(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
本実施形態のドレントラップ1は、ドレンが流入してきた場合にはドレンを流出させる一方、蒸気が流入してきた場合には蒸気の流出を阻止する。ドレントラップ1は弁装置の一例であり、ドレンは流体の一例である。
図1に示すように、ドレントラップ1は、流体の流路が形成されたケーシング10と、流路中に設けられ、流路を開閉する2つの弁機構30,40とを備えている。ケーシング10内に流入したドレンは、基本的には第1弁機構30を介してケーシング10から流出する。第2弁機構40は、基本的に、ケーシング10内に流入した空気を排出する。ただし、第2弁機構40は、ケーシング10内に流入したドレンを排出する場合もある。
【0012】
ケーシング10は、本体11と、本体11に取り付けられる蓋部12とを有している。ケーシング10には、流体がケーシング10に流入する流入口21と、流体を貯留する貯留室22と、流体がケーシング10から流出する流出口23とが形成されている。また、ケーシング10には、貯留室22と流出口23とを連通させる第1排出通路24と、貯留室22と第1排出通路24とを連通させる第2排出通路25とが形成されている。
【0013】
ケーシング10では、流入口21、貯留室22、流出口23、第1排出通路24および第2排出通路25によって流路が形成される。具体的には、流路は、ドレンを排出するための第1流路と、空気およびドレンを排出するための第2流路を有している。第1流路は、流入口21、貯留室22、第1排出通路24および流出口23によって形成される。第2流路は、流入口21、貯留室22、第2排出通路25、第1排出通路24および流出口23によって形成される。
【0014】
貯留室22は、本体11と蓋部12とによって形成されており、ドレンが貯留される。流入口21は、本体11に形成され、貯留室22の上部に連通している。流出口23は、本体11に形成されている。流入口21と流出口23とは、水平に延びる同一の軸上に形成されている。第1排出通路24は、本体11に形成され、上流端が貯留室22の下部に連通している。第1排出通路24の下流端は、流出口23に連通している。第2排出通路25は、本体11と蓋部12とに亘って形成され、上流端が貯留室22の上部に連通し、下流端が第1排出通路24に連通している。
【0015】
第1弁機構30は、第1弁体31と、第1弁座32とを有している。第1弁体31は、中空球形のフロートであり、貯留室22に自由状態で収容されている。第1弁座32は、第1排出通路24の上流端に設けられている。第1弁座32には、弁孔33が形成されている。弁孔33の上流端は、オリフィスを構成している。貯留室22のドレンが増加すると、第1弁体31が上昇し、第1弁座32から離座する。一方、貯留室22のドレンが減少すると、第1弁体31が下降し、第1弁座32に着座する。こうして、第1排出通路24、ひいては第1流路が開閉される。つまり、第1弁体31は、貯留室22におけるドレンの貯留位(ドレン水位)に応じて上昇下降し第1弁座32の弁孔33を開閉する。
【0016】
また、貯留室22には、流入口21との連通部にスクリーン26が設けられている。スクリーン26によって、流入口21から貯留室22への異物(比較的大きな異物)の流入が防止される。また、貯留室22には、上部寄りに弁カバー27が設けられている。弁カバー27は、第1弁座32の上方に設けられ、貯留室22を上下に仕切っている。弁カバー27は、扁平な容器状に形成され、開放側が下方を向いた状態で設けられている。弁カバー27は、中央部が上方へ向かって膨出する球面状の膨出部27aとなっている。弁カバー27は、第1弁体31が所定の高さ以上に上昇するのを規制する規制部材である。第1弁体31は、弁カバー27まで上昇し該弁カバー27に接触することにより、上昇動作が規制される。第1弁体31は、上昇動作が規制された状態では膨出部27aに嵌る。なお、図示しないが、弁カバー27には流入口21からのドレンが流入する貫通孔が設けられている。
【0017】
