に又は規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の反転ベクトル−S(n)/S
0(n)に追従した単位ベクトルである。基準ベクトルv
0が全く誤差なくベクトル±S(n)/S
0(n)に追従している場合、基準ベクトルv
0は、以下の式によって定義される。
【数5】
行列Uは、伝送路300(例えば、光ファイバ)(
図1)に基づくSOPの変化を示す行列である。なお、本実施形態では、伝送路300での損失を無視することができるほど小さい。このため行列Uは、ノルムを保存したまま、送信器100(
図1)におけるストークス空間の座標を受信器200(
図1)におけるストークス空間の座標に変換している。
【0027】
ただし、伝送路300(
図1)で損失が発生していたとしても、この損失(スカラー量)と行列Uの積によって、ベクトル[1,0,0]
Tを上記のように基準ベクトルv
0に変換することができる。この場合においても、行列Uは、直交行列となる。このため、伝送路300で損失が発生していたとしても、下記のアルゴリズムは成立する。
【0028】
式(7)に示すように、基準ベクトルv
0は、ベクトル[1,0,0]
Tを行列Uによって変換することで得られるベクトルである。この場合、ベクトル[1,0,0]
Tは、DP−M−IM信号の送信器100(
図1)側におけるx偏波(水平直線偏光)を示している。このため、基準ベクトルv
0は、このx偏波の受信器200(
図1)側におけるSOPを示す単位ベクトルとなる。
【0029】
さらに、行列Uを用いることにより、DP−M−IM信号の送信器100(
図1)側におけるストークスベクトルS
inとDP−M−IM信号の受信器200(
図1)側におけるストークスベクトルSは、次のように関係づけられる。
【数6】
【0030】
さらに、式(7),(8)より、以下の関係が導かれる。
【数7】
【0031】
偏波分離部256は、以下の式に基づいて、DP−M−IM信号の送信器100(
図1)側におけるx偏波強度|E
x|及びy偏波強度|E
y|を算出する。言い換えると、偏波分離部256によって、DP−M−IM信号の偏波多重が分離されている。なお、以下の式は、式(1),(5),(9)を用いて導かれる。
【数8】
【0032】
図5は、
図4に示したSOP追従部254の構成を示すブロック図である。SOP追従部254は、強度識別部262、規格化ストークスベクトル算出部264、規格化内積算出部266、更新判断部268、及び更新部270を備えている。
【0033】
強度識別部262は、ストークスアナライザ210(
図3)、ADC240(
図3)、及びストークスベクトル取得部252(
図4)を介して、DP−M−IM信号のパワーS
0(n)(式(5))を取得する。後述するように、規格化ストークスベクトル算出部264が、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を算出する。この場合、S
0(n)が0であると規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を算出することができない。このため、強度識別部262は、適当な閾値S
th(S
th>0)を設定している。そしてS
0(n)>S
thの場合、S
0(n)を規格化ストークスベクトル算出部264に送る。これにより、S
0(n)=0となる信号が規格化ストークスベクトル算出部264に送られることが防止される。
【0034】
規格化ストークスベクトル算出部264は、強度識別部262を介してS
0(n)を取得し、かつストークスアナライザ210(
図3)、ADC240(
図3)、及びストークスベクトル取得部252(
図4)を介して、DP−M−IM信号の受信器200側でのストークスベクトルS(n)(式(6))を取得する。これにより、規格化ストークスベクトル算出部264は、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を算出する。その後、規格化ストークスベクトル算出部264は、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を規格化内積算出部266に送る。
【0035】
規格化内積算出部266は、以下の式によって定義される内積u(n)を算出する。
【数9】
【0036】
式(12)においてvは、仮基準ベクトルを示す。仮基準ベクトルvは、DP−M−IM信号の受信器200(
図1)でのSOPが表されるストークス空間(ポアンカレ球)内における単位ベクトルである。後述するように、仮基準ベクトルvは、更新部270によって更新され、基準ベクトルv
0に収束する。具体的には、仮基準ベクトルvを規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)に又は規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の反転ベクトル−S(n)/S
0(n)に追従させることで基準ベクトルv
0を生成する。
【0037】
仮基準ベクトルvが基準ベクトルv
0に収束している場合、式(1),(5),(9),(12)より、u(n)は、以下の式を満たす。
【数10】
【0038】
DP−M−IM信号において、x偏波強度|E
x|
2及びy偏波強度|E
y|
2は、量子化されている。例えば、DP−M−IM信号がPAM4である場合、x偏波強度|E
x|
2及びy偏波強度|E
y|
2の各々は、4レベルとなる。具体的には、x偏波強度|E
x|
2は、例えば、|E
x|
2=0,1,3,6となり得、y偏波強度|E
y|
2は、例えば、|E
y|
2=0,1,3,6となり得る。そしてこの場合、内積u(n)がとり得る値は、式(13)から明らかなように、±1,±1/2,±1/3,±5/7,0となる。
【0039】
