(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333400
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】内燃機関用のピストン燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20180521BHJP
F02M 59/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
F02M59/44 D
F02M59/02
F02M59/44 B
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-552572(P2016-552572)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-511858(P2017-511858A)
(43)【公表日】2017年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2014079159
(87)【国際公開番号】WO2015120946
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】102014202809.4
(32)【優先日】2014年2月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレン シュトリッツェル
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ヤーン
【審査官】
松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102008043846(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0224417(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102004026893(DE,A1)
【文献】
特表2000−515230(JP,A)
【文献】
米国特許第02691558(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
F02M 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプピストン(28)によって確定される圧送室(34)が内部に構成されている、ポンプケーシング(26)であって、前記圧送室(34)は、電気的に制御可能な流入弁(36)を介して、ポンプ入口に接続されている、ポンプケーシング(26)と、
ポンプシリンダ(40)と、
前記ポンプシリンダ(40)内で軸方向に摺動可能なポンプピストン(28)と、
を備えている、内燃機関用のピストン燃料ポンプ(18)であって、
前記ピストン燃料ポンプ(18)は、前記ポンプピストン(28)の周囲に配置されたシール(46)を有しており、該シール(46)は、前記ポンプピストン(28)に被せ嵌められたキャップ(101)と、前記ポンプピストン(28)に構成されたまたは前記ポンプピストン(28)に固定された段部(44)と、の間で軸方向において保持されており、前記キャップ(101)は、前記シール(46)の前記圧送室(34)に向いた側に配置されており、前記段部(44)は、前記シール(46)の前記圧送室(34)とは反対の側に配置されていることを特徴とする、ピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項2】
前記キャップ(101)は、スリーブの形状を有している、請求項1記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項3】
前記キャップ(101)は、カップの形状を有している、請求項1記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項4】
前記キャップ(101)は、開いた端部を先頭にして前記ポンプピストン(28)に被せ嵌められている、請求項3記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項5】
前記キャップ(101)は、該キャップ(101)の底部が前記ポンプピストン(28)に当接するまで、前記ポンプピストン(28)に被せ嵌められている、請求項4記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項6】
