(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333482
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】強化構造体を成形体表面に形成する装置および方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20180521BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20180521BHJP
B29C 35/08 20060101ALI20180521BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20180521BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C65/16
B29C35/08
B29K101:12
B29K105:06
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-527313(P2017-527313)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公表番号】特表2017-537816(P2017-537816A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015076266
(87)【国際公開番号】WO2016078979
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年7月19日
(31)【優先権主張番号】102014017086.1
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ ステーフェン マーテン コーク
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ケルツァー
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−030336(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0145932(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0247751(US,A1)
【文献】
米国特許第06451152(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
B29C 35/08
B29C 65/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチックを有する繊維強化されたテープ(30)を有する強化構造体(20)を、成形体表面(11)に形成する装置であって、
前記装置は、前記成形体表面(11)に前記テープ(30)を圧着させる圧着装置(40)を有し、
前記テープ(30)は前記圧着装置(40)と前記成形体表面(11)との間に位置決め可能であり、このとき前記テープ(30)の圧着部分(31)を前記圧着装置(40)および前記成形体表面(11)に接触させることができ、これにより前記テープ(30)を、前記圧着装置(40)を用いて前記成形体表面(11)に向かって押圧することができ、
前記装置は、移動装置および/または回転装置(60)を有し、該移動装置および/または回転装置(60)は、成形体(10)および/または前記圧着装置(40)に運動を伝達するように連結されており、これにより前記圧着装置(40)に対する前記成形体(10)の相対運動および/または相対回動を得ることができ、これによって前記テープ(30)は前記成形体表面(11)上に送り込むことができ、このとき前記圧着装置(40)は、前記成形体表面(11)に相対運動方向(R1)において移動し、前記テープ(30)は、前記圧着装置(40)に関して引張り方向(R2)に引っ張られ、
前記装置は、前記引張り方向(R2)において前記テープ(30)の圧着領域(31)の上流側に配置された、前記テープ(30)の加熱面(32)を照射するための、および/または前記相対運動方向(R1)において前記圧着領域(31)の下流側に配置された、前記成形体(10)の加熱面(12)を照射するための、複数のレーザダイオード(111)を備えた少なくとも1つのレーザダイオードアレー(110,120)を有し、
前記レーザダイオードアレー(110,120)を用いた照射によって、前記テープ(30)はその加熱面(32)の領域において局部的に溶融可能であり、および/または前記成形体表面(11)はその加熱面(12)の領域において局部的に溶融可能であり、これにより前記圧着装置(40)を用いた前記成形体表面(11)における前記テープ(30)の圧着によって、前記テープ(30)が前記成形体(10)に結合可能である、
装置において、
不均一の強度分布を前記テープ(30)の前記加熱面(32)において生ぜしめ、このとき前記テープ(30)の前記加熱面(32)における放射強度が前記引張り方向(R2)において少なくとも部分的に低減するような放射領域を放射すべく、前記レーザダイオードアレー(110,120)は合わせられており、
少なくとも2つのレーザダイオード(111)の放射方向ベクトルが、互いに平行に向けられておらず、一方または双方の前記加熱面(12,32)に向かって互いに近づくように向けられている
ことを特徴とする、強化構造体を成形体表面に形成する装置。
【請求項2】
前記装置は、さらに加熱装置(70)を有し、該加熱装置(70)を用いて、前記引張り方向(R2)において前記加熱面(32)の上流側に配置された前記テープ(30)が、予め設定された温度に加熱可能である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記テープ(30)の、前記成形体(10)に接触させられる前記加熱面(32)を加熱するように設計された第1のレーザダイオードアレー(110)に加えて、第2のレーザダイオードアレー(120)を有し、
前記第2のレーザダイオードアレー(120)は、前記テープ(30)の、該テープ(30)の前記加熱面(32)とは反対側に位置する背側を照射する、複数のレーザダイオード(111)を有している、
という特徴を有する、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのレーザダイオードアレー(110)は、前記成形体(10)の、相対運動方向(R1)において前記圧着領域(31)の下流側に配置された前記加熱面(12)を照射するように合わせられており、しかも、不均一の強度分布を、前記成形体(10)の前記加熱面(12)において生ぜしめ、このとき、前記成形体(10)の前記加熱面(12)における放射強度が前記相対運動方向(R1)とは逆向きに少なくとも部分的に低減するような放射領域を放射すべく、前記レーザダイオードアレー(110)はさらに合わせられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
1つまたは複数のレーザダイオードアレー(110,120)は、前記テープ(30)および前記成形体(10)の前記加熱面(12,32)それぞれを、前記テープ(30)と前記成形体(10)との接触線の直ぐ前に位置する領域において異なった温度に加熱するように合わせられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記圧着装置(40)は圧着ローラ(40)として形成されており、該圧着ローラ(40)の外面はエラストマ材料から形成されていて、これにより前記圧着ローラ(40)を用いた前記成形体(10)における前記テープ(30)の圧着時に、前記圧着ローラ(40)と前記テープ(30)との間における接触面積が、押圧力の上昇と共に増大する、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記圧着装置(40)は、前記テープ(30)および前記成形体(10)に接触可能な領域において、1つまたは複数の前記レーザダイオードアレー(110,120)から放射される放射線に対して実質的に透明である、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記レーザダイオードアレー(110,120)を有する照射モジュール(100)を有し、
前記照射モジュール(100)は、前記テープ(30)の前記加熱面(32)および/または前記成形体(10)の前記加熱面(12)にそれぞれ向けられた少なくとも2つの放射面(101,102,103)を有し、
前記放射面(101,102,103)のそれぞれに、前記レーザダイオードアレー(110,120)の少なくとも1つのレーザダイオード(111)が配置されており、該レーザダイオード(111)の放射方向ベクトルは、前記放射面(101,102,103)の法線ベクトルに対して平行に向けられており、
互いに隣接する2つの放射面(101,102,103)によって形成された角度が、可変である、
