特許第6333622号(P6333622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333622定着装置および定着装置の定着温度制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333622
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】定着装置および定着装置の定着温度制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20180521BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20180521BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
   G03G21/00 370
   H05B3/00 335
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-103771(P2014-103771)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2015-219419(P2015-219419A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新村 尚子
(72)【発明者】
【氏名】高木 修
【審査官】 松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−252190(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034744(WO,A1)
【文献】 特開2010−002857(JP,A)
【文献】 特開2004−078114(JP,A)
【文献】 特開2007−232819(JP,A)
【文献】 特開2000−162909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
H05B 3/00
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成された媒体の大きさを判定する判定手段と、
エンドレス形状の回転体と、前記媒体の搬送方向に対して垂直な2本以上の平行線に沿って並ぶとともに前記平行線上の共通の箇所で分割されて二次元配列をなし、前記回転体の内側に接触して配置された複数の発熱部材と、これらの発熱部材に対する通電を個別に切替える切替部とを有し、前記媒体を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段に前記複数の発熱部材の位置で圧接してニップを形成し、前記加熱手段とともに前記媒体を前記搬送方向に挟持搬送する加圧手段と、
前記判定手段が判定した前記媒体の大きさに基づいて前記媒体が通過する位置に対応する発熱部材を前記二次元配列において前記搬送方向に並ぶグループ単位で選択して前記切替部により同時に通電し、前記加熱手段における前記媒体への加熱を制御する加熱制御手段と、を備え
前記加熱手段が、前記平行線上で分割された複数の発熱抵抗層を有し、
前記平行線に沿ってそれぞれ前記複数の発熱抵抗層が露出するようにパターニングされたマスキング層で、前記複数の発熱抵抗層が被覆され、
前記複数の発熱部材が、前記マスキング層から露出した前記複数の発熱抵抗層の露出部であり、前記複数の発熱部材の前記搬送方向の幅が、前記マスキング層の前記複数の発熱抵抗層をマスキングする部分の前記搬送方向の幅よりも狭いことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記媒体の大きさとともに前記媒体の厚さを判定し、
前記加熱制御手段は、前記判定の結果に基づいて前記媒体が通過する位置に対応する発熱部材の中から非通電にする発熱部材を選択し、前記加熱手段における加熱を抑制することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記複数の発熱部材は、前記搬送方向の上流側が下流側よりも高い温度に加熱されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記複数の発熱部材は、前記搬送方向の上流側が下流側よりも前記搬送方向の長さが長く形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置。
【請求項5】
媒体の搬送方向に対して垂直な2本以上の平行線に沿って並ぶとともに前記平行線上の共通の箇所で分割されて二次元配列をなす複数の発熱部材とこれらの発熱部材に対する通電を個別に切替える切替部とを有し、前記平行線上で分割された複数の発熱抵抗層が、前記平行線に沿ってそれぞれ前記複数の発熱抵抗層が露出するようにパターニングされたマスキング層で被覆され、前記複数の発熱部材が、前記マスキング層から露出した前記複数の発熱抵抗層の露出部であり、前記複数の発熱部材の前記搬送方向の幅が、前記マスキング層の前記複数の発熱抵抗層をマスキングする部分の前記搬送方向の幅よりも狭く、前記媒体を加圧加熱して前記媒体にトナー像を定着させる定着装置の定着温度制御プログラムであって、
