(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変速機を構成する遊星歯車のプラネタリキャリヤにより支持されると共に、前記プラネタリキャリヤよりも前記遊星歯車の軸心に近接して配置される供給孔から流出したオイルを捕集して該プラネタリキャリヤにより支持される複数のピニオンギヤに挿通されるピニオンシャフトのシャフト内油路に供給する環状のオイルレシーバにおいて、
前記供給孔よりも径方向外側に配置されると共に前記オイルを捕集するように形成された集油部と、前記集油部および前記シャフト内油路と連通する油路を有すると共に該シャフト内油路に挿入される複数の挿入部とを含む環状部と、
前記供給孔よりも径方向外側かつ前記環状部の径方向内側に形成され、前記供給孔から流出したオイルを受容する環状のオイル受容部とを備え、
前記オイル受容部は、前記環状部から前記ピニオンギヤ側に向かうにつれて前記軸心に近接するように形成された傾斜部と、前記傾斜部よりも前記ピニオンギヤ側で該傾斜部よりも径方向内側に延びるように形成された規制壁と、前記傾斜部と前記規制壁との間で前記遊星歯車の軸方向に延びる軸方向延在部とを含み、
前記規制壁の前記傾斜部側の端面は、前記遊星歯車の軸方向における前記供給孔の開口部の両端の間に位置し、
前記軸方向延在部の少なくとも一部は、前記供給孔の前記開口部と径方向からみて重なることを特徴とするオイルレシーバ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明によるオイルレシーバ60を含む動力伝達装置20の概略構成図である。同図に示す動力伝達装置20は、前輪駆動車両に搭載される図示しないエンジンのクランクシャフトに接続されると共にエンジンからの動力を図示しない左右の駆動輪(前輪)に伝達可能なものである。図示するように、動力伝達装置20は、トランスミッションケース22や、当該トランスミッションケース22の内部に収容される発進装置(流体伝動装置)23、オイルポンプ24、自動変速機25、ギヤ機構(ギヤ列)28、デファレンシャルギヤ(差動機構)29等を含む。
【0012】
発進装置23は、エンジンのクランクシャフトに接続される入力側のポンプインペラ23pや、自動変速機25の入力軸(入力部材)26に接続される出力側のタービンランナ23t、ポンプインペラ23pおよびタービンランナ23tの内側に配置されてタービンランナ23tからポンプインペラ23pへの作動油の流れを整流するステータ23s、ステータ23sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ23o、ロックアップクラッチ23c、ダンパ機構23d等を有するトルクコンバータとして構成される。ただし、発進装置23は、ステータ23sを有さない流体継手として構成されてもよい。
【0013】
オイルポンプ24は、ポンプボディとポンプカバーとを含むポンプアッセンブリ、ハブを介して発進装置23のポンプインペラ23pに接続された外歯ギヤ、当該外歯ギヤに噛合する内歯ギヤ等を有するギヤポンプとして構成されている。オイルポンプ24は、エンジンからの動力により駆動され、図示しないオイルパンに貯留されている作動油(ATF)を吸引して発進装置23や自動変速機25により要求される油圧を生成する図示しない油圧制御装置へと圧送する。
【0014】
自動変速機25は、8段変速式の変速機として構成されており、
図1に示すように、入力軸26に加えて、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構40、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための4つのクラッチC1,C2,C3およびC4、2つのブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1を含む。
【0015】
自動変速機25の第1遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ32と、それぞれサンギヤ31に噛合する複数の第1ピニオンギヤ33aと、それぞれ対応する第1ピニオンギヤ33aおよびリングギヤ32に噛合すると共に第1ピニオンギヤ33aよりも径方向外側に配置される複数の第2ピニオンギヤ33bと、互いに噛合する第1ピニオンギヤ33aおよび第2ピニオンギヤ33bの組を自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリヤ34とを有する。図示するように、第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トランスミッションケース22に固定されており、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34は、入力軸26に一体回転可能に連結されている。第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして構成されており、入力要素であるプラネタリキャリヤ34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
