(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1吸水生地片が、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱変形性弾性糸を熱変形させることによりほつれ止め加工した編地で構成され、端縁が切りっ放し処理されている請求項1から4の何れかに記載の下着。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された下着は、吸水部材として防水性生地の内面側に水分を含有しやすい吸水性生地を重ね合わせた多層構造の厚手の吸収シートを身生地に止着するために、ごわつき感が生じる等履き心地に難があり、また当該下着を装着していることが外衣から認識され易いことから心理的な抵抗感が強く、軽度な尿失禁に悩む30代から50代の比較的若い世代の男性にとって容易に使用できるものではなく、より自然な履き心地で、且つ、外観上容易に判明しない形態の下着が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、ごく軽い「尿漏れ」に悩む比較的若い世代の男性でも、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感なく着用でき、しかも水分が容易に身生地に滲んだりズボンに滲んだりすることがない下着を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明による下着の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、左右前身頃と後身頃と前マチ部とを備え、前記前マチ部に横長の排尿用の開口が形成されている下着であって、前記前マチ部に下側マチ部と上側マチ部を備えるとともに、前記下側マチ部の上縁側と前記上側マチ部の下縁側とで前記排尿用の開口が形成されるように、前記下側マチ部の上縁側に前記上側マチ部の下縁側が反肌側から重畳するように配置され、側部の一部が身生地に縫着されること
が無く身生地と遊離する状態で、前記下側マチ部の肌側面の上縁から下縁にかけて第1吸水生地片が配置され、前記第1吸水生地片により尿滲みが防止さ
れ、前記第1吸水生地片の横幅が、少なくとも前記下側マチ部の横幅以上の長さに形成されるとともに、第1吸水生地片の側部の長さが、身生地の対応する部位の長さよりも長く形成されている点にある。
【0008】
上述の構成によれば、利き手が何れであっても左右何れか一方の手指で上側マチ部の下縁側を引き上げるとともに下側マチ部の上縁側を引き下げることにより、極めて容易に排尿用の開口を大きく開けることができ、容易く男性器の尿道を便器に向けて案内できるようになる。そして、排尿の後に男性器を下着内部に収容する際に、尿道に残った僅かの尿が尿道口から漏れ出ても、下側マチ部の上縁から下縁にかけて配置された第1吸水生地片で速やかに吸収されるので尿が身生地に浸潤することがなく、従ってズボンに尿滲みができるようなことがない。
【0009】
また、第1吸水生地片と身生地との間に空気層が形成されるので、第1吸水生地片にある程度の量の尿が吸収された場合でも容易に身生地に滲み出すようなことがなく、第1吸水生地片の側部から当該空気層に空気が通流することによって第1吸水生地片が比較的速やかに乾燥するようになる。また、仮に第1吸水生地片の側部全域が身生地に縫着されていると、第1吸水生地片に吸収された尿が縫着時の縫い糸を伝って身生地へ滲出する虞が生じるが、第1吸水生地片の側部の一部が身生地に縫着されることの無い状態で配置されているので、第1吸水生地片から身生地への尿の滲出を効果的に抑止することができるようになる。
【0010】
そして、側部の一部が身生地に縫着されることが無く身生地と遊離しているので、身生地との間で空気の通流が促進されるので吸水された尿がより速やかに乾燥するようになり、また身生地の動きに制約されることがなく、下着内で尿道口付近と接触し易く、漏れた尿を速やかに吸収できるようになり、第1吸水生地片から身生地への尿の滲出を効果的に抑止することができるようになる。
【0011】
さらに、第1吸水生地片の横幅が、少なくとも下側マチ部の横幅以上の長さに形成されていると、排尿後に男性器を下着に収容する際に、尿道口の位置が下着の開口部の左右端部からさらに左右に大きく離隔するようなことは殆どなく、仮にその際に不意に尿漏れが生じても、開口部の横幅以上の長さに形成された第1吸水生地片で尿道口がほぼ確実に覆われるので、尿が身生地に直接漏れ出すことが回避できるようになる。そして、第1吸水生地片の側部の長さが、身生地の対応する部位の長さよりも長く形成されていると、第1吸水生地片の遊離端縁が身生地から浮き上がって肌側に接触しやすくなるため、尿道口の位置が変動してもその周囲を第1吸水生地片で捕捉することが容易になり、漏れた尿をより確実に吸収できるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記第1吸水生地片の下方側部を鼠蹊部に対応する部分へと延出するように第2吸水生地片が配置され、前記第2吸水生地片により尿滲みが防止される点にある。
