特許第6333571号(P6333571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工オートモーティブサーマルシステムズ株式会社の特許一覧

特許6333571熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器
<>
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000002
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000003
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000004
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000005
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000006
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000007
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000008
  • 特許6333571-熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333571
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20180521BHJP
   F28F 1/30 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F28F1/32 R
   F28F1/32 V
   F28F1/30 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-23382(P2014-23382)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-152178(P2015-152178A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】313000645
【氏名又は名称】三菱重工オートモーティブサーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】仲戸 宏治
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−045495(JP,A)
【文献】 実開平02−007489(JP,U)
【文献】 特開2008−039380(JP,A)
【文献】 特開2001−041109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F28F 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された複数の冷媒チューブ間に配設される熱交換器用オフセットフィンであって、
波形に折り曲げ成形されたフィンの立上がり面および立下がり面に短冊状に切り起こされた個々のフィンであるセグメントが、空気流れ方向に沿って2列以上間隔をあけて多数オフセット配設されているとともに、
前記各セグメントの空気流れ方向の長さLが、0.5mm≦L≦1.2mmとされ、
その個々のセグメントの前記波形フィンの1ピッチ内の分割数が3以上とされていることを特徴とする熱交換器用オフセットフィン。
【請求項2】
前記1ピッチ内の分割数が3以上とされた前記個々のセグメントが、それぞれ3段以上の段形状で繰り返し配列されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用オフセットフィン。
【請求項3】
前記個々のセグメントが、空気流れ方向に対して所定の角度傾斜されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器用オフセットフィン。
【請求項4】
所定の間隔で平行に配置される複数の冷媒チューブ間に、請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器用オフセットフィンが配設されていることを特徴とする冷媒熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒チューブ間に設けられる熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調装置の蒸発器や凝縮器等に適用される冷媒熱交換器として、平行に配置された多数の冷媒チューブ間に、金属製の薄板を波形に折り曲げ成形したコルケードフィンを配設したものが従来から知られている。また、コルケードフィンに対して更に熱交換性能を向上するため、コルケードフィンの波形の立上がり面および立下がり面の両面に短冊状に切り起こした個々のフィンであるセグメントを多数オフセット配設した、いわゆるオフセットフィンを冷媒チューブ間に配設した構成の冷媒熱交換器も従来から知られている。
