特許第6333489号(P6333489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333489ガイドレール、移動ブロックおよび直線往復動装置ならびにこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6333489
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ガイドレール、移動ブロックおよび直線往復動装置ならびにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/04 20060101AFI20180521BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F16C29/04
   F16C33/12 A
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-567828(P2017-567828)
(86)(22)【出願日】2017年9月6日
(86)【国際出願番号】JP2017032044
【審査請求日】2018年1月30日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2016/086756
(32)【優先日】2016年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 丈昭
(72)【発明者】
【氏名】小松 英寿
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−351443(JP,A)
【文献】 特開2006−189131(JP,A)
【文献】 特開2005−83416(JP,A)
【文献】 特開2017−120107(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/023634(WO,A1)
【文献】 特開2001−107833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00− 19/56
F16C 29/00− 31/06
F16C 33/30− 33/66
C23C 4/00− 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ブロックを直線方向に往復動自在に支持するガイドレールであって、
前記ガイドレールに設けられ、前記移動ブロックの移動方向に伸びる案内面に設けられたステンレス、または鉄系材料により生成される溶射皮膜と、
前記溶射皮膜に形成された転動体案内面と、を有し、
前記移動ブロックと前記ガイドレールとの間に配置される転動体が、前記転動体案内面に接触するガイドレール。
【請求項2】
請求項1記載のガイドレールにおいて、前記ガイドレールは、アルミニウム合金製、マグネシウム合金製、または樹脂製の基材からなるガイドレール。
【請求項3】
ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックであって、
前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面に設けられたステンレス、または鉄系材料により生成される溶射皮膜と、
前記溶射皮膜に形成された転動体案内面と、を有し、
前記ガイドレールと前記移動ブロックとの間に配置される転動体が、前記転動体案内面に接触する移動ブロック。
【請求項4】
請求項3記載の移動ブロックにおいて、前記移動ブロックはアルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材からなる移動ブロック。
【請求項5】
ガイドレールと、前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面を備え前記ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックとからなる直線往復動装置であって、
前記レール側の対向面に形成される第1の溶射皮膜と、
前記移動ブロック側の対向面に形成される第2の溶射皮膜と、
前記第1の溶射皮膜から形成される第1の転動体案内面と、前記第2の溶射皮膜から形成される第2の転動体案内面との間に配置される転動体と、
を有し、
前記第1の溶射皮膜と前記第2の溶射皮膜の少なくとも一方がステンレス、または鉄系材料により生成される直線往復動装置。
【請求項6】
請求項記載の直線往復動装置において、前記ガイドレールと前記移動ブロックはアルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材からなる直線往復動装置。
【請求項7】
移動ブロックを直線方向に往復動自在に支持するガイドレールの製造方法であって、
前記移動ブロックの移動ブロック側の対向面に対向するレール側の対向面が設けられたガイドレールを、アルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材から製造する工程と、
前記レール側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミックス製粉末を溶射して溶射皮膜を形成する溶射工程と、
前記溶射皮膜に転動体案内面を加工する加工工程と、
を有するガイドレールの製造方法。
【請求項8】
ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックの製造方法であって、
前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面が設けられた移動ブロックを、アルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材から製造する工程と、
