特許第6333473号(P6333473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333473オプトエレクトロニクス半導体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333473
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】オプトエレクトロニクス半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20180521BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20180521BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   H01L33/50
   G02B5/20
   C09K11/08 J
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-512682(P2017-512682)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公表番号】特表2017-535060(P2017-535060A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2015069645
(87)【国際公開番号】WO2016034489
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】102014112769.2
(32)【優先日】2014年9月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イザベル オットー
(72)【発明者】
【氏名】イオーン シュトル
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−528213(JP,A)
【文献】 特開平5−119209(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0231855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプトエレクトロニクス半導体素子の製造方法であって、
・ 半導体基体(10)を準備するステップと、
・ 前記半導体基体のビーム出射面(31)に光導電性層(34)を被着するステップとを有しており、前記半導体基体は、動作状態において電磁ビームを放射するために構成されており、
前記方法はさらに、
・ 前記半導体基体によって形成される電磁ビームにより、前記光導電性層の少なくとも1つの部分領域(34’)を露光するステップと、
・ 電気泳動プロセスにより、前記光導電性層の前記部分領域(34’)に変換層(44、45)をデポジットするステップとを有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記光導電性層(34)は、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、CdS、SrTiO、AgI、GaN、InGa1−xN、FeTiOを含有するか又はこれらの材料のうちの1つから構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CVD、ALD、PLD、PVDにより、電気泳動プロセスにより、又は湿式化学的に、前記半導体基体の前記ビーム出射面(31)に前記光導電性層(34)を被着する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光導電性層(34)の厚さは、10nm〜5μmである、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記半導体基体の半導体層に前記光導電性層(34)を直接被着する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記半導体基体(10)の半導体層を少なくとも部分的に覆う絶縁層に前記光導電性層(34)を被着する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
絶縁層(30)によって前記半導体基体(10)から電気的に絶縁されている導電層(32)に前記光導電性層(34)を被着する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記半導体基体(10)には、少なくとも2つの異なるサブピクセル領域(14)を有する少なくとも1つのピクセル領域(12)が含まれており、
各サブピクセル領域は、第1波長領域の電磁ビームを送出するのに適した活性層(22)を有しており、