前記キャップ(101)は、前記ポンプピストン(28)に半径方向に圧着されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項7】
前記キャップ(101)は、前記ポンプピストン(28)に隙間無く当接している、請求項1から6までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項8】
前記キャップ(101)は鋼から成っている、請求項1から7までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項9】
前記キャップ(101)は深絞り部材である、請求項1から8までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項10】
前記シール(46)は、前記キャップ(101)と、前記ポンプピストン(28)に固定された保持部材(102)の前記段部(44)との間で軸方向において保持されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項11】
前記シール(46)は、前記キャップ(101)により軸方向に予荷重を加えられている、請求項1から10までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項12】
前記シール(46)は、繊維強化された熱可塑性材料を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項13】
前記シール(46)は、炭素繊維により強化されたポリエーテルエーテルケトンから成る、請求項1から12までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項14】
前記シール(46)は、該シール(46)に軸方向の予荷重を加えるための少なくとも1つの突起(461)を有している、請求項1から13までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【請求項15】
前記シール(46)は、軸方向の射出方向を有する環状の射出成形体である、請求項1から14までのいずれか1項記載のピストン燃料ポンプ(18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の上位概念に記載のピストン燃料ポンプに関する。
【0002】
市場から知られている内燃機関の燃料系の場合、燃料が燃料タンクから、機械的に駆動されるピストン燃料ポンプにより高圧下で燃料レールに圧送され、そこからインジェクタを介して内燃機関の燃焼室に到達するようになっている。
【0003】
例えば独国特許出願公開第102004063074号明細書から公知のピストン燃料ポンプには、摺動可能に支持されたポンプピストンが設けられており、このポンプピストンは、ピストン燃料ポンプの圧送室内で燃料を圧縮する。ポンプピストンは、ピストンブシュ内で、密な嵌合に基づき滑り式に、且つ小さなシールギャップを有して案内されている。ピストンブシュは、支持及びギャップシールを介したシールのために、ある程度の長さを有している必要があり、場合によっては大きな横方向力をも吸収せねばならない。よってピストンブシュは、鋼から製造されることが多い。更に、製造誤差に対する高度な要求に基づいて、いわゆる「ピストンペアリング」が用いられる、即ち、各ポンプケーシングには、それぞれ特定のピストンが対応配置される。更にシリンダは、ポンプケーシング内に手間をかけてホーニング加工せねばならない。より少ない手間で製造される燃料ピストンポンプに対する要求が生じることになる。
【0004】
発明の開示
本発明の根底を成す問題は、請求項1記載の特徴を有する燃料ピストンポンプによって解決される。本発明の有利な改良は、従属請求項に記載されている。更に、本発明にとって重要な別の特徴は、以下の説明及び図面に記載されている。
【0005】
本発明による燃料ピストンポンプは、ピストンブシュ、及びピストンブシュにおけるピストンの相応する高精度の嵌合が最早必ずしも必要とはされず、これによりかなりのコストを節約することができる、という利点を有している。その代わりに当該ピストン燃料ポンプは、ポンプピストンの周囲に配置されたシールを有しており、このシールは、ポンプピストンに被せ嵌められたキャップにより、軸方向において保持されている。特に当該ピストン燃料ポンプは、ポンプピストンに被せ嵌められたキャップと、ポンプピストンに形成された又はポンプピストンに固定された段部との間で軸方向において保持された、ポンプピストンの周囲に配置されたシールを有している。
【0006】
