(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示画面に表示される前記評価結果は、前記部品の複数の箇所において算出された前記累積損傷度の最大値、または前記累積損傷度から推定される余寿命の最短値である請求項1に記載のショベル支援装置。
複数台の前記ショベルから収集された稼働情報に基づいて、管理装置によって求められた前記評価結果を、前記送受信回路を通して前記処理装置が受信し、前記処理装置は、受信した前記評価結果を、前記表示画面に表示する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のショベル支援装置。
地盤の硬さ情報、及び前記ショベルの位置情報を、前記送受信回路を通して前記処理装置が受信し、前記処理装置は、受信した前記地盤の硬さ情報及び前記ショベルの位置情報に基づいて、前記地盤の硬さの分布を前記表示画面に表示する請求項5に記載のショベル支援装置。
前記処理装置は、前記送受信回路を通して、複数台の前記ショベルから稼働情報を受信し、受信した前記稼働情報に基づいて前記評価結果を求め、求められた前記評価結果を、前記表示画面に表示する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のショベル支援装置。
前記処理装置は、さらに、複数台の前記ショベルから受信した前記稼働情報に基づいて地盤の硬さ情報及び前記ショベルの位置情報を求め、求められた前記地盤の硬さ情報及び前記ショベルの位置情報に基づいて、前記地盤の硬さの分布を前記表示画面に表示する請求項7に記載のショベル支援装置。
前記ショベルの各々の作業内容ごとの合計の作業時間情報を、前記送受信回路を通して前記処理装置が受信し、前記処理装置は、受信した前記作業時間情報に基づいて、前記ショベルごとに、前記作業内容ごとの合計の作業時間を、前記表示画面にグラフで表示する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のショベル支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、実施例によるショベル支援装置を含むシステム構成図を示す。このシステムは、管理対象の複数のショベル20、ショベル支援装置30、及び管理装置60を含む。ショベル20、ショベル支援装置30、及び管理装置60が、通信回線70を介して相互に通信を行う。
【0013】
ショベル20に、車両コントローラ21、通信装置22、GPS(全地球測位システム)受信機23、表示装置24、近距離無線通信装置25、及び複数のセンサ群26が搭載されている。センサ群26は、ショベル20の種々の稼働情報を検出する。センサ群26の検出値が車両コントローラ21に入力される。稼働情報には、例えば、油圧ポンプ圧力、冷却水温度、油圧負荷、アタッチメントの姿勢、油圧シリンダ伸縮長、旋回角、運転時間、稼働時間等が含まれる。
【0014】
車両コントローラ21は、ショベル20の機体識別情報、種々の稼働情報の検出値、及びGPS受信機23で算出された現在位置情報を、通信装置22から、通信回線70を介して管理装置60に送信する。GPS受信機23は、ショベル20の現在位置を検出する位置センサとしての役割を有する。さらに、車両コントローラ21は、ショベル20に関する種々の情報を表示装置24に表示する。近距離無線通信装置25は、通信回線70を介することなく、直接、ショベル支援装置30と通信する。
【0015】
ショベル支援装置30は、表示画面31、入力装置32、処理装置33、送受信回路34、近距離無線通信回路35、及び記憶装置36を含む。送受信回路34は、通信回線70を介して管理装置60と通信する機能を有する。近距離無線通信回路35は、直接、近隣のショベル20と通信する。記憶装置36に、処理装置33が実行するプログラム、及びショベルに関する種々の情報が記憶されている。処理装置33は、管理装置60から通信回線70を経由し、送受信回路34を通して受信したデータに基づいて、データ処理を行い、処理結果を表示画面31に表示する。ショベル支援装置30の利用者(以下、単に「利用者」という。)が、入力装置32から処理装置33にコマンドを入力する。ショベル支援装置30には、例えばタブレット端末、携帯電話端末等が用いられる。表示画面31及び入力装置32には、例えばタッチパネルが使用される。タッチパネルは、表示画面31と入力装置32とを兼ねる。
【0016】
