(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333630
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】超音波式空間除菌加湿器
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20180521BHJP
F24F 6/12 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
F24F6/00 C
F24F6/00 D
F24F6/12 101
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-111847(P2014-111847)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-224856(P2015-224856A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】307001142
【氏名又は名称】株式会社 エコファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100128521
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 卓司
(72)【発明者】
【氏名】村上 尊宣
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/095816(WO,A1)
【文献】
実開昭59−052317(JP,U)
【文献】
特開2006−125648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F24F 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸水溶液が貯留する貯水槽と、前記貯水槽中に設置され次亜塩素酸を含有する霧を発生させる超音波発生器と、前記次亜塩素酸を含有する霧を上方に延伸する送気管に送気する送風手段とを具備し、
前記送気管の下端部近傍には、前記送気管の内壁に吸着した水滴の水受け手段である中心部を送気が通過するドーナツ状の受け皿を設けるとともに、当該ドーナツ状の受け皿には水を外部に排出する排出管を取り付けて、前記送気管の内壁に吸着した水滴が、前記貯水槽に流入しないように構成したことを特徴とする超音波式空間除菌加湿器。
【請求項2】
前記送気管には、前記ドーナツ状の受け皿より上方の位置に、表面に水滴を吸着させる吸着促進手段が装着されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波式空間除菌加湿器。
【請求項3】
前記吸着促進手段は、前記送気管の内部に装着された縦状の板であることを特徴とする請求項2に記載の超音波式空間除菌加湿器。
【請求項4】
前記吸着促進手段は、前記送気管の内部に装着された螺旋状の板であることを特徴とする請求項2に記載の超音波式空間除菌加湿器。
【請求項5】
前記排出管は、排水用のタンクに接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の超音波式空間除菌加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌効果の優れた次亜塩素酸を含有する加湿空気を室内に供給して、医療施設の病室など大空間の加湿・除菌をすることができる超音波式の空間除菌加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルス・花粉症アレルギー・PM2.5など、空気環境に由来する様々な健康被害が指摘されはじめている。
【0003】
こうした劣悪な空気環境への対策として、特に居住区間の湿度調整は人体の健康に及ぼす影響が大きく、インフルエンザウイルス等の空気感染の予防対策にも非常に効果的であることから、家庭用の加湿器は一般家庭に広く普及している。同様に、福祉施設や病院・保育園・幼稚園・学校等の大空間を有する施設においても加湿器導入の必要性が高まりつつあるものの、こうした施設での使用に耐えうる能力を有した大容量の加湿器はあまり普及しておらず、上記のような施設においても家庭用の加湿器を複数台設置して使用している場合が多い。しかしながら家庭用の加湿器は加湿能力が低く所望の加湿効果を得ることは困難であるうえに、給水やメンテナンス等にも手間がかかることから、加湿能力が高くメンテナンスも容易な大空間専用の加湿器を要望する声は大きい。
