(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建築物における屋上や壁面を緑化することで、ヒートアイランド現象の緩和や省エネルギー対策が図られている。例えば壁面にネットやワイヤーといった生育補助材を取り付け、つる植物を登はん或いは下垂させる方法や、壁面に植栽基盤を直接設置する方法によって緑化されている。また、建築物における窓面や開口部に対しては、夏期の日射を遮蔽するために、ヘチマなど一年生植物によって窓面を覆う、いわゆる「緑のカーテン」が普及しつつある。
【0003】
例えば、特許文献1や非特許文献1には、窓面や開口部を植物などで覆う場合、つる植物を植え付けるプランターと、当該植物を繁茂させるネットなど生育補助材とを組み合わせたユニットを、建物の外壁に鉄骨フレームを組んで作製した歩廊部に設置していた。この場合、上記ユニット及び上記歩廊部により建物に余計な荷重が係るといった問題に加え、建物の外観を損ねるといった問題もあった。
【0004】
また、建物の外周壁面にプランターを設置し、ゴーヤやヘチマなど一年生のつる植物を植え付ける所謂「緑のカーテン」が普及している。例えば、当該プランターを建築物の開口部の前に設置し、この開口部にネットを貼ることで、開口部に「緑のカーテン」を配設することができる。
【0005】
さらに、特許文献2には、「緑のカーテン」を配設するためのユニットが開示されている。特許文献2に開示されたユニットは、少なくとも根が存在する部分を断熱材で覆い、開口部を屋根状部材で覆うことによりほぼ密閉された状態のプランターで構成され、建築物屋上の壁面側に端に設置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、壁面や窓面、開口部といった建築物における面に対する緑化は、植物を栽培するためのプランターを適切な位置に配置し、管理者による適切な維持管理により植物を適切に生長させていた。しかしながら、従来のプランターでは、建築物における面に対して十分に緑化するには植物の維持管理に係る作業量が多く、また緑化した後の維持管理にも手間が多くかかるといった問題があった。そこで、本発明は、壁面や窓面、開口部といった建築物における面に対する緑化に際して維持管理の手間を大幅に軽減することができる緑化用プランター及びこれを用いた緑化壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成した本発明は以下を包含する。
(1)植栽基盤を収容する多数の開孔を有する第1ケースと、
第1ケースを収容した状態で当該第1ケースの植栽基盤に生育する植物を外方に臨ませる開口部を有し、第1ケースを収容した状態で当該第1ケースとの間に空間部を形成する第2ケースとを備える、緑化用プランター。
(2)上記第2ケースは、上記開口部が形成された上部面を開閉する機構を有していることを特徴とする(1)記載の緑化用プランター。
(3)上記(1)又は(2)記載の緑化用プランターと、
当該緑化用プランターを内部に格納する建築物とを備え、
当該建築物の内部に格納した緑化用プランターで栽培した植物により、上記建築物上方の面を緑化したことを特徴とする緑化壁。
(4)上記建築物は腰壁であり、上記建築物上方の面は窓部又は開口部であることを特徴とする(3)記載の緑化壁。
(5)端部で互いに連結した複数の上記緑化用プランターを備えることを特徴とする(3)記載の緑化壁。
(6)上記建築物の上方に配設した、植物の支持部材を有することを特徴とする(3)記載の緑化壁。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る緑化用プランター及びこれを用いた緑化壁は、植栽基盤に植栽された植物の環境を良好に維持することができるため、建築物の緑化に際して管理者の維持管理の手間を大幅に削減することができる。よって、本発明によれば、壁面や窓面、開口部といった建築物における面に対する緑化を簡便な手段により低コストに実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る緑化用プランター及びこれを用いた緑化壁について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び2に示すように、緑化用プランター1は、内壁パネル2と外壁パネル3とから構成される腰壁4内に配設されている。なお、本例では、緑化用プランター1を腰壁4内に配設する例を説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、緑化用プランター1は、図示しないが、窓面近傍の床面の内部に配設しても良い。すなわち、緑化用プランター1は、腰壁4の中や図示しない床面の内部といった建築物の内部に配設されることによって、当該建築物の上方にある開口部等の壁面を緑化することができる。
