特許第6333646号(P6333646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333646二液型塗料組成物及びそれを用いた複層塗膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333646
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】二液型塗料組成物及びそれを用いた複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20180521BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180521BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180521BHJP
   C09D 143/04 20060101ALI20180521BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20180521BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180521BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C09D133/14
   C09D7/12
   C09D175/04
   C09D143/04
   B05D1/36 A
   B05D1/36 B
   B05D7/24 302P
   B05D7/24 301U
   C08G18/62
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-140928(P2014-140928)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-17140(P2016-17140A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】角田 剛
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−005943(JP,A)
【文献】 特開平11−189744(JP,A)
【文献】 特開2001−261918(JP,A)
【文献】 特開2009−046642(JP,A)
【文献】 特開平05−239178(JP,A)
【文献】 特開2000−119590(JP,A)
【文献】 特開平08−092502(JP,A)
【文献】 特開平01−141952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
B05D 1/00−7/26
C08G 18/00−18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤及び硬化剤を直前に混合して塗装する二液型塗料組成物において、
主剤(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A−1)及び硬化触媒(A−2)を必須成分として含有し、
硬化剤(B)は、イソシアナート化合物(B−1)及びアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)を必須成分として含有し、
前記水酸基含有アクリル樹脂(A−1)は、水酸基価80〜180mgKOH/g、ガラス転移温度−40〜40℃、重量平均分子量2,000〜20,000g/molであり、
前記アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)は、アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体30〜80質量部と、その他の共重合可能なモノマー20〜70質量部を共重合して得られる共重合体であり、重量平均分子量が2,000〜20,000g/molであり、かつイソシアナート基と反応する水酸基、カルボキシル基、アミノ基を含まない、二液型塗料組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有アクリル樹脂(A−1)が、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する水酸基価が80〜160mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂である請求項1に記載の二液型塗料組成物。
【請求項3】
前記水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の水酸基1当量に対してイソシアナート化合物(B−1)のイソシアナート基が0.5〜1.5当量の割合となるように混合する請求項1または請求項2に記載の二液型塗料組成物。
【請求項4】
前記硬化剤(B)は、前記イソシアナート化合物(B−1)と前記アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分を合わせた100質量部に対して、前記アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分が20〜80質量部の割合である請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の二液型塗料組成物。