前記移動ブロック側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミックス製粉末を溶射して溶射皮膜を形成する溶射工程と、
前記溶射皮膜に転動体案内面を加工する加工工程と、
を有する移動ブロックの製造方法。
【請求項9】
ガイドレールと、前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面を備え前記ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックとからなる直線往復動装置の製造方法であって、
前記ガイドレールおよび前記移動ブロックを、アルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材から製造する工程と、
前記レール側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミック製粉末を溶射して第1の溶射皮膜を形成する第1の溶射工程と、
前記移動ブロック側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミック製粉末を溶射して第2の溶射皮膜を形成する第2の溶射工程と、
前記第1の溶射皮膜に第1の転動体案内面を加工する第1の案内面加工工程と、
前記第2の溶射皮膜に第2の転動体案内面を加工する第2の案内面加工工程と、
を有する直線往復動装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレールと、ガイドレールに往復動自在に装着される移動ブロックと、ガイドレールおよび移動ブロックを有する直線往復動装置、ならびにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物や治工具等の被搬送物を直線往復動させるために、直線往復動装置が使用されている。直線往復動装置は、被搬送物が装着されるスライダやテーブル等としての移動ブロックと、この移動ブロックを往復動自在に支持するガイドレールとを有している。直線往復動装置のガイドレールには、レール部がレール台から突出して設けられる形態があり、その形態の直線往復動装置のレール台にはその長手方向に往復動自在に駆動ロッドが設けられる。駆動ロッドの突出端は移動ブロックの先端部に連結され、駆動ロッドの往復動により移動ブロックは直線往復動される。駆動ロッドは、空気圧シリンダや電動モータを駆動源として駆動される。
【0003】
一方、ガイドレールや移動ブロックに駆動源を組み込むことができない形態の直線往復動装置においては、外部から移動ブロックまたはガイドレールが駆動される。ガイドレールが駆動される形態の直線往復動装置においては、移動ブロックはガイドレールを支持することになり、移動ブロックはガイドレールに相対的に往復動される。
【0004】
移動ブロックとガイドレールとの間に多数のボールつまり鋼球またはローラ等の転動体を介在させて移動ブロックをガイドレールに装着すると、ガイドレールに沿って往復動する移動ブロックを小さな転がり抵抗で駆動させることができる。多数の転動体は、移動ブロックに設けられた転動体案内面とガイドレールに設けられた転動体案内面とにより形成される転動体通路内に組み込まれており、移動ブロックが駆動されると転動体は転動体通路内で回転しながら移動する。
【0005】
ボールを介して移動ブロックをガイドレールに装着するようにしたボール移動ブロックとしては、以下の2つのタイプがある。その一つは、転動体通路とは別にリターンホールつまりボール循環孔を設けて、ボールをボール循環孔と転動体通路の間で循環させる無限ガイドタイプである。他の一つは、ボールが転動体通路を往復移動する有限ガイドタイプである。
【0006】
特許文献1は、それぞれ鋼材からなる案内レールと移動ブロックとこれらの間に配置されるボールとを備えたリニアガイドが記載されている。このリニアガイドにおいては、案内レールと移動ブロックの軌道面に硬質膜が溶射により形成され、硬質膜は潤滑油からなる潤滑膜により被覆される。硬質膜は、超硬合金、サーメットおよびセラミックスのいずれかからなり、気孔を有しており、潤滑膜を構成する潤滑油が硬質膜に保持される。
【0007】
特許文献2には、無限ガイドタイプの直動装置が記載されている。この直動装置は、ステンレス鋼からなる案内レールと移動ブロックとを有し、ボールはステンレス鋼等からなる。案内レールの転動溝の表面と移動ブロックの転動溝の表面とボールの表面には、硬質層が研磨材を噴射して形成される。
【0008】
特許文献3には、物品を把持する開閉チャックが記載されている。ケーシングに設けられたガイドレールにフィンガーとしての2つの移動ブロックが相互に接近離反移動自在に装着されている。2つのピストンがケーシング内に組み込まれ、それぞれのピストンに設けられたラックが対向する位置で同一のピニオンに噛み合っている。また、それぞれのピストンは、連結片を介しネジと圧入ピンにより、移動ブロックに連結されている。この構造により、フィンガーは同期して開閉動作を行う。移動ブロックつまりフィンガーの摺動抵抗を小さくするために、ボールが移動ブロックとガイドレールとの間に配置されている。このような開閉チャックにおける移動ブロックとガイドレールは直線往復動装置を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−351443号公報
【特許文献2】特開2006−189131号公報
【特許文献3】特開平9−38881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
