【実施例1】
【0010】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0011】
自動車などの車両には、車室内の前部に、
図1に示すような、インストルメントパネルなどの車体パネル1が設けられている。この車体パネル1の車幅方向の中間部には、空調装置やオーディオ装置などを操作するための操作部2が設けられている。そして、この操作部2の両側部および底部に沿って、加飾用のフィニッシャ3を取付けるようにする。このフィニッシャ3の取付構造(車両用フィニッシャ取付構造)は、
図2に示すように、車体パネル1に対し、爪係合部4を用いて取付けられる。更に、この爪係合部4とは別に、車体パネル1とフィニッシャ3との間に、爪係合部4の係合状態が解除された後に保持を行う脱落防止部7を設ける。
【0012】
ここで、フィニッシャ3は、上記した操作部2の両側部と下部とを取り囲む正面視ほぼU字状のものとされる。但し、フィニッシャ3の形状は、上記に限るものではない。爪係合部4は、爪4aと爪穴4bとによって構成される。爪係合部4の詳細については省略する。
【0013】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにしている。
【0014】
(1)
図3に示すように、上記脱落防止部7が、上記フィニッシャ3に隣接して設けた一対の内向きまたは外向きの爪部11,12と、上記車体パネル1に隣接して設けた、上記一対の内向きまたは外向きの爪部11,12のそれぞれが係合される一対の爪孔部13,14と、を有するものとされる。
【0015】
ここで、一対の爪部11,12は、例えば、内向きのものとされている。内向きとは、一対の爪部11,12の係止部分(後述する係止用凸部21,22)が互いに対向する側に向いていることを言う。また、外向きとは、一対の爪部11,12の係止部分(係止用凸部21,22)が互いに相反する側に向いていることを言う。
【0016】
そして、一方の爪部11は、上記した爪係合部4の爪4aに対して付設されている。この場合、一方の爪部11は、爪4aが外れた後に爪穴4b(爪孔部13)に係止されるような位置(即ち、車両前方側の位置)に形成される。即ち、爪部11を爪孔部13に挿入し、係合させた状態で(即ち、車体パネル1にフィニッシャ3を取付けた状態で)、爪部11が爪孔部13に対して非係止状態となるように、爪部11は、爪4aの先端側の位置に形成されている。
【0017】
また、他方の爪部12は、爪係合部4の爪4aとは別個に、専用のものとして設けられる。この爪部12も、爪孔部14に挿入した時に、非係止状態で待機されるように、爪孔部14の奥側の位置に形成される。なお、一方の爪部11についても、他方の爪部12と同様に、専用のものとしても良い。
【0018】
(2)上記一対の内向きまたは外向きの爪部11,12が、上下に隣接配設される。
そして、
図4(〜
図6)に示すように、上側(または下側)の爪部11(または爪部12)が、上方からの荷重F1に対して、上側(または下側)の爪孔部13(または爪孔部14)の下縁部に上下方向に係止可能な下向きの係止用凸部21を有する。
また、
図7(〜
図9)に示すように、下側(または上側)の爪部12(または爪部11)が、車両後方側からの荷重F2に対して、下側(または上側)の爪孔部14(または爪孔部13)の上縁部に車両前後方向に係止可能な上向きの係止用凸部22を有するものとされる。
【0019】
この場合、専用の爪部12は、その長さに特に制限がないので、長さがほぼ決められた爪4aに付設された爪部11が爪穴4b(爪孔部13)へ入るよりも先に、爪孔部14に入るような長さに形成されている。この際、専用の爪部12の先端部には、爪孔部14へ挿入する際のガイドとなるテーパ部25が形成される。また、爪孔部14の上縁部には、上向きの係止用凸部22を確実に係止させるために、ほぼ車両前方へ延びる係止形状部26が形成される。更に、爪部11の先端部や爪孔部13の下縁部周辺には、下向きの係止用凸部21を爪孔部13へ挿入する際に、係止用凸部21が爪孔部13の下縁部を乗り越えられるようにガイドするためのテーパ部27が適宜形成される。なお、上向きの係止用凸部22は、下向きの係止用凸部21が爪孔部13に係止されるよりも後から爪孔部14に係止されるような位置関係となっている。
【0020】
