特許第6333561号(P6333561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333561
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】階段構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/02 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   E04F11/12
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-11006(P2014-11006)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-137515(P2015-137515A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】菅野 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】桑原 清
(72)【発明者】
【氏名】本田 諭
(72)【発明者】
【氏名】松林 誠
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
(72)【発明者】
【氏名】串田 敏彦
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−135633(JP,U)
【文献】 実開昭55−157549(JP,U)
【文献】 実開昭53−125430(JP,U)
【文献】 実開平03−075231(JP,U)
【文献】 米国特許第01343739(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ踏み板部と蹴上がり部を有する複数の階段をササラ桁に配置して構成される階段構造であって、
前記踏み板部の先端辺の両端側と、前記蹴上がり部の下端辺の両端側にそれぞれ下向きの突起を備え、更に、
前記ササラ桁上に置かれ、前記階段の配置される間隔毎に横スリットを有する階段受桁と、
前記階段受桁に、前記横スリットに対応して配置され、溝を有する複数の駒材を有し、
前記階段受桁上で、下段側に配置される階段の前記踏み板部の先端辺の両端側の下向きの突起と、上段側に配置される階段の前記蹴上がり部の下端辺の両端側の下向きの突起が、前記階段受桁横スリットを通して、対応する前記駒材の溝に挿入されて一体化されている、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記階段受桁は、前記階段の両側に配置され、更に前記階段受桁の方向に垂直な横桁により、フレーム構造を成している、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記階段の蹴上がり部の下端辺に沿う隙間を有し、上段側の階段の蹴上がり部が、下段側の階段の踏み板部の先端辺から立ち上がる立ち上がり部を覆うように対応づけられて、前記上段側の階段の蹴上がり部の下端辺に沿う隙間を隠す、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数の駒材のそれぞれは、3枚の鋼材を重ね併せて形成され、中央の鋼材の高さを両側の鋼材よりも低く設定し、前記両側の鋼材のそれぞれに対応する前記踏み板部の先端辺の両端側の下向きの突起と、前記蹴上がり部の下端辺の両端側の下向きの突起を受ける溝が形成されている、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項5】
請求項4において、
前記蹴上がり部の下端辺の両端側の下向きの突起は、長短の二段の突起部を有する形態であり、短い突起部が前記駒材の溝に挿入され、長い突起部が、前記両側の鋼材の間で、前記中央の鋼材上部に形成された空間に挿入されて、前記階段の横方向へのずれを阻止する、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項6】
請求項4において、
前記駒材は、前記階段の高さに応じた高さを有する、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項7】
請求項4において、
前記駒材は、所定の高さを有し、
前記駒材の下側に配置されるライナーを有し、
前記階段の高さに応じて前記ライナーの高さが調整され、前記駒材のボルト通し穴を長穴として、前記階段の高さに応じて前記ライナーと一体で高さが調整される、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項8】
請求項6において、
前記駒材は、正多角形を成し、
前記正多角形のそれぞれの辺に対応し,且つ前記階段の高さに対応する位置に前記階段受桁に固定されるボルト通し穴が形成されている、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項9】