という特徴を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記レーザダイオードアレー(110,120)を有する照射モジュール(100)を有し、
前記照射モジュール(100)は、前記テープ(30)の前記加熱面(32)および/または前記成形体(10)の前記加熱面(12)にそれぞれ向けられた少なくとも2つの放射面(101,102,103)を有し、
前記放射面(101,102,103)のそれぞれに、前記レーザダイオードアレー(110,120)の少なくとも1つのレーザダイオード(111)が配置されており、前記レーザダイオード(111)の放射方向ベクトルは、前記放射面(101,102,103)の法線ベクトルに対して平行に向けられており、
前記放射面(101,102,103)の前記法線ベクトルは、互いに平行に向けられておらず、一方または双方の前記加熱面(12,32)に向かって互いに近づくように向けられている、
という特徴を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記レーザダイオードアレー(110,120)を有する照射モジュール(100)を有し、
前記照射モジュール(100)は、前記テープ(30)の前記加熱面(32)および/または前記成形体(10)の前記加熱面(12)に向けられた少なくとも1つの放射面(104)を有し、
1つまたは複数の前記放射面(104)は、凹面状に形成されており、
前記レーザダイオードアレー(110,120)の前記レーザダイオード(111)は、互いに間隔をおいて前記放射面(104)に配置されており、前記レーザダイオード(111)の各放射方向ベクトルは、前記レーザダイオード(111)を取り囲む前記放射面(104)の局部的な法線ベクトルに対して平行に向けられており、これにより少なくとも2つのレーザダイオード(111)の前記放射方向ベクトルは、互いに平行に向けられておらず、1つまたは複数の前記加熱面(12,32)に向かって互いに近づくように向けられている、
という特徴を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記レーザダイオードアレー(110,120)の前記レーザダイオード(111)は、互いに少なくとも部分的に互いに等間隔でない間隔をおいて位置している、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記レーザダイオードアレー(110,120)の前記レーザダイオード(111)は、サーフェスエミッタ(111)として形成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記レーザダイオードアレー(110,120)に、視準結像光学系が光学的に後置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記レーザダイオードアレー(110,120)の個々のレーザダイオード(111)の放射出力が、制御装置(140)を用いて別個に調節可能である、請求項1から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記強化構造体(20)は、圧力容器(1)の支持シェル(20)であり、かつ前記成形体(10)は、前記圧力容器(1)の内側容器(10)である、請求項1から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
熱可塑性プラスチックを有する繊維強化されたテープ(30)を有する強化構造体(20)を、成形体表面(11)に形成する方法であって、
前記テープ(30)を圧着装置(40)と前記成形体表面(11)との間に位置決めし、これにより前記テープ(30)の圧着部分(31)を前記圧着装置(40)および前記成形体表面(11)に接触させるステップと、
前記圧着装置(40)を前記成形体表面(11)に向かって押圧し、これにより前記テープ(30)を前記成形体表面(11)に圧着させるステップと、
成形体(10)を前記圧着装置(40)に対して相対運動および/または相対回動させ、これにより前記成形体(10)と前記圧着装置(40)とを互いに対して相対運動および/または相対回動させ、これによって前記テープ(30)を前記成形体表面(11)上に送り込み、このとき前記圧着装置(40)を、前記成形体表面(11)に相対運動方向(R1)において移動させ、前記テープ(30)を、前記圧着装置(40)に関して引張り方向(R2)に引っ張るステップと、
前記引張り方向(R2)において前記テープ(30)の圧着領域(31)の上流側に配置された、前記テープ(30)の加熱面(32)を、および/または前記相対運動方向(R1)において前記圧着領域(31)の下流側に配置された、前記成形体(10)の加熱面(12)を、レーザダイオードアレー(110,120)の複数のレーザダイオード(111)を用いて照射するステップと、
前記テープ(30)をその加熱面(32)の領域において、および/または前記成形体表面(11)をその加熱面(12)の領域において、前記レーザダイオードアレー(110,120)を用いて局部的に溶融させ、これにより、前記圧着装置(40)を用いた前記成形体表面(11)における前記テープ(30)の圧着によって、前記テープ(30)を前記成形体(10)に結合させるステップと、
を有する方法において、
不均一の強度分布を前記テープ(30)の前記加熱面(32)において生ぜしめ、このとき前記テープ(30)の前記加熱面(32)における放射強度が前記引張り方向(R2)において少なくとも部分的に低減するような放射領域を、前記レーザダイオードアレー(110,120)が形成するように、前記レーザダイオードアレー(110,120)を制御する
ことを特徴とする、強化構造体を成形体表面に形成する方法。
【請求項17】
前記加熱面(12,32)を照射する前に、前記引張り方向(R2)において前記加熱面(32)の上流側に配置された前記テープ(30)を、加熱装置(70)を用いて、予め設定された温度に加熱する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記テープ(30)の、該テープ(30)の前記加熱面(32)とは反対側に位置する背側を、第2のレーザダイオードアレー(120)を用いて加熱する、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
不均一の強度分布を、前記成形体(10)の前記加熱面(12)において生ぜしめ、このとき、前記成形体(10)の前記加熱面(12)における放射強度が前記相対運動方向(R1)とは逆向きに少なくとも部分的に低減するような放射領域を、前記レーザダイオードアレー(110)から放射する、請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化構造体を成形体表面に形成する装置および方法に関する。
【0002】
成形体表面としては、このとき、任意に形成された基材または任意に成形されかつ寸法設定された成形体のいかなる面もしくは表面をも含むと理解することができる。
【0003】
重量最適化の理由から、基材および/または成形体はしばしばプラスチックから形成される。相応に重量最適化された基材および/または成形体は、しかしながらまた減じられた安定性を有することがある。安定性を高めるために、基材および/または成形体に強化構造体を設けることができる。この強化構造体は、例えば繊維強化された熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
【0004】
成形体もしくは基材の1例は、圧力容器の内側容器である。内側容器は、例えば熱可塑性プラスチックから形成されているか、または熱可塑性プラスチックを少なくとも含んでいることができる。圧力容器は、圧力下にある気体および/または圧力下にある液体を貯えるために使用される。例えば圧力容器は既に、天然ガスによって作動させられる自動車において使用されている。さらに、圧力下にある水素を満たされる、自動車用の圧力容器も公知である。水素は、内燃機関において酸素と共に燃焼されるか、または燃料電池において酸素と反応して水を形成し、このとき得られた電気エネルギは、アキュムレータまたは電動機に供給される。
【0005】
相応の圧力容器は、大きな負荷に耐えなくてはならない。天然ガス用の圧力容器は、例えば250バールまでの圧力で満たされる。水素用の圧力容器は、700バールまでの圧力で満たされる。従って、このような圧力容器の内側領域を形成しかつ例えば熱可塑性プラスチックから形成されている圧力内側容器は、圧力内側容器の強化を可能にする外側の支持構造体を備えなくてはならない。その結果圧力容器は、700バールまでの圧力負荷に耐えることができる。
【0006】
従来技術に基づいて、成形体に、熱可塑性プラスチック製の支持構造体を設けることが公知であり、このとき熱可塑性プラスチックは繊維強化されて、特に炭素繊維によって強化されて形成されていてもよい。この場合に、成形体と支持構造体との間における確実かつ安定した結合が必要である。
【0007】