前記媒体の大きさを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで判定した前記媒体の大きさに基づいて前記媒体が通過する位置に対応する発熱部材を前記二次元配列において前記搬送方向に並ぶグループ単位で選択して前記切替部により同時に通電し、前記媒体への加熱を制御する加熱制御ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする定着装置の定着温度制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、定着装置および定着装置の定着温度制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置に搭載される定着装置の熱源として、ハロゲンランプを代表とする赤外線を発するランプや電磁誘導によりジュール熱で加熱する方式が実用化されている。これらの加熱方式では、定着装置全体を暖めるために時間を要するだけでなく、電気エネルギーを多く必要とする。また、定着装置内で生じた熱が画像形成装置内の他のユニットに伝わり、不具合を起こす等の問題もあった。
【0003】
また、近年では装置の立ち上がりの時間短縮化、省エネルギー化、余分な熱の発生防止等も重要な課題となっている。このため、定着装置内に抵抗値の異なる発熱抵抗体を2本設け、発熱抵抗体のそれぞれを異なる電源入力系統に接続することで、定着装置の待機中に、一方の発熱抵抗体を常に通電させてプレヒートを行うものも提案されている。このような構造にすることにより、様々なサイズの記録紙に対応しつつ定着ニップ中で最適な温度勾配を実現させ良好な定着特性が得られる。
【0004】
しかしながら、上記従来技術の装置構造では、小サイズ紙と大サイズ紙が混在して供給されるような場合には、ヒータへの電力供給を両端部と中央部の双方で必要最小限に細かく制御することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−243537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、小サイズ紙と大サイズ紙が混在して供給されるような場合であっても、通紙領域に対する集中的かつ安定した加熱を可能とし、定着品質の向上と省エネルギー化を達成できる定着装置および定着装置の定着温度制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の定着装置は、トナー像が形成された媒体の大きさを判定する判定手段と、エンドレス形状の回転体と、前記媒体の搬送方向に対して垂直な2本以上の平行線に沿って並ぶとともに前記平行線上の共通の箇所で分割されて二次元配列をなし、前記回転体の内側に接触して配置された複数の発熱部材と、これらの発熱部材に対する通電を個別に切替える切替部とを有し、前記媒体を加熱する加熱手段と、前記加熱手段に前記複数の発熱部材の位置で圧接してニップを形成し、前記加熱手段とともに前記媒体を前記搬送方向に挟持搬送する加圧手段と、前記判定手段が判定した前記媒体の大きさに基づいて前記媒体が通過する位置に対応する発熱部材を前記二次元配列において前記搬送方向に並ぶグループ単位で選択して前記切替部により同時に通電し、前記加熱手段における前記媒体への加熱を制御する加熱制御手段と、を備え、前記加熱手段が、前記平行線上で分割された複数の発熱抵抗層を有し、前記平行線に沿ってそれぞれ前記複数の発熱抵抗層が露出するようにパターニングされたマスキング層で、前記複数の発熱抵抗層が被覆され、前記複数の発熱部材が、前記マスキング層から露出した前記複数の発熱抵抗層の露出部であり、前記複数の発熱部材の前記搬送方向の幅が、前記マスキング層の前記複数の発熱抵抗層をマスキングする部分の前記搬送方向の幅よりも狭いことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る定着装置が搭載される画像形成装置の構成例を示す図。
図2】実施形態1における画像形成部の一部を拡大して示す構成図。
図3】実施形態1におけるMFPの制御系の構成例を示すブロック図。
図4】実施形態1に係る定着装置の構成例を示す図。
図5】実施形態1における発熱部材群の配置図。
図6】実施形態1における発熱部材群の形成方法を説明する上面図。
図7】実施形態1における発熱部材群の形成方法を説明する側面図。
図8】実施形態1における発熱部材群の別パターンの配置図。
図9】用紙上のトナー温度および定着ベルトの表面温度のシミュレーション結果を示す図。
図10】加熱部材における発熱抵抗体の露出部分のサイズ、本数に応じた表面温度分布のシミュレーション結果を示す図。
図11】実施形態1におけるMFPの制御動作の具体例を示すフローチャート。
図12】実施形態2における発熱部材群の加熱パターンの一例を示す上面図。
図13】実施形態2におけるMFPの制御動作の具体例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る定着装置が搭載される画像形成装置の構成例を示す図である。図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0010】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13が開閉自在に設けられている。また、本体11の上部には操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、各種のキーとタッチパネル式の表示部を有している。
