(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料圧力のフィードバック制御を行った場合では、例えば目標燃料圧力が急激に上昇した際、燃料ポンプを駆動するモータの回転数が、当該モータの上限回転数を超えてしまう可能性がある。上限回転数を超える回転数でモータを駆動させた場合、モータの脱調や、軸受等の摩耗量の増加等が発生する可能性があり、モータの寿命が短くなる可能性があるので好ましくない。
【0007】
特許文献1、及び特許文献2に記載の発明では、応答性を向上させているがモータの回転数を上限回転数以下に抑制する制御について記載が無い。従って、目標燃料圧力よりも低い状態から速やかに目標燃料圧力に近づける際、モータが上限回転数を超えてしまう可能性が考えられるので、モータの脱調や、軸受等の摩耗量の増加等が発生する可能性があり、モータの寿命が短くなる可能性が考えられる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、燃料ポンプを駆動するモータの回転数が、当該モータの上限回転数を超えないように適切なフィードバック制御を行うことで、当該モータの脱調や軸受等の摩耗をより抑制することができる、内燃機関の燃料供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の燃料供給装置は次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、燃料タンク内の燃料を内燃機関に向けて圧送する燃料ポンプと、前記燃料ポンプを駆動するモータと、圧送する燃料の圧力である燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように前記モータへの制御信号のデューティ比をフィードバック制御にて求める制御手段と、を備える内燃機関の燃料供給装置で
あって、前記モータの回転数の上限回転数よりも低い回転数である第1回転数が設定されている。そして、前記制御手段は、前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力に関する情報と、前記目標燃料圧力と、に基づいて前記デューティ比を求めた後、上限ガード値にて前記デューティ比の上限をガードしており、前記モータの回転数を検出可能あるいは推定可能であり、検出あるいは推定した前記モータの回転数に基づいて、前記上限ガード値を変更
しており、前記モータの回転数が、前記第1回転数以下の状態から上昇して前記第1回転数を超えた時点である第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間では、前記上限ガード値を上限所定値に設定し、前記第1タイミングにて、前記上限ガード値を現在の前記デューティ比に設定し、前記第1タイミングの後の期間であって前記モータの回転数が前記第1回転数を超えている第1期間では、前記上限ガード値を徐々に減少させ、前記モータの回転数が前記上限回転数を超えないように前記フィードバック制御を行う。
【0010】
この第1の発明によれば、制御手段は、検出あるいは推定したモータの回転数に基づいて、デューティ比の上限をガードする上限ガード値を変更する。従って、モータの回転数を用いてデューティ比の上限値を適切に上下させることができるので、モータの上限回転数を超えないように適切なフィードバック制御を行うことができる。これにより、モータの脱調や軸受等の摩耗をより抑制することができる。
【0011】
【0012】
この
第1の発明によれば、モータの回転数が徐々に上昇して第1回転数を超えた第1タイミングにて、第1タイミングでのディーティ比を上限ガード値に設定することで、デューティ比がそれ以上大きくならないように抑え込む。また、モータの回転数が第1回転数を超えている第1期間では、上限ガード値を徐々に減少させることで、デューティ比を徐々に減少させる。これにより、モータの上限回転数を超えないように適切なフィードバック制御を行うことが可能であり、モータの脱調や軸受等の摩耗をより抑制することができる。
【0013】
次に、本発明の
第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の燃料供給装置であって、
前記第1回転数よりも低い回転数である第2回転数が設定されており、前記制御手段は、前記第1期間の後の期間であって前記モータの回転数が前記第1回転数以下かつ
前記第2回転数以上である第2期間では、前記上限ガード値を更新することなく維持し、前記第2期間の後の期間であって前記モータの回転数が前記第2回転数未満の期間である第3期間かつ前記目標燃料圧力が実際の燃料圧力以上である場合は、前記上限ガード値を更新することなく維持し、前記第3期間かつ前記目標燃料圧力が実際の燃料圧力未満である場合は、前記上限ガード値を前記上限所定値とする。
【0014】
この
第2の発明によれば、第1の発明において、第1期間に続く第2期間、及び第3期間にて、減少させた上限ガード値を適切なタイミングで上限所定値に戻すことができる。
【0015】
次に、本発明の第3の発明は、
燃料タンク内の燃料を内燃機関に向けて圧送する燃料ポンプと、前記燃料ポンプを駆動するモータと、圧送する燃料の圧力である燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように前記モータへの制御信号のデューティ比をフィードバック制御にて求める制御手段と、を備える内燃機関の燃料供給装置であって、前記モータの回転数の上限回転数よりも低い回転数である第1回転数が設定されている。そして、前記制御手段は、前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力に関する情報と、前記目標燃料圧力と、に基づいて前記デューティ比を求めた後、上限ガード値にて前記デューティ比の上限をガードしており、前記モータの回転数を検出可能あるいは推定可能であり、検出あるいは推定した前記モータの回転数に基づいて、前記上限ガード値を変更しており、前記モータの回転数が、前記第1回転数以下の状態から上昇して前記第1回転数を超えた時点である第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間では、前記上限ガード値を上限所定値に設定し、前記第1タイミングにて、前記上限ガード値を現在の前記デューティ比に設定し、前記第1タイミングの後の期間であって前記モータの回転数が前記第1回転数を超えている第1期間では、前記上限ガード値を更新することなく維持し、前記モータの回転数が前記上限回転数を超えないように前記フィードバック制御を行う。