【0013】
本例で示す緑化用プランター1は、腰壁4内に配設されることで、腰壁4上方の窓面等の開口部5を緑化するものである。ここで、開口部5とは、窓面等の外光を取り込むことができる壁を意味する。よって、開口部5は、開閉動作可能な硝子窓でも良いし、はめ込み式の硝子窓でも良い。また、開口部5は、硝子等の部材を有しない、窓枠(サッシ)のみから構成されるものであっても良い。
【0014】
また、本例において緑化用プランター1は、内壁パネル2と外壁パネル3との間に配置されたH鋼6上に配設された排水パン7上に載置されており、この状態で上板パネル8により覆われている。排水パン7に設けられる排水口は側面に設置し、水が底面に溜まるようにすることが好ましい。上板パネル8は、雨水の利用、空気の交換を図る必要性から、多数の開孔のあるパネルが好ましい。
【0015】
さらに、本例の緑化用プランター1を使用する場合、緑化対象の開口部5には、植物を支持するための支持部材として、ワイヤーや化学繊維からなる複数本の登はん用ロープ9が開口部5の上端と下端との間に張られている。本例では、登はん用ロープ9が交差するように(X字となるように)張られている。複数の登はん用ロープ9は、例えば、開口部5の上端と下端の間に平行に張られても良い。また、複数の登はん用ロープ9は、開口部5の上端と下端の間及び開口部5の右端と左端との間に、交差するように張られても良い。
【0016】
なお、植物を支持するための支持部材としては、複数本の登はん用ロープ9に限定されず、例えば、開口部5全体或いは一部を覆う網を使用することもできる。また、植物を支持するための支持部材としては、緑化用プランター1にて植栽する植物が登はん性植物(つる植物等)である場合には登はん用ロープ9を支持部材として使用すればよいが、登はん性を有しない植物である場合には通常のロープと当該ロープに植物を固定する器具を支持部材として使用すればよい。ロープに植物を固定する器具としては、針金や、ビニール被覆針金等を使用することができる。
【0017】
以下、緑化用プランター1について詳述する。
図3〜5に詳細に示すように、緑化用プランター1は、植物10を植栽する植栽基盤11a及び11bと、植栽基盤11bを収容する多数の開孔を有する第1ケース12と、第1ケース12を収容した状態で第1ケース12の植栽基盤11aに生育する植物10を外方に臨ませる植栽用開口部13を有し、第1ケース12を収容した状態で第1ケース12との間に空間部14を形成する第2ケース15とを備える。
【0018】
植物10としては、上述のように登はん性を有する植物及び登はん性を有しない植物のいずれを使用しても良いが、開口部5の緑化が簡易であることから登はん性を有する植物を使用することが好ましい。登はん性を有する植物としては、特に限定されないが、ヘデラ・カナリエンシス、ヘデラ・ヘリックス cv. ピッツバーグ、ヘデラ・ヘリックス cv. ゴールデンチャイルド、ヘデラ・ヘリックス cv. グレーシャ、カロライナ・ジャスミン、スイカズラ、テイカカズラ、ビグノニア、ツキヌキニンドウ及びクレマチスを挙げることができる。また、植物10としては、単一の種類を用いても良いが、複数の種類を組み合わせて使用しても良い。
【0019】
植栽基盤11a及び11bは、上述した植物10を植栽できる材料であれば特に限定されない。植栽基盤11a及び11bとしては、特に、有機性あるいは無機性の繊維分からなる人工土壌を使用することが好ましい。この人工土壌は、特に保水性や排水性に優れ、且つ、毛細管が連通した形状となるために植物10の根を拡げる機能がある。また、人工土壌を使用することで、植栽基盤11a及び11b自体に強度を付与することができ、形状を保持することができる。より具体的に、人工土壌としては、例えば、ピートモス等の有機性繊維に熱融着性のあるプラスチック繊維を混合し、高温高圧で蒸し上げて成型した人工土壌(商品名:エクセルソイル(みのる産業株式会社製))や、鉱物に由来する繊維をバインダーによって成型したロックウールを使用することが好ましい。
【0020】
植栽基盤11a及び11bは、複数の植栽基盤11aが植栽基盤11bに組み合わされることで全体として一つの部材を形成する。ここで植栽基盤11a及び11bは、それぞれ同じ材料から成形しても良いし、互いに異なる材料から成形しても良い。また、複数の植栽基盤11aを植栽基盤11bに組み合わせるような構成に限定されず、これら複数の植栽基盤11a及び植栽基盤11bを一体に構成しても良い。