【0003】
一方、オフセットフィンをインナーフィンとしてチューブ内に配設した排ガス熱交換器において、オフセットフィンに4組のオフセットフィン片を所定の間隔(スリット)で配設したものが特許文献1に示されている。同様に排気チューブ内にオフセットフィンを配設した排ガス熱交換器において、上流側セグメントの前縁部で発生した温度境界層の影響を受けないように、各セグメントを特定の行、列に存在するセグメント以外のいずれかのセグメントの中心に向けて傾斜させたものが特許文献2に示されている。
【0004】
さらに、排ガス熱交換器の排気チューブ内に配設するオフセットフィンのフィンピッチfpを、2mm<fp≦12mm、フィン高さfhを、3.5mm<fh≦12mmを満たす大きさとし、個々の切り起こし部であるセグメントの長さLを、fh<7、fp≦5のときに、0.5mm<L≦7mm、fh<7、fp>5のときに、0.5mm<L≦1mm、fh≧7、fp≦5のときに、0.5mm<L≦4.5mm、fh≧7、fp>5のときに、0.5mm<L≦1.5mmとしたものが特許文献3に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−139053号公報
【特許文献2】特開2001−41109号公報
【特許文献3】特許第4240136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、オフセットフィンにおいて、フィンピッチfpやフィン高さfhとの関係で、各セグメントの長さLを規定したり、各セグメントを空気流れ方向に対して傾斜させたり、あるいは個々のセグメントの波形フィンの1ピッチ当たりの分割数を増やしたりすることにより、熱伝達率の向上を図っているが、個々の改善策ではガス側の熱伝達率の向上や圧損の抑制による高性能化も限界に達しつつある。こうした中、車両用空調装置の蒸発器や凝縮器等に適用される冷媒熱交換器において、更なる高性能化された熱交換器の提供が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、オフセットフィンの個々の改善要素を効果的に組み合わせることにより、一段と高性能化された熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の熱交換器用オフセットフィンおよびそれを用いた冷媒熱交換器は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る熱交換器用オフセットフィンは、平行に配置された複数の冷媒チューブ間に配設される熱交換器用オフセットフィンであって、波形に折り曲げ成形されたフィンの立上がり面および立下がり面に短冊状に切り起こされた個々のフィンであるセグメントが、空気流れ方向に沿って2列以上間隔をあけて多数オフセット配設されているとともに、前記各セグメントの空気流れ方向の長さLが、0.5mm≦L≦1.2mmとされ、その個々のセグメントの前記波形フィンの1ピッチ内の分割数が3以上とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、オフセットフィンを構成する波形成形フィンの立上がり面および立下がり面に短冊状に切り起こされた個々のフィンであるセグメントが、空気流れ方向に沿って2列以上間隔をあけて多数オフセット配設されているとともに、各セグメントの空気流れ方向の長さLが、0.5mm≦L≦1.2mmとされているため、個々のセグメントについて、空気流れ方向の上流に位置するセグメントの前縁で発生した温度境界層が、下流側に配設されているセグメントに影響を及ぼし難くし、その前縁効果を阻害しないようにすることによって、個々のセグメントの前縁効果、すなわち各セグメントの前縁に空気流れが衝突し、その前縁部分での熱伝達率が局所的に高くなる効果を最大限発揮させ、空気側の熱伝達率の向上、ひいては熱交換性能の向上を図ることができると同時に、各セグメントの空気流れ方向の長さLを最適化することによって空気側圧損を抑制し、その圧損を実用域に抑えることができる。また、各セグメントの波形フィンの1ピッチ内の分割数を3以上とすることにより、フィン間の間隔を狭めて空気流れの速度を上げ、空気側の熱伝達率の更なる向上を図ることができる。従って、オフセットフィンの性能を空気側の熱伝達率および圧損の両面から改善し、その性能を一段と向上することができる。
【0010】