【0004】
ところで従来より使用されている加湿器を加湿方法の違いにより大別すると、気化式・スチーム式・超音波式の3種類に分類することができる。
【0005】
はじめに気化式は、水を含んだフィルターに風を当て、常温で水分を蒸発させる方法を採用したものであるが、この種の加湿器は構造が単純なうえに消費電力も少ないためコスト的には有利である。しかしながら、フィルターや水タンクにレジオネラ菌等の雑菌やカビ等が発生し易いという衛生上の問題点があるうえに、加湿能力も低いために大空間を加湿するには不向きである。
【0006】
次にスチーム式は、水を沸騰させて発生した湯気をファンによって放出する方法を採用したものであるが、この種の加湿器は、水に含まれる雑菌等が煮沸により滅菌されるため衛生上優れた性能を有する。しかしながら水の沸騰に費やされる消費電力が非常に大きいため、このタイプの加湿器も大空間の加湿に使用するには運用コストの点で問題が大きい。
【0007】
次に超音波式は、超音波発生器により、水を粒径が1〜5μm程度の霧状にして、ファンによって空気とともに放出する方法を採用したものであるが、この種の加湿器は、加湿能力が高いうえに消費電力も少ないという特徴を有する。しかしながら前述の気化式と同様に超音波式も常温で作動するために、加湿用水が貯留する水槽中に雑菌やカビ等が繁殖し易く、さらにこうした水槽中のカビや雑菌等の異物が霧に乗って大気中に放出されてしまうという衛生上の問題点を有している。
【0008】
そこで大空間用の加湿器として、加湿能力と運用コストという観点から前記3種の加湿方法を比較した場合、前記衛生上の問題点をクリアすることができれば、超音波式が最適な加湿方法といえるのであるが、既にこの問題点に関しては、加湿用水に次亜塩素酸を含有させる技術が開発されている。
【0009】
次亜塩素酸とは塩素系の消毒剤で、細菌等に触れると強力な酸化作用によって殺菌し、非常に多くの種類の微生物やウイルス等に対して良好な消毒効果を有している。したがって超音波加湿器の加湿用水に次亜塩素酸を含有させれば、加湿用水における雑菌やカビ等の繁殖を抑えることができるのである。さらに次亜塩素酸は残留性に乏しく人体に対して安全性が高いことから、次亜塩素酸の水溶液を空気中に直接噴霧して、環境空間に浮遊している微生物やウイルスを不活性化させる空間除菌という手法も提唱されている。
【0010】
したがって、超音波加湿器の加湿用水に次亜塩素酸水を使用すれば、加湿用水中の雑菌やカビ等の繁殖を抑えることができるとともに、加湿空気と共に次亜塩素酸も空気中に拡散させることができるため、空間の加湿と併せて上記空間除菌の効果をも得ることができるのである。
【0011】
そして上記次亜塩素酸水を使用した超音波加湿器が記載された文献としては、特許文献1に、貯水タンクの中の電解電極を用いて次亜塩素酸を生成する超音波加湿器が記載されている。また特許文献2には、次亜塩素酸水溶液を超音波で霧状の微粒子にして放出する装置において、前記微粒子が水滴状になるのを防止するために、拡散管の中で拡散させる技術が記載されている。
【0012】
以上のように、超音波加湿器の加湿用水に次亜塩素酸を含有させることは、前述のような超音波式の加湿器が有していた衛生上の問題点を解決する手段として非常に有効であるうえに、空間除菌の効果も期待できるため、超音波式の加湿器は、次亜塩素酸を使用することで、空間除菌加湿器としての性能を発揮することができるようになるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−281502号公報
【特許文献2】特開2000−300649号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の解決すべき課題は、前述のような次亜塩素酸水溶液を使用する超音波式空間除菌加湿器を、特に大空間を有する施設での使用に耐えうるように大容量化した場合に問題となり易い加湿空気中に含まれる異物を積極的に取り除き、また加湿用水に含まれる次亜塩素酸の濃度も十分維持して、加湿のみならず空間除菌の効果をも十分に発揮することができるようにすることにある。
