(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1引き出し電極及び前記第2引き出し電極の間隔は、前記第1主面上において、前記第1アクチュエータ部から離間するに従い広がっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の液体噴射ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して記録紙等の被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
[プリンタ]
図1は、プリンタ1の斜視図である。
図1に示すように、プリンタ1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構(移動機構)2,3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射するインクジェットヘッド4と、インクジェットヘッド4にインクを供給するインク供給手段5と、被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)にインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)4を走査させる走査手段6と、を備えている。
【0019】
なお、以下の説明において、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向、及びY方向に直交する方向をZ方向として説明する。ここで、プリンタ1は、X方向、Y方向が水平方向となるように、且つZ方向が上下方向となるように載置して使用される。
【0020】
一対の搬送機構2,3は、それぞれX方向に延びるグリッドローラ2a,3aと、グリッドローラ2a,3aとそれぞれに平行に延びるピンチローラ2b,3bと、グリッドローラ2a,3aをその軸回りに回転動作させるモータ等の図示しない駆動機構と、を備えている。
【0021】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク10と、インクタンク10とインクジェットヘッド4とを接続するインク配管11と、を備えている。インクタンク10は、複数設けられており、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク10Y,10M,10C,10BがY方向に沿って配列されている。インク配管11は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースであり、インクジェットヘッド4を支持するキャリッジ16の動作(移動)に追従可能とされている。なお、インクタンク10は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク10Y,10M,10C,10Bに限られるものではなく、さらに多色のインクを収容したインクタンクを備えていてもよい。
【0022】
走査手段6は、X方向に延び、かつY方向に間隔をあけて互いに平行に配置された一対のガイドレール14,15と、これら一対のガイドレール14,15に沿って移動可能に配置されたキャリッジ16と、このキャリッジ16をX方向に移動させる駆動機構17と、を備えている。
駆動機構17は、一対のガイドレール14,15の間に配置され、X方向に間隔をあけて配置された一対のプーリ18と、これら一対のプーリ18の間に巻回されてX方向に移動する無端ベルト19と、一方のプーリ18を回転駆動させる駆動モータ20と、を備えている。
【0023】
キャリッジ16は、無端ベルト19に連結されており、一方のプーリ18の回転駆動による無端ベルト19の移動に伴ってX方向に移動可能とされている。また、キャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド4がX方向に並んだ状態で搭載されている。図示の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各インクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド4、すなわちインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bがキャリッジ16に搭載されている。なお、上述した搬送機構2,3及び走査手段6により、インクジェットヘッド4と被記録媒体Sとを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0024】
(インクジェットヘッド)
次に、上述したインクジェットヘッド4について詳述する。
図2は、インクジェットヘッド4の斜視図である。なお、上述した各インクジェットヘッド4は、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明では、一のインクジェットヘッド4について説明する。
図2に示すように、インクジェットヘッド4は、キャリッジ16に固定される固定プレート21と、この固定プレート21上に固定された吐出部22と、インク供給手段5から供給されるインクを、吐出部22の後述する共通インク室63にさらに供給するインク供給部23と、吐出部22に駆動電圧を印加するヘッド駆動部24と、を備えている。
【0025】
インクジェットヘッド4は、駆動電圧が印加されることで、各色のインクを所定の吐出量で吐出する。このとき、インクジェットヘッド4が走査手段6によりX方向に移動することで、被記録媒体Sにおける所定範囲に記録を行うことができ、この走査を搬送機構2,3により被記録媒体SをY方向に搬送しながら繰り返し行うことで、被記録媒体Sの全体に記録を行うことが可能となる。
【0026】
固定プレート21には、アルミ等の金属製の支持プレート25がZ方向に沿って起立した状態で固定されているとともに、吐出部22にインクを供給する流路部材26が固定されている。流路部材26の上方には、インクを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器27が支持プレート25に支持された状態で配置されている。そして、流路部材26と圧力緩衝器27とはインク連結管28を介して連結され、圧力緩衝器27にはインク供給手段5の上述したインク配管11が接続されている。
【0027】