第2弁機構40は、所定の温度未満の流体(例えば、空気またはドレン)を排出する一方、所定の温度以上の流体(例えば、蒸気)の排出を停止する熱応動式の弁機構である。第2弁機構40は、弁カバー27の上方に設けられており、第2排出通路25、ひいては第2流路を開閉する。
図2にも示すように、第2弁機構40は、弁体ユニット41と、弁座ユニット51とを有し、本願の請求項に係る弁機構に相当する。弁体ユニット41は、貯留室22において第2排出通路25の連通箇所に相当する上部に設けられている。弁座ユニット51は、第2排出通路25の上流端に設けられている。
【0018】
弁体ユニット41は、第2弁体42と、温度応動部43と、保持部材45と、バネ46とを有している。第2弁体42、温度応動部43およびバネ46は、それぞれ、本願の請求項に係る弁体、駆動部および弾性部材に相当する。
【0019】
図3にも示すように、温度応動部43は、内部に膨張媒体が密閉された略円盤状に形成されている。温度応動部43の少なくとも一部は、ダイヤフラム44で形成されている。ダイヤフラム44は、複数枚の金属製の薄膜で形成されている。第2弁体42は、ダイヤフラム44に取り付けられている。膨張媒体は、温度に応じて膨張収縮する媒体である。例えば、膨張媒体は、水、水より沸点が低い液体、またはそれらの混合物である。温度応動部43は、膨張媒体が膨張収縮することによって、ダイヤフラム44が変形(変位)し、それに伴い、第2弁体42が変位する。つまり、温度応動部43は、流体の温度に応じて変位することによって第2弁体42を中心軸Xの方向に変位させて後述する第2弁座52のシート面52aに離着座させる。中心軸Xは、円環状に形成されたシート面52aの中心軸である。中心軸Xの方向は、上下方向と一致する。
【0020】
第2弁体42の上端面は、シート面42aとなっている。シート面42aは、円形の平面状に形成されている。第2弁体42のシート面42aと第2弁座52のシート面52aとは対向している。保持部材45は、下端が開放された円柱容器状に形成され、第2弁体42および温度応動部43が収容されている。バネ46は、保持部材45に支持されており、温度応動部43の上流側に位置して温度応動部43を保持している。つまり、バネ46は温度応動部43を介して間接的に第2弁体42を保持している。バネ46は、中心軸Xの方向の弾性を有するものであり、温度応動部43を第2弁座52側へ付勢している。
【0021】
具体的に、弁体ユニット41では、温度応動部43の温度が高くなると、膨張媒体が膨張してダイヤフラム44が変形(変位)し、第2弁体42が変位して第2弁座52に着座する。温度応動部43の温度が低くなると、膨張媒体が収縮してダイヤフラム44が変形(変位)し、第2弁体42が変位して第2弁座52から離座する。こうして、第2排出通路25、ひいては第2流路が開閉される。この例では、ドレンと同程度の温度では第2弁体42が第2弁座52から離座し、蒸気と同程度の温度では第2弁体42が第2弁座52に着座するような膨張媒体が採用されている。
【0022】
弁座ユニット51は、第2弁座52と、ガイド部材55と、駆動部56とを有している。第2弁座52は、本願の請求項に係る弁座に相当する。第2弁座52は、弁孔53が貫通する略円筒状に形成されており、中心軸Xの方向に延びている。第2弁座52の上流側端部には、鍔部52cが形成されている。鍔部52cの中央部は、その周囲よりも隆起しており、その端面が円環状のシート面52aとなっている。シート面52aは、平面状に形成されており、弁孔53が開口している。貯留室22と第2排出通路25とは弁孔53を介して連通している。第2弁座52は、上流端が第2排出通路25から貯留室22に突出する状態で設けられている。
【0023】
ガイド部材55は、中心軸Xの方向に貫通孔55bが形成された略円筒部材である。ガイド部材55は、外周面に雄ねじが形成され、ケーシング10に螺合されている。ガイド部材55の上流側端部には、鍔部55aが形成されている。ガイド部材55は、鍔部55aが貯留室22に突出する状態で設けられている。ガイド部材55の貫通孔55bの内径は第2弁座52の外径と略同じであり、第2弁座52はガイド部材55の貫通孔55bに挿入されている。第2弁座52は、中心軸X方向に進退可能にガイド部材55に挿入されている。また、第2弁座52は、中心軸X回りに回転可能、即ち中心軸Xを中心として回転可能にガイド部材55に挿入されている。