【0011】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと呼ぶ)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向(図1では奥行方向)に配置されている。
【0012】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。また、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
【0013】
更に、本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙Pを収容する複数の給紙カセット18を備えている。プリンタ部17は、感光体ドラムと、露光装置としてLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体を走査して画像を生成する。
【0014】
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データを処理して用紙に画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置されている。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応した複数の走査ヘッド19Y、19M、19C、19Kを有している。
【0015】
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大して示す構成図である。尚、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを例に説明する。
【0016】
画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電チャージャ23K、現像器24K、一次転写ローラ(転写器)25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
【0017】
画像形成部20Kの帯電チャージャ23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナーおよびキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、静電潜像の現像を行う。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0018】
また、図1に示すように、画像形成部20Y〜20Kの上部には、現像器24Y〜24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジを含む。
【0019】
中間転写ベルト21は、循環的に移動する。中間転写ベルト21は、駆動ローラ31および従動ローラ32に張架される。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y〜22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、一次転写ローラ25Kにより一次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
【0020】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、二次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と二次転写ローラ33間を用紙Pが通過する際に、二次転写ローラ33により二次転写電圧が用紙Pに印加される。そして中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Pに二次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0021】
また、図1で示すように、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Pを搬送する給紙ローラ35が設けられている。更に、二次転写ローラ33の下流には定着装置36が設けられている。また、定着装置36の下流には搬送ローラ37が設けられている。搬送ローラ37は用紙Pを排紙部38に排出する。更に、定着装置36の下流には、反転搬送路39が設けられている。反転搬送路39は、用紙Pを反転させて二次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用される。
【0022】
図1図2は本発明の実施の一例を示すものであり、定着装置36以外の画像形成装置部分の構造を限定するものではなく、公知の電子写真方式画像形成装置の構造を用いることができる。
【0023】
図3は、実施形態1におけるMFP10の制御系50の構成例を示すブロック図である。制御系50は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、入出力制御回路123、給紙・搬送制御回路130、画像形成制御回路140、定着制御回路150を備えている。
【0024】