【0016】
自動変速機25の第2遊星歯車機構40は、外歯歯車である第1サンギヤ41aおよび第2サンギヤ41bと、第1および第2サンギヤ41a,41bと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ42と、第1サンギヤ41aに噛合する複数のショートピニオンギヤ43aと、第2サンギヤ41bおよび複数のショートピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数のロングピニオンギヤ43bと、複数のショートピニオンギヤ43aおよび複数のロングピニオンギヤ43bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリヤ44とを有する。第2遊星歯車機構40のリングギヤ42は、自動変速機25の出力部材として機能し、入力軸26からリングギヤ42に伝達された動力は、ギヤ機構28、デファレンシャルギヤ29を介して左右の駆動輪に伝達される。また、プラネタリキャリヤ44は、ワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース22により支持され、当該プラネタリキャリヤ44の回転方向は、ワンウェイクラッチF1により一方向に制限される。
【0017】
クラッチC1は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構40の第1サンギヤ41aとを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)である。クラッチC2は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、入力軸26と第2遊星歯車機構40のプラネタリキャリヤ44とを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC3は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC4は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34と第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。
【0018】
ブレーキB1は、油圧サーボを含むバンドブレーキあるいは多板摩擦式ブレーキとして構成されており、第2遊星歯車機構40の第2サンギヤ41bをトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共に第2サンギヤ41bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧ブレーキ(摩擦係合要素)である。ブレーキB2は、油圧サーボを含むバンドブレーキあるいは多板摩擦式ブレーキとして構成されており、第2遊星歯車機構40のプラネタリキャリヤ44をトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共にプラネタリキャリヤ44のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧ブレーキである。また、ワンウェイクラッチF1は、例えばインナーレースやアウターレース、複数のスプラグ等を含み、インナーレースに対してアウターレースが一方向に回転した際にスプラグを介してトルクを伝達すると共に、インナーレースに対してアウターレースが他方向に回転した際に両者を相対回転させるものである。ただし、ワンウェイクラッチF1は、ローラ式といったようなスプラグ式以外の構成を有するものであってもよい。
【0019】
これらのクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、油圧制御装置による作動油の給排を受けて動作する。
図2に、自動変速機25の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1の作動状態との関係を表した作動表を示す。自動変速機25は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2を
図2の作動表に示す状態とすることで前進1〜8速の変速段と後進1速および2速の変速段とを提供する。なお、クラッチC4を除くクラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB2の少なくとも何れかは、ドグクラッチといった噛み合い係合要素とされてもよい。
【0020】