【0016】
この
第3の発明によれば、モータの回転数が徐々に上昇して第1回転数を超えた第1タイミングにて、第1タイミングでのディーティ比を上限ガード値に設定することで、デューティ比がそれ以上大きくならないように抑え込む。また、モータの回転数が第1回転数を超えている第1期間では、上限ガード値を維持することで、デューティ比を維持する。これにより、モータの上限回転数を超えないように適切なフィードバック制御を行うことが可能であり、モータの脱調や軸受等の摩耗をより抑制することができる。
【0017】
次に、本発明の
第4の発明は、上記第3の発明に係る内燃機関の燃料供給装置であって、
前記第1回転数よりも低い回転数である第2回転数が設定されており、前記制御手段は、前記第1期間の後の期間であって前記モータの回転数が前記第1回転数以下かつ前記第2回転数以上である第2期間では、前記上限ガード値を更新することなく維持し、前記第2期間の後の期間であって前記モータの回転数が前記第2回転数未満の期間である第3期間では、前記上限ガード値を前記上限所定値とする。
【0018】
この
第4の発明によれば、第3の発明において、第1期間に続く第2期間、及び第3期間にて、第1タイミングの時点にて、その時点のデューティ比に設定した上限ガード値を適切なタイミングで上限所定値に戻すことができる。
【0019】
次に、本発明の第5の発明は、
燃料タンク内の燃料を内燃機関に向けて圧送する燃料ポンプと、前記燃料ポンプを駆動するモータと、圧送する燃料の圧力である燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように前記モータへの制御信号のデューティ比をフィードバック制御にて求める制御手段と、を備える内燃機関の燃料供給装置であって、前記モータの回転数の上限回転数よりも低い回転数である第1回転数が設定されている。そして、前記制御手段は、前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力に関する情報と、前記目標燃料圧力と、に基づいて前記デューティ比を求めた後、上限ガード値にて前記デューティ比の上限をガードしており、前記モータの回転数を検出可能あるいは推定可能であり、検出あるいは推定した前記モータの回転数に基づいて、前記上限ガード値を変更しており、前記モータの回転数が、前記第1回転数以下の状態から上昇して前記第1回転数を超えた時点である第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間では、前記上限ガード値を上限所定値に設定し、前記第1タイミングにて、前記上限ガード値を前記上限所定値よりも低い下降所定値に設定し、前記第1タイミングの後の期間であって前記モータの回転数が前記第1回転数を超えている第1期間では、前記上限ガード値を徐々に減少させ、前記モータの回転数が前記上限回転数を超えないように前記フィードバック制御を行う。
【0020】
この
第5の発明によれば、モータの回転数が徐々に上昇して第1回転数を超えた第1タイミングにて、上限ガード値を下降所定値に設定することで、デューティ比の上限を強制的に下げる。また、モータの回転数が第1回転数を超えている第1期間では、上限ガード値を徐々に減少させることで、デューティ比を徐々に減少させる。これにより、モータの上限回転数を超えないように適切なフィードバック制御を行うことが可能であり、モータの脱調や軸受等の摩耗をより抑制することができる。
【0021】
次に、本発明の第6の発明は、燃料タンク内の燃料を内燃機関に向けて圧送する燃料ポンプと、前記燃料ポンプを駆動するモータと、圧送する燃料の圧力である燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように前記モータへの制御信号のデューティ比をフィードバック制御にて求める制御手段と、を備える内燃機関の燃料供給装置であって、前記モータの回転数の上限回転数よりも低い回転数である第1回転数が設定されている。そして、前記制御手段は、前記燃料ポンプから吐出された燃料の圧力に関する情報と、前記目標燃料圧力と、に基づいて前記デューティ比を求めた後、上限ガード値にて前記デューティ比の上限をガードしており、前記モータの回転数を検出可能あるいは推定可能であり、検出あるいは推定した前記モータの回転数に基づいて、前記上限ガード値を変更しており、前記モータの回転数が、前記第1回転数以下の状態から上昇して前記第1回転数を超えた時点である第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間では、前記上限ガード値を上限所定値に設定し、前記第1タイミング、及び前記第1タイミングの後の期間であって前記モータの回転数が前記第1回転数を超えている
第1期間では、前記上限ガード値を徐々に減少させ、前記モータの回転数が前記上限回転数を超えないように前記フィードバック制御を行う。
【0022】
この
第6の発明によれば、モータの回転数が徐々に上昇して第1回転数を超えた第1タイミング及び第1期間では、上限ガード値を徐々に減少させることで、デューティ比を徐々に減少させる。これにより、モータの上限回転数を超えないように適切なフィードバック制御を行うことが可能であり、モータの脱調や軸受等の摩耗をより抑制することができる。