そして、圧力緩衝器27は、インク配管11を介してインクが供給されると、インクを内部の貯留室内に一旦貯留した後、所定量のインクをインク連結管28及び流路部材26を介して吐出部22に供給する。
なお、これら流路部材26、圧力緩衝器27及びインク連結管28により、上述したインク供給部23を構成している。
【0028】
また、支持プレート25には、吐出部22を駆動するための集積回路等の制御回路(駆動回路)31が搭載されたIC基板32が取り付けられている。この制御回路31は、図示しない配線パターンがプリント配線されたフレキシブルプリント基板33を介して、吐出部22の後述する駆動電極(共通電極55、共通端子56、個別電極57、及び個別端子58)に電気的に接続されている。これにより、制御回路31は、フレキシブルプリント基板33を介して駆動電極55〜58に駆動電圧を印加することが可能とされる。
そして、これら制御回路31が搭載されたIC基板32、及びフレキシブルプリント基板33により、上述したヘッド駆動部24を構成している。
【0029】
(吐出部)
続いて、吐出部22について詳細に説明する。
図3は吐出部22をZ方向の一方側から見た分解斜視図である。
図4は、吐出部22を第1ヘッドチップ40A側から見た斜視図である。
図5は、吐出部22を第2ヘッドチップ40B側から見た斜視図である。
図6は、
図3のA−A線に相当する断面図である。
図7は、
図4のB−B線に沿う断面図である。
図3〜
図7に示すように、本実施形態の吐出部22は、複数のノズル孔(第1ノズル孔95a及び第2ノズル孔96a)からなるノズル列95,96が二列に亘って形成された二列タイプの吐出部22である。具体的に、吐出部22は、X方向に積層された第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bと、第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bにまとめて固定されたノズルプレート44と、を備えている。なお、以下の説明では、Z方向のうち、ノズルプレート44側を前側といい、ノズルプレート44とは反対側を後側という。また、各ヘッドチップ40A,40Bは、後述する吐出チャネル51aからインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされている。
【0030】
(第1ヘッドチップ)
第1ヘッドチップ40Aは、第1ベースプレート(ベースプレート,第1プレート)41、第1アクチュエータプレート(第1アクチュエータ部)42、及び第1カバープレート43を備えている。
第1ベースプレート41は、例えばガラス等の誘電体により構成されている。
【0031】
第1アクチュエータプレート42は、分極方向が厚さ方向(X方向)で異なる2枚のプレートを積層した積層プレートとされている(いわゆる、シェブロン方式)。これら2枚のプレートは、ともに厚さ方向(X方向)に分極処理された圧電基板、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックス基板であり、互いの分極方向を反対に向けた状態で接合されている。
【0032】
第1アクチュエータプレート42は、前端面を第1ベースプレート41の前端面と面一に配置した状態で、上述した第1ベースプレート41上のうち後述する貫通孔84,91を回避した位置に接着等により固定されている。X方向から見た平面視において、第1アクチュエータプレート42は、第1ベースプレート41の外形に比べて小さくなっている。したがって、第1ベースプレート41におけるY方向の両側及び後端部は、第1アクチュエータプレート42よりも外側に張り出している。
【0033】
第1アクチュエータプレート42には、X方向に窪む複数のチャネル51a,51bがY方向に所定の間隔をあけて並設されている。これら複数のチャネル51a,51bは、第1アクチュエータプレート42における一方の主面42a側に開口するとともに、Z方向に沿って直線状に延在している。
具体的に、複数のチャネル51a,51bは、インクが充填される吐出チャネル(噴射チャネル)51aと、インクが充填されないダミーチャネル51bと、に大別される。そして、これら吐出チャネル51aとダミーチャネル51bとは、Y方向に交互に並んで配置されている。
【0034】
ダミーチャネル51bは、第1アクチュエータプレート42をX方向及びZ方向に貫通しており、第1アクチュエータプレート42をY方向に分断している。なお、第1アクチュエータプレート42のうち、Y方向で隣接するダミーチャネル51b間に位置する部分は中央ブロック(チャネルブロック)53を構成し、Y方向で最外端に位置するダミーチャネル51bよりもY方向の外側に位置する部分は一対の外側ブロック54を構成している。なお、図示の例では、一対の外側ブロック54のうち、一方の外側ブロック54のみを示している。
【0035】
一方、吐出チャネル51aは、中央ブロック53に各別に形成され、第1アクチュエータプレート42のX,Z方向に開口した状態で形成されている。したがって、各中央ブロック53のうち、吐出チャネル51aに対してY方向の両側には、吐出チャネル51aを画成する駆動壁が形成されている。この駆動壁は、断面矩形状でZ方向に延びるとともに、この駆動壁によって吐出チャネル51a及びダミーチャネル51bがそれぞれ区分けされている。なお、図示の例において、吐出チャネル51aにおける後端部は、後側に向かうに従い漸次浅くなっている。
【0036】
吐出チャネル51aの内面、すなわちY方向に向かい合う一対の側壁面及び底壁面には、共通電極55が形成されている。この共通電極55は、吐出チャネル51aに沿ってZ方向に延び、中央ブロック53の一方の主面42a上に形成された共通端子56に導通している。なお、各共通端子56はそれぞれ電気的に独立するようにパターン形成されている。
【0037】
一方、中央ブロック53の外側面(ダミーチャネル51bの内面のうち、Y方向に向かい合う一対の側壁面)には、その全面に亘って個別電極57がそれぞれ形成されている。これら個別電極57は、中央ブロック53の後端部において、中央ブロック53の一方の主面42a及び後端面上に形成された個別端子58(
図4参照)に接続されている。したがって、一の中央ブロック53の外側面に形成された一対の個別電極57は、個別端子58を介して接続されている。なお、個別電極57は、ダミーチャネル51bの内面において、底壁面(ベースプレート41上)には形成されておらず、Y方向に向かい合う一対の側壁面間で切り離されている。なお、共通電極55、共通端子56、個別電極57、及び個別端子58により、第1ヘッドチップ40Aの駆動電極(第1駆動電極)55〜58を構成している。