移動ブロックとガイドレールとの間に多数のボールを介在させて移動ブロックをガイドレールに沿って案内するようにした従来の直線往復動装置においては、直線往復動装置の耐荷重性、耐久性を確保するために、ガイドレールと移動ブロックの素材としては、焼き入れ鋼が用いられており、焼き入れ研磨して製造されるのが主流である。このため、直線往復動装置の高重量化が避けられず、ガイドレールと移動ブロックの加工性が悪いという問題点がある。
【0011】
空気圧シリンダを駆動源とする直線往復動装置においては、空気圧シリンダの機能を有する本体部分をアルミニウム合金とし、合金鋼やステンレス鋼からなるリニアガイドを本体部分に取り付けるようにしたタイプも開発されている。しかしながら、このタイプでは、直線往復動装置を軽量化することができない。
【0012】
また、ガイドレール本体の素材としてアルミニウム合金を使用したタイプも開発されている。しかしながら、このタイプにおいては、ボールが転動接触する転動体案内面が形成された焼き入れ鋼製の細長いレールを、ガイドレール本体に形成されたレール取付溝に取り付けており、鋼製のレールを接着剤やカシメ等によりガイドレール本体に固定する必要がある。ガイドレールを本体に固定するためには、接着剤塗布やカシメのためのスペースが必要になるので、直線往復動装置を小型化することができない。
【0013】
本発明の目的は、直線往復動装置およびこれを構成するガイドレールと移動ブロックの耐久性を図りつつ軽量化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のガイドレールは、移動ブロックを直線方向に往復動自在に支持するガイドレールであって、前記ガイドレールに設けられ、前記移動ブロックの移動方向に伸びる案内面に設けられたステンレス、または鉄系材料により生成される溶射皮膜と、前記溶射皮膜に形成された転動体案内面と、を有し、前記移動ブロックと前記ガイドレールとの間に配置される転動体が、前記転動体案内面に接触する。
【0015】
本発明の移動ブロックは、ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックであって、前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面に設けられたステンレス、または鉄系材料により生成される溶射皮膜と、前記溶射皮膜に形成された転動体案内面と、を有し、前記ガイドレールと前記移動ブロックとの間に配置される転動体が、前記転動体案内面に接触する。
【0016】
本発明の直線往復動装置は、ガイドレールと、前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面を備え前記ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックとからなる直線往復動装置であって、前記レール側の対向面に形成される第1の溶射皮膜と、前記移動ブロック側の対向面に形成される第2の溶射皮膜と、前記第1の溶射皮膜から形成される第1の転動体案内面と、前記第2の溶射皮膜から形成される第2の転動体案内面との間に配置される転動体と、を有し、前記第1の溶射皮膜と前記第2の溶射皮膜の少なくとも一方がステンレス、または鉄系材料により生成される
【0017】
本発明のガイドレールの製造方法は、移動ブロックを直線方向に往復動自在に支持するガイドレールの製造方法であって、前記移動ブロックの移動ブロック側の対向面に対向するレール側の対向面が設けられたガイドレールを、アルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材から製造する工程と、前記レール側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミックス製粉末を溶射して溶射皮膜を形成する溶射工程と、前記溶射皮膜に転動体案内面を加工する加工工程と、を有する。
【0018】
本発明の移動ブロックの製造方法は、ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックの製造方法であって、前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面が設けられた移動ブロックを、アルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材から製造する工程と、前記移動ブロック側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミックス製粉末を溶射して溶射皮膜を形成する溶射工程と、前記溶射皮膜に転動体案内面を加工する加工工程と、を有する。
【0019】
本発明の直線往復動装置の製造方法は、ガイドレールと、前記ガイドレールのレール側の対向面に対向する移動ブロック側の対向面を備え前記ガイドレールに直線方向に往復動自在に装着される移動ブロックとからなる直線往復動装置の製造方法であって、前記ガイドレールおよび前記移動ブロックを、アルミニウム合金製、マグネシウム合金製または樹脂製の基材から製造する工程と、前記レール側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミック製粉末を溶射して第1の溶射皮膜を形成する第1の溶射工程と、前記移動ブロック側の対向面にステンレス製粉末、鉄系材料粉末、サーメット製粉末、超硬合金製粉末またはセラミック製粉末を溶射して第2の溶射皮膜を形成する第2の溶射工程と、前記第1の溶射皮膜に第1の転動体案内面を加工する第1の案内面加工工程と、前記第2の溶射皮膜に第2の転動体案内面を加工する第2の案内面加工工程と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
移動ブロックを往復動自在に支持するガイドレールは、アルミニウム合金等の軽量な基材により形成され、ガイドレールに往復動自在に装着される移動ブロックもアルミニウム合金等の軽量な基材により形成されるので、ガイドレールおよび移動ブロックの軽量化が達成される。