【0023】
次に、本発明の
第7の発明は、上記第5の発明または第6の発明に係る内燃機関の燃料供給装置であって、
前記第1回転数よりも低い回転数である第2回転数が設定されており、前記制御手段は、前記第1期間の後の期間であって前記モータの回転数が前記第1回転数以下かつ前記第2回転数以上である第2期間かつ前記モータの回転数が下降中である場合は、前記上限ガード値を徐々に減少させ、前記第2期間かつ前記モータの回転数が下降中でない場合は、前記上限ガード値を更新することなく維持し、前記第2期間の後の期間であって前記モータの回転数が前記第2回転数未満の期間である第3期間では、前記上限ガード値を前記上限所定値とする。
【0024】
この
第7の発明によれば、第5の発明または第6の発明において、第1期間に続く第2期間、及び第3期間にて、減少させた上限ガード値を適切なタイミングで上限所定値に戻すことができる。
【0025】
次に、本発明の
第8の発明は、
燃料タンク内の燃料を内燃機関に向けて圧送する燃料ポンプと、前記燃料ポンプを駆動するモータと、圧送する燃料の圧力である燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように前記モータへの制御信号のデューティ比をフィードバック制御にて求める制御手段と、を備える内燃機関の燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記モータの回転数を検出可能あるいは推定可能であり、前記目標燃料圧力と実際の燃料圧力との偏差に基づいて算出したデューティ比である燃圧ディーティ比と、前記モータの目標回転数と前記モータの実際の回転数との偏差に基づいて算出したデューティ比である回転数デューティ比と、の2つのデューティ比を算出し、他方のデューティ比以下となるデューティ比を前記モータへの前記制御信号として出力する。
【0026】
この
第8の発明によれば、燃圧デューティ比と回転数デューティ比と、の2つのデューティ比を算出し、他方のデューティ比以下となるデューティ比(すなわち、等しいまたは小さなほうのデューティ比)を制御信号として出力する。例えば、モータが上限回転数を超えそうな場合では、回転数デューティ比のほうが小さくなるように調整することで、モータの上限回転数を超えないように適切なフィードバック制御を行うことが可能であり、モータの脱調や軸受等の摩耗をより抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。本実施の形態にて説明する燃料供給装置10は、車両の燃料タンクTに貯留された燃料FをエンジンE(内燃機関に相当)に供給するための装置である。
●[燃料供給装置10の構成(
図1)]
本実施の形態に係る燃料供給装置10は、
図1に示すように、直列に接続された低圧燃料ポンプユニット20と高圧燃料ポンプユニット30とを備えている。
【0029】
低圧燃料ポンプユニット20は、高圧燃料ポンプユニット30に対して予め決められた圧力の燃料を供給するポンプユニットであり、高圧燃料ポンプユニット30と低圧燃料配管21によって接続されている。低圧燃料ポンプユニット20は、燃料タンクT内に設置された燃料ポンプ22と、燃料ポンプ22を駆動させるモータ22mと、エンジンコントロールユニット40(以下、ECU40という)からの信号に基づいて前記モータ22mを制御する低圧制御部24と、低圧燃料配管21に取付けられて燃料ポンプ22から吐出された燃料Fの圧力Pを検出する圧力センサ26とから構成されている。
【0030】
低圧制御部24(制御手段に相当)は、燃料ポンプ22から吐出された燃料Fの圧力P(以下、燃料圧力Pという)がECU40により設定された目標燃料圧力Psに近づくように、前記モータ22mに印加する電圧のデューティ比をフィードバック制御する。さらに、低圧制御部24は、モータ22mの回転数が当該モータ22mの上限回転数を超えないように、かつ、燃料圧力Pが目標燃料圧力Psに近づくように、モータ22mの回転数等に基づいて前記デューティ比の上限値である上限ガード値を適切に増減できるように構成されており、上限ガード値の増減処理の処理手順について、詳細を後述する。
【0031】
なお、低圧制御部24は、自身がモータ22mに出力する制御信号に基づいて、モータ22mの回転数を推定可能である。例えばモータ22mに出力される制御信号は、周期とデューティ比が可変のPWM信号であり、低圧制御部24は、自身が出力しているPWM信号の周期とデューティ比とに基づいてモータ22mの回転数を推定することができる。もちろん、モータ22mの回転数を検出可能なモータ回転数検出手段を設けて、当該モータ回転数検出手段からの検出信号に基づいて、モータ22mの回転数を検出するようにしてもよい。このように、低圧制御部24は、モータ22mの回転数を推定可能、あるいは検出可能である。
【0032】
なおECU40は、利用者が操作するアクセルペダルの開度を検出するアクセル(開度)センサ41からの検出信号が入力され、エンジンの吸気量を制御するスロットルバルブ駆動モータ42に制御信号を出力し、スロットル(開度)センサ43から検出信号が入力される。またECU40には、図示省略した種々の検出手段(エンジンEの運転状態を検出可能な検出手段であり、例えば吸入空気流量センサや、クーラント温度センサ、クランク回転センサや、気筒判別用センサ等)からの検出信号が入力され、エンジンEの運転状態を検出可能である。そしてECU40は、検出したエンジンEの運転状態に基づいて目標燃料圧力を求め、求めた目標燃料圧力を低圧制御部24に出力する。
【0033】