【0013】
尿漏れの量が多くなって、第1吸水生地片で速やかに吸収できずに尿が第1吸水生地片を伝うような場合でも、第1吸水生地片の下方側部から鼠蹊部に延出配置された第2吸水生地片によって余剰の尿が吸収されるようになるので、身生地やズボンに滲出するようなことが回避できるようになる。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記第2吸水生地片の側部が身生地から遊離した状態で配置されている点にある。
【0015】
第1吸水生地片と同様、身生地との間で空気の通流が促進されるので吸水された尿がより速やかに乾燥するようになり、また身生地の動きに制約されることがなく、下着内で尿道口付近と接触し易く、漏れた尿を速やかに吸収できるようになり、第2吸水生地片から身生地への尿の滲出を効果的に抑止することができるようになる。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記第1吸水生地片と前記第2吸水生地片が別生地で構成され、前記第1吸水生地片と前記第2吸水生地片とが前記身生地から遊離した状態で接合されている点にある。
【0017】
第1吸水生地片と第2吸水生地片を同一生地で構成すると、生地を効率的に裁断することが困難になり裁断後に無駄な端切れが多く発生する虞がある。しかし、両生地辺を別生地で構成すると、裁断後に無駄な端切れの発生を抑制するように効率的に裁断できるようになる。そして、第1吸水生地片と第2吸水生地片が身生地から遊離した状態で接合されているので、身生地との間に空気層が形成されるようになり、仮に第1吸水生地片と第2吸水生地片が縫着によって接合される場合でも、第1吸水生地片或いは第2吸水生地片で吸収された尿が、当該接合部を通って身生地に滲出するような事態を軽減できるようになる。
【0018】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記第1吸水生地片が、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱変形性弾性糸を熱変形させることによりほつれ止め加工した編地で構成され、端縁が切りっ放し処理されている点にある。
【0019】
吸水性の生地片として、このようなほつれ止め加工を施した編地を採用すれば、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維がほつれるようなことが無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、例えば端部を折り返して縫着するような従来のほつれ止め加工が不要になるので、第1吸水生地片、特に端部の厚み等に起因する肌触りの悪化による不快感を招くことがなく、肌に優しい下着が提供できるようになる。
【0020】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記第1吸水生地片の反肌側面が撥水加工されている点にある。
【0021】
第1吸水生地片で吸収された尿が撥水加工された反肌側面で撥水され、仮に第1吸水生地片が薄手の生地で構成されている場合でも、身生地側に浸潤することを効果的に抑制できるようになる。
【0022】
同第
七の特徴構成は、同請求項
7に記載した通り、上述の第一から第
六の何れかの特徴構成に加えて、前記上側マチ部の下縁が、水平線を基準として上方に凹に形成されている点にある。
【0023】
排尿用の開口を手指で開ける際に、上側マチ部に凹状に形成された下縁を僅かに持ち上げると、直ちに下側マチ部の上縁側が露出するので、片方の手指で速やか且つ容易に排尿用の開口を開けることができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、ごく軽い「尿漏れ」に悩む比較的若い世代の男性でも、周りの人に気付かれることなく、また、抵抗感なく着用でき、しかも水分が容易に身生地に滲んだりズボンに滲んだりすることがない下着を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による下着の一例であるボクサーパンツを図面に基づいて説明する。
図1(a)及び
図3に示すように、ボクサーパンツ1は、左右の前身頃2,3と後身頃7と、上側マチ部11と下側マチ部12からなる略台形状の前マチ部と腰ゴム4とを備えて構成されている。
【0027】
前身頃2,3と後身頃7とが左右の脇で縫着されるとともに、前マチ部11,12が着用者の下腹部中心に位置するように、前マチ部11,12の左右端部が前身頃2,3の腹部側端部に縫着されている。さらに、前身頃2,3及び後身頃7の上端側の胴部に腰ゴム4が縫着され、下端側に左右の脚部を挿入する裾部5,6が形成されている。尚、左右の前身頃2,3と後身頃7とが一枚の編地で一体に構成されていてもよい。