【0038】
また、外側ブロック54の外面には、グランド端子61が形成されている。なお、図示の例において、グランド端子61は、外側ブロック54における一方の主面42a、外側面、及び後端面上に形成されているが、少なくとも一方の主面42a及び後端面上に形成されていれば構わない。
【0039】
さらに、第1アクチュエータプレート42(中央ブロック53及び外側ブロック54)の一方の主面42a上において、共通端子56及び個別端子58間に位置する部分には、Y方向に沿って延びる溝部62が形成されている。溝部62は、Z方向に窪むとともに、共通端子56及び個別端子58間を分断している。
【0040】
図3、
図6に示すように、第1カバープレート43は、一方の主面43aが第1アクチュエータプレート42の一方の主面42aに接合されている。なお、第1アクチュエータプレート42の後端側が露出していると、第1ヘッドチップ40Aが製造上の治具等に誤って衝突した際に、第1アクチュエータプレート42の後端側に亀裂や欠損が生じ、個別端子58が断線してしまうおそれがある。この問題を防止するため、ZY平面において、第1カバープレート43は第1アクチュエータプレート42と面一の形状であり、第1カバープレート43のX方向から見た平面視外形は、第1アクチュエータプレート42全体(中央ブロック53及び外側ブロック54)のX方向から見た平面視外形と一致している。つまり、ZY平面において、第1カバープレート43は第1アクチュエータプレート42の後端側を覆っている。また、第1カバープレート43は、他方の主面43b側に形成された凹状の共通インク室63と、共通インク室63及び吐出チャネル51aを各別に連通させる複数のスリット64と、を有している。
【0041】
共通インク室63は、第1カバープレート43の後端部に位置し、X方向における第1アクチュエータプレート42側に窪むとともに、Y方向に沿って延びる長方形の開口である。共通インク室63は、上述した流路部材26(
図2参照)内に連通しており、流路部材26内のインクが流通するように構成されている。
スリット64は、共通インク室63のうち、吐出チャネル51aに対応する位置に形成されている。具体的に、スリット64はZ方向に所定の長さを有しており、Z方向において、スリット64の後端縁は吐出チャネル51aの後端縁(吐出チャネル51aのエンベロープ形状の終点)に一致している(
図6参照)。これにより、共通インク室63内のインクを吐出チャネル51a内に導入させ、かつダミーチャネル51b内への導入を規制するように構成されている。なお、上述した具体的なスリット64の配置により、吐出チャネル51aの後端側でインクが淀まないので、吐出チャネル51aの内部に気泡が溜まることを防止することができる。
【0042】
図3、
図4に示すように、第1カバープレート43の一方の主面43a上には、上述した各共通端子56とグランド端子61との間を接続する接続配線65が形成されている。具体的に、接続配線65は、各共通端子56に各別に接続された共通接続部66と、グランド端子61に各別に接続されたグランド接続部67と、これら共通接続部66及びグランド接続部67間を接続するメイン配線68と、を有している。
メイン配線68は、第1カバープレート43において、第1アクチュエータプレート42の溝部62とX方向で重なる部分に形成され、Y方向に沿って延びる帯状とされている。なお、メイン配線68は、第1アクチュエータプレート42における一対の外側ブロック54間を架け渡すように、第1カバープレート43のY方向におけるほぼ全体に亘って形成されている。また、接続配線65の幅(Z方向における幅)は、例えば溝部62の幅よりも狭くなっており、第1アクチュエータプレート42から離間している。
【0043】
各共通接続部66は、Y方向に間隔をあけて配列されるとともに、Z方向に互いに平行に延在している。この場合、各共通接続部66のY方向における配列ピッチは、吐出チャネル51aの配列ピッチと同等になっている。そして、各共通接続部66は、その前端部が対応する共通端子56にそれぞれ接続される一方、後端部がメイン配線68にまとめて接続されている。
グランド接続部67は、メイン配線68におけるY方向の両端部から後側に向けて延在しており、その後端部が外側ブロック54の一方の主面42a上において、対応するグランド端子61にそれぞれ接続されている。
【0044】
ここで、
図3〜
図7に示すように、上述した第1ベースプレート41の一方の主面(第1主面)41a上において、第1アクチュエータプレート42よりも後側に位置する部分には、各個別端子58及びグランド端子61に各別に接続される第1引き出し電極(第1個別引き出し電極71及び第1グランド引き出し電極72)が形成されている。
【0045】
第1個別引き出し電極71は、Y方向に間隔をあけて配列されるとともに、Z方向に互いに平行に延在している。この場合、各第1個別引き出し電極71のY方向における配列ピッチは、中央ブロック53の配列ピッチと同等になっている。そして、第1個別引き出し電極71は、その前端部が対応する個別端子58にそれぞれ接続され、後端部がベースプレート41における後端縁に近接する位置まで引き出されている。
第1グランド引き出し電極72は、その前端部が対応するグランド端子61にそれぞれ接続され、後端部がベースプレート41における後端縁に近接する位置まで引き出されている。なお、図示の例において、第1個別引き出し電極71のY方向における幅は、中央ブロック53の幅よりも狭くなっており、グランド引き出し電極72のY方向における幅は、外側ブロック54と同等になっている。
【0046】
なお、第1グランド引き出し電極72の面積は、第1個別引き出し電極71の面積よりも大きく、例えば
図4に示すように、Z方向において、第1グランド引き出し電極72と第1個別引き出し電極71の長さは等しく、Y方向において、第1グランド引き出し電極72の長さは第1個別引き出し電極71の長さより長い。
【0047】
また、上述した駆動電極55〜58や、グランド端子61、第1引き出し電極71,72は、Ni/Au等からなるめっき被膜120(
