特許第6333559号(P6333559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333559
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】農作業機用制御装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 61/02 20060101AFI20180521BHJP
   A01B 63/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A01B61/02
   A01B63/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-8147(P2014-8147)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-43763(P2015-43763A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-161897(P2013-161897)
(32)【優先日】2013年8月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 素広
(72)【発明者】
【氏名】木村 啓明
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−223105(JP,A)
【文献】 実開昭55−114508(JP,U)
【文献】 特開平05−301584(JP,A)
【文献】 特開2012−188862(JP,A)
【文献】 特開2001−145233(JP,A)
【文献】 特開平10−276509(JP,A)
【文献】 特開2011−067162(JP,A)
【文献】 米国特許第06070538(US,A)
【文献】 特開平09−121615(JP,A)
【文献】 特開2008−206522(JP,A)
【文献】 特開2011−000102(JP,A)
【文献】 特開2011−142883(JP,A)
【文献】 特開平11−103628(JP,A)
【文献】 特開2005−153615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 59/00 − 63/32
A01C 7/04 − 7/20
A01C 15/00 − 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の農作業機のいずれかを走行車に接続し、該走行車に接続した前記農作業機を制御する農作業機用制御装置であって、
前記複数の農作業機をおのおの制御する複数の制御手段に共通する要素からなる共通制御手段のみを有して前記走行車に配置された共通部と、
前記走行車に接続した前記農作業機が有する固有の制御対象を制御するための農作業機固有制御手段のみを有して前記走行車に配置された個別部と、
前記個別部に設けられ、前記農作業機を操作するための固有な操作要素を有する操作部と、
前記共通部と前記個別部とを接続する接続部とを備えたことを特徴とする農作業機用制御装置。
【請求項2】
前記共通部が、
種々の表示情報を表示するための表示器と、
外部より電源を取り入れるための電源入力コネクタ部と、
前記電源入力コネクタ部より取り入れた電源の電圧を装置内部で使用する電圧に変換する電源電圧変換手段と、
前記農作業機との間で信号を通信するための信号線、及び、前記電源入力コネクタ部が取り入れた電源を前記農作業機へ供給する電力線を接続する農作業機コネクタ部と、
前記信号線を介して前記農作業機との間で信号を通信するための通信部と、を少なくとも備える一方、
前記個別部が、
前記農作業機の動作を制御する制御信号を形成し、前記通信部を介して前記農作業機へその制御信号を送信するとともに、前記表示器に表示させる表示情報を生成する制御部と、
前記制御部に実行させるプログラムデータを記憶した記憶部と
少なくとも備えたことを特徴とする請求項1に記載の農作業機用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車に接続した農作業機を制御する農作業機用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車(トラクタなど)に接続した農作業機(ブロードキャスタなど)を制御する農作業機用制御装置は、おのおのの農作業機の機能を十分に発揮できるように、専用の農作業機用制御装置が制作され、その農作業機用制御装置を走行車側に設置し、運転者が走行車の運転に合わせて農作業機を制御させるなどの操作を行うようにしていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−130983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場での農作業には多くの種類があり、また、農作業の規模もいろいろなので、それらの農作業の種類や規模に合わせた多くの農作業機が製造されている。また、農作業機を制御する農作業機用制御装置も、おのおのの農作業機に合わせた多くの種類が提供されている。