さらに、本発明の熱交換器用オフセットフィンは、上記の熱交換器用オフセットフィンにおいて、前記1ピッチ内の分割数が3以上とされた前記個々のセグメントが、それぞれ3段以上の段形状で繰り返し配列されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、1ピッチ内の分割数が3以上とされた個々のセグメントが、それぞれ3段以上の段形状で繰り返し配列されているため、全てのセグメントを空気流れ方向に沿って2列以上あけてオフセット配設することができ、全セグメントにおいて上流側セグメントの温度境界層による影響を排除し、前縁効果を最大限発揮させて着実に空気側の熱伝達率を向上することができる。従って、オフセットフィンの熱交換性能の一層の向上を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明の熱交換器用オフセットフィンは、上述のいずれかの熱交換器用オフセットフィンにおいて、前記個々のセグメントが、空気流れ方向に対して所定の角度傾斜されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、個々のセグメントが、空気流れ方向に対して所定の角度傾斜されているため、個々のセグメント間の間隔が傾斜分だけ広くされ、空気流れが整流されることにより、個々のセグメントの前縁効果による熱伝達率の一層の向上を図ることができるとともに、空気側圧損の抑制効果を維持することができる。従って、オフセットフィンをより高性能化することができる。なお、セグメントの傾斜角度は、圧損との関係から、7°程度が望ましい。
【0014】
さらに、本発明にかかる冷媒熱交換器は、所定の間隔で平行に配置される複数の冷媒チューブ間に、上述のいずれかの熱交換器用オフセットフィンが配設されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、所定の間隔で平行に配置される複数の冷媒チューブ間に、上述のいずれかの熱交換器用オフセットフィンが配設されているため、冷媒チューブ内を流れる冷媒とオフセットフィン側を流れる空気流との間の熱交換を、オフセットフィンの性能向上により一層促進し、その熱交換性能を向上することができる。従って、蒸発器や凝縮器に適用される冷媒熱交換器を一段と高性能化し、空調装置の性能を向上することができるとともに、蒸発器や凝縮器の小型化により、ユニットのコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱交換器用オフセットフィンによると、個々のセグメントについて、空気流れ方向の上流側に位置するセグメントの前縁で発生した温度境界層が、下流側に配設されているセグメントに影響を及ぼし難くし、その前縁効果を阻害しないようにすることによって、個々のセグメントの前縁効果、すなわち各セグメントの前縁に空気流れが衝突し、その前縁部分での熱伝達率が局所的に高くなる効果を最大限発揮させ、空気側の熱伝達率の向上、ひいては熱交換性能の向上を図ることができると同時に、各セグメントの空気流れ方向の長さLを最適化することによって空気側圧損を抑制し、その圧損を実用域に抑えることができる。また、各セグメントの波形フィンの1ピッチ内の分割数を3以上とすることにより、フィン間の間隔を狭めて空気流れの速度を上げ、空気側の熱伝達率の更なる向上を図ることができるため、オフセットフィンの性能を空気側の熱伝達率および圧損の両面から改善し、その性能を一段と向上することができる。
【0017】
また、本発明の熱交換器によると、冷媒チューブ内を流れる冷媒とオフセットフィン側を流れる空気流との間の熱交換を、オフセットフィンの性能向上により一層促進し、その熱交換性能を向上することができるため、蒸発器や凝縮器に適用される冷媒熱交換器を一段と高性能化し、空調装置の性能を向上することができるとともに、蒸発器や凝縮器の小型化により、ユニットのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る冷媒熱交換器の斜視図である。
図2】上記熱交換器に用いられるオフセットフィンの斜視図である。
図3図2中におけるA−A断面相当図である。
図4図2中におけるB矢視相当図である。
図5】上記オフセットフィンおよびその変形例と単一オフセットフィンとの性能比較図である。
図6】上記オフセットフィンの各セグメントの長さLによる空気圧損の変化を示す図である。
図7】上記オフセットフィンの各セグメントの長さLによる熱伝達率の変化を示す図である。
図8】上記図5ないし図7に示した性能比較や解析に用いたオフセットフィンのセグメントの配列仕様を示す横断面相当図(A)ないし(H)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る一実施形態について、図1ないし図8を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る冷媒熱交換器の斜視図が示され、図2には、その熱交換器に用いられるオフセットフィンの斜視図、図3には、図2中におけるA−A断面相当図、図4には、図2中におけるB矢視相当図が示されている。
冷媒熱交換器1は、空調装置用の蒸発器や凝縮器等に適用されるもので、冷媒チューブ内を流れる冷媒と、その外側を流れる空気とを熱交換させるものである。
【0020】
この冷媒熱交換器1は、上下または左右に一定の間隔をあけて空気流れ方向Fに対し前後に各々一対ずつ設けられた上下または左右一対のヘッダ2,3と、そのヘッダ2,3間に両端が接続されることにより、所定間隔で平行に配置された扁平形状をなす多数の冷媒チューブ4と、その平行な冷媒チューブ4間に配設されたオフセットフィン5とから構成されており、一方のヘッダ2に接続されている冷媒入口配管6から供給された冷媒を1パスまたはそれ以上のパス数で冷媒チューブ4に流通させ、その間に空気と熱交換させて蒸発または凝縮させた後、他方のヘッダ3に接続されている冷媒出口配管7から排出するものである。
