(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クリップ部材は、前記軸部材を挟んで前記先端部とは反対側の後端部に押圧部を具備し、前記押圧部を押圧することにより、前記付勢手段による付勢力に抗しつつ前記軸部材を支点として前記クリップ部材を回動させ前記先端部を前記シールドフレームから離間可能に構成されていること
を特徴とする請求項3に記載の顔面保護具用フレーム。
前記クリップ部材の後端部に隣接して、前記シールドフレームから前記クリップ部材の前記後端部までの高さ(H2)よりも大きい高さ(H1)を有するガード部が設けられていること
を特徴とする請求項3〜6の何れか一項に記載の顔面保護具用フレーム。
前記シールド部材の左右両端側のそれぞれに貫通孔と切り欠きとが設けられており、前記シールド部材を前記顔面保護具用フレームに装着した状態において、前記顔面保護具用フレームのシールドフレームの両端側に設けられた保持部が前記切り欠きに挟み込まれ、前記保持部の先端部に設けられた係止爪によって前記貫通孔が係止されること
を特徴とする請求項10に記載の顔面保護具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のカチューシャ式ゴーグルは、シールド部が留具によって保持部に固定された構成となっており、使用後はゴーグルごと廃棄しなければならないため使い捨てによりコストや廃棄物の量が増大する、また、再使用するにしても感染性飛沫や薬液等が付着したシールド部の高度なクリーニング処理が必須となる、という問題があった。
【0005】
また、特許文献2のカチューシャ式ゴーグルは、シールド部を交換できる構成となっているが、シールド部の装着に際して、保持部の各突起をシールドの各穴に挿入した上でその突起を更に留具によってシールドに固定するという手順を踏まなければならず、取り付けに手間がかかるため緊急時の使用に不向きである、という問題があった。また、シールド部を脱離させる際においても、留具を外しただけでは突起に保持されたシールド部を脱離させにくいため廃棄に際して感染性飛沫や薬液等が付着したシールド部を手で摘ままなければならない、という問題もあった。このような問題は、医療及び介護の分野において使用される顔面保護具に限定されず、他の分野において使用される顔面保護具においても同様に存在する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、シールド部材のみの交換で済み、シールド部材の着脱が容易であって、しかも装着したシールド部材を安定的に保持できる顔面保護具及び顔面保護具用フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、頭部に装着される本体フレームと、前記本体フレームの外側に配置され、装着者の顔面の全部又は一部を保護するシールド部材を保持する保持部が両端側に設けられたシールドフレームと、を具備し、前記保持部は、前記シールドフレームに対向する領域に設けられ、前記シールド部材に形成された貫通孔が係止される係止爪と、前記シールド部材の貫通孔の係止時において前記係止爪を前記シールドフレーム側に付勢する付勢手段と、を具備
し、前記係止爪の前記シールドフレームに対向する面は、前記シールド部材が挿入される側に向かって高さが漸小するテーパー形状を有していることを特徴とする顔面保護具用フレームにある。
また、上記課題を解決する本発明の他の態様は、頭部に装着される本体フレームと、前記本体フレームの外側に配置され、装着者の顔面の全部又は一部を保護するシールド部材を保持する保持部が両端側に設けられたシールドフレームと、を具備し、前記保持部は、前記シールドフレームに対向する領域に設けられ、前記シールド部材に形成された貫通孔が係止される係止爪と、前記シールド部材の貫通孔の係止時において前記係止爪を前記シールドフレーム側に付勢する付勢手段と、を具備し、前記シールドフレームにおける前記保持部の前記係止爪に対向する領域に、前記係止爪が入り込む凹部が設けられていることを特徴とする顔面保護具用フレームにある。
【0008】
かかる態様によれば、シールド部材の貫通孔への係止爪の係止や、その係止の解除によって、シールド部材を容易に着脱できるようになり、装着に要する手間や時間の短縮を図ることができる。また、係止の解除によってシールド部材を落下させて手で摘むことなく素早くそのまま廃棄できる。しかも、上記の係止爪によってシールド部材に形成された貫通孔を係止するので、シールドフレーム両端側の計2点であってもシールド部材を安定的に保持できる上、装着したシールド部材に歪みが生じることも防止できる。