【0024】
弁体ユニット41の保持部材45は、その上部がガイド部材55の鍔部55aとケーシング10とによって挟持されることにより保持されている。第2弁座52は、鍔部52cがガイド部材55の外部に位置する状態でガイド部材55に挿入されている。鍔部52cには、鍔部52cとガイド部材55の鍔部55aとの間をシールするパッキン54が設けられている。
【0025】
駆動部56は、ケーシング10(蓋部12)の上部に設けられている。駆動部56は、第2弁座52を進退および回転させるものである。駆動部56は、駆動軸57と、保持部材64とを有している。
【0026】
駆動軸57は、中心軸Xと同軸に設けられた円形の棒状部材であり、下端部が第2弁座52に連結されている。駆動軸57は、軸方向中央のやや下部に螺合部58が形成され、螺合部58の下方に連続して大径部59が形成されている。駆動軸57の下端部には連結部61が形成され、上端部には操作部62が形成されている。螺合部58は、外周面に雄ねじが形成されている。
【0027】
保持部材64は、略円筒部材であり、上側から順に大径部66および小径部65が形成されている。保持部材64は、小径部65の外周面に雄ねじが形成されており、小径部65がケーシング10のねじ孔に螺合することによりケーシング10に取り付けられている。小径部65および大径部66には、それぞれねじ孔65a,66aが形成されている。駆動軸57は、螺合部58が小径部65のねじ孔65aと螺合して保持部材64に保持される。
【0028】
大径部66のねじ孔66aには、パッキン67が設けられている。パッキン67は、大径部66のねじ孔66aに螺合される押え部材68によって保持部材64に押し付けられる。押え部材68には、駆動軸57が挿通される貫通孔68aが形成されている。駆動軸57は、操作部62が押え部材68から突出する状態で設けられている。駆動軸57の操作部62を含む一部や押え部材68はケーシング10の外部に位置している。操作部62は、駆動軸57を回転させるための工具が接続される部分である。
【0029】
図4および
図5にも示すように、駆動軸57は連結部61が第2弁座52と連結されている。具体的に、連結部61には、中心軸Xと直交する方向に延びる連結ピン63が設けられている。第2弁座52の下流端部には、部分的に切除された2つの切除部52bが設けられている。2つの切除部52bは、第2弁座52の周方向において互いに180°ずれた位置に設けられている。2つの切除部52bは、貯留室22から弁孔53に流入した流体が、第2排出通路25へ流出する開口となっている。駆動軸57は、連結ピン63の両端が、第2弁座52の下流端部に形成された貫通孔52dに挿入されることにより、第2弁座52と連結されている。第2弁座52は、連結ピン63を中心に回転可能となっている。なお、駆動軸57の大径部59の外径は第2弁座52の弁孔53の内径よりも若干小さい。
【0030】
このように構成された駆動部56では、駆動軸57が工具によって回転されると、駆動軸57が回転しながら中心軸X方向に進退し、それに伴い、第2弁座52が回転しながら中心軸X方向に進退する。この第2弁座52の進退動作により、第2弁座52のシート面52aと第2弁体42のシート面42aとの離隔および接触が行われる。
【0031】
〈基本動作〉
上述したドレントラップ1の基本動作について説明する。基本動作では、第1弁機構30および第2弁機構40による流路の開閉が行われる。ドレントラップ1が設置された蒸気システムの始動時には、温度応動部43の温度は低く、第2弁体42は第2弁座52から離座している。また、ケーシング10内のドレンが無い場合または少ない場合は、第1弁体31が第1弁座32に着座している。つまり、第1弁機構30は閉弁し、第2弁機構40は開弁している。
【0032】