【0021】
また、ガイドレール側の対向面には溶射皮膜が設けられ、溶射皮膜に形成された転動体案内面と移動ブロックとの間には転動体案内面に接触する転動体が配置される。移動ブロック側の対向面には溶射皮膜が設けられ、溶射皮膜に形成された転動体案内面とガイドレールとの間には転動体案内面に接触する転動体が配置される。溶射皮膜はステンレス製等の硬質材料なので、溶射皮膜に形成される転動体案内面の磨耗が抑制される。その結果、直線往復動装置の耐久性を高めることができる。また、溶射皮膜を基材表面に直接形成するため、接着剤塗布やカシメのためのスペースが不要となるので、直線往復動装置の小型化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態である直線往復動装置を示す斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3図2におけるA−A線断面図である。
図4図3の一部の拡大断面図である。
図5】(A)〜(C)は図1に示された直線往復動装置のガイドレールの製造方法における加工工程を示す断面図である。
図6】(A)〜(C)は図1に示された直線往復動装置の移動ブロックの製造方法における加工工程を示す断面図である。
図7】(A)〜(L)は、それぞれガイドレールの対向面形状の変形例を示す断面図である。
図8】(A)〜(I)は、それぞれ移動ブロックの対向面形状の変形例を示す断面図である。
図9】他の実施の形態である直線往復動装置を示す側面図である。
図10図9におけるB−B線断面図である。
図11図10におけるC−C線拡大断面図である。
図12】ガイドレールの他の変形例を示す断面図である。
図13】さらに他の実施の形態である直線往復動装置を示す平面図である。
図14図13の右側面図である。
図15】端板を外した状態における図14のD部拡大右側面図である。
図16】さらに他の実施の形態である直線往復動装置の右側面図である。
図17】端板を外した状態における図16のE部拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。それぞれの図面においては、共通性を有する部材には同一の符号が付されており、共通した説明は省略されている。
【0024】
図1図4に示される直線往復動装置10aは、アルミニウム合金製の基材からなるガイドレール11と、ガイドレール11に直線方向に往復動自在に装着されアルミニウム合金製の基材からなる移動ブロック16を有している。ガイドレール11は、レール台12とこのレール台12に一体に突設されるレール部13とを備えている。レール部13はレール台12の幅方向中央部にレール台12の表面14から突出している。移動ブロック16の移動方向に伸び、互いに向かいあうレール部13の一対の側面には、レール側の第1の対向面15が設けられている。
【0025】
移動ブロック16は、図3及び図4に示されるように、レール部13が入り込む凹部17を有し、凹部17は底面18と、レール部13のレール側の第1の対向面15に対向する移動ブロック側の第2の対向面19により形成される。レール側の第1の対向面15と、移動ブロック側の第2の対向面19は、移動ブロック16の移動方向に延びている。
【0026】
ステンレス製の第1の溶射皮膜21がレール部13のレール側の第1の対向面15に形成され、ステンレス製の第2の溶射皮膜22が移動ブロック16の移動ブロック側の第2の対向面19に形成される。円弧面形状の第1の転動体案内面23が第1の溶射皮膜21に移動ブロック16の移動方向に延びて形成され、円弧面形状の第2の転動体案内面24が第2の溶射皮膜22に第1の転動体案内面23に沿って延びて形成されている。円弧面形状の例としては、ゴシックアーチ形状やサーキュラーアーク形状がある。図4に示されるように、第1の転動体案内面23と第2の転動体案内面24との間にボール転動通路25が形成され、ボール転動通路25には複数の鋼製の硬球26が配置される。
【0027】
移動ブロック16がガイドレール11に対して直線往復動する際には、硬球26が第1の転動体案内面23と第2の転動体案内面24との間のボール転動通路25内を転がり移動する。これにより、移動ブロック16は大きな摺動抵抗を受けることなく、円滑に往復動することができる。
【0028】
移動ブロック16をガイドレール11に対して往復動するために、図1に示されるように、シリンダ孔30がレール台12に設けられており、このシリンダ孔30に図示しないピストンが設けられている。ピストンは図示しないピストンロッドにより移動ブロック16に連結されている。したがって、シリンダ孔30内の空気圧室に外部から圧縮空気を供給することにより、移動ブロック16はガイドレール11に対してレール部13に沿って駆動される。被加工物や治具等の被搬送物を移動ブロック16に搭載すると、移動ブロック16により被搬送物は搬送される。このように、移動ブロック16の駆動源をガイドレール11に組み込むことができる。
【0029】
なお、移動ブロック16を固定し、ガイドレール11を駆動するようにしても良く、移動ブロック16のガイドレール11に対する直線往復動は相対的であれば良い。また、移動ブロック16の駆動源としては、空気圧シリンダに代えて油圧シリンダや電動モータとしても良い。
【0030】