また、前記係止爪の前記シールドフレームに対向する面は、前記シールド部材が挿入される側に向かって高さが漸小するテーパー形状を有している態様によれば、シールド部材の装着に際して、例えば、クリップ部材の先端部の係止爪とシールドフレームとの間にシールド部材を滑り込ませ、クリップ部材を閉じるような付勢力に抗してシールド部材を挟み込むことができる。つまり、クリップ部材の後端部に押圧力を付与することなく、係止爪とシールドフレームとの間にシールド部材を挟み込むことができる。そして、挟み込んだシールド部材を適宜移動させて貫通孔と係止爪との位置を合わせることで、クリップ部材を閉じるような付勢力を利用して自動的に貫通孔を係止できる。また、係止爪のシールド部材を係止する係止面の高さが確保される分、不測の外力によってシールド部材が脱離しにくくもなる。
また、前記シールドフレームにおける前記保持部の前記係止爪に対向する領域に、前記係止爪が入り込む凹部が設けられている態様によれば、例えば、シールド部材を装着したとき、先端部を閉じるように付勢されたクリップ部材の係止爪が、シールド部材の貫通孔を係止するとともにシールドフレームの凹部内に収まるようになる。このため、シールド部材をより安定的に保持できる上、凹部から係止爪が抜け出るようにクリップ部材の後端部に所定の押圧力が付与された場合に限り、シールド部材を脱離できるようになる。よって、不測の外力によってシールド部材がズレたり、シールド部材が脱離したりすることを防止できる。
【0009】
ここで、前記保持部は、前記シールドフレームの延在方向とは交差する方向に設けられた軸部材によって前記シールドフレームの外側に回動自在に支持されたクリップ部材を具備し、前記付勢手段は、前記軸部材を支点として前記クリップ部材の先端部を閉じるように付勢しており、前記係止爪は、前記クリップ部材の前記先端部における前記シールドフレームに対向する領域に形成されていることを特徴とする顔面保護具用フレームにある。これによれば、クリップ部材の先端部を閉じるような付勢力に抗することで、軸部材を支点としてクリップ部材を回動させて係止爪をシールドフレームから離間させることができる、いわゆるバインダークリップ機構を実現できる。かかる機構により、シールド部材の着脱が容易になるため、装着に要する手間や時間の短縮を図ることができ、また、クリップ部材の後端部の押圧によりシールド部材を落下させて手で摘むことなく素早くそのまま廃棄できる。しかも、クリップ部材の係止爪によってシールド部材に形成された貫通孔を係止するので、シールドフレーム両端側の計2点であってもシールド部材を安定的に保持できる上、装着したシールド部材に歪みが生じることも防止できる。
【0012】
また、前記クリップ部材は、前記軸部材を挟んで前記先端部とは反対側の後端部に押圧部を具備し、前記押圧部を押圧することにより、前記付勢手段による付勢力に抗しつつ前記軸部材を支点として前記クリップ部材を回動させ前記先端部を前記シールドフレームから離間可能に構成されていることが好ましい。これによれば、クリップ部材を閉じるような付勢力に抗するようにクリップ部材の後端部を押圧することで、クリップ部材を回動させて係止爪が形成された先端部を開放できるようになる。
【0013】
また、前記軸部材から前記クリップ部材の前記先端部の先端までの距離(L1)より、前記軸部材から前記クリップ部材の前記後端部の後端までの距離(L2)のほうが短いことが好ましい。これによれば、てこの原理により、クリップ部材の先端部を開放させる回動距離を得るために必要なクリップ部材の後端部への押圧力が、過度に小さくなることを防止できる。このため、不測の外力によってシールド部材がズレたり、シールド部材が脱離したりすることを更に防止できる。
【0014】
また、前記シールドフレームには、前記クリップ部材を挟むように外側方向に立ち上がる壁部が形成されており、前記軸部材は、前記壁部に軸支されていることが好ましい。これによれば、シールドフレームにクリップ部材を安定的に軸支させることができ、シールド部材の着脱が容易であって装着したシールド部材を安定的に保持できる上、構造的強度の向上が図られた顔面保護具用フレームを提供できる。また、シールド部材として、壁部に対応する位置に所定の切り欠きが形成されたものを用いれば、壁部を切り欠きに沿わせてガイドさせ、更に容易にシールド部材を装着できるようになり、しかも、切り欠きに対して壁部がストッパーとなってシールド部材の回動を規制できるため、シールド部材を極めて安定的に保持できる。