【請求項5】
電着が施された鋼板上に中塗塗料を塗装し、ウェットオンウェットにてベースコ−ト塗料を塗装し、さらに、ウェットオンウェットにて請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の二液型塗料組成物を塗装し、同時に加熱硬化を行う複層塗膜形成方法。
【請求項6】
電着が施された鋼板上に中塗塗料を塗装し、ウェットオンウェットにてベースコ−ト塗料を塗装し、さらに、ウェットオンウェットにてクリヤー塗料組成物を塗装し加熱硬化させた後、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の二液型塗料組成物を塗装し、加熱硬化を行う複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上塗り塗料用硬化性樹脂組成物及びそれを用いた複層塗膜形成方法に関する。さらに詳しくは、主剤塗料をメインタンクから塗装ガンの手前までポンプで循環させ、窒素封入したタンクから供給される硬化剤と二液混合装置を用いて混合、塗装を行う自動車塗装分野の二液型上塗り塗料において、優れた耐傷付き性、耐汚れ性、耐酸性、耐ガソリン性が得られる二液型塗料組成物、及びそれを用いた複層塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用塗装では洗車機等による擦り傷、ドア開閉時の爪による引掻き傷等が問題視されており、耐傷付き性に優れた塗料が求められている。また、走行中に付着する泥汚れ、大気中の汚れが付着した雨筋汚れ等が容易に落とせるメンテナンスイージー塗装への高い要求がある。
【0003】
例えば、耐擦り傷性に優れた硬化性樹脂組成物として、水酸基含有アクリル樹脂と多官能イソシアネート化合物とを含有する硬化性樹脂組成物であって、前記多官能イソシアネート化合物のうちの少なくとも一部がイソシアヌレート型イソシアネート化合物であり、前記硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1):−(CH−(1)(式中、nは4以上の整数を表す。)で表されるソフトセグメント部を、前記水酸基含有アクリル樹脂及び多官能イソシアネート化合物の固形分全量に対して25〜50質量%有していることを特徴とする硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献1)。しかしながら、この硬化性樹脂組成物は、耐洗車機傷性は向上するものの、得られる塗膜が軟質のため、付着した汚れが落ち難い、耐ガソリン性に劣る、塗装ラインでゴミ物等が付着した塗膜を補修するポリッシングの工程時間が長くなるといった問題があった。ポリッシングの工程時間とは塗装ラインで付着したゴミ物等をサンディングによって除去する工程と、仕上げ材によってサンディングの跡を消す工程の合計時間のことを意味し、その時間が長くなると、生産性が落ちる問題が生じる。
【0004】
また、耐汚染性に優れた熱硬化性組成物として、水酸基を有する樹脂(A)、アルコキシラン基含有共重合体(B)と硬化触媒(C)からなる組成物を主成分とする熱硬化性組成物が知られている(特許文献2)。しかしながら、この熱硬化性組成物は、耐汚染性は向上するものの、イソシアナート化合物を配合していなために得られる塗膜が可撓性に乏しく、耐衝撃性、耐屈曲性、耐擦り傷性に劣る問題点があった。
【0005】
また、耐汚染性に優れた二液型の熱硬化性組成物として、加水分解性基と結合したシリル基および水酸基を含有するビニル系共重合体(A−1)を必須成分とする樹脂(A)成分100重量部、および、脂肪族炭化水素を含有する芳香族基含有量成分が50重量%以下の有機溶剤(C)50〜400重量部を含む主剤組成物に対し、予め混合した(C)成分に可溶な多官能性イソシアナート化合物(D)0.1〜100重量部、有機金属化合物(E)0.01〜30重量部、および単官能イソシアナート化合物(F)0.1〜100重量部を含む硬化剤組成物を配合してなる上塗り塗料用硬化性樹脂組成物が知られている。(特許文献3)この熱硬化性組成物は、耐候性、耐汚染性が向上するものの、主剤塗料として加水分解性基と結合したシリル基を含有するビニル系共重合体を必須成分とする樹脂を使用するため、主剤塗料をメインタンクから塗装ガンの手前までポンプで循環させて塗装する場合には空気中の水分等により加水分解性シリル基が加水分解、縮合して増粘、ゲル化する問題点がある。この塗料組成物は、例えば金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系成形物、プラスチック、木材、紙、繊維などからなる建築物、家電用品、産業機器などの塗装に好適に使用しうる上塗り塗料用硬化性樹脂組成物であり、主剤塗料をメインタンクから塗装ガンの手前までポンプで循環させ、窒素封入したタンクから供給される硬化剤と二液混合装置を用いて混合、塗装を行う自動車塗装分野での二液型塗料の塗装方法を考慮した組成物でなかった。また、自動車塗装分野で求められる優れた耐傷付き性を得ることが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−176633号公報
【特許文献2】特開平1−141952号公報