第1の溶射皮膜21と第2の溶射皮膜22は、SUS440C相当のステンレス鋼粉末を素材とする溶射により形成される。それぞれの膜厚は0.1mm以上に形成される。このように、レール台12およびこれに一体となったレール部13を備えたガイドレール11と、移動ブロック16とをアルミニウム合金製の基材とすることにより、ガイドレール11を軽量化できるとともに移動ブロック16を軽量化することができ、これらを備えた直線往復動装置10aは軽量構造となる。第1の溶射皮膜21と第2の溶射皮膜22とをステンレス製とすることにより、移動ブロック16の移動時に硬球26が第1の溶射皮膜21に形成される第1の転動案内面23と第2の溶射皮膜22に形成される第2の転動案内面24に転がり接触しても、それぞれの皮膜の磨耗が抑制されるので、レール部13と移動ブロック16の耐久性を向上することができ、これらを備えた直線往復動装置10aの耐久性を向上させることができる。
【0031】
図5(A)〜図5(C)は、直線往復動装置10aのガイドレール11の製造方法を示す加工工程の断面図である。アルミニウム合金を素材として、図5(A)に示されるように、レール台12とレール部13とが一体となったガイドレール11が押出成形等により加工される。棒状に成形された素材は、所定の長さに切断されてガイドレール11が加工される。このように、アルミニウム合金製の基材からなり、レール部13が一体となったガイドレール11が図5(A)に示される工程により製造される。ガイドレール11の加工工程においては、第1の転動体案内面23の位置に対応させてレール部13の第1の対向面15には、図5(A)に示されるように、円弧状のR面つまり凹面31が形成され、凹面31の円周面方向の両端部は凹面よりも曲率半径の小さなR面32を介して第1の対向面15の平坦部に連なっている。
【0032】
次いで、図5(B)に示される第1の溶射工程により、レール部13の基材の第1の対向面15にステンレス製の粉末を溶射して第1の溶射皮膜21が形成される。第1の溶射皮膜21は凹面31に入り込んで噛み合った状態となり、付着される。第1の溶射皮膜21は高速フレーム溶射法により形成される。高速フレーム溶射法は、溶射材料であるSUS440C相当の粉末を半溶融状態で高速でレール部13の基材に衝突させて積層する溶射法であり、アルミニウム合金製の基材に過度な熱を加えることなく、緻密な皮膜を生成することができる。SUS440C相当の粉末を溶射材料とする溶射皮膜はアルミニウム合金の基材に強力に密着し、緻密で厚い溶射皮膜が生成される。生成された溶射皮膜の気孔率は0〜5%、好ましくは0〜2%である。皮膜硬度は、550〜750HV、好ましくは600〜700HVである。この硬度は、一般の研磨砥石により表面を加工することができる硬度であり、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒等の超砥粒を使用することなく、表面を加工することができる。
【0033】
図5(C)は、第1の案内面加工工程により第1の溶射皮膜21に第1の転動体案内面23が加工された状態を示す。第1の転動体案内面23は、上述のように、一般の研磨加工により形成される。第1の転動体案内面23が加工された後の第1の溶射皮膜21の膜厚は、0.1mm以上、好ましくは0.4mm以上に設定される。研磨加工による第1の溶射皮膜21の膜厚減少を考慮して、図5(B)に示される第1の溶射工程においては、第1の溶射皮膜21は研磨加工後の膜厚よりも厚く形成される。
【0034】
図6(A)〜図6(C)は、直線往復動装置10aの移動ブロック16の製造方法を示す加工工程の断面図である。ガイドレール11と同様にアルミニウム合金を素材として、図6(A)に示されるように、移動ブロック16が押出成形等により加工される。棒状に成形された素材は、所定の移動ブロック16の長さに切断される。このように、アルミニウム合金製の基材からなる移動ブロック16が図6(A)に示される工程により製造される。移動ブロック16の加工工程においては、移動ブロック側の第2の対向面19の底面18側には、傾斜面33が形成される。
【0035】
次いで、図6(B)に示される第2の溶射工程により、移動ブロック16の移動ブロック側の第2の対向面19にステンレス製の粉末を溶射して第2の溶射皮膜22が形成される。第2の溶射皮膜22は第1の溶射皮膜21と同様に高速フレーム溶射法により形成される。これにより、アルミニウム合金製の移動ブロック16の基材に過度な熱を加えることなく、緻密な皮膜を生成することができる。生成された溶射皮膜は、第1の溶射皮膜21と同様に、気孔率は0〜5%、好ましくは0〜2%である。皮膜硬度は、550〜750HV、好ましくは600〜700HVである。
【0036】
図6(C)は、第2の案内面加工工程により第2の溶射皮膜22に第2の転動体案内面24が加工された状態を示す。第2の転動体案内面24は、第1の転動体案内面23と同様に、一般の研磨加工により形成される。第2の転動体案内面24が加工された後の第2の溶射皮膜22の膜厚は、0.1mm以上、好ましくは0.4mm以上に設定される。研磨加工による第2の溶射皮膜22の膜厚減少を考慮して、図6(B)に示される第2の溶射工程においては、第2の溶射皮膜22は研磨加工後の膜厚よりも厚く形成される。
【0037】
上述のように、第1の溶射皮膜21と第2の溶射皮膜22を、溶射材料であるSUS440C相当の粉末を高速フレーム溶射法により形成し、第1の転動体案内面23と第2の転動体案内面24の膜厚を0.4mmとして直線往復動装置10aを組み立てた。その直線往復動装置10aの耐久性を試験したところ、所望の耐久性を得ることが確認できた。
【0038】
図7(A)〜図7(L)は、それぞれレール部13の側面つまり対向面形状の変形例を示す断面図であり、それぞれ図5におけるG部の拡大図である。
【0039】
図7(A)に示されるレール部13においては、第1の対向面15は全体的に平坦となっており、第1の対向面15とレール台12の表面14とが直角となっている。図7(B)に示されるレール部13においては、第1の対向面15は表面14に凹面34を介して連なっている。図7(C)に示されるレール部13においては、図5に示されたものと同様に、第1の対向面15に円弧状のR面つまり凹面31が形成されている。ただし、図5に示されたものと相違して、凹面31の円方向の両端部には、図5に示したR面32は設けられていない。