【0015】
この点に関し、例えば前記特許文献2に記載の加湿器は、室内の空気を吸入して加湿した空気を外筒を通じて上方に排出するという基本構造を有し、特に超音波発生器で発生した霧の凝集を防止する手段を講じたものであるが、外筒の内部に水滴が吸着する場合も想定し、水滴を受け皿で回収する構造を採用しているものの、回収した水は次亜塩素酸水溶液のタンクに送って再利用するという構造が採用されている。
【0016】
しかしながら超音波加湿器は常温で作動するため、超音波発生器によって発生した霧を完全に気化させるためには一定の時間を要し、特に大空間用に大量の霧を発生させようとした場合には、前記特許文献2に記載のような構造を有した超音波加湿器では、極めて多くの霧が凝集してより粒子の大きな水滴となって送気管(外筒)の内壁に大量に吸着し、次亜塩素酸水溶液のタンクに滴下してしまうことは避けられない。
【0017】
また前述のように、加湿用水の雑菌等の繁殖については、加湿用水に次亜塩素酸水溶液を使用することで抑えることができるものの、これとは別に、加湿器が大量に吸入する空気にも、微細な細菌やカビの胞子など、人体の健康を害する多種多様な異物が大量に含まれている。そして超音波発生器によって発生した霧は、こうした異物を核にして凝集を加速して水滴化する傾向が強いため、空気中から吸引された異物は水滴中に取り込まれた状態で送気管の内壁に吸着されやすいという性質がある。したがって、こうした異物を含んだ大量の水滴が、送気管の内壁を伝って次亜塩素酸水溶液のタンクに滴下して加湿用水として再利用されてしまうと、タンク中にはひたすら異物が蓄積され続ける結果となってしまう。また最悪こうした異物が超音波発生器によって微粒子状に粉砕され、加湿空気とともに室内に放出されてしまう可能性も否定できない。
【0018】
また次亜塩素酸は異物と積極的に反応して分解してしまう性質を有しているため、タンク中に蓄積された異物は、タンク中の次亜塩素酸の濃度も著しく低下させる。さらにはタンクへ滴下する水滴自体も異物と反応して次亜塩素酸の効能が著しく低下したものとなっているため、タンク中の次亜塩素酸の濃度を希釈してしまうことにもなってしまう。
【0019】
このように次亜塩素酸水を使用する超音波式空間除菌加湿器を、特に大空間を有する施設での使用に耐えうるように大容量化して連続使用した場合には、異物を含んだ大量の水滴の発生が避けられず、この水滴を加湿用水として再利用してしまうと、吸気中に含まれる異物が加湿用水に蓄積されて前述のような悪影響を誘発し、また加湿空気中の次亜塩素酸の濃度をも低下させ、ひいては空間除菌の効果を十分に発揮することができなくなるという課題を有しているのである。
【0020】
なお前述のような吸入した空気中に含まれる異物は、吸気フィルターを使用することで、埃など粒径の大きな異物をある程度除去することが可能であるが、より微細なウイルス等をも除去するためには非常に高価なHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を使用しなければならず、コスト的に望ましいものではない。またこうした高性能のフィルターほど目詰まりし易いため、吸気量の多い大容量の加湿器に使用した場合には、頻繁にフィルターの清掃や交換が必要となり、これを放置してフィルターを目詰まりさせてしまうと、送気の量が少なくなったり、送気ファンの負荷が高まり消費電力が増大するなど故障の原因となるトラブルに見舞われてしまうため、メンテナンスの点でも問題が多い。このように、吸気量の多い大容量の加湿器においては、フィルターの使用で異物の除去を全て解決しようとすることは不向きであるといえる。
【0021】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、吸引した空気中に含まれる異物が水滴中に取り込まれた状態で壁面に吸着しやすいという性質を活用して、加湿空気中に含まれる異物を積極的に除去し、さらに異物と反応して効能の劣化した水滴が加湿用水に混入することを防止する手段を講じることで、加湿空気中の次亜塩素酸の濃度を十分維持して空間除菌の効果を十分に発揮することができるようにした、医療施設の病室など大空間を加湿・除菌するのに最適の大容量でメンテナンスも容易な空間除菌加湿装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そして、本発明は上記目的を達成するために、次亜塩素酸水溶液が貯留する貯水槽と、前記貯水槽中に設置され次亜塩素酸を含有する霧を発生させる超音波発生器と、前記次亜塩素酸を含有する霧を上方に延伸する送気管に送気する送風手段とを具備し、前記送気管の下端部近傍には、前記送気管の内壁に吸着した水滴の水受け手段