【特許文献3】特許第4943572号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、主剤塗料をメインタンクから塗装ガンの手前までポンプで循環させ、窒素封入したタンクから供給される硬化剤と二液混合装置を用いて混合、塗装を行う自動車塗装分野の二液型上塗り塗料において、サーキュレーションでの主剤塗料が増粘、ゲル化等の問題を生じず、安定した一定の塗装粘度で塗装出来ると共に、焼き付け後の塗膜が優れた耐傷付き性、耐汚れ性、耐酸性、耐ガソリン性を示す塗料組成物、及びそれを用いた複層塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、焼き付け後の塗膜が優れた耐傷付き性、耐汚れ性、耐酸性、耐ガソリン性を示す塗料組成物とするためには、二液アクリル・ウレタン塗料組成物にアルコキシシリル基を導入し、塗膜の架橋密度を高めることで実現できるのではないかと考え検討した。
【0009】
具体的には、水酸基含有ビニル系単量体、アルコキシシリル基含有ビニル系単量体、アクリル酸及び/またはメタクリル酸、その他の共重合可能なモノマーを共重合した樹脂組成物を主体とする主剤塗料とイソシアナート化合物を主体とする硬化剤を組み合わせることを検討した。しかしながら、この塗料組成物は塗装ラインを想定したサーキュレーション試験において主剤が増粘する問題点があった。主剤組成物に脱水剤を添加することで増粘が少なくなったが、十分ではなかった。
【0010】
そこで、空気中の水分等により加水分解、縮合反応を起こすアルコキシシリル基含有共重合体を水分と触れない様に窒素封入されたタンクから二液混合装置に供給される硬化剤中に配合することを検討した。アルコキシシリル基含有共重合体はイソシアナート化合物と混合するため、イソシアナートと反応する水酸基、カルボキシル基、アミノ基を含まない共重合体とした。更にアルコキシシリル基含有共重合体を最適化することにより、イソシアナート化合物との相溶性を高め、この塗料組成物により得られる塗膜が優れた耐傷付き性、耐汚れ性、耐酸性、耐ガソリン性を示すように調整した。その結果、アルコキシシリル基含有共重合体は窒素封入されたタンクに入れられるため、水分と触れて加水分解、縮合による増粘を起こすことがなく、貯蔵時および塗装時の安定が飛躍的に優れることを見出した。また、硬化剤組成物をタンクへ詰め替える時等に水分が混入した場合においても、アルコキシシリル基含有共重合体よりも先に、より低分子量のイソシアナート化合物が水分と反応するため、増粘が非常に低く抑えられることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、主剤及び硬化剤を直前に混合して塗装する二液型塗料組成物において、
主剤(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A−1)及び硬化触媒(A−2)を必須成分として含有し、
硬化剤(B)は、イソシアナート化合物(B−1)及びアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)を必須成分として含有し、
前記水酸基含有アクリル樹脂(A−1)は、水酸基価80〜180mgKOH/g、ガラス転移温度−40〜40℃、重量平均分子量2,000〜20,000g/molであり、
前記アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)は、アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体30〜80質量部と、その他の共重合可能なモノマー20〜70質量部を共重合して得られる共重合体であり、重量平均分子量が2,000〜20,000g/molであり、かつイソシアナート基と反応する水酸基、カルボキシル基、アミノ基を含まない、二液型塗料組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記二液型塗料組成物において、水酸基含有アクリル樹脂(A−1)が、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する水酸基価が80〜160mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂である二液型塗料組成物を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記二液型塗料組成物において、水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の水酸基1当量に対してイソシアナート化合物(B−1)のイソシアナート基が0.5〜1.5当量の割合となるように混合することを特徴とする二液型塗料組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記二液型塗料組成物において、硬化剤(B)は、前記イソシアナート化合物(B−1)と前記アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分を合わせた100質量部に対して、前記アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分が20〜80質量部の割合である二液型塗料組成物を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、電着が施された鋼板上に中塗塗料を塗装し、ウェットオンウェットにてベースコ−ト塗料を塗装し、さらに、ウェットオンウェットにて上記二液型塗料組成物を塗装し、同時に加熱硬化を行う複層塗膜形成方法に関するものである。