高圧燃料ポンプユニット30は、低圧燃料ポンプユニット20により供給された燃料Fの圧力Pを上昇させてエンジンEに圧送するポンプユニットであり、高圧燃料配管31によりエンジンEのデリバリパイプ7に接続されている。高圧燃料ポンプユニット30は、燃料ポンプ32と、ECU40からの信号に基づいて燃料ポンプ32を制御する高圧制御部34と、高圧燃料配管31に取付けられて燃料ポンプ32から吐出された燃料圧力を検出する圧力センサ36とから構成されている。そして、高圧燃料ポンプユニット30によりエンジンEのデリバリパイプ7に供給された高圧燃料がそのデリバリパイプ7に装着された複数のインジェクタ5からエンジンの燃焼室(図示省略)内に噴射されるようになる。ここで、デリバリパイプ7内の余剰燃料は、バルブ37v、リターン配管37を介して低圧燃料配管21に戻される。
【0034】
●[従来の、低圧制御部による低圧燃料ポンプユニットのモータの制御(
図2、
図3)]
ここで、
図2及び
図3を用いて、従来の、低圧制御部による低圧燃料ポンプユニットのモータ制御における、制御ブロック(
図2)と、処理手順を示すフローチャート(
図3)と、の概要について説明する。なお
図3に示す処理は、例えば所定時間間隔にて起動される。
【0035】
図2の制御ブロックに示すように、低圧燃料ポンプユニットから吐出された燃料の圧力を検出する圧力センサからの検出信号はブロックB60に入力され、ブロックB60は、入力された検出信号を実燃料圧力に変換する(
図3のステップS20に相当)。そしてブロックB60から出力された実燃料圧力は、ノードN10に減算項として入力される。またノードN10には、ECUからの目標燃料圧力が加算項として入力される(
図3のステップS10にてECU40から目標燃料圧力を取り込み、取り込んだ目標燃料圧力が、ノードN10に入力される)。そしてノードN10は、目標燃料圧力と実燃料圧力との差である圧力偏差ΔPを出力する(
図3のステップS30に相当)。
【0036】
ノードN10から出力された圧力偏差ΔPは、ゲインKPを経由して比例制御量に変換されてノードN20に加算項として入力される。また圧力偏差ΔPは、ブロックB10及びゲインKIを経由して積分制御量に変換されてノードN20に加算項として入力される。また圧力偏差ΔPは、ブロックB20及びゲインKDを経由して微分制御量に変換されてノードN20に加算項として入力される。そしてノードN20は、比例制御量と積分制御量と微分制御量を加算した制御量をブロックB30に出力する。そして、ブロックB30では、入力された制御量をデューティ比に変換してブロックB40に出力する(
図3のステップS40に相当)。
【0037】
そしてブロックB40では、入力されたデューティ比が所定範囲内に収まるように、デューティ比の上限ガード処理(
図3のステップS70、S90Aに相当)、及び下限ガード処理(
図3のステップS80、S90Bに相当)を行い、上下限ガードしたデューティ比をブロックB50に出力する。なお、
図2及び
図3の例では、上限ガード値は一定の値であり、上限ガード値は増減しない(例えば上限ガード値=上限所定値=99[%](一定)である)。
【0038】
そしてブロックB50では、入力されたディーティ比を、低圧燃料ポンプユニットのモータの制御信号(例えばPWM信号)へと変換し、変換した制御信号を、モータへと出力する(
図3のステップS100に相当)。そしてモータの出力に基づいた燃料圧力が、圧力センサに入力される。
【0039】
上記した、従来の制御では、モータの回転数が上限回転数を超えないような制御を特に行っていないので、例えば目標燃料圧力が急激に上昇した場合、デューティ比が急激に増大し、モータの回転数が上限回転数を一時的に超える可能性が考えられる。モータの回転数が上限回転数を超えた場合、モータが脱調したり、モータの軸受の摩耗量が増大したりする可能性があるので、好ましくない。本願では、以下に説明する第1の実施の形態〜第5の実施の形態にて説明する処理を行うことで、モータの回転数が上限回転数を超えないように適切にデューティ比の上限をガードし、モータの脱調を防止し、モータの軸受の摩耗を抑制し、モータの寿命をより向上させるものである。
【0040】
●[第1の実施の形態における低圧燃料ポンプユニット20の低圧制御部24の処理と動作(
図4〜
図7)]
図4に、第1の実施の形態における制御ブロックを示す。この第1の実施の形態の制御ブロック(
図4)は、従来の制御の制御ブロック(
図2)に対して、ブロックB70、B80が追加され、ブロックB80にて算出した上限ガード値をブロックB40にて使用する点が異なる。そして上限ガード値は、モータ回転数と目標燃料圧力と実燃料圧力に基づいて増減される点が異なる。また、
図5に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートに対して、ステップS50(
図4のブロックB70、B80に相当)が追加されている点が異なり、このステップS50のSB100の処理の詳細を
図6に示す。以下、
図6に示すSB100の処理手順について説明する。なお
図5に示す処理は、例えば所定時間間隔にて起動される。
【0041】
図6に示すステップSB110にて、低圧制御部(制御手段に相当)は、自身が出力している制御信号(
図4中のブロックB50からモータ22mへ出力している制御信号)に基づいて、モータ22mの回転数を推定し、ステップSB120に進む。なお、モータ回転数検出手段を設けて、当該モータ回転数検出手段からの検出信号に基づいて、モータ22mの回転数を検出するようにしてもよい。
【0042】
ステップSB120にて、低圧制御部は、モータ回転数が第1回転数より高いか否かを判定し、第1回転数より高い場合(Yes)はステップSB130に進み、第1回転数以下である場合(No)はステップSB140に進む。なお、第1回転数は、モータ22mの上限回転数よりも低い回転数であり、かつ上限回転数の近傍の回転数である。また、後述する第2回転数は、第1回転数よりも低い回転数である。例えばモータ22mの上限回転数が10000[rpm]の場合、第1回転数は9500[rpm]程度に設定され、第2回転数は9000[rpm]程度に設定される。
【0043】