【0021】
植栽基盤11bは、長手方向に並列した複数の植栽基盤11aを嵌め込む、長手方向に並列した複数の凹部16を有している。植栽基盤11aは、凹部16の形状に応じて略箱形に形成されたポットであり、植物10が定植されている。植栽基盤11aとしては、例えば、商品名:エクセルキューブ(みのる産業株式会社製)及びやさいはなポット(日本ロックウール株式会社製)を使用することができる。
【0022】
緑化用プランター1において、植栽基盤11a及び11bは、多数の開孔を有する第1ケース12に収容される。第1ケース12は、例えば、植栽基盤11bの形状に合わせた形状であって、植栽基盤11bの凹部16が形成された面以外の面を覆うような樋形状となっている。第1ケース12は、多数の開孔を有するため、収容した植栽基盤11bに張り巡らされた植物10の根に酸素を供給することができ、且つ根腐れを防止することができる。ここで、多数の開孔を有するとは、例えば、切削加工や穴開け加工等により複数の開孔が形成されることを含む意味である。多数の開孔を有する第1ケース12としては、ステンレス製のエキスパンドメタルやパンチングメタル、有孔プラスチック板等を使用することが好ましい。なお、第1ケース12をステンレス製や樹脂製とすることで耐腐蝕性が向上することとなり、第1ケース12を長期間に亘って使用することが可能となる。
【0023】
緑化用プランター1において、植栽基盤11a及び11bを収容した第1ケース12は、第2ケース15に収容される。第2ケース15内に植栽基盤11bを収容した第1ケース12を収容すると、第1ケース12と第2ケース15との間に空間部14が形成される。この空間部14により、植栽基盤11b中の水分量を適度に保つことができ、根腐れを防止することができる。特に、第2ケース15を塩化ビニル管で作製した場合には、空間部14の気密性をより高めることができ、植栽基盤11b中の水分量をより適度に保つことができ、根腐れを確実に防止することができる。
【0024】
なお、本例の緑化用プランター1において、第1ケース12は、その長手方向に対して直行する方向の断面形状が略矩形であり、第2ケース15における同断面形状が略円形であることから、第1ケース12を第2ケース15内に収容するだけで空間部14を形成することが可能である。例えば、植栽基盤11bの上記断面形状が60mm×50mmとすると、第2ケース15の上記断面形状を内径80mmの円形とすることが好ましい。
【0025】
また、本例の緑化用プランター1において、植栽基盤11a及び11bを収容した第1ケース12は、植栽基盤11aに生育する植物10を外方に臨ませる植栽用開口部13を有している。植栽用開口部13の形状は、外方に臨ませる植栽基盤11aの外形形状と同形でやや大とされるが、植栽基盤11aを外方に臨ませることができれば、植栽基盤11aの外形形状とは異なる形状であっても良い。なお、植栽用開口部13の大きさは、特に限定されないが、植栽基盤11aが52mm角である場合、例えば70mm角とすることができる。また、植栽用開口部13の間隔は、特に限定されないが、例えば200mmとすることができる。
【0026】
植栽用開口部13から植栽基盤11aに生育する植物10を外方に臨ませることで、植物10(特に、つる植物)の根元における分枝が過繁茂することを防止することができる。言い換えると、つる植物等の植物10の根元まで覆ってしまうと、密閉された中で分枝が過繁茂してしまい、植物が衰退する要因の一つとなってしまう。植栽用開口部13から植栽基盤11aに生育する植物10を外方に臨ませることで、分枝が自由に繁茂でき植物10を長期間に亘って良好に生育することができる。また、植栽基盤11aが外方に露出することで、植栽基盤11b中の余分な水分が蒸散するようになり、第2ケース15内が過湿になることを防止することもできる。
【0027】
以上のように構成された緑化用プランター1は、例えば、予め植物10を定植した植栽基盤11aを準備しておき、植栽基盤11bを収容した第1ケース12を第2ケース15内に収容した状態で、準備しておいた植栽基盤11aを凹部16に嵌め込むことで作製することができる。なお、植物10は、植栽基盤11aに予め定植しておく必要はなく、例えば緑化用プランター1を腰壁4に設置した後、植物10を植栽基盤11aに定植しても良い。
【0028】
