(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333475
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】電気エネルギー蓄積器のための充電回路、電気駆動システム、および充電回路を作動する方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20180521BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20180521BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20180521BHJP
【FI】
H02J7/00 HZHV
H02M7/12 F
H02M7/48 R
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-517729(P2017-517729)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公表番号】特表2017-536793(P2017-536793A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015068018
(87)【国際公開番号】WO2016050392
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年4月17日
(31)【優先権主張番号】102014219909.3
(32)【優先日】2014年10月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ガイヤー,ハンス
【審査官】
高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/182064(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/011176(WO,A1)
【文献】
特開2003−189636(JP,A)
【文献】
特開2006−149074(JP,A)
【文献】
特開2011−250656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー蓄積器(2)のための充電回路(1)であって、
第1端子要素(B1)および第2端子要素(B2)を含み、前記電気エネルギー蓄積器(2)に接続された直流電圧端子(11)と、
第3端子要素(A1)および第4端子要素(A2)を含む交流電圧端子(12)と、
第1端子要素(B1)と第1ノード(K1)との間に配置された第1切換素子(S1)と、
前記第1ノード(K1)と第2端子要素(B2)との間に配置された第2切換素子(S2)と、
前記第3端子要素(A1)と第2ノード(K2)との間に配置された第3切換素子(S3)と、
前記第2ノード(K2)と第4端子要素(A2)との間に配置された第4切換素子(S4)と、
前記第1ノード(K1)と前記第2ノード(K2)との間に配置された第1インダクタ(L1)と、
充電モードで前記交流電圧端子(12)を電動機(4)から電気的に分離し、駆動モードで前記交流電圧端子(12)を前記電動機(4)に電気的に結合するように設計された充電スイッチ(20)と、
を備える、電気エネルギー蓄積器(2)のための充電回路(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の充電回路(1)において、
さらに前記充電スイッチ(20)が、前記充電モードで前記交流電圧端子(12)を交流電圧源(3)に接続するように構成されている充電回路(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の充電回路(1)において、
前記第1インダクタ(L1)が別のインダクタ(L2)に結合可能である充電回路(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の充電回路(1)において、
前記第1、第2、第3、および第4切換素子(S1,S2,S3,S4)を所定のスイッチング周波数により制御するように設計された制御回路(10)を備える充電回路(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の充電回路(1)において、
前記第1、第2、第3、および第4切換素子(S1,S2,S3,S4)が制御される前記所定のスイッチング周波数が20kHよりも大きい充電回路(1)。
【請求項6】