請求項1において、
前記階段受桁同士を背合わせにして連結して、階段幅が拡張される、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項10】
請求項1において、
前記階段の踏み板部と前記蹴上がり部が、蝶番で折り畳み可能に形成されている、
ことを特徴とする階段構造。
【請求項11】
請求項1において、
前記階段の踏み板部の後端部にはさみ板部を有し、前記蹴上がり部の上端部を前記はさみ板部挟み込み可能にして、前記階段の踏み板部と前記蹴上がり部が分割可能である、
ことを特徴とする階段構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段構造に関し、特に短時間での施工並びに部材の小型化及び共通化という面において仮設の階段(仮階段)に有利となる階段構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道駅構内、及びプラットホーム改良工事等の際に階段を仮階段化することが行われる。あるいは、催事会場、観覧席、ベンチ等において仮階段が敷設され、一時的に使用されることがある。
【0003】
特に、鉄道駅構内、及びプラットホーム改良工事にあっては、駅構内において、部材を搬入し、組立を行うには終電から初電の夜間の間合いとなる。このために短時間での施工が可能となる仮階段構造が望まれている。
【0004】
これに対して、これまでは工場で予め製作した鋼製、あるいは木製の構造部材を、現場で組立てるという工程で敷設していた。かかる場合、敷設工事時間を短くするために構造部材を大きくする場合は、プラットホーム等への搬入に際して、自動改札機などを一時撤去、移設することが必要であった。
【0005】
さらに、従来の階段構造について、例えば、特許文献1,2等に記載の発明が提案されている。特許文献1に記載の発明は、踏み桟の左右両側に側部桁を一体化した組立ユニットを複数用意し、且つ前記組立ユニットの側部桁の上部及び下部に設けた連結部をボルトナットで連結してユニット群を形成して階段構造とするものである。
【0006】
特許文献2に記載の発明は、所定間隔を置いて設けられている複数の受け部に、複数の鋸歯状階段部材をボルトナットで順に締結して階段構造を形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-126912号公報
【特許文献2】特開平7-82853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に記載の発明は、いずれも組立ユニットあるいは、階段部材をボルトナットで順に締結して階段構造を得るものである。したがって、ボルトナットの締結作業及びそのための工具が必要である。さらに、ボルトナットの締結作業は、夜間の線路閉鎖間合いでの短時間作業には適しない。
【0009】
また、特許文献1、2に記載の発明の構造においては、階段の高さ及び傾斜角に対して融通性がなく、階段の高さごとに一品生産方式となるため、転用など汎用性がない。
【0010】
さらに、階段組立に際して、従来構造では、壁側や階段下からの作業が必要であり、仮階段設置スペースに制約を有している。また、従来構造では、階段幅の拡張に対して有効な提案は成されていない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、上記従来の仮階段構造及び組立工法並びに,上記特許文献1,2に記載の発明に鑑みて、階段部材が、可搬に有利な小型部材で構成され、且つ締め付け工具を不要として短時間での組立て施工が可能であり、更に階段高さに対して調整が容易であり、階段を他の階段形状への転用が可能な、仮階段構造を提供することにある。
【0012】
さらに、組立に際して、階段上面からのみの作業により組立が行われることが可能な、仮階段構造を提供することにある。
【0013】
また、階段幅に対しても容易に拡張可能な仮階段構造を提供することにある。
【0014】
さらに又、本発明の目的は、特に、部材の共通化、小型化という点に鑑みて、仮階段構造と共通の部材を用いて、通常の固定階段を形成することも可能である階段構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記発明の目的を達成する本発明の第1の側面は、それぞれ踏み板部と蹴上がり部を有する複数の階段をササラ桁に配置して構成される階段構造であって、前記踏み板部の先端辺の両端側と、前記蹴上がり部の下端辺の両端側にそれぞれ下向きの突起を備え、更に、前記ササラ桁上に置かれ、前記階段の配置される間隔毎に横スリットを有する階段受桁と、前記階段受桁に、前記横スリットに対応して配置され、溝を有する複数の駒材を有し、前記階段受桁上で、下段側に配置される階段の前記踏み板部の先端辺の両端側の下向きの突起と、上段側に配置される階段の前記蹴上がり部の下端辺の両端側の下向きの突起が、前記階段受桁横スリットを通して、対応する前記駒材の溝に挿入されて一体化されていることを特徴とする。
【0016】