そのために、農作業機とその農作業機に対応した農作業機用制御装置とを合わせた装置コストを低減する妨げとなるおそれがあった。
【0005】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、農作業機とその農作業機に対応した農作業機用制御装置とを合わせた装置コストを低減できる農作業機用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、複数の農作業機のいずれかを走行車に接続し、該走行車に接続した前記農作業機を制御する農作業機用制御装置であって、前記複数の農作業機をおのおの制御する複数の制御手段に共通する要素からなる共通制御手段のみを有して前記走行車に配置された共通部と、前記走行車に接続した前記農作業機が有する固有の制御対象を制御するための農作業機固有制御手段のみを有して前記走行車に配置された個別部と、前記個別部に設けられ、前記農作業機を操作するための固有な操作要素を有する操作部と、前記共通部と前記個別部とを接続する接続部とを備えたものである。
また、前記共通部が、種々の表示情報を表示するための表示器と、外部より電源を取り入れるための電源入力コネクタ部と、前記電源入力コネクタ部より取り入れた電源の電圧を装置内部で使用する電圧に変換する電源電圧変換手段と、前記農作業機との間で信号を通信するための信号線、及び、前記電源入力コネクタ部が取り入れた電源を前記農作業機へ供給する電力線を接続する農作業機コネクタ部と、前記信号線を介して前記農作業機との間で信号を通信するための通信部と、を少なくとも備える一方、前記個別部が、前記農作業機の動作を制御する制御信号を形成し、前記通信部を介して前記農作業機へその制御信号を送信するとともに、前記表示器に表示させる表示情報を生成する制御部と、前記制御部に実行させるプログラムデータを記憶した記憶部と、を少なくとも備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明の農作業機用制御装置は、複数の農作業機に共通する共通部を備え、この共通部に、おのおのの農作業機に対応する個別部を接続するようにしているので、おのおのの農作業機に対応した農作業機用制御装置のうち、共通部に相当する部分については、複数の農作業機で1つ備えればよく、したがって、農作業機とその農作業機に対応した農作業機用制御装置とを合わせた装置コストを低減することができる。効果の詳細は、後述する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例にかかる農業機械システムの一例を示したブロック図である。
図2図2(a)〜(c)は、走行車側コントローラ100を、作業機3a,3b,3cの作業機側コントローラ4a,4b,4cにそれぞれ接続する場合について説明するための概略ブロック図である。
図3図3は、走行車側コントローラ100の共通部と個別部とを接続する機構の一例を示した概略正面図である。
図4図4は、走行車側コントローラ100の構成の一例を示したブロック図である。
図5図5は、走行車側コントローラ100の構成の他の例を示したブロック図である。
図6図6は、走行車側コントローラ100の共通部と個別部とを接続する機構の他の例を示した概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔実施例〕
図1は、本発明の一実施例にかかる農業機械システムの一例を示したブロック図である。
図1において、本実施例では、走行車1に、3つの作業機(農作業機)3a,3b,3cのいずれかを、連結器2を介して接続して、農業機械システムが構成されている。作業機3a,3b,3cには、それぞれの作業機3a,3b,3cの機能(施肥、播種など)を実現するための機構(ブロードキャスタなど;図示略)が設けられており、おのおのの作業機3a,3b,3cに対応する作業機側コントローラ4a,4b,4cにより、作業機3a,3b,3cに設けられた機構の動作が制御されることによって、それぞれの作業機3a,3b,3cの機能の制御(車速連動制御等)が実現される。
【0010】
走行車1には、走行車1の運転者が作業機3a,3b,3cの機能を操作するための走行車側コントローラ(農作業機用制御装置)100が設けられている。この走行車側コントローラ100は、信号ハーネスHH(後述)を介して、作業機3a,3b,3cの作業機側コントローラ4a,4b,4cのいずれかと接続し、運転者の操作に対応して作業機側コントローラ4a,4b,4cを制御するために必要な情報をやりとりするとともに、作業機側コントローラ4a,4b,4cに対して動作に必要な電源を供給する(後述)。