充電装置において、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の充電回路(1)を複数備えるとともに、
互いに並列に結合された前記複数の充電回路(1)の直流電圧端子(11)に、電気的に結合された電気エネルギー蓄積器(2)と、
多相の交流電圧源(3)とを備え、
前記交流電圧源(3)のそれぞれの相が複数備える充電回路(1)のそれぞれの交流電圧端子(12)に電気的に結合されている充電装置。
【請求項7】
充電装置において、
請求項3に記載の充電回路(1)を複数備えるとともに、
互いに並列に結合された前記複数の充電回路(1)の直流電圧端子(11)に電気的に結合された電気エネルギー蓄積器(2)と、
複数備える充電回路(1)のそれぞれの第1インダクタ(L1)と、結合する複数の別のインダクタ(L2)とを備え、
前記複数の別のインダクタ(L2)のそれぞれが充電制御回路(30)に電気的に結合されている充電装置。
【請求項8】
電気駆動システムであって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の充電回路(1)と、
該充電回路(1)の直流電圧端子(11)に電気的に結合された電気エネルギー蓄積器(2)と、
電動機(4)を備え、
該電動機(4)が、充電回路(1)の充電スイッチ(20)に電気的に結合された相端子を含む電気駆動システム。
【請求項9】
請求項8に記載の電気駆動システムを備える乗り物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の充電回路(1)を作動する方法であって、
駆動モードで電動機(4)を充電回路(1)に電気的に結合するステップ(S1)と、
充電モードで電動機(4)を充電回路(1)から電気的に分離するステップ(S2)とを含む充電回路(1)を作動する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギー蓄積器のための充電回路、充電回路を備える駆動システム、および充電回路を作動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
完全に、または少なくとも部分的に電気により駆動される自動車、例えばハイブリッド車および電気自動車の重要性が増している。同時に、電気により駆動される車両の走行距離の拡大および出力に対する要求が高まっている。こうしたことに関連して、電気自動車のための充電技術の重要性も増している。一般に、最新の電気自動車では、駆動電子装置から空間的に分離された自動的なユニットを意味するコンダクティブ方式の充電コンセプトが用いられる。さらに、非接触の、誘導方式の充電コンセプトも既知である。この充電コンセプトは、一般には同様に「スタンドアローンシステム」として実現される。
【0003】
欧州特許出願公開第0768774号明細書は、電気自動車の電池を充電するための装置を開示している。この場合、電気自動車は、再生可能性を有する制御電子装置を含む。電池を充電するためには、直流電源から直流電流が供給され、この直流電流が制御電子装置を介して電池を充電する。
【0004】
電池容量の拡大およびより充電時間の短縮が求められており、充電モードで時間単位毎に伝送されるエネルギー量が、走行モードで牽引用電池から取り出されるエネルギー量に近づくか、またはこれを超えることが望ましい。この場合、充電プロセスに関係する構成部品は大きい電流に対応するように設計する必要がある。一般に、電気自動車の電気エネルギー蓄積器の充電は、交流電圧網によって供給された電気エネルギーによって行われる。
【0005】
したがって、交流電圧網から電気エネルギー蓄積器を充電するために、電気エネルギー蓄積器のために安価で効率的な充電回路が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0768774号明細書
【発明の概要】
【0007】
このために、本発明によれば、電気エネルギー蓄積器のための充電回路であって、第1端子要素および第2端子要素を含み、電気エネルギー蓄積器に接続された直流電圧端子と;第3端子要素および第4端子要素を含む交流電圧端子とを備える充電回路が得られる。充電回路は、さらに、第1端子要素と第1ノードとの間に配置された第1切換素子と;第1ノードと第2端子要素との間に配置された第2切換素子と;第3端子要素と第2ノードとの間に配置された第3切換素子と;第2ノードと第4端子要素との間に配置された第4切換素子と;第1ノードと第2ノードとの間に配置された第1インダクタとを含む。さらに、充電回路は、充電モードで交流電圧端子を電動機から電気的に分離し、駆動モードで交流電圧端子を電動機に電気的に結合するように設計された充電スイッチを含む。
