(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333464
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】MEMSに基づいたセンサーの製作方法
(51)【国際特許分類】
B81C 1/00 20060101AFI20180521BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20180521BHJP
G01L 9/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
B81C1/00
H01L29/84 B
G01L9/00 303G
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-500124(P2017-500124)
(86)(22)【出願日】2015年5月5日
(65)【公表番号】特表2017-516676(P2017-516676A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】CN2015078245
(87)【国際公開番号】WO2015180555
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年9月19日
(31)【優先権主張番号】201410231976.X
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512154987
【氏名又は名称】無錫華潤上華半導体有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 永剛
(72)【発明者】
【氏名】周 国平
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−086467(JP,A)
【文献】
特表2009−516597(JP,A)
【文献】
特開2011−091353(JP,A)
【文献】
特開2007−227875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00 − 99/00
B81B 1/00 − 7/04
G01L 9/00
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を提供するステップと、
前記基材の正面に浅い槽と支持梁を形成するステップと、
前記基材の正面に第一延伸層を形成することにより前記浅い槽を覆うステップと、
前記第一延伸層に深い孔を形成した後、前記第一延伸層の下に浮上状態のグリッド状構造を形成することにより、前記深い孔と前記浅い槽と連通するステップと、
前記第一延伸層の上にピエゾ抵抗フィルムである第二延伸層を形成するステップと、
前記第二延伸層の上に回路層を形成するステップと、
前記基材の背面であって前記浅い槽と対応する箇所に深い槽を形成し、かつ前記浅い槽と前記深い槽が連通するようにするステップと、
前記支持梁を除去することにより、それまで前記支持梁が保持していた、前記深い槽、前記浅い槽、及び前記浮上状態のグリッド状構造によりに囲まれた重量部を落下させた後、前記第二延伸層を所望の厚さまで浸食させるステップとを含むことを特徴とするMEMSに基づいたセンサーの製作方法。
【請求項2】
前記基材の正面に形成される浅い槽と支持梁はエッチング工程によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記浅い槽の深さは50μm〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一延伸層の厚さは5μm〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第二延伸層の厚さは12μm〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第二延伸層上に回路層を形成する方法は、リソグラフィー、注入、拡散、腐食を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材の背面であって前記浅い槽と対応する箇所に形成される深い槽はエッチング工程によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記深い槽の深さは300μm〜400μmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記支持梁を除去することは、前記基材の背面から前記支持梁を腐食させることにより実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記支持梁の数量は4つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品の技術に関し、特にMEMSに基づいたセンサーの製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)は、集積回路製造技術と微細加工技術によりマイクロ構造、マイクロセンサー、マイクロアクチュエーター、制御処理回路及びそのポート、通信装置及び電源等が一個または複数個のチップに形成された微小集積システムである。