(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、薬剤散布ボートを用いて水田に除草剤を散布する方法が用いられている(特許文献1や特許文献2など)。
【0003】
このような薬剤散布ボートは、
図8に示すように、エンジンや空中プロペラなどを備えた駆動部101と、薬剤を散布させる薬剤散布部102などを備えてなるものであって、プロペラの後方に設けられた空中ラダーを操作しながら、最適な量の薬剤を水田に散布できるようにしたものである。このような薬剤散布ボート100を用いれば、苗の植え付けられた水田に直接薬剤を散布させることができるため、比較的低コストに除草剤を散布して藻や雑草などの発生を防止させることができるようになる。
【0004】
ところで、このような薬剤散布ボートから薬剤を散布させる場合、船底から薬剤を散布させる方法(特許文献1)や、船尾側まで延出させたホースから薬剤を垂れ流す方法(特許文献2)などが用いられており、その際、タンク近傍に設けられたボールバルブをサーボモータで回転させて、薬剤の排出量を調整するようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の薬剤の排出量の調整では、次のような問題があった。
【0007】
すなわち、従来のように、ボールバルブで薬剤の散布量を調整する場合、直接ボールバルブの開度を視認することができず、どの程度薬剤を散布することができるのかを感覚的に把握することができなかった。このため、散布量が少なすぎた場合、再度薬剤を散布しなければならなかったり、あるいは、逆に散布量が多すぎた場合は、薬害を引き起こしてしまうなどの問題があった。
【0008】
さらに、船体後方のホースから薬剤を垂れ流す方法(特許文献2)では、船体が畦近傍にさしかかった場合、薬剤が畦に吹き付けられてしまい、無駄に薬剤を散布してしまうなどの問題があった。これに対して、船底から薬剤を散布する方法(特許文献1)では上述のような問題は生じないが、船底から薬剤を散布させる場合は、水田の土泥が排出口に詰まる可能性が高くなり、確実に薬剤を散布できているのかを把握するのが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、水田に薬剤を散布させる際に、最適な量の薬剤を散布させることができる薬剤散布ボートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、
除草剤を収容するタンクと、当該タンクから
除草剤を排出させるチューブとを備えてなり、水田を走行させながらタンクから
除草剤を排出させて水田に散布させるようにした薬剤散布ボートにおいて、前記タンクから船尾側まで延出させたチューブと、当該チューブの後端側に設けられ、
除草剤の散布量を調整する調整部と、を備え、当該調整部を
船尾に設けられた屈曲フレームに設け、当該屈曲フレームに設けられた調整部の接続部にチューブを接続し、当該調整部から排出される
除草剤の排出方向を、船尾から斜め下方の水面方向に向けるようにしたものである。
【0011】
また、このような発明において、さらに、可撓性を有するチューブを挟み込んで液剤の導通を遮断させる遮断部を設けるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば
、船尾に設けられた調整部を視認しながら、適正な量の
除草剤を水田に散布させることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態における薬剤散布ボート1について図面を参照して説明する。
【0015】
この実施の形態における薬剤散布ボート1は、水田を走行しながら除草剤を散布させるようにしたものであって、
図1に示すように、水深の浅い場所を走行できるようにした船体2と、その船体2上で後方に風を吹き出させるようにした駆動部3と、液体状の薬剤を散布させるための薬剤散布部4とを備えて構成されている。そして、特徴的に、薬剤散布部4として、薬剤散布部4を構成するタンク41から船尾22までチューブ42を延出させ、その後端部分に、
図5に示すような径の異なる複数の孔部57を有する調整部43を設け、これらの孔部57を適宜選択することで、排出量を後方から視認しながら薬剤を散布できるようにしたものである。以下、本実施の形態における薬剤散布ボート1の構成について詳細に説明する。
【0016】
まず、船体2は、厚み1〜5mm程度のポリエチレンなどの樹脂によって構成されるものであって、内部を中空状にして軽量化を図り、これによって水深の浅い部分でも走行できるようにしている。この船体2の上面部分のコックピット21には、エンジン31やプロペラ32や操舵翼33などを備えた駆動部3が設けられ、また、その前方に薬剤を収容するタンク41が取り付けられている。一方、この船体2の底面側には、
図3に示すように、縦長方向に沿った筋状の凹部23が形成されており、これによって水面を滑走させる際の直進安定性を確保できるようにしている。
【0017】