上記第1の側面における好ましい態様は、第1に前記階段受桁は、前記階段の両側に配置され、更に前記階段受桁の方向に垂直な横桁により、フレーム構造を成していることを特徴とする。
【0017】
上記第1の側面における好ましい態様は、第2に前記階段の蹴上がり部の下端辺に沿う隙間を有し、上段側の階段の蹴上がり部が、下段側の階段の踏み板部の先端辺から立ち上がる立ち上がり部を覆うように対応づけられて、前記上段側の階段の蹴上がり部の下端辺に沿う隙間を隠すことを特徴とする。
【0018】
上記第1の側面における好ましい態様は、第3に前記複数の駒材のそれぞれは、3枚の鋼材を重ね併せて形成され、中央の鋼材の高さを両側の鋼材よりも低く設定し、前記両側の鋼材のそれぞれに対応する前記踏み板部の先端辺の両端側の下向きの突起と、前記蹴上がり部の下端辺の両端側の下向きの突起を受ける溝が形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記第1の側面における好ましい態様は、第4に前記蹴上がり部の下端辺の両端側の下向きの突起は、長短の二段の突起部を有する形態であり、短い突起部が前記駒材の溝に挿入され、長い突起部が、前記両側の鋼材の間で、前記中央の鋼材上部に形成された空間に挿入されて、前記階段の横方向へのずれを阻止することを特徴とする。
【0020】
上記第1の側面における好ましい態様は、前記第4の好ましい態様において、前記駒材は、前記階段の高さに応じた高さを有することを特徴とする。
【0021】
上記第1の側面における好ましい態様は、前記第4の好ましい態様において、前記駒材は、所定の高さを有し、前記駒材の下側に配置されるライナーを有し、前記階段の高さに応じて前記ライナーの高さが調整され、前記駒材のボルト通し穴を長穴として、前記階段の高さに応じて前記ライナーと一体で高さが調整されることを特徴とする。
【0022】
上記第1の側面における好ましい態様は、前記第4の好ましい態様において、更に前記駒材は、正多角形を成し、前記正多角形のそれぞれの辺に対応し,且つ前記階段の高さに対応する位置に前記階段受桁に固定されるボルト通し穴が形成されていることを特徴とする。
【0023】
上記第1の側面における更に好ましい態様は、第5に前記階段受桁同士を背合わせにして連結して、階段幅が拡張されることを特徴とする。
【0025】
上記第1の側面における好ましい態様は、第6に前記階段の踏み板部と前記蹴上がり部が、蝶番で折り畳み可能に形成されていることを特徴とする。
【0026】
上記第1の側面における好ましい態様は、第7に前記階段の踏み板部の後端部にはさみ板部を有し、前記蹴上がり部の上端部を前記はさみ板部挟み込み可能にして、前記階段の踏み板部と前記蹴上がり部が分割可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
第1の側面によれば、階段構造部材は、小型化されており、駅構内における部材の搬入が容易であり、自動改札機などの撤去移設は不要である。さらに、組立において、ボルトナットの締結作業が不要であるので、短時間の施工が可能である。
【0028】
駒材の使用により、階段高さに応じた蹴上がり高さの調整を容易化している。これにより階段の高さを一様にして汎用品扱いを可能にできる。
【0029】
さらに、これまでの階段構造では、現場での階段組立に際して、壁側や階段したからの作業が必要であったが、階段上側からのみの作業方法で、仮階段設置スペースの制約を少なくすることができる。
【0030】
さらには、隣接する階段受桁同士を結合することにより、剛性を担保して階段を横方向に増設可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に従う階段構造を模式的に示す図である。
図2】ササラ桁と階段受桁の関係を更に説明する図である。
図3】階段受桁と駒材の関係を説明する図である。
図4】上下に位置する階段踏み段部(階段)の一体化を説明する図である。
図5】駒材への階段の挿入固定を説明する図である。
図6駒材を拡大して示す図である。
図7】駒材の一実施例の概略斜視図である。
図8図7の矢印方向Aから見た駒材を示す概略図である。
図9図7の矢印方向Bから見た駒材を示す概略図である。
図10図7の矢印方向Cから見た駒材を示す概略図である。
図11】駒材に、階段の突起部が挿入された状態の断面図である。
図12】階段の高さの調整方法として、その第1の方法を示す図である。
図13】階段の高さの調整方法として、その第2の方法を示す図である。
図14】階段の高さの調整方法として、その第3の方法を示す図である。
図15】階段の高さの調整方法の第3の方法の実施例を示す図である。
図16】階段を他の構造により形成する例を示す図である。
図17】階段の横方向への拡張について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施例を図面に従い説明する。なお、実施例は、発明の理解のためのものであって、本発明の適用がこれに限定されるものではない。特許請求の範囲に記載の発明及びこれと均等のものは、本発明の保護の範囲に含まれる。
【0033】
[仮階段構造]