基本的に、ポンプピストンの周囲に配置されたシールは、キャップがシールに当接するようになっている限りは、ポンプピストンに被せ嵌められたキャップにより、軸方向において保持されていてもよい。本発明の改良では、シールはキャップにより予荷重を加えられている。この場合は特に、シールとキャップとの間に、好適にはシールを軸方向に圧縮する力が作用することになる。
【0007】
燃料ピストンポンプは、特にポンプピストンによって画定される作業室が内部に形成されたポンプケーシングを有するポンプである。燃料の圧縮は、特に前記作業室内で、特にこの作業室を縮小するポンプピストンの軸方向運動によって行われる。特に、作業室内の燃料の、高い圧力レベル、例えば100bar〜600barへの圧縮が行われる。
【0008】
本発明によるシールは、特にポンプの作業室と、低圧領域との間に形成されている。低圧領域内の圧力は、ポンプの作業室に生ぜしめられる高い圧力レベルよりも低いものである。低圧領域内の圧力レベルは、例えば3bar〜10barであり、別個のプレポンプによって生ぜしめられていてもよい。
【0009】
作業室は、特に流出弁を介してポンプ出口に接続されていると共に、特に電気的に制御可能な流入弁を介してポンプ入口に接続されている。電気的に制御可能な流入弁は、特に流量制御弁として形成されていてもよい。付加的にポンプ入口と作業室との間には、更にポンプの低圧領域における脈動を弱めるための緩衝装置が任意に設けられていてもよい。
【0010】
低圧領域における脈動を弱めるための緩衝装置は、例えば2つのダイヤフラム間に封入されたガス体積を有していてもよく、この緩衝装置の細部は、独国特許出願公開第10327408号明細書に記載されたように形成されていてもよい。
【0011】
ポンプ出口と作業室との間に配置され、流出弁に対して逆平行に配置された別の弁が設けられていてもよく、特にポンプに接続可能な高圧アキュムレータ用の圧力制限弁として作用してもよい。
【0012】
好適には、流出弁及び/又は流入弁及び/又は圧力制限弁は、ポンプケーシングに対して位置固定されており、この場合にはポンプシリンダに対しても位置固定的に固定されている。この場合は特に、ポンプピストンに対する前記各構成部材の位置固定は除外する。ポンプピストンの質量が小さく、延いてはポンプのダイナミクス若しくは動きやすさが改善されている、という利点が得られる。
【0013】
好適には、付加的又は択一的に、ポンプピストンは中実体として形成されており、これによりポンプピストンは、燃料噴射時、特にガソリン直接噴射時に作用する高い圧力に、変形することなく耐えられるようになっている。この場合、長手方向におけるポンプピストンの通流性は除外する。
【0014】
作業室、流出弁及び圧力制限弁の、ポンプボデーにおける相互配置の別の細部は、例えば独国特許出願公開第102004013307号明細書に記載されたように形成されていてもよい。
【0015】
ポンプシリンダは、ポンプボデー内に固定されたブシュに形成されていてもよい。択一的にポンプシリンダは、ポンプボデーに直接に設けられていてもよい。
【0016】
ポンプボデー、ポンプピストン、ポンプシリンダ、及び/又は燃料と接触する全てのポンプ構成部材は、好適には鋼とプラスチックのみから成っており、その結果、エタノール含有燃料及び/又は他の攻撃的な燃料に対しても高い耐久性が与えられている。
【0017】
本発明により、シールを軸方向において保持するキャップが設けられたことにより、シールに関連するシール及び支持機能が、ポンプの耐用年数にわたって防護される。
【0018】
更に、キャップからシールに対して軸方向に力が作用した場合には、シールに予荷重が加えられ、更に改善されたシール機能及び支持機能を果たすことができるようになる。
【0019】
キャップは、本発明に基づきポンプピストンに被せ嵌められている。この中には基本的には部分的な被せ嵌めが含まれているが、複合体の安定性の改善若しくは運動質量の最小化のためには、キャップの長手方向延在部の大部分、又はそれどころか全体が、ポンプシリンダに被せ嵌められていると有利である。
【0020】
つまり、キャップから見てポンプピストンは、特にキャップの内側に配置されており、特にポンプピストンは、キャップの内側の大部分を部分的に(例えばキャップの内側の容積の30%又は50%又は85%を上回って)満たしているか、それどころかキャップの内側全体を満たしている。
【0021】
好適には、キャップはポンプピストンに固定されており、例えば圧着されている。この場合、好適にはキャップとポンプピストンとの間に、半径方向の力が作用する。キャップとポンプピストンとの間の圧着は、考えられる他の結合方法に比べ、特に頑丈で廉価である、という利点を有している。