例えば米国特許第6451152号明細書には、プラスチックテープからプラスチック製品を形成する方法が記載されている。そのためにプラスチックテープと基材との互いに向かい合って位置する面には、レーザ光が照射されかつ加熱され、このときレーザ光は、エッジエミッタ・レーザダイオードアレーから放射される。エッジエミッタ・レーザダイオードアレーから放射されたレーザ光は、このとき構造形式に基づいて大きな発散角度を有しているので、エッジエミッタ・レーザダイオードアレーと照射される面との間には、結像光学系が配置されており、これによって、面の加熱に必要な強度を得ることができる。プラスチックテープを基材に固着させるために、プラスチックテープは、圧着装置を用いて基材の表面に押圧される。米国特許第6451152号明細書の記載によれば、プラスチックテープおよび基材の表面は、合わせられた強度で局部的に照射されることができ、これにより、プラスチックテープが基材上に湾曲されて載置されている場合には、プラスチックテープのカーブ内側の領域がより強く加熱され、これによってプラスチックテープは曲げられた形状においてより良好に基材に下ろされ、基材に結合されることができる。
【0008】
本発明の根底を成す課題は、択一的に単に基材とも呼ぶことができる成形体の表面に、強化構造体を形成する装置の改善であり、このとき強化構造体は、熱可塑性プラスチックを有する繊維強化されたテープを有しており、このとき強化構造体を形成する本発明に係る装置は、強化構造体のより迅速な製造と、さらに基材におけるプラスチックテープの改善された固着とを可能にする。
【0009】
本発明の根底を成す課題は、請求項1に記載の特徴を備えた、成形体表面に強化構造体を形成する装置によって解決される。好適な実施形態は、請求項1を引用する従属請求項に記載されている。
【0010】
さらに、本発明の根底を成す課題は、請求項17に記載の特徴を備えた、成形体表面に強化構造体を形成する方法によって解決される。好適な実施形態は、請求項17を引用する従属請求項に記載されている。
【0011】
より正確に言えば、本発明の根底を成す課題は、熱可塑性プラスチックを有する繊維強化されたテープを有する強化構造体を、成形体表面に形成する装置によって解決される。このとき装置は、成形体表面にテープを圧着させる圧着装置を有している。テープは圧着装置と成形体表面との間に位置決め可能であり、このときテープの圧着部分を圧着装置および成形体表面に接触させることができ、これによりテープを、圧着装置を用いて成形体表面に向かって押圧させることができるようになっている。テープはその結果、圧着装置と成形体表面との間にサンドイッチ状に配置される。装置はさらに、移動装置および/または回転装置を有していて、該移動装置および/または回転装置は、成形体および/または圧着装置に運動を伝達するように連結されている。これにより圧着装置に対する成形体の相対運動および/または相対回動を得ることができ、これによってテープは成形体表面上に送り込むことができる。このとき圧着装置は、成形体表面に相対運動方向において移動し、テープは、圧着装置に関して引張り方向に引っ張られる。さらに装置は、引張り方向においてテープの圧着領域の上流側に配置された、テープの加熱面を照射するため、および/または相対運動方向において圧着領域の下流側に配置された、成形体の加熱面を照射するために、複数のレーザダイオードを備えた少なくとも1つのレーザダイオードアレーを有している。レーザダイオードアレーを用いた照射によって、テープはその加熱面の領域において局部的に溶融可能であり、および/または成形体表面はその加熱面の領域において局部的に溶融可能である。これにより圧着装置を用いた成形体表面におけるテープの圧着によって、テープは成形体に結合可能である。本発明に係る装置は、不均一の強度分布をテープの加熱面において生ぜしめ、このときテープの加熱面における放射強度が引張り方向において少なくとも部分的に低減するような放射領域を放射すべく、レーザダイオードアレーは合わせられていることによって特徴付けられている。
【0012】
テープの加熱面における放射強度が引張り方向において少なくとも部分的に低減するような、相応の加熱戦略によって、テープの照射される側は、加熱面の開始部において、つまり加熱面の、成形体表面から最も離れている領域において、圧着領域の直前におけるよりも強く加熱される。これによってテープをその厚さにわたってもより良好に熱平衡化することができ、つまりテープ背側の温度を、照射されるテープ前側の温度により良好に合わせることができる。これにより、テープの厚さにわたって均一な温度分布が得られる。均一な温度分布に基づいて、テープの材料はその厚さにわたって均一な粘稠性を有するので、成形体表面もしくは既に形成された強化構造体へのテープの圧着によって、テープは僅かしか機械的な応力を被らなくなる。さらにテープはその厚さにわたる均一な温度分布に基づいて、冷却後においても僅かな熱応力しか有しない。この両方の効果によって、成形体表面もしくは既に形成された強化構造体へのテープの結合がより安定的になり、その結果強化構造体を備えた成形体は、高い安定性を有することになる。
【0013】
このとき作用機構は以下の通りである。テープはその加熱面の開始部において、レーザ光を用いて強く加熱される。なぜならば、レーザ光の強度は加熱面の開始部の領域において特に高いからである。テープの厚さにわたる高い温度勾配に基づいて、テープの厚さ方向において温度補償が加速される。レーザダイオードアレーから放射された放射線によるテープのさらなる加熱プロセス中に、レーザ光の強度は引張り方向において低減するので、加熱面における加熱の速度が低下する。これによってテープの前側、つまりテープの、成形体に向けられた側は、材料固有の最大温度を超えて加熱されず、このとき同時に、テープ前側に対するテープ背側の温度の温度調整が達成される。
【0014】
本発明に係る装置によってさらに、比較的厚いテープをも、強化構造体を形成するために使用することが可能になる。なぜならば、本発明に係る加熱戦略に基づいて、比較的厚いテープもその厚さにわたって熱平衡化することができるからである。もちろん比較的多数の繊維、特に炭素繊維をも有することができる、比較的厚いテープの使用によって、強化構造体を製造するために、比較的僅かな数のテープ個別層を、成形体表面に載置させるだけでよいので、強化構造体を製造するための時間は短縮される。
【0015】
もちろん、テープの加熱面の放射強度が引張り方向において単調に低減することは、不要である。引張り方向において部分的に上昇する強度を備えた、引張り方向におけるテープ加熱面の放射強度変化も、単に、引張り方向におけるテープ加熱面の放射強度が少なくとも部分的に低減することが保証されていれば、可能である。
【0016】
レーザダイオードアレーから放射されたレーザ光の波長は、好ましくは赤外線帯域にある。例えば波長は、780nm〜1500nmの範囲に位置している。赤外線は熱可塑性プラスチックによって特に良好に吸収されるので、赤外線の使用は特に好適である。
【0017】
移動装置および/または回転装置は、圧着装置を移動および/または回転させるための、例えばロボットのような取扱い装置と、成形体を移動および/または回転させるための別の取扱い装置とを有することができる。
【0018】
成形体は、このとき任意の幾何学形状を有することができる。最も簡単な場合には、成形体はフラットな基材として形成されている。もちろん、成形体が、例えば、特に圧力容器の内側容器が有する円筒形の幾何学形状のような比較的複雑な幾何学形状を有することも可能である。
【0019】
例えば内側容器が強化構造体を備えることが望ましい場合には、移動装置および/または回転装置は、レーザダイオードアレーが配置されているロボットアームを有することができる。さらに移動装置および/または回転装置は、圧力容器もしくは内側容器が配置されている回転スピンドルを有することができる。容器は回転スピンドルを用いて容器の長手方向軸線を中心にして回転可能である。さらに回転スピンドル自体は、内側容器の長手方向軸線に対して垂直な回転軸線を中心にして回転可能であってもよい。例えば製造される圧力容器の内側容器である成形体は、特に熱可塑性材料から形成されているかまたは熱可塑性材料を少なくとも含んでいることができる。例えば成形体の外面は、熱可塑性材料から成っていてもよい。このような場合には、テープと成形体との間において素材結合式の結合が行われる。
【0020】
しかしながらまた、もちろん、成形体は金属から成っていてもよく、このような場合にはテープと成形体との間における結合は、形状結合式および/または力結合式に行われる。
【0021】
成形体表面に装着される強化構造体は、支持構造体または補強構造体とも呼ぶことができる。
【0022】
好ましくは、装置は、さらに加熱装置を有しており、該加熱装置を用いて、引張り方向において加熱面の上流側に配置されたテープが、予め設定された温度に加熱可能である。
【0023】
これによって、テープはその加熱面の制限された長さにわたって、テープの前側と背側との間における減じられた温度差にわたって熱平衡化されるだけでよい。従ってテープはその厚さにわたってさらに改善されて熱平衡可能となり、これによって、成形体におけるテープの圧着時の機械的な応力がさらに僅かになり、かつ成形体におけるテープの冷却後の、熱に起因する応力も僅かになる。さらにまた、強化構造体を形成するために比較的厚いプラスチックテープを使用することができるので、強化構造体のための製造時間はさらに短くなる。