【0015】
また、前記クリップ部材の後端部に隣接して、前記シールドフレームから前記クリップ部材の前記後端部までの高さ(H2)よりも大きい高さ(H1)を有するガード部が設けられていることが好ましい。これによれば、クリップ部材の後端部に不測の外力が付与されることを防止できる。よって、所定の押圧力が意図して付与された場合に限り、シールド部材を脱離でき、シールド部材が不測に外れることを確実に防止できる。
【0016】
また、前記付勢手段は、前記クリップ部材の後端部から一体的に延設された板バネ部であることが好ましい。これによれば、付勢手段を簡易な構成で容易に実現でき、上記の顔面保護具用フレームを容易に提供できる。
【0017】
また、前記シールドフレームは前記本体フレームに着脱可能であることが好ましい。これによれば、シールド部材の着脱が容易であって装着したシールド部材を安定的に保持できる上、各フレームの修理交換やメンテナンスが容易となる顔面保護具用フレームを提供できる。
【0018】
上記課題を解決する本発明の他の態様は、上記の何れかに記載の顔面保護具用フレームと、前記顔面保護具用フレームに着脱可能であり、装着者の顔面の全部又は一部を保護するシールド部材と、を具備することを特徴とする顔面保護具にある。かかる態様によれば、上記の何れかに記載の顔面保護具用フレームを具備するため、シールド部材のみの交換で済み、シールド部材の着脱が容易であって、しかも装着したシールド部材を安定的に保持できる顔面保護具を提供できる。
【0019】
ここで、前記シールド部材の左右両端側のそれぞれに貫通孔と切り欠きとが設けられており、前記シールド部材を前記顔面保護具用フレームに装着した状態において、前記顔面保護具用フレームのシールドフレームの両端側に設けられた保持部が前記切り欠きに挟み込まれ、前記保持部の先端部に設けられた係止爪によって前記貫通孔が係止されることが好ましい。これによれば、切り欠きに対して保持部がストッパーとなってシールド部材の回動を規制できるため、シールド部材を極めて安定的に保持できる。また、シールド部材を装着する際には、保持部を切り欠きに沿わせてガイドさせ貫通孔と係止爪との位置合わせを行うことができるので、シールド部材の装着が極めて容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の顔面保護具及び顔面保護具用フレームによれば、シールド部材のみの交換で済み、シールド部材の着脱が容易であって、しかも装着したシールド部材を安定的に保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る顔面保護具の構成例を示す斜視図であり、
図2(a)〜(b)は、
図1における各フレームの構成例を示す図である。
【0023】
図示するように、本実施形態の顔面保護具1は、顔面保護具用フレームと、顔面保護具用フレームに着脱可能であり、装着者の顔面の全部又は一部を保護するシールドSと、を具備している。このうち顔面保護具用フレームは、頭部に装着される本体フレーム10と、本体フレーム10の外側に配置され、感染性飛沫や薬液等から顔面の全体又は一部を保護するシールドSを保持するシールドフレーム20と、を具備している。
【0024】
本体フレーム10は、前頭部から側頭部に対応した曲状を有する一対のヘッドアーム11と、ヘッドアーム11の外側でこれらを連結するブリッジアーム12と、により構成されている。ヘッドアーム11及びブリッジアーム12は、ヘッドアーム11の対向方向に弾性可能に構成されており、ヘッドアーム11の間を押し広げてこれを側頭部に支持させ、これらの弾性変形のバランスによって、はめ心地、かつ上下左右方向の安定性よく、顔面保護具1を装着できるようになっている。
【0025】
ただし、本体フレーム10の構成は前記の例に限定されず、所定のテンプル部材を耳にかけることで顔面保護具を支持させるメガネ型や、所定のヘッドバンド部材を頭頂部から被せることで顔面保護具を支持させるカチューシャ型のものであってもよい。
【0026】