【0022】
好適にはキャップは一体的であり、例えばスリーブ又はカップとして形成されている。
【0023】
例えば円筒周面状のカップ壁と、例えば円面状のカップ底部とを備えたカップとしてキャップを形成することは、カップ壁を先頭にしてキャップをポンプピストンに被せ嵌めることができる、という利点を有している。更に、カップ底部は、ポンプピストンにキャップを被せ嵌める際にストッパとして働くことができる。この場合、カップ底部は、好適にはポンプピストンの端面に当接することになる。好適にはカップ底部だけが、軸方向においてピストンを越えて突出しており、カップ壁は突出していない。
【0024】
カップ底部には、好適には孔が設けられており、カップがピストンに被せ嵌められる際には、この孔を通じてカップ内の空気等が流出することができるようになっている。好適には、前記孔は小さな孔として形成されている、即ち、孔の横断面積は、カップ底部の横断面積の1/2未満、それどころか特に1/10未満である。
【0025】
キャップをスリーブとして、つまり特に2つの側に開いたリング又は2つの側に開いた管として形成することは、材料と重量の節減、及びポンプ運転時に運動する質量の最小化の利点を有している。このスリーブは、好適にはその長手方向延在部の大部分に沿ってピストンに被せ嵌められているか、又はそれどころかその長手方向延在部全体に沿ってピストンに被せ嵌められている。特に、スリーブは軸方向においてピストンを越えて突出してはいない。
【0026】
キャップがポンプピストンに隙間無く当接することが好適であってもよい。特に、キャップとポンプピストンとの間には、半径方向にも軸方向にも、隙間又は開いた中空室又は閉じた中空室は生じていない。
【0027】
しかしまた他方では、キャップがポンプピストンに部分的にのみ、特にキャップの軸方向の1部分領域においてのみ、当接することが好適であってもよい。キャップのその他の軸方向の部分領域において、キャップとポンプピストンとの間には、隙間が形成されていてもよい。キャップがポンプピストンに当接する領域が減少されていることにより、この領域に特に高い半径方向力を生ぜしめることができるようになっている。よってピストンに対するキャップの取付けを、特に頑強に実施することができるようになっている。
【0028】
キャップは、好適には鋼から成っており、好適にはポンプピストンと同じ鋼、例えばステンレス鋼から成っている。択一的に、キャップとポンプピストンとには、それぞれ異なる鋼が使用されてもよい。
【0029】
特に6〜16mmの範囲のキャップ直径及び/又は8〜18mmの範囲のキャップ長さにおいては、キャップが0.6〜1.6mmの壁厚さを有していることが好適である。キャップは、深絞り部材として廉価に製造されていてもよい。
【0030】
本発明では、シールはキャップにより軸方向において保持されており、特に軸方向に予荷重を加えられている。特にこの場合、シールはキャップにより、軸方向において片側を保持されている、若しくは片側に予荷重を加えられていてもよく、更に逆方向における保持若しくは予荷重が想定されていてもよい。
【0031】
つまり、シールはキャップと、ポンプピストンの段部との間で軸方向において保持されており、特に軸方向に予荷重を加えられていてもよい。ポンプピストンの前記のような段部は、例えばピストンを取り囲むリングの形状を有していてもよい。段部は、ポンプピストンと一体的に形成されていてもよい。
【0032】
択一的に、段部はポンプピストンに結合される別の構成部材に形成されていることも考えられる。例えば、ポンプピストンの溝に挿入されたスナップリングであってもよい。
【0033】
これに関する別の有利な択一的な構成では、シールは、キャップと、ポンプピストンに固定された別の保持部材との間で軸方向において保持されており、特に軸方向に予荷重を加えられている。ポンプピストンに固定された別の保持部材は、例えばやはりポンプピストンに軸方向に被せ嵌められており、且つポンプピストンに半径方向及び/又は軸方向において支持されていてもよい。好適には、ポンプピストンに固定された別の保持部材は、ポンプピストンに軸方向に被せ嵌められており、且つキャップが、ポンプピストンに固定された別の保持部材に、半径方向及び/又は軸方向に被せられている。
【0034】
本発明の、特にこの択一的な構成の改良では、シールの領域のポンプピストンは、特にそれどころかポンプピストン全体は、不変の直径を有している。段部又はステップが設けられたポンプピストンに比べ、製造手間が大幅に削減されている。例えばこの改良によるポンプピストンは、通過研削法で、つまり位置固定された研削盤を用いて加工され得る。
【0035】