【0024】
加熱装置としては、最も簡単な場合には、加熱トンネルを使用することができ、この加熱トンネルを通して、プラスチックテープは成形体表面における載置まで引っ張られる。さらに、テープの前側および/または背側を照射することができる赤外線ダイオードを使用することも可能である。さらにまた、テープの前側および背側のための加熱ガス流も可能である。
【0025】
好ましくは、装置は、テープの、成形体に接触させられる加熱面を加熱するように設計された第1のレーザダイオードアレーに加えて、第2のレーザダイオードアレーを有しており、該第2のレーザダイオードアレーは、テープの、該テープの加熱面とは反対側に位置する背側を照射する、複数のレーザダイオードを有している。
【0026】
第2のレーザダイオードアレーによって、テープはその厚さ全体にわたって、さらに均一な温度分布を有することができる。第2のレーザダイオードアレーによって照射されたテープ背側は、好ましくは、テープの加熱面のちょうど反対側に配置されているので、テープは加熱面においてその2つの表面から加熱されることになる。
【0027】
装置の相応の構成によって、硬化後もしくは冷却後における強化構造体の熱応力をさらに僅かにすることができる。テープは成形体表面における載置および圧着の前に再度改善されて熱平衡化されるからである。さらに、相応の装置ではまた、さらに厚いプラスチックテープを使用することも可能なので、強化構造体を有する製品を製造するために比較的短いサイクル時間を実現することができる。
【0028】
装置の別の好適な実施形態では、少なくとも1つのレーザダイオードアレーは、成形体の、相対運動方向において圧着領域の下流側に配置された加熱面を照射するように合わせられており、しかも、不均一の強度分布を成形体の加熱面において生ぜしめ、このとき成形体の加熱面における放射強度が相対運動方向とは逆向きに少なくとも部分的に低減するような放射領域を放射すべく、レーザダイオードアレーはさらに合わせられている。
【0029】
その結果、少なくとも部分的に成形体の加熱面は加熱ゾーンの開始領域において、加熱面の終端部に比べて、少なくともより強く加熱される。これによって、成形体の表面も、予め設定された深さに到るまで熱平衡化されることができるので、テープの圧着後および強化構造体およびテープの冷却後に、強化構造体における応力は減じられる。
【0030】
装置の別の好適な態様では、1つまたは複数のレーザダイオードアレーは、テープおよび成形体の加熱面それぞれを、テープと成形体との接触線の直ぐ前に位置する領域において異なった温度に加熱するように合わせられている。
【0031】
これによって、成形体とテープとが、場合によっては溶接のために互いに異なる最適温度を有する異なった熱可塑性プラスチックから形成されること、またはそのような異なった熱可塑性プラスチックを少なくとも含んでいることが可能になる。
【0032】
好ましくは、圧着装置は圧着ローラとして形成されており、該圧着ローラの外面はエラストマ材料から形成されていて、これにより圧着ローラを用いた成形体における、もしくは成形体表面へのテープの圧着時に、圧着ローラとテープとの間における接触面積が、押圧力の上昇と共に増大する。
【0033】
これによってプラスチックテープと成形体表面との間における結合領域が増大されるので、接触領域における押圧負荷時間を長くすることができ、その結果プラスチックテープと基材もしくは成形体表面との間におけるより緊密な結合が可能になる。このことによってまた、このようにして形成された強化構造体の安定性がさらに高められる。
【0034】
装置の別の好適な態様では、圧着装置は、テープおよび成形体に接触可能な領域において、1つまたは複数のレーザダイオードアレーから放射される放射線に対して実質的に透明である。
【0035】
これによって、圧着ローラもしくは圧着装置は、レーザ光によってあまり加熱されなくなり、このことはまた、成形体への減じられた入熱を生ぜしめる。特に、成形体が熱可塑性プラスチックから成っている、または熱可塑性プラスチックを含んでいる場合に、これによって成形体の構造上の完全性(Integritaet)があまり低減されない。
【0036】
従って、圧着装置がレーザダイオードアレーから放射された放射線に対して実質的に透明であるという特徴は、放射線に対する材料の透過率(Transmissivitaet)が75%よりも高い、好ましくは80%よりも高い、さらに好ましくは85%よりも高い、さらに好ましくは90%よりも高い、最も好ましくは95%よりも高いということを意味する。
【0037】
装置は、好ましくは、少なくとも2つのレーザダイオードの放射方向ベクトルが、互いに平行に向けられておらず、一方または双方の加熱面に向かって互いに近づくように向けられている。
【0038】
これによって1つまたは複数の加熱面における高い放射強度を、実現することができる。なぜならば、個々のレーザダイオードの放射発散は、レーザダイオードの配置形態によって少なくとも部分的に補償することができるからである。さらに装置の相応の構成によって、レーザダイオードアレーがテープおよび/または成形体の加熱面に向かって比較的大きな距離を有するということが可能である。さらにこれによって、加熱面における、加熱のために必要な強度を得るために、レーザダイオードアレーと1つまたは複数の加熱面との間に別体の視準光学系が不要であるということを可能にすることができる。そしてこれにより装置全体は、大幅に簡単化され、かつそのコストも比較的安価になる。
【0039】
装置は、好ましくは、前記装置が、レーザダイオードアレーを有する照射モジュールを有しており、該照射モジュールが、テープの加熱面および/または成形体の加熱面にそれぞれ向けられた少なくとも2つの放射面を有するように構成されている。放射面のそれぞれには、レーザダイオードアレーの少なくとも1つのレーザダイオードが配置されており、該レーザダイオードの放射方向ベクトルは、放射面の法線ベクトルに対して平行に向けられている。このとき、互いに隣接する2つの放射面によって形成された角度が、可変である。
【0040】
しかしながら本発明は、互いに隣接する2つの放射面のただ1つの角度が可変もしくは変化可能であるような構成に制限されない。むしろ照射モジュールの放射面のすべての角度が調整され得るもしくは変化可能である。互いに隣接する放射面の角度の変化は、電気機械式に行うことができる。例えば照射モジュールの個々の構成部材がターンテーブルに配置されていてもよく、これによって照射モジュールの個々のセグメント相互の角度方向付けを変化させることができる。また照射モジュールの個々のセグメントの角度位置を、圧電素子を用いて変化させることも可能である。
【0041】
照射モジュールの個々のセグメントの通常の角度変化は、通常、0.1°〜10°の角度範囲にある。さらに好ましくは、照射モジュールの個々のセグメントの間における角度変化は、0.1°〜5°である。さらに好ましくは、個々のセグメントの間における角度変化は、0.2°〜3°である。最も好ましくは、角度変化は0.3°〜1°である。
【0042】
本発明に係る装置の相応の構成によって、1つまたは複数の加熱面の強度プロファイルは、単に、個々のレーザダイオードの電流値の変化のみならず、むしろ追加的にまたは択一的に、個々のセグメントの角度変化によって、それぞれのレーザダイオードから放射される種々異なった放射円錐を互いにオーバラップさせることができ、これによって、1つまたは複数の加熱面における強度プロファイルをさらに変化させることができる。
【0043】
成形体表面に強化構造体を形成する相応に構成された装置は、成形体の種々様々な幾何学形状に対してさらにフレキシブルに調節可能である。さらに、相応に構成された装置によって、テープを取り囲む材料にレーザ光を不必要に照射することなしに、種々異なった幅のテープを加熱することも可能である。
【0044】
装置は、好ましくは、前記装置が、レーザダイオードアレーを有する照射モジュールを有しており、該照射モジュールが、テープの加熱面および/または成形体の加熱面にそれぞれ向けられた少なくとも2つの放射面を有しているように構成されている。放射面のそれぞれには、レーザダイオードアレーの少なくとも1つのレーザダイオードが配置されており、該レーザダイオードの放射方向ベクトルは、放射面の法線ベクトルに対して平行に向けられている。このとき放射面の法線ベクトルは、互いに平行に向けられておらず、1つまたは複数の加熱面に向かって互いに近づくように向けられている。
【0045】
例えば照射モジュールの個々のセグメント化された放射面は、凹面状の包絡面によって画定されていてもよい。
【0046】
別の好適な態様では、装置は、当該装置が、レーザダイオードアレーを有する照射モジュールを有しており、該照射モジュールが、テープの加熱面および/または成形体の加熱面に向けられた少なくとも1つの放射面を有しているように構成されている。このとき1つまたは複数の該放射面は、凹面状に形成されており、レーザダイオードアレーのレーザダイオードは、互いに間隔をおいて放射面に配置されており、レーザダイオードの各放射方向ベクトルは、レーザダイオードを取り囲む放射面の局部的な法線ベクトルに対して平行に向けられており、これにより少なくとも2つのレーザダイオードの放射方向ベクトルは、互いに平行に向けられておらず、1つまたは複数の加熱面に向かって互いに近づくように向けられている。