CPU100は、ROM120あるいはRAM121に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラムおよび制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリである。ROM120(あるいはRAM121)は、例えば、画像形成部20や定着装置36等の制御プログラムと制御プログラムが使用する各種の制御データを記憶する。本実施形態における制御データの具体例としては、用紙サイズと通電させる発熱部材との対応関係や、MFP10内の各種センサが検出した用紙の坪量、発熱部材の表面温度、外気温の値等と通電対象とする発熱部材との対応関係などが挙げられる。
【0025】
定着装置36の定着温度制御プログラムは、MFP10内のセンサの検出信号等に基づいて用紙のサイズ、厚みおよび坪量、発熱部材の表面温度、外気温の値等をそれぞれ判定するための判定ロジックと、用紙が通過する位置に対応する発熱部材を選択して駆動ICの制御により通電し、加熱手段における加熱を制御するための加熱制御ロジックとを含んでいる。発熱部材の切替部である駆動の具体例としては、スイッチング素子、FET、トライアックス、スイッチングICなどが挙げられる。
【0026】
I/F122は、ユーザー端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。入出力制御回路123は、オペレーションパネル123a、表示器123bを制御する。給紙・搬送制御回路130は、給紙ローラ35あるいは搬送路の搬送ローラ37等を駆動するモータ群130a等を制御する。給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて給紙カセット18近傍あるいは搬送路上の各種センサ130bの検知結果を考慮してモータ群130a等を制御する。画像形成制御回路140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、レーザ露光器19、現像器24、転写器25をそれぞれ制御する。定着制御回路150は、CPU100からの制御信号に基づいて定着装置36の駆動モータ360、加熱部材361、サーミスタ等の温度検知部材362をそれぞれ制御する。尚、本実施形態では定着装置36の制御プログラムおよび制御データをMFP10の記憶装置内に記憶してCPU100で実行する構成としているが、定着装置36専用に演算処理装置と記憶装置を別途設ける構成にしてもよい。
【0027】
図4は、定着装置36の構成例を示す図である。ここでは、定着装置36が、板状の加熱部材361、弾性層が形成され、複数のローラに懸架された無端ベルト363、無端ベルト363を駆動するベルト搬送ローラ364、無端ベルト363に張力を与えるテンションローラ365、弾性層が表面に形成されたプレスローラ366を備えている。加熱部材361は、発熱部側が無端ベルト363の内側に接触し、プレスローラ366方向に押圧されることで、プレスローラ366との間に所定幅の定着ニップを形成する。加熱部材361がニップ領域を形成しつつ加熱する構成のため、通電時における応答性はハロゲンランプによる加熱方式の場合よりも高い。
【0028】
無端ベルト363は、例えば厚さ50umのSUS基材あるいは70umの耐熱樹脂であるポリイミド上の外側に厚さ200umのシリコンゴム層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。プレスローラ366は、例えばφ10mmの鉄棒表面に厚さ5mmのシリコンスポンジ層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。
【0029】
図5は、本実施形態における発熱部材群の配置図である。加熱部材361が、ハガキサイズ(100×148mm)、CDジャケットサイズ(121×121mm)、B5Rサイズ(182×257mm)、A4Rサイズ(210×297mm)に対応するために3種類の長さの発熱部材(発熱素子)に分割され、3つの発熱部材群に分類されている。発熱部材群は、搬送される用紙の搬送精度やスキューや非加熱部分への熱の逃げを考慮して、加熱領域に5%程度の余裕を持つように通電される。
【0030】
図5の例では、最小サイズであるハガキサイズの幅100mmに対応するため、主走査方向(図示左右方向)における中央部に第1の発熱部材群を設け、その幅は105mmとする。次に大きいサイズ121mmと148mmに対応するため、第1の発熱部材群の外側(図示左右方向)に、幅25mm×2の第2の発熱部材群を設け、148mm+5%で155mmまでの幅をカバーする。更に大きいサイズ182mmと210mmに対応するため、第2の発熱部材群の更に外側には、各発熱部材の幅が32.5mm×2の第3の発熱部材群を設け、210mm+5%で220mmまでの幅をカバーする。
【0031】
尚、発熱部材群の分割数とそれぞれの幅は一例として挙げたもので、これに限定はされない。例えばMFP10が5つの媒体サイズに対応していた場合には、発熱部材群を各媒体サイズに合わせて5分割してもよい。
【0032】
また、本実施形態では、通紙領域にラインセンサ(図示省略する)を配置し、通過する用紙のサイズと位置をリアルタイムで判定できるものとする。印刷動作の開始時に画像データあるいはMFP10内で用紙を貯蔵されている給紙カセット18の情報から用紙サイズを判定する構成にしてもよい。
【0033】
図6および図7は、実施形態1における発熱部材群の形成方法を説明する上面図および側面図である。図6(A)および図7(A)に示すように、加熱部材361は、セラミック基板361a上にグレーズ層(図示省略する)および発熱抵抗層(361b,361c,361d)が積層する。発熱抵抗層(361b,361c,361d)は、例えばTaSiOなどの既知の素材で形成されている。また、反対側に余分な熱を逃がすとともに基板の反りを防ぐために、セラミック基板361aの下側にはアルミ製のヒートシンク361eが接着されている。