ステップSB130に進んだ場合、低圧制御部は、第1タイミングであるか否かを判定し、第1タイミングである場合(Yes)はステップSB190Aに進み、第1タイミングでない場合(No)はステップSB190Bに進む。なお、第1タイミングは、
図7に示すように、モータ回転数が、第1回転数以下の状態から上昇して第1回転数を超えた時点(符号P1の時点)である。例えば低圧制御部は、SB100の処理を終了する直前(SB100の処理の最後で)にて、モータ回転数が第1回転数以下であるか否かを記憶しておき、次回のステップSB130にて、記憶しておいた前回のモータ回転数が第1回転数以下であった場合、第1タイミングである、と判定する。
【0044】
なお、第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間(
図7参照)では、上限ガード値は、上限所定値(例えば99[%])に設定されている。
【0045】
ステップSB190Aに進んだ場合(第1タイミングの時点の場合)、低圧制御部は、上限ガード値に、その時点のデューティ比の値を代入(設定)して(
図7参照)処理を終了する。
【0046】
ステップSB190Bに進んだ場合(第1期間の場合)、低圧制御部は、上限ガード値を所定量だけ減衰(減算)させて(
図7参照)処理を終了する。なお、第1期間は、第1タイミングの後の期間であって、モータ回転数が第1回転数を超えている期間である(
図7参照)。
【0047】
ステップSB140に進んだ場合、低圧制御部は、モータ回転数が第2回転数未満であるか否かを判定し、第2回転数未満である場合(Yes)はステップSB150に進み、第2回転数以上である場合(No)(第2期間の場合)は処理を終了する(上限ガード値を更新することなく維持する)。なお、第2期間は、第1期間の後の期間であって、モータ回転数が、第1回転数以下、かつ第2回転数以上である期間である(
図7参照)。
【0048】
ステップSB150に進んだ場合(第3期間の場合)、低圧制御部は、目標燃料圧力が実燃料圧力(実際の燃料圧力)未満であるか否かを判定し、実燃料圧力未満である場合(Yes)(
図7の期間Bに相当)はステップSB190Cに進み、実燃料圧力以上である場合(No)(
図7の期間Aに相当)は処理を終了する(上下限ガード値を更新することなく維持する)。なお、第3期間は、第2期間の後の期間であって、モータ回転数が第2回転数未満の期間である。また期間Aは、第3期間であり、かつ目標燃料圧力が実燃料圧力以上の期間である。また期間Bは、第3期間であり、かつ目標燃料圧力が実燃料圧力未満の期間である。
【0049】
ステップSB190Cに進んだ場合(
図7の期間Bの場合)、低圧制御部は、上限ガード値に上限所定値(例えば99[%])を代入(設定)して処理を終了する。
【0050】
以上に説明した第1の実施の形態では、
図7に示すように、モータ回転数が第1回転数を超えた第1タイミングの時点にて、上限ガード値を、その時点のデューティ比とすることで、デューティ比が増大することを抑えている。そして第1期間では、上限ガード値を徐々に減少させることで、デューティ比の上限を徐々に減少させている。従って、モータ回転数が第1回転数を超えた第1タイミング及び第1期間にて、モータ回転数が上限回転数に達しないように、デューティ比を減少させることができる。また、モータ回転数が第2回転数未満となった第3期間において、目標燃料圧力が実燃料圧力未満となった場合(
図7中の期間Bの場合)に上限ガード値を上限所定値に戻しており、減少させた上限ガード値を適切なタイミングにて上限所定値に戻すことができる。
【0051】
なお、低圧制御部は、
図5のステップS40にて、目標燃料圧力と、実際の燃料の圧力に関する情報とから、デューティ比を算出する。ここで、実際の燃料の圧力に関する情報とは、例えば、圧力センサ26から取り込んだ検出信号から求めた燃料の圧力であってもよいし、内燃機関の運転状態やモータ22mの回転数等から推定した燃料の圧力であってもよいし、ECU40から受信した燃料圧力等であってもよい。
【0052】
●[第2の実施の形態における低圧燃料ポンプユニット20の低圧制御部24の処理と動作(
図8〜
図11)]
図8に、第2の実施の形態における制御ブロックを示す。この第2の実施の形態の制御ブロック(
図8)は、従来の制御の制御ブロック(
図2)に対して、ブロックB70、B82が追加され、ブロックB82にて算出した上限ガード値をブロックB40にて使用する点が異なる。そして上限ガード値は、モータ回転数に基づいて増減される点が異なる。また、
図9に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートに対して、ステップS52(
図8のブロックB70、B82に相当)が追加されている点が異なり、このステップS52のSB200の処理の詳細を
図10に示す。以下、
図10に示すSB200の処理手順について説明する。なお
図9に示す処理は、例えば所定時間間隔にて起動される。
【0053】
図10に示すステップSB210にて、低圧制御部(制御手段に相当)は、
図6に示すステップSB110と同様に、モータ22mの回転数を推定し、ステップSB220に進む。なおステップSB110にて説明したように、モータ回転数検出手段を設けて、当該モータ回転数検出手段からの検出信号に基づいて、モータ22mの回転数を検出するようにしてもよい。なお以下に記載する、上限回転数、第1回転数、第2回転数、第1タイミング、第1期間、第2期間、第3期間等は、第1の実施の形態にて説明したとおりであるので、説明を省略する。
【0054】
ステップSB220にて、低圧制御部は、モータ回転数が第1回転数より高いか否かを判定し、第1回転より高い場合(Yes)はステップSB230に進み、第1回転数以下である場合(No)はステップSB240に進む。
【0055】
ステップSB230に進んだ場合、低圧制御部は、第1タイミングであるか否かを判定し、第1タイミングである場合(Yes)はステップSB290Aに進み、第1タイミングでない場合(No)(第1期間の場合)は処理を終了する(上限ガード値を更新することなく維持する)。