【0021】
上記冷媒熱交換器1は、それを構成している一対のヘッダ2,3、冷媒チューブ4およびオフセットフィン5等が全てアルミ合金製とされたオールアルミ合金製熱交換器とされている。オフセットフィン5は、図2ないし図4に示されるように、例えば、板厚tfを0.06mmとしたアルミ合金製の薄板を、フィンピッチpfを1.3mmとして波形に折り曲げ成形したフィン幅wが34mmのフィンとされ、その波形に折り曲げ成形されたフィンの立上がり面8および立下がり面9の両面に短冊状に切り起こされた個々のフィンであるセグメント(短冊)10が多数オフセット配設された構成とされている。
【0022】
また、本実施形態においては、オフセットフィン5の性能を向上するため、波形フィンの立上がり面8および立下がり面9の両面に切り起こされる個々のフィンである短冊状のセグメント10の空気流れ方向Fの長さLが、0.5mm≦L≦1.2mmとされるとともに、その多数のセグメント10が空気流れ方向Fに沿う列方向に対して、図3に示されるように、それぞれ2列以上の間隔をあけて配列された構成とされている。また、個々のセグメント10は、波形フィンの1ピッチ内の空気流れ方向Fと直交する方向に対する分割数nが3以上とされている。
【0023】
さらに、個々のセグメント10を空気流れ方向Fと直交する方向に3以上に分割して配設する際、全てのセグメント10が空気流れ方向Fに沿う列方向に対して、それぞれ2列以上の間隔をあけて配列されるようにするため、図2および図3に示されるように、3段以上の段形状にして空気流れ方向Fに順次繰り返し配列される構成としている。
【0024】
ここで、上記オフセットフィン5の性能を確認するために行ったサンプルの解析結果および計算結果を、図5ないし図8に基づいて説明する。
まず、その解析および計算に用いたオフセットフィンのNO.1〜NO.9サンプルの仕様について、図8(A)ないし(H)を参照して説明する。
いずれのサンプルも、フィン材の板厚tfを0.06mm、フィンピッチpfを1.3mm、フィン幅wを34mmとするとともに、個々のセグメント10の空気流れ方向Fの長さLを1mmとし、個々のフィンであるセグメント10の配置、配列等を変更したものである。
【0025】
(1)NO.1サンプルのフィンは、図8(A)に示されるように、個々のセグメント10の列方向の間隔を1列とするとともに、各セグメント10の1ピッチ内の空気流れ方向Fと直交する方向の分割数nを2としたものである。
(2)NO.2サンプルのフィンは、図8(B)に示されるように、個々のセグメント10の列方向の間隔を2列とするとともに、各セグメント10の1ピッチ内の空気流れ方向Fと直交する方向の分割数nを3とし、そのセグメント10を3段の段形状として空気流れ方向Fに繰り返し配列したものである。
【0026】
(3)NO.3サンプルのフィンは、図8(C)に示されるように、上記NO.2サンプルにおいて、各セグメント10の1ピッチ内の空気流れ方向Fと直交する方向の分割数nを4とし、そのセグメント10を4段の段形状として空気流れ方向Fに順次繰り返し配列したものである。
(4)NO.4サンプルのフィンは、図8(D)に示されるように、上記NO.2サンプルにおいて、各セグメント10を空気流れ方向Fに対して、7°傾斜させて配設したものである。
【0027】
(5)NO.5サンプルのフィンは、図8(E)に示されるように、上記NO.2サンプルにおいて、段形状を空気流れ方向Fの中央部で折り返して順次繰り返し配列したものである。
(6)NO.6サンプルのフィンは、図8(F)に示されるように、各セグメント10の1ピッチ内の空気流れ方向Fと直交する方向の分割数nを3としたものであるが、段形状を3段折り返しの繰り返し配列としたものであり、このため、個々のセグメント10の列方向の間隔が1列となるものが混在するものである。
【0028】
(7)NO.7サンプルのフィンは、図8(G)に示されるように、上記NO.6サンプルにおいて、各セグメント10を空気流れ方向Fに対して、7°傾斜させて配設したものである。
(8)NO.8サンプルのフィンは、図8(H)に示されるように、公知のルーバ付コルゲートフィンを空気流れ方向Fの中央部で折り返し形状としたものである。
(9)NO.9サンプルのフィンは、図示されていないが、上記NO.6サンプルにおいて、各セグメント10の1ピッチ内の空気流れ方向Fと直交する方向の分割数nを4としたものであり、このため、個々のセグメント10の列方向の間隔が1列となるものが混在するものである。
【0029】
上記したNO.1〜NO.7サンプルについて、各セグメント10の長さL(mm)による空気圧損ΔPa(Pa)および熱伝達率hm(W/m2K)の変化を計算し、解析した結果が、図6および図7に示されている。ここでの熱伝達率hm.ppおよび空気圧損ΔPa.ppの計算式は、図8に示す計算領域におけるものであり、以下の通りである。
【0030】
[損失係数の定義]