【0034】
次に、図7(B)に示すように、隣接する発熱部材間が絶縁され、かつ、用紙搬送方向に沿って複数本の発熱抵抗体が露出するようなパターンでアルミ層361fを形成する。発熱抵抗層は、アルミ層361fの形成によって分割され、主走査方向および用紙搬送方向において所定の長さと個数に分割され、露出部分が二次元配列をなしている。この露出部分が発熱部材となる。また、露出部分の搬送方向のそれぞれの幅は、アルミ層361fでマスキングされる部分の搬送方向における幅よりも狭く形成される。
【0035】
次に、搬送方向に並ぶ複数本の発熱抵抗体の露出部(発熱部材)の全てに同時に通電するため、図7(C)に示すように、両端のアルミ層361fに配線361gを繋ぎ、更に駆動IC(スイッチングドライバIC)151と繋ぐ。そして、発熱抵抗体層(361b,361c,361d)、アルミ層361f、配線361g等の全てを覆うように、最上部には保護層361hを形成するものとする。保護層361hは、例えばSiなどによって形成する。尚、図5および図6では中央寄せの用紙搬送の場合における発熱部材の形成方法を説明したが、図8のように片側に寄せの用紙搬送に対応して形成する場合も同様である。
【0036】
図9は、用紙上のトナー温度および定着ベルト(無端ベルト363)の表面温度の熱シミュレーション結果を示す図である。ここでは、トナーの定着可能温度幅が80℃〜130℃であるMFP搭載のトナーを用いる場合の定着条件をシミュレーションした結果を示している。印刷装置のプロセス速度が120mm/sec、加熱部材幅(=定着ニップ幅)10mmとすると、未定着トナーが載った記録材の加熱時間は約83msecになる。また、フルカラーで高濃度の画像を形成させるような条件においては、例えばトナー層厚は最大20um、タックシートのような分厚い記録材の場合には例えば厚さ270umである。
【0037】
上記の条件下で、加熱部材361の表面が全て均一温度に加熱されると仮定した場合には、通電開始(POWER ON)から約3秒でベルト表面温度が160℃に達し、25℃の記録材(トナー粒子)が83msecニップ中で加熱されると、トナーと記録紙が接触する部分(=トナー界面)の温度が80℃以上の定着可能温度に到達することが分かる。この部分の昇温速度は記録材の素材及び厚みによって決定されるため、装置の小型化のためにニップ(=加熱部材の幅)を減らして加熱時間を短縮することはできない。また、ベルト裏面温度が200℃まで上昇していることから分かるように、加熱部材361を直接ベルトの裏に接触させているためニップ部近傍のみを加熱すると、必要温度まで定着ニップ部を昇温させるために必要な時間を非常に短くできる。その反面、ベルト表面に弾性層が形成されていると、ベルトの表面と裏面に温度勾配が生じ、裏面の温度が表面よりもかなり高温になる。弾性層はベルト表面と記録材(トナー粒子)との密着性を上げて効率よく熱を伝達させるために、無くすことはできない。また、弾性層の熱劣化を防ぐためには、裏面が高温になるような加熱条件は適切ではない。そこで、本実施形態においては、トナー界面温度が80℃以上、ベルト裏面温度が弾性層耐熱上限温度である220℃以下となる加熱条件にて定着させるものとする。
【0038】
図10は、加熱部材361における発熱抵抗体の露出部分のサイズ、本数に応じた表面温度分布の熱シミュレーション結果を示す図である。ここでは、加熱部材361の表面に発熱抵抗体(露出部)をどのように配置すべきかについて判断するために、発熱抵抗体のサイズを変更して加熱部材表面の温度均一性を計算している。80umの発熱抵抗体が中心部に1本あった場合、通電開始(POWER ON)後、約1.4secの時点で加熱部材361の表面温度は最大170℃、最小110℃であり、温度差が甚だしいことが分かる。また、発熱抵抗体幅3mmにまで広げても1本だけの場合には、温度の不均一性は解消されない。しかし、発熱抵抗体幅80umのままでも加熱部材表面に間隔をあけて複数本配置することによって、温度の不均一性がかなり改善されることが分かる。このことから、発熱部材を搬送方向に沿って複数本配置させることが有効である。
【0039】
以下、上記のように構成されたMFP10の印刷時の動作を図面に基づいて説明する。図11は、実施形態1におけるMFP10の制御の具体例を示すフローチャートである。
【0040】
先ず、スキャナ部15で画像データを読込む(Act101)と、画像形成部20における画像形成制御プログラムと定着装置36における定着温度制御プログラムが並列して実行される。
【0041】
画像形成処理が開始されると、読込まれた画像データを処理し(Act102)、感光体ドラム22の表面に静電潜像を書込み(Act103)、現像器24で静電潜像を現像した後(Act104)、Act114へ進む。
【0042】
他方、定着温度制御処理が開始されると、ラインセンサ(図示省略された)の検出信号に基づいて用紙サイズを判定し(Act105)、用紙Pが通過する位置に配置された発熱部材群を発熱対象として選択する(Act106)。例えば、用紙Pが最小サイズ(ハガキサイズ)の場合には、中央に配置されている第1の発熱部材群を選択し、用紙Pのサイズが大きくなるにつれて、第2の発熱部材群、第3の発熱部材群を第1の発熱部材群と併せて選択する。