この船体2のコックピット21に設けられる駆動部3は、エンジン31によってプロペラ32を回転させて風を後方に吹き出させるようにしたものであって、ここでは、エンジン31として、ガソリンで駆動するものが使用される。そして、そのエンジン31から排出される排ガスをタンク41の内部空間まで導き、内圧を高められるようにしている。また、このエンジン31の後方に取り付けられるプロペラ32は、複数の羽根を回転させることによって空気を後方に吹き出し、推進力を得られるようにしており、その後方に設けられた操舵翼33によって操舵できるようになっている。これらのエンジン31や操舵翼33などは、操舵翼33の上方に設けられたコントローラー7によって制御され、ラジコンで操作される。
【0018】
船体2に取り付けられる薬剤散布部4は、液体状の除草剤を収容するタンク41や、そのタンク41から延出されるチューブ42(
図4参照)、および、このチューブ42の後端部分に設けられる調整部43などによって構成されている。このタンク41には、例えば、フロアブルなどのように粘性の高い除草剤が収容される。ところで、このように粘性の高い薬剤を収容すると、チューブ42から薬剤を排出させる際に、粘性によって内部が詰まってしまう可能性がある。そこで、この実施の形態では、
図1や
図2に示すように、エンジン31から排出された排ガスをタンク41の内部まで導き、その排圧によって強制的に薬剤を排出させるようにしている。
【0019】
このような構成のもと、薬剤の散布量を調整するための調整部43は、次のように構成されている。
【0020】
この調整部43は、
図4や
図5に示すように、チューブ42の後端側に取り付けられるものであって、薬剤の散布量を後方(
図3参照)から視認できるように、孔径の異なる複数の孔部57を設けて構成されている。そして、これらの孔部57のいずれかを選択することで適量の薬剤を散布できるようにしている。より具体的には、この調整部43は、
図2や
図3に示すように、操舵翼33やエンジン31などを固定する左右の縦長方向のベースフレーム24に対して、これらを跨るようにブリッジフレーム25を設け、そのブリッジフレーム25の中央に屈曲フレーム26を設けて取り付けられるようになっている。このとき、調整部43の取り付け角度としては、屈曲フレーム26によって薬剤の排出方向が水面方向に向かうように、例えば、水面とのなす角度が30度〜60度の範囲となるように設定される。
【0021】
このように屈曲フレーム26に固定された調整部43の前方側には、チューブ42を接続するための接続部51が突出して設けられ(
図4参照)、この接続部51にチューブ42を接続して締め具で締め込むことによって薬剤を漏れないようにしている。一方、この接続部51の後方側には、円形状をなす本体部52が設けられている。この本体部52には、
図5に示すように、接続部51から伸びる中空状の導通路53が縦長方向に形成されており、その導通路53に沿って薬剤を排出させるようにしている。この導通路53の排出口の外周部分には、径を大きくした凹部54が形成されており、この凹部54にOリング55を嵌め込むことで、後述するダイヤル部56と密着させて薬剤の漏れを防止できるようにしている。
【0022】
一方、ダイヤル部56は、
図5に示すように、この本体部52に設けられた軸部56cを中心に回転できるように設けられており、径の小さい孔部57から径の大きな孔部57までを同心円状に連続して配置している。これらの孔部57は、本体部52の導通路53に対応した位置まで回転するように設けられており、外周部分に等間隔に設けられた凹部58に指を掛けてダイヤルすることで、任意の孔径を選択できるようにしている。ところで、この孔部57を選択する際、正確に本体部52の導出部と位置合わせをする必要があり、しかも、走行中の振動によって孔部57の位置がズレないようにしておく必要がある。そのため、ここでは固定部59を用いて孔部57の位置を固定できるようにしている。
【0023】
この固定部59としては、
図5に示すように、同心円状に配置された孔部57の内側に同心円状にボール受け用の孔59bを設けておき、これに対応して、本体部52にバネで押圧可能なボールベアリング59aを取り付けて位置合わせできるようにしている。そして、ダイヤル部56を回転させる際には、外周部に設けられた凹部58に指を掛けてダイヤルすることにより、ボールベアリング59aをバネ圧に抗してボール受け用の孔59bから退避させ、次の孔部57が導通路53にきた場合に、ボール受け用の孔59bにボールベアリング59aを嵌合させるようにしている。
【0024】
また、この固定部59の前方側には、
図4に示すように、薬剤の排出を停止させるための遮断部6が設けられている。
【0025】
この遮断部6は、可撓性を有するチューブ42を上下から挟み込むことで、チューブ42を遮断させるようにしたもので、
図3や
図4に示すように、ブリッジフレーム25に、左右方向に沿ったスリット61を形成しておき、そのスリット61で、上下方向にスライド可能な挟み込み板63を取り付けるようにしている。この挟み込み板63におけるブリッジフレーム25の下側部分には、チューブ42を内側に通すような導通部62が形成されており、この挟み込み板63を上方に紐で引っ張り上げることによって(
図3参照)、導通部62の隙間を小さくして、ブリッジフレーム25とでチューブ42を挟み込むようにする。すると、そこでチューブ42が遮断されて、薬剤の排出が停止される。この挟み込み板63の駆動は、ラジコンによって操作され、操舵翼33の上方に設けられたコントローラー7に設けられたソレノイドで紐を引っ張りあげることで、挟み込み板63を上下させられるようにしている。
【0026】