【0011】
このようにして、運転者の操作に対応して走行車側コントローラ100が作業機側コントローラ4a,4b,4cを制御し、作業機側コントローラ4a,4b,4cは、走行車側コントローラ100から受信した制御信号に基づいて、作業機3a,3b,3cに設けられた機構の動作を制御するので、作業機3a,3b,3cは、運転者の操作内容に従って動作する。
【0012】
ここで、走行車側コントローラ100と作業機側コントローラ4a,4b,4cとの間の信号のやりとりには、CAN(Controller Area Network)通信が用いられ、したがって、信号ハーネスHHは、CAN通信のためのCANバスの2本の信号線を含む。また、信号ハーネスHHは、走行車側コントローラ100から作業機側コントローラ4a,4b,4cへ電源を供給するための電力線(2本)と、車載バッテリ(図示略)から取り入れた電源を直接作業機側コントローラ4a,4b,4cへ供給するための電力線(2本)も含む。したがって、信号ハーネスHHは少なくとも6本の信号線を束ねて構成される。
【0013】
さて、上述のように、走行車側コントローラ100は、連結器2を介して作業機3aが接続された場合には、作業機3aの作業機側コントローラ4aを制御するために必要な情報を作業機側コントローラ4aとの間でやりとりするとともに作業機側コントローラ4aを制御する機能を有し、連結器2を介して作業機3bが接続された場合には、作業機3bの作業機側コントローラ4bを制御するために必要な情報を作業機側コントローラ4bとの間でやりとりするとともに作業機側コントローラ4bを制御する機能を有し、連結器2を介して作業機3cが接続された場合には、作業機3cの作業機側コントローラ4cを制御するために必要な情報を作業機側コントローラ4cとの間でやりとりするとともに作業機側コントローラ4cを制御する機能を有するように、連結器2を介して接続される作業機(3a,3b,3c)の種類に応じて、その制御機能にかかる構成内容が変更されるものであり、この走行車側コントローラ100の構成について、次に説明する。
【0014】
図2(a)〜(c)は、走行車側コントローラ100を、作業機3a,3b,3cの作業機側コントローラ4a,4b,4cにそれぞれ接続した場合について説明するための概略ブロック図であり、図3は、走行車側コントローラ100の共通部と個別部とを接続する機構の一例を示した概略正面図であり、図4は、走行車側コントローラ100の構成の一例を示したブロック図であり、図5は、走行車側コントローラ100の構成の他の例を示したブロック図である。
【0015】
図2(a)に示すように、作業機側コントローラ4aは、2つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、2つのモータの動作を制御することで、第1の機構(図示略)の動作を制御する。
また、同図(b)に示すように、作業機側コントローラ4bは、1つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、4つの弁を有する電磁バルブの動作を制御することで、第2の機構(図示略)の動作を制御する。
また、同図(c)に示すように、作業機側コントローラ4cは、2つの作業機側コントローラ4ca,4cbからなり、一方の作業機側コントローラ4caは、作業機側コントローラ4aと同様に、2つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、2つのモータの動作を制御することで、第1の機構の動作を制御し、他方の作業機側コントローラ4cbは、作業機側コントローラ4bと同様に、1つのセンサから出力されるセンサ信号を受信するとともに、4つの弁を有する電磁バルブの動作を制御することで第2の機構の動作を制御する。
【0016】
このように、作業機3a,3b,3cに備えられる作業機側コントローラ4a,4b,4cは、特定の機構の動作を制御する単体のユニットからなる場合(作業機が単一の機能を有する場合)と、2以上の機構の動作をそれぞれ制御する複数のユニットを組み合わせてなる場合(作業機が複数の機能を有する場合、あるいは、作業機の制御システムが複数のブロックに分割されておのおののブロックに制御ユニットを設けた場合)とがある。そして、いずれの場合でも、走行車側コントローラ100と作業機側コントローラとの間の制御情報等の通信は、マルチホストに対応しているCAN通信を用いて実現する。
ここで、CANバス上の信号のレベルは差動レベルで認識され、おのおのの作業機側コントローラ4a,4b,4cからCANバスに信号線を接続することで、CANバスを介したCAN通信を行うことができる。このCANバスへの接続形態については、走行車側コントローラ100も同じである。
なお、作業機側コントローラが複数のユニットからなる場合には、走行車側コントローラ100から電源を供給するための電力線を、作業機側で分岐しておのおののユニットに接続することで、それぞれのユニットに電源を供給するとよい。