前記光導電性層(34)は、少なくとも1つのサブピクセル領域(14)のうちの前記ビーム出射面(31)に被着されている、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記電気泳動プロセスの際に、別のサブピクセル領域には依存せずに、前記変換層(44)が被着されるサブピクセル領域(14’)に通電する、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
・ 第1サブピクセル領域(14’)に、前記第1波長領域のビームを第2波長領域のビームに変換するのに適した第1の変換層(44)を付着させ、
・ 第2サブピクセル領域(14’’)に、前記第1波長領域のビームを、前記第1及び第2波長領域とは異なる第3波長領域のビームに変換するのに適した別の変換層(45)を付着させる、
請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1波長領域は青色光を、前記第2波長領域は緑色光を、前記第3波長領域は赤色光を有する、
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記光導電性層(34)と、対向電極との間に電圧を印加し、ここで当該対向電極は、前記光導電性層(34)の、前記半導体基体(10)とは反対側を向いた側に配置されている、
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記光導電性層の前記部分領域(34’)の露光と、前記電気泳動プロセスとを交互に実行する、
請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに示されているのは、オプトエレクトロニクス半導体素子を製造する方法である。
【0002】
この特許明細書は、独国特許出願公開第102014112769号明細書(102014112769.2)の優先権を主張するものであり、その開示内容は、参照によって本明細書に取り込まれるものとする。
【0003】
本発明では、オプトエレクトロニクス半導体素子の比較的小さな複数の領域に変換層を被着できるようにする方法を示す。特に、種々異なる色を形成するため、比較的小さな複数のサブピクセル領域に複数の変換層を被着できるようにする方法を示す。
【0004】
この課題は、請求項1に記載したステップを有する方法によって解決される。この方法の有利な発展形態及び実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0005】
半導体素子を製造するこの方法では、半導体基体を準備する。この半導体基体のビーム出射面に光導電性層を被着する。この半導体基体は、動作状態において電磁ビームを放射するために構成されている。
【0006】
ここ及び以下で、1つの層もしくは1つの要素が、別の層もしくは別の要素の「上」もしくは「上方」に、又は、別の2つの層もしくは要素の「間」に配置されるもしくは被着されるとは、この1つの層又はこの1つの要素が、何も介さずに直接機械的及び/又は電気的に接触接続して、別の層又は別の要素に配置されることを意味し得る。さらに、1つの層もしくは1つの要素が、別の層もしくは別の要素の上ないしは上方に間接的に配置されることも意味し得る。この場合に上記1つの層と上記別の1つの層との間、又は上記1つの要素と上記別の1つの要素との間には、複数の別の層及び/又は要素を配置することが可能である。
【0007】
上記方法の一実施形態によれば、半導体基体によって形成される電磁ビームにより、光導電性層の少なくとも1つの部分領域の露光が行われる。
【0008】
この光導電性層には、光導電性材料が含まれている。ここ及び以下で光導電性材料とは、電磁ビームの、特に可視波長領域におけるビームの作用時に、例えば内部光電効果の作用下で導電率が増大する材料のことであると理解される。特に、電磁ビームによって露光される光導電性層の領域は、電磁ビームが当たらない別の複数の領域よりも局所的に高い導電率を有し得る。
【0009】
光導電性層のバンドギャップは有利には0.8〜3.6eVの範囲に、特に有利には1〜3eVの範囲に配置されている。光導電性層の暗抵抗は有利には、少なくとも0.1MΩであり、特に有利には少なくとも1MΩであり、例えば少なくとも10MΩである。さらにこの暗抵抗は、例えば100MΩ未満である。例えば0.1W/mmの露光強度において、導電率は有利には0.001〜14のオーダだけ、特に有利には0.01〜5のオーダだけ、例えば0.1〜1のオーダだけ増大する。光導電性層における(特に横方向の)電荷担体拡散を十分に小さくして、隣接する複数のピクセル又はサブピクセルにおいて拡散によって電荷担体が得られないか又はわずかな電荷担体が得られるようにする。
【0010】
この方法の一実施形態によれば、電気泳動プロセスによって(露光した又は少なくとも前に露光した)光導電性層の部分領域に変換層をデポジットする。この変換層は、第1波長領域の電磁ビームを第2波長領域のビームに変換するのに適している。言い換えると、この変換層は、波長変換を行うように構成されている。