本体フレーム10の左右には、シールドフレーム20が取り付けられる取り付け部13がそれぞれ設けられている。取り付け部13は、例えば本体フレーム10によって形成される面の片面側で本体フレーム10に一体に設けられ、所定の係合孔14が直列に複数(ここでは左右それぞれ3つ)形成された突出片である。上記の係合孔14の何れかを選択肢し、シールドフレーム20の両端において対向するように設けられた係合軸21を軸支させることで、本体フレーム10に対する距離や角度を調節可能に、シールドフレーム20を取り付けることができるようになっている。装着者の髪型や毛髪量、眼鏡の有無に関わらず、はめ心地、かつ上下左右方向の安定性よく、顔面保護具1を装着できるようになっている。
【0027】
特に、本実施形態では、シールドフレーム20の係合軸21の根元に突起21aが一体的に設けられているとともに、本体フレーム10の係合孔14の縁部に、上記の突起21aが嵌合可能な嵌合溝14aと、シールドフレーム20の回動方向に嵌合溝14aよりも幅広に形成された遊嵌溝14bと、が設けられている。これにより、係合軸21の突起21aが遊嵌溝14bに規制される範囲内で、係合軸21を支点としてシールドフレーム20を本体フレーム10に対して所定の角度θ
1で回動させることができる。そして、遊嵌溝14bを越えてシールドフレーム20を更に回動させることで、係合軸21の突起21aが嵌合溝14aに所定の角度θ
2で嵌め合わされるようになる、つまり、本体フレーム10に対する所定の角度θ
2でシールドフレーム20を保持可能となる。
【0028】
本体フレーム10及びシールドフレーム20の接続の態様は、使用時においてシールドSによって顔面の全部又は一部を覆うことができるよう、本体フレーム10の外側にシールドフレーム20を配置させることができる限りにおいて前記の例に限定されない。例えば、上記の例とは逆に、本体フレーム10に係合軸が設けられ、シールドフレーム20に係合孔が設けられるようにしてもよい。シールドフレーム20が本体フレーム10に着脱可能であれば、各フレームの修理交換やメンテナンスが容易となるが、本体フレーム10に対してシールドフレーム20の距離や角度を調節可能とすることは必須でなく、また、各フレームを一体に構成しても構わない。
【0029】
本体フレーム10及びシールドフレーム20を所定の軸部材によって接続する場合、かかる軸部材の応力集中による破損や磨耗防止の観点から、軸部材による軸支部分にシリコーンオイル等の摺動剤を付与するようにしてもよく、軸支部分にワッシャー等の補強部材を設けるようにしてもよい。軸部材と、軸受け部分となる部材と、の構成材料を異ならせるようにすることも可能であり、一例として本実施形態では、シールドフレーム20の係合軸21の構成材料として、本体フレーム10の係合孔14よりも高弾性を実現できる材料が選択されている。
【0030】
本体フレーム10やシールドフレーム20の構成材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等を、1種単独又は2種以上を併用して用いることができる。本実施形態ではポリプロピレンが用いられており、これによれば、物理的耐久性や弾性に加え、煮沸消毒やアルコール消毒に耐え得る耐熱性や耐薬品性にも優れた顔面保護具用フレームとなる。
【0031】
尚、顔面保護具1に使用可能なシールドSとしては、
図3(a)〜(c)に示すように、上部両端にそれぞれ、貫通孔O
pnと、切り欠きC
outと、が形成されたものを用いることができる。上記のシールドフレーム20には、顔面の全体を保護するシールド(
図3(a))を取り付けることもできるし、それよりも長さの短いシールド、すなわち主に眼球近傍を保護するシールド(
図3(b))を取り付けることもできる。
【0032】
また、シールドSには、表面に所定の保護シートEを付しておくようにしてもよい(
図3(c))。これによれば、使用前段階においてシールドSの表面が保護シートEによって保護されるため、シールドSの表面に傷がつくことや、空気中のダストによって表面が汚染されることを抑制できる。よって、作業時における作業対象物への良好な視認性を確保でき、保護シートEの剥離することではじめて露出する面を外側にしてシールドSを使用すれば、作業対象物に対する低汚染性をも確保できるようになる。しかも、保護シートEを付しておくことで、シールドS同士の張り付きを防止することもできる。
【0033】
保護シートEに帯電防止特性を付与するようにすれば、シールドSからの剥離が容易となり、着色された保護シートを用いるようにすれば、シールドSに保護シートが付されているか否かの判断が容易となる。更に、保護シートEの所定位置に剥離シールを付しておき、これを摘まんでシールドSから保護シートを剥離できるようにすれば、かかる剥離作業がより容易なものとなる。
【0034】