【0017】
一方、走行車側コントローラ100は、接続される各作業機側コントローラ4a,4b,4cに共通して対応する共通部110と、接続される各作業機側コントローラ4a,4b,4cのおのおのに個別に対応する個別部111,112,113とから構成されている。
【0018】
信号ハーネスHHの一方の端部には、走行車側コントローラ100の共通部110に接続するためのコネクタCAが設けられており、信号ハーネスHHの他方の端部には、作業機側コントローラ4a,4b,4cのいずれか1つに接続するためのコネクタCBが設けられている。
【0019】
図3に示すように、共通部110と個別部111は、別筐体に作り込まれていて、共通部110に設けた雌型コネクタ121と、個別部111に設けた雄型コネクタ122とを結合することで、共通部110と個別部111とが信号的に接続されるとともに、物理的に結合される。また、個別部111に設けた手回しネジ131,132は、その先端が共通部110に設けたネジ受け133,134にねじ込まれることで、雌型コネクタ121と雄型コネクタ122との結合が容易に解除されないようにしている。
【0020】
なお、雌型コネクタ121と雄型コネクタ122とで、一組のコネクタ120が構成さる。また、手回しネジ131,132の頭部の側面には、手がかりのためのローレットが形成されていて、共通部110と個別部111との結合と結合解除とを容易に手作業することができるようになっている。また、この頭部の端部に、ドライバ用の−溝あるいは+溝を形成しておけば、適宜な工具を用いて手回しネジ131,132の操作を行うことができる。
【0021】
共通部110には、信号ハーネスHHの一方のコネクタCAが接続されるハーネス用コネクタCH、走行車1の車載バッテリから電源を引き込むための電力線PPが接続される電力用コネクタCP、電源をオンオフするための電源スイッチSWp、電源のオンオフ状態を点灯表示するための電源ランプLPp、種々の音を発音するためのブザーBZ、及び、種々の情報を画面表示するための画面表示器(液晶表示器等からなる)DSPなどが設けられている。
【0022】
これらのハーネス用コネクタCH、電力用コネクタCP、電源スイッチSWp、電源ランプLPp、ブザーBZ、及び、画面表示器DSPは、接続される作業機側コントローラ4a,4b,4cを操作制御する際に共通して使用される装置要素であり、共通部110には、主として、これらの共通的な装置要素が設けられている。
【0023】
個別部111には、作業機3aを操作するための固有な操作要素が設けられている。例えば、棒状の操作部を有するトグルスイッチ111a、アナログ量を操作するためのボリューム111b、動作モード等のオンオフを切り換えるための押しボタン型スイッチ111c,111d,111e、それぞれ押しボタン型スイッチ111c,111d,111eの操作状況を表示するためのランプ111f,111g,111hが設けられている。
【0024】
なお、図3では、作業機側コントローラ4aに対応した個別部111について説明したが、作業機側コントローラ4b,4cに対応した個別部112,113も、同様の構成を有する。例えば、個別部112,113は、共通部110とは別筐体に作り込まれており、また、コネクタ120の雄型コネクタ122と、手回しネジ131,132については、個別部112,113は個別部111と同じものを備えている。
【0025】
また、図4に示すように、共通部110では、ブザーBZを駆動する信号を供給する2本の信号線と、画面表示器DSPに表示データ等を供給する5本の信号線は、それぞれ雌型コネクタ121の対応する端子に接続されている。
【0026】
電力線PPが接続されるコネクタCPの+側は、電源スイッチSWpを介して、コネクタCHの対応する端子、電源ランプLPpの+側の入力端、及び、DC−DC変換器DDCの+側端子に加えられている。また、コネクタCPの−側(グランド側)は、コネクタCHの対応する端子、電源ランプLPpの−側の入力端、及び、DC−DC変換器DDCの−側端子に加えられている。さらに、コネクタCPの2つの入力端は、直接コネクタCHの2つの出力端に接続されていて、車載バッテリから供給される直流電源が信号ハーネスHHに直接加えられるようになっている。
【0027】
このようにして、車載バッテリから供給される直流電源は、走行車側コントローラ100に供給されると共に、信号ハーネスHHを介して、作業機側コントローラ4aへ供給される。
【0028】
なお、逆接続保護用ダイオードD1は、車載バッテリ側の電極が電力線PPに逆接続された等の場合で、コネクタCPを介して供給される電圧の極性が逆転した場合に、走行車側コントローラ100及び作業機側コントローラ4a,4b,4cの装置内部を保護するためのものである。
【0029】