以下に、本発明の例を添付の図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】内燃機関の燃料系を、本発明によるピストン燃料ポンプの一部と共に概略的に示した図である。
【
図2】
図1に示したピストン燃料ポンプの一部の拡大断面図である。
【
図3】ピストン燃料ポンプの択一的な実施形態を示す図である。
【
図4】ピストン燃料ポンプの別の択一的な実施形態を示す図である。
【0037】
実施形態
図1では、内燃機関の燃料系全体に符号10が付されている。燃料系10は燃料タンク12を有しており、燃料タンク12からは、電動プレフィードポンプ14によって燃料が低圧管路16へ圧送される。低圧管路16は、ピストン燃料ポンプ18の形態の高圧ポンプに通じている。ピストン燃料ポンプ18からは、高圧管路20が燃料レール22に通じている。この燃料レール22には複数のインジェクタ24が接続されており、これらのインジェクタ24は、それぞれ対応配置された燃焼室(図示せず)に、燃料を直接に噴射する。
【0038】
ピストン燃料ポンプ18はポンプケーシング26(部分的にのみ図示)を有しており、ポンプケーシング26内にはポンプピストン28が摺動可能に案内若しくは支持されている。このポンプピストン28は、カム駆動装置(図示せず)によって往復運動させることができ、このことは側方に示した二重矢印30によって示唆されている。ポンプピストン28はコイルばね32によって、
図1では下側の下死点に向かって押圧される。ポンプピストン28とポンプケーシング26とは、圧送室34を画定している。圧送室34は、流入弁36を介して低圧管路16に接続可能である。更に圧送室34は、流出弁38を介して高圧管路20に接続可能である。
【0039】
流入弁36と流出弁38とは両方共、逆止弁として形成されている。但しこの場合、流入弁36を流量制御弁として形成することも可能である(図示せず)。このような流量制御弁の場合、ポンプピストン28の圧送行程中に流入弁36を強制的に開くことができるようになっているので、燃料は燃料レール22に圧送されるのではなく、低圧管路16に戻される。これにより、ピストン燃料ポンプ18から燃料レール22に圧送される燃料量を調整することができるようになっている。
【0040】
ポンプピストン28は、ポンプシリンダ40内で案内されており、この場合、ポンプシリンダ40は、ポンプケーシング26の部分である。ポンプピストン28は、圧送室34に面した側の端部に、
図1では上側の端部部分42を有している。この上側の端部部分42の周囲に、ポンプピストン28は更に、半径方向に張り出した環状のカラーの形式の、円環状の段部44を有している。ポンプピストン28若しくは段部44には、シール46が当接する。
【0041】
ポンプピストン28は更に、圧送室34とは反対の側の端部に、
図1では下側の端部部分52を有している。この下側の端部部分52の周囲で、ポンプケーシング26にはガイドスリーブ54が不動に配置されている。ガイドスリーブ54とポンプケーシング26との間では、Oリングシール56が溝58内に設けられている。ガイドスリーブ54は円筒部分60を有しており、円筒部分60は、ポンプピストン28に対して同軸に延びており且つコイルばね32を案内している。コイルばね32は、ピストン長手方向軸線62に沿って少なくとも部分的に、ガイドスリーブ54のばね収容溝64に侵入しており、そこでガイドスリーブ54に対して軸方向に支持されている。
【0042】
ガイドスリーブ54は更に、内側に円筒状の収容部分66を有しており、収容部分66は、実質的に円筒部分60の内周壁によって形成される。この収容部分66内には、環状のシール部材68がポンプケーシング26に対して相対的に位置固定されて配置されており、この場合、シール部材68はH形の横断面を有している。更に、円筒部分60の突出した端部において半径方向内向きに延在するカラー部分70には、ガイド部材72が、やはりポンプケーシング26に対して相対的に位置固定されて配置されている。つまり、ポンプピストン28の軸方向に見てシール46から著しく隔てられた前記ガイド部材72は、シール46と共に、ポンプピストン28のガイド若しくは2点支持を提供している。
【0043】
シール46の領域の構成及びシール46の取付けは、本発明において特に重要である。よってこれらの態様について、後続の
図2〜
図7に基づき詳細に説明する。
【0044】
図2には、ピストン燃料ポンプ18のシール46の領域が示されている。