【0016】
また、電着が施された鋼板上に中塗塗料を塗装し、ウェットオンウェットにてベースコ−ト塗料を塗装し、さらに、ウェットオンウェットにてクリヤー塗料組成物を塗装し加熱硬化させた後、上記二液型塗料組成物を塗装し、加熱硬化を行う複層塗膜形成方法に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二液型塗料組成物、及びそれを用いた複層塗膜形成方法を用いることにより、主剤塗料をメインタンクから塗装ガンの手前までポンプで循環させ、窒素封入したタンクから供給される硬化剤と二液混合装置を用いて混合、塗装を行う自動車塗装分野の二液型上塗り塗料において、増粘、ゲル化等の塗料安定性に問題なく、安定した一定の塗料粘度で塗装出来、耐傷付き性、耐汚れ性、耐酸性、耐ガソリン性に優れた塗膜を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の二液型塗料組成物及び複層塗膜形成方法について詳細に説明する。
【0019】
本発明の二液型塗料組成物は主剤(A)として、水酸基価80〜180mgKOH/g、ガラス転移温度−40〜40℃、重量平均分子量2,000〜20,000g/molである水酸基含有アクリル樹脂(A−1)が含有される。
【0020】
水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の水酸基価は、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する水酸基価が80〜160mgKOH/gであることが好ましい。この水酸基価は、好ましくは90〜150mgKOH/g、さらに好ましくは100〜140mgKOH/gである。4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する水酸基価が80mgKOH/g未満であると塗膜架橋点の柔軟性が十分でなく、耐擦り傷性が低下する。一方、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する水酸基価が160mgKOH/gを超えると樹脂の極性が高くなり過ぎ、硬化剤(B)のイソシアナート化合物(B−1)およびアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)との相溶性に劣り、塗膜が白濁する場合がある。
【0021】
水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の水酸基価は、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する水酸基価と他の水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する水酸基価を合わせて80〜180mgKOH/gとなるようにする。4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート以外の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する水酸基は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに由来する水酸基に比較して水酸基に隣接する炭素数が小さいために架橋点の柔軟性に劣る。架橋点の柔軟性に優れる水酸基含有(メタ)アクリレートとして、水酸基に隣接する炭素数が大きい、例えば、5−ヒドロキシルペンチル(メタ)アクリレート等が考えられるが、商業的に量産されていない。また、架橋点の柔軟性に優れる水酸基含有(メタ)アクリレートとして、ポリカプロラクトン変性多価アルコール(メタ)アクリレート、例えば市販品では、プラクセルFA−1(商品名、(株)ダイセル製、2−ヒドロキシエチルアクリレート1モルにε−カプロラクトン1モルを開環付加した単量体)、プラクセルFM−1D、プラクセルFM−2D、プラクセルFM−3、プラクセルFM−4(いずれも商品名、(株)ダイセル製、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1モルにε−カプロラクトンをそれぞれ1モル、2モル、3モル、4モルを開環付加した単量体)などが知られている。しかしながら、これらのポリカプロラクトン変性アクリル樹脂は耐酸性試験において加水分解され易いため、これらに由来する水酸基価は20mgKOH/gを超えて配合することが出来ない。
【0022】
水酸基含有アクリル樹脂(A−1)のガラス転移温度は−40〜40℃、好ましくは−30〜30℃である。ガラス転移温度が−40℃未満であると耐ガソリン性に劣り、一方、40℃を超えると耐擦り傷性、耐衝撃性に劣る。
【0023】
水酸基含有アクリル樹脂(A−1)のガラス転移温度は、前記の水酸基含有(メタ)アクリレートと共重合可能な他のビニル系単量体を組み合わせて調整出来る。水酸基含有(メタ)アクリレートと共重合可能な他のビニル系単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ) アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の二塩基酸のエステル、スチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、エチルスチレン等の核置換スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、及び塩化ビニル等が挙げられる。共重合可能な他のビニル系単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0024】