【0043】
次に、Act106で選択された発熱部材群への温度制御開始信号をONにすると(Act107)、選択された発熱部材群への通電が行われ、発熱部材群の表面温度が上昇する。
【0044】
次に、無端ベルト363の内側あるいは外側に配置された温度検知部材(図示省略する)により、発熱部材群の表面温度を検知すると(Act108)、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内か否かを判定する(Act109)。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内であると判定された場合は(Act109:Yes)、Act110へ進む。これに対し、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内でないと判定された場合は(Act109:No)、Act111へ進む。
【0045】
Act111においては、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えているか否かを判定する。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていると判定された場合(Act111:Yes)は、Act106において選択されていた発熱部材群への通電をOFFにし(Act112)、Act108へ戻る。これに対し、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていないと判定された場合(Act111:No)は、Act109の判定結果より表面温度が所定の温度下限値に満たない状態であるため、発熱部材群への通電をON状態に維持、あるいは、再度ONにし(Act113)、Act108へ戻る。
【0046】
次に、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内の状態で、用紙Pを転写部に搬送すると(Act110)、用紙Pにトナー像を転写した後(Act114)に、用紙Pを定着装置36内に搬送する。
【0047】
次に、定着装置36内で用紙Pにトナー像を定着させると(Act115)、画像データの印字処理を終了するか否かを判定する(Act116)。ここで、印字処理を終了すると判定した場合(Act116:Yes)、全ての発熱部材群への通電をOFFにし(Act117)、処理を終了する。これに対し、画像データの印字処理を未だ終了しないと判定した場合(Act116:No)、すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、Act101へ戻り、終了するまで同様の処理を繰り返す。
【0048】
このように、本実施形態に係る定着装置36は、加熱部材361を構成する発熱抵抗体(発熱部材)が用紙搬送方向の垂直方向(主走査方向)に2本以上の平行線に沿って並べられるとともに平行線上の共通の箇所で分割されて用紙搬送方向および主走査方向の二次元配列をなし、用紙搬送方向に並んだ発熱部材のグループは同じタイミングで通電可否が制御される構成である。図10で示したように、発熱部材が搬送方向に沿って一定距離離間して複数の箇所において加熱を行うため、加熱時の温度が均一に調整でき、その結果、定着品質を向上させることができる。また、小サイズの用紙と大サイズの用紙が混在して印刷する場合であっても、印字する用紙サイズの大小に基づいて発熱領域を切替えることにより、非通紙部分の異常発熱を防止できるだけでなく、非通紙部分の無駄な加熱を抑制できるため、定着装置36が消費する熱エネルギーを大幅に削減することが可能である。更に、印字部分への集中的かつ安定的な加熱が可能となるため、定着品質を高めることもできる。
【0049】
<実施形態2>
以下、実施形態2に係る定着装置36について図面に基づいて説明する。尚、本実施形態におけるMFP10の構成は実施形態1とほぼ同様であり、実施形態1において付された符号と共通する符号も同一対象を表す。以下では実施形態1と異なる箇所を中心に説明する。
【0050】
図12は、実施形態2における発熱部材群の配置図である。ここでは、用紙サイズがB5Rサイズ(182×257mm)の場合における通電パターンを二つ例示している。(A)においては、第1の発熱部材群と第2の発熱部材群を全てに通電し、フル点灯の状態となっている。これに対し、(B)の場合には、2番目のラインについては非通電に制御され、2/3点灯の状態となっている。(B)のような制御は、例えば、使用する用紙の厚さが通常タイプの用紙に比べて薄い場合や発熱部材群の表面温度が十分に高い場合などに行われるものとする。実施形態1の場合と異なり、各発熱部材は用紙搬送方向に並んだ群単位ではなく、個々に通電が制御される。
【0051】
以下、本実施形態におけるMFP10の印刷時の動作を図面に基づいて説明する。図13は、実施形態2におけるMFP10の制御の具体例を示すフローチャートである。
【0052】
先ず、スキャナ部15で画像データを読込む(Act201)と、画像形成部20における画像形成制御プログラムと定着装置36における定着温度制御プログラムが並列して実行される。
【0053】
画像形成処理が開始されると、読込まれた画像データを処理し(Act202)、感光体ドラム22の表面に静電潜像を書込み(Act203)、現像器24で静電潜像を現像した後(Act204)、Act214へ進む。
【0054】