【0056】
なお、第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間(
図11参照)では、上限ガード値は、上限所定値(例えば99[%])に設定されている。
【0057】
ステップSB290Aに進んだ場合(第1タイミングの時点の場合)、低圧制御部は、上限ガード値に、その時点のデューティ比の値を代入(設定)して(
図11参照)処理を終了する。
【0058】
ステップSB240に進んだ場合、低圧制御部は、モータ回転数が第2回転数未満であるか否かを判定し、第2回転数未満である場合(Yes)はステップSB290Cに進み、第2回転数以上である場合(No)(第2期間の場合)は処理を終了する(上限ガード値を更新することなく維持する)。
【0059】
ステップSB290Cに進んだ場合(第3期間の場合)、低圧制御部は、上限ガード値に上限所定値(例えば99[%])を代入(設定)して処理を終了する。
【0060】
以上に説明した第2の実施の形態では、
図11に示すように、モータ回転数が第1回転数を超えた第1タイミングの時点にて、上限ガード値を、その時点のデューティ比とすることで、デューティ比が増大することを抑えている。そして第1期間では、上限ガード値を維持している。従って、モータ回転数が第1回転数を超えた第1タイミング及び第1期間にて、モータ回転数が上限回転数に達しないように、デューティ比がそれ以上に増大しないように抑えることができる。また、モータ回転数が第2回転数未満となった第3期間において、上限ガード値を上限所定値に戻しており、減少させた上限ガード値を適切なタイミングにて上限所定値に戻すことができる。
【0061】
●[第3の実施の形態における低圧燃料ポンプユニット20の低圧制御部24の処理と動作(
図12〜
図15)]
図12に、第3の実施の形態における制御ブロックを示す。この第3の実施の形態の制御ブロック(
図12)は、従来の制御の制御ブロック(
図2)に対して、ブロックB70、B83が追加され、ブロックB83にて算出した上限ガード値をブロックB40にて使用する点が異なる。そして上限ガード値は、モータ回転数に基づいて増減される点が異なる。また、
図13に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートに対して、ステップS53(
図12のブロックB70、B83に相当)が追加されている点が異なり、このステップS53のSB300の処理の詳細を
図14に示す。以下、
図14に示すSB300の処理手順について説明する。なお
図13に示す処理は、例えば所定時間間隔にて起動される。
【0062】
図14に示すステップSB310にて、低圧制御部(制御手段に相当)は、
図6に示すステップSB110と同様に、モータ22mの回転数を推定し、ステップSB320に進む。なおステップSB110にて説明したように、モータ回転数検出手段を設けて、当該モータ回転数検出手段からの検出信号に基づいて、モータ22mの回転数を検出するようにしてもよい。なお以下に記載する、上限回転数、第1回転数、第2回転数、第1タイミング、第1期間、第2期間、第3期間等は、第1の実施の形態にて説明したとおりであるので、説明を省略する。
【0063】
ステップSB320にて、低圧制御部は、モータ回転数が第1回転数より高いか否かを判定し、第1回転数より高い場合(Yes)はステップSB330に進み、第1回転数以下である場合(No)はステップSB340に進む。
【0064】
ステップSB330に進んだ場合、低圧制御部は、第1タイミングであるか否かを判定し、第1タイミングである場合(Yes)はステップSB390Aに進み、第1タイミングでない場合(No)(第1期間の場合)はステップSB390Bに進む。
【0065】
なお、第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間(
図15参照)では、上限ガード値は、上限所定値(例えば99[%])に設定されている。
【0066】
ステップSB390Aに進んだ場合(第1タイミングの時点の場合)、低圧制御部は、上限ガード値に、上限所定値よりも低い下降所定値を代入(設定)して(
図15参照)処理を終了する。なお、例えば上限所定値が99[%]の場合、下降所定値は90[%]程度の値に設定される。
【0067】
ステップSB390Bに進んだ場合(第1期間の場合)、低圧制御部は、上限ガード値を所定量だけ減衰(減算)させて(
図15参照)処理を終了する。
【0068】
ステップSB340に進んだ場合、低圧制御部は、モータ回転数が第2回転数未満であるか否かを判定し、第2回転数未満である場合(Yes)はステップSB390Cに進み、第2回転数以上である場合(No)(第2期間の場合)はステップSB360に進む。
【0069】
ステップSB360に進んだ場合(第2期間の場合)、低圧制御部は、モータ回転数が第1回転数から下降中であるか否かを判定し、第1回転数から下降中である場合(Yes)はステップSB390Dに進み、第1回転数からの下降中でない場合(No)は処理を終了する(上限ガード値を更新することなく維持する)。第1回転数から下降中であるか否かの判定方法の例としては、例えば、SB300の処理を終了する直前(SB300の処理の最後)にて、モータ回転数を記憶しておき、さらにフラグを用意し、モータ回転数が第1回転数より高い場合に前記フラグをセットし、モータ回転数が第2回転数未満の場合に前記フラグをクリアする。そしてステップSB360にて、フラグがセットされている場合、かつ記憶しているモータ回転数よりも今回のモータ回転数のほうが低い場合に、モータ回転数が第1回転数から下降中であると判定する。
【0070】
ステップSB390Dに進んだ場合、低圧制御部は、上限ガード値を所定量だけ減衰(減算)させて(
図15参照)処理を終了する。なお、減衰量は、ステップSB390Bと同じであってもよいし、ステップSB390Bと異なってもよい。