管理装置60は、入力装置61、出力装置62、記憶装置63、処理装置64、及び通信装置65を含む。ショベル20から通信回線70を経由して送信された種々の情報が、通信装置65を介して処理装置64に入力される。記憶装置63に、処理装置64が実行するプログラム、種々の管理情報が記憶されている。処理装置64は、ショベル20から受信した機体識別情報、種々の稼働情報、現在位置情報、及び記憶装置63に記憶されている管理情報に基づいて、ショベル20の支援情報を生成する。生成された支援情報は、出力装置62に出力される。さらに、処理装置64は、機体識別情報、現在位置情報、及び支援情報を、通信装置65から通信回線70を経由して、ショベル支援装置30に送信する。
【0017】
図2に、ショベル20の側面図を示す。下部走行体80に、旋回軸受81を介して上部旋回体82が旋回可能に搭載されている。旋回モータ83が、上部旋回体82を下部走行体80に対して、時計回り、または反時計周りに旋回させる。旋回モータ83に取り付けられた旋回角センサ84が、上部旋回体82の旋回角を測定する。上部旋回体82に、ブーム85、アーム86、バケット87を含むアタッチメントが取り付けられている。ブーム85、アーム86、及びバケット87は、それぞれブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90により油圧駆動される。さらに、上部旋回体82に車両コントローラ21が搭載されている。
【0018】
ブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90に、それぞれ油圧シリンダの伸縮量を測定する変位センサ91が取り付けられている。変位センサ91で測定された伸縮量に基づいてアタッチメントの姿勢を求めることができる。本明細書において、3つの変位センサ91をまとめて、姿勢センサ91という場合がある。姿勢センサ91は、
図1に示したセンサ群26に含まれる。姿勢センサ91の測定結果が、車両コン
トローラ21に入力される。姿勢センサ91として、上部旋回体82とブーム85とのなす角度、ブーム85とアーム86とのなす角度、及びアーム86とバケット87とのなす角度を測定する角度センサを用いてもよい。
【0019】
さらに、ブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90に、それぞれ圧力センサ92が取り付けられている。圧力センサ92は、ブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90のボトム側の圧力及びロッド側の圧力を測定する。圧力センサ92により、ブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90に加わる荷重(アタッチメントに加わる荷重)を求めることができる。圧力センサ92の測定結果、及びアタッチメントの姿勢に基づいて、バケット87に加わる荷重を求めることができる。本明細書において、圧力センサ92を荷重センサ92という場合がある。荷重センサ92は、センサ群26(
図1)に含まれる。荷重センサ92の測定結果が車両コントローラ21に入力される。
【0020】
図3に、ショベル20(
図1、
図2)のブロック図を示す。
図3において、機械的動力系を二重線で表し、高圧油圧ラインを太い実線で表し、電気制御系を細い実線で表し、パイロットラインを破線で表す。
【0021】
エンジン110の駆動軸がトルク伝達機構121の入力軸に連結されている。エンジン110には、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。電動発電機111の駆動軸が、トルク伝達機構121の他の入力軸に連結されている。電動発電機111は、電動(アシスト)運転と、発電運転との双方の運転動作を行うことができる。トルク伝達機構121は、2つの入力軸と1つの出力軸とを有する。この出力軸に、メインポンプ122の駆動軸が連結されている。
【0022】
メインポンプ122に加わる負荷が大きい場合には、電動発電機111がアシスト運転を行い、電動発電機111の駆動力がトルク伝達機構121を介してメインポンプ122に伝達される。これにより、エンジン110に加わる負荷が軽減される。一方、メインポンプ122に加わる負荷が小さい場合には、エンジン110の駆動力がトルク伝達機構121を介して電動発電機111に伝達されることにより、電動発電機111が発電運転される。
【0023】