【0047】
直ぐ上に記載した装置の2つの構成は、個々のレーザダイオードの放射発散を補償することができ、これによってテープおよび成形体の加熱面における高いレーザ光強度が実現可能であるという利点を提供する。これによってさらに、レーザダイオードアレーとテープの加熱面もしくは成形体の加熱面との間における結像光学系を省くことが可能になる。
【0048】
装置の好適な態様では、レーザダイオードアレーのレーザダイオードは、互いに少なくとも部分的に互いに等間隔でない間隔をおいて位置している。
【0049】
レーザダイオードが互いに等間隔ではない間隔をおいて位置していることによって、テープの加熱面および/または成形体の加熱面における不均一な放射強度を実現もしくは促進することができる。さらにレーザダイオード相互の不均一な間隔によって、放射方向ベクトルが互いに平行に延びていないにもかかわらず、加熱面における所望の、例えば均一な強度分布を得ることができる。
【0050】
例えば、比較的大きな角度を成して加熱面にレーザ光を放射するレーザダイオードの間における間隔は、比較的鋭角の角度を成してまたはほぼ垂直に加熱面にレーザ光を放射するレーザダイオードの間における間隔よりも小さくてもよい。
【0051】
好ましくは、レーザダイオードアレーのレーザダイオードは、サーフェスエミッタとして形成されている。
【0052】
サーフェスエミッタ・レーザダイオードもしくはVCSEL(英語:vertical-cavity surface-emitting laser 垂直共振器面発光レーザ)とも呼ぶことができるサーフェスエミッタの使用によって、場合によっては必要であった結像光学系をレーザダイオードアレーとテープおよび/または成形体との間に配置する必要なしに、単位面積当たりの比較的高い放射出力を、テープおよび/または成形体において実現することができる。なぜならば、サーフェスエミッタの放射発散は、いわゆるエッジエミッタの放射発散に比べて大幅に小さいからである。
【0053】
その結果、相応に形成された装置では、レーザダイオードアレーと、テープの1つまたは複数の加熱面および成形体の1つまたは複数の加熱面との間における間隔を増大させることも可能である。
【0054】
さらに好ましくは、レーザダイオードアレーと、プラスチックテープの加熱面および/または成形体の加熱面との間に、視準結像光学系が配置されているような態様も可能である。視準結像光学系の使用によって、テープおよび/または成形体の加熱面におけるさらに高い放射強度を実現することができる。
【0055】
好ましくは、レーザダイオードアレーの個々のレーザダイオードの放射出力は、制御装置を用いて別個に調節可能である。
【0056】
このように構成されていると、テープおよび成形体の加熱面の温度を検出した場合に、それぞれの温度に関連して、個々のレーザダイオードを相応に制御することが可能であり、これによりプラスチックテープと成形体表面との接触領域において、プラスチックテープおよび成形体表面は、好ましくは同じ温度を有することになる。これは、例えば閉じられたフィードバック構造において行うことができる。
【0057】
装置は、好ましくは、強化構造体が圧力容器の支持シェルであり、かつ成形体が圧力容器の内側容器であるように形成されている。
【0058】
本発明の根底を成す課題は、さらに、強化構造体を成形体表面に形成する方法によって解決され、このとき強化構造体は、熱可塑性プラスチックを有する繊維強化されたテープを有している。そしてこの方法は、
テープを圧着装置と成形体表面との間に位置決めし、これによりテープの圧着部分を圧着装置および成形体表面に接触させるステップと、
圧着装置を成形体表面に向かって押圧し、これによりテープを成形体表面に圧着させるステップと、
成形体を圧着装置に対して相対運動および/または相対回動させ、これにより成形体と圧着装置とを互いに対して相対運動および/または相対回動させ、これによってテープを成形体表面上に送り込み、このとき圧着装置を、成形体表面に相対運動方向において移動させ、テープを、圧着装置に関して引張り方向に引っ張るステップと、
引張り方向においてテープの圧着領域の上流側に配置された、テープの加熱面を、および/または相対運動方向において圧着領域の下流側に配置された、成形体の加熱面を、レーザダイオードアレーの複数のレーザダイオードを用いて照射するステップと、
テープをその加熱面の領域において、および/または成形体表面をその加熱面の領域において、レーザダイオードアレーを用いて局部的に溶融させ、これにより、圧着装置を用いた成形体表面におけるテープの圧着によって、テープを成形体に結合させるステップと、
を有している。
【0059】
本発明に係る方法は、不均一の強度分布をテープの加熱面において生ぜしめ、このときテープの加熱面における放射強度が引張り方向において少なくとも部分的に低減するような放射領域を、レーザダイオードアレーが形成するように、レーザダイオードアレーを制御することによって特徴付けられている。
【0060】
好ましくは、加熱面を照射する前に、引張り方向において加熱面の上流側に配置されたテープを、加熱装置を用いて、予め設定された温度に加熱する。
【0061】
さらに好ましくは、テープの、該テープの前記加熱面とは反対側に位置する背側を、第2のレーザダイオードアレーを用いて加熱する。
【0062】
さらに好ましくは、不均一の強度分布を、成形体の加熱面において生ぜしめ、このとき、成形体の加熱面における放射強度が相対運動方向とは逆向きに少なくとも部分的に低減するような放射領域を、レーザダイオードアレーから放射する。
【0063】
本発明の別の利点、詳細および特徴については、以下において図面を参照しながら述べる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図2】本発明に係る強化構造体を形成する装置を、概略的に示す図である。
【
図3】レーザ光強度変化と、強化構造体が形成されるテープの表面の温度変化とを示す線図である。
【
図4】テープの前側および背側における温度の変化を、位置に関連して示す線図である。
【
図5】テープおよび成形体の加熱面における強度変化および温度変化を示す図である。
【
図6】成形体が圧力容器の内側容器である、本発明に係る強化構造体を形成する装置を概略的に示す断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態による、本発明に係る装置を概略的に示す断面図である。
【
図8】本発明に係る強化構造体を形成する装置を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示した装置を別の視線方向から見た図である。
【
図10】照射モジュールに配置された、レーザダイオードアレーの一部であるレーザダイオードを備えた、照射モジュールを概略的に示す断面図である。
【
図11】照射モジュールの放射面に配置された複数のレーザダイオードを備えた、照射モジュールの択一的な構成を示す図である。
【
図12】照射モジュールの左右に配置されたセグメントが照射モジュールの真ん中のセグメントに関して角度可変である、つまり隣接した2つの放射面によって形成された角度が可変である構成を示す図である。
【0065】
以下の記載において同じ符号は、同じ部材もしくは同じ特徴を示すので、1つの図面に関連して行われた、部材に関する説明は、他の図面に対しても通用し、従って、説明を繰り返すことは避ける。さらに個々の実施形態の異なる特徴を互いに自由に組み合わせることが可能である。
【0066】
図1には圧力容器1が、断面されて斜視図で示されている。この圧力容器1は、通常、熱可塑性プラスチックから成っている内側容器10を有している。しかしながら少なくとも、内側容器10の外面は、熱可塑性プラスチックから形成されている。
図1からさらに分かるように、圧力容器1の開口2は、接続エレメント3によって形成される。より正確に言えば、開口2は、接続エレメント3のネック部分によって形成される。接続エレメント3の肩部分およびネック部分は、圧力容器1の内側容器10に例えば素材結合式(stoffschluessig)および/または力結合式(kraftschluessig)および/または形状結合式(formschluessig)に結合されている。
【0067】
圧力容器1を、圧力下にある気体または液体を収容するためにも適しているようにするために、内側容器10は、支持シェル20として形成された強化構造体20を備える必要がある。このとき支持シェル20は、圧力容器1の内側容器10全体を取り囲んでいるので、圧力容器1は該圧力容器1に対する圧力負荷時に、大幅に減じられた膨張を有する。さらに支持シェル20の提供によって初めて、圧力容器1に250バール〜700バールの圧力を加えることが可能になる。
【0068】
図1からさらに分かるように、圧力容器1の端部領域には、キャップ50として形成された衝突保護体50が設けられている。このキャップ50は、軸方向において圧力容器1に加えられた力をより大きな面積に分散させる。少なくとも1つの軸方向要素を有するこのような力は、例えば事故または圧力容器の転倒時に発生することがある。