【0028】
図1(a)及び
図2に示すように、下側マチ部12の上縁12a側と上側マチ部11の下縁11b側とで上下に開く横長の排尿用の開口13が形成されている。そして、下側マチ部12の中央下方には縦長のダーツ12dが形成され、これにより男性器を収容する膨出部が形成されている。
【0029】
このような排尿用の開口13であれば、利き手が何れであっても左右何れか一方の手指で上側マチ部11の下縁11b側を引き上げるとともに下側マチ部12の上縁12a側を引き下げることにより、極めて容易に排尿用の開口を大きく開けることができ、その後他方の手で容易に男性器の尿道を便器に向けて案内できるようになる。
【0030】
本実施形態のように、上側マチ部11の下縁11bが、水平線を基準として上方に凹に形成されていることが好ましく、排尿用の開口13を手指で開ける際に、上側マチ部11に凹状に形成された下縁11bを僅かに持ち上げると、直ちに下側マチ部12の上縁側12aが露出するので、片方の手指で速やかに且つ容易に排尿用の開口を開けることができるようになる。
【0031】
図1(b)は、ボクサーパンツ1の裏側(肌側)の構成が示されている。当該ボクサーパンツ1は、排尿後に若干の尿漏れが生じても身生地や外衣となるズボンへの尿滲みの発生を防止するために、側部の一部が身生地2,3,11,12に縫着されることの無い状態で、下側マチ部12の肌側面の上縁12aから下縁12bにかけて略台形状の第1吸水生地片14が配置されている。第1吸水生地片14は、
図1(b)中、ハッチングで示されている部位である。
【0032】
具体的に、第1吸水生地片14の上縁及び下縁が下側マチ部12の上縁12a及び下縁12bにそれぞれ縫着されるとともに、第1吸水生地片14の側部14cのうち上端から上側マチ部11の下縁11bとの交差部までの間が縫着され、当該交差部から下側マチ部12の下縁12bまでの間(
図1(b)中、一点鎖線で示される範囲)が身生地2,3,11,12と縫着されることなく遊離している。尚、第1吸水生地片14の側部14cの全長に亘って身生地2,3,11,12と遊離していてもよいし、一部が遊離していてもよい。
【0033】
排尿の後に男性器をボクサーパンツ1に収容する際に、尿道に残った僅かの尿が尿道口から漏れ出ても、第1吸水生地片14で速やかに吸収されるので尿が身生地2,3,11,12に浸潤することがなく、従ってズボンに尿滲みができるようなこともない。従って、第1吸水生地片14の側部14cのうち尿道口から漏れ出た尿が主に吸収される領域の側部14cが身生地に縫着されることの無い状態であればよい。
【0034】
そして、第1吸水生地片14の遊離側部が身生地から遊離しているため、身生地の動きに制約されることがなく、ボクサーパンツ1内で尿道口付近と接触し易く、漏れた尿を速やかに吸収できるようになる。
【0035】
また、第1吸水生地片14と身生地との間に空気層が形成されるので、第1吸水生地片14にある程度の量の尿が吸収された場合でも容易に身生地に滲み出すようなことがなく、歩行等、着用者の下半身の動きによって第1吸水生地片14の側部から当該空気層に空気が通流し、第1吸水生地片14が速やかに乾燥するようになる。
【0036】
さらに、仮に第1吸水生地片14の側部14cが身生地に縫着されていると、第1吸水生地片14に吸収された尿が縫着時の縫い糸を伝って身生地へ極めて容易に滲出する虞があるが、第1吸水生地片14の側部14cが身生地から遊離しているので、第1吸水生地片14から身生地への尿の滲出を効果的に抑止することができるようになる。
【0037】
第1吸水生地片14の横幅は、少なくとも下側マチ部12の横幅以上の長さに形成されていることが好ましく、本実施形態では下側マチ部12の横幅と略同じ長さに形成されている。
【0038】
排尿後に男性器をボクサーパンツ1に収容する際に、尿道口の位置がボクサーパンツ1の開口13の左右端部からさらに左右に大きく離隔するような姿勢になることは殆どなく、漏れた尿をほぼ確実に第1吸水生地片14で吸収できるようになるので、尿が身生地に直接漏れ出すような状況を回避することができるようになる。
【0039】
第1吸水生地片14の下方にも、下側マチ部12のダーツ12dに対応する位置、つまり下方中央に上下方向に男性器を収容する膨出部となるダーツ14dが形成されている。下側マチ部12のダーツ12dと第1吸水生地片14のダーツ14dは別々に形成され、互いに遊離しているので、身生地との間に空気層が形成されるようになり、仮に第1吸水生地片14のダーツ14dが縫着によって形成される場合でも、第1吸水生地片14で吸収された尿が当該ダーツ14dから身生地に滲出するような事態を軽減できるようになる。
【0040】