メインポンプ122は、高圧油圧ライン123を介して、コントロールバルブ124に油圧を供給する。コントロールバルブ124は、運転者からの指令により、油圧モータ109A、109B、ブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90に油圧を分配する。油圧モータ109A及び109Bは、それぞれ下部走行体80(
図2)に備えられた左右の2本のクローラを駆動する。
【0024】
ブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90の各々に、姿勢センサ91及び荷重センサ92が取り付けられている。
【0025】
電動発電機111がインバータ113Aを介して蓄電回路112に接続されている。旋回モータ83がインバータ113Bを介して蓄電回路112に接続されている。インバータ113A、113B、及び蓄電回路112は、車両コントローラ21により制御される。
【0026】
インバータ113Aは、車両コントローラ21からの指令に基づき、電動発電機111の運転制御を行う。電動発電機111のアシスト運転と発電運転との切り替えが、インバータ113Aにより行われる。
【0027】
電動発電機111がアシスト運転されている期間は、必要な電力が、蓄電回路112からインバータ113Aを通して電動発電機111に供給される。電動発電機111が発電運転されている期間は、電動発電機111によって発電された電力が、インバータ113Aを通して蓄電回路112に供給される。これにより、蓄電回路112内の蓄電装置が充電される。
【0028】
旋回モータ83は、インバータ113Bによって交流駆動され、力行動作及び回生動作の双方の運転を行うことができる。旋回モータ83の力行動作中は、蓄電回路112からインバータ113Bを介して旋回モータ83に電力が供給される。旋回モータ83が、減速機131を介して、上部旋回体82(
図2)を旋回させる。回生動作時には、上部旋回体82の回転運動が、減速機131を介して旋回モータ83に伝達されることにより、旋回モータ83が回生電力を発生する。発生した回生電力は、インバータ113Bを介して蓄電回路112に供給される。これにより、蓄電回路112内の蓄電装置が充電される。
【0029】
旋回角センサ84が、旋回モータ83の回転軸の回転方向の位置を検出する。旋回角センサ84には、例えばレゾルバが用いられる。旋回角センサ84の検出結果が、車両コントローラ21に入力される。旋回モータ83の運転前と運転後における回転軸の回転方向の位置を検出することにより、旋回角度及び旋回方向が導出される。旋回角センサ84は、センサ群26(
図1)に含まれる。
【0030】
メカニカルブレーキ133が、旋回モータ83の回転軸に連結されており、機械的な制動力を発生する。メカニカルブレーキ133の制動状態と解除状態とは、車両コントローラ21からの制御を受け、電磁的スイッチにより切り替えられる。
【0031】
パイロットポンプ125が、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットライン126を介して操作装置128に供給される。操作装置128は、レバーやペダルを含み、運転者によって操作される。操作装置128は、パイロットライン126から供給される1次側の油圧を、運転者の操作に応じて、2次側の油圧に変換する。2次側の油圧は、油圧ライン129を介してコントロールバルブ124に伝達されると共に、他の油圧ライン130を介して圧力センサ127に伝達される。
【0032】
圧力センサ127で検出された圧力の検出結果が、車両コントローラ21に入力される。これにより、車両コントローラ21は、下部走行体80、旋回モータ83、ブーム85、アーム86、及びバケット87(
図2)に対する操作の状況を検知することができる。
【0033】
図4に、ショベル20、ショベル支援装置30、及び管理装置60の間で行われる通信のシーケンスを示す。ショベル20から管理装置60に稼働情報が送信される。稼働情報には、姿勢センサ91(
図2)、荷重センサ92(
図2)、及び旋回角センサ84(
図3)の測定結果、GPS受信機23で取得された現在位置情報、機体識別番号、作業年月日、作業内容等が含まれる。
【0034】
管理装置60は、ショベル20から収集された稼働情報に基づいて、ショベル20の各部品に蓄積されている累積損傷度、及び各部品の余寿命を評価する。この評価には、現時点までに記憶装置63に蓄積されている稼働情報、または累積損傷度等が利用される。部品に蓄積されている累積損傷度及び部品の余寿命の評価方法については、後に、
図8〜
図13を参照して説明する。累積損傷度及び余寿命の評価結果は、記憶装置63に格納される。
【0035】