【0008】
本発明の別の態様によれば、本発明による充電回路を作動するための方法であって、駆動モードで電動機を充電回路に電気的に結合するステップと;充電モードで電動機を充電回路から電気的に分離するステップとを含む方法が得られる。
【0009】
本発明は、大きい電流を制御する際には、電気エネルギー蓄積器を充電する場合にも、電気エネルギー充電器から電気エネルギーを取り出す場合にも、それぞれ大きい電流のために極めて高価な、部分的には大容量の構成素子が必要となるという認識に基づいている。
【0010】
本発明は、電気エネルギー蓄積器を充電するためにも、エネルギー蓄積器から電気エネルギーを取り出す場合に電流を制御するためにも同じ構成素子を使用することができる回路装置を提供するという着想に基づいている。このようにして充電モードにおいても、電気エネルギーを取り出す場合においても、高価な構成素子を相乗的に二重に利用することができる。このために、本発明によれば、簡単な切換によって充電モードから駆動モードに変更し、駆動モードから充電モードに戻すことができる双方向の昇圧/降圧コンバータトポロジーが得られる。
【0011】
本発明による充電回路は、さらに双方向インバータ/整流器を昇圧/降圧コンバータ(直流電圧コンバータ)と組み合わせている。昇圧/降圧コンバータ機能を利用することにより、入力および出力電圧を選択する場合に高い柔軟性が得られる。これにより、充電モードで入力電圧を選択する場合および駆動モードで出力電圧を選択する場合に様々な可能性が生じる。
【0012】
さらに本発明による充電回路は極めて柔軟な制御を可能にし、付加的なハードウェアコストなしに他の機能、例えば、力率改善(PFC)機能などを実行することができる。
【0013】
一実施形態によれば、さらに充電スイッチは、充電モードで交流電圧端子を電圧源に接続するように構成されている。好ましくは、電圧源は交流電圧源である。このようにして、電圧源と充電回路との間で導電結合が可能であり、電気エネルギー蓄積器を充電するためには電圧源から充電回路へ送電することができる。さらにこのような電気的結合では、充電回路を介して電気エネルギー源から電圧源へエネルギーを回収することも可能である。このようにして、特にエネルギー回生コンセプト、例えばビークルトゥグリッド(V2G)を実現することができる。
【0014】
別の実施形態によれば、第1インダクタは別のインダクタに結合可能である。このような第1インダクタと別のインダクタとの結合により、別のインダクタから第1インダクタへ、または反対方向に、誘導方式にエネルギー伝送を行うことができる。このようにして、誘導方式の充電コンセプトを実現することができ、この場合、充電回路の第1インダクタは2次コイルとして使用され、別のインダクタは充電所の1次コイルとして使用される。したがって、別個の2次コイル(受信コイル)を必要とすることなしに、誘導方式のエネルギー伝送を実現することができる。
【0015】
別の実施形態によれば、さらに充電回路は、第1、第2、第3、および第4切換素子を所定のスイッチング周波数によって制御するように設計された制御回路を含む。この場合、制御回路は個々の切換素子を持続的に開くか、もしくは閉じるか、または個々の切換素子を適切なクロックレートにより制御し、交流電圧端子における入力電圧を、電気エネルギー蓄積器を充電するための充電電圧に変換することができる。同時に、同じ充電回路により反対の電圧変換を行うこともでき、電気エネルギーを電気エネルギー蓄積器から電圧源、例えばエネルギー供給網に回収ことができる。さらに、制御装置による適切な制御により、電気エネルギー蓄積器から供給されたエネルギーによって、電力消費機器、例えば電動機を制御することも可能である。さらに制御装置によって切換素子を適宜制御することにより、付加的な機能性を実現することもできる。このようにして、制御回路によって切換素子を適切に制御することによって、充電回路の機能を柔軟に調整することもできる。
【0016】
別の実施形態によれば、制御回路が切換素子を制御する所定のスイッチング周波数は、20kHzよりも大きい。このような高周波のスイッチング周波数は、聞き取り可能な周波数スペクトルを超える周波数で充電回路を作動することを可能にする。このようにして、妨げとなる音響放射を防止することができる。さらに、高いスイッチング周波数、特に20kHzよりも大きいスイッチング周波数によって、小さい構成素子、特に小さいインダクタ、および必要に応じて、小さいキャパシタを充電回路において使用することもできる。したがって、スイッチング周波数を高めることによって、他の構成素子、特にインダクタおよびキャパシタのスケーリングを行うこともできる。このようにして、充電回路の容量および重量を縮小することができる。さらに、小さい構成素子により、充電回路を構成するためのコストを低減することもできる。