図16参照)により一体で形成されている。ここで、第1ベースプレート41の一方の主面41aにおいて、第1引き出し電極71,72が形成される電極形成領域は、電極形成領域以外の領域(非形成領域)に比べて表面粗さRaが大きくなっている。この場合、電極形成領域の表面粗さRaは、めっき被膜120を形成可能な大きさであって、400Å以上であることが好ましい。一方、非形成領域の表面粗さRaは、めっき被膜が形成不可能な大きさであって、100Å未満であることが望ましい。すなわち、本実施形態において、電極形成領域の表面粗さRaは、非形成領域の表面粗さRaに対して4倍以上になっていることが好ましい。なお、本実施形態において、表面粗さRaとはJIS B0601に規格化されている算術平均粗さRaの数値である。
【0048】
(第2ヘッドチップ)
第2ヘッドチップ40Bは、第2ベースプレート(ベースプレート、第2プレート)81、第2アクチュエータプレート(第2アクチュエータ部)82、及び第2カバープレート83を備えている。なお、第2ヘッドチップ40Bのうち、上述した第1ヘッドチップ40Aと同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bは、各ベースプレート41,81の他方の主面41b,81b同士が接合されることで、X方向で積層されている。すなわち、本実施形態の吐出部22は、第1ベースプレート41及び第2ベースプレート81に対してX方向の両側に、第1アクチュエータプレート42及び第2アクチュエータプレート82がそれぞれ配設されている。
【0049】
第2アクチュエータプレート82の中央ブロック53及び外側ブロック54は、上述した第1アクチュエータプレート42の中央ブロック53及び外側ブロック54の配列ピッチに対して半ピッチずれて配列されている。したがって、第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル51a、ダミーチャネル51bについても、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル51a及びダミーチャネル51bの配列ピッチに対して半ピッチずれて配列されている。すなわち、本実施形態の吐出部22では、第1アクチュエータプレート42の吐出チャネル51aと、第2アクチュエータプレート82の吐出チャネル51aと、が千鳥状に配置されている。なお、第2アクチュエータプレート82には、第1アクチュエータプレート42と同様のパターンからなる駆動電極(第2駆動電極)55〜58や、グランド端子61が形成されている。
【0050】
ここで、
図5〜
図7に示すように、第2ヘッドチップ40Bの第2個別引き出し電極80は、第1ベースプレート41及び第2ベースプレート81を貫通する個別用貫通孔(貫通孔)84を通して第1ベースプレート41の一方の主面41a上に引き回されている。具体的に、第2個別引き出し電極80は、第2ベースプレート81の一方の主面(第2主面)81a上に形成された引き出し部85と、個別用貫通孔84内に形成された貫通部86と、第1ベースプレート41の一方の主面41a上に形成されたランド部87と、を有している。
【0051】
まず、個別用貫通孔84は、Y方向を短軸方向とする楕円形状を呈し、第1ベースプレート41上において、ダミーチャネル51bの後側(Y方向における各第1個別引き出し電極71間)で開口し、第2ベースプレート81上において中央ブロック53の後側で開口している。具体的に、個別用貫通孔84は、第1ベースプレート41を貫通する第1貫通孔84aと、第2ベースプレート81を貫通するとともに、Y方向における配列ピッチが第1貫通孔84aと同等に形成された第2貫通孔84bと、を有している。そして、Y方向で対応する第1貫通孔84a及び第2貫通孔84bが、X方向で重なり合うことで、両ベースプレート41,81をX方向で貫通する個別用貫通孔84が形成される。なお、個別用貫通孔84は、Y方向における幅がダミーチャネル51bの幅と同等に形成されている。
そして、各個別用貫通孔84の内面には、ベースプレート41,81をX方向に貫通する貫通部86がめっき被膜120により形成されている。
【0052】
引き出し部85は、第2ベースプレート81の一方の主面81a上において、Y方向に間隔をあけて配列されるとともに、Z方向に互いに平行に延在している。具体的に、引き出し部85は、前端部が対応する個別端子58にそれぞれ接続されている。また、引き出し部85は、上述した個別用貫通孔84(第2貫通孔84b)の周囲を取り囲み、貫通部86に接続されている。なお。各引き出し部85のY方向における配列ピッチは、中央ブロック53の配列ピッチと同等になっている。
【0053】
ランド部87は、第1ベースプレート41の一方の主面41a上において、Y方向で隣接する第1個別引き出し電極71間に位置しており、貫通部86から後側に向けて延在している。したがって、第1ベースプレートの一方の主面41a上には、第1個別引き出し電極71と、第2個別引き出し電極80のランド部87と、が交互に配列されている。
【0054】
また、
図5、
図7に示すように、第2ヘッドチップ40Bの第2グランド引き出し電極90は、第1ベースプレート41及び第2ベースプレート81を貫通するグランド用貫通孔(貫通孔)91を通して第1ベースプレート41の一方の主面41a上に引き回されている。具体的に、第2グランド引き出し電極90は、第2ベースプレート81の一方の主面81a上に形成された引き出し部92と、グランド用貫通孔91内に形成された貫通部93と、を有している。
【0055】
グランド用貫通孔91は、Y方向を長軸方向とする楕円形状を呈し、第1ベースプレート41上において、外側ブロック54の後側(Y方向における各グランド引き出し電極72と同等の位置)で開口し、第2ベースプレート81上において一部が外側ブロック54よりもY方向にずれた状態で開口している。具体的に、グランド用貫通孔91は、第1ベースプレート41を貫通する第1貫通孔91aと、第2ベースプレート81を貫通するとともに、Y方向における配列ピッチが第1貫通孔91aと同等に形成された第2貫通孔91bと、を有している。そして、Y方向で対応する第1貫通孔91a及び第2貫通孔91bが、X方向で重なり合うことで、両ベースプレート41,81をX方向で貫通するグランド用貫通孔91が形成される。
【0056】
各グランド用貫通孔91の内面には、ベースプレート41,81をX方向に貫通する貫通部93がめっき被膜120により形成されている。貫通部93は、X方向における一端部が第1ベースプレート41の一方の主面41a上で第1グランド引き出し電極72に接続され、他端部が第2ベースプレート81の一方の主面81a上で引き出し部92に接続されている。