ショベル20が掘削作業を行っている場合には、管理装置60は、稼働情報に基づいて、ショベル20の作業対象である地盤の硬さ情報を求める。アタッチメントの姿勢、及び
荷重センサ92による検出結果と、地盤の硬さ情報との対応関係が、予め記憶装置63に記憶されている。ショベル20から収集された稼働情報と、記憶装置63に記憶されている対応関係とから、地盤の硬さ情報を求めることができる。地盤の硬さは、例えば、ランク1〜ランク4の4段階で表される。
【0036】
地面の深堀掘削、法面の高所掘削等の作業内容の相違によって、稼働情報と地盤の硬さ情報との対応関係は異なる。したがって、この対応関係は、作業内容ごとに準備されている。
【0037】
作業内容には、深堀掘削、高所掘削の他に、積込み、地面の均し、法面の均し、解体等が含まれる。ショベル20から管理装置60に送信される稼働情報に含まれる作業内容は、ショベル20の運転者によって、ショベル20の車両コントローラ21に入力される。なお、管理装置60が、アタッチメントの姿勢の時刻歴に基づいて、作業内容を推定することも可能である。管理装置60が作業内容を推定する機能を持っている場合には、運転者は、作業内容を車両コントローラ21に入力しなくてもよい。
【0038】
ショベル20の各部品が受ける損傷の程度、及び部品内における累積損傷度の分布は、作業対象の地盤の硬さや、作業内容によって異なる。地盤の硬さ、作業内容等は、ショベル20の部品の損傷に影響を及ぼす外部要因となる。地盤の硬さ、作業内容等の外部要因は、記憶装置63に格納される。
【0039】
ショベル20の部品の損傷に影響を及ぼす外部要因の一つである地盤の硬さは、ショベル20に加わる動力負荷に影響を与える。例えば、掘削対象の地盤が硬くなるほど、ショベル20に加わる動力負荷が大きくなる。地盤の硬さは、ショベル20に加わる動力負荷に影響を与える負荷要因であるとともに、ショベル20の部品の損傷に影響を及ぼす外部要因でもある。また、作業内容が異なると、ショベル20に加わる動力負荷も異なる。従って、作業内容も、ショベル20に加わる動力負荷に影響を与える負荷要因であるとともに、ショベル20の部品の損傷に影響を及ぼす外部要因でもある。
【0040】
ショベル支援装置30から管理装置60に、データ転送要求コマンドが送信される。管理装置60は、データ転送要求コマンドを受信すると、部品に蓄積されている累積損傷度または余寿命の評価結果、及び損傷に影響を及ぼしている現時点の外部要因(または、負荷要因)を、ショベル支援装置30に送信する。ショベル支援装置30は、受信した評価結果及び外部要因(または、負荷要因)を表示画面31に表示する。
【0041】
図5に、ショベル支援装置30の表示画面31に表示された画像の一例を示す。ショベル20の機体ごとに、ショベル20の機体識別番号38、累積損傷度39、及び損傷度最大箇所40が、外部要因である地盤の硬さ41及び作業内容43と関連付けて表示される。さらに、同一作業継続時間42、及び累積稼働時間44が、ショベル20の機体ごとに表示される。同一作業継続時間42は、同一の硬さの地盤に対して同一の作業内容の作業が継続して行われている時間を表す。
【0042】
累積損傷度39は、ショベル20の部品に蓄積されている累積損傷度の最大値を表しており、例えば10段階でグラフィカル表示される。機体識別番号38、損傷度最大箇所40、地盤の硬さ41、同一作業継続時間42、作業内容43、及び累積稼働時間44は、文字列で表示される。
図5に示した例では、ショベル20の1号機に蓄積されている累積損傷度が最大の箇所はブームトップボスである。1号機は高所掘削を行っており、掘削対象の地盤の硬さはランク4である。ランク4の硬さの地盤に対して高所掘削を継続している時間は5000であり、累積稼働時間は7000である。
【0043】
ショベル支援装置30に、さらに地盤の硬さの分布
図45が、図形として表示される。
図5では、ランク4〜ランク1の位置が、それぞれ最も太い実線、2番目に太い実線、細い実線、破線で示されている。さらに、地盤の硬さの分布
図45内に、ショベル20の現在位置が、アイコンで示されている。地盤の硬さの分布
図45は、ショベル20の機体ごとの位置情報、及びショベル20の各機体の作業対象である地盤の硬さに基づいて、作成される。現時点の情報のみならず、過去の情報を取り入れることにより、複数のショベル20で過去に作業が行われた箇所の地盤の硬さも、地盤の硬さの分布
図45に含めて表示することができる。表示画面31をピンチインまたはピンチアウトすることにより、分布
図45を縮小または拡大することができる。これにより、地盤の硬さの分布の詳細確認が可能である。