【0069】
図2には、熱可塑性プラスチックを有する繊維強化されたテープ30を有する強化構造体20を、成形体表面11において形成する装置が、概略図で示されている。
図2に示した実施形態において、成形体10はフラットな基材10である。しかしながら本発明は、フラットな基材10が強化構造体20を備えていることに制限されるものではない。むしろ本発明に係る装置によって、任意の幾何学形状をもって形成されかつ任意に寸法設定された基材10もしくは成形体10が、強化構造体20を備えることができる。例えば特に本発明に係る装置によって、
図1に示した内側容器10に支持シェル20を設けることが可能であり、このとき支持シェル20として形成された強化構造体20は、熱可塑性プラスチックを有する繊維強化されたテープ30を有している。テープ30の繊維強化は、例えばガラス繊維を用いてまたは好ましくは炭素繊維を用いて行うことができる。
【0070】
本発明に係る装置は、成形体表面11にもしくは既に形成された強化構造体20の表面11にテープ30を圧着させるための、圧着ローラ40として形成された圧着装置40を有している。テープ30はこのとき成形体10と圧着ローラ40との間にサンドイッチ状に配置されている。従ってテープ30は圧着ローラ40と成形体表面11との間において、テープ30の圧着部分31が圧着ローラ40および成形体表面11に、もしくは既に形成された強化構造体20の表面に接触するように位置決めされており、これによってテープ30に、圧着ローラ40を用いて成形体表面11に向かって力を加えることができる。
【0071】
図8および
図9から分かるように、装置はさらに移動装置および/または回転装置60を有しており、この移動装置および/または回転装置60は、成形体10および/または圧着ローラ40に運動を伝達するように連結されているので、圧着ローラ40に対する成形体10の相対運動および/または相対回動を得ることができる。
図8および
図9に示した実施形態では、単に1つの回転装置60が示されており、この回転装置60を用いて、成形体10は回転可能である。移動装置および/または回転装置60は、しかしながらさらにまた例えば、図面には示されていないロボットアームを有しており、このロボットアームを用いて、照射モジュール100を圧着ローラ40に対しておよび成形体10に対して移動および/または回転させることができる。移動装置および/または回転装置60によって、テープ30を成形体表面11上に載置することができ、このとき圧着ローラ40は成形体表面11に対して相対運動方向R1において移動し、これによってテープ30は、圧着ローラ40に対して引張り方向R2において、例えば図示されていない貯えローラから引き出される、もしくは繰り出される。
【0072】
装置はさらに少なくとも1つの照射モジュール100を有しており、この照射モジュール100は、さらに少なくとも1つのレーザダイオードアレー110を有している。さらにレーザダイオードアレー110は、複数のレーザダイオード111を有している(
図10および
図11参照)。照射モジュール100は、成形体10とのテープ30の接触領域に向かい合って位置するように配置されており、これによって照射モジュール100を用いて、より正確に言えばレーザダイオードアレー110を用いて、引張り方向R2においてテープ30の圧着領域31の上流側に配置された、テープ30の加熱面32と、相対運動方向R1において圧着領域31の下流側に配置された、成形体10の加熱面12とが可能になる。
図2から分かるように、レーザダイオードアレー110は2つの放射円錐112を生ぜしめ、このとき上側に示した放射円錐112を用いて、テープ30の加熱面32が放射され、
図2において下側に示した放射円錐112を用いて、成形体表面11の加熱面12もしくは既に形成された強化構造体20の加熱面12が照射される。
【0073】
もちろん、照射モジュール100もしくはレーザダイオードアレー110から、単にただ1つの放射円錐112だけが放射されてもよい(
図6〜
図9参照)。さらに、レーザダイオードアレー110から放射された放射領域は、テープ30もしくは成形体10における放射領域の衝突角度が可変であるにもかかわらず、つまり加熱面32もしくは加熱面12が湾曲された構成を有している場合に、加熱面12もしくは加熱面32における放射強度Iが所望の値を有するように、構成されていてもよい。具体的に言えばこのことは、加熱面12もしくは加熱面32におけるレーザ光の可変の衝突角度にもかかわらず、加熱面12,32における放射強度Iは、一定であるように、または少なくとも部分的に低下するように、または少なくとも部分的に上昇するようになっていてもよい、ということを意味する。その限りでは制限は存在しない。
【0074】
テープ30の加熱面32と、成形体10の加熱面12もしくは既に形成された強化構造体20の加熱面12とを照射することによって、テープ30はその加熱面32の領域において局部的に溶融させられ、かつ成形体表面11もしくは強化構造体20は、その加熱面12の領域において局部的に溶融させられ、その結果、圧着ローラ40を用いた成形体表面11におけるテープ30の圧着によって、テープ30は成形体10に結合される。既に形成された強化構造体20に新たに載置されたテープ30と強化構造体20もしくは成形体10の表面との間における緊密な結合を達成するために、圧着ローラ40には、成形体表面11に向けられた力Fが加えられる。
【0075】
本発明に係る装置は次のように構成されている。すなわちこの場合レーザダイオードアレー110は、不均一な強度分布をテープ30の加熱面32において生ぜしめる放射領域を、放射するように合わせられている。このとき加熱面32における強度分布は、加熱面32における放射強度が引張り方向R2において少なくとも部分的に低減するようになっている。加熱面32の放射領域の、
図2において右側に略示された強度変化では、強度は加熱面32の長さにわたって単調に低減するように示されている。しかしながら本発明は、相応の強度変化に制限されるものではなく、むしろレーザダイオードアレー110は、少なくとも部分的に、つまり加熱面32の長さの一部にわたって強度が低減することが保証されている限り、任意の強度変化が加熱面32の長さにわたって可能であるように構成されていてもよい。
【0076】
テープ30の加熱面32の相応の照射によって、加熱面32の照射の始めに、つまり加熱面32の、成形体10から最も離れている領域において、テープ30もしくはテープ30の前側が最高に加熱されるので、テープ30の前側と背側との間には大きな温度差が生じる。このときテープ30の前側は、照射モジュール100に向けられた側である。テープ30の前側とテープ30の背側との間における大きな温度勾配に基づいて、テープ30の迅速な熱平衡(Thermalisierung)が、テープ30の厚さにわたって行われる。加熱面32における照射強度が引張り方向R2の方向において低減することによって、テープ30の前側は引き続き加熱される、もしくは温度を保たれるが、テープ30の背側は、テープ30の前側の温度に同化するための十分な時間を有している。
【0077】
これによって、大部分が熱平衡化された(thermalisiert)テープ30が、圧着ローラ40と成形体10もしくは形成された強化構造体20との間に配置されることになる。厚さにわたるテープ30の熱平衡に基づいて、成形体表面11もしくは既に形成された強化構造体20の表面におけるテープ30の圧着によって、テープ30は均一に変形し、その結果強化構造体20は、比較的僅かな機械的な応力しか有しない。さらに強化構造体20は、冷却後に減じられた応力を有するので、強化構造体20は、従来技術に基づいて公知の汎用の、強化構造体を形成する装置における強化構造体よりも安定的に形成されている。
【0078】
図2から分かるように、レーザダイオードアレー110はさらに、相対運動方向R1において圧着領域31の下流側に配置された、成形体の加熱面12もしくは既に形成された強化構造体20の加熱面12を、加熱するように構成されている。このときレーザダイオードアレー110は、次のように構成されている。すなわちこの場合、不均一な強度分布を加熱面12において生ぜしめるような放射領域が加熱面12において生ぜしめられ、このとき不均一な強度分布は、加熱面12における放射強度が相対運動方向R1とは逆向きに少なくとも部分的に低減することによって生じる。加熱面12の長さにわたる強度変化は、成形体10の下に略示されている。
【0079】
図示の実施形態では、強度は加熱面12の長さsにわたって単調に低減している。しかしながら本発明は、相応の強度変化に制限されるものではない。それというのは、強度は、長さsの一部にわたる強度変化の低減が保証されている限り、長さsに関連した任意の変化を有することができるからである。
【0080】
レーザダイオードアレー110の相応の形成によって、基材10の表面11、もしくは既に形成された強化構造体20の表面11は、熱平衡化のために十分な時間を有することになる。それというのは、加熱面12の長さの始めに、加熱面12には高い強度が加えられ、これによって強化構造体20の上側と下側との間に大きな温度差が生ぜしめられ、その結果、高い熱伝達が得られるからである。加熱面12の長さsにわたって、強度は次いで連続的に低減するので、既に形成された強化構造体20内への比較的僅かな入熱(Waermeeintrag)が得られる。