【0071】
ステップSB390Cに進んだ場合(第3期間の場合)、低圧制御部は、上限ガード値に上限所定値(例えば99[%])を代入(設定)して処理を終了する。
【0072】
以上に説明した第3の実施の形態では、
図15に示すように、モータ回転数が第1回転数を超えた第1タイミングの時点にて、上限ガード値を、下降所定値とすることで、デューティ比の上限を抑えている。そして第1期間では、上限ガード値を徐々に減少させることで、デューティ比の上限を徐々に減少させている。従って、モータ回転数が第1回転数を超えた第1タイミング及び第1期間にて、モータ回転数が上限回転数に達しないように、デューティ比を減少させることができる。また、モータ回転数が第2回転数未満となった第3期間において、上限ガード値を上限所定値に戻しており、減少させた上限ガード値を適切なタイミングにて上限所定値に戻すことができる。
【0073】
●[第4の実施の形態における低圧燃料ポンプユニット20の低圧制御部24の処理と動作(
図16〜
図19)]
図16に、第4の実施の形態における制御ブロックを示す。この第4の実施の形態の制御ブロック(
図16)は、従来の制御の制御ブロック(
図2)に対して、ブロックB70、B84が追加され、ブロックB84にて算出した上限ガード値をブロックB40にて使用する点が異なる。そして上限ガード値は、モータ回転数に基づいて増減される点が異なる。また、
図17に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートに対して、ステップS54(
図16のブロックB70、B84に相当)が追加されている点が異なり、このステップS54のSB400の処理の詳細を
図18に示す。以下、
図18に示すSB400の処理手順について説明する。なお
図17に示す処理は、例えば所定時間間隔にて起動される。
【0074】
図18に示すステップSB410にて、低圧制御部(制御手段に相当)は、
図6に示すステップSB110と同様に、モータ22mの回転数を推定し、ステップSB420に進む。なおステップSB110にて説明したように、モータ回転数検出手段を設けて、当該モータ回転数検出手段からの検出信号に基づいて、モータ22mの回転数を検出するようにしてもよい。なお以下に記載する、上限回転数、第1回転数、第2回転数、第1タイミング、第1期間、第2期間、第3期間等は、第1の実施の形態にて説明したとおりであるので、説明を省略する。
【0075】
ステップSB420にて、低圧制御部は、モータ回転数が第1回転数より高いか否かを判定し、第1回転数より高い場合(Yes)はステップSB490Bに進み、第1回転数以下である場合(No)はステップSB440に進む。
【0076】
ステップSB490Bに進んだ場合(第1タイミングの時点及び第1期間の場合)、低圧制御部は、上限ガード値を所定量だけ減衰(減算)させて(
図19参照)処理を終了する。
【0077】
なお、第1タイミングまでの期間である所定値ガード期間(
図19参照)では、上限ガード値は、上限所定値(例えば99[%])に設定されている。
【0078】
ステップSB440に進んだ場合、低圧制御部は、モータ回転数が第2回転数未満であるか否かを判定し、第2回転数未満である場合(Yes)はステップSB490Cに進み、第2回転数以上である場合(No)(第2期間の場合)はステップSB460に進む。
【0079】
ステップSB460に進んだ場合(第2期間の場合)、低圧制御部は、モータ回転数が第1回転数から下降中であるか否かを判定し、第1回転数から下降中である場合(Yes)はステップSB490Dに進み、第1回転数からの下降中でない場合(No)は処理を終了する(上限ガード値を更新することなく維持する)。なお、第1回転数から下降中であるか否かの判定方法の例は、第3の実施の形態にて説明した方法と同じであるので説明を省略する。
【0080】
ステップSB490Dに進んだ場合、低圧制御部は、上限ガード値を所定量だけ減衰(減算)させて(
図19参照)処理を終了する。なお、減衰量は、ステップSB490Bと同じであってもよいし、ステップSB490Bと異なってもよい。
【0081】
ステップSB490Cに進んだ場合(第3期間の場合)、低圧制御部は、上限ガード値に上限所定値(例えば99[%])を代入(設定)して処理を終了する。
【0082】
以上に説明した第4の実施の形態は、
図19に示すように、第3の実施の形態(
図15)に対して、第1タイミングにて上限ガード値を下降所定値に設定しない点が異なるが、モータ回転数が第1回転数を超えた第1タイミング及び第1期間にて、モータ回転数が上限回転数に達しないように、デューティ比の上限を減少させることができる。また、モータ回転数が第2回転数未満となった第3期間において、上限ガード値を上限所定値に戻しており、減少させた上限ガード値を適切なタイミングにて上限所定値に戻すことができる。
【0083】
●[第5の実施の形態における低圧燃料ポンプユニット20の低圧制御部24の処理と動作(
図20〜
図22)]
図20に、第5の実施の形態における制御ブロックを示す。この第5の実施の形態の制御ブロック(
図20)は、従来の制御の制御ブロック(
図2)に対して、ブロックB35、B110、B120、B130、B160、ノードN110、N120、LP、LI、LD等が追加されている点が異なる。またブロックB35にて、ブロックB30にて算出した燃料デューティ比と、ブロックB130にて算出した回転数デューティ比と、の小さなほう(同じ場合は、どちらか一方)を選択する点が異なる。また、
図21に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートのステップS40が、
図21のステップS45〜ステップS47に変更されている点が異なり、このステップ45のSB500の処理、ステップS46のSB600の処理、ステップS47のSB700の処理、の詳細を
図22に示す。以下、