なお、植物10に対する給水にあたっては、管理者が適宜行っても良いが、図示しない給水システムを利用することもできる。給水システムとしては、例えば、腰壁4内に緑化用プランター1に沿って配設された給水管及び当該給水管から導出された点滴チューブからなるシステムを利用することができる。点滴チューブは、植栽用開口部13から外方に臨む植栽基盤11aに対応する位置に配設され、植栽基盤11aに定植された植物10に対して適宜水を与えることができる。
【0029】
ところで、本発明に係る緑化用プランター1は、
図4に示したように、第1ケース12の断面形状を略矩形とし、第2ケース15の断面形状を略円形とすることで空間部14を形成していた。しかしながら、本発明に係る緑化用プランター1は、このような構成に限定されず、例えば、
図6に示すように、略矩形の断面形状を有する第1ケース12と、第1ケース12と同形である略矩形の断面形状を有する第2ケース20と、第1ケース12と第2ケース20との間に配設された間隙部材21とを有する構成であっても良い。間隙部材21は、第1ケース12の長手方向に沿って配設されることで、第1ケース12と第2ケース20との間に空間部14を形成することができる。ここで、間隙部材21は、植栽基盤11bの上記断面形状を60mm×50mmとすると、径5mmほどの丸棒を使用することができる。なお、間隙部材21は、例えば、溶接等の方法によって第1ケース12及び第2ケース20のいずれかに固定されていても良いし、第1ケース12及び第2ケース20とは異なる独立した部材とすることもできる。
図6に示した構成の緑化用プランター1でも、空間部14により、植栽基盤11b中の水分量を適度に保つことができ、根腐れを防止することができる。
【0030】
また、本発明に係る緑化用プランター1は、所定の長さとなるように寸法を定めて作製し、緑化対象の開口部5の寸法に応じて複数本を使用することが好ましい。すなわち、緑化用プランター1の長さは、腰壁4など建築物のモジュールによって任意に設定できるが、植栽基盤11b内の毛細管が連通していることと、また、植栽基盤11bの強度や植栽基盤11bを囲う第1ケース12の強度に配慮して、1〜2mとすることが望ましい。このように、所定の長さの緑化用プランター1を複数使用する場合、例えば、
図7に示すような連結機構30を使用することが好ましい。この連結機構30を使用することによって、複数の緑化用プランター1を簡便に連結することができる。複数の緑化用プランター1を連結機構30により連結する場合、根詰まり等の原因で植替えするような場合でも、所定の緑化用プランター1のみを簡単に取り外すことができるためメンテナンス作業をより簡単に行うことができる。
【0031】
連結機構30は、第2ケース15の外径寸法よりやや大径の連結管31と、連結管31の内側に形成した凹溝32に嵌め込まれた複数のOリング33とから構成されている。このように構成された連結機構30は、両端部から一対の緑化用プランター1を押圧しながら嵌め込むことで、これら一対の緑化用プランター1を連結することができる。
【0032】
さらに、本発明に係る緑化用プランター1は、
図8(a)及び(b)に示すように、開閉する機能を有する第2ケース15を使用することができる。
図8に示した第2ケース15は、底部40と、一対の側部41と、これら底部40と一対の側部41との間に配設された回転支持部材42とから構成されている。また、一対の側部41は、それぞれ係合部43を有している。すなわち、
図8(a)に示したように、係合部43により、一対の側部41を閉じた状態に維持することができる。
【0033】
図8に示した第2ケース15を使用することで、植栽基盤11a及び11bを収容した第1ケース12を第2ケース15から簡単に取り外すことができる。植栽基盤11aに定植した植物10は、生育するに従って植栽基盤11b内に根を伸長させる。よって、植物10が十分に成長した段階では、植栽基盤11aを植栽基盤11bから取り外すと根が引きちぎられることとなる。
図8に示した第2ケース15を利用することで、十分に生育した植物10の根を痛めることなく、植栽基盤11a及び11bを収容した第1ケース12を一体として第2ケース15から取り外すことができる。
【0034】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る緑化用プランター1は、窓面等の開口部5をつる植物によって被覆する際、腰壁4など開口部5周辺の建築物の中に格納することができるため、建物の外観を損なうことがない。また、緑化用プランター1を取り付けるために、新たに建物の外壁に鉄骨フレームを組む必要がなく、建物へ余計な荷重負荷をかけることがない。また、本発明に係る緑化用プランター1を利用する場合、室内側からメンテナンスができる。