【0081】
圧着部分31の領域におけるテープ30の圧着によって、加熱されたテープ30は、加熱された強化構造体20にプレス固定(verpressen)され、このときテープ30は、その厚さにわたって大部分が熱平衡化されていて、かつ強化構造体20も予め設定された厚さにわたって熱平衡化されているので、テープ30と既に形成された強化構造体20とのプレス固定後、および後続の冷却後には、僅かな熱応力しか残っていないので、強化構造体20は高い安定性を有している。
【0082】
図2から分かるように、照射モジュール100および特にレーザダイオードアレー110は、データを伝達するために制御装置140に接続されている。この制御装置140を用いて、個々のダイオード111の、レーザダイオードアレー110によって設定される強度は、自由に調節可能である。
【0083】
図2および他の図面にも示されていないが、制御装置140はさらに移動装置および/または回転装置60に連結されていてもよく、その結果、テープ30および成形体10もしくは既に形成された強化構造体20の、成形体10に対する照射モジュール100の相対的な位置決めによって調整された照射が可能である。
【0084】
さらに
図2から分かるように、装置はさらに加熱装置70を有しており、この加熱装置70を用いて、引張り方向R2において加熱面32の上流側に配置されたテープ30は、予め設定された温度に加熱可能である。このとき加熱装置70は、例えば赤外線放射器によって、特に赤外線ダイオードによって実現されていてもよく、このような赤外線放射器は、テープ30の前側および背側を照射する。しかしながらまた加熱装置70を、それを通してテープ30が引き通される炉70として実現することも可能である。さらに、加熱装置70が熱気を用いてテープ30の前側および背側を加熱するような構成も可能である。
【0085】
このとき加熱装置70によって、テープはその前側および背側において、ひいてはその厚さにわたって、予め設定された温度に加熱され、このときこの温度は、テープ30の熱可塑性プラスチックの溶融温度未満である。
【0086】
テープ30は、このとき既にある程度の温度に予加熱されているので、成形体10もしくは既に形成された強化構造体20の表面11に素材結合式に、例えば溶接によって結合されるためには、レーザダイオードアレー110から放射されたレーザ光を用いて、テープ30は、単になお減じられた温度だけ加熱されればよい。
【0087】
加熱装置70は、テープ30のさらに改善された熱平衡を生ぜしめ、これによって強化構造体20にはその冷却後に、さらにより僅かな熱応力しか残らないので、これにより強化構造体20はさらに高い安定性を有することになる。
【0088】
さらに、テープ30はその前側においても背側においても加熱され、ひいては熱平衡化されるので、比較的大きな厚さを有するテープ30を使用することも可能である。これによって比較的厚いテープ30を、成形体10に載置することができ、その結果、強化構造体20を形成するためには、比較的僅かな数の個別層のテープ材料だけが必要であり、その結果、強化構造体20を有する成形体10を製造するためのサイクル時間は、減じられている。
【0089】
照射モジュール100から、より正確に言えばレーザダイオードアレー110から放射されたレーザ光の波長は、好ましくは赤外線帯域にあり、特に750nm〜1400nmの波長帯域にある。この波長帯域において、テープ30および成形体10が形成されている熱可塑性プラスチックは、特に高い吸収係数を有している。
【0090】
圧着ローラ40および特に圧着ローラ40の外面は、テープ30および成形体10に接触可能な領域において、レーザダイオードアレー110から放射された放射線に対して実質的に透明である。さらに圧着ローラ40および特に圧着ローラ40の外面は、エラストマ材料から形成されていてもよいので、圧着ローラ40を用いた成形体10におけるテープ30の圧着時に、圧着ローラ40とテープ30との間における接触面積は、加えられる力の増大と共に大きくなる。
【0091】
図3には、加熱面32における放射領域の強度変化およびテープ30の前側における温度変化が、加熱面32の長さsに関連して略示されている。加熱面32の上端部において強度は最高であるので、テープ30の前側は最高に加熱される。その結果、温度勾配もまた加熱面32の始めに最高に大きい。引張り方向R2において、つまり加熱面32の、成形体に向けられた長さにおいて、強度は、最高強度Imaxから最低強度Iminに向かって連続的に低減し、その結果、テープ30の前側の温度は、前側の温度がテープ30の出発温度T0から目標温度Tsに加熱されるまで、引張り方向R2においてゆっくりと上昇する。
【0092】
図4には、テープの前側の温度変化Tvおよびテープ30の背側の温度Trが、概略的に示されている。この図面から分かるように、前側の温度Tvは比較的速く目標温度Tsに加熱され、テープ30の背側の温度Trは遅れて目標温度Tsに上昇する。しかしながら図面から分かるように、加熱面32の長さの終わりに、テープ30の前側の温度Tvと背側の温度Trとは実質的に互いに同じである。
【0093】
図5は、長さsにおけるテープ30の加熱面32のための強度変化および温度変化と、既に形成された強化構造体20の加熱面12の相対運動方向R1とは逆向きの長さsに沿った強度変化および温度変化とを、概略的に示す図である。
図5から分かるように、テープ30の加熱面32における強度変化は、高い強度Iから比較的低い強度Iへと低下し、このときテープの温度は、出発温度から目標温度Tsへと連続的に上昇する。同じことは、加熱面12における強度変化に対しても言える。強度は、相対運動方向R1とは逆向きに連続的に低減し、これに対して加熱面12の温度は、相対運動方向R1とは逆向きに、目標温度Tsに向かって連続的に上昇する。
【0094】
テープ30および成形体10の表面11もしくは既に形成された強化構造体20の表面は、好ましくは同じ温度Tsに加熱されるので、強化構造体20の冷却後には、最小の熱応力しか、および可能であれば熱応力は残っていない。
【0095】
図6には、
図1に示した装置が再度簡単化されて示されており、この
図6では成形体10として、横断面図で示された、圧力容器1の内側容器10が示されている。さらにレーザダイオードアレー110は、単にただ1つの放射円錐112を放射するように形成されており、この放射円錐112を用いて、テープ30および内側容器10もしくは既に内側容器10に形成された強化構造体20が照射される。しかしながらその他の機能は、
図2に示した装置の機能と同一であるので、
図2に対する記載を参照するものとする。
【0096】
図7には、本発明に係る装置の別の構成が示されており、この構成は、第1のレーザダイオードアレー110に加えて、第2のレーザダイオードアレー120を有している。この第2のレーザダイオードアレー120も、複数のレーザダイオード111を有していて、これらのレーザダイオード111は、テープ30の、該テープ30の加熱面32とは反対側に位置している背側を照射するために形成されている。装置の相応の構成によって、テープ30の前側の温度とテープ30の背側の温度とを、さらに改善して、互いに同化させることが可能になり、これによって、強化構造体20の冷却後により安定的な強化構造体20が生ぜしめられる。それというのは、このとき強化構造体20内に比較的僅かな熱応力しか残っていないからである。さらに
図7から分かるように、第1のレーザダイオードアレー110は単にただ1つの放射円錐112を放射し、この放射円錐112は、テープ30および成形体10もしくは既に形成された強化構造体20を照射する。
【0097】
図8および
図9には、
図2および
図6に示した装置が斜視図で示されている。この
図8および
図9から分かるように、圧着ローラ40は保持装置41を用いて保持されていて、このとき保持装置41を用いて、圧力Fを、成形体10に向かう方向で圧着ローラ40に加えることができる。
【0098】
図8および
図9において円筒セグメント10として簡単化して示された成形体10は、移動装置および/または回転装置60を用いて回転させられる。
【0099】
さらに
図8および
図9から分かるように、照射モジュール100には冷却水接続部106が設けられており、これらの冷却水接続部106を用いて、照射モジュール100およびレーザダイオードアレー110が冷却可能である。照射モジュール100から放射された放射領域は、圧着ローラ40と成形体10との間における接触領域を照射する。
【0100】
レーザダイオードアレー110は、上に記載のレーザ光強度変化が加熱面32および加熱面12において実現され得るように制御可能である。
【0101】
装置はさらに、赤外線カメラ150として形成された画像監視装置150を有しており、この画像監視装置150の観察円錐151内には、圧着ローラ40と成形体10との間の接触領域が配置されている。これによって、
図8および