身頃2,3,7及びマチ部11,12となる身生地を編成する原糸として綿等の天然繊維が好適に用いられる。また、天然繊維以外に、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、吸水性加工されたポリエステル等の合成繊維等、吸水性を有する極細繊維を用いることができ、また、編地としてフライス編みやスムース編み、更には天竺編み等の緯編地や、ラッセル編み等の経編地が好適に用いられる。また、ポリウレタン等の弾性糸を地組織に編成することにより、伸縮性に富んだ下着が得られる。身生地に緯編地を用いる場合には、コース方向が胴周りに沿うように、そしてウェール方向が上下に沿うように用いられることが好ましい。
【0041】
さらにほつれ止め加工した編地を用いることも可能で、その場合には脚部5,6側エッジを切りっ放し処理すればよく、縫製等の特別のほつれ止め処理を行なう必要は無い。
【0042】
第1吸水生地片14は、肌触りがよく吸水性に優れたセルロース繊維またはセルロース繊維を含む混紡糸を用いた編地が好適に用いられるが、これに限るものではなく、吸水性を備えた糸であれば他の種類の糸を使用することも可能であり、特にセルロース繊維に制限されるものではない。要求される吸水性能を確保するために、繊度や編組織を適宜組み合わせることができる。編組織として上述したフライス編み、スムース編み、天竺編み等の緯編地や、ハーフ・トリコット編み、ダブル・トリコット編みにより編成された経編地を用いることも可能である。
【0043】
第1吸水生地片14に緯編地を用いる場合には、身生地と同様にコース方向が左右に沿うように、そしてウェール方向が上下に沿うように用いられることが好ましい。
【0044】
また、身生地と同様、ほつれ止め加工した編地を用いることも好ましい。ほつれ止め加工した編地とは、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱変形性弾性糸を溶融等熱変形させることによりほつれ止め機能を備えた編地である。洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維がほつれるようなことが無く、見栄えの悪化を招くことが無いという利点がある。
【0045】
プレーティング編みは、添え糸編みともいい、既存の編成方法を採用することができる。例えば複数本の糸をそれぞれ別の給糸口から、編み針に給糸する編成方法を用いると編成ループそれぞれの糸の配置が安定的に定まるため、特に好ましい。従って、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸とを別の給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける熱変形性弾性糸とそれ以外の糸との配置が安定しているため、全てのループに熱変形性弾性糸を隣接させることができ、ヒートセット加工等により熱変形性弾性糸を熱変形させれば、編地の全てのループで確実にほつれ止め機能が実現できるようになる。
【0046】
本実施形態では、第1吸水生地片14は、熱変形性弾性糸に低融点ポリウレタン弾性糸、それ以外の糸に綿糸とレーヨンの混紡糸が選択され、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地で構成され、ヒートセット加工等により低融点ポリウレタン弾性糸が溶融して互いに融着することで、ほつれ止め機能が実現されている。
【0047】
吸水性の生地片として、このようなほつれ止め加工を施した編地を採用すれば、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維がほつれるようなことが無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、例えば端部を折り返して縫着するような従来のほつれ止め加工が不要になるので、第1吸水生地片、特に端部の厚み等に起因する肌触りの悪化による不快感を招くことがなく、肌に優しい下着が実現できる。
【0048】
熱変形性弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸のような熱融着性弾性糸を用いる以外に、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いることも可能である。ヒートセット加工等の加熱加工によりポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点でポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が発生し、ポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維への相手糸の固着が生じるため、編地からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなり、カールやほつれが抑制された編地を得ることができる。つまり、加熱処理により溶融し或いは圧縮変形するような特性を備えた熱変形性弾性糸であればこれらに限るものではない。
【0049】