図1は、本発明に従う階段構造を模式的に示す図である。図1において、構造を理解容易のために、階段踏み段部(以降、単に階段という)3を一部取り外して示している。
【0034】
所定幅の間隔を置いて両側に配置されたササラ桁1A,1B(以下、適宜単にササラ桁1という)上に対応する階段受桁2A,2B(以下、適宜単に階段受桁2という)が配置されている。
【0035】
この階段受桁2A,2Bのそれぞれを両端側として、踏み板部3Aと蹴上がり部3Bを有する階段3が、複数段分順次に上方向に組上げられ配置されて仮設階段構造が得られる。
【0036】
図2は、ササラ桁1と階段受桁2の関係を更に説明する図である。
【0037】
図2において、(1)は断面図であり、(2)は、階段3を外した状態の上面図である。ササラ桁1は、断面がH型の鋼材であり、階段受桁2A,2Bは、それぞれ断面コの字をなし、内側を対向してササラ桁1上に置かれる。
【0038】
平行に配置される階段受桁2A,2Bとそれらに垂直な横桁4によりフレーム構造が形成されて,剛性を高めることができる。
【0039】
階段受桁2の内側に、階段3の配置される間隔で固定用の複数の駒材5が、ネジ止め固定される。
【0040】
上記の様に、本発明に従う階段構造は、階段受桁2と横桁4でフレーム構造とし、階段受桁2に支持された駒材5に階段3を、挟み込む様に構成される。かかる駒材5に階段3を挟み込む構造の詳細は後に説明するが、上下の階段3同士を重ね併せることが出来、一体化により剛性を高めている。
【0041】
さらに、この駒材5に上下の階段3同士を挟み込み重ね併せる構造であるので、現場での階段3の組立作業に際して組立工具を必要としない。かかる特徴は、以下の説明により更に明らかになる。
【0042】
図3は、階段受桁2と駒材5の位置関係を説明する図である。図3において、(1)は、階段受桁2の内側を示す図であり、(2)は、その上面図である。駒材5は、階段3の配置される間隔で階段受桁2にネジ止め固定される。駒材5の上部に、階段3の踏み板部3Aと蹴上がり部3Bの突起部が挿入される横スリット6が形成されている。後に詳細に説明するように横スリット6から挿入される踏み板部3Aと蹴上がり部3Bの突起部が、駒材5に挿入され固定される。
【0043】
[階段3の一体化]
図4は、上下段に位置する階段3の一体化を説明する図である。一例として、階段3は、一枚の鋼板を折り曲げて踏み板部3Aと蹴上がり部3Bを形成している。さらに、踏み板部3Aの裏面側に図示しないリブを設け、また両側に折り返しを設けて剛性を高めている。
【0044】
踏み板部3Aの先端辺の両側に下向きの突起部30を、蹴上がり部3Bの下端辺の両端側に下向きの突起部31を有している。下段側の階段3の踏み板部3Aの突起部30と上段側の階段3の蹴上がり部3Bの突起部31を、階段受桁2の同じスリット6を通して挿入し、ネジ固定された同じ駒材5の溝部に挿入固定され,一体化される。
【0045】
後に説明するように、駒材5の高さ調整により階段3の高さが調整される。このとき、高さ調整により蹴上がり部3Bの下端辺に沿う隙間(斜線部32領域)ができるが、上段側の階段3の蹴上がり部3Bが、下段側の階段3の前記立ち上がり部33を覆うように対応づけられる。これにより、前記上段側の階段3の蹴上がり部3Bの下端辺に沿う隙間32を隠すことができる。
【0046】
図5は、かかる駒材5への階段3の挿入固定を説明する図である。図5において、所定の階段角度に形成された階段受桁2に固定された駒材5のうち破線○で囲んだ部分に注目して説明する。さらに、理解容易のように、破線○で囲んだ部分を図面右下部分に拡大して示す。
【0047】
下段側の階段3の踏み板部3Aの先端辺に設けられた立ち上がり部33を上段側の階段3の蹴上がり部3Bが覆うように位置づけられる。同時に下段側の階段3の踏み板部3Aの先端辺の両端に設けられた下向きの突起部30と、上段側の階段3の蹴上がり部3Bの下端辺の両端に設けられた下向きの突起部31が、階段受桁2の横スリット6を通して挿入される。
【0048】
図6は、更に駒材5を拡大して示す図である。
【0049】
駒材5は2つの溝部を有し、その一方の溝部に突起部30が、他方の溝部に突起部31が挿入される。すなわち、駒材5の溝に挿入される突起部30,31は、駒材5の二つの溝にそれぞれの面を合わせる様に挿入される。さらに、上段側の階段3の蹴上がり部3Bが、下段側の階段3の踏み板部3Aの先端辺に設けられた立ち上がり部33と下向きの突起部30により挟まれ、挟持された状態になる。これにより、上下段の階段3を一体化して、剛性を高めることが可能である。
【0050】
[駒材5の構成例]
図7は、駒材5の一実施例の概略斜視図である。駒材5は、板状の3枚の鋼材板50,51,52を重ねて構成されている。あるいは、一つの鋼材から成型されても良い。第1の溝53が鋼材板50に、第2の溝54が鋼材板52の上端辺にそれぞれ形成されている。また、中央の鋼材板51の高さが、他の鋼材板50,52の高さより低いために中央部にも空間溝55が形成される。
【0051】