である中心部を送気が通過するドーナツ状の受け皿を設けるとともに、当該
ドーナツ状の受け皿には水を外部に排出する排出管を取り付けて、前記送気管の内壁に吸着した水滴が、前記貯水槽に流入しないように構成したことを特徴とする超音波式空間除菌加湿器としたものである。
【0023】
また
第2の課題解決手段は、前記送気管には、前記
ドーナツ状の受け皿より上方の位置に、表面に水滴を吸着させる吸着促進手段が装着されていることを特徴としたものである。
【0024】
また
第3の課題解決手段は、前記吸着促進手段が、前記送気管の内部に装着された縦状の板であることを特徴したものである。
【0025】
また
第4の課題解決手段は、前記吸着促進手段が、前記送気管の内部に装着された螺旋状の板であることを特徴としたものである。
【0026】
また
第5の課題解決手段は、前記排
出管が、排水タンクに接続されていることを特徴としたものである。
【0027】
次に上記第1の課題解決手段による作用を説明すると、超音波発生器によって発生した次亜塩素酸を含有する微細な霧は、送風手段の送気に乗って送気管の中を上昇していくが、その際に空気中に異物が浮遊していると、これを核に霧が凝集して水滴化してしまう。こうして発生した重たい水滴は送気管の内部における上昇速度が低下し、最終的には送気管の内壁に吸着されてしまう。次いでこの異物を含んだ水滴は送気管の内壁を伝って降下するが、送気管の下端部近傍にある水受け手段によって回収され、排出管によって送気管の外部に排出される。したがって、送気中の異物が除去されるとともに、貯水槽には上記のような水滴に含まれる異物が混入することがなく、また次亜塩素酸の効能が劣化した水滴が加湿用水として再利用されることもないので、貯水槽内の次亜塩素酸水溶液の濃度を低下させることがないのである。
【0028】
また上記水受け手段が、中心部を送気が通過するドーナツ状の受け皿であるため、送気管中の気流を阻害することもなく、送気管の内壁を伝って降下する異物を含んだ水滴を漏れなく回収して排出することができる。
【0029】
また上記
第2の課題解決手段によれば、送気管に水滴を表面に吸着させる吸着促進手段を装着しているため、送気管の内壁に加えて吸着促進手段にも異物を含む水滴を積極的に吸着させることができる。またその装着位置が、前記
ドーナツ状の受け皿より上方の位置にあるために、吸着促進手段に吸着した水滴が
ドーナツ状の受け皿によって確実に回収され、貯水槽に滴下することがない。
【0030】
また上記
第3の課題解決手段によれば、水滴の吸着促進手段が広い表面積を有する板であるために、その表面に異物を取り込んだ大量の水滴を積極的に吸着させ、加湿空気から異物を効果的に取り除くことができるとともに、板が縦状であるために送気管中の気流を阻害することもなく、加湿空気をスムーズに通過させることができる。
【0031】
また上記
第4の課題解決手段によれば、水滴の吸着促進手段が螺旋状の板であるために、その広い表面に大量の水滴を吸着させることができるとともに、送気管の中の加湿空気に竜巻状の螺旋渦を発生させるので、異物を核に凝集した重たい水滴が遠心力によって外方に分離されて、より効果的に異物を含む水滴を吸着させることができる。
【0032】
また、上記
第5の課題解決手段によれば、異物を含んだ排水を、貯水槽とは別体の排水タンクに貯留させるため、衛生的に排水を処分することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように本発明の空間除菌加湿装置は、次亜塩素酸水を使用する超音波式の加湿器の容量を大きくした場合でも、加湿空気から人体に有害な異物を効率よく除去することができる。また除去した異物を取り込んだ水滴が、貯水槽内の次亜塩素酸水溶液に混入することを防止する水受け手段