【0017】
別の実施形態によれば、第1、第2、第3、および第4切換素子は、炭化ケイ素(SiC)切換素子、またはスーパージャンクションMOSFETを含む。このような切換素子は、高いスイッチング周波数、特に20kHzよりも大きいスイッチング周波数のために特に適しており、高いスイッチング周波数においても比較的小さい損失を示す。
【0018】
本発明の別の態様によれば、本発明による複数の充電回路、充電回路の直流電圧端子に電気的に結合されている電気エネルギー蓄積器、および多相の交流電圧源を備える充電装置が得られ、交流電圧源のそれぞれの相は、充電回路の交流電圧端子に電気的に結合されている。この場合、特に複数の充電回路の全ての直流電圧端子も互いに電気的に結合されており、したがって、並列に接続されている。このようにして、多相エネルギー供給網または他の多相エネルギー源からエネルギーを供給するために、本発明による充電回路の充電コンセプトを調整することができる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、本発明による複数の充電回路、充電回路の直流電圧端子に電気的に結合された電気エネルギー蓄積器、および複数の別のインダクタを備える充電装置が得られ、それぞれの別のインダクタは多相交流電圧の1つの相に電気的に結合されている。この場合にも、個々の充電回路の入力端子が互いに電気的に結合されており、したがって、並列に接続されている。このようにして、例えば三相交流網から多相エネルギー供給を行うためにも誘導方式のエネルギー伝送を実現することができ、この場合、別個の2次コイル(受信コイル)は不要である。
【0020】
本発明の別の態様によれば、本発明による充電回路、充電回路の直流電圧端子に電気的に結合された電気エネルギー蓄積器、および充電回路の充電スイッチに電気的に結合された相端子を含む電動機を備える電気駆動システムが得られる。
【0021】
本発明の別の態様によれば、本発明による電気駆動システムを備える乗り物、特に航空機、船舶、または陸上車が得られる。
【0022】
本発明の他の利点および実施形態が、添付の図面を参照した次の説明により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態による誘導充電のための充電回路を示す概略図である。
【
図2】一実施形態による誘導充電のための充電回路を示す概略図である。
【
図3】一実施形態による誘導充電のための三相式充電回路を示す概略図である。
【
図4】一実施形態による誘導充電のための三相式充電回路を示す概略図である。
【
図5】一実施形態による方法の基礎をなすフロー図を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、充電回路1の概略図を示す。2つの端子要素B1およびB2を有する直流電圧端子11には、電気エネルギー蓄積器2が配置されている。例えば、この電気エネルギー蓄積器2は電池、特に電気自動車またはハイブリッド車の牽引用電池である。さらに、別の任意の電気エネルギー蓄積装置が充電回路1の直流電圧端子11に設けられていることも可能である。さらに、充電回路1は、2つの端子要素A1およびA2を有する交流電圧端子12を含む。充電回路1の第1切換素子S1が第1端子要素B1と第1ノードK1との間に配置されている。第2切換素子S2は、第1ノードK1と直流電圧端子11の第2端子要素B2との間に配置されている。第3切換素子S2が、交流電圧端子12の第1端子要素A1と第2ノードK2との間に配置されている。第4切換素子S4が、第2ノードK2と交流電圧端子12の別の端子要素A2との間に配置されている。第1ノードK1と第2ノードK2との間には、第1インダクタL1が配置されている。さらに、直流電圧端子11の第2端子要素B2と交流電圧端子12の別の端子要素A2とは、互いに電気的に接続されている。好ましくは、直流電圧端子11の第2端子要素B2と交流電圧端子12の別の端子要素A2との間のこの電気的接続部は、参照電位に接続されている。交流電圧端子12の両方の端子要素A1およびA2は充電スイッチ20に接続されている。さらに充電スイッチ20は電気エネルギー源3および電気消費装置、例えば電動モータ4に接続されている。この場合、充電スイッチ20は2つのスイッチ要素を含み、交流電圧端子12の両方の端子要素A1およびA2の両方の切換素子をそれぞれ電圧源3または電動モータ4に電気的に接続することができる。この場合、充電スイッチ20の両方の切換素子は互いに結合れており、交流電圧端子12の両方の端子A1およびA2が常に電圧源3または電動モータ4に接続されている。