図9には示されていないテープ30および成形体10もしくは既に形成された強化構造体20の温度変化を検出することができる。例えばフィードバックループを介してレーザダイオードアレー110は、テープ30および成形体10もしくは既に形成された強化構造体20の温度が実質的に同じ温度に加熱されるように制御されることができる。
【0102】
図10には、照射モジュール100が概略的に横断面図で示されている。この図面から分かるように、照射モジュールは、3つの放射面101,102,103を有している。このとき第1の放射面101および第3の放射面103には、各1つのレーザダイオード111が配置されており、これに対して第2の放射面102には2つのレーザダイオード111が配置されている。しかしながら本発明は、相応の数のレーザダイオードに制限されるものではない。むしろ個々の放射面には複数のレーザダイオード111が配置されている。さらに本発明は、単に2つまたは3つの放射面を有することに制限されるものではなく、照射モジュールは、各1つのレーザダイオード111またはそれぞれ複数のレーザダイオード111が配置されている複数の放射面を有することも可能である。このとき各放射面101,102,103は、テープの加熱面32におよび成形体10の加熱面12にも向けられている。
【0103】
図10から分かるように、放射面101,102,103の法線ベクトル(Normalenvektor)は、互いに平行に延びておらず、加熱面12,32に向かって互いに近づくように向けられている。その結果、それぞれの面101,102,103に配置されたレーザダイオード111の放射方向ベクトルもまた、互いに平行ではなく、加熱面12,32に向かって互いに近づくように向けられている。これによって各レーザダイオード111の放射発散が補償され、その結果放射モジュール100と加熱面12,32との間における比較的大きな加工間隔を得ることができ、さらに、テープ30および成形体10を加熱するのに必要な強度を実現することができる。さらにまた、照射モジュール100の相応の構成によって、照射モジュール100と成形体10との間における結像光学系(Abbildungsoptik)もしくは視準光学系(Kollimationsoptik)を回避することができる。
【0104】
図11に示した照射モジュール100の変化形態では、照射モジュール100はただ1つの放射面104しか有しておらず、しかしながらこの放射面104は凹面状に形成されている。放射面104には、複数のレーザダイオード111が配置されており、このときレーザダイオードアレー110の、互いに間隔をおいて配置されたレーザダイオード111は、該レーザダイオード111を取り囲む放射面104のそれぞれの局部的な法線ベクトルに対して平行に向けられた放射方向ベクトルを有しているので、レーザダイオード111からの放射方向ベクトルも互いに平行に向けられているのではなく、加熱面12,32に向かって互いに近づくように向けられている。これによって新たに、それぞれのレーザダイオード111の放射発散が補償され、その結果、一方では加熱面12,32における高い強度を得ることができ、照射モジュール100と加熱面12,32との間における間隔を増大させることができ、かつさらに照射モジュール100と加熱面12,32との間における視準光学系が必ずしも必要ではなくなる。
【0105】
図12には、照射モジュール100の別の変化形態が概略的に横断面図で示されている。この
図12から分かるように、照射モジュールは3つのセグメントを有していて、これらのセグメントは相応に3つの放射面101,102,103を有している。このとき第1の放射面101および第3の放射面103には各1つのレーザダイオード111が配置されており、これに対して第2の放射面102には2つのレーザダイオード111が配置されている。しかしながら本発明は、相応の数のレーザダイオードに制限されるものではない。むしろ個々の放射面に複数のレーザダイオード111が配置されている。さらに本発明は、特に
図12に示したレーザモジュール100の本実施形態は、単に2つまたは3つの放射面を有することに制限されるものではなく、照射モジュール100は、各1つのレーザダイオード111またはそれぞれ複数のレーザダイオード111が配置されている複数の放射面を有することも可能である。このとき各放射面101,102,103は、テープ30の加熱面32におよび成形体10の加熱面12にも向けられている。
【0106】
図12から分かるように、放射面101,102,103の法線ベクトルは、互いに平行に延びておらず、加熱面12,32に向かって互いに近づくように向けられている。しかしながら照射モジュール100は、照射モジュールの個々のセグメントもしくは照射モジュール100の放射面101,102,103が互いに平行に延びるように形成されていてもよい。
【0107】
さらに
図12が示すように、照射モジュール100の左右に配置されたセグメントは、照射モジュール100の真ん中のセグメントに関して角度可変であり、つまり隣接した2つの放射面によって形成された角度は、可変である。より正確に言えば、放射面101と放射面102との間における角度は可変である。図示の実施形態では、左側に示したセグメントは、出発位置から反時計回り方向に回転させられている(破線で示したセグメント)ので、左側に示したレーザダイオード111から放射された放射円錐112(一点鎖線で図示)は、反時計回り方向に回転させられている。これによって、加熱面32,12の特定領域における強度が高められる。それというのは、放射円錐が加熱面においてオーバラップするからである。さらに
図12から分かるように、照射モジュール100の右側に示したセグメントも同様に、反時計回り方向に傾動もしくは回転させられている。これは、
図12において右側に示したストライキ路(Streikweg)112の相応の傾動を伴う(一点鎖線で図示)。
【0108】
しかしながら本発明は、照射モジュール100の個々のセグメントがそれぞれ同じ向きで傾動させられることに制限されるものではない。照射モジュール100の個々のセグメントの互いに逆向きに向けられた傾動も、同様に可能である。
【0109】
図12には示されていないが、個々のセグメントの回転もしくは傾動は電動機によって行うことができる。同様に、圧電装置を用いた個々のセグメントの駆動が可能である。さらにまた、個々のセグメントが、互いに代替可能な理論上のセグメントに配置されていることも可能である。
【0110】
個々のレーザダイオード111が照射モジュール100の種々異なったセグメントに配置されているにもかかわらず、レーザダイオード111は、それにもかかわらず、同一のレーザダイオードアレー110,120の一部である。
【0111】
しかしながらまた、照射モジュール100の個々のセグメントに、互いに異なるレーザダイオードアレーが配置されていることも可能である。このとき異なったレーザダイオードアレーの制御は調整された(koordiniert)形式で行われるので、所望の放射強度変化を加熱面12,32において得ることができる。
【0112】
図面には示されていないが、レーザダイオード111は、好ましくはそれぞれ、VCSEL(英語:vertical-cavity surface-emitting laser 垂直共振器面発光レーザ)とも呼ばれるいわゆるサーフェスエミッタ(Oberflaechenemitter)111である。相応に形成されたレーザダイオード111は、比較的僅かな放射発散を有しているので、新たに次のような利点が得られる。すなわちこの場合、高い強度を加熱面12,32において得ることができるので、照射モジュール100と加熱面12,32との間における加工間隔を増大させることができ、照射モジュール100と加熱面12,32との間における結像光学系を回避することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 圧力容器
2 開口(圧力容器の)
3 接続エレメント(圧力容器の)
10 成形体/基材/圧力容器の内側容器
11 成形体表面
12 加熱面(成形体の/強化構造体の)
20 強化構造体/支持シェル(圧力容器の)
30 テープ
31 圧着領域/圧着部分(テープの)
32 加熱面(テープの)
40 圧着装置/圧着ローラ
41 保持装置(圧着装置の)
50 衝突保護体
60 移動装置および/または回転装置
70 加熱装置
100 照射モジュール
101,102,103 放射面(照射モジュールの)
104 放射面(照射モジュールの)
106 冷却水接続部(照射モジュールの)
110 (第1の)レーザダイオードアレー
111 レーザダイオード/サーフェスエミッタ/VCSEL(レーザダイオードアレーの)
112 放射円錐((第1の)レーザダイオードアレーの)
120 (第2の)レーザダイオードアレー
122 放射円錐((第2の)レーザダイオードアレーの)
130 放射方向ベクトル(第1のレーザダイオードの)
140 制御装置(レーザダイオードアレー用の)
150 画像監視装置/赤外線カメラ
151 観察円錐
F 圧着力
I 放射強度
Imin 最低放射強度
Imax 最高放射強度
R1 相対運動方向
R2 引張り方向
s 加熱区間/長さ(それぞれの加熱面の)
Tv テープの前側の温度
Tr テープの背側の温度
Ts テープの目標温度
T0 テープの出発温度