である中心部を送気が通過するドーナツ状の受け皿を設けているので、貯水槽を常時クリーンな状態に維持することができるとともに、次亜塩素酸の濃度も効能の劣化した水滴によって希釈されることが無い。したがって居室空間には除菌効果の高いクリーンな加湿空気を大量に供給することができ、かつ高性能の吸気フィルター等も不要でメンテナンスが容易であるため、医療施設の病室など大空間での使用に適した容量の大きな空間除菌加湿装置を低コストで実現することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
本発明の超音波式空間除菌加湿器本体の基本構造は
図1示すとおり、筐体1の中に、次亜塩素酸水溶液からなる加湿用水を貯留する貯水槽2、前記貯水槽2の中に設置されて次亜塩素酸を含有する霧を発生させる超音波発生器3、前記次亜塩素酸を含有する霧を送気する送風手段4、加湿用水の供給を制御する制御弁5、異物を含んだ排水を貯留する排水タンク6等の加湿器本体を構成する装置が収納されており、さらに前記送風手段4と超音波発生器3と制御弁5はコントローラ7によって一体的に制御されている。なお本発明では、基本的に空気フィルターは不要であるが、埃の多い環境などでは、前記送風手段4の吸気口にメンテナンスが容易な簡易的なフィルターを取り付けて、あらかじめ粒径の大きな異物を除去するようにしても構わない。
【0036】
また前記貯水槽2の上壁に接続された送気管8はそのまま上方に延伸し、その上端の吐出口13から加湿空気が横方向に吹き出すようにしている。さらに送気管8の下端部近傍には、送気管8の内壁に吸着した水滴の水受け手段
である中心部を送気が通過するドーナツ状の受け皿9が取り付けられているとともに、
ドーナツ状の受け皿9には水を外部に排出する排出管11を取り付けて、取り出し可能な排水タンク6へと接続している。なお
図1に記載のものは、筐体1を居室内の適宜の場所に直接設置して使用するものであるが、本発明の加湿器は、送気管8の内壁に加湿空気中に含まれる異物を含む水滴を積極的に吸着させようとするものであるため、送気管8は極力長いほど異物の除去効果が大きい。したがって筐体1を居室内に直接設置する場合には、吐出口13の高さが天井付近に位置するようにして、送気管8の長さを2メート程度確保しておくのが望ましい。
【0037】
さらに本発明の加湿器は優れた除菌効果があるため、衛生上は通年で作動させておくことが望ましいが、特に夏季においては必要以上に湿度が上昇して不快になってしまうことも想定される。そこで、公知の湿度センサーを搭載して湿度を検知し、所望の設定湿度を維持するように前記コントローラ7によって出力を制御すれば、年間を通じて衛生的で快適な空気環境を維持する事ができるようになる。
【0038】
また本発明で使用する次亜塩素酸水溶液は、前記特許文献1に記載されたもののように、公知の手段によって貯水槽1の中で直接次亜塩素酸を製造するものであっても構わないが、
図1に示すように、筐体1に収納された加湿器本体とは別体の独立した次亜塩素酸水溶液製造装置12を設置し、当該次亜塩素酸水溶液製造装置12で製造した次亜塩素酸水溶液を加湿器本体に供給した方が、加湿器の増設に対する拡張性が高まるとともにメンテナンスも容易である。したがって
図1に記載のものでは、次亜塩素酸水溶液製造装置12と貯水槽2を制御弁5を介して配管で接続し、コントローラ7によって制御弁5を制御することで、次亜塩素酸水溶液の消費に応じて貯水槽2に随時供給される仕組みを採用している。また次亜塩素酸水溶液製造装置12には水道管から直接水が供給されるようにしておけば、給水の手間を省くことができる。
【0039】
ここで次亜塩素酸について説明を加えると、次亜塩素酸はその殺菌力をPhに依存しており、Ph5〜6という人体に無害である弱酸性領域で最大の殺菌力を示す。また次亜塩素酸は不安定な物質でもあり、時間の経過とともに分解が進み、さらに水溶液中に有機物や金属イオン等を発生させる異物あると分解が加速するという残留性の乏しい性質も有していることから、人体に対して安全性の高い消毒剤として、水道水や食品の殺菌にも広く使用されている公知の殺菌剤である。
【0040】