【0025】
充電回路1の4つの切換素子S1〜S4は、好ましくは半導体切換素子である。この場合、各半導体切換素子にはそれぞれ1つのダイオードを並列に接続してもよい。切換素子S1〜S4の半導体切換素子は、例えば、サイリスタ、絶縁ゲートを備えるバイポーラトランジスタ(IGBT)、またはMOSFETであってもよい。この場合、高いスイッチング周波数のためには、特に、スイッチング周波数が20kHzよりも大きい場合には極めてわずかな切換損失しか示さない炭化ケイ素スイッチ(SiC)またはスーパージャンクションMOSFETも可能である。
【0026】
この場合、切換素子S1〜S4は制御装置10によって制御される。制御装置10は、電気エネルギー蓄積器2を充電するため、または電動機4を作動するために制御信号および/または目標値を受信するように設計されている。これらの制御信号および/または目標値に基づいて、制御装置10は、適切な切換素子S1〜S4を開閉するために切換信号を切換素子S1〜S4に出力する。この場合、制御信号もしくは目標値は、アナログまたはデジタル信号によって制御装置10に供給することができる。例えば、バスシステムを介して適切な制御信号または目標値を伝送し、制御装置10によって受信することもできる。さらに、制御装置10は直流電圧端子11および/または交流電圧端子12の電圧により信号値を受信することもできる。
【0027】
したがって、充電回路10における切換素子S1〜S4の制御に応じて、種々異なる運転モードを実現することができる。この場合、ある充電モードでは、充電回路1は複合的な整流器および昇圧/降圧コンバータとしてとして作動する。このために、まず充電回路1の交流電圧端子12が充電スイッチ20を介して電圧源3に接続され、この場合に同時に交流電圧端子12と電動機4との間の電気的接続が分離される。この充電モードでは、電圧源3から充電回路1の交流電圧端子12に電圧、好ましくは交流電圧が供給される。この場合、供給される交流電圧の大きさは変更することもでき、電気エネルギー蓄積器2を充電するために直流電圧端子11に供給される必要のある直流電圧よりも大きくてもよいし、または小さくてもよい。
【0028】
交流電圧端子12における電圧の振幅もしくは最大値が、電気エネルギー蓄積器2を充電するために必要な直流電圧よりも小さい場合には、充電回路1は複合的な整流器および昇圧コンバータとしての運転モードで作動する。この場合、第3切換素子S3は持続的に閉じられており、第4切換素子S4は持続的に開かれている。第1切換素子S1はアクティブな整流器として作動し、電流を一方向にのみ通過させる。第2切換素子S2は所定のスイッチング周波数に同期される。U2が交流電圧端子12における交流電圧の最大値を表し、U1が電気エネルギー蓄積器2に供給されることが望ましい直流電圧の値を表し、さらにTが第2切換素子S2を制御するクロック信号の周期継続時間を表し、t
einが周期継続時間内のスイッチオン時間を表す場合、次の関係:
U1/U2=T/(T−t
ein)
が成り立つ。
【0029】
電圧源3から交流電圧端子に供給された電圧U2の最大値もしくは振幅が、電気エネルギー蓄積器2が充電されることが望ましい電圧U1よりも大きい場合には、充電回路1は複合的な整流器および降圧コンバータとして作動する。このために、第1切換素子S1は持続的に閉じられており、第2切換素子S2は持続的に開かれている。第4切換素子S4はアクティブな整流器として作動し、電流を1方向にのみ通過させ、第3切換素子S3は所定のスイッチング周波数(f=1/T)に同期される。この場合、次の式:
U1/U2=t
ein/T
にしたがった電圧比が設定される。
【0030】
さらに充電回路1は反対に作動させることも可能であり、このような作動時には、電気エネルギー蓄積器2からの電圧は、電気エネルギー供給網に供給することができる電圧に変換されるか、または電動機4を制御するために用いることができる。別の作動モードでは、充電回路1は複合的な昇圧コンバータおよび整流器として作動することができる。この場合、電気エネルギー源2の直流電圧は引き上げられ、同時に電動機4を制御するため、または電気エネルギー供給網に供給するために適した電圧に変換される。このために、第1切換素子S1は持続的に閉じられているように制御装置10によって制御される。さらに、第2切換素子S2が持続的に開かれる。第3切換素子S3は電流が1方向にのみ流れるようにアクティブな整流器として制御される。最後に第4切換素子S4は所定のスイッチング周波数(f=1/T)によって制御される。この場合、パルス幅変調の原理に従って、交流電圧端子12における電圧を調節できるデューティサイクルが選択される。この場合、次の関係:
U2/U1=T/(T−t
ein)が成り立つ。
【0031】
代替的な作動モードでは、充電回路1は複合的な降圧コンバータおよび整流器として作動する。直流電圧端子11に印可される電気エネルギー蓄積器2の直流電圧は低減され、同時に、電動機4を制御するため、またはエネルギー供給網に供給するために適した電圧に変換される。この場合、降圧コンバータモードでは、交流電圧端子12における電圧の最大値、すなわち振幅は、直流電圧端子11に印可されている直流電圧よりも小さい。第3切換素子S3は持続的に閉じられており、第4切換素子S4は持続的に開かれている。第2切換素子S2はアクティブな整流器として制御され、電流を1方向にのみ通過させる。最終的に、第1切換素子S1は所定のスイッチング周波数(f=1/T)により制御され、交流電圧端子12では望ましい出力電圧が設定される。この場合、交流電圧端子12における電圧U2と直流電圧端子11における入力電圧U1との比率は:
U2/U1=t
ein/T
となる。
【0032】
この場合、この式からわかるように、降圧コンバータモードではt
einがゼロに接近した場合には電圧U2を0Voltまで低減することができる。
【0033】
切換素子S1〜S4が制御装置10によって制御される場合のスイッチング周波数は、極めて広い周波数範囲から選択することができる。この場合、従来の整流器のように、例えば10kHzまでの範囲のスイッチング周波数が可能である。しかしながら、比較的低いスイッチング周波数は、第1ノードK1と第2ノードK2との間に比較的大きいインダクタL1を必要とする。スイッチング周波数を、20kHzを超える周波数に高めることにより、必要なインダクタL1を適宜に縮小することができる。これにより、充電回路1に必要な構成スペースおよび重量が低減される。さらに、人が聞き取れる周波数スペクトルを超えるスイッチング周波数を使用することにより、聴覚的な妨げが少なくなる。このように20kHz以上の高いスイッチング周波数を使用する場合には、特に最新の炭化ケイ素(SiC)スイッチが好ましい。このようなSiCスイッチは、20kHzを超えるスイッチング周波数においても切換損失が比較的小さい。代替的には、同様に高いスイッチング周波数においても小さい切換損失しか示さないスーパージャンクションMOSFETを備える電圧コンバータを使用してもよい。
【0034】
図2は、充電回路1の別の実施形態を示す概略図である。この実施形態の充電回路1は、
図1の充電回路に大部分が対応している。この実施形態では、さらに第1インダクタL1が同時に誘導充電システムのための送受信コイルとして使用される。このように、第1インダクタL1と第2インダクタL2との間でトランスフォーマとしてエネルギーを伝送することが可能である。一般的な誘導システムは共振回路として実施されるので、充電回路1では、容量を補償し、共振周波数を決定するためのコンデンサC1を接続する必要がある。このコンデンサC1は、第1ノードK1と第2ノードK2との間に第1インダクタL1に対して並列して配置されている。
【0035】
この場合、別のインダクタL2が適切な充電回路30によって制御される。電気エネルギー蓄積器2を充電する場合には電圧源3から充電回路30へ送電される。充電回路30は、電圧源3から供給された電圧を、好ましくは高周波の適切な交流電圧に変換し、この高周波の交流電圧によって別のインダクタL2を励起する。この別のインダクタL2は続いて交流電磁場を生成し、この交流電磁場は第1インダクタL1に結合し、この場合に第1インダクタL1において電圧が誘導される。
【0036】
第1インダクタL1への交流電磁場の結合を可能にするためには、別のインダクタL2と第1インダクタL1との間で誘導エネルギーを伝送するために第1インダクタンスL1を変更する必要がある。電気エネルギーが直流電圧端子11と交流電圧端子12との間で変換される駆動モードで作動する場合には、第1インダクタL1は、好ましくは閉じられたヨークを備えている必要がある。しかしながら、別のインダクタL2の交流電磁場が第1インダクタL1に結合されることが望ましい場合には、別のインダクタL2の磁束を第1インダクタに結合することができるように、このヨークを開く必要がある。したがって、別のインダクタL2と第1インダクタL1との間の結合係数は最大になる。このためには任意の機械的な構成が可能である。例えば、電気的な駆動装置により、設定したい作動モードに対応してヨークを調整することもできる。代替的には、第1インダクタL1が別のインダクタL2の上方に配置された場合にはすぐにヨークの一部を自動的に外すか、または変位させることも可能である。このためには、任意の純粋に機械的な、またはモータ制御式の手段が可能である。