【0011】
本発明において「波長変換を行う」という概念によって特に意味するのは、所定の波長領域の入射した電磁ビームを、有利にはより波長が長い別の波長領域の電磁ビームに変換することである。一般的に波長変換を行う素子は、入射した波長領域の電磁ビームを吸収し、原子及び/又は分子レベルにおける複数の電子的なプロセスにより、これを別の波長領域の電磁ビームに変換し、変換した電磁ビームを再度送出する。電気泳動プロセスでは、例えば蛍光体の、被着すべき蛍光体粒子が電場によって加速されるため、この蛍光体粒子の層が、準備された表面にデポジットされる。一般的に、コーティングすべき表面は、変換層を構成しようとしている蛍光体粒子を懸濁液内に含有している電気泳動槽において準備される。電気泳動プロセスでは、蛍光体粒子は、導電的に形成されている表面の部分だけにデポジットされる。一般的にはこれらの領域の導電率に依存して、蛍光体粒子の種々異なるデポジットが行われる。
【0012】
電気泳動によるデポジットが、露光されるか又は少なくとも前に露光されていた、光導電性層の部分領域だけに実質的に行われることにより、変換層の横方向位置を特に良好に決定することができる。特にこの変換層を、特に高い、有利にはピクセル精度の解像度で被着することができる。さらに、多くの場合に、所望のピクセルサイズよりも解像度の低いリソグラフィプロセスによって(例えばn側の写真技術によって)変換層の位置を決定する必要がない。全体としてオプトエレクトロニクス半導体素子を製造する際のリソグラフィステップの回数が低減され、これによって複数のマスクバイアスが省略される。
【0013】
また、極めて小さい面積領域の上に、さまざまな変換材料を含有する複数の種々異なる変換層を並べて被着することができる。異なる色又は同じ色の隣接ピクセルを定めるためには複数の選択肢がある。
【0014】
上で説明したように、この方法では電気泳動によって光導電性層に変換層をデポジットする。光導電性層の上に変換層を被着する方法は、例えば、刊行物A. J. Pascall等による Adv. Mater. Volume 26、Issue 14、第2252〜2256頁に記載されており、その開示内容は参照によって本明細書に取り込まれるものとする。
【0015】
本発明による方法の一実施形態によれば、光導電性層にはTiO(例えばnドーピング、例えばNbドーピングされたTiO)、ZnO(例えばnドーピング、例えばInドーピングされたZnO)、ZnS、ZnSe、CdS、SrTi0、AgI、GaN、InGa1−xN、FeTi0が含有されているか又はこれらの材料のうちの1つから構成される。光導電性層には有機半導体材料及び光半導体を使用することも可能である。有機半導体とは、有機分子を(例えば有機金属複合体をも)ベースとする分子、オリゴマ及びポリマのことと理解される。
【0016】
光導電性層は、例えば蒸着法又は堆積法などのデポジット法によって作製可能である。このようなデポジット法は、化学気相成長法(CVD "chemical vapor deposition")、物理気相成長法(PVD "physical vapor deposition")又はこれらの方法の組み合わせであってよい。このような被着法については例示的に、原子層堆積法(ALD)、加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザビーム蒸着法(PLD)、アーク蒸着法、分子線エピタキシ法、スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、レーザアブレーション法及びプラズマ支援化学気相堆積法が挙げられる。択一的には電気泳動プロセスにより又は湿式化学的に半導体基体のビーム出射面上に光導電性層を被着することも可能である。
【0017】
この方法の一実施形態によれば、光導電性層の厚さは、10nm〜5μmであり、特に100nm〜500nmである。
【0018】
変換層には一般的に蛍光体の蛍光体粒子が含まれており、これらの蛍光体粒子により、変換層に波長変換特性が付与される。
【0019】
蛍光体粒子には、例えば以下の複数の材料のうちの1つが適している。すなわち、希土類元素がドーピングされたガーネット、希土類元素がドーピングされたアルカリ土類硫化物、希土類元素がドーピングされたチオガリウム酸塩、希土類元素がドーピングされたアルミン酸塩、希土類元素がドーピングされたケイ酸塩、希土類元素がドーピングされたオルトケイ酸塩、希土類元素がドーピングされたクロロケイ酸塩、希土類元素がドーピングされたアルカリ土類窒化ケイ素、希土類元素がドーピングされた酸窒化物、希土類元素がドーピングされた酸窒化アルミニウム、希土類元素がドーピングされた窒化ケイ素、希土類元素がドーピングされたSiAlONeが適している。