【0057】
引き出し部92は、第2ベースプレート81の一方の主面81a上において、一端部が対応するグランド端子61にそれぞれ接続されるとともに、他端部が貫通部93に接続されている。
【0058】
そして、
図6に示すように、第1ベースプレート41の後端部には、上述したフレキシブルプリント基板33が接続されている。フレキシブルプリント基板33には、図示しない配線パターンが形成されており、この配線パターンが、第1ベースプレート41の一方の主面41a上において第1個別引き出し電極71、第1グランド引き出し電極72、及び第2個別引き出し電極80のランド部87に接続されている。この場合、第2グランド引き出し電極90には、第1グランド引き出し電極72を介してフレキシブルプリント基板33が導通している。
【0059】
ノズルプレート44は、ポリイミド等の樹脂材料からなるフィルム状とされ、第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bの前端面に接着等により固定されている。ノズルプレート44には、Y方向に間隔をあけて並設された複数のノズル孔(第1ノズル孔95a及び第2ノズル孔96a)からなるノズル列(第1ノズル列95及び第2ノズル列96)が2列配設されている。
【0060】
第1ノズル列95は、ノズルプレート44をZ方向に貫通する複数の第1ノズル孔95aを有し、これら第1ノズル孔95aがY方向に間隔をあけて一直線上に並んで構成されている。第1ノズル孔95aは、上述した第1アクチュエータプレート42の吐出チャネル51a内に連通している。
第2ノズル列96は、ノズルプレート44をZ方向に貫通する複数の第2ノズル孔96aを有し、上述した第1ノズル列95と平行に配設されている。各第2ノズル孔96aは、上述した第2アクチュエータプレート82の吐出チャネル51a内に連通している。したがって、各ダミーチャネル51bは、ノズル孔95a,96aには連通しておらず、ノズルプレート44により前側から覆われている。
【0061】
<インクジェットヘッドの動作方法>
次に、上述したインクジェットヘッド4の動作方法について説明する。
インクジェットヘッド4では、フレキシブルプリント基板33を介して駆動電極55〜58に駆動電圧が印加されることで、吐出チャネル51aを画成する2つの駆動壁が圧電滑り効果によりダミーチャネル51b側へ突出するように変形する。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート42,82は、厚さ方向(X方向)に分極処理された2枚のプレートが積層されているため、駆動電圧を印加することで、駆動壁のX方向中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル51aがあたかも膨らむように変形する。
【0062】
2つの駆動壁の変形によって、吐出チャネル51aの容積が増大すると、共通インク室63内のインクがスリット64を通って吐出チャネル51a内に誘導される。そして、吐出チャネル51aの内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル51aの内部に伝搬し、この圧力波がノズル孔95a,96aに到達したタイミングで、駆動電極55〜58に印加した駆動電圧をゼロにする。
これにより、駆動壁が復元し、一旦増大した吐出チャネル51aの容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル51aの内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、インクをノズル孔95a,96aから吐出させることができる。この際、インクはノズル孔95a,96aを通過する際に、液滴状のインク滴となって吐出される。
【0063】
なお、インクジェットヘッド4の動作方法は上述した内容に限られない。例えば、通常状態の駆動壁が吐出チャネル51aの内側に変形し、吐出チャネル51aがあたかも内側に凹むように構成しても構わない。この場合は、駆動電極55〜58に印可する電圧を上述した電圧とは正負逆の電圧にするか、電圧の正負は変えない場合はアクチュエータプレート42,82の圧電素子の分極方向を逆にすることで実現可能である。また、吐出チャネル51aが外側に膨らむように変形させた後で、吐出チャネル51aが内側に凹むように変形させ、吐出時のインクの加圧力を高めても構わない。
【0064】
また、本実施形態のインクジェットヘッド4は、各吐出チャネル51aの間に、インクが充填されないダミーチャネル51bが配置されているため、全ての吐出チャネル51aからインクを同時に吐出するようになっている(いわゆる、1サイクル方式)。また、ダミーチャネル51bが配置されているため、各駆動電極55〜58がインクを介して短絡することがない。これにより、水性インク等の導電性を有するインクを含め多様なインクを用いることができ、利便性に優れるという効果がある。
【0065】
<インクジェットヘッドの製造方法>
次に、上述したインクジェットヘッド4の製造方法について説明する。
図8は、インクジェットヘッド4の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図9〜
図20は、インクジェットヘッド4の製造方法を説明するための説明図であって、
図9〜
図17は断面図、
図18〜
図20は斜視図である。なお、
図11〜
図14及び
図18〜
図20において、(a)は第1ヘッドチップ40A側を、(b)は第2ヘッドチップ40B側を示している。また、
図11〜
図17に示す断面図では、便宜上、ベースプレート41,81において貫通孔84,91を通る断面と、アクチュエータプレート42,82において吐出チャネル51aを通る断面と、をまとめて示している。
図8に示すように、本実施形態におけるインクジェットヘッド4の製造方法は、第1工程(S1)、第2工程(S2)、及び第3工程(S3)を有している。
【0066】
(第1工程)
第1工程(S1)では、ベースプレート41,81、アクチュエータプレート42,82、及びカバープレート43,83に対して、接合する前の下準備を行う。なお、第1工程(S1)では、ベースプレート41,81、アクチュエータプレート42,82、及びカバープレート43,83それぞれの工程を、並行して行うことが可能である。また、以下の説明では、第1ヘッドチップ40A側及び第2ヘッドチップ40B側で同一の工程については、まとめて説明する。