【0044】
ショベル20の管理者は、ショベル支援装置30に表示された情報に基づいて、ショベル20の適切な修理点検計画、及び再配置計画を立てることができる。例えば、累積損傷度の大きな機体の点検を優先的に行うといった修理点検計画を立てることが可能である。さらに、累積損傷度の大きな機体を、軟弱な地盤の場所に再配置し、累積損傷度の小さな機体を、強固な地盤の場所に再配置することが可能である。また、累積損傷度の大きな機体を、積込み作業の現場に再配置してもよい。このように、ショベル20を再配置することにより、ショベル20の修理が必要になるまでの期間を長くすることが可能になる。
【0045】
図6に、ショベル支援装置30に表示された画像の他の例を示す。
図6に示した例では、
図5に表示された累積損傷度39に代えて、余寿命48が表示されている。表示された余寿命48は、ショベル20の部品の余寿命のうち最も短い余寿命(余寿命の最短値)を表している。
図5に表示された損傷度最大箇所40に代えて、余寿命最短箇所49が表示される。この例においても、機体ごとの余寿命に基づいて、ショベル20の適切な修理点検計画や再配置計画を立てることが可能である。
【0046】
図7に、ショベル支援装置30に表示された画像のさらに他の例を示す。
図5及び
図6に示した例では、ショベル20の損傷に影響を与える外部要因として、地盤の硬さに着目した。
図7に示した例では、ショベル20の損傷に影響を与える外部要因として、作業内容に着目する。
【0047】
ショベル20の機体ごとに、ショベル20の機体識別番号38、累積損傷度39、及び損傷度最大箇所40が、外部要因である作業内容43と関連付けて表示される。さらに、作業地形46、同一作業継続時間47、及び累積稼働時間44が、ショベル20の機体ごとに表示される。作業内容43が掘削または均しの場合には、作業地形46として、法面または平地の区分が表示される。
図7に示した例では、1号機の作業内容が「解体」であり、損傷度最大箇所がブームトップボスであることを示している。
【0048】
作業地形46に関する情報は、ショベル20の運転者または保守要員によって、ショベル20の車両コントローラ21に入力される。なお、管理装置60が、アタッチメントの姿勢の時刻歴、及びアタッチメントに加わる荷重に基づいて、作業内容を推定することも可能である。管理装置60が作業内容を推定する機能を持っている場合には、運転者または保守要員は、車両コントローラ21に作業地形に関する情報を入力しなくてもよい。
【0049】
図5に示された表示された地盤の硬さの分布
図45に代えて、作業内容履歴50が表示される。作業内容履歴50は、ショベル20の機体ごとに表示され、過去に行われた作業内容ごとの合計の作業時間が積み上げ棒グラフで示される。作業内容履歴50を表示するために必要な情報、すなわちショベル20の各々の作業内容ごとの合計の作業時間情報は、処理装置33が送受信回路34を通して、管理装置60から受信する。
【0050】
図7に示した例においても、ショベル管理者は、累積損傷度39の大小に基づいて、ショベル20の適切な修理点検計画、再配置計画を立てることができる。
【0051】
次に、
図8〜
図13を参照して、累積損傷度及び余寿命の求め方について説明する。
【0052】
図8に、管理装置60(
図1)で実行される処理のフローチャートを示す。まず、ステップS1において、処理装置64が、ショベル20(
図1)によって作業中に繰り返される一連の動作の少なくとも1周期分の測定値を、アタッチメントの姿勢センサ91(
図2)、アタッチメントの荷重センサ92(
図2)、及び旋回角センサ84(
図3)から取得する。これらの測定値と共に、作業種別、作業年月日、機体識別番号等の情報が取得される。
【0053】
旋回角センサ84(
図2)から、上部旋回体82(
図2)の旋回角が取得される。アタッチメントの姿勢センサ91及び旋回角センサ84の検出値によって、ショベル20の姿勢が特定される。ショベル20の一連の動作のうち、アタッチメントの姿勢センサ91、アタッチメントの荷重センサ92、及び旋回角センサ84で測定値を取得する時間の範囲は、管理装置60の管理オペレータが設定してもよいし、ショベルの運転者または保守要員が設定してもよい。
【0054】
図9A〜
図9Dに、ショベル20で繰り返される一連の動作の一例を示す。
図9A〜
図9Dは、それぞれ一連の動作の1周期内の各工程、具体的には掘削開始、持ち上げ旋回、排土、戻り旋回の各工程中の任意の時点におけるショベル20の姿勢を概略的に示す。ショベル20の運転時には、例えば、一連の動作が繰り返されることにより、