図2では下側の領域において、シール46は、ポンプピストン28の段部44を介して押しずらされており、その結果シール46は、シール46に形成されたショルダ469において、段部44に軸方向に当接している。特に段部44の外周面の半径方向外側に存在するシール46の材料範囲は、支持領域若しくは案内領域48を形成しており、この支持領域若しくは案内領域48によって、ポンプピストン28はポンプシリンダ40内で滑り案内され且つ半径方向で支持されている。
【0045】
案内領域48は、ポンプシリンダ40の内周壁から、図面では認識不可能な約2/100mmの間隔を有している。案内領域48に続いて圧送室34に向かって軸方向に、即ちピストン長手方向軸線62に沿って、シールリップ467として形成されたシール領域50が延びている。この場合、シールリップ467は、案内領域48に一体成形され且つ半径方向外側に向かって弾性的に予荷重が加えられた管部分として、ポンプピストン28に対してほぼ同軸に延びている。シールリップ467は、ポンプシリンダ40の内周壁に当接している。案内領域48とシール領域50とは、この例では一体的に形成されている。
【0046】
ポンプピストン28にはキャップ101が軸方向に被せ嵌められており、キャップ101はシール46に、シールリップ467の半径方向内側であり且つショルダ469の作業室側において当接する。キャップ101は、半径方向に圧着されることによりポンプピストン28に固定されており且つ軸方向に作用する力をシール46に加える。これにより、キャップ101とポンプピストン28の段部44との間に配置されたシール46は、軸方向の予荷重が加えられた状態になる。
【0047】
キャップ101は、この例ではスリーブ101aとして形成されている、即ち、キャップ101は2つの側に開いたリング又は管部分の形態を有している。スリーブ101aは、ポンプピストン28に完全に被せ嵌められており、ポンプピストン28と作業室側で合致している。択一的に、ポンプピストン28にスリーブ101aを更に引き続き被せ嵌めること、若しくはスリーブ101aを作業室側に突出させることも、基本的には可能であり且つ場合によっては有効である。
【0048】
図3には、スリーブ101aとして形成されたキャップ101に対して択一的に、カップ101bとして形成されたキャップ101が示されている。カップ101bは、カップ底部とカップ壁とを有しており、且つその開いた端部を先頭にして、ポンプピストン28に被せ嵌められている。
【0049】
図3に示した実施例において、カップ101bは完全にポンプピストン28に被せ嵌められている。この場合、カップ101bの底部はピストンの端面に当接することになる。
【0050】
この例では、カップ底部は
図3の断面で見ると小さな孔300を有しており、ポンプピストン28にカップ101bを被せ嵌める際にはこの孔300を通じて、空気がカップから流出することができるようになっている。
【0051】
キャップ101は基本的には、特にスリーブ101a又はカップ101bとしての各実施形態では深絞り部材として、例えば鋼から製造されていてもよい。好適には、キャップ101は、熱膨張係数がポンプピストン28の熱膨張係数と合致する、又はほぼ合致する材料から成っている。キャップ101は、例えばポンプピストン28と同じ材料から成っていてもよい。キャップ101は更に、例えば1mmの壁厚さを備えて形成されていてもよい。
【0052】
先行例においてシール46は、軸方向に見てキャップ101と、ポンプピストン28に一体的に形成された段部44との間に形成されている。基本的に、一体性は必ずしも必要とはされていない。段部44が、ポンプピストン28の溝に挿入されたスナップリングによって実現されていることにより、製造技術的な簡略化が可能である。
【0053】
これに関する更に別の構成が
図4に示されている。この場合、帽子形の保持部材102が、その開口を先頭にして、ポンプピストン28の作業室側の端部に被せられている。このとき保持部材102の底部102aは、ポンプピストン28の端面に軸方向に当接し、保持部材102の側壁102cは、半径方向においてポンプピストン28に接触することになる。保持部材102の底部102aの軸方向反対側に位置する、保持部材102のつば102bは半径方向に広げられており、この場合、段部44を形成している。
【0054】
図2及び
図3に示した例と同様に、シール46は、この場合同じ機能を有するように設けられた段部44に当接している。
【0055】
この例では、ポンプピストン28は、その全長に沿って均一な直径を有している。このようにして、特に簡単且つ廉価な製造、例えば通過研削による、即ち位置固定された研削盤を用いたポンプピストン28の加工、が可能である。
【0056】
図2、
図3及び