第1吸水生地片14の反肌側面には撥水加工が施されていることが好ましい。例えばフッ素やシリコンを主成分とする加工薬剤を用いた撥水加工によって、着用者の肌に悪影響を与えることなく身生地、さらにはズボンへの尿の滲出を防止することができる。ローラー捺染やスクリーン捺染、インクジェットプリント等の捺染手段により、ほつれ止め防止生地の片面にも撥水加工を容易に施すことができる。
【0050】
第1吸水生地片14の肌側面で吸収された尿が撥水加工された反肌側面で撥水され、仮に第1吸水生地片14が薄手の生地で構成されている場合でも、身生地側に浸潤することを効果的に抑制できるようになる。
【0051】
捺染による撥水加工は、第1吸水生地片14の片面の面積に対し50〜100%に施されていることが好ましく、55〜95%に施されていることがさらに好ましく、60〜90%に施されていることが特に好ましい。第1吸水生地片14の片面の面積に対して、捺染による撥水加工が50%未満では、ズボンへの尿の滲出を防止するための撥水性が不足する不具合があり、ズボンへの尿の滲出を防止するためには、撥水加工が施された面積が広い程有効である。また、第1吸水生地片14の片面の面積に対して、捺染による撥水加工が95%以下、特に好ましくは90%以下であると、着用快適性の点で好ましい。
【0052】
撥水加工は、上述の捺染手段以外の手段(例えば、スプレー式)を用いて行なってもよく、使用する薬剤もフッ素またはシリコンを主成分とするものに限定されない。その際も、第1吸水生地片14の50%以上に撥水加工が施されているのが好ましい。
【0053】
第1吸水生地片14は、消臭・抗菌加工されていることがさらに好ましく、吸収された尿の臭いが消臭機能によって消臭され、長時間快適な状態を維持することができる。
【0054】
例えば、特許第3787675号に開示されているように、原糸となる繊維をキトサン及び/または修飾キトサン、カルボン酸ポリマー、酸化亜鉛及びバインダー樹脂を含む処理液で処理し、これらの被覆層が形成された繊維を用いればよい。
【0055】
以下、本発明の別実施形態を説明する。
図4(a),(b)に示すように、第1吸水生地片14の下方側の左右側部に、着用者の鼠蹊部に対応する部分へと吸水生地が延出するように第2吸水生地片15が配置されていてもよい。
【0056】
尿漏れの量が多くなって、第1吸水生地片14のみで速やかに吸収できずに尿が第1吸水生地片14を伝うような場合でも、第1吸水生地片14の下方側部から鼠蹊部に延出配置された第2吸水生地片15によって余剰の尿が吸収されるようになる。
【0057】
第1吸水生地片14と第2吸水生地片15とが一枚の生地で構成されていても、別生地で構成されていても、何れでもよい。
【0058】
図4(a)には、第1吸水生地片14と第2吸水生地片15とが一枚の生地で構成された態様が示されている。第1吸水生地片14と第2吸水生地片15が別生地で構成されている場合、それら間を縫着等によって接合処理するための工程が必要になるばかりか、縫着部の縫い糸から身生地側に尿が滲出する虞があるが、それらが一枚の生地で構成されていれば、製造工程の簡素化によるコストの低減を図ることができ、しかも縫着された縫い糸部位から尿が身生地側へ滲出するようなことも回避できるようになる。
【0059】
図4(b)には、第1吸水生地片14と第2吸水生地片15とが別生地で構成された態様が示されている。第1吸水生地片14と第2吸水生地片15が同一生地で構成されている場合、生地を効率的に裁断することが困難になり裁断後に無駄な端切れが多く発生する虞があるが、両生地片を別生地で構成すると、裁断後に無駄な端切れの発生を抑制するように効率的に裁断できるようになる。尚、第2吸水生地片15の遊離縁部の形状は特に限定されることはなく、直線状であってもよいし、図中破線で示すような曲線状であってもよい。
【0060】
何れの場合でも、身生地との間に空気層が形成されるように、第1吸水生地片14及び第2吸水生地片15が身生地から遊離した状態で配置されていることが好ましく、第1吸水生地片14と第2吸水生地片15が縫着によって接合される場合でも、接合部が身生地と遊離しているので、第1吸水生地片14或いは第2吸水生地片15で吸収された尿が、当該接合部を通って身生地に滲出するような事態を軽減できるようになる。
【0061】
第1吸水生地片14と第2吸水生地片15とが接着剤による接着層を介して接合されていると、少なくとも第1吸水生地片14と第2吸水生地片15との接合部15eで吸水生地片が二層に形成されるようになり、縫い糸から尿が滲出する虞がある縫着処理と比較して、当該接合部から身生地側へ尿が滲出するようなことが効果的に抑制できるようになる。
【0062】
例えば、第1吸水生地片14と第2吸水生地片15との接合部15eにフィルム状またはリキッド状のホットメルト接着剤を介在させてアイロン等の加熱具で加熱加圧することでホットメルト接着剤を溶融させ、その後、冷却・固化させることで両生地片が接合されるようになる。このような接着処理は、吸水生地片14,15を身生地に縫着する前の工程で行われる。