この状態から蒸気システムが始動すると、流入口21から貯留室22にドレンが流入し始める。このとき、流入口21に接続された配管内に存在していた空気もドレンと共に貯留室22に流入する。貯留室22に流入したドレンは、貯留室22の下部に溜まっていく。貯留室22のドレンの貯留量が増加すると、第1弁体31が上昇して、第1弁座32から離座する。これにより、第1弁機構30が開弁し、貯留室22のドレンは、第1排出通路24を通って流出口23から流出していく。
【0033】
貯留室22に流入した空気は、貯留室22の上部に滞留する。このとき、空気の温度がかなりの高温でない限り、温度応動部43の膨張媒体の体積(即ち、膨張の度合い)は小さいため、ダイヤフラム44の変形量(変位量)は小さく、第2弁体42は第2弁座52から離座したままである。つまり、第2弁機構40は開弁したままである。そのため、空気は、第2弁機構40を介して第2排出通路25へ流入し、第1排出通路24を通って流出口23から流出していく。その際、第2弁機構40では、弁孔53に流入した空気は2つの切除部52bから第2排出通路25へ流出する。
【0034】
なお、第1弁機構30からのドレンの排出量に対して流入口21からのドレンの流入量が多い場合には、貯留室22においてドレンは増加し上部まで溜まる。すると、温度応動部43の温度は、ドレンの温度に近づく。この例では、温度応動部43の膨張媒体の温度がドレンと同程度の場合には、膨張媒体の体積(即ち、膨張の度合い)は小さく、ダイヤフラム44の変形量(変位量)は小さい。したがって、第2弁体42が第2弁座52から離座したままである。そのため、ドレンは、第2弁機構40を介して第2排出通路25へ流入し、第1排出通路24を通って流出口23から流出していく。この際も、第2弁機構40では、弁孔53に流入したドレンは2つの切除部52bから第2排出通路25へ流出する。
【0035】
一方、流入口21から貯留室22に蒸気が流入すると、貯留室22のドレンは、第1弁機構30から排出されて減少していき、やがて第1弁体31が第1弁座32に着座する。こうして、第1弁機構30が閉弁し、第1弁機構30からの蒸気の排出が阻止される。
【0036】
また、貯留室22に蒸気が流入すると、温度応動部43の温度が上昇し、膨張媒体が膨張する。膨張媒体の膨張によりダイヤフラム44が変形(変位)し、それに伴い、第2弁体42が上方へ変位して第2弁座52に着座する。こうして、第2弁機構40が閉弁し、第2弁機構40からの蒸気の排出が阻止される。
【0037】
このように、ドレントラップ1は、流入してきたドレンおよび空気を下流側へ流出させる一方、流入してきた蒸気の流出を阻止する。
【0038】
なお、上述した基本動作時の第2弁機構40では、第2弁座52および駆動軸57は最上位に位置している。つまり、
図2に示すように、第2弁座52は鍔部52cがガイド部材55の鍔部52cに接するまで後退(上方へ変位)した状態となっている。厳密には、パッキン54が存在するため第2弁座52の鍔部52cとガイド部材55の鍔部55aとは接しない場合があり、パッキン54が必要量押し潰されるまで第2弁座52が後退した状態となる。こうして、第2弁座52が最上位に位置することで、第2弁座52とガイド部材55との間がパッキン54によってシールされるため流体が漏洩することはない。
【0039】
〈清掃動作〉
上述したドレントラップ1の清掃動作について説明する。清掃動作では、第2弁機構40において異物の除去動作が行われる。
【0040】
第2弁機構40においては、第2弁体42および第2弁座52にスケール等の異物が堆積し得る。具体的に、スケール等の異物は、減圧される部分に堆積しやすい。第2弁体42と第2弁座52との間は、開弁時であっても流路の他の部分に比べて流路断面積が小さい。そのため、第2弁体42および第2弁座52はそれぞれ、絞りとして機能し、通過するドレンが減圧される。ドレンが減圧されて蒸発する際にスケールが発生しやすい。その結果、第2弁体42および第2弁座52にスケール等の異物が堆積し得る。第2弁体42のシート面42aおよび第2弁座52のシート面52aの少なくとも一方に異物が堆積すると、第2弁機構40は閉弁できず蒸気が漏洩する虞がある。
【0041】