水酸基含有アクリル樹脂(A−1)は、水酸基含有(メタ)アクリレートと共重合可能な他のビニル系単量体を共重合させることにより得ることが出来るが、その重量平均分子量は、2,000〜20,000g/mol、好ましくは3,000〜18,000g/mol、さらに好ましくは4,000〜16,000g/molである。重量平均分子量が2,000g/mol未満の場合、耐ガソリン性に劣る場合がある。一方、重量平均分子量が20,000g/molを超えると硬化剤(B)との相溶性に劣り、塗膜が白濁する等の不具合が生じる場合がある。又、重量平均分子量が20,000g/molを超えると、スプレー塗装した場合の平滑性に劣り、柚肌となる場合がある。
【0025】
なお、本明細書における重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により得られる値である。
【0026】
水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の重合方法は特に制限されず、溶液ラジカル重合法の様な公知文献等に記載されている通常の方法を用いることができる。例えば、重合温度60〜160℃で2〜10時間かけて適当なラジカル重合開始剤とモノマー混合溶液とを適当な溶剤中に滴下しながら撹拌する方法が挙げられる。ここで用いられるラジカル重合開始剤は、通常重合に際して使用するものであれば特に限定されず、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤の使用量は、特に制限ないが、通常単量体の総量に対して0.1〜15質量%であり、好ましくは0.5〜12質量%である。また、ここで用いる溶剤は、反応に影響を与えないものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリット等の脂肪族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、及びメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を単独または混合して用いることができる。
【0027】
本発明の主剤(A)は、前記水酸基含有アクリル樹脂(A−1)と硬化触媒(A−2)を必須成分として含有してなる。
【0028】
本発明に用いる硬化触媒(A−2)の具体例としては、例えば、ジブチルスズラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズラウレート、ジオクチルスズジマレエート、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物、リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸エステル、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメタクリレート、グリシドール、アクリルグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのエポキシ化合物とリン酸および(または)モノ酸性リン酸エステルとの付加反応物、有機チタネート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸無水物、パラトルエンスルホン酸などの酸性化合物、ヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ドデシルアミンなどのアミン類、これらアミンと酸性リン酸エステルとの混合物または反応物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物などが挙げられる。
【0029】
これら硬化触媒(A−2)の中でも、有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンの混合物または反応物が好ましい。このような硬化触媒(A−2)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
硬化触媒(A−2)は、本発明の二液型塗料組成物である主剤(A)と硬化剤(B)の混合物の不揮発分100質量部に対して、0.01〜10質量部配合されることが好ましい。硬化触媒(A−2)が0.01質量部未満では硬化性が十分でない場合があり、10質量部を超えると主剤(A)と硬化剤(B)混合後のポットライフが極端に短くなり、二液混合措置から塗装ガンの間のホースで詰まりやブツを発生する場合がある。
【0031】
本発明の主剤(A)は、水酸基含有アクリル樹脂(A−1)、硬化触媒(A−2)の他に、必要に応じて、有機溶剤、各種添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、静電助剤、さらにはポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、内部架橋型樹脂微粒子等のレオロジー調整剤などを含有することが出来る。
【0032】