保護シートEは、シールドSの少なくとも一方の面の、全面に設けることもできるし、一部のみに設けることもできる。シールドSの全面に設けた上で、保護シートEのみに切れ込みや切断線を付与するようにすれば、所定領域ごとに所定のタイミングで保護シートを剥離することができる。一例として、シールドSの全面に保護シートEを設け、シールドSの貫通孔O
pn及び切り欠きC
outを含む上部領域と、装着時において顔面を主に保護する下部領域と、の境界に切断線を付与し、上部領域の保護シートのみ、使用前段階である出荷時や保管時に剥離しておくようにすることができる。
【0035】
このようなシールドSには、例えば親水基が比較的多い三酢酸セルロ−スを用いて防曇性を付与することができる。すなわち、表面をアルカリ処理によって改質した三酢酸セルロ−スにより、透明性や可撓性のみならず防曇性をも具備したシールドSとなる。シールドSの構成材料は前記の例に限定されず、ポリエチレンテレフタラートやポリプロピレン等を用いるようにしてもよい。また、シールドSの防曇性の更なる向上を図る観点からは、シールドSの構成材料に防曇処理剤を添加したり、シールドSの表面に防曇処理剤を塗布したりする等の防曇処理を更に施すことが好ましい。これによれば、通常使用時における使用者の呼吸はもちろん、外部環境の急激な変化に対しても、シールドSの防曇性を確保できるようになる。
【0036】
ここで、シールドフレーム20は、装着者の顔面に沿った曲状を有しており、上記のシールドSを保持する保持部22が両端側に設けられている。この保持部22に関する構成例や機能等について、
図4〜5を参照しつつ説明する。
図4は、シールドフレームの各部材の構成例を示す図であり、
図5は保持部近傍の機能等を示す図であって、
図2(b)のA−A′線に準ずる断面図等である。
【0037】
保持部22は、シールドフレーム20の延在方向とは交差する方向に設けられた軸部材23によってシールドフレーム20の外側に回動自在に支持されたクリップ部材24と、軸部材23を支点としてクリップ部材24の先端部24aを閉じるように付勢する付勢手段25と、を具備している。そして、クリップ部材24の先端部24aにおけるシールドフレーム20に対向する領域R
krpには、シールドSに形成された貫通孔O
pnが係止される係止爪26が形成されている。
【0038】
これによれば、クリップ部材24を閉じるような付勢力に抗することで、軸部材23を支点としてクリップ部材24を回動させて係止爪26をシールドフレームから離間させることができる、いわゆるバインダークリップ機構を実現できる。かかる機構により、シールドSの着脱が極めて容易になるため、装着に要する手間や時間の短縮を図ることができ、また、クリップ部材24の後端部24bの押圧によりシールドSを落下させて手で摘むことなく素早くそのまま廃棄できる。しかも、クリップ部材24の係止爪26によってシールドSに形成された貫通孔O
pnを係止するので、シールドフレーム20両端側の計2点であってもシールドSを安定的に保持できる上、装着したシールドSに歪みが生じることも防止できる。
【0039】
本実施形態において、係止爪26は、のこぎり刃状に形成されている。具体的には、係止爪26のシールドフレーム20に対向する面26aが、先端部24aに向かって高さが漸小するテーパー形状を有するように形成されている。これによれば、シールドSの装着に際して、クリップ部材24の先端部24aの係止爪26とシールドフレーム20との間にシールドSを滑り込ませることで、クリップ部材24の後端部24bに押圧力を付与することなく、係止爪26とシールドフレーム20との間にシールドSを挟み込むことができる。そして、挟み込んだシールドSを適宜移動させて貫通孔O
pnと係止爪26との位置を合わせることで、クリップ部材24を閉じるような付勢力を利用して自動的に貫通孔O
pnを係止できる。係止爪26のシールドSを係止する面はほぼ直角に立ち上がって形成されており、かかる直角面26bによってシールドSが係止されるようになる。
【0040】
ただし、係止爪26の形状は、シールドSに形成された貫通孔O
pnを係止できるものであれば限定されない。軸部材23はクリップ部材24と一体に形成できるが、別部材として構成し、これらを組み合わせるようにしても構わない。
【0041】
また、保持部22では、シールドフレーム20におけるクリップ部材24の先端部24aに対向する領域R
sldに、上記の係止爪26が入り込む凹部27が設けられている。これによれば、シールドSを装着したとき、先端部24aを閉じるように付勢されたクリップ部材24の係止爪26が、シールドSの貫通孔O