またその殺菌性は酸化反応のみにより行われ、対象物から電子を奪う(酸化する)という非常に単純な作用であることから、その対象は微生物・ウイルス・アレルゲン・臭い原因物質と幅広く、かつ耐性菌ができないという特徴がある。例えば食中毒で問題となるO−157・サルモネラ菌・レジオネラ菌・ノロウイルス・インフルエンザウイルス・多剤耐性菌(MRSA)などをも不活化する能力を持ち、エタノールや逆性石けんも効果のない芽胞菌(セレウス菌・炭疽菌等)も殺菌することができる。また花粉症アレルゲンの不活化能力も備え、その性質から各種アレルゲンも同様に不活化できるものと考えられる。さらには臭い物質の分解能力も非常に高く、アンモニア・メチルメルカプタン等も強力に酸化分解することができるので、まさしく空間除菌に使用するには最適の薬剤である。
【0041】
次に本発明における水受け手段
である中心部を送気が通過するドーナツ状の受け皿の態様について説明する。本発明の
ドーナツ状の受け皿は、送気管8の内壁に吸着した異物を含む水滴を回収するために、送気管8の下端部近傍に設けられるものであるが、
図2に示す
ドーナツ状の受け皿は、送気管8の内壁の直径より小さい内管15と、送気管8の内壁と内管15の間にできた空隙の底部を塞ぐ底板16によってドーナツ状の受け皿を構成しており、内管15の内部を気体が自由に通過することができるようになっている。
【0042】
そして受け皿より上方の送気管8の内壁に異物を含む水滴が吸着すると、内壁を伝って下降するため全て受け皿に集められ、さらに受け皿には排
出管11が接続されているので、受け皿に溜まった水滴は貯水槽2に流入することなく、異物と共に全て外部に排出させることができる。また
図2に示すように、底板16を排
出管11の接続部側に傾斜させることで、水を排
出管11へとスムーズに導くことができる。
【0043】
なお前記
ドーナツ状の受け皿を設ける位置について、送気管8に直接設ける場合には、可能な限り送気管8の下端部に近い位置とするのが望まし
いが、必ずしも送気管8に直接設ける必要はなく、送気管8の下端部より下に位置するように、加湿器の本体部分に直接設けるようにしても良い。
【0044】
また排
出管11については、下水管等に直接接続して随時排水できるようにしても良いが、
図1に示すように筐体1の中に取り出し自在な排水タンク6を収納し、この排水タンク6に排
出管11を接続すれば、衛生的に排水を処分することができるとともに、排水タンク6に沈殿した異物を採取して空気環境の汚染度を測定したり、あるいは異物を詳細に分析して感染症の拡大予防等に役立てることもできる。その際排水タンク6は、月に1度程度の処理で済む程度の容量を確保しておけばメンテナンスが容易である。
【0045】
次に本発明における水滴の吸着促進手段の態様について説明する。本発明は、異物を含んだ水滴のかなりの部分を送気管8の内壁に吸着させることができるが、より容量の大きな加湿器を望む場合には、送気管8の長さを十分確保することができず、送気管8の内壁への吸着だけでは不十分な場合も想定される。したがってこうした場合には、異物の除去作用を一層確実なものとするために、送気管8の前記水受け手段より上方の位置に、水滴を吸着させる吸着促進手段を装着して、積極的に水滴を吸着させれば効果的である。
【0046】
より具体的には、送気管8の前記水受け手段より上方の位置に、一定の表面積を有する板など水滴を吸着させることができる部材を備えた吸着促進手段を装着し、水滴の吸着部分を拡大すれば、水滴の吸着を促進することが可能になる。そこではじめに
図3に示す吸着促進手段について説明すると、この吸着促進手段は、送気管8の内壁から中心部に向けて、複数の縦状の板21を同心円状に突出するように装着したものであり、縦状の板21の表面に非常に広い吸着面を形成することができるので、より多くの水滴を吸着させることができる。また各々の縦状の板21の下端部は、送気管8の内壁側に向けて傾斜するようにカットされているため、縦状の板21に吸着した水滴は全て送気管8の内壁側に誘導されて送気管8の内壁を伝って下降するので、
図2に示すドーナツ状の受け皿の中心部を通過して水滴が貯水槽2に滴下することは無く、ドーナツ状の受け皿によって確実に回収することができる。また板21は縦方向に取り付けられているので送気管8内の気流を阻害することも無い。
【0047】
次に
図4に示す吸着促進手段について説明すると、この吸着促進手段は、矩形の板を捩るようにして形成された螺旋状の板22を送気管8の内部に装着したものであり、この場合も広い吸着面を形成することができる。また螺旋状の板22の下端部は逆V字型にカットされているので、