上方からの荷重F1および車両後方側からの荷重F2は、共に、緊急時にフィニッシャ3へ入力される外力(緊急入力荷重)のことであり、通常時にフィニッシャ3に作用される外力(乗員の手付きなど)よりも大きなものである。上方からの荷重F1は、ほぼ真下へ向かう緊急入力荷重であり、車両後方側からの荷重F2は、ほぼ前斜め下方へ向かう緊急入力荷重である。そして、上方からの荷重F1によって、
図5、
図6に示すように、フィニッシャ3は、矢印で示す方向23(フィニッシャ3の表面にほぼ沿った下方向など)へ移動しながら外れようとすることになる。また、車両後方側からの荷重F2によって、
図8、
図9に示すように、フィニッシャ3は、矢印で示す方向24(ほぼ車両後方など)へ移動しながら外れようとすることになる。
【0021】
(3)上記フィニッシャ3は、上下方向へ延びる細長形状を有している。
そして、上記一対の内向きまたは外向きの爪部11,12が、細長形状の上記フィニッシャ3の一端側に設けられる。
更に、上記フィニッシャ3の他端側は、上記車体パネル1に対し、締結具31によって締結固定される。
【0022】
ここで、一対の内向きまたは外向きの爪部11,12は、上下方向へ延びる細長形状のフィニッシャ3の上端側に設けられ、締結具31は、フィニッシャ3の下端側に設けられる。締結具31には、ボルトやビスやスクリューなどが使用される。この場合、上記したようにフィニッシャ3は、正面視ほぼU字状をしているので、このフィニッシャ3の両側腕部が上下方向へ延びる細長形状の部分(細長形状部)となっている。
【0023】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0024】
(1)脱落防止部7が、隣接して設けられた一対の内向きまたは外向きの爪部11,12と一対の爪孔部13,14とを有するものとされた。これにより、脱落防止部7の機能を2つに分けることができる。よって、機能を2つに分けた分だけ、脱落防止部7の形状や構造を単純化できるので、脱落防止部7の挿入作業の容易化を図ることが可能となる。
【0025】
(2)一対の内向きまたは外向きの爪部11,12が、上下に配設された。そして、上側(または下側)の爪部11(または爪部12)が、下向きの係止用凸部21を有するものとされた。これにより、上側(または下側)の爪部11(または爪部12)は、
図4〜
図6に順に示すように、上方からの荷重F1に対して、上側(または下側)の爪孔部13(または爪孔部14)の下縁部に上下方向に係止される。以って、爪部11(または爪部12)の脱落が防止される。
【0026】
また、下側(または上側)の爪部12(または爪部11)が、上向きの係止用凸部22を有するものとされた。これにより、下側(または上側)の爪部12(または爪部11)は、
図7〜
図9に順に示すように、車両後方側からの荷重F2に対して、下側(または上側)の爪孔部14(または爪孔部13)の上縁部に車両前後方向に係止される。以って、爪部12(または爪部11)の脱落が防止される。
【0027】
以上により、一対の内向きまたは外向きの爪部11,12を、上方からの荷重F1に対する脱落防止機能を有するものと、車両後方側からの荷重F2に対する脱落防止機能を有するものとに分けて設ける(役割分担させて設ける)と共に、それぞれを確実に機能させることができる。
【0028】
(3)上下方向へ延びる細長形状をしたフィニッシャ3の他端側を、締結具31で車体パネル1に締結固定するようにした。これにより、フィニッシャ3の他端側を、脱落のおそれがないものとすることができる。よって、フィニッシャ3の一端側のみに対して脱落防止構造を採用すれば良くすることができる。そして、フィニッシャ3の他端側を固定したことにより、フィニッシャ3の脱落の仕方のパターン(或いは、脱落モード)を減らすことができ、脱落モードが減った分、フィニッシャ3の一端側の脱落防止構造の単純化を図ることが容易となる。
【0029】
そして、他端側に締結具31を用いた場合に、フィニッシャ3の一端側の脱落防止構造を、上記したような一対の内向きまたは外向きの爪部11,12と一対の爪孔部13,14とを有する脱落防止部7とした。これにより、脱落防止部7の挿入作業の容易化と、脱落防止部7の役割分担による作動の確実化とを同時に得る(両立させる)ことができる。
【0030】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。