pnを係止するとともにシールドフレーム20の凹部27内に収まるようになる。このため、シールドSをより安定的に保持できる上、クリップ部材24の後端部24bに所定の押圧力が付与された場合に限り、シールドSを脱離できるようになる。尚、本実施形態では、クリップ部材24の後端部24bに、所定の凹凸からなる押圧部28が形成されており、所定の押圧力を意図して付与する場合においては、その押圧力が確実にクリップ部材24の後端部24bに付与されるようになっている。
【0042】
また、保持部22では、軸部材23からクリップ部材24の先端部24aの端部までの距離L1より、軸部材23からクリップ部材24の後端部24bの端部までの距離L2のほうが短くなるように構成されている。これによれば、てこの原理により、クリップ部材24の先端部24aを開放させる回動距離を得るために必要なクリップ部材の後端部24bへの押圧力が、過度に小さくなることを防止できる。
【0043】
また、保持部22において、シールドフレーム20には、クリップ部材24を挟むように外側方向に立ち上がる壁部29が形成されており、軸部材23は、壁部29に軸支されている。これによれば、シールドフレーム20にクリップ部材24を安定的に軸支させることができ、構造的強度の向上が図られた顔面保護具用フレームを提供できる。また、シールドSとして、壁部29に対応する位置に所定の切り欠きC
outが形成されたものを用いれば、壁部29を切り欠きC
outに沿わせてガイドさせ、更に容易にシールドSを装着でき、しかも切り欠きC
outに対して壁部29がストッパーとなってシールドSの不測の回動を規制できるためシールドSを極めて安定的に保持できる。
【0044】
また、保持部22では、クリップ部材24の後端部24bに隣接して、シールドフレーム20からクリップ部材24の後端部24bまでの高さH2よりも大きい高さH1を有するガード部30が設けられている。ここでは、クリップ部材24の後端部24bに隣接するシールドフレーム20の肉厚を厚く構成し、更に内部に付勢手段25を収容する空間を設けるようにしてガード部30を形成した。
【0045】
このようなガード部30によれば、クリップ部材24の外側から不測の外力が加わったとしても、ガード部30によってクリップ部材24の後端部24bが押圧されにくくなる。また、クリップ部材24の後端部24bの幅W2がガード部30の幅W1よりも小さなものとされており、かかる構成によっても、クリップ部材24の後端部24bに不測の外力が付与されにくくなっている。
【0046】
上記の付勢手段25は、クリップ部材24の後端部24bから一体的に延設された板バネ部であるように構成されている。これによれば、軸部材23を支点としてクリップ部材24の先端部24aを閉じるように付勢する付勢手段25を、簡易な構成で容易に実現できる。付勢手段25は上記の板バネに限定されず、クリップ部材24とは別部材である巻線バネ等を用いるようにしてもよい。
【0047】
これらのように、本実施形態では、クリップ部材24の後端部24bに不測の外力が付与されにくくなることで、所定の押圧力が意図して付与された場合に限り、シールドSを取り外すことができる。そして、クリップ部材24の係止爪26によってシールドSに形成された貫通孔O
pnを係止するので、シールドSを取り付けた場合においてシールドSを安定的に保持できる上、取り付けたシールドSに歪みが生じることも防止できる。特に、シールドフレーム20の長さ方向中央に幅広部31が形成されており、この幅広面をシールドSに接触させて、シールドSを更に安定的に保持できるようになっている。尚、幅広部31の位置、大きさ及び範囲等は限定されない。
【0048】
以上説明した顔面保護具1へのシールドSの着脱動作は以下の通りである。すなわち、クリップ部材24の先端部24aの係止爪26とシールドフレーム20との間にシールドSを滑り込ませ、クリップ部材24を閉じるような付勢力に抗してシールドSを挟み込ませる。クリップ部材24の後端部24bとシールドフレーム20との間には、後端部24bの回動可能な領域を確保する第1空間R
1が設けられており、滑り込ませたシールドSによって、先端部24aを持ち上げて軸部材23を支点として第1空間R
1内に後端部24bを回動させることが可能となっている。
【0049】
第1空間R
1に隣接して、付勢手段25の可動領域となる第2空間R
2が設けられている。付勢手段25の第2空間R