なお、この本体部52の後方に設けられたダイヤル部56については、
図5では、径の小さな孔部57から径の大きな孔部57までを間欠的に設けるようにしているが、
図6に示すような構造のものを採用することもできる。
【0027】
この
図6に示すダイヤル部56aは、本体部52の導通路53を塞ぐ無孔部57aを設けるとともに、径の小さな孔部57から径の大きな孔部57までを同心円状に設けるようにしたものである。そして、使用開始前や使用終了後に、この本体部52の導通路53に無孔部57aを位置させてチューブ42の後端部を塞ぎ、そこから薬剤がこぼれないようにするとともに、外部からの空気の流入を防止する。このように空気の流入を防止すると、チューブ42内で薬剤が固化することを防止することができ、可能な限りチューブ42の詰まりを防止することができるというメリットがある。
【0028】
次に、このように構成された薬剤散布ボート1の使用方法について説明する。
【0029】
まず、苗の植え付けられた水田に除草剤を散布する場合、あらかじめ遮断部6を用いてチューブ42を遮断させておき、その状態でフロアブルなどの除草剤をタンク41内に入れる。また、これとともに、船尾22に設けられた調整部43のダイヤル部56を回して最適な孔径の孔部57を選択しておく。このとき、ダイヤル部56を回転させて孔部57と導通路53とを一致させると、本体部52のボールベアリング59aがボール受け用の孔59bに嵌合した状態で固定され、それ以外の位置では、ボールベアリング59aがバネ圧に抗して退避するようになる。このとき、ダイヤル部56の孔部57は、船尾22後方から視認することができるため、どれくらいの量の薬剤を散布するのかを把握することができるようになる。また、このように孔部57を選択する際には、遮断部6でチューブ42が遮断されているため、薬剤が排出されることがない。
【0030】
このように孔部57を選択した状態で船体2を水田に浮かべ、ラジコン操作によって遮断部6の挟み込み板63を下方に降ろす。すると、ブリッジフレーム25との間に挟まれていたチューブ42が開放され、薬剤がチューブ42を通って排出される。そして、このように薬剤を排出できるようにした状態でエンジン31を駆動させると、エンジン31からの排ガスがタンク41内に流入され、タンク41内の圧力が高くなって強制的に薬剤がチューブ42の後方へと押し出される。
【0031】
そして、このエンジン31の駆動によって船体2を水田上に滑走させ、薬剤を水田上に散布させる。このとき、チューブ42から排出された薬剤については、屈曲フレーム26によって下方に向けて排出されるため、特に、畦近くを走行する場合であっても、畦に薬剤を散布させるようなことがなくなる。
【0032】
そして、順次船体2を旋回させることによって水田全体に薬剤を散布させた後、薬剤の散布を停止させる場合は、ラジコン操作によって遮断部6の挟み込み板63を上方に持ち上げ、ブリッジフレーム25との間でチューブ42を挟み込む。すると、薬剤の排出が停止されることになり、タンク41と遮断部6との間の薬剤については、空気に触れることなくチューブ42内での固化を防止することができる。そして、船体2を操作者の方まで走行させて、船体2を持ち上げ、倉庫への運搬して洗浄などを行う。
【0033】
このように上記実施の形態によれば、
除草剤を収容するタンク41と、当該タンク41から
除草剤を排出させるチューブ42とを備えてなり、水田を走行させながらタンク41から
除草剤を排出させて水田に散布させるようにした薬剤散布ボート1において、前記タンク41から船尾22まで延出させたチューブ42と、当該チューブ42の後端側に設けられ、
除草剤の散布量を調整する調整部43とを備え、当該調整部43を
船尾22に設けられた屈曲フレーム26に設け、当該屈曲フレーム26に設けられた調整部43の接続部51にチューブ42を接続し、当該調整部43から排出される除草剤の排出方向を、船尾22から斜め下方の水面方向に向けるようにしたので、後端側の調整部43の孔部57を視認しながら、適正な量の薬剤を水田に散布させることができるようになる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0035】
例えば、上記実施の形態では、調整部43としてダイヤル部56を回転させることで孔部57を選択できるようにしたが、
図7に示すように、孔径の異なる複数の孔部57を直線状に設けておき、この孔部57を左右方向にスライドさせることで、孔部57を選択させるようにしてもよい。なお、この場合においても、孔部57と導通路53とを一致させておく必要があるため、同様の固定部59を設けて振動などで位置ずれなどを起こさないようにしておくのが好ましい。なお、
図7において、
図5などと同様の機能を有するものについては同じ符号を付すものとする。
【0036】
また、上記実施の形態では、調整部43のダイヤル部56を手で回転させるようにしたが、モーターでダイヤル部56を回転させるようにしてもよい。このようなモーターを駆動させる場合、同様に、ラジコン操作によってダイヤル部56を回転させ、例えば、藻や雑草の多い場所では径の大きな孔部57から薬剤を散布させるようにするとよい。
【0037】
さらに、このようにモーターで調整部43を調整する場合、
図6に示すように、使用前後は無孔部57aを導通路53に位置させるようにしておき、これによって薬剤の排出を遮断するようにしてもよい
。