特に一般式(Y,Lu,Gd,Tb)(Al1−x,Ga)12:Ce3+;(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+,Sr(Ca,Sr)SiAl:Eu2+,(Sr,Ca)AlSiN*SiO:Eu2+,(Ca,Ba,Sr)Si:Eu2+;(Ca,Sr)A1(1−4x/3)Si(1+x):Ce;(x=0.2〜0.5);(Ba,Sr,Ca)Si:Eu2+,AE2−x−aREEuSi1−y4−x−2y),(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu2+;CaMg(SiO)Cl:Eu2+(AE=alkaline earth −アルカリ土類金属、RE=rare earth - 希土類金属)によって表される蛍光体を使用することができる。
【0020】
この方法では、特に有利には、例えば比較的小さなサブピクセル領域をコーティングするために、比較的小さな蛍光体粒子を使用する。特に有利には、蛍光体粒子の直径は、5マイクロメートルの値を上回らない。例えば、平均的な蛍光体粒子サイズは、20ナノメートル〜30マイクロメートル、特に有利には500ナノメートル〜5マイクロメートル、例えば1マイクロメートル以下をとり得る。
【0021】
しかしながら蛍光体粒子として、CdS、CdSe、ZnS、InPからなるナノ粒子、又はいわゆる「コアシェル」ナノ粒子を使用することも可能である。このナノ粒子の放射の半値幅は有利には50nmの値を上回らない。このナノ粒子は有利には、2nm以上100nm以下のサイズを有する。
【0022】
この方法の実施形態によれば、光導電性層は、半導体基体の半導体層の上に、又は半導体層の上に導電的に接続されている電極面の上に直接被着される。この配置構成では、光導電性層は、半導体層の電位に設定される。
【0023】
したがって半導体基体の給電には依存しない、光導電性層の給電を準備する必要はない。電磁ビームを形成するために半導体基体に加えられる電圧は同時に、変換層の電気泳動によるデポジットを可能にするためにも使用される。
【0024】
この方法の別の実施形態によれば、光導電性層は、半導体基体の半導体層を少なくとも部分的に覆う絶縁層の上に被着される。
【0025】
この方法の別の実施形態によれば、光導電性層は、絶縁層によって半導体基体から電気的に絶縁されている導電層の上に被着される。この配置構成では、半導体基体に依存せずに、変換層の電気泳動によるデポジットを可能にする所望の電位に光導電性層を設定することができる。例えばこの導電層には、半導体基体の側から接触接続することができる。
【0026】
この方法の別の実施形態によれば、光導電性層を支持体の上に被着し、ここでこの支持体は、半導体基体のビーム出射面の上に配置されているが、半導体基体には機械的に接合されておらず、半導体基体から離隔することも可能である。この支持体は、例えばガラス、透明なセラミック、サファイア又はプラスチックから構成することが可能である。1つないしは複数の変換層をデポジットした後、半導体基体の光路にこの支持体が導入される。
【0027】
この方法の別の実施形態によれば、半導体基体には少なくとも1つのピクセル領域が含まれている。このピクセル領域は、少なくとも2つの異なるサブピクセル領域を有する。これらのサブピクセル領域は有利には互いに電気的に絶縁されて構成されている。各サブピクセル領域は有利には、半導体基体の動作時に第1波長領域の電磁ビームを送出するのに適した活性層を有する。特に有利には第1波長領域は(370〜500nmの範囲のピーク波長を有する)青色光を有するか又は青色光から構成される。
【0028】
複数の上記サブピクセル領域は、例えば最大で150マイクロメートルの辺長を有する。これらのサブピクセル領域は、例えば、トレンチによって互いに分離することが可能である。例えばこれらのサブピクセル領域は互いに所定の間隔で配置される。例えば、直接隣接する2つのサブピクセル領域間の間隔は、10マイクロメートル以下の値を有する。1つのサブピクセル領域の辺長は特に有利には、5マイクロメートル以下であり、トレンチの大きさは2マイクロメートル以下である。
【0029】
さらに、特に1つのサブピクセル領域だけに電流が印加され、ひいてはこのサブピクセル領域のビーム出射面だけが露光され、これによってこのサブピクセル領域においてこの光導電性層の導電率が増大することにより、複数のサブピクセル領域のうちの少なくとも1つのサブピクセル領域のビーム出射面の上に光導電性層が被着される。
【0030】
この方法の一実施形態によれば、変換層の電気泳動によるデポジットの際に、変換層が被着されるサブピクセル領域には、別の複数のサブピクセル領域には依存せずに通電される。これにより、まさに通電しているサブピクセル領域の上だけに局所的に変換層を被着することができるのに対し、電流を供給していない残りのサブピクセル領域は、変換層がないままである。
【0031】