図9A〜
図9Dに示した姿勢が順番に出現する。
【0055】
図10A〜
図10Cに、それぞれショベル20の動作中におけるブームシリンダ内の油圧、アームの先端の高さ、及び旋回角度の時間波形(時間変化)の一例を示す。
図10Aに示した実線L1及びL2は、それぞれブームシリンダ内のロッド側の油圧及びボトム側の油圧を示す。
図10A〜
図10Cにおいて、時刻t1は、
図9Aに示した掘削開始に対応する。時刻t1からt2までの期間に、掘削が行われる。時刻t2からt3までの期間に、
図9Bに示したブームの持ち上げ及び旋回の動作が行われる。時刻t3からt4までの期間に、
図9Cに示した排土及び戻り旋回の動作が行われる。一連の動作の繰返しに対応して、時刻t1からt4までの波形と近似する波形が周期的に現れる。
【0056】
ステップS2(
図8)において、一連の動作の1周期内で、解析すべき複数の時刻(以下、「解析時刻」という。)を抽出する。一例として、
図10Aに示したように、1周期内から、時刻t1〜t4の4個の解析時刻が抽出される。例えば、シリンダ内の油圧、旋回角度の時間波形のピーク、変曲点等の特徴的な時刻を、解析時刻として抽出する。抽出する解析時刻の個数を多くすると、解析精度が向上するが、解析に要する計算時間は長くなる。処理装置64(
図1)が、
図10A〜
図10Cに示した時間波形に基づいて解析時刻を自動的に抽出するようにしてもよいし、オペレータが時間波形を観察して解析時刻を決定し、入力装置61(
図1)から解析時刻を入力するようにしてもよい。
【0057】
ステップS3(
図8)において、解析時刻の各々において、解析モデルを用い、ブーム、アーム等の部品の各々に加わっている応力の分布を算出する。応力の分布は、解析時刻ごとに決定されているショベルの特定の姿勢に基づいて計算される。すなわち、繰り返される一連の動作の1周期内に現れる種々のショベルの姿勢ごとに、ショベルの部品に加わっている荷重に基づいて、応力の分布を算出する。応力の分布の算出には、例えば有限要素法等の数値解析手法を適用することができる。このとき、ショベルの姿勢及びショベルの部品に加わる荷重が解析条件として用いられる。ここで、荷重はベクトルで表される。
荷重の大きさ及び向きは、油圧シリンダ内の油圧、油圧シリンダの軸方向(アタッチメントの姿勢)、及び旋回角加速度により求まる。旋回角加速度は、旋回角を2回微分することにより算出される。
【0058】
図11に、ある解析時刻においてブームに加わる応力の分布の算出結果を示す。応力は、解析モデルを構成する要素及び節点ごとに算出される。
図11において、応力が相対的に大きな箇所が、相対的に濃い色で示されている。
図11に示したような応力分布の解析結果が、解析時刻ごとに、かつ部品ごとに算出される。
【0059】
図12に、ショベルの部品の1つの評価点Ep(
図11)に加わる応力の時間波形の一例を示す。解析時刻t1〜t4の各々において応力が算出されている。
図12に示した応力の時間波形は、ブーム、アーム、バケット等の部品ごとに、複数の評価点(有限要素法を用いた場合には、複数の要素及び節点)について求められる。
【0060】
ステップS4(
図8)において、各部品の評価点ごとに、1周期の動作期間中に蓄積される損傷度(以下、「単周期損傷度」という。)を算出する。これにより、部品内における単周期損傷度の分布が得られる。単周期損傷度は、応力の時間変化から抽出される応力の極値に基づいて算出される。以下、単周期損傷度を算出する方法の一例について説明する。まず、
図12に示した応力の時間波形の極大値と極小値とを検出する。極大値と極小値とに基づいて、応力が変動する範囲である応力範囲Δσを求めるとともに、応力範囲Δσごとの出現頻度を求める。応力範囲Δσiの出現頻度をniで表す。
【0061】
図13に、S−N線図の一例を示す。例えば、
図13に示したS−N線図では、応力範囲Δσiの疲労寿命(破断繰返し回数)がNi回である。累積疲労損傷則(別名、線形被害則)により、単周期損傷度Dは、以下の式で表される。
【数1】
【0062】
例えば、部品の保証寿命をTg(時間)とし、一連の動作の1周期あたりの平均時間をTp(時間)とすると、保証される繰り返し回数は、Tg/Tpで表される。単周期損傷度の想定値は、この逆数、すなわちTp/Tgで表される。単周期損傷度Dがこの想定値に一致する条件でショベル20を使用している場合、部品の保証寿命Tgを保証することができる。
【0063】
ステップS5(