本発明の主剤(A)は、着色していないクリヤー塗料の主剤として用いてもよいし、染料、顔料などの着色剤を配合して着色クリヤー塗料の主剤として用いてもよい。
【0033】
本発明の硬化剤(B)は、イソシアナート化合物(B−1)と、アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)を必須成分として含有する。アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)は、アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体30〜80質量部と、その他の共重合可能なモノマー20〜70質量部を共重合して得られる共重合体であり、かつイソシアナート基と反応する水酸基、カルボキシル基、アミノ基を含まない。
【0034】
本発明のイソシアナート化合物(B−1)としては、脂肪族及び脂環式の非黄変型ポリイソシアナート化合物が好ましく用いられる。代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアナート及び/ 又はイソホロンジイソシアナートと多価アルコール及び/ 又は低分子量のポリエステルポリオールとの反応物、ヘキサメチレンジイソシアナート及び/ 又はイソホロンジイソシアナートの重合体であるイソシアヌレート体や、ウレタン結合にさらに反応して得られるビューレット体などが挙げられる。イソシアナート化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。イソシアナート化合物(B−1)は、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体が特に好ましい。
【0035】
本発明のアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)に用いるアルコキシシリル基を含有するビニル系単量体は、アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分100質量部に対して、30〜80質量部、好ましくは40〜70質量部、更に好ましくは50〜60質量部である。アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体が30質量部に満たない場合は耐傷付き性、耐汚れ性が十分でなく、80質量部を超えると本発明の水酸基含有アクリル樹脂(A−1)、イソシアナート化合物(B−1)との相溶性が十分でなく、塗膜が白濁する場合がある。
【0036】
本発明のアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)に用いるアルコキシシリル基を含有するビニル系単量体の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。ケイ素と結合したアルコキシ基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等が挙げられるが、アルキル基の炭素数が高くなるとアルコキシシリル基の反応性が低下するため、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0037】
本発明のアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)に用いるアルコキシシリル基を含有するビニル系単量体と共重合するモノマーは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基を含んではならない。本発明の硬化剤(B)は、イソシアナート化合物(B−1)、とアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)を混合してなるため、イソシアナート基と反応する水酸基、カルボキシル基、アミノ基を含むモノマーを共重合すると、硬化剤が増粘あるいはゲル化する場合がある。
【0038】
本発明のアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)に用いるアルコキシシリル基を含有するビニル系単量体と共重合可能なモノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ) アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、エチルスチレン等の核置換スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。共重合可能な他のビニル系単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0039】
本発明のアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の重量平均分子量は、2,000〜20,000g/mol、好ましくは3,000〜18,000g/mol、さらに好ましくは4,000〜16,000g/molである。重量平均分子量が2,000g/mol未満の場合、耐ガソリン性に劣る場合がある。一方、重量平均分子量が20,000g/molを超えるとイソシアナート化合物(B−1)および主剤(A)の水酸基含有アクリル樹脂(A−1)との相溶性に劣り、塗膜が白濁する等の不具合が生じる場合がある。
【0040】