変換層のデポジットの時点に複数のサブピクセル領域に個別に通電できる場合、半導体基体に特に容易に変換層を付着させ、特に異なる複数のサブピクセル領域に特に容易に種々異なる変換層を付着させる。このために半導体基体は順次に、種々異なる蛍光体粒子を含有する種々異なる複数の懸濁液に入れられる。これにより、種々異なる複数の色又は色位置を有する複数のサブピクセル領域を提供することができる。
【0032】
各ピクセル領域は有利には、ちょうど3つのサブピクセル領域を有する。例えば、3つのサブピクセル領域のうちの1つは、緑色光を送出するために設けられており、これに対して別の1つのサブピクセル領域は、赤色光を形成するために設けられており、第3のサブピクセル領域は青色光を放射するようにする。例えば第1波長領域が青色光を有する場合、特に有利には1つのサブピクセル領域に変換層がないようにする。別の1つのサブピクセル領域は有利には変換層を有しており、この変換層は、青色の第1波長領域の電磁ビームを、部分的に又はその強度のうちの95%よりも多く、有利には緑色光を有するか又は緑色光からなる第2波長領域の電磁ビームに変換するのに適している。第3サブピクセル領域は有利には別の変換層を有しており、この変換層は、第1波長領域の青色光を、部分的に又はその強度のうち95%よりも多く、特に有利には赤色光を有するか又は赤色光からなる第3波長領域のビームに変換するのに適している。これらの変換層は特に有利には、これらの変換層が第1波長領域のビームを可能な限りに完全に第2ないしは第3波長領域のビームに変換するように構成されている。
【0033】
発明の方法の一実施形態によれば、電気泳動プロセスは、光導電性層と対向電極との間に電圧を加えることによって実現される。この対向電極は有利には、光導電性層の、半導体基体とは反対側を向いた側に配置されている。
【0034】
本発明の方法の一実施形態によれば、光導電性層の部分領域の露光と、電気泳動プロセスとは交互に実行される。光導電性層の露光により、この光導電性層において複数の電荷担体が分離し、これらの電荷担体により、以降、蛍光体粒子の電気泳動堆積が支援される。例えば、光導電性層の部分領域の露光及び電気泳動プロセスを、高速の時間的な順序で、例えば1MHzと1Hzとの間の周波数で行うことができる。
【0035】
この方法の一実施形態によれば、変換層の電気泳動によるデポジットの後、光導電性層を、例えば湿式化学的な方法によって除去する。
【0036】
本発明の別の有利な実施形態及び発展形態は、図面に関連して以下で説明する複数の実施例から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第1実施例による方法を示す概略断面図である。
図2】第1実施例による方法を示す別の概略断面図である。
図3】第1実施例による方法を示すさらに別の概略断面図である。
図4】第1実施例による方法を示すさらに別の概略断面図である。
図5】第1実施例による方法を示すさらに別の概略断面図である。
【0038】
図1図5の概略断面図に基づいて、第1実施例による方法を説明する。
【0039】
複数の図面において同じ要素、同種の要素、又は同じ作用の要素には、同じ参照符号が付されている。これらの図面、及びこれらの図面に示した複数の要素の相互の大きさの比は、縮尺通りであるとはみなしてはならない。むしろ個々の要素、特に層厚は、図示し易いように、かつ/又は、より理解しやすいように誇張して大きく示されていることがある。
【0040】
図1に示したステップでは、ビーム出射面の上に光導電性層34が被着された半導体基体10が準備される。
【0041】
図1の実施例に記載した半導体基体10は、3つのサブピクセル領域14を備えた1つのピクセル領域12を有する。各サブピクセル領域14は、第1導電型の第1半導体層18(ここではp−GaNからなる1つの層)と、第2導電型の第2半導体層20(ここではn−GaNからなる1つの層)と、これらの間に形成された活性層22とを備えた半導体積層体16を有しており、ここでこの活性層は、第1波長領域の電磁ビームを形成するのに適している。この実施例において活性層22は、可視の青色光を形成するのに適している。
【0042】
この実施例において複数のサブピクセル領域14は、互いに移り変わっている。すなわち、隣接する複数のサブピクセル領域の半導体積層体16は互いに分離されていない。これに対し、図示していない一実施例では、直に隣接する2つのサブピクセル領域は、1つずつのトレンチによって互いに分離される。ここでこのトレンチは、活性層をそれぞれ完全に分断している。さらにこのトレンチは、少なくとも部分的に半導体積層体も分断している。
【0043】
図1に示した半導体基体10には、支持要素24がさらに含まれており、この支持要素の上にはピクセル領域12が配置されている。支持要素24と半導体積層体16との間には、複数のコンタクト26が配置されており、これらのコンタクトは、第1半導体層18に導電的に接続されており、はんだ層28によって支持要素24に固定されている。支持要素24は、例えば、ディスプレイのアクティブマトリクス要素であってよい。