図3は、自動変速機25の要部を示す部分断面図である。同図は、自動変速機25に含まれる第1遊星歯車機構30の周辺の構成を示す。図示するように、第1遊星歯車機構30の各第1ピニオンギヤ33aには、ニードルベアリング37を介して第1ピニオンシャフト35が挿通され、各第2ピニオンギヤ33bには、ニードルベアリング38を介して第2ピニオンシャフト36が挿通される。複数の第1ピニオンシャフト35および複数の第2ピニオンシャフト36は、第1ピニオンギヤ33aおよび第2ピニオンギヤ33bが周方向に交互に並ぶようにプラネタリキャリヤ34により保持される。
【0021】
図3に示すように、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34は、略円筒状のキャリヤ本体341と、当該キャリヤ本体341に固定される円環状のキャリヤカバー342とから構成される。プラネタリキャリヤ34のキャリヤ本体341は、第1遊星歯車機構30の軸方向(自動変速機25の入力軸26の軸方向)に延びる外筒部341aと、当該外筒部341aのクラッチC4側(
図3における右側)の端部から第1遊星歯車機構30の径方向(自動変速機25の入力軸26の径方向)内側に延びる環状底部341bとを含む。
【0022】
キャリヤ本体341の外筒部341aには、各第2ピニオンギヤ33bの外周に形成されたギヤ歯の一部を露出させるように複数の切欠部341sが形成される。キャリヤ本体341の環状底部341bは、それぞれ上記複数の第1および第2ピニオンシャフト35,36のクラッチC4側(
図3における右側)の一端35a,36aを支持する複数のシャフト支持孔341oを有する。複数のシャフト支持孔341oは、第1および第2ピニオンシャフト35,36が周方向に交互に並ぶと共に第2ピニオンシャフト36が第1ピニオンシャフト35よりも外周側に位置するように環状底部341bに形成される。
【0023】
また、キャリヤ本体341の環状底部341bのクラッチC4側の面には、当該クラッチC4の構成要素の一つであるクラッチハブ51が固定される。クラッチハブ51は、
図3に示すように、環状底部341bに固定される環状のフランジ部511と、フランジ部511の外周部から延出されると共に、複数の摩擦係合プレート53の内周部が嵌合されるスプラインが外周面に形成された筒状部512とを含む。そして、クラッチハブ51のフランジ部511には、
図3に示すように、キャリヤ本体341のシャフト支持孔341oに対応した位置において、当該シャフト支持孔341oをクラッチC4側からみて露出させるように切り欠かれた複数の切欠部511sが形成されている。
【0024】
プラネタリキャリヤ34のキャリヤカバー342は、キャリヤ本体341の環状底部341bに対向するように配置される。キャリヤカバー342の外周部は、
図3に示すように、キャリヤ本体341の外筒部341aの環状底部341bが形成される側とは反対側(
図3における左側)の端部に固定され、キャリヤカバー342の内周部は、自動変速機25の入力軸26に固定される。これにより、キャリヤ本体341とキャリヤカバー342とがプラネタリキャリヤ34として一体化され、自動変速機25の入力軸26に連結される。また、キャリヤカバー342は、それぞれ上記複数の第1および第2ピニオンシャフト35,36のクラッチC4と反対側(
図3における左側)の他端35b,36bを支持する複数のシャフト支持孔342oを有する。
【0025】
キャリヤ本体341のシャフト支持孔341oに挿通される第1および第2ピニオンシャフト35,36の一端35a,36aには、
図3に示すように、それぞれ端面から軸方向内側に窪むシャフト凹部351a,361aが形成されている。また、キャリヤカバー342のシャフト支持孔342oに挿通される第1および第2ピニオンシャフト35,36の他端35b,36bには、
図3に示すように、それぞれ端面から軸方向内側に窪むシャフト凹部351b,361bが形成されている。
【0026】
第1および第2ピニオンシャフト35,36は、シャフト凹部351a,361aを囲む外周部の一部がキャリヤ本体341の環状底部341bのシャフト支持孔341oにカシメられると共に、シャフト凹部351b,361bを囲む外周部の一部がキャリヤカバー342のシャフト支持孔342oにカシメられることにより、プラネタリキャリヤ34に固定される。このように、第1および第2ピニオンシャフト35,36とプラネタリキャリヤ34との間にガタが形成されないように両者を固定することで、第1および第2ピニオンシャフト35,36とプラネタリキャリヤ34とを実質的に一体化させて、プラネタリキャリヤ34の剛性をより高めることが可能となる。
【0027】
引き続き、第1遊星歯車機構30の潤滑構造について説明する。
図3に示すように、第1ピニオンシャフト35には、一端35a側のシャフト凹部351aから他端35b側に向けて延びるシャフト内油路351oと、第1ピニオンシャフト35の軸方向における略中央部でシャフト内油路351oから径方向外側に延びて当該第1ピニオンシャフト35の外周面で開口する径方向油路352oとを有する。第2ピニオンシャフト36は、一端36a側のシャフト凹部361aから他端36b側に向けて延びるシャフト内油路361oと、第2ピニオンシャフト36の軸方向における略中央部でシャフト内油路361oから径方向外側に延びて当該第2ピニオンシャフト36の外周面で開口する径方向油路362oとを有する。