2内の撓み変形によって、クリップ部材24を閉じるような付勢力が生じ、シールドSが挟み込まれた状態においても、かかる付勢力が継続的に付与される。ここでは、ガード部30の内部に形成される空間が、第2空間R
2として機能するようになっている。第2空間R
2のシールドフレーム20側(顔面保護具1の装着時における頭部側)の面は開口しており、付勢手段25の可動領域が十分に確保されている。尚、第2空間R
2の第1空間R
1とは反対側に隣接して、シールドフレーム20の外側に開口する第3空間R
3が設けられており、この第3空間R
3を区画するシールドフレーム20の縁部に、上記の付勢手段25の後端が係止されている。
【0050】
次いで、クリップ部材24の先端部24aの係止爪26とシールドフレーム20との間にシールドSを滑り込また状態で、係止爪26に対して貫通孔O
pnを臨ませるようにシールドSを位置させる。このとき、シールドSとして、壁部29に対応する位置に所定の切り欠きC
outが形成されたものを用いれば、壁部29を切り欠きC
outに沿わせてガイドさせ、容易にシールドSを所定の位置まで移動させることができる。貫通孔O
pnと係止爪26との位置を合わせることで、クリップ部材24を閉じるような付勢力を利用して自動的に貫通孔O
pnが係止されることとなる。
【0051】
シールドSを係止した係止爪26は、シールドフレーム20の凹部27に収まるように付勢されており、シールドフレーム20両端側の計2点であっても、シールドSが安定的に保持されるようになり、取り付けたシールドSに歪みが生じることも防止される。シールドフレーム20の軸部材23を支点として、本体フレーム10に対する角度調節も可能である。
【0052】
そして、顔面保護具1の使用後は、クリップ部材24の後端部24bの押圧によりシールドSを落下させて手で摘むことなく素早くそのまま廃棄できる。すなわち、装着者が頭部から取り外した顔面保護具1を廃棄物処理箱の上に位置させて、その状態でクリップ部材24の後端部24bを押圧すれば、シールドSをそのまま廃棄物処理箱に落下させて処分することができる。
【0053】
以上説明した本実施形態の顔面保護具1や顔面保護具用フレームは、様々な分野において使用することができる。特に、医療や介護の分野で使用される場合には緊急性を要する状況も想定されるが、かかる状況下においても、シールドSをシールドフレーム20に簡単な操作で素早くかつ正しい位置に装着できる。そして、処置中に他の作業者や機器との接触でシールドSがズレたり、脱離したりすることは重大な医療事故につながる恐れがあり回避されるべきである、という要求や、処置作業を終えた後のシールドSは血液や体液などの感染源が付着している恐れがあるため素早くかつ簡便に取り外して処分するのが望ましい、という要求にも応えることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
上記の顔面保護具1を構成した。シールドとしては、上部両端にそれぞれ貫通孔O
pnが形成されているものを用いた。尚、上記の切り欠きC
outが形成されたシールドSを用いれば、保持部22を切り欠きC
outに沿わせてガイドさせながらシールドSを装着することが可能となるが、シールドSにおいて切り欠きC
outは必須ではないため、ここでは切り欠きC
outが省略されたシールドを用いて評価するようにした。
【0056】
(比較例1〜4)
保持部の構成等を実施例1とは異ならせて、比較例1〜4の顔面保護具を構成した。このうち、比較例1では、ヒンジ接続された一対の雄部及び雌部をシールドフレームの両側(実施例1の保持部22に対応する位置)に形成し、貫通孔O
pnを通して雄部を雌部に押し込んでシールドSを装着し、雌部から雄部を引き抜いてシールドSを脱離させる構成を採用した(
図6(a))。
【0057】
比較例2では、シールドフレームの両側(実施例1の保持部22に対応する位置)に手かぎ状のフックを形成し、これに貫通孔O
pnを引っ掛けてシールドSを引き伸ばしつつ装着し、フックの引っ掛かりを解除してシールドSを脱離させる構成を採用した(
図6(b))。
【0058】
比較例3では、シールドフレームの両側(実施例1の保持部22に対応する位置)に、先端に大径部を有するピンを形成するとともに、貫通孔O
pnの縁に複数の切り込みを形成し、縁を折り曲げて貫通孔O
pnをピンに押し通すことでシールドSを装着し、縁が折り曲がるようにピンから貫通孔O
pnを外すことでシールドSを脱離させる構成を採用した(