【0067】
まず、各ベースプレート41,81の下準備として、各ベースプレート41,81の一方の主面41a,81a上において、電極形成領域を粗面化する(S11:粗面化工程)。具体的には、第1ベースプレート41の一方の主面41a上において、第1引き出し電極71,72及び第2個別引き出し電極80のランド部87となる領域に対して、サンドブラスト法等を用いてし、めっき被膜120が形成可能な表面粗さRaにする。同様に、第2ベースプレート81の一方の主面81a上において、電極形成領域(第2個別引き出し電極80,90の引き出し部85,92となる領域)を、めっき被膜120が形成可能な表面粗さRaにする。なお、粗面化工程(S11)では、サンドブラスト法に限らず、エッチング、レーザ等を用いてベースプレート41,81を粗面化しても構わない。
【0068】
次に、
図9に示すように、サンドブラスト法等を用いて、各ベースプレート41,81に対して貫通孔84,91を形成する(S12:貫通孔形成工程)。具体的には、各ベースプレート41,81のうち、貫通孔84a,84b,91a,91bの形成領域に対して、Y方向に沿って延びる連通溝部102を他方の主面41b,81b側から形成するとともに、これら連通溝部102にそれぞれ連通する貫通孔84a,84b,91a,91bを一方の主面41a,81a側から形成する。なお、貫通孔形成工程(S12)をサンドブラスト法により行うことで、各ベースプレート41,81のうち、貫通孔84a,84b,91a,91b内面や、他方の主面41b、81b上における貫通孔84,91周辺は、めっき被膜120を形成可能な表面粗さRaまで粗面化される。なお、貫通孔形成工程(S12)は、サンドブラスト法の他に、エッチングやドリル加工等により行っても構わない。
【0069】
また、
図10に示すように、アクチュエータプレート42,82の下準備として、アクチュエータプレート42,82の他方の主面42b,82b側に対してダミーチャネル51bとなる凹部103を形成する(S13:凹部形成工程)。具体的には、ダイシングを用いた切削加工等により、Z方向に沿って直線状に延びる凹部103をY方向に間隔をあけて形成する。なお、凹部103は、アクチュエータプレート42,82のZ方向における両端面で開放されるように形成する。また、凹部103のX方向における深さは、上述した中央ブロック53及び外側ブロック54のX方向における高さに相当している。
【0070】
さらに、
図8に示すように、カバープレート43,83の下準備として、カバープレート43,83の一方の主面43a,83a上に図示しないマスクを介して蒸着やめっき等の成膜法を行うことで、接続配線65(
図4参照)を形成する(S14:接続配線形成工程)。
続いて、カバープレート43,83に対してサンドブラスト等を施すことで、カバープレート43,83に共通インク室63及びスリット64を形成する(S15:共通インク室形成工程)。
【0071】
(第2工程)
図11、
図18に示すように、第2工程(S2)では、まず各ベースプレート41,81及び各アクチュエータプレート42,82同士をそれぞれ貼り合わせる(S21:アクチュエータプレート接合工程)。このとき、アクチュエータプレート42,82の後端面と、ベースプレート41,81における駆動電極55〜58の形成領域(
図18中のドット領域)の前端縁と、がZ方向で一致するように両プレート41,42、及び81,82をそれぞれ位置合わせした後、接着剤等を用いて両プレート41,42、及び81,82を貼り合せる。なお、両プレート41,42、及び81,82の位置合わせは、アクチュエータプレート42,82の後端面と、ベースプレート41,81における駆動電極55〜58の形成領域の前端縁と、がZ方向で離間しなければ構わない。すなわち、アクチュエータプレート42,82の後端面と、ベースプレート41,81における駆動電極55〜58の形成領域の前端縁と、がZ方向でラップするように両プレート41,42、及び81,82を位置合わせしても構わない。またこのとき、
図11(a)、
図18(a)に示すように、第1ベースプレート41及び第1アクチュエータプレート42は、Y方向において、凹部103と貫通孔84a,91aと同等の位置になるように位置合わせする。一方、
図11(b)、
図18(b)に示すように、第2ベースプレート81及び第2アクチュエータプレート82は、Y方向において、凹部103間に貫通孔84b,91bが位置するように位置合わせする。
【0072】
次に、
図12、
図19に示すように、アクチュエータプレート42,82の一方の主面42a,82aを、グラインダ等により研削して、凹部103を貫通させる(S22:研削工程)。これにより、アクチュエータプレート42,82が、中央ブロック53及び外側ブロック54にそれぞれ切り離されるとともに、各中央ブロック53間や中央ブロック53及び外側ブロック54間にダミーチャネル51bが形成される。なお、本実施形態では、アクチュエータプレート42,82の主面のうち、ベースプレート41,81と反対側に位置する主面は、何れの状態においても一方の主面42a,82aとする。
【0073】
続いて、
図13に示すように、アクチュエータプレート42,82(中央ブロック53及び外側ブロック54)の表面のうち、駆動電極55〜58や、グランド端子61の形成領域以外の領域を覆うマスク108を形成する(S23:マスク形成工程)。具体的には、まずアクチュエータプレート42,82の一方の主面42a,82a上に、感光性ドライフィルム等からなるマスク材料を貼り付ける。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてマスク材料をパターニングすることにより、マスク材料のうち、各端子56,58の形成領域に相当する部分のマスク材料を除去する。
【0074】
次に、
図14に示すように、中央ブロック53の一方の主面42aに対してダイシング加工等の切削加工を行い、吐出チャネル51aを形成する(S24:吐出チャネル形成工程)。なお、本実施形態では、マスク形成工程(S23)の後に吐出チャネル形成工程(S24)を行う方法について説明したが、これに限らず、吐出チャネル形成工程(S24)の後にマスク形成工程(S23)を行っても構わない。但し、マスク形成工程(S23)を先に行う場合は、吐出チャネル形成工程(S24)時に用いるアライメントマーク等をマスク108に対して一括して行うことができる等の点で好ましい。
【0075】