そこで、第2弁機構40では、定期的に、または、異物の堆積量が多くなったときに清掃動作が行われる。第2弁機構40が開弁時の清掃動作について説明する。清掃動作では、作業者が工具によって駆動軸57を回転させる。そうすると、
図6に示すように、駆動軸57は回転しながら前進(下方へ変位)し、それに伴い、第2弁座52も回転しながら前進(下方へ変位)する。第2弁座52は、所定量前進すると、第2弁体42に接触する。つまり、第2弁座52のシート面52aと第2弁体42のシート面42aとが接触する。厳密には、双方のシート面42a,52aの間には異物が介在している。
【0042】
更に、駆動軸57が回転しながら前進すると、第2弁座52は回転しながら前進しようとする。このとき、温度応動部43は、中心軸X方向(即ち、第2弁座52の進退方向)に弾性を有するバネ46によって保持されているため、バネ46の付勢力に抗して第2弁体42と共に下方へ変位することが可能である。そのため、作業者が駆動軸57を更に回転させることにより、第2弁座52は第2弁体42に接触してからも更に回転しながら前進(下方へ変位)する。それに伴い、温度応動部43は第2弁体42と共に下方へ変位する。それに伴い、バネ46は下方へ撓む。つまり、第2弁座52は、シート面52aが第2弁体42のシート面42aに接触した状態で回転する。この第2弁座52の回転動作により、シート面42a,52aに堆積していた異物が擦り落とされる。こうして、第2弁機構40において堆積していた異物が除去される。
【0043】
作業者は、第2弁座52が第2弁体42に接触してから第2弁座52を所定量回転させると、駆動軸57を逆回転させる。そうすると、駆動軸57は逆回転しながら後退(上方へ変位)し、それに伴い、第2弁座52も逆回転しながら後退(上方へ変位)する。このとき、温度応動部43はバネ46の付勢力によって上方へ変位する。つまり、第2弁座52が後退(上方へ変位)すると、温度応動部43は第2弁体42と共に第2弁座52に追従して上方へ変位する。そのため、第2弁座52は、後退時においてもシート面52aが第2弁体42のシート面52aに接触した状態で回転することになる。この第2弁座52の後退時の回転動作により、シート面42a,52aに堆積していた異物が更に擦り落とされる。こうして、第2弁座52の後退時にも異物の除去作用が生じる。そして、第2弁座52が例えば前進時と同じ所定量逆回転されると、温度応動部43は元の位置に戻り変位を停止し、第2弁座52は第2弁体42から離隔する。第2弁座52が元の位置(即ち、基本動作時の位置)まで後退すると、清掃動作が完了する。
【0044】
次に、第2弁機構40が閉弁時の清掃動作について説明する。清掃動作は、第2弁体42のシート面42aと第2弁座52のシート面52aとが接触した状態で開始される。開弁時の清掃動作と同様、作業者が工具によって駆動軸57を回転させる。そうすると、駆動軸57は回転しながら前進(下方へ変位)し、それに伴い、第2弁座52も回転しながら前進(下方へ変位)する。それに伴い、温度応動部43は、バネ46の付勢力に抗して第2弁体42と共に下方へ変位する。それに伴い、バネ46は下方へ撓む。つまり、第2弁座52は、シート面52aが第2弁体42のシート面42aに接触した状態で回転する。この第2弁座52の回転動作により、シート面42a,52aに堆積していた異物が擦り落とされる。
【0045】
続いて、作業者は、駆動軸57を逆回転させることにより、第2弁座52を後退(上方へ変位)させる。そうすると、温度応動部43は、バネ46の付勢力により、第2弁体42と共に第2弁座52に追従して上方へ変位する。そのため、第2弁座52は、後退時においてもシート面52aが第2弁体42のシート面52aに接触した状態で回転する。この第2弁座52の後退時の回転動作により、シート面42a,52aに堆積していた異物が更に擦り落とされる。
【0046】
このように、第2弁体42および第2弁座52のシート面42a,52aに堆積した異物が第2弁座52の回転動作によって除去される。その結果、第2弁機構40における蒸気の漏洩が防止される。
【0047】