【0028】
また、本実施形態において、クラッチC4の複数のセパレータプレート54やピストン55、キャンセル油室を画成するキャンセルプレート56等を支持するドラム部材52の内筒部520には、プラネタリキャリヤ34よりも第1遊星歯車機構30の軸心(自動変速機25の入力軸26の軸心)に近接して配置されると共に図示しない油圧制御装置の潤滑系の油圧回路に接続される供給孔100が形成されている。供給孔100は、ドラム部材52を回転自在に支持すると共にトランスミッションケース22に固定されたフロントサポート70に形成された油路70oを介して油圧制御装置に接続される。供給孔100は、
図3に示すように、ドラム部材52の内筒部520の内周面から外周面までを第1遊星歯車機構30側に向かって斜めに延びるように形成されており、キャリヤ本体341の環状底部341bと第1遊星歯車機構30の径方向からみて重なるように形成された開口部100oを有する。
【0029】
そして、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ39に対しては、供給孔100から流出して遠心力の作用によりプラネタリキャリヤ34の周辺に飛散するオイルを捕集して第1および第2ピニオンシャフト35,36の各シャフト内油路351o、361oに供給する環状のオイルレシーバ60が取り付けられる。オイルレシーバ60は、それぞれ対応する第1および第2ピニオンシャフトのシャフト内油路351o,361oにクラッチハブ51の切欠部511sを介して挿入される複数の挿入部611を含む環状部61と、供給孔100よりも第1遊星歯車機構30および環状部61の径方向(以下、単に「径方向」という)外側に配置されると共に環状部61の径方向内側に形成されて供給孔100から流出したオイルを受容する環状のオイル受容部62とを備え、第1および第2ピニオンシャフト35,36を介してプラネタリキャリヤ34により支持される。
【0030】
環状部61は、オイルレシーバ60の取付状態(
図3に示す状態)において、クラッチハブ51の筒状部512の内側かつキャリヤ本体341の環状底部341bとクラッチC4のキャンセルプレート56との間に延在する。環状部61のキャンセルプレート56側の面は、当該キャンセルプレート56と摺接可能に形成されており、それにより、オイルレシーバ60は、第1遊星歯車機構30とキャンセルプレート56との間に配置されたスラストワッシャとしても機能する。なお、当該環状部61のキャンセルプレート56側の面には、潤滑媒体としてのオイルを流通させるための図示しない複数の溝部が放射状に形成されている。
【0031】
複数の挿入部611は、対応する第1および第2ピニオンシャフト35,36のシャフト内油路351o,361oに挿入可能となるように、周方向に間隔をおいて環状部61のキャリヤ本体341側(
図3における左側)の面から第1遊星歯車機構30および環状部61の軸方向(以下、単に「軸方向」という)に延出される。各挿入部611の内部には、シャフト内油路351o,361oと連通するように軸方向に延びる油路611oが形成されている。そして、環状部61には、オイルが流入するように(オイルを捕集するように)内周面から外周面側に向けて窪むと共に、それぞれ対応する挿入部611の油路611oと連通する複数の集油部(独立集油部)612が周方向に間隔をおいて形成されている。集油部612は、供給孔100よりも径方向外側に配置される。なお、本実施形態において、環状部61のキャンセルプレート56側の面の上記図示しない複数の溝部は、各集油部612の間を延びるように形成される。
【0032】
オイル受容部62は、環状部61のキャリヤ本体341側の内周部から第1および第2ピニオンギヤ33a,33b側(環状部61とは反対側:
図3における左側)に向かうにつれて第1遊星歯車機構30の軸心に近接するように、すなわち環状部61側(
図3における右側)に向かうにつれて第1遊星歯車機構30の軸心から離間するように形成された内周面621aを有する傾斜部621と、傾斜部621から軸方向に延びる軸方向延在部622と、軸方向延在部622の傾斜部621とは反対側の一端から径方向内側に延びるように形成された規制壁623とを含む。
【0033】
傾斜部621の内周面621aは、
図3に示すように、オイルレシーバ60の取付状態において、環状部61からキャリヤ本体341の環状底部341bよりも径方向内側まで延びるように形成される。また、傾斜部621は、内周面621aよりもキャリヤ本体341側で径方向に延びる当接面621bを有する。オイルレシーバ60は、傾斜部621の当接面621bがキャリヤ本体341の環状底部341bに当接するようにプラネタリキャリヤ39に取り付けられる。軸方向延在部622は、オイルレシーバ60の取付状態において、キャリヤ本体341の環状底部341bの内周面に沿って当該環状底部341bの軸方向における略中央部まで延びるように形成される。ただし、軸方向延在部622は、軸方向に対して若干の角度を有するように形成されてもよい。