MEMS技術の発展に伴い、MEMS技術によって製作されたセンサーは続々と出ている。例えば、圧力センサーは消費者向け電子製品に幅広く応用されている。MEMS圧力センサーを製作するとき、支持梁を製造する必要がある。従来のMEMS圧力センサーにおいて、重量部に連結された支持梁は、背面を腐食させることにより深い槽を形成する時に形成されるものであり、支持梁の高さは350μm程度である。槽をエッチングするとき、支持梁の幅の均一性と一様性を制御しにくい。したがって、その後のKOH腐食をするとき、重量部が落ちる時間との不一致により、ピエゾ抵抗フィルムの腐食の時間が異なり、圧力センサーのパラメータの一様性が悪くなる。支持梁の均一性と一様性を確保するため、深い槽の腐食工程を精密に制御する必要がある。これにより、生産の効率が低下し、生産コストの低減に影響を与えるおそれがある。すなわち、従来の工程には支持梁の幅と高さの一様性と均一性を確保することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、支持梁の幅と高さの一様性と均一性を確保することができる、MEMSに基づいたセンサーの製作方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
MEMSに基づいたセンサーの製作方法であって、
基材を提供するステップと、
前記基材の正面に浅い槽と支持梁を形成するステップと、
前記基材の正面に第一延伸層を形成することにより前記浅い槽を覆うステップと、
前記第一延伸層下に浮上状態のグリッド状構造を形成するステップと、
前記第一延伸層上に第二延伸層を形成するステップと、
前記第二延伸層上に回路層を形成するステップと、
前記基材の背面であって前記浅い槽と対応する箇所に深い槽を形成し、かつ前記浅い槽と前記深い槽が連通するようにするステップと、
前記支持梁を除去するステップとを含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明のMEMSに基づいたセンサーの製作方法は、正面に浅い槽を形成するとき、重量部を支持する支持梁を同時形成する。深い槽のエッチングより浅い槽のエッチングを容易に制御することができるので、工程の精度を向上させることができる。したがって、このように形成された支持梁は、背面に深い槽を形成するときに形成される従来の支持梁より、一層よい一様性と均一性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の実施例または従来の技術の技術案をより詳細に説明するため、以下、本実施例または従来の技術の説明に用いられる図面を簡単に説明する。後述する図面は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本技術分野の一般の技術者は本発明の要旨を逸脱しない範囲で図面を変更するか、或いは一実施例の図面により他の実施例の図面を獲得することができる。
【
図1】本発明の一実施例のMEMSに基づいたセンサーの製作方法を示す流れ図である。
【
図2】本発明の一実施例の基材を示す平面図である。
【
図3】
図2のA−A’線に沿う断面を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施例の第一延伸層を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例のグリッド状構造を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例の第二延伸層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明をよく理解してもらうため、以下、図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。図面に本発明の好適な実施例が示されているが、本発明は異なる実施形態によって実施することができ、本発明の構成は下記実施例にのみ限定されるものでない。下記実施例を示す目的は、本発明の技術的事項をより詳細に理解してもらうことにある。
【0008】
特別な説明がない限り、本文に記載されている技術的用語と科学的用語は本発明の技術分野の技術者が常用する用語の意味を示す。本発明の明細書に記載されている用語は本発明の具体的な実施例を説明するためのものであり、本発明を限定する意図はない。本発明中の「及び/又は」と言う用語は、一個または複数個が配列されている事項のあらゆる組合せを意味する。
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施例に係るMEMSに基づいたセンサーの製作方法を示す流れ図であり、
図2乃至
図8も一緒に参照する。本実施例の方法は圧力センサーに応用される。
【0011】
本発明のMEMSに基づいたセンサーの製作方法は次のステップを含む。
【0012】
ステップS100において、基材100を提供する。本実施例の基材100は半導体材料であり、例えばシリコンである。
【0013】
ステップS110において、
図2と