図6(c))。
【0059】
比較例4では、シールドフレームの両側(実施例1の保持部22に対応する位置)に、シールドフレーム側に付勢された押さえ板部を形成するとともに、押さえ板部の近傍に、シールドに当接する面側に突出する突出部を形成した。そして、シールドとして、上記の突出部に挿入される孔が形成されたものを用いた。つまり、比較例4では、孔に突出部を挿入するとともにシールドフレーム及び押さえ板部の間に挿入することでシールドSを装着し、突出部やシールドフレーム及び押さえ板部の間から引き抜いてシールドSを脱離させる構成を採用した(
図6(d))。
【0060】
(官能試験1)
20代〜50代の男女の計10名を対象に、シールドの取り付け方法に関して、シールドの取付けやすさ、取付け後の安定感、取り外しやすさを3段階で評価する官能試験を実施した。試験の結果は、使用に適さないと判断する場合には「×」、使用に適すると判断する場合には「○」、格段に優れていると判断する場合には「◎」と評価した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
官能試験1の結果、実施例1は、3項目すべてにおいて、格段に優れている評価となり、他の構成より優れた構造であることが確かめられた。
【0063】
(官能試験2)
20代〜50代の男女の計10名を対象に、実施例1と比較例1(ヒンジ式)とのシールド取付け時間と取り外し時間とを測定した。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
官能試験2の結果、実施例1は比較例1の約半分の時間でシールドの取付けが可能で、約3分の1の時間でシールドの取り外しができることが確かめられた。
【0066】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上記のものに限定されるものではない。例えば、本発明は、上記の実施形態で述べたような医療や介護の分野において使用される顔面保護具に限定されず、染性飛沫や薬液等から顔面の全体又は一部を保護するための顔面保護具を対象としたものであり、他の分野においても勿論適用することができる。例えば、本発明は、化学分野、船舶・海洋分野、航空・宇宙分野、繊維分野、金属分野、資源工学分野、建設分野、上下水道分野、衛生工学分野、農業分野、森林分野、水産分野、環境分野、原子力・放射線分野等にも適用可能である。
【0067】
また、上記の実施形態では、シールドSとして可撓性を有する透明樹脂材料を用いて構成したが、これに調光材料や光吸収材料等を配合するようにしてもよい。
【0068】
また、シールドフレーム20におけるシールドSを保持するための構成は、前記のクリップ部材24を用いた構成に限定されない。保持部22が、シールドフレーム20に対向する領域に設けられ、シールドSに形成された貫通孔O
pnが係止される係止爪26と、シールドSの貫通孔O
pnの係止時において係止爪26をシールドフレーム20側に付勢する付勢手段25と、を具備していればよい。
【0069】
例えば、
図7(a)〜(c)に示すように、シールドフレーム20から立ち上がるとともにシールドフレーム20の延在方向に沿って一体に延設され、押圧に応じて先端部40aに形成された係止爪26がシールドフレーム20に接離可能である延設部材40と、延設部材40よりも後端側に設けられ延設部材40の背面に当接してスライド可能なスライド部材41と、を具備するスライド式を採用してもよい。かかるスライド式の場合、シールドフレーム20から係止爪26が離間している延設部材40を、スライド部材41のスライドによって背面側から押すように付勢することで、係止爪26がシールドフレーム20の凹部27内に収まるようになる(
図7(a))。スライド部材41によって背面側からシールドフレーム20側に延設部材40が押し付けられ、これにより係止爪26にシールドSの貫通孔O
pnを係止させることができ(
図7(b))、逆方向にスライドさせることで係止爪26の係止が解除され、係止爪26がシールドフレーム20から離間し、シールドSが取り外される(
図7(c))。
【0070】
また、シールドフレーム20の前記の例に限定されない。例えば、
図8(a)に示すように、中央部分が除かれた別体型のシールドフレーム20A、20Bとしてもよい。これによれば、各部材ごとの修理・交換・メンテナンス等が可能になる。また、
図8(b)に示すように、本体フレーム10及びシールドフレーム20を一体的に固定するようにしてもよい。