本発明の硬化剤(B)は、イソシアナート化合物(B−1)とアルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分を合わせた100質量部に対して、アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分は20〜80質量部、好ましくは、30〜70質量部、さらに好ましくは、40〜60質量部である。アルコキシシリル基含有共重合体(B−2)の不揮発分が20質量部未満では耐汚れ性に劣る。一方、80質量部を超えると塗膜の可撓性が乏しくなり、耐衝撃性、耐擦り傷性に劣る場合がある。
【0041】
本発明の硬化剤(B)は、有機溶剤に溶解して使用することが出来る。有機溶剤としては、イソシアナート基、アルコキシシリル基と反応しないものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリット等の脂肪族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、及びメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を単独または混合して用いることができ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0042】
本発明の二液型塗料組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)を、主剤(A)の水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の水酸基1当量に対して、硬化剤(B)のイソシアナート化合物(B−1)のイソシアナート基が0.5〜1.5当量、好ましくは0.8〜1.2当量の割合となるように二液混合装置で混合し、塗装する。イソシアナート化合物(B−1)のイソシアナート基が0.5当量未満では硬化性が不十分となり、耐ガソリン性が低下する。一方、イソシアナート化合物(B−1)のイソシアナート基が1.5当量を超えるとそれに見合った効果は期待できず、リコート密着性が低下する場合がある。
【0043】
二液混合装置は、主剤(A)、硬化剤(B)の二液を設定した容積で連続して混合出来るようにしたもので、二液型塗料組成物はスタティックミキサー等で均一に混合され、塗装機に供給される。
【0044】
本塗料の二液型塗料組成物の塗装法としては、特に制限されず従来公知の手段を適宜選択して実施できる。好ましい塗装方法として、静電塗装(ベル型、REA法など)、エアースプレー塗装などがあげられる。これらの塗装法では、主剤、硬化剤を混合した希釈塗料が、通常、約15〜35秒(フォードカップ#4/20℃)の粘度となるようにして塗装することが適している。本発明の二液型塗料組成物の塗装膜厚は、硬化塗膜として、20〜80μm、特に25〜50μmが好ましい。
【0045】
本発明の二液型塗料組成物の硬化条件としては、例えば、60〜160℃に20〜60分程度加熱することにより行われる。
【0046】
本発明が適応される被塗物としては、鉄、アルミニウム、銅もしくはこれらの合金を含む鋼板、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリアクリル、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の樹脂成形品および各種FRPなどのプラスチック材料などが挙げられる。なお、これら被塗基材に予め適宜なプライマー、ベースコート塗料を塗装することは任意である。
【0047】
本発明の二液型塗料組成物を用いた複層塗膜形成方法は、例えば、電着が施された鋼板上に予め中塗塗料を塗装し、加熱硬化した被塗物にベースコ−ト塗料を塗装し、ウェットオンウェットにて本発明の二液型塗料組成物を塗装し、同時に加熱硬化を行う複層塗膜形成方法とすることができる。
【0048】
また、例えば、電着が施された鋼板上に中塗塗料を塗装し、ウェットオンウェットにてベースコ−ト塗料を塗装し、さらに、ウェットオンウェットにて本発明の二液型塗料組成物を塗装し、同時に加熱硬化を行う複層塗膜形成方法とすることができる。
【0049】
また、例えば、電着が施された鋼板上に中塗塗料を塗装し、ウェットオンウェットにてベースコ−ト塗料を塗装し、さらに、ウェットオンウェットにて本発明のクリヤー塗料組成物とは異なるクリヤー塗料組成物を塗装し加熱硬化させた後、本発明の二液型塗料組成物を塗装、加熱硬化を行う複層塗膜形成方法とすることができる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、実施例及び比較例中、部とは質量部を意味し、%とは質量%を意味する。
【0051】
本発明の二液型塗料組成物により得られる塗膜の性能は次のようにして求めた。
【0052】
(1)外観性(塗膜の透明性)
塗膜を目視観察により、次の基準に従い評価した。
○:白濁が認められない。
×:白濁が認められる。
【0053】
(2)耐洗車傷性
試験板上に泥水(JIS Z 8901 試験用ダスト8種/水/中性洗剤=10/99/1重量比で混合したもの)をハケで塗布後、自動車用洗車機にて洗車ブラシを150rpmで10秒間回転させ、試験板を流水にて洗浄する。以上の操作を10回繰り返した後、試験板表面の擦り傷の程度を色彩色差計(商品名「CR−331」、ミノルタカメラ(株)製)により測定した。擦り傷の程度は、試験前後の明度差の絶対値(ΔL)を測定する事により評価した。数値が低い程、耐洗車傷性が良好である。