図3に示すとおり、基材100の正面をエッチングすることにより深さが50μm〜100μmである4本の浅い槽120を形成し、4本の浅い槽120の間に介在するように4つの支持梁140を形成する。浅い槽120によって基材100の上層は内側領域と外側領域に分けられ、内側領域は矩形である。内側領域の四辺において、内側領域と外側領域との間には接続点が形成されており、該接続点は間違いなく支持梁140である。浅い槽120の好ましい深さは70μmである。本実施例において、支持梁140の個数が4つであるが、支持梁140の個数が4つに限定されるものではない。他の実施例において、内側領域の対向する一対の辺部のみに一対の支持梁を形成するか、或いはこれら以外の個数の支持梁140を形成してもよい。
【0014】
ステップS120において、
図4に示すとおり、基材100の正面に厚さが5μm〜10μmである第一延伸層200を形成し、第一延伸層200で浅い槽120を覆う。第一延伸層200の形成方法として気相成長法、液相エピタキシャル成長法、分子線エピタキシー法または化学分子線エピタキシー法などの方法を採用することができ、ボンドアンドエッチバック(Bond and Etchback)法を採用することもできる。
【0015】
ステップS130において、
図5に示すとおり、エッチング工程により第一延伸層200に深い孔220を形成した後、異方性と同方性工程により第一延伸層200と基材100との間に浮上状態のグリッド状構造160を形成する。グリッド状構造160はそれぞれ深い孔220と浅い槽120に連通している。グリッド状構造160は、主として、第一延伸層200の下方の基材100に形成されている。すなわち、基材100の内側領域に形成されている。
【0016】
ステップS140において、
図6に示すとおり、第一延伸層200の上に厚さが12μm〜20μmである第二延伸層300(すなわち、ピエゾ抵抗フィルム)を形成し、第二延伸層300で深い孔220とグリッド状構造160を覆う。第二延伸層300の形成方法として気相成長法、液相エピタキシャル成長法、分子線エピタキシー法または化学分子線エピタキシー法などの方法を採用することができ、ボンドアンドエッチバックSOI(Bond and Etchback Silicon on Insulator)法を採用することもできる。
【0017】
ステップS150において、
図7に示すとおり、リソグラフィー、注入、拡散、腐食などの半導体工程により第二延伸層300上に所望の回路構造、すなわち回路層320を形成する。
【0018】
ステップS160において、
図8に示すとおり、リソグラフィー、腐食工程により、基材100の背面であって浅い槽120と対応する箇所に深さが300μm〜400μmである深い槽180を形成し、かつ浅い槽120と深い槽180が連通するようにする。深い槽180によって基材100の下層も内側領域と外側領域に分けられる。内側領域は矩形であり、内側領域の四辺に外側領域と接続する接続点が形成されていないことにより、重量部400と基材100との間が浅い槽120同士の間の4つの支持梁140のみにより連結されるようにする。深い槽180の好ましい深さは350μmである。
【0019】
ステップS170において、回路層320上に接着剤を塗布した後、水酸化カリウム溶液で基材100の背面から支持梁140を腐食させることにより、重量部400が落ちるようにし、かつ第二延伸層300(ピエゾ抵抗フィルム)を所望の厚さまで腐食させる。深い槽180のエッチングより浅い槽120のエッチングを制御することが容易にできるので、工程の精度を向上させることができる。このように形成された支持梁140は、背面に深い槽180を形成するときに形成される従来の支持梁より、一層よい一様性と均一性を有している。したがって、水酸化カリウム溶液で腐食をさせるとき、重量部400が落ちる時間を一致させ、ピエゾ抵抗フィルムの厚さの一様性を向上させ、圧力センサーの一様性を向上させ、パラメータを安定させることができる。前記方法によって製作される支持梁は浅い槽120のエッチングのみを精密に制御すれば獲得することができるので、工程の所要時間とエッチング原料を節約し、設備の利用率を向上させ、生産量を増加させ、かつコストを低減させることができる。
【0020】
注意されたいことは、
図1の流れ図において、各ステップは矢印によって順に示されているが、これらのステップの実施順序は矢印の方向に従わなくてもよい。特別な説明がないかぎり、これらのステップの実施順序は順序を厳守する必要がなく、他の順序で実施されてもよい。また、
図1の少なくとも一部のステップは複数の分割ステップまたは複数の段階を含んでもよい。これらの分割ステップまたは段階は必ず同時に実施されるわけでなく、異なる時に別々に実施することができる。各ステップを順に実施せず、他ステップや他ステップの分割ステップまたは段階の少ない一部と交替で実施してもよい。
【0021】
前記MEMS圧力センサーの製作方法において、主要ステップについて説明してきたが、これはMEMS圧力センサーの製作方法のすべてのステップを示したものでない。
図2〜
図8中の事項は、MEMS圧力センサーを製作するとき、製品の主要構造を示すためのものであるが、部品のすべての構造を示したものではない。
【0022】
以上、上述した複数の実施例により本発明の好適な実施例を詳述してきたが、本発明の構成は前記実施例にのみ限定されるものではない。本技術分野の当業者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内で設計の変換等を行うことができ、このような設計の変更等があっても本発明に含まれることは勿論である。本発明の保護範囲は特許請求の範囲が定めたものを基準にする。