【0040】
図7(D)に示されるレール部13においては、図7(C)と同様に、第1の対向面15には凹面31が形成されており、第1の対向面15と表面14との交差部には凹面34が形成されている。この凹面34は、図7(B)に示される凹面34よりも曲率半径が小さい。図7(E)に示されるレール部13においては、図7(D)に示されたレール部13の凹面34に代えて、傾斜面35が形成されており、傾斜面35の角度はθとなっている。図7(F)に示されるレール部13においては、図7(C)に示されたものと同様に凹面31が第1の対向面15に形成され、さらに、レール部13の上面と第1の対向面15との間にはチャンファー面つまり傾斜面36が形成されており、傾斜面36の角度はθとなっている。図7(G)に示されるレール部13においては、第1の対向面15に凹面31が設けられるとともに、凹面31の表面14側は、レール台12の表面14に対して傾斜した傾斜面37により表面14に連なっている。
【0041】
図7(H)に示されるレール部13の第1の対向面15の基本形状は、図7(D)に示されるものと同様であり、凹面31、34がレール側の第1の対向面15に形成されている。凹面31の円周方向両端部にはR面32が形成され、凹面31はR面32を介して凹面34と連なっている。図7(I)に示されるレール部13においては、凹面31の円周方向両側に凹面31に向けて傾斜した傾斜面38が第1の対向面15に形成されており、両方の傾斜面38は角度θとなっている。図7(J)に示されるレール部13においては、凹面31からレール台12の表面14に向けて傾斜した傾斜面39が第1の対向面15に形成され、凹面31からレール部13の上面に向けて傾斜した傾斜面36が側面に形成されている。傾斜面39および傾斜面36はレール部13の表面に対して角度θとなっている。図7(K)に示されるレール部13においては、第1の対向面15は全体的に平坦となっており、第1の対向面15はレール台12の表面14に対して角度θだけ傾斜している。図7(L)に示されるレール部13においては、第1の対向面15は、図7(I)に示された形状に類似し、傾斜面38が第1の対向面15の上下部に形成されている。両方の傾斜面38の間はほぼ平坦な底面となっている。
【0042】
このように、レール部13の第1の対向面15の形状としては、種々のパターンとすることができる。
【0043】
図8(A)〜図8(I)は、それぞれ移動ブロック16の対向面形状の変形例を示す断面図であり、それぞれ図6のS部の拡大図である。
【0044】
図8(A)に示される移動ブロック16においては、第2の対向面19は全体的に平坦となっており、第2の対向面19と移動ブロック16の底面18とが直角となっている。図8(B)に示される移動ブロック16においては、第2の対向面19はR面つまり凹面41を介して連なっている。図8(C)に示される移動ブロック16においては、図8(B)に示された凹面41よりも曲率半径が小さい凹面42が第2の対向面19に形成されている。図8(D)に示される移動ブロック16においては、図8(C)に示された凹面42に加えて、底面18と第2の対向面19との間に傾斜面43が形成されており、傾斜面43の角度はθとなっている。
【0045】
図8(E)に示される移動ブロック16においては、図8(D)に示された傾斜面43に代えて、底面18と第2の対向面19との間に凹面41が形成されている。この凹面41は、図8(B)に示された凹面41よりも曲率半径が小さい。図8(F)に示される移動ブロック16においては、第2の対向面19は、底面18から凹部17の開口部側に向けて凹部17の幅寸法が大きくなる方向に傾斜している。図8(G)に示される移動ブロック16においては、第2の対向面19は全体的に図8(F)と同様の方向に傾斜し、第2の対向面19に凹面44が形成されている。第2の対向面19のうち、凹面44を介して底面側の部分19aと、凹部17の開口部側の部分19bとは段差tを有している。図8(H)に示される移動ブロック16においては、図8(G)に示されたものよりも段差tが小さく、しかも、凹面44の円周方向の円弧面の長さは長い。図8(I)に示される移動ブロック16においては、第2の対向面19は全体的に平坦となっており、第2の対向面19は移動ブロック16の底面18に対して角度θだけ傾斜している。
【0046】
このように、移動ブロック16の第2の対向面19の形状としては、種々のパターンとすることができる。
【0047】
転動体案内面を加工後の第1の溶射皮膜21と第2の溶射皮膜22の膜厚としては、直線往復動装置10aの耐久性を高めるには、上述したように0.1mm以上に設定する。直線往復動装置10aが種々の状況や環境で使用されることを考慮すると、耐久性を高めるには、膜厚としては0.4mm以上に設定することがより好ましい。
【0048】
図9は他の実施の形態である直線往復動装置10bを示す側面図であり、図10図9におけるB−B線断面図である。図11図10におけるC−C線拡大断面図である。
【0049】
この直線往復動装置10bは、図9および図10に示されるように、直線往復動装置10aのガイドレール11をレール部13のみによって構成し、レール部13に取付孔27を設けている。レール部13は取付孔27に取り付けられるねじ部材により、図示しない支持部材に固定される。
【0050】
移動ブロック16は、外部に設けられた駆動部材により往復動される。この形態の直線往復動装置10bにおいても、移動ブロック16はレール部13に対して相対移動自在であれば良い。したがって、移動ブロック16を固定し、外部の駆動部材によりレール部13を駆動することにより、移動ブロック16はレール部13に対して相対的に往復動される。また、レール部13に凹部を設け、その凹部内に移動ブロック16を入り込ませるようにした形態の直線往復動装置としても良い。