この第1の溝53に下段側の階段3の踏み板部3Aの突起部30が挿入され、第2の溝54及び中央部の空間溝55に上段側の階段3の蹴上がり部3Bの突起部31が挿入される。
【0052】
さらに、駒材5には3枚の鋼材板50,51,52を貫通するボルト通し穴56を有する。ボルト通し穴56に通されるボルトとナットで、駒材5は、階段受桁2にネジ固定される。図8図10は、駒材5の構成をより理解し易い様にそれぞれ図7の矢印方向A,B,Cから見た駒材5を示す概略図である。同じ部位には同じ参照数字を付している。
【0053】
図11は、階段受桁2Aに取り付けた状態の駒材5であって、更にそれぞれ突起部30、31が挿入された状態(図11(1)、図11(2))を、図9の矢印D方向であって、階段の下方向から見た断面図である。
【0054】
図11(1)に示す様に、突起30は、鋼材板50に形成された溝53に挿入される。一方。図11(2)に示す様に、突起31は、長短の二段の突起部を有する形態であり、短い突起部が前記駒材5の鋼材板52に形成された溝54に挿入され、長い突起部が、前記両側の鋼材板50,52の間で、前記中央の鋼材板51上部に形成された空間溝55に挿入される。これにより前記階段の横方向へのずれを阻止することが可能である。
【0055】
[階段3の高さ調整]
ここで、本発明において、階段3の高さの調整方法として、前記した駒材5の階段受桁2の固定において、その固定高さを変えることにより可能である。
【0056】
第1の方法として、例えば、図12に示すように,駒材5自体の高さを例えば、高さ範囲145-165mmmにおいて、任意の高さのものを用意することにより高さの選択調整が可能である。
【0057】
第2の方法は、図13に示すように、駒材5の高さを最も低い寸法とする。そして、駒材5の下側に間隔保持部材、シム、ライナー等により高さ、及び角度を調整する。
【0058】
例えば、図13において、駒材5の高さを最も低い寸法とし、下部にライナー57を設ける。このライナー57の高さを変えることによりライナー57と一体で全体の高さ調整を行うことが出来る。この際、駒材5のボルト通し穴56を長穴とし、更にライナー57に傾きを持たせることにより駒材5の向きも調整することが可能である。これにより階段3の傾斜角に対応して駒材5の向きを変えることが可能である。
【0059】
ここで、上記第1,第2の方法では、それぞれの高さに対応した駒材あるいはライナーを用意することが必要である。第3の方法は、多角形の一つの駒材のみを用意して任意の高さを得ることができる構造である。
【0060】
すなわち、図14は、この第三の方法による駒材5の形態として、5角形にしている。5角形のそれぞれの辺1〜5に対応して異なる高さ位置にボルト通し穴56を設けている。図の○で囲んだ数字が、対応する番号の辺に対して使用されるボルト通し穴56の位置を示している。
【0061】
図15は、第三の方法による駒材5の使用例であり、図14における“1”の辺が、階段受桁2の横スリット6に対応するように階段受桁2にネジ止めした状態を示している。この場合は、階段3の高さが、145mmに調整されている。
【0062】
[階段3の他の構成例]
図16は、更に階段を他の構造により形成する例を示す図である。図16において、(1)は、踏み板部3Aと蹴上がり部3Bを蝶番3Cにより繋いで一体化している構成である。この構成では、蝶番Cにより踏み板部3Aと蹴上がり部3Bを折り畳むことが出来る蝶番折れ曲がりタイプである。この構成では、踏み板部3Aと蹴上がり部3Bを折り畳み運搬が可能であるので、作業効率を高めることができる。
【0063】
さらに、別の例として分割組立型構造がある。すなわち、図16の(2)に断面で示す様に、踏み板部3Aと蹴上がり部3Bに別個に作成する。踏み板部3Aには、更に,その先端部にはさみ板部3Dを設ける。蹴上がり部3Bの先端部を,踏み板部3Aの先端部とはさみ板部3Dの間に挿入して、(3)に示す様に一体化して階段3とすることが可能である。
【0064】
[階段3の横方法への拡張]
さらに、図17は、階段3の横方向への拡張について説明する図である。
【0065】
階段受桁2同士を背合わせして連結することにより横方向に階段を拡張することが可能である。すなわち、図17(1)に示すように、階段受桁2は、外側には突起状のものがないので、隣接する階段受桁2と背合わせ状態にしてボルトで連結することが可能である。
図17(2)は、この様に、左右の階段受桁2を中央で連結することにより、階段幅が2倍に拡張された状態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0066】
上記の通り、本発明は、階段構造部材を小型化し、短時間の施工を可能としているので、広く、例えば、催事会場、観覧席、ベンチ等に敷設される階段に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 ササラ桁
2(2A、2B) 階段受桁
3 階段
3A 踏み板部
3B 蹴上がり部
4 横桁
5 駒材
6 横スリット
30,31 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17