図3に記載のものと同様に、螺旋状の板22に吸着した水滴は全て送気管8の内壁側に誘導することができる。さらにこの吸着促進手段を装着すると、螺旋状の板22によって送気管8内の気流に竜巻状の螺旋渦が発生するので、異物によって凝集した重たい水滴が遠心力によって外方に分離され、効率良く水滴を吸着させることができる。
【0048】
なお前記いずれの吸着促進手段においても、吸着促進手段が装着される部分の長さに応じて異物の除去能力は高くなるので、所望する加湿器の容量に応じて吸着促進手段における板の長さ等を適宜調整すれば良い。また吸着促進手段の態様は、
図3及び
図4に示したものに限定されるわけではなく、その表面に水滴を吸着させることができる部材を備えたものであれば吸着促進手段としての効果を奏することができる。
【0049】
さらに
図1に記載に示したものは、居室内に筐体1を設置して吐出口13から直接居室内に噴霧し、加湿・除菌することを前提にしたものであるが、広大な空間に設置した場合には、空間の隅々に加湿空気を行き渡らせることが困難な場合も想定される。したがってそのような場合には
図5に示すように、加湿器の筐体1を居室の外に設置して、吸気ダクト25から居室内の空気を吸引するとともに、送気管8をダクト23に接続して加湿空気を誘導し、天井部に設けられた複数の吹き出し口24から吐出させる、いわゆるダクト方式を採用すると非常に効果的である。そして本発明の超音波式空間除菌加湿器は、このダクト方式にも問題なく対応することができる。
【0050】
ダクト方式はその構造上、内部に異物が吸着し易いうえに清掃も困難であることから、カビや雑菌が繁殖し易いという欠点を有している。そのうえ湿度の高い空気をダクトで送気しようとすれば、湿気がカビや雑菌の繁殖を一層助長して、ダクト内部にカビや雑菌が大量に繁殖してしまう可能性が極めて高い。したがってダクト方式で加湿空気を供給する場合には、極めてクリーンで強力な殺菌性を有した加湿空気を送気する必要がある。
【0051】
この点に関し本発明の加湿器では、カビや雑菌等の異物があらかじめ除去されており、加湿空気には殆ど異物が混入していないため、送気管8をダクト23に接続してもダクト23の内部に異物を吸着させる可能性が少ない。また何らかの理由でダクト23内にカビや雑菌が混入したとしても、加湿空気中の次亜塩素酸が十分な濃度を有しているためカビや雑菌は死滅し、装置を長期間停止しても、ダクト23内部で繁殖してしまう余地が極めて少なく、衛生的に使用することができるのである。
【0052】
またダクト方式を採用した際には、次亜塩素酸水溶液製造装置12を筐体1に収納された加湿器本体とは別体とすることで拡張性の高さを有効に発揮させることができる。すなわち
図5に示すように、居室の外に設置された1台の次亜塩素酸水溶液製造装置12に複数台の加湿器を接続できるので、居室Aと居室Bなど複数の居室に向けて加湿器を容易かつ低コストで増設することができ、大規模な施設での使用に容易に対応することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように本発明の超音波式空間除菌加湿器は、異物を含まない殺菌効果の優れた次亜塩素酸を含有する加湿空気を室内に大量に供給して室内空間を加湿・除菌することができ、かつメンテナンスも容易であるため。特に医療施設の病室など加湿・除菌の必要性が高い大空間で使用するのに最適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の実施形態を示す超音波式空間除菌加湿器の側面図
【
図2】本発明の実施形態を示す水受け手段である
ドーナツ状の受け皿の側面図及び縦断面図
【
図3】本発明の実施形態を示す水滴の吸着促進手段の側面図及び縦断面図
【
図4】本発明のさらに別の実施形態を示す水滴の吸着促進手段の側面図及び縦断面図
【
図5】本発明の実施形態を示すダクト方式による場合の側面図
【符号の説明】
【0055】
1 筐体、2 貯水槽、3 超音波発生器、4 送風手段、 5 制御弁、6 排水タンク、7 コントローラ、8 送気管、9
ドーナツ状の受け皿、10 吸着促進手段、11 排
出管、12 次亜塩素酸水溶液製造装置、21 縦状の板、22 螺旋状の板、23 ダクト