図22に示すSB500、SB600、SB700の処理手順について説明する。なお
図21に示す処理は、例えば所定時間間隔にて起動される。
【0084】
[SB500の処理手順]
図22に示すSB500のステップSB510にて、低圧制御部(制御手段に相当)は、ECU40から目標燃料圧力を取り込み、ステップSB520に進む。そして低圧制御部は、ステップSB520にて、圧力センサ26からの検出信号に基づいて実際の燃料圧力を求め、ステップSB530に進む。そしてステップSB530にて、低圧制御部は、目標燃料圧力と実際の燃料圧力との差である圧力偏差を求め、ステップSB540に進む。
【0085】
ステップSB540にて、低圧制御部は、実燃料圧力が所定圧力(例えば400[kPa])以上であるか否かを判定し、所定圧力以上である場合(Yes)はステップSB550Aに進み、所定圧力未満である場合(No)はステップSB550Bに進む。
【0086】
ステップSB550Aに進んだ場合、低圧制御部は、偏差上限に第1所定量を代入(設定)してステップSB560に進む。またステップSB550Bに進んだ場合、低圧制御部は、偏差上限に第2所定量を代入(設定)してステップSB560に進む。なお、第1所定量、第2所定量は、例えば数10[kPa]に相当する量であり、第1所定量<第2所定量に設定されている。
【0087】
ステップSB560にて、低圧制御部は、ステップSB530にて求めた圧力偏差の絶対値が偏差上限より大きいか否か(圧力偏差が、−偏差上限〜+偏差上限の範囲を外れているか否か)を判定し、偏差上限以上である(範囲を外れている)場合(Yes)はステップSB570に進み、偏差上限未満である(範囲内である)場合(No)はステップSB580に進む。
【0088】
ステップSB570に進んだ場合、低圧制御部は、圧力偏差を−偏差上限〜+偏差上限の範囲内に収まるようにガードする。
【0089】
ステップSB580にて、低圧制御部は、圧力偏差に基づいて燃圧デューティ比を算出し、処理を終了する。なお、圧力偏差に基づいて燃圧デューティ比を求める手順は、従来と同等の手順であるので、詳細な説明は省略する。
【0090】
[SB600の処理手順]
図22に示すSB600のステップSB610にて、低圧制御部(制御手段に相当)は、ECU40から目標回転数(モータ22mの目標回転数)を取り込み、ステップSB620に進む。そして低圧制御部は、ステップSB620にて、
図6に示すステップSB110と同様に、モータ22mの回転数を推定し、ステップSB630に進む。なおステップSB110にて説明したように、モータ回転数検出手段を設けて、当該モータ回転数検出手段からの検出信号に基づいて、モータ22mの回転数を検出するようにしてもよい。そしてステップSB630にて、低圧制御部は、目標回転数と実際の回転数との差である回転数偏差を求め、ステップSB640に進む。
【0091】
ステップSB640にて、低圧制御部は、回転数偏差に基づいて回転数デューティ比を算出し、処理を終了する。なお、回転数偏差に基づいて回転数デューティ比を求める手順については詳細な説明を省略するが、例えば実際の回転数が上限回転数の近傍の回転数である場合、回転数デューティ比を最大値よりもやや小さな値に設定する。
【0092】
[SB700の処理手順]
図22に示すSB700のステップSB710にて、低圧制御部(制御手段に相当)は、SB500にて求めた燃圧デューティ比が、SB600にて求めた回転数デューティ比以上であるか否かを判定し、回転数デューティ比以上である場合(Yes)はステップSB720Aに進み、回転数デューティ比未満である場合(No)はステップSB720Bに進む。
【0093】
ステップSB720Aに進んだ場合、低圧制御部は、デューティ比に回転数デューティ比を代入(設定)して処理を終了する。またステップSB720Bに進んだ場合、低圧制御部は、デューティ比に燃圧デューティ比を代入(設定)して処理を終了する。
【0094】
以上に説明した第5の実施の形態では、燃圧デューティ比(第1〜第4の実施の形態におけるデューティ比に相当)と、回転数デューティ比(新たに設定したデューティ比)と、を求め、最終的な出力に使うデューティ比を、燃圧デューティ比と回転数デューティ比の小さなほう(同一の場合は、いずれか一方)とする(他方のデューティ比以下となるデューティ比を、最終的な出力に使うデューティ比とする)ことで、モータ回転数が上限回転数に達しないようにしている。
【0095】
本発明の内燃機関の燃料供給装置は、本実施の形態で説明した構成、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば処理手順を説明したフローチャートは、本実施の形態にて説明したものに限定されるものではない。
【0096】
また、
図7、
図11、
図15、
図19に示す動作波形は、第1〜第4の実施の形態のそれぞれにおける動作の例を示すものであり、この波形の動作に限定されるものではない。
【0097】
本実施の形態の説明では、内燃機関の例として車両のエンジンを用いて説明したが、種々の内燃機関に適用することが可能である。
【0098】
また、目標燃料圧力(第1〜第5の実施の形態)、目標回転数(第5の実施の形態)は、ECU40が求めて低圧制御部に出力するようにしてもよいし、低圧制御部にて求めてもよい。
【0099】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【0100】
また、第1〜第4の実施の形態のいずれかの第1タイミング及び第1期間における上限ガード値の算出方法と、第1〜第4の実施の形態のいずれかの第2期間及び第3期間における上限ガード値の算出方法と、をどのように組み合わせてもよい。例えば、第3の実施の形態にて説明した第1タイミング及び第1期間における上限ガード値の算出方法と、第1の実施の形態にて説明した第2期間及び第3期間における上限ガード値の算出方法と、を組み合わせるようにしてもよい。