【0063】
ホットメルト接着剤の例として、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。
【0064】
第1吸水生地片14と同様に、第2吸水生地片15も熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱変形性弾性糸を熱変形させることによりほつれ止め加工した編地で構成され、端縁が切りっ放し処理されていることが好ましい。また、第1吸水生地片14と同様に、第2吸水生地片15も反肌側面が撥水加工されていることが好ましい。
【0065】
また、少なくとも第1吸水生地片14に形成されたダーツ14dは、上述と同様の接着剤を用いて第1吸水生地片14の一部を接合することによって構成されていることが好ましく、縫い糸から尿が滲出する虞がある縫着処理と比較して、当該ダーツ14dから身生地側へ尿が滲出するようなことが効果的に抑制できるようになる。しかも、仮に第1吸水生地片14を二層に重ねて接着することによってダーツ14dを形成する場合には、第1吸水生地片14の厚み方向に縫い代ができる縫着処理と比較して生地の厚みを薄く保つことができるようになる。
【0066】
図4(c)に示すように、第2吸水生地片15を着用者の鼠蹊部から内腿部に沿って裾部5,6まで延出させることで、さらに吸水容量及び吸水性能を向上させることができる。この場合にも、第2吸水生地片15の側部15cが身生地から遊離するように構成されていることが好ましく、また第1吸水生地片14と第2吸水生地片15が別生地で構成される場合には、第1吸水生地片と第2吸水生地片との接合部15eが身生地から遊離するように構成されていることが好ましい。
【0067】
裾部5,6がその端縁を折り返して縫着するほつれ止め処理されている場合には、第2吸水生地片15の下縁15bも裾部5,6に縫着することで、第2吸水生地片15の身生地に沿った姿勢を維持することができる。身生地として上述のほつれ止め加工した編地が用いられる場合には、裾部5,6が切りっ放し処理されているために、第2吸水生地片15の下縁15bを裾部5,6に縫着することができないが、その場合には、上述したフィルム状またはリキッド状のホットメルト接着剤を用いて第2吸水生地片15の下縁15bを裾部5,6に接着処理することによって、第2吸水生地片15の身生地に沿った姿勢を維持することができる。
【0068】
既に、上側マチ部11の下縁11bが、水平線を基準として上方に凹に形成されていることが好ましい旨を説明したが、その凹部の具体的な形状は
図1(a)に示したような円弧状に限らず、他の形状であってもよい。
【0069】
例えば、
図5(a),(b)に示すように、上側マチ部11の下縁11bを、三角形状の凹部や、台形状の凹部に形成してもよく、開口13を開ける際に上側マチ部11の下縁11bのうち、左右方向中央部に指先を円滑に案内でき、容易に引き上げることができればよい。
【0070】
第1吸水生地片14の側部14cの長さを、身生地の対応する部位の長さよりも長くすることが好ましく、このような構成を採用すると第1吸水生地片14の遊離端縁が身生地から浮き上がって肌側に接触しやすくなるため、尿道口の位置が変動してもその周囲を第1吸水生地片14で捕捉することが容易になり、漏れた尿をより確実に吸収できるようになる。
【0071】
上述した実施形態は、何れも側部の一部が身生地に縫着されることの無い状態で、下側マチ部の肌側面の上縁から下縁にかけて略台形状の第1吸水生地片が配置されたボクサーパンツとして、第1吸水生地片の側部の一部が身生地と遊離するように構成された態様を説明したが、本発明は、第1吸水生地片の側部の一部が身生地に縫着されることの無い状態であれば、身生地から遊離した態様に限るものではない。
【0072】
例えば、第1吸水生地片の側部が身生地と接着剤で接合されている態様であってもよい。この場合も上述と同様に、第1吸水生地片の側部と身生地との間にフィルム状またはリキッド状のホットメルト接着剤を介在させてアイロン等の加熱具で加熱加圧することでホットメルト接着剤を溶融させ、その後、冷却・固化させることで両生地片を接合するように構成することができる。また、第1吸水生地片の側部の全域を接着する必要はなく、一部が身生地と遊離するように接着してもよい。さらに、洗濯等で発生した繊維くず等を当該遊離部から取り除くことができるように構成してもよい。
【0073】
さらに上述した第2吸水生地片15を着用者の鼠蹊部から内腿部に沿って裾部5,6まで延出させることも可能であり、この場合には上述の接着剤を介して第2吸水生地片の縁部を身生地に接着すればよい。
【0074】
以上、ボクサーパンツを例に本発明による下着を説明したが、本発明による下着は、ボクサーパンツに限定されるものではなく、ブリーフやトランクス等の他の形態の下着にも適用でき、また身生地として編地以外に布帛を用いることも可能である。