式(13)から明らかなように、u(n)=+1になる場合は、|E
y|
2=0の場合である。この場合、DP−M−IM信号は、送信器100(
図1)側において、x偏波成分のみを有することになる。同様に、式(13)から明らかなように、u(n)=−1になる場合は、|E
x|
2=0の場合である。この場合、DP−M−IM信号は、送信器100(
図1)側において、y偏波成分のみを有することになる。
【0040】
以上によれば、内積u(n)が+1又は−1となる仮基準ベクトルvを追尾することで、DP−M−IM信号のSOPを追尾することができる。詳細には、内積u(n)が+1にも−1にもならない場合は、送信器100(
図1)からx偏波及びy偏波の両方が送られていることになる。この場合のDP−M−IM信号のSOPは、x偏波及びy偏波の位相雑音によってランダムに変動する。この場合、DP−M−IM信号のSOPを確定することができない。一方、内積u(n)が+1又は−1である場合、送信器100(
図1)からx偏波及びy偏波のいずれか一方のみが送られていることになる。この場合、DP−M−IM信号のSOPを追尾することができる。
【0041】
本図に示す例では、更新判断部268及び更新部270を用いて、DP−M−IM信号のSOPを追尾する。詳細には、更新判断部268が、規格化内積算出部266から内積u(n)を取得する。そして更新判断部268は、内積u(n)に基づいて、仮基準ベクトルvを更新するか否かを判断する。そして更新判断部268は、仮基準ベクトルvを更新することを判断した場合、仮基準ベクトルvを更新することを指示する情報を更新部270に送信する。そして更新部270は、上記した情報を受信した場合、仮基準ベクトルvを更新する。その後更新部270は、更新した仮基準ベクトルvを規格化内積算出部266に送る。上記の場合、更新部270は、例えば、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)又は規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の反転ベクトル−S(n)/S
0(n)を目標値とする追従制御を実施する。
【0042】
図6は、仮基準ベクトルvの更新方法を説明するための図である。まず、ストークスベクトル取得部252(
図4)がストークスベクトルS(n)を取得する。次いで、規格化ストークスベクトル算出部264(
図5)が、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を算出する。次いで、規格化ストークスベクトル算出部264は、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)を規格化内積算出部266(更新判断部268)(
図5)及び更新部270(
図5)に送る。
【0043】
次いで、規格化内積算出部266は、仮基準ベクトルvを設定する。後述するように、仮基準ベクトルvは、更新部270によって更新される。そしてこの場合、更新した仮基準ベクトルvは、仮基準ベクトル保持部272に保持される。規格化内積算出部266は、仮基準ベクトル保持部272に仮基準ベクトルが保持されている場合、仮基準ベクトル保持部272から仮基準ベクトルvを読み出す。一方、仮基準ベクトルvが仮基準ベクトル保持部272に保持されていない場合、規格化内積算出部266は、仮基準ベクトルvとして適当な初期ベクトルを設定する。
【0044】
次いで、規格化内積算出部266は、内積u(n)を算出する。次いで、更新判断部268は、内積u(n)に基づいて、仮基準ベクトルvを更新するか否かを判断する。次いで、更新判断部268は、仮基準ベクトルvを更新することを判断した場合、仮基準ベクトルvを更新することを指示する情報を更新部270に送る。
【0045】
次いで、更新部270は、上記した情報を更新判断部268から受信した場合、仮基準ベクトルvを更新する。そしてこの場合は、更新した仮基準ベクトルvを規格化内積算出部266(更新判断部268)に送る。
【0046】
詳細には、更新判断部268は、内積u(n)が正の第1閾値+u
th,1(u
th,1>0)以上である場合(u(n)≧+u
th,1)、仮基準ベクトルvを更新することを指示する第1更新情報を更新部270に送信する。同様に、更新判断部268は、内積u(n)が負の第2閾値−u
th,2(u
th,2>0)以下である場合(u(n)≦−u
th,2)、仮基準ベクトルvを更新することを指示する第2更新情報を更新部270に送信する。一方、更新判断部268は、内積u(n)が第1閾値+u
th,1未満かつ負の第2閾値−u
th,2より大きい場合(−u
th,2<u(n)<+u
th,1)、仮基準ベクトルvを更新しないことを指示する第3更新情報を更新部270に送信する。
【0047】
より詳細には、上記したように、送信器100(
図1)から受信器200(
図1)には、DP−M−IM信号の複数のサンプルが送られる。そして各サンプルが受信器200(
図1)に送られるたびに、更新判断部268は、内積u(n)に基づいて、仮基準ベクトルvを更新するか否かを判断する。そして更新判断部268は、仮基準ベクトルvを更新することを判断した場合は、上記した第1更新情報又は第2更新情報を更新部270に送信する。一方、更新判断部268は、仮基準ベクトルvを更新しないことを判断した場合は、上記した第3更新情報を更新部270に送信する。
【0048】
更新部270は、以下の式に基づいて、仮基準ベクトルvを更新する。
【数11】
【0049】
式(14)は、例えば、適応アルゴリズムに用いられる式である。この場合、μはステップサイズパラメータに相当する。そしてεS(n)/S
0(n)−v(n)は誤差信号に相当する。さらにu(n)≧+u
th,1の場合、ε=+1であり、u(n)≦−u