ここで、車載バッテリから作業機側コントローラ4a,4b,4cへ直接供給された電源は、例えば、モータやアクチュエータのように、起動時に大電流が流れたり、大きな電力を必要とする駆動対象に供給される。このような駆動対象に、電源スイッチSWpを介して供給される電源を印可した場合、起動時等に流れる大電流により電源スイッチSWpの接点が溶断・溶着する等の不具合を生じるおそれがある。そこで、上述した実施例では、このような大電流を必要とする駆動対象に対しては、電源スイッチSWpを介さずに、車載バッテリから直接電力を供給するようにしている。
【0030】
本実施例では、車載バッテリの電圧が+12Vであり、この走行車側コントローラ100の内部に必要な電源電圧が+5Vであるので、DC−DC変換器DDCは、車載バッテリから供給される+12Vを、電源電圧の+5Vに変換する。そして、DC−DC変換器DDCの出力は、共通部110の内部電源として各部に供給されると共に、雌型コネクタ121の対応する2つの端子を介して、個別部111の内部電源として個別部111にも供給されている。
【0031】
ここで、走行車側コントローラ100の内部に必要な電源電圧が+5Vではなく+3Vの場合があり、また、車載バッテリから供給される直流電源の電圧が+12Vではなく+24Vや+48Vの場合がある。いずれの場合でも、DC−DC変換器DDCは、車載バッテリから供給される直流電源の電圧を、走行車側コントローラ100の内部に必要な電源電圧に変換する機能を備えていればよい。
【0032】
CANトランシーバ装置TRは、個別部111のマイクロコンピュータ装置(後述)MPが作業機側コントローラ4aに対して送出する送信信号をCANバス上の信号に変換すると共に、作業機側コントローラ4aが個別部111のマイクロコンピュータ装置MPに対して送出したCANバス上の信号を認識して、受信信号に変換し、その受信信号をマイクロコンピュータ装置MPへ送出するものであり、CANトランシーバ装置TRとマイクロコンピュータ装置MPとの間の信号の送受信は、コネクタ120を介して行われる。そして、CANバスの信号線は、コネクタCHの対応する端子を介して、信号ハーネスHHと接続されている。
【0033】
個別部111において、マイクロコンピュータ装置MPは、内部に備えているROM(リード・オンリ・メモリ)MPrに記憶したデータに基づいて、作業機側コントローラ4aとの間の通信を行ったり、作業機側コントローラ4aに対して出力する制御信号を生成したり、作業機3aを操作する際に用いるスイッチ群(作業機に固有のスイッチ群)SWa(トグルスイッチ111a、及び、押しボタン型スイッチ111c,111d,111e)の操作状況を入力したり、作業機3aに対応したランプ群(作業機に固有のランプ群)LPa(ランプ111f,111g,111h)を点灯制御したり、ブザーBZの鳴動を制御したり、画面表示器DSPの表示内容を制御する各種制御処理を行うものである。
【0034】
そして、ブザーBZの鳴動を制御する信号は、コネクタ120の対応する端子を介して共通部110のブザーBZへ出力され、また、画面表示部DSPの画面表示器DSPの表示内容を制御する信号は、コネクタ120の対応する端子を介して共通部110の画面表示器DSPへと出力される。
【0035】
このようにして、本実施例にかかる走行車側コントローラ100は、作業機3a,3b,3cに共通して用いる共通部110と、作業機3a,3b,3cにそれぞれ対応した個別部111,112,113とから構成され、走行車1に作業機3aを接続する場合には、共通部110に個別部111を接続して作業機側コントローラ4aに対応する走行車側コントローラ100を構成し、走行車1に作業機3bを接続する場合には、共通部110に個別部112を接続して作業機側コントローラ4bに対応する走行車側コントローラ100を構成し、走行車1に作業機3cを接続する場合には、共通部110に個別部113を接続して作業機側コントローラ4cに対応する走行車側コントローラ100を構成するようにしている。
【0036】
これにより、例えば、作業機3aを購入した後に、作業機3b,3cを購入する場合、購入者は、作業機3aを購入した時点で共通部110を持っているので、走行車側コントローラ100については、作業機3b,3cを購入する際には、個別部112,113のみを追加で購入すればよく、したがって、作業機3b,3cを購入する際の費用(装置コスト)の総額を低減することができる。
【0037】
ところで、図4に示した走行車側コントローラ100では、個別部111に設けたマイクロコンピュータ装置MPが、共通部110に設けたブザーBZの鳴動制御と、画面表示器DSPの表示内容の制御も行うようにしていたが、このブザーBZの鳴動制御と、画面表示器DSPの表示内容の制御とを行う別のマイクロコンピュータ装置を共通部110に設けるようにしてもよい。
【0038】
その場合の、走行車側コントローラ100の構成の一例を図5に示す。なお、図5において、図4と同一部分及び相当する部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