◎:ΔL≦3.0
○:3.0<ΔL≦5.0
△:5.0<ΔL≦10.0
×:10.0<ΔL≦15.0
××:15.0<ΔL
△以上の評価を耐洗車機傷性が良好な塗膜と判断した。
【0054】
(3)耐汚れ性
試験板上にカーボンブラック/JIS Z 試験用ダスト8種/水=1/1/98重量比で混合したものをスプレーし、60℃で10分間乾燥した。以上の操作を5回繰り返した後、水道の蛇口から2L/分流れる流水下、ネルで試験塗板の塗面に軽く3往復擦り、汚れを落とした。エアブローして水滴を除去した後、試験板表面の汚れの程度を色彩色差計(商品名「CR−331」、ミノルタカメラ(株)製)により測定した。汚れの程度は、試験前後の明度差の絶対値(ΔL)を測定する事により評価した。数値が低い程、耐汚れ性が良好である。
◎:ΔL≦1.0
○:1.0<ΔL≦3.0
△:3.0<ΔL≦6.0
×:6.0<ΔL≦9.0
××:9.0<ΔL
△以上の評価を耐泥汚れが良好な塗膜と判断した。
【0055】
(4)耐酸性
40%硫酸水溶液0.2mlを試験板にスポット状に乗せた後60℃で15分間加熱し、その後水洗いしてシミ跡の発生度合いを目視観察した。
○:塗膜にほとんど変化が見られない。
△:塗膜にわずかに水シミ跡が見られる。
×:塗膜に著しい水シミ跡が見られる。
【0056】
(5)耐ガソリン性
試験板を無鉛レギュラーガソリン(JIS K2202 2号記載)に20℃で24時間浸漬し、外観を目視で観察し、次に示す基準にしたがって評価した。
○:異常が認められない。
△:わずかに黄変、フクレなどの異常が認められた。
×:黄変、フクレなどの異常が認められた。
【0057】
<製造例A1>
<<水酸基含有アクリル樹脂ワニス A−1−1の製造>>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコにキシレンを27.0部、プロピレングリコールモノメトキシエーテルアセテートを9.0部仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し130℃を保った。次に、130℃の温度で、スチレン11.0部、メタアクリル酸0.8部、4−ヒドロキシブチルアクリレート16.9部、i−ブチルメタクリレート24.7部、n−ブチルメタクリレート1.5部のラジカル重合性モノマーと、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0部とを均一に混合し、3時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、130℃の温度を1時間保った後、反応温度を110℃に下げた。
【0058】
その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.1部を追加触媒として添加し、さらに110℃の温度を2時間保った後、キシレン7.9部を加えてシンニングして冷却し、水酸基含有アクリル樹脂ワニス A−1−1を得た。
【0059】
<製造例A2〜A13>
<<水酸基含有アクリル樹脂ワニス A−1−2〜13の製造>>
表1に記載した原料の仕込み量に変えた以外は、A−1−1と同様の製造方法に従って、水酸基含有アクリル樹脂ワニス A−1−2〜13を得た。
【0060】
【表1】
【0061】
<製造例B1〜B7>
<<アルコキシシリル基含有共重合体溶液 B−2−1〜7の製造>>
表2に記載した原料の仕込み量に変えた以外は、製造例A1と同様の製造方法に従って、アルコキシシリル基含有共重合体溶液 B−2−1〜7を得た。
【0062】
【表2】
【0063】
<実施例1〜23、比較例1〜7>
表3〜表5に記載した原料を順次混合して均一になるように撹拌し、主剤(A)、硬化剤(B)を組み合わせてなる、二液型塗料組成物を作成した。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
<<表の注記>>
1)NACURE4167:商品名、キングインダストリーズ(株)製、リン酸系化合物のアミンブロック体溶液(不揮発分25質量%)
2)チヌビン384−2:商品名、BASFジャパン(株)製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(不揮発分95質量%)
3)チヌビン292:商品名、BASFジャパン(株)製、光安定剤
4)BYK−300:商品名、ビックケミー(株)製、シリコン系表面調整剤(不揮発分52質量%)
5)ソルベッソ100:商品名、エクソンモービル(株)製、芳香族炭化水素系溶剤
6)スミジュールN3300:商品名、住化バイエルウレタン(株)製、HDIのイソシアヌレートタイプ樹脂(不揮発分100質量%、NCO含有率21.8質量%)
【0068】
<<試験片の作成及び塗膜性能の検討>>
厚さ0.8mm、長さ150mm、幅70mmの亜鉛メッキ鋼板にリン酸亜鉛化成処理を施し、次いでカチオン電着塗料カソガード500(商品名、BASFジャパン(株)製)を用いて乾燥膜厚25μmになるよう電着塗装を行い、170℃℃×30分焼き付け、更に中塗り塗料HS−H300ダークグレー(商品名、BASFジャパン(株)製)を乾燥膜厚30μmになるようにスプレー塗装し、140℃×20分焼き付けた。次に、ベースコート塗料として、ポリウレタン・ポリエステル・メラミン樹脂系の水系ベースコート塗料アクアBC−3ブラック(商品名、BASFジャパン(