fL=1/4[{1+3.445/(Re・2de/L・1/4)^0.5}^2−1]×(2de/L)
但し、Re:レイノルズ数、de:等価直径、L:セグメント長さ
[圧力損失;ΔPa.pp]
ΔPa.pp=2fL・(L/(2de))・ρa・uθ^2×c×NL
但し、c:圧損補正係数、ρa:空気密度、uθ:セグメント間流速、NL:ワンピッチ間の奥行方向全てのセグメント枚数
[熱伝達率;hm.pp]
Nu=3.77+[0.066・(Re・Pra・de/(2L))^1.2]/[1+0.1・(Pra)^0.87・(Re・de/(2L))^0.7]
Nu=hm.pp・de/λa
但し、Pra:空気プラントル数、λa:空気熱伝導率
【0031】
図6には、各セグメント10の長さL(mm)による空気圧損ΔPaの変化を解析した結果が示されている。ここで、空気圧損ΔPa(Pa)の圧損設定ライン(推定)を100.0Paとしたとき、各セグメント(短冊)10の長さLとの関係から見て、空気圧損ΔPa(Pa)は、図6に示す点線枠内に抑制することが望ましく、NO.2〜NO.5およびNO.7のサンプルは、その範囲に含まれている。これらのサンプルは、セグメント10の1ピッチ内の分割数や列方向の間隔、あるいは空気流れ方向Fに対する傾斜等により、NO.1およびNO.6のサンプルよりも相対的に空気圧損が高くなるものの、それぞれ実用域に設定することが可能である。
【0032】
一方、図7には、各セグメント(短冊)10の長さL(mm)による熱伝達率hmの変化を解析した結果が示されている。ここで、熱伝達率hm(W/m2K)の熱伝達率到達ライン(推定)を400.0hmとしたとき、各セグメント(短冊)10の長さLとの関係から見て、熱伝達率hm(W/m2K)は、図6に示す点線枠内が望ましい範囲であり、NO.2〜NO.5およびNO.7のサンプルは、その範囲に含まれている。これらのサンプルは、セグメント10の1ピッチ内の分割数や列方向の間隔、あるいは空気流れ方向Fに対する傾斜等により、NO.1およびNO.6のサンプルよりも相対的に熱伝達率を高くすることができ、性能向上を図ることが可能である。
【0033】
さらに、図5には、熱伝達率および空気圧損の両面から上記オフセットフィンの性能を評価する、単一オフセットフィンとの性能比較図が示されている。
ここでは、各オフセットフィンにおけるセグメント10の配列の優位性を、圧力損失比率(ΔPa.ratio)および熱伝達率比率(hm.ratio)が、それぞれ
ΔPa/ΔPa.PP<1.0
hm/hm.PP>1.0
の領域に入っているか否かで性能を評価した。
【0034】
その結果、NO.3およびNO.4サンプルのオフセットフィンが最も性能的に優れているものと評価することができる。このNO.3およびNO.4サンプルのオフセットフィンは、NO.2サンプルのオフセットフィンに対して、1ピッチ内のセグメント10の分割数を増やし、あるいは空気流れ方向Fに対してセグメント10を所定の角度(7°)傾斜させたものである。このことから、セグメント10の分割数を増やすこと、もしくはセグメント10を所定角度傾斜させることが、圧力損失比率(ΔPa.ratio)を僅かに増加させるものの、熱伝達率比率(hm.ratio)を大きくする上で効果的であることが解った。
【0035】
特に、熱伝達率比率を向上する上で、セグメント10を傾斜させることが有効であることは、NO.6サンプルとNO.7サンプルとの比較からも明白である。
また、NO.2およびNO.5サンプルのオフセットフィンも、NO.3,4サンプルのオフセットフィンと同様、上記の評価領域に入っており、圧力損失比率および熱伝達率比率の両面から十分実用域にあることが判明した。このNO.2およびNO.5サンプルのオフセットフィンは、いずれも個々のセグメント10の列方向の間隔を2列とするとともに、各セグメント10の1ピッチ内の空気流れ方向Fと直交する方向の分割数nを3としたものである。
【0036】
このことから、個々のセグメント10の列方向の間隔を2列以上とし、個々のセグメント10について、空気流れ方向Fの上流側に配置されたセグメント10の前縁で発生する温度境界層が下流側に配設されているセグメント10に影響を及ぼし難くし、その前縁効果を阻害しないようにすることが、個々のセグメント10の前縁効果、すなわち各セグメント10の前縁に空気流れが衝突することによって、その前縁部分での熱伝達率hmが局所的に高くなる効果を最大限発揮させ、空気側の熱伝達率hmを向上する上で効果的であることが判明した。
【0037】
また、このように、個々のセグメント10を空気流れ方向に沿って2列以上間隔をあけて多数オフセット配設する場合、NO.6,7サンプルに示されるように、列方向の間隔が1列となるものが混在することになる、段形状を3段または4段折り返しの繰り返し配列としたものに比べ、NO.2ないし5サンプルのように、全てのセグメント10が2列以上間隔をあけてオフセット配設されるように、それぞれ3段以上の段形状で繰り返し配列した構成とすることが望ましいことが解った。このことは、1ピッチ内の分割数nを4としたNO.9サンプルのフィン(NO.6サンプルのフィンと同様に、段形状を4段折り返しの繰り返し配列としたもの)が、NO.2,5サンプルのフィンよりも性能が低くなっていることからも明らかである。