【0051】
図11に示されるように、レール部13は、上述した直線往復動装置10aと同様に、移動ブロック16に形成された凹部17内に配置される。移動ブロック16に相互に対向して形成された移動ブロック側の第2の対向面19には、レール部13の両側面つまりレール側の第1の対向面15が対向する。上述した直線往復動装置10aは、レール側の第1の対向面15の全面に第1の溶射皮膜21を形成するのに対し、直線往復動装置10bは、対向面15の一部を基材のまま残して第1の溶射皮膜21を形成している。一方、第2の溶射皮膜22は、直線往復動装置10aと同様に移動ブロック側の第2の対向面19に形成される。
【0052】
円弧面形状の第1の転動体案内面23が第1の溶射皮膜21に移動ブロック16の移動方向に延びて形成され、円弧面形状の第2の転動体案内面24が第2の溶射皮膜22に第1の転動体案内面23に沿って延びて形成されている。第1の転動体案内面23と第2の転動体案内面24との間にボール転動通路25が形成される。ボール循環通路45がボール転動通路25に平行となって移動ブロック16に形成される。図10においては、レール部13の両側に形成されたボール循環通路45の一方が示されている。
【0053】
ボール転動通路25とボール循環通路45とをそれぞれの両端部で連通させるために、端板46が移動ブロック16の一端面に固定され、端板47が移動ブロック16の他端面に固定されている。それぞれの端板46、47はねじ部材48により移動ブロック16に締結されている。図10に示されるように、半円形状の連通通路49がそれぞれの端板46、47に形成され、ボール転動通路25とボール循環通路45と連通通路49とによりループ状の通路が形成される。ループ状の通路には、複数の硬球26が配置される。これにより、移動ブロック16の移動に伴って、硬球26はボール転動通路25とボール循環通路45を循環移動する。このように、直線往復動装置10bは、無限ガイドタイプである。
【0054】
直線往復動装置10bのレール部13の製造方法は、シリンダ孔30を設けない点を除いて、直線往復動装置10aのガイドレール13の加工工程と同一である。
【0055】
また、直線往復動装置10bの移動ブロック16の製造方法は、ボール循環通路45を形成する貫通孔を、機械加工する点を除いて、直線往復動装置10aの移動ブロック16の加工工程と同一である。
【0056】
図12(A)、(B)は、図9に示された直線往復動装置10bにおけるレール部13の他の変形例を示す断面図である。
【0057】
図12(A)に示されるレール部13においては、レール側の第1の対向面15は全体的に平坦となって、レール部13の側面全体に形成される。図12(B)に示されるレール部13においては、レール側の第1の対向面15は、円弧状のR面つまり凹面31と、凹面31の円周面の両端部に連なっている平坦部によって形成される。図12(A)、(B)ともにレール部13の側面全体に第1の対向面15を形成し、レール部13の側面全体に第1の溶射皮膜21を形成している点で図9に示された直線往復動装置10bと異なる。
【0058】
なお、図9に示された直線往復動装置10bにおけるレール部13の両方のレール側の第1の対向面15と、移動ブロック16の両方の移動ブロック側の第2の対向面19の形状としては、図7および図8に示される形状とすることができる。
【0059】
図13は、さらに他の実施の形態である直線往復動装置10cを示す平面図であり、図14図13の右側面図であり、図15は移動ブロックの端板を外した状態における図14のD部拡大右側面図である。
【0060】
この直線往復動装置10cは、開閉動作される2つの移動ブロック16a、16bを有し物品を把持する開閉チャックとして使用される。
【0061】
直線往復動装置10cは、直線往復動装置10aと同様にレール台12を有している。レール部13はレール台12の幅方向中央部にレール台12の表面14から突出し、レール側の第1の対向面15がレール部13の両側面に設けられる。
【0062】
2つの移動ブロック16a、16bがレール部13に往復動自在に装着され、それぞれの移動ブロック16a、16bは、図14及び図15に示されるように、レール部13が入り込む凹部17を有し、凹部17は底面18と、レール部13のレール側の第1の対向面15に対向する移動ブロック側の第2の対向面19により形成される。レール側の第1の対向面15と、移動ブロック側の第2の対向面19は、移動ブロック16の移動方向に延びている。
【0063】
第1の溶射皮膜21がレール部13のレール側の第1の対向面15に形成され、第2の溶射皮膜22が移動ブロック16a、16bの移動ブロック側の第2の対向面19に形成される。円弧面形状の第1の転動体案内面23が第1の溶射皮膜21に移動ブロック16の移動方向に延びて形成され、円弧面形状の第2の転動体案内面24が第2の溶射皮膜22に第1の転動体案内面23に沿って延びて形成される。図15に示されるように、第1の転動体案内面23と第2の転動体案内面24との間にボール転動通路25が形成され、ボール転動通路25には複数の硬球26が配置される。
【0064】
図13に示されるように、止め板つまり端板46aが一方の移動ブロック16aの一端面に取り付けられ、端板47aが移動ブロック16aの他端面に取り付けられている。同様に、止め板つまり端板46bが他方の移動ブロック16bの一端面に取り付けられ、端板47bが移動ブロック16bの他端面に取り付けられている。それぞれの端板により、ボール転動通路25の両端は閉じられている。
【0065】
図14に示されるように、2つのシリンダ孔30a、30bがガイドレール11に設けられる。それぞれのシリンダ孔30a、30bはガイドレール11の長手方向に平行となって延びている。図示しないピストンがそれぞれのシリンダ孔30a、30bに往復動自在に装着される。
【0066】