【0034】
規制壁623は、オイルレシーバ60の取付状態において、キャリヤ本体341の環状底部341bの軸方向における略中央部よりもやや第1および第2ピニオンギヤ33a,33b側に位置すると共に、クラッチC4のドラム部材52の内筒部520との間にクリアランスが形成されるように、軸方向延在部622から径方向内側に延出される。ただし、規制壁623は、第1遊星歯車機構30の径方向に対して若干の角度を有するように形成されてもよい。規制壁623の傾斜部621側の端面は、軸方向における供給孔100の開口部100oの両端の間(
図3に示す破線の間)に位置する。このように、オイルレシーバ60のオイル受容部62の軸方向延在部622の一部および規制壁623は、当該オイルレシーバ60の取付状態において、キャリヤ本体341の環状底部341bと供給孔100の開口部100oとの間に位置するように(キャリヤ本体341の環状底部341bと供給孔100の開口部100oと径方向からみて重なるように)形成されている。ただし、軸方向延在部622の全部が供給孔100の開口部100oと径方向からみて重なるように、軸方向延在部622や供給孔100を形成・配置してもよい。
【0035】
上述のように構成された動力伝達装置20が搭載された車両において、図示しないエンジンが運転されてオイルポンプ24が駆動されている際には、図示しない油圧制御装置の潤滑系の油圧回路からフロントサポート70の油路70oを介してクラッチC4のドラム部材52の内筒部520に形成された供給孔100へと潤滑媒体としてのオイル(作動油)が供給され、開口部100oから流出する。上述したように、供給孔100は、ドラム部材52の内筒部520の内周面から外周面まで第1遊星歯車機構30側に斜めに延びるように形成されている。このため、供給孔100の開口部100oから流出したオイルは、遠心力の作用によりキャリヤ本体341の環状底部341b側や、第1遊星歯車機構30の第1および第2ピニオンギヤ33a,33b(およびサンギヤ31)側に向けて飛散する。
【0036】
本実施形態のオイルレシーバ60は、上述したように、オイル受容部62の軸方向延在部622および規制壁623がキャリヤ本体341の環状底部341bと供給孔100との間に位置するようにプラネタリキャリヤ34に取り付けられる。これにより、供給孔100の開口部100oから流出して環状底部341b側に向けて飛散するオイルは、オイル受容部62の軸方向延在部622と規制壁623とにより受容される。また、供給孔100の開口部100oから流出して第1遊星歯車機構30の第1および第2ピニオンギヤ33a,33b(およびサンギヤ31)側に向けて飛散するオイルの一部は、軸方向延在部622から径方向内側に延びる規制壁623によって受け止められる。このように、このオイルレシーバ60では、環状部61の径方向内側に形成されるオイル受容部62によって、環状部61の集油部612から離間した箇所に飛散するオイルをより良好に受容することができる。
【0037】
ただし、上述したように、規制壁623の傾斜部621側の端面は、軸方向における供給孔100の開口部100oの両端の間に位置する。また、規制壁623とドラム部材52の内筒部520との間には、クリアランスが設けられている。これにより、供給孔100の開口部100oから流出してオイル受容部62により受容されるオイル量と、オイル受容部62よりも第1および第2ピニオンギヤ33a,33b(およびサンギヤ31)側に向けて飛散するオイル量とを規制壁623によってより適正に調整することができる。この結果、第1遊星歯車機構30の第1および第2ピニオンギヤ33a,33bへも潤滑媒体としてのオイルを良好に供給し、第1ピニオンギヤ33aとサンギヤ31との噛合部や第2ピニオンギヤ33bとリングギヤ32との噛合部を良好に潤滑・冷却することが可能となる。
【0038】
オイル受容部62により受容されたオイルは、傾斜部621の内周面621aを介して環状部61の各集油部612へと導かれる。このように、オイル受容部62に環状部61側に向かうにつれて第1遊星歯車機構30の軸心から離間するように延びる内周面621aを有する傾斜部621を形成することで、オイル受容部62の軸方向延在部622から傾斜部621を介して環状部61の各集油部612へとオイルをスムースに導くことができる。
【0039】
また、規制壁623と傾斜部621との間に軸方向に延びる軸方向延在部622を形成することにより、オイル受容部62で捕集したオイルを軸方向延在部622に一時的に溜めながら、当該オイル受容部62の周方向に満遍なく行き渡らせ、周方向に間隔をおいて形成された環状部61の各集油部612へとより均等に導くことが可能となる。特に、軸方向延在部622の一部が供給孔100の開口部100oと第1遊星歯車機構30の径方向からみて重なることで、当該開口部100oから流出したオイルを軸方向延在部622でより良好に受容すると共に、当該オイルをオイル受容部62の周方向により良好に満遍なく行き渡らせることができる。