また、上述した清掃動作では、温度応動部43が下方へ一定量変位すると、温度応動部43の下方への変位が弁カバー27によって規制される。
図6に示すように、温度応動部43は、第2弁座52の前進によって下方へ一定量変位すると、下面43aが弁カバー27の膨出部27aに接触する。こうして、温度応動部43は弁カバー27に接触することによって下方への変位が規制される。つまり、弁カバー27は、第1弁体31の上昇動作を規制する一方、温度応動部43の下方への変位量も規制する規制部材である。また、弁カバー27は、温度応動部43の下方への変位量を規制することにより、温度応動部43に保持された第2弁体42の下方への変位量を規制しているとも言える。つまり、弁カバー27は第2弁座52の前進による第2弁体42の変位量を規制する部材とも言える。このように、温度応動部43の下方への変位量が規制されることにより、バネ46に作用する力が制限される。
【0048】
以上のように、上記実施形態のドレントラップ1(弁装置)では、第2弁座52の円環状のシート面52aと第2弁体42のシート面42aとの離隔および接触が行われるように、第2弁座52を上記円環状の中心軸X方向に進退可能に保持するようにした。更に、ドレントラップ1では、第2弁座52を上記円環状の中心軸X回りに回転可能に保持するようにした。
【0049】
上記の構成によれば、第2弁座52を前進させることにより第2弁座52のシート面52aを第2弁体42のシート面42aに接触させることができ、更に第2弁座52を回転させることができる。これにより、シート面42a,52aに堆積していた異物を擦り落として除去することができる。その結果、確実に第2弁体42を第2弁座52に着座させることができるので、蒸気の漏洩を防止することができる。そして、異物が除去された後は、第2弁座52を後退させることにより、第2弁座52を元の位置に戻すことができる。
【0050】
また、上記実施形態のドレントラップ1は、上記中心軸Xと同軸に設けられ、第2弁座52に連結される駆動軸57と、駆動軸57と螺合し該駆動軸57を保持する保持部材64とを有する。そして、ドレントラップ1では、駆動軸57を回転させることによって第2弁座52を進退および回転させるようにした。この構成によれば、駆動軸57を回転させるだけで、第2弁座52の進退動作と回転動作を同時に行うことができる。そのため、異物を除去する清掃効率が向上する。
【0051】
また、上記実施形態のドレントラップ1では、上記中心軸X方向の弾性を有し、第2弁体42を間接的に保持するバネ46(弾性部材)を設けるようにした。この構成によれば、第2弁座52が第2弁体42に接触した後、第2弁座52の前進に伴い、第2弁体42を第2弁座52の前進方向へ変位させることができる。そのため、第2弁座52は、第2弁体42に接触した後も、第2弁体42を押しながら前進することができ且つ回転することができる。これにより、容易に第2弁座52を第2弁体42と接触させた状態で回転させることができる。
【0052】
また、上記実施形態のドレントラップ1は、第2弁体42を保持し、流体の温度に応じて変位することによって第2弁体42を上記中心軸X方向に変位させて第2弁座52のシート面52aに離着座させる温度応動部43(駆動部)を有するようにした。更に、ドレントラップ1は、上記中心軸X方向の弾性を有し、温度応動部43を保持するバネ46(弾性部材)を有するようにした。
【0053】
上記の構成によれば、流体の温度に応じて第2弁体42を第2弁座52に離着座させることができる。また、第2弁座52が第2弁体42に接触した後、第2弁座52の前進に伴い、第2弁体42および温度応動部43を第2弁座52の前進方向へ変位させることができる。そのため、第2弁座52は、第2弁体42に接触した後も、第2弁体42および温度応動部43を押しながら前進することができ且つ回転することができる。この場合も、容易に第2弁座52を第2弁体42と接触させた状態で回転させることができる。
【0054】
また、第2弁座52は、一端面が円環状のシート面52aとなる略円筒状に形成され、シート面52aの中心軸Xと直交する方向に延びる連結ピン63によって駆動軸57と連結され、連結ピン63を中心に回転可能に構成されている。