【0037】
この構成においても、充電モードで充電スイッチ20によって交流電圧端子12と電動モータ4との間の電気的接続を分離する必要がある。さらに、付加的な切換素子21によって、直流電圧端子11の端子要素B1と交流電圧端子12の端子要素A1とが電気的に接続され、4つの切換素子S1〜S4によって整流回路が生じる。さらに、フリーホイールダイオードに並列された切換素子S1〜S4をアクティブに制御することによって付加的に効率を改善することができる(アクティブな整流)。
【0038】
図3は、多相充電装置の概略図を示す。この場合、本発明によるコンセプトは、任意の数の相に適用可能であり、ここに示した三相を備える構成に制限されていない。
図3に示した充電装置は、それぞれの相のために個別の充電回路1を備える。この場合、個々の充電回路1の直流電圧端子11は互いに結合されており、並列に接続されている。充電回路1の互いに結合されたこれらの直流電圧端子11は、エネルギー蓄積器2に接続されている。交流電圧側では、それぞれの充電回路1が多相システムの1つの相に結合されている。この実施例では充電スイッチ20は適切な数の切換素子を備え、全ての相を多相エネルギー源3または多相電動機4の相端子に結合することができる。基本的には、電動機4が電気エネルギー源3としてより多くの相を備えることも可能である。この場合、必ずしも全ての充電回路1が電圧源3の1つの相に結合されているわけではない。
【0039】
全ての充電回路1を中央で同期的に制御するためには、全ての充電回路1、特に全ての充電回路1の全ての切換素子S1〜S4を共通の制御装置10によって制御することもできる。
【0040】
図4は、複数の相を備える誘導充電のための充電装置の概略図を示す。この実施形態では、充電装置は、それぞれの相のために別個の充電回路1を含む。特にこの実施形態では、充電装置は電圧源3のそれぞれの相のために、
図2に示した別個の充電回路を含む。この実施形態においても、全ての充電回路1を中央の制御装置10によって制御することができる。
【0041】
図3および
図4に示した多相充電回路の場合には、制御装置10は、特に電気エネルギー蓄積器2を充電するために望ましい電気出力に依存して、電圧源3で使用される相の数を調整することができる。この場合、例えば提供されている充電時間および/または電気エネルギー蓄積器2の充電状態に依存して、使用される電圧源3の相の数を変えることもできる。このようにして、電圧源3で使用される相を減らすことにより、充電電力が小さい場合にもアクティブな充電回路を効率的な作動範囲で作動することが可能である。
【0042】
この場合、上記実施例では、単相モードにおいても多相モードにおいても、各相のためにそれぞれ単独の充電回路1が作動される。さらに、複数の充電回路1を並列に接続し、これにより、パワースペクトルを拡大することも可能である。したがって、1つの相で複数の充電回路1を並列に接続し、所望の充電電力に応じて、制御される充電回路の数を変えることもできる。例えば、所望の充電電力が大きい場合には、提供されている全ての充電回路1を並行して制御することができる。これに対して、電気エネルギー蓄積器2に小さい電力のみを充電することが望ましい場合、または電気エネルギー蓄積器2から小さい電力のみを取り出すことが望ましい場合には、並列に接続された複数の充電回路1において、これらの充電回路1の一部のみ、または必要に応じて単独の充電回路1のみを制御することも可能である。このようにして、制御される充電回路1を常に効率的な作動範囲で作動し、これにより、アクティブな充電回路の損失を最小限にすることもできる。
【0043】
図5は、本発明による充電回路を作動する方法の概略的なフロー図を示す。充電回路1が駆動モード作動されることが望ましい場合には、ステップS1で、充電回路1は電動機4に接続される。これに対して、電気的なエネルギー蓄積器2を充電する場合、または電気エネルギーを電気エネルギー蓄積器2からエネルギー供給網に供給する場合には、充電回路1は充電モードで作動される。このために、ステップS2では、電動機4と充電回路1との間の電気接続が分離される。
【0044】
要約すれば、本発明は電気エネルギー蓄積器のための充電回路に関する。電気エネルギー蓄積器を充電および放電するためには、共通の構成部品が使用される。このために、昇圧および降圧コンバータ機能を含む充電回路が提案され、このような充電回路が、整流器もしくはインバータ機能と組み合わされる。このようにして、少数の構成素子によって柔軟な回路構造を可能にする回路装置が得られる。