【0040】
そして、各集油部612内に導かれたオイルは、各集油部612と連通する各挿入部611の油路611oを介して第1および第2ピニオンシャフト35,36のシャフト内油路351o,361oへと供給され、更に、径方向油路352o,362oを介してニードルベアリング37,38へと供給される。これにより、ニードルベアリング37,38をより良好に潤滑・冷却することができる。
【0041】
本実施形態のオイルレシーバ60のオイル受容部62は、傾斜部621と規制壁623との間に軸方向に延びる軸方向延在部622を含むものであるが、軸方向延在部622は、オイル受容部62から省略されてもよい。また、規制壁623の傾斜部621側の端面は、軸方向における供給孔100の開口部100oの両端よりも第1および第2ピニオンギヤ33a,33b側に位置するように形成されてもよい。更に、供給孔100とオイル受容部62の軸方向延在部622の一部および規制壁623とは、少なくとも供給孔100から流出したオイルをオイル受容部62の軸方向延在部622や傾斜部621で受容することができさえすれば、径方向からみて重なるように配置されなくてもよい。また、本実施形態では、環状部61に複数の集油部(独立集油部)612を形成するものとしたが、環状部61にその全周にわたって内周面から外周面側に向けて窪む一つの環状凹部としての集油部を形成してもよい。
【0042】
以上説明したように、本発明によるオイルレシーバは、変速機を構成する遊星歯車のプラネタリキャリヤにより支持されると共に、前記プラネタリキャリヤよりも前記遊星歯車の軸心に近接して配置される供給孔から流出したオイルを捕集して該プラネタリキャリヤにより支持される複数のピニオンギヤに挿通されるピニオンシャフトのシャフト内油路に供給する環状のオイルレシーバにおいて、前記供給孔よりも径方向外側に配置されると共に前記オイルを捕集するように形成された集油部と、前記集油部および前記シャフト内油路と連通する油路を有すると共に該シャフト内油路に挿入される複数の挿入部とを含む環状部と、前記供給孔よりも径方向外側かつ前記環状部の径方向内側に形成され、前記供給孔から流出したオイルを受容する環状のオイル受容部とを備え、前記オイル受容部は、前記環状部から前記ピニオンギヤ側に向かうにつれて前記軸心に近接するように形成された傾斜部と、前記傾斜部よりも前記ピニオンギヤ側で該傾斜部よりも径方向内側に延びるように形成された規制壁とを含むことを特徴とする。
【0043】
このように構成されるオイルレシーバでは、プラネタリキャリヤよりも遊星歯車の軸心に近接して配置される供給孔から流出して遊星歯車のピニオンギヤ側へと飛散するオイルの少なくとも一部がオイル受容部の規制壁によって受け止められると共に、傾斜部から環状部の集油部へと導かれ、集油部と連通する挿入部の油路を介してピニオンシャフトのシャフト内油路へと供給される。このように、このオイルレシーバでは、環状部の径方向内側に形成されるオイル受容部によって、当該環状部の集油部から離間した箇所に飛散するオイルをより良好に受容すると共に、傾斜部を介して環状部の集油部へとスムースに導くことができる。従って、このオイルレシーバよれば、プラネタリキャリヤの周辺に飛散してくるオイルをピニオンシャフトのシャフト内油路へとより良好に供給することが可能となる。
【0044】
また、前記オイル受容部は、前記規制壁と前記傾斜部との間で前記遊星歯車の軸方向に延びる軸方向延在部を有してもよい。これにより、オイル受容部で捕集したオイルを軸方向延在部によって当該オイル受容部の周方向に満遍なく行き渡らせ、集油部および複数の挿入部の各油路を介して各シャフト内油路へとより均等に導くことができる。
【0045】
更に、前記規制壁の前記傾斜部側の端面は、前記遊星歯車の軸方向における前記供給孔の開口部の両端の間に位置してもよく、前記軸方向延在部の少なくとも一部は、前記供給孔の前記開口部と径方向からみて重なってもよい。これにより、供給孔の開口部から流出してオイル受容部により受容されるオイル量と、オイル受容部よりもピニオンギヤ側に飛散するオイル量とを規制壁によってより適正に調整することができる。この結果、遊星歯車のピニオンギヤをも良好に潤滑・冷却することが可能となる。また、軸方向延在部の少なくとも一部が供給孔の開口部と遊星歯車の径方向からみて重なることで、供給孔の開口部から流出したオイルを軸方向延在部で良好に受容すると共に、当該オイルをオイル受容部の周方向により良好に満遍なく行き渡らせることができる。
【0046】
また、前記集油部は、周方向に間隔をおいて形成された複数の独立集油部からなってもよく、前記複数の挿入部の前記油路は、それぞれ対応する前記独立集油部と連通すると共に前記シャフト内油路と連通してもよい。
【0047】
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。