図8)において、部品の累積損傷度及び余寿命の分布を算出する。以下、累積損傷度及び余寿命の算出方法について説明する。管理装置60(
図1)は、管理対象のショベル20の機体ごと、及び部品ごとに、機体の稼働開始時点から現時点までの単周期損傷度の総和(累積損傷度)を算出する。今回のデータ収集の対象となる動作を開始するまでに蓄積された累積損傷度は、記憶装置63(
図1)に記憶されている。ショベル20の部品の、ある箇所の累積損傷度が1になると、その箇所で破断が生じる可能性が高くなる。1から累積損傷度を減算することにより、余寿命が求まる。
【0064】
ステップS6(
図8)において、ステップS5で求められた累積損傷度及び余寿命が、機体識別番号等の情報と関連付けられて、記憶装置63(
図1)に記憶される。
【0065】
管理装置60は、ショベル支援装置30(
図1)からのコマンドに応じて、要求された
データを記憶装置63から読み出し、ショベル支援装置30に送信する。
【0066】
図14に、他の実施例によるショベル支援装置30と、ショベル20及び管理装置60との間で行われる通信のシーケンスを示す。以下、
図1〜
図13に示した実施例との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0067】
ショベル20の近距離無線通信装置25(
図1)、及びショベル支援装置30の近距離無線通信回路35(
図1)を用いて、ショベル20からショベル支援装置30に稼働情報が送信される。ショベル支援装置30は、管理装置60にデータ転送要求コマンドを送信する。管理装置60は、データ転送要求コマンドを受信すると、要求のあったショベル20の現時点までの累積損傷度を記憶装置63から読み出し、ショベル支援装置30に送信する。
【0068】
ショベル支援装置30は、ショベル20から受信した稼働情報に基づいて、単周期損傷度の合計を求める。管理装置60から受信した過去の累積損傷度に、ショベル支援装置30で新たに求められた単周期損傷度の合計を加えることにより、累積損傷度を新しい値に更新する。更新された累積損傷度に基づいて余寿命を求める。更新された累積損傷度は、管理装置60に送信される。管理装置60は、累積損傷度のデータを、更新された値に書き換える。
【0069】
さらに、ショベル支援装置30は、ショベル20から受信した稼働情報に基づいて、地盤の硬さ、作業内容等の外部要因を求める。求められた累積損傷度、余寿命、外部要因等を、表示画面31(
図1)に表示する。表示画面31に表示される情報は、
図5〜
図7に示したいずれかの情報と同一である。
【0070】
図15に、さらに他の実施例によるショベル支援装置30と、ショベル20及び管理装置60との間で行われる通信のシーケンスを示す。以下、
図14に示した実施例との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0071】
図15に示した例では、ショベル支援装置30が、現時点までの累積損傷度に関する情報を有している。このため、ショベル支援装置30は、管理装置60(
図14)に問い合わせることなく、新たな累積損傷度の計算、余寿命の計算を行うことができる。
【0072】
図14及び
図15に示した実施例においても、
図1〜
図13に示した実施例と同様に、ショベル20の適切な修理点検計画、再配置計画を立てることができる。
【0073】
上記実施例では、ショベル支援装置の支援対象として、
図3に示したように、上部旋回体82を電動の旋回モータ83で旋回させるハイブリッド型ショベルを例示したが、油圧ショベルを支援対象とすることも可能である。
【0074】
図16に、支援対象となる油圧ショベルのブロック図を示す。以下、
図3に示したハイブリッド型ショベルとの相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0075】
油圧ショベルでは、
図3に示した電動発電機111、インバータ113A、113B、蓄電回路112が搭載されない。なお、エンジン110の起動用、及び種々の電子装置の電源用のバッテリは搭載されている。電動の旋回モータ83(
図3)に代えて、旋回用油圧モータ83Aが搭載される。旋回用油圧モータ83Aは、メインポンプ122から供給される作動油により駆動される。
図3に示したハイブリッド型ショベルと同様に、ブームシリンダ88、アームシリンダ89、及びバケットシリンダ90の各々に、姿勢センサ91及び荷重センサ92が取り付けられている。
【0076】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。