他方、定着温度制御処理が開始されると、ラインセンサ(図示省略された)および音波センサ(図示省略する)の検出信号に基づいて用紙サイズおよび用紙の厚みをそれぞれ判定し(Act205)、その用紙サイズおよび用紙の厚みに基づいて用紙Pが通過する位置に配置された発熱部材群の中から発熱対象となる発熱部材を選択する(Act206)。例えば、用紙Pが最小サイズ(ハガキサイズ)の場合には、中央に配置されている第1の発熱部材群を選択し。用紙Pのサイズが大きくなるにつれて、第2の発熱部材群、第3の発熱部材群を追加する。また、用紙サイズが同じであっても、用紙の厚みに基づいて通常あるいは厚い用紙タイプの場合は、フル点灯、薄い用紙の場合には、1/3点灯あるいは2/3点灯となるように、同じ群の中で非通電とする発熱部材を適宜決定するものとする。非通電とする場合の制御条件についてはMFP10等の記憶装置内に予め定義しておくと好適である。用紙の厚みは、判定するセンサを持たず、ユーザーインターフェースからユーザー自身が選択・指定する方式でも良い。
【0055】
次に、Act206で選択された発熱部材群への温度制御開始信号をONにすると(Act207)、選択された発熱部材群への通電が行われ、発熱部材群の表面温度が上昇する。
【0056】
次に、無端ベルト363の内側あるいは外側に配置された温度検知部材(図示省略する)により、発熱部材群の表面温度を検知すると(Act208)、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内か否かを判定する(Act209)。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内であると判定された場合は(Act209:Yes)、Act210へ進む。これに対し、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内でないと判定された場合は(Act209:No)、Act211へ進む。
【0057】
Act211においては、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えているか否かを判定する。ここで、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていると判定された場合(Act211:Yes)は、Act206において選択されていた発熱部材群への通電をOFFにし(Act212)、Act208へ戻る。これに対し、発熱部材群の表面温度が所定の温度上限値を超えていないと判定された場合(Act211:No)は、Act209の判定結果より表面温度が所定の温度下限値に満たない状態であるため、発熱部材群への通電をON状態に維持、あるいは、再度ONにし(Act213)、Act208へ戻る。尚、Act212およびAct213においては、昇温速度と降温速度を調整するために、制御対象の発熱部材群の中でON/OFFにする発熱部材の割合を発熱部材群の表面温度と定着温度との差分値に応じて適宜変更することもできる。例えば、温度差が僅かに低いような場合には、フル点灯ではなく1/3点灯となるように通電を制御すると好適である。
【0058】
次に、発熱部材群の表面温度が所定の温度範囲内の状態で、用紙Pを転写部に搬送すると(Act210)、用紙Pにトナー像を転写した後(Act214)に、用紙Pを定着装置36内に搬送する。
【0059】
次に、定着装置36内で用紙Pにトナー像を定着させると(Act215)、画像データの印字処理を終了するか否かを判定する(Act216)。ここで、印字処理を終了すると判定した場合(Act216:Yes)、全ての発熱部材群への通電をOFFにし(Act217)、処理を終了する。これに対し、画像データの印字処理を未だ終了しないと判定した場合(Act216:No)、すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、Act201へ戻り、終了するまで同様の処理を繰り返す。
【0060】
このように、本実施形態に係る定着装置36によれば、用紙サイズおよび用紙の厚みに基づいて用紙が通過する位置に対応する発熱部材群の中から通電する発熱部材を選択して実施形態1の場合よりも更に細かく通電を制御する構成であるため、上記実施形態1の場合よりも用紙に対する余分な加熱を抑制でき、省エネルギー化を図れるという効果を奏する。
【0061】
また、上記実施形態では、発熱部材群の用紙搬送方向における長さや材質が均一になるよう構成したが、例えば同じ通電量に対して搬送方向の上流側に配置された発熱部材が下流側よりも高い温度に加熱するために、個々の発熱部材の長さや厚さ・材質を変更して構成することもできる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0063】
例えば、実施形態1と実施形態2の構成を組み合わせてもよい。すなわち、実施形態2において用紙サイズの代わりに実施形態1の場合と同じく印刷サイズ(画像形成領域)の大小に基づいて発熱部材群を選択するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0064】
36…定着装置
150…定着装置制御回路
151,151a,151b,151c,151d…駆動IC(スイッチング素子)
361…加熱部材
361a…発熱部材
362b…電極
363…無端ベルト
366…加圧ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13