【0035】
さらに、緑化用プランター1は、通気性を有する第1ケース12が植栽基盤11a及び11bを収容し、第2ケース15が第1ケース12を収容する構成としているため、植栽基盤11a及び11b中の水分量が適度に維持されることから、従来のプランターを使用する場合と比較してメンテナンス作業が少なくても、過湿による根腐れの発生を抑制することができ、植物を健全に育成することができる。
【0036】
なお、本発明に係る緑化用プランター1は、上述のように内装の一部として、窓面等の開口部5に対して緑化する、すなわち窓面等の開口部5を緑化壁とする例を説明した。しかし、本発明に係る緑化用プランター1は、開口部5に使用する例に限定されず、建築物の壁面であれば如何なる壁面を緑化する際にも使用することができる。例えば、本発明に係る緑化用プランター1は、外壁の一部を緑化する際に使用することができるし、開口部5ではない通常の内壁を緑化する際に使用することもできる。例えば、本発明に係る緑化用プランター1を外壁に使用する際には、
図1に示した例のように、緑化対象の外壁に腰壁を設置し、その腰壁内に配設すればよい。このように、本発明に係る緑化用プランター1は、建築物の壁面であれば如何なる場所にも設置することができ、如何なる壁面も緑化することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
図1に示したような、幅100mmほどの腰壁4に格納可能な緑化用プランター1を用いて、つる植物を栽培することが可能なのか、また、植栽基盤11a及び11bに適した人工土壌及び植栽基盤11a及び11bを覆う第1ケース12の素材を検討するために、2つの試験区を設けた。まず、植栽基盤11a及び11bを構成する人工土壌として、ピートモス(有機性繊維)を熱融着性のプラスチック繊維で固形化した商品名:エクセルソイルと、鉱物由来繊維をバインダーによって成形したロックウールの2種類の材料を選定した。次いで、植栽基盤11bの大きさを奥行き60mm、高さ50mm、幅2,000mmとして、その植栽基盤11bを覆う樋状の第1ケース12を、2種類の材料、すなわちステンレス製のエキスパンドメタル(商品名:フラットMESH,厚さ1〜1.2mm,網目10×20mm)と、厚さ1〜1.2mmのステンレス製パンチングメタル(孔径10mm、空隙率50%)を用いて製作した。なお、2つの試験区の構成として、試験区1の植栽基盤11bはエキスパンドメタル製の第1ケース12にエクセルソイルを充填したもの、試験区2はパンチングメタル製の第1ケース12にロックウールを充填したものを用いた。
【0039】
第1ケース12に収められた植栽基盤11bを、第1ケース12を内接する内径80mm、外径89mm、長さ2,000mmの塩化ビニル管(第2ケース15)にそれぞれ入れ、両端を同じく塩化ビニル製のキャップによって閉じた。次いで、塩ビ管の上面、植栽基盤11bに平行する位置に200mm間隔で60mm角の植栽用開口部13を設けた。この植栽用開口部13に、カロライナ・ジャスミンやスイカズラを植え付けた54mm角の商品名:エクセルキューブ(植栽基盤11a)を植栽基盤11bに接するよう設置した。なお、試験区に設置したエクセルキューブ(植栽基盤11a)は、事前に巻つる性、登はん性といった生育特性を備えたカロライナ・ジャスミンやスイカズラなどの苗を植え付け、十分に根付くまで養生したものである。試験区1及び試験区2にそれぞれジャスミンを植え付けたエクセルキューブ4個、スイカズラを植え付けたエクセルキューブを4個設置した。
【0040】
そして、植物を植え付けた2つ試験区を温室内に設置し、試験区の後ろに登はん補助材として登はん用ロープを斜め方向に張って、各試験区に植え付けたジャスミン及びスイカズラの生育を比較した。試験を開始してから1ヶ月間の各試験区に植え付けた植物における、つる伸長量を植物種ごとに平均した値を表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、ジャスミンにおけるつる伸長量については、ロックウールを植栽基盤11bに用いた試験区2が試験区1に比べて大きいが、いずれの試験区においても個体間でつる伸長量にバラつきが見られた。スイカズラにおけるつる伸長量については、試験区間で大きな差はなく、個体間のバラつきも小さかった。以上の結果から、植栽基盤11bの構成はつる植物の生育性に大きな影響を及ぼすことがなく、植栽基盤11bを第2ケース15で覆うことによって、つる植物が問題なく育成することが明らかとなった。