図4に示した各実施例において、シール46は、一体的に成形された、軸方向に向いた少なくとも1つの突起461を有しており、シール46は、この少なくとも1つの突起461を介して軸方向に当接する。例えば、これらの例においてシール46は、それぞれ作業室34の方を向いた複数の突起461を有しており、これらの突起461を介してシール46がキャップ101に当接することによって、軸方向に予荷重が加えられることになる。この例では、突起461は半球形の形態を有している。択一的に、突起461は円錐形又は円錐台形であってもよい。突起461は、例えば約0.6mmの直径(シール46の直径の約10%)及び約0.3mmの高さ(シール46の高さの約10%)を有している。
【0057】
キャップ101は突起461に応力を加えるように当接するが、その結果生じる突起461の変形は比較的小さいので、周方向において各突起461間に位置するシール46の領域に対するキャップ101の当接は行われない。
【0058】
図2、
図3及び
図4に関して、シール46を上から見た図が
図5に示されている。シール46に一体的に成形された合計8つの突起461が作業室34の方に向いていて、ピストン軸線62を中心とした仮想の円環上に配置されており、且つ周方向に見てそれぞれ45°の間隔を相互にあけていることが認識可能である。
【0059】
もちろん、突起461は付加的又は択一的に、シール46の軸方向反対の側で段部44に接して、それ以外は変えられずに形成されていてもよい。
【0060】
シール46は、これらの例では繊維強化された熱可塑性材料PEEK150CA30又はPA66CF20から成っており、射出成形によって製造されている。以下に説明する射出成形技術、特にゲートポイント462及び空気抜きポイント463の配置形式によって、繊維の配向がランダムである、ということが達成され得る。
【0061】
この場合、射出成形は、
図5に見られる複数のゲートポイント462を介して行われ、これらのゲートポイント462は、突起461と共に共通の仮想の円ライン上に位置しており且つ周方向において90°の間隔を相互にあけて配置されている。ゲートポイント462は完成した製品において、例えば小さなリング形又は鎌形のバリとして、或いは小さな突起として現れる。ゲートポイントは、0.9mm以下の直径を有している。
【0062】
射出成形は更に、シール46の軸方向反対の側、
図2、
図3及び
図4では下側、に配置された、複数の空気抜きポイント463を介して行われる。これらの空気抜きポイント463は
図6に見られる。本発明では、仮想の円ライン上に位置し且つ周方向において45°の間隔を相互にあけて配置された、8つの空気抜きポイント463が設けられている。空気抜きポイント463は0.7mm以下の直径を有しており、完成した製品において、例えば小さなキャビティとして現れる。
【0063】
ゲートポイント462と空気抜きポイント463とは、常に周方向において互いにずらされて配置されている、ということが想定されていてもよい。このようにして、射出成形型内で、液化された射出成形材料がより良好に混合され、繊維の整列された配向が回避され、且つシール46の異方性の材料特性が回避される。
【0064】
シール46の一方の軸方向の端部領域464は、本発明ではシールリップ467の作業室側に形成されている。更に適宜拡大されたシール46の部分が、
図7に示されている。
【0065】
ポンプシリンダ40の内面と向かい合う、シール46の半径方向外側に位置する面は、シール46の軸方向の端部領域464において、ポンプシリンダ40の内壁に対して10°〜60°の角度αで、半径方向内側に向かって傾斜している。これにより生じる作用は、又は択一的に想定されているのは、ポンプシリンダ40とポンプピストン28との間の、特に作業室34に向かう軸方向での相対運動が、ポンプシリンダ40から半径方向内向きの方向へのシール46の持上がりを促進する、という点である。この場合、シール46とポンプシリンダ40との間には、燃料から成る液膜が形成され、この液膜は僅かな漏れで、ピストン燃料ポンプ18の摩耗を大幅に減少させる。
【0066】
この目的のために、シールリップ467には外向きの環状ウェブ468が一体成形されており、この環状ウェブ468は、縦断面においてほぼ二等辺三角の形を有しており、この二等辺三角のうち、2つの向かい合う鋭角の角隅部は、それぞれ軸方向に向いており、第3の鈍角の角隅部は、ポンプシリンダ40に(静的に)当接している。ポンプシリンダ40には、このウェブ468だけが(静的に)当接している一方で、シール46若しくはシールリップ467は、その他の点ではギャップによってポンプシリンダ40から隔離されている。ギャップの幅sは、例えば20μmである。上述したような相対運動においては更に、ウェブ468のポンプシリンダ40からの持上がりも想定されている。