【0055】
上記の構成によれば、第2弁座52が連結ピン63を中心として回転することにより、第2弁座52のシート面52aを第2弁体42のシート面42aに対し傾けることが可能である。そのため、例えば、シート面42a,52aにおいて一部分に異物が偏って堆積している場合でも、その異物の堆積表面に沿うように第2弁座52のシート面52aを傾かせることができる。これにより、異物の堆積分布に応じてシート面42a,52a同士を接触させることができる。そのため、異物の除去効率が向上する。
【0056】
また、上記実施形態のドレントラップ1は、温度応動部43の下方への変位量を規制する規制部材を備えている。具体的に、貯留室22には、第1弁体31(フロート)の上方に第1弁体31が所定の高さ以上に上昇することを規制する弁カバー27(規制部材)が設けられている。第2弁機構40は、弁カバー27の上方において中心軸Xの方向が上下方向と一致する状態で設けられ、且つ、第2弁座52が下方へ前進することにより該第2弁座52のシート面52aが第2弁体42のシート面42aと接触するように設けられている。そして、弁カバー27は、温度応動部43が下方へ変位し弁カバー27と接触することにより、温度応動部43の下方への変位量を規制する。
【0057】
上記の構成によれば、清掃動作時において、温度応動部43が所定位置よりも下方へ変位することを防止することができる。これにより、バネ46に作用する力(抗力)を制限することができ、バネ46の破損を防止することができる。また、温度応動部43の下方への変位量を規制することにより、第2弁体42の変位量も規制することができる。
【0058】
(その他の実施形態)
上記実施形態のドレントラップ1について、以下のような構成としてもよい。
【0059】
例えば、ドレントラップ1は、蒸気の排出を阻止するスチームトラップに限らず、空気の排出を阻止するエアトラップ、またはガスの排出を阻止するガストラップ等であってもよい。
【0060】
また、本願に開示された技術は、ドレントラップ1に限らず、流体として気体または液体の流通を制御する任意の弁装置に適用することができる。
【0061】
また、上記実施形態のドレントラップ1では、第2弁座52は、回転しながら進退するもの、即ち進退動作と回転動作を同時に行うものとしたが、進退動作と回転動作とを個別に行うことができる構成としてもよい。
【0062】
また、上記実施形態のドレントラップ1では、第2弁体42のシート面42aおよび第2弁座52のシート面52aは平面であるが、これに限られるものではない。例えば、シート面42a,52aの一方が球面等の凹状に形成され、他方がその凹状面に面接触する円錐面等の凸状に形成されてもよい。
【0063】
また、上記実施形態のドレントラップ1では、第1弁体31の上昇動作を規制する弁カバー27を利用して、温度応動部43の下方への変位量を規制するようにしたが、温度応動部43の下方への変位量を規制する部材を別途設けるようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態のドレントラップ1は、第1弁機構30の第1弁体31がフロートである、いわゆるフロート式のものであるが、本願に開示の技術はこれに限らず、第1弁機構の第1弁体がディスク状に形成された、いわゆるディスク式のものであってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、弁装置の一例としてドレントラップ1について説明したが、他の例としては、弁機構を備え流入したドレンを圧送するポンプ装置が挙げられる。
ドレントラップ1は、流体の流路が形成されたケーシング10と、環状のシート面52aを有する第2弁座52と、変位して第2弁座52のシート面52aに離着座する第2弁体42とを有し、流路を開閉する第2弁機構40とを備える。第2弁座52は、第2弁座52のシート面52aと第2弁体42のシート面42aとの離隔および接触が行われるように上記環状の中心軸X方向に進退可能に保持され、且つ、上記環状の中心軸X回りに回転可能に保持されている。