次に、ベースプレート41,81における他方の主面41b,81b全体を、グラインダ等を用いて研削加工し、連通溝部102を除去する(S25:ベースプレート研削工程)。これにより、ベースプレート41,81のX方向全体に亘って貫通する貫通孔84a,84b,91a,91bが形成される。なお、ベースプレート研削工程(S25)は、上述した貫通孔形成工程(S12)以降であれば、何れのタイミングで行うことも可能である。但し、後述する貼り合わせ工程(S31)の直前で行うことが、ベースプレート41,81の強度確保の点で好ましい。
【0076】
(第3工程)
図15に示すように、第3工程では、まず第1ベースプレート41及び第1アクチュエータプレート42の第1接合体110Aと、第2ベースプレート81及び第2アクチュエータプレート82の第2接合体110Bと、のベースプレート41,81同士を貼り合わせる(S31:貼り合わせ工程)。具体的には、各ベースプレート41,81間で対応する貫通孔84a,84b,91a,91b同士が連通するように、各ベースプレート41,81を貼り合わせる。これにより、各接合体110A,110B間において、吐出チャネル51a同士が千鳥状に配置された状態で、各接合体110A,110Bが貼り合わされる。
【0077】
次に、各接合体110A,110Bに対して駆動電極55〜58、グランド端子61及び引き出し電極71,72,80,90を一括して形成する(S32:電極形成工程)。本実施形態では、電極形成工程(S32)を無電解めっきにより行う。
電極形成工程(S32)では、まず接合体110A,110Bのうち、駆動電極55〜58、グランド端子61及び引き出し電極71,72,80,90が形成される電極形成領域に対して触媒を付与する。具体的には、まず接合体110A,110Bを、塩化第1錫水溶液に浸漬させ、接合体110A,110Bの表面に塩化第1錫を吸着させるセンシタイジング処理を行う。
続いて、接合体110A,110Bを水洗等により軽く洗浄する。その後、接合体110A,110Bを、塩化パラジウム水溶液に浸漬させ、接合体110A,110Bの表面に塩化パラジウムを吸着させる。すると、接合体110A,110Bの表面に吸着した塩化パラジウムと、上述したセンシタイジング処理で吸着した塩化第1錫との間で酸化還元反応が生じることで、触媒として金属パラジウムが析出される(アクチベーティング処理)。
【0078】
ここで、本実施形態では、接合体110A,110Bのうち、アクチュエータプレート42,82における表面全体に加え、ベースプレート41,81の電極形成領域(一方の主面41a,81a上及び貫通孔84,91の内面)にもアンカー効果によって触媒が付与される。一方、ベースプレート41,81のうち、電極形成領域以外の領域(非形成領域)は、表面粗さRaが小さいため、触媒が付与されないようになっている。
【0079】
次に、
図16に示すように、触媒(金属パラジウム)が付与された接合体110A,110Bをめっき液に浸漬させることで、接合体110A,110Bのうち、触媒が付与された部分にめっき被膜120が析出される。なお、本実施形態では、非形成領域が、ベースプレート41,81の一方の主面41a,81a上のうち、中央ブロック53間に位置する部分を含んでいるため、ベースプレート41,81のうち、ダミーチャネル51bの底面を構成する部分には、触媒が付与されないことになる。そのため、個別電極57をめっきにより形成する場合に、ダミーチャネル51bの内面のうち、側壁面(中央ブロック53の対向面)のみにめっき被膜120を析出させ、底面にめっき被膜120が析出されないように設定できる。これにより、例えばダミーチャネル51bの底面に析出しためっき被膜120をレーザ等の後加工により除去する必要がないので、製造コストの削減や、後工程で発生するゴミを削減できるとともに、ダミーチャネル51bの側壁面に形成された個別電極57が底面を介して短絡するのを確実に抑制できる。
【0080】
続いて、
図17、
図20に示すように、各アクチュエータプレート42,82の一方の主面42a,82a上に形成されたマスク108を除去する(S33:リフトオフ工程)。これにより、接合体110A,110B上に駆動電極55〜58、グランド端子61及び引き出し電極71,72,80,90が一括で形成される。
【0081】
そして、
図4、
図5に示すように、各アクチュエータプレート42,82の一方の主面42a,82a上に溝部62を形成する(S34:溝部形成工程)。具体的には、ダイシング加工等の切削加工により、アクチュエータプレート42,82の一方の主面42a,82a上において、共通端子56及び個別端子58間を分断するようにY方向に沿って延びる溝部62を形成する。なお、上述した実施形態では、アクチュエータプレート42,82のY方向全体(中央ブロック53及び外側ブロック54)に溝部62を形成する場合について説明したが、少なくとも中央ブロック53にのみ形成されていれば構わない。
【0082】
次に、アクチュエータプレート42,82の一方の主面42a,82a上に、カバープレート43,83を接合する(S35:カバープレート接合工程)。具体的には、アクチュエータプレート42,82の吐出チャネル51aと、カバープレート43,83のスリット64と、が連通するように、両プレート42,43及び82,83同士を位置合わせする。さらに、本実施形態では、接続配線65のうち、メイン配線68が溝部62とX方向で重なり、かつ共通接続部66及びグランド接続部67が対応する共通端子56及びグランド端子61に各別に接続されるように、両プレート42,43及び82,83を位置合わせする。そして、位置合わせ後、両プレート42,43及び82,83を接着剤等によって接合する。
なお、本実施形態では、上述したようにカバープレート43,83のX方向から見た平面視外形が、アクチュエータプレート42,82全体のX方向から見た平面視外形に一致しているため、各プレート42,43及び82,83の端面同士を面一に位置合わせするだけで、上述した各種の位置合わせが自動的に完了することになる。
【0083】
その後、各ヘッドチップ40A,40Bの前端面に、ノズルプレート44を接合する(S36:ノズルプレート接合工程)。
最後に、第1ベースプレート41の一方の主面41a上にフレキシブルプリント基板33を接続する。これにより、フレキシブルプリント基板33の配線パターンが、ベースプレート41の一方の主面41a上に形成された第1引き出し電極71,72、及び第2個別引き出し電極80のランド部87に電気的に接続される。