共通部110には、ブザーBZの鳴動制御と、画面表示器DSPの表示内容の制御とを行うマイクロコンピュータ装置MPaを設けた。このマイクロコンピュータ装置MPaは、内部に備えているROM(符号MParで示す)に記憶したデータに基づいて、ブザーBZの鳴動を制御したり、画面表示器DSPの表示内容を制御する各種制御処理を行う。
【0040】
また、マイクロコンピュータ装置MPaは、マイクロコンピュータ装置MPとの間でシリアルバスSBを介して通信を行う。そして、マイクロコンピュータ装置MPは、シリアルバスSBを介して、マイクロコンピュータ装置MPaに対して、ブザーBZの鳴動制御のタイミングとその内容、及び、画面表示器DSPに表示する表示内容の情報を送信するようにしている。
【0041】
このようにして、マイクロコンピュータ装置MPaにブザーBZの鳴動制御と画面表示器DSPの表示内容の制御とを行わせることで、マイクロコンピュータ装置MPが実行する制御演算の一部をマイクロコンピュータ装置MPaに分担させているので(負荷分散)、マイクロコンピュータ装置MPの処理負担を軽減することができる。
【0042】
なお、図5に示した実施例では、個別部111に設けたマイクロコンピュータ装置MPと共通部110に設けたマイクロコンピュータ装置MPaとの間でデータをやりとりするデータ通信手段として、シリアルバスを用いているが、このマイクロコンピュータ装置MPとマイクロコンピュータ装置MPaとの間のデータ通信手段は、シリアルバス以外の適宜なデータ通信手段、例えば、I2Cやパラレルバスなどを用いることができる。
【0043】
図6は、走行車側コントローラ100の共通部110と個別部111とを接続する機構の他の例を示した概略正面図である。尚、図3に示した走行車側コントローラ100と重複する部位についての説明は、同符号を付すことにより省略する。
【0044】
本実施例では、共通部110と個別部111とを離間させて設置できるようにしたものであり、共通部110と個別部111とをケーブル123によって、信号的に接続するものである。
【0045】
具体的には、ケーブル123には、共通部110に配された雌型コネクタ121に接続される雄側コネクタ122’と、個別部111に配された雄側コネクタ122に接続される雌側コネクタ121’とが備えられており、雌型コネクタ121に雄側コネクタ122’を接続し、雄側コネクタ122に雌側コネクタ121’を接続することで、共通部110と個別部111とを離間した状態で信号的に接続するようにされている。
【0046】
このような接続機構によると、共通部110と個別部111とをケーブル123によって接続しているので、共通部110から離間した場所に個別部111を設置することができると共に、共通部110及び個別部111の設置場所の選択範囲を拡げることができ、これにより、共通部110と個別部111とを、作業者の最も視覚し易く、且つ操作しやすい場所に設置することができる。
【0047】
共通部110と個別部111とを離間させて設置できるように接続する機構としては、例示したケーブル123によって接続する機構の他にも、共通部110と個別部111とに、無線によって信号の送受信を行う送受信機を配することによって、共通部110と個別部111とを信号的に接続する機構としてもよい(図示せず)。
【0048】
送受信機は、共通部110と個別部111とに内蔵してもよいし、図3に示す雌型コネクタ121、雄側コネクタ122に接続するコネクタを備えた送受信機を、雌型コネクタ121、雄側コネクタ122に接続するようにしてもよい。
【0049】
なお、共通部110の各種構成要素は、走行車に備えられている画像表示器等を備えた操作ユニットに組み込んでもよい(図示せず)。この場合、共通部110と個別部111との接続機構は、雌型コネクタ121と雄側コネクタ122との接続、ケーブル123による接続、無線による接続のいずれの接続機構を用いることができる。
【0050】
なお、以上述べてきた各実施形態の構成及び変形例は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、走行車に接続した農作業機を制御する農作業機用制御装置であれば、任意の装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 走行車
3a,3b,3c 作業機
4a,4b,4c 作業機側コントローラ
100 走行車側コントローラ
110 共通部
111,112,113 個別部
120,CA,CH,CP コネクタ
121 雌型コネクタ
122 雄型コネクタ
123 ケーブル
121’ 雌型コネクタ
122’ 雄型コネクタ
HH 信号ハーネス
MP,MPa マイクロコンピュータ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6