th,2の場合、ε=−1である。なお、μが小さい場合、仮基準ベクトルvを収束させるための時間が長いものとなる。一方でこの場合、基準ベクトルのS/N比が高いものとなる。
【0050】
更新部270は、上記した第1更新情報を更新判断部268から受信した場合は、ε=+1として式(12)に基づき、仮基準ベクトルvを更新する。この場合(u(n)≧+u
th,1)、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)と仮基準ベクトルvのなす角が鋭角である。これにより、これらのベクトルの差に基づいて仮基準ベクトルvを修正することで、仮基準ベクトルvを規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)と同じ方向に向かせることができる。
【0051】
更新部270は、上記した第2更新情報を更新判断部268から受信した場合は、ε=−1として式(12)に基づき、仮基準ベクトルvを更新する。この場合(u(n)≦−u
th,2)、規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)と仮基準ベクトルvのなす角が鈍角である。これにより、これらのベクトルの和に基づいて仮基準ベクトルvを修正することで、仮基準ベクトルvを規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の反転ベクトル−S(n)/S
0(n)と同じ方向に向かせることができる。
【0052】
更新部270は、上記した第3更新情報を更新判断部268から受信した場合は、仮基準ベクトルvを更新しない。言い換えると、次のサンプルが受信器200(
図1)に送られるまで、仮基準ベクトルvを保持する。そして、次のサンプルに基づいて更新判断部268が上記した第1更新情報又は第2更新情報を更新部270に送った場合は、更新部270は、上記と同様にして、仮基準ベクトルvを更新する。一方、次のサンプルに基づいて更新判断部268が上記した第3更新情報を再び送った場合は、仮基準ベクトルvは引き続き保持される。
【0053】
なお、SOPの変動速度は、DP−M−IM信号のビットレートよりもかなり低いものである。このため、受信器200(
図1)にサンプルが送られるごとに仮基準ベクトルvを更新しなくても、SOPを追尾することは可能である。
【0054】
第1閾値+u
th,1は、+1よりも小さい値であり、かつ+1に近い値である。一方、第2閾値−u
th,2は−1よりも大きい値であり、かつ−1に近い値である。より詳細には、第1閾値+u
th,1は、例えば、仮基準ベクトルvが基準ベクトルv
0に収束している場合に内積u(n)がとり得る値のうち+1に最も近い値(PAM4の上記した例であれば、+5/7)よりも大きい値である。一方、第2閾値−u
th,2は、例えば、仮基準ベクトルvが基準ベクトルv
0に収束している場合に内積u(n)がとり得る値のうち−1に最も近い値(PAM4の上記した例であれば、−5/7)よりも小さい値である。
【0055】
適当な第1閾値+u
th,1を設定した場合、仮基準ベクトルvを効率よく規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)と同じ方向に収束させることができる。同様に、適当な第2閾値−u
th,2を設定した場合、仮基準ベクトルvを効率よく規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の反転ベクトル−S(n)/S
0(n)と同じ方向に収束させることができる。一方でこのような閾値を定めても、仮基準ベクトルvの初期ベクトルがu(n)≧+u
th,1を満たし、又はu(n)≦−u
th,2を満たすとは限らない。このため、DSP250は、下記の処理を実施してもよい。
【0056】
まず、規格化内積算出部266が、仮基準ベクトルvと規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の内積を算出する。そして規格化内積算出部266は、この内積を更新判断部268に送る。そしてこの内積が第1閾値+u
th,1未満かつ第2閾値−u
th,2より大きい場合、更新判断部268は、上記した仮基準ベクトルと異なる仮基準ベクトルを設定することを指示する情報を規格化内積算出部266に送信する。この処理を繰り返すことで、仮基準ベクトルvの適当な初期ベクトルを決定する。
【0057】
さらに、更新判断部268は、上記した内積が第1閾値+u
th,1未満かつ第2閾値−u
th,2より大きい場合、上記した規格化ストークスベクトルと異なる規格化ストークスベクトルを要求する情報を送信器100(
図1)に送信してもよい。この場合、上記した仮基準ベクトルvは保持されたままである。この処理は、仮基準ベクトルvがu(n)≧+u
th,1又はu(n)≦−u
th,2を満たす規格化ストークスベクトルが送られるまで、繰り返される。そして仮基準ベクトルvがu(n)≧+u
th,1又はu(n)≦−u
th,2を満たす規格化ストークスベクトルが送られた場合、更新部270は、上記と同様に、仮基準ベクトルvを更新する。
【0058】
以上、本実施形態によれば、SOP追従部254によって、仮基準ベクトルvを規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)に又は規格化ストークスベクトルS(n)/S
0(n)の反転ベクトル−S(n)/S
0(n)に追従させている。これにより、DP−M−IM信号のSOPを追尾することができる。さらに本実施形態によれば、偏波分離部256によって、DP−M−IM信号の送信器100(
図1)側におけるx偏波強度|E
x|及びy偏波強度|E
y|を算出する。これにより、DP−M−IM信号の偏波多重を分離することができる。
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。