【0044】
半導体積層体16の上には透明電極29が配置されており、この透明電極を介して、サブピクセル領域14の前面が電気的に接触接続されている。この透明電極29はここでは、ピクセル領域12の前面にわたって完全に被着されており、かつ、複数のサブピクセル領域14の複数のビーム出射面31を構成している。
【0045】
透明電極29は、特に有利にはTCO材料(”TCO”は透明導電性酸化物を表す)によって構成されているか又はTCO材料を有する。透明導電性酸化物は一般的に、例えば酸化亜鉛、酸化すず、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化インジウムすず(ITO)のような金属酸化物である。
【0046】
ここで指摘したいのは、これらの図面では確かに例示的に3つのサブピクセル領域14を備えた1つのピクセル領域12だけが示されているが、半導体基体10は一般的にこのようなピクセル領域12を複数個有する。ピクセル領域12はここでは、特に有利にはすべて同じタイプで構成されている。
【0047】
図1に示した実施例では、光導電性層34が導電層32の上に被着されており、この導電層は、絶縁層30によって透明電極29から電気的に絶縁されている。導電層32は、電極29と同様に透明に構成されており、かつ、有利にはTCO材料を含んでいる。電極29も導電層32も共に、半導体基体の一方の面から接触接続していてよい(図示せず)。図1に示した配置構成では、導電層32は、したがってこれに電気的に接続されている光導電性層34も、半導体基体には依存せずに(特に透明電極29の電位に依存せずに)、変換層の電気泳動析出を可能にする所望の電位に設定することができる。
【0048】
図2に示したステップにおいて、図1に示した、半導体基体10及びその上に被着した光導電性層34を備えた配置構成は、電気泳動槽38内に準備され、この電気泳動槽は、変換層を構成しようとしている蛍光体粒子40を懸濁液内に含んでいる。これにより、導電層32及び光導電性層34と、対向電極36との間に電圧が加わることより、後に電気泳動プロセスが行われる。対向電極36は、光導電性層34の、半導体基体10とは反対側を向いた側に光導電性層34から離隔されて配置され、これによって対向電極36と、光導電性層34との間の空間が、懸濁液と、そこに含有されている蛍光体粒子40とによって充填される。
【0049】
図3に示したステップでは、図3において斜線で示した、光導電性層の部分領域34’を、半導体基体10によって形成される電磁ビームによって露光する。この際には変換層を被着しようとしているサブピクセル領域14’に、別のサブピクセル領域には依存せずに通電する。すなわちサブピクセル領域14’だけに電磁ビームを形成する。その結果、光導電性層34は、露光される部分領域34’において、電磁ビームが当たっていない残りの領域よりも高い導電率を局所的に有する。
【0050】
ここで対向電極36と、導電層32との間に適切な電圧を加えると、電場42が設定され、この電場の電気力線密度は、対向電極36と部分領域34’との間の空間において、この空間内で大きくなった上記導電率によって増大する。その結果、力線42に沿った電流の流れと、蛍光体粒子の電気泳動による析出とが発生する。図4に示したように、変換層44が、まさに通電したサブピクセル領域14’の上だけに又は少なくとももっぱらこの通電したサブピクセル領域14’の局所的に被着されるのに対し、電流を供給しなかった残りのサブピクセル領域は、変換層がないままになるか又は変換層によってわずかにだけ覆われる。
【0051】
変換層44は、第1(青色)波長領域の電磁ビームを第2波長領域の電磁ビームに変換するのに適している。第2波長領域は、ここでは緑色光から構成される。
【0052】
図5に示した後続のステップでは、図1図4に示したプロセスが、第2変換層45を構成すべき蛍光体粒子を懸濁液に含む電気泳動槽39において繰り返される。ここでは第2変換層45の電気泳動による析出時に、変換層45を被着すべきサブピクセル領域14’’だけに電流を供給する。これにより、この電気泳動プロセス時にはサブピクセル領域14’’だけに蛍光体粒子が付着する。
【0053】
第2変換層45は、第1波長領域の電磁ビームを、第1及び第2波長領域とは異なる第3波長領域の電磁ビームに変換するのに適している。特に有利には第2変換層45は、活性層内で形成される青色光を可能な限り完全に赤色光に変換するのに適している。
【0054】
本発明は、上記の実施例に基づく上記の説明により、これに限定されるものではない。むしろ本発明には、あらゆる新規の特徴的構成及び複数の特徴的構成のあらゆる組み合わせが含まれており、これには特に、特許請求の範囲における複数の特徴的構成のあらゆる組み合わせが含まれており、このことは、たとえこの特徴的構成又はこの組み合わせそれ自体が、特許請求の範囲又は実施例に明示的に示されていないとしても当てはまるものである。
図1
図2
図3
図4
図5