一方のシリンダ孔30aに形成された空気圧室に圧縮空気を供給して一方のピストンが駆動されると、一方のピストンと連結した移動ブロック16aが移動する。他方のシリンダ孔30bに形成された空気圧室に圧縮空気を供給して他方のピストンが駆動されると、他方のピストンと連結した移動ブロック16bが移動する。
【0067】
2つの移動ブロック16a、16bが相互に接近する方向に駆動されると、図示しない物品は2つの移動ブロック16a、16bにより挟持される。
【0068】
図16は、さらに他の実施の形態である直線往復動装置10dを示す右側面図であり、図17は端板を外した状態における図16のE部拡大右側面図である。
【0069】
この直線往復動装置10dも、直線往復動装置10cと同様に、開閉動作する2つの移動ブロック16a、16bを有し、物品を把持する開閉チャックとして使用される。直線往復動装置10cとは、ガイドレール11の形状が異なる。直線往復動装置10dは凹部17が設けられたガイドレール11を有し、凹部17はガイドレール11の長手方向に延びている。2つのレール部13がガイドレール11の両側に設けられ、両方のレール部13は凹部17を介して対向している。2つの移動ブロック16a、16bが凹部17内に往復動自在に装着される。
【0070】
凹部17は底面18と移動ブロック16a、16bに対向するレール側の第1の対向面15を有している。移動ブロック側の第2の対向面19がそれぞれの移動ブロック16a、16bの側面に設けられている。
【0071】
第1の溶射皮膜21がレール部13のレール側の第1の対向面15に形成され、第2の溶射皮膜22が移動ブロック16a、16bの移動ブロック側の第2の対向面19に形成される。円弧面形状の第1の転動体案内面23が第1の溶射皮膜21に移動ブロック16a、16bの移動方向に延びて形成され、円弧面形状の第2の転動体案内面24が第2の溶射皮膜22に第1の転動体案内面23に沿って延びて形成されている。図17に示されるように、第1の転動体案内面23と第2の転動体案内面24との間にボール転動通路25が形成され、ボール転動通路25には複数の硬球26が配置される。
【0072】
上述した直線往復動装置10cと同様に、2つのシリンダ孔30a、30bがガイドレール11に設けられている。図示しないピストンがそれぞれのシリンダ孔30a、30bに往復動自在に装着される。両方の移動ブロック16a、16bを駆動するための構造は、上述した直線往復動装置10cと同様であり、図16,17においては、図14,15に示した部材と共通性を有する部材には、同一の符号が付されている。
【0073】
この直線往復動装置10dにおいても2つの移動ブロック16a、16bが相互に接近する方向に駆動されると、図示しない物品は2つの移動ブロック16a、16bにより挟持される。
【0074】
直線往復動装置10c、10dのガイドレール11および移動ブロック16a、16bも、上述したガイドレール11および移動ブロック16の製造方法により製造される。
【0075】
直線往復動装置10a〜10dの、ガイドレール11、13および移動ブロック16、16a、16bの素材としては、アルミニウム合金に代えて、マグネシウム合金としたり、樹脂といった軽量基材を用いても良い。軽量基材にすることにより、鋼製とする場合に比してそれぞれを軽量化することができる。
【0076】
さらに、それぞれの溶射皮膜21、22としては、ステンレス製粉末に代えて鉄系材料、セラミックス、サーメット、超硬合金を用いてもよい。
【0077】
上述したそれぞれの直線往復動装置10a〜10dの転動体は、鋼製であるが、鉄系材料、セラミックス、サーメット、超硬合金を用いてもよい。また、転動体の形状を、硬球に代えてローラとし、転動体案内面を、V溝形状のような転動体の形状にあわせた形状としても良い。
【0078】
直線往復動装置10a、10c、10dは、転動体が循環移動しない有限タイプであるが、10bのようにボール転動通路に加えてボール循環通路を設けて転動体を両方の通路を循環させると、無限ガイドタイプの直線往復動装置となる。
【0079】
直線往復動装置10a〜10dのボール転動通路は、レール部13の第1の対向面15に1本だけ設けられているが、レール部13の第1の対向面15に複数本設けてもよい。さらに、直線往復動装置10bは、移動ブロック16を一つだけ設けているが、複数設けてもよい。
【0080】
それぞれの溶射皮膜を高速フレーム溶射により形成したが、高速フレーム溶射に代えて、コールドスプレー、ウォームスプレーなどの他の溶射法により、それぞれの溶射皮膜を形成するようにしても良い。また、ガイドレール11、13と移動ブロック16、16a、16bのどちらか一方に溶射皮膜を形成してから転動体案内面を形成し、他方を合金鋼またはステンレス鋼として溶射皮膜を形成することなく転動体案内面を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
この発明は、被加工物や治工具等の被搬送物を直線往復動させるための直線往復動装置、および直線往復動装置を構成するガイドレールと移動ブロックとに適用される。
【要約】
直線往復動装置10aは、レール台12およびこれに一体に突設されたレール部13を備えるガイドレール11と、レール部13に往復動自在に装着される移動ブロック16とを有している。ガイドレール11と移動ブロック16は、それぞれアルミニウム合金製の基材からなる。レール部13の側面には、第1の溶射皮膜21が形成され、移動ブロック16の対向面には、第2の溶射皮膜22が形成される。それぞれの溶射皮膜21,22はステンレス製である。第1の溶射皮膜21に形成された第1の転動体案内面23と、第2の溶射皮膜22に形成された第2の転動体案内面24との間に、硬球26が配置される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17