【0038】
以上の解析結果から、オフセットフィンを高性能化するには、多数配設されるセグメント10を、NO.2ないしNO.5サンプルのフィンが全て満たす、以下の3条件を満足するように設けることが望ましいと云える。
A.個々のセグメント10を空気流れ方向に沿って2列以上間隔をあけて多数オフセット配設する。
B.各セグメント10の空気流れ方向の長さLを、0.5mm≦L≦1.2mm、より好ましくは0.6mm≦L≦1.0mmとする。
C.個々のセグメント10の波形フィンの1ピッチ内の分割数を3以上とする。
【0039】
但し、各セグメント10の1ピッチ内の分割数を3以上とする場合、段形状を3段以上の段形状の繰り返し配列とすることが望ましい。なお、1ピッチ内の分割数は、数が多くなる程、製造が難しくなることから、3ないし4が適正な範囲であり、また、各セグメント10を所定角度傾斜させて設けることも、熱伝達率を高めることができるものの、製造性が低下する面があることから、かかる点を考慮して採用の有無を決定すればよい。
【0040】
斯くして、本実施形態においては、オフセットフィン5を構成する波形成形フィンの立上がり面8および立下がり面9に短冊状に切り起こされた個々のフィンであるセグメント10が、空気流れ方向Fに沿って2列以上間隔をあけて多数オフセット配設されているとともに、各セグメント10の空気流れ方向Fの長さLが、0.5mm≦L≦1.2mmとされているため、個々のセグメント10について空気流れ方向Fの上流側に配設されたセグメント10の前縁で発生する温度境界層が下流側に配設されているセグメント10に影響を及ぼし難くし、その前縁効果を阻害しないようにすることにより、個々のセグメント10の前縁効果、すなわち各セグメント10の前縁に空気流れが衝突し、その部分での熱伝達率hmが局所的に高くなる効果を最大限発揮させ、空気側の熱伝達率hmの向上、ひいては熱交換性能の向上を図ることができると同時に、各セグメント10の長さLを最適化することにより空気側圧損ΔPaを抑制し、実用域に抑えることができる。
【0041】
また、オフセット配設される多数のセグメント10の波形フィンの1ピッチ内の分割数を3以上とすることにより、フィン間の間隔を狭めて空気流れの速度を上げ、空気側の熱伝達率hmの更なる向上を図ることができる。
従って、オフセットフィン5の性能を空気側の熱伝達率hmおよび圧損ΔPaの両面から改善し、その性能を一段と向上することができる。
【0042】
特に、1ピッチ内の分割数が3以上とされる個々のセグメント10を、それぞれ3段以上の段形状で繰り返し配列することにより、全てのセグメント10を空気流れ方向Fに沿って2列以上あけてオフセット配設することができ、全セグメント10において上流側セグメント10の温度境界層による影響を排除して前縁効果を最大限発揮させ、着実に空気側の熱伝達率を向上することができる。これによって、オフセットフィン5の熱交換性能の一層の向上を図ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態においては、個々のセグメント10を、空気流れ方向Fに対して所定の角度(7°)傾斜させている。このため、個々のセグメント10間の間隔を傾斜分だけ広くし、空気流れを整流することにより、個々のセグメント10の前縁効果による熱伝達率hmの一層の向上を図ることができるとともに、空気側圧損ΔPaの抑制効果を維持することができる。従って、オフセットフィン5をより高性能化することができる。
【0044】
また、本実施形態の冷媒熱交換器1は、所定の間隔で平行に配設される複数の冷媒チューブ4間に、上記の熱交換器用オフセットフィン5が配設された構成とされている。このため、冷媒チューブ4内を流れる冷媒とオフセットフィン5側を流れる空気流との間の熱交換を、オフセットフィン5の性能向上により一層促進し、その熱交換性能を向上することができる。これによって、蒸発器や凝縮器の適用される冷媒熱交換器1を一段と高性能化し、空調性能を向上することができるとともに、蒸発器や凝縮器の小型化により、ユニットのコンパクト化を図ることができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、冷媒熱交換器の例として、一対のヘッダ間に多数の冷媒チューブを平行に配設し、その冷媒チューブ間にオフセットフィンを配設して熱交換器について説明したが、扁平なチューブを蛇行状に折り曲げて形成して平行なチューブ間にオフセットフィンを配設した構成の熱交換器等にも同様に適用できることは云うまでもない。また、冷媒チューブは、押し出し成形チューブ、ラミネートチューブ等、如何なる構成の冷媒チューブであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 冷媒熱交換器
4 冷媒チューブ
5 オフセットフィン
8 立上がり面
9 立下がり面
10 セグメント(短冊)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8