そして、このように構成された吐出部22がキャリッジ16に搭載されることで、本実施形態のインクジェットヘッド4が完成する。
【0084】
このように、本実施形態では、第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bのベースプレート41,81同士を貼り合わせるとともに、第2ヘッドチップ40Bの第2引き出し電極80,90を、貫通孔84,91を通して第1ベースプレート41上に引き出す構成とした。
この構成によれば、第1ベースプレート41の一方の主面41a上にフレキシブルプリント基板33を接続するだけで、各ヘッドチップ40A,40Bとフレキシブルプリント基板33との電気的導通を確保することができる。したがって、従来のように各ヘッドチップ40A,40Bに別々のフレキシブルプリント基板33を接続する構成に比べて、部品点数の削減、及び構成の簡素化を図った上で、高密度記録を実現することができる。
【0085】
また、各ベースプレート41,81間において、貫通孔84,91を同等のピッチで配列することで、各ベースプレート41,81を貼り合わせる際に、貫通孔84,91を位置合わせの基準として使用することができる。その結果、構成の簡素化を図った上で、各ベースプレート41,81の貫通孔84,91同士を確実に連通させることができ、第2引き出し電極80,90を第1ベースプレート41の一方の主面41a上に確実に引き出すことができる。
【0086】
さらに、ベースプレート41,81がガラス材料により構成されているため、非形成領域の表面粗さRaを小さく抑えることができる。この場合、非形成領域にめっき被膜120が形成されるのを抑制できるので、めっき被膜120の形成後のパターニング工程が不要になり、製造工程の効率化を図ることができるとともに、低コスト化を図ることができる。
【0087】
そして、本実施形態のプリンタ1では、上述したインクジェットヘッド4を備えているため、高密度記録に対応できるとともに、信頼性に優れたプリンタ1を提供できる。
【0088】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0089】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
また、上述した実施形態では、インクジェットヘッド4が複数搭載された複数色用のプリンタ1について説明したが、これに限られない。例えば、インクジェットヘッド4が一つの単色用のプリンタ1としても構わない。
【0090】
また、本発明の実施形態で用いられるインクとしては、水性インクや油性インク、UVインク、微細金属粒子インク、炭素インク(カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン)等、種々の材料を用いることができる。なお、上述したインクのうち、水性インクや油性インク、UVインクは複数色用のプリンタ1に好適に用いられ、微細金属粒子インク、炭素インクは単色用のプリンタ1に好適に用いられる。
【0091】
また、上述した実施形態では、ベースプレート41,81をガラスにより構成した場合について説明したが、これに限られない。ベースプレート41,81は、非形成領域の表面粗さRaを、めっき被膜120が形成不可能な程度の大きさ(例えば、100Å程度)に抑制できる材料であれば、セラミックス材料等、適宜設計変更が可能である。
さらに、上述した実施形態では、アクチュエータプレート42,82が接合されたベースプレート41,81同士を接合して、二列タイプの吐出部22を構成した場合について説明したが、これに限られない。例えば、一枚のベースプレートに対して、厚さ方向の両側にアクチュエータプレートがそれぞれ配設されてなる吐出部を採用しても構わない。
【0092】
また、上述した実施形態では、第1引き出し電極71,72、及び第2引き出し電極80のランド部87をZ方向に沿って直線状に形成した場合について説明したが、これに限られない。例えば、
図21に示すように、第1引き出し電極71,72、及び第2引き出し電極80のランド部87を、後側に向かうに従いY方向の外側に向けて延在するように形成しても構わない。この場合、第1引き出し電極71,72、及び第2引き出し電極80のランド部87の具体的な形状が扇形でも構わないし、台形でも構わない。つまり、Z方向に進むに従いY方向の幅が広くなる末広がり形状であれば、どんな形状でも含まれる。
この構成によれば、各第1引き出し電極71,72、及び第2引き出し電極80のランド部87間の間隔が、後側に向かうに従い広がるので、各第1引き出し電極71,72、及び第2引き出し電極80のランド部87間での短絡を抑制し、電気的信頼性を確保できる。また、電極パターンの複雑化を抑制できる。
なお、第1引き出し電極71,72、及び第2引き出し電極80のランド部87を、後側に向かうに従いY方向の外側に向けて延在させることで、各第1引き出し電極71,72、及び第2引き出し電極80のランド部87の幅を増大させることも可能である。
【0093】
また、上述した実施形態では、隣接する第1引き出し電極71間に個別用貫通孔84を形成した場合について説明したが、これに限られない。第1引き出し電極71と個別用貫通孔84とをZ方向でずらして配置しても構わない。
さらに、各ベースプレート41,81間において、対応する個別用貫通孔84a,84b同士、及びグランド用貫通孔91a,91b同士は、少なくとも一部が連通していれば構わない。すなわち、本実施形態では、貫通孔形成工程(S12)において、他方の主面41b,81bが研削により粗面化されることで、めっき被膜120が形成可能となる。したがって、対応する個別用貫通孔84a,84b同士、及びグランド用貫通孔91a,91b同士において、少なくとも一部が連通していれば、ベースプレート41,81の他方の主面41b、81b上に形成されるめっき被膜120を通じて貫通部86,93が形成される。
【0094】
また、上述した実施形態では、貫通孔形成工程(S12)において、サンドブラスト法を用い、貫通孔84a,84b,91a,91bの形成と同時に、貫通孔84a,84b,91a,91bの内面を粗面化する構成について説明したが、これに限られない。すなわち、まず貫通孔84a,84b,91a,91bの形成(穿孔工程)と、貫通孔84a,84b,91a,91bの内面の粗面化(粗面化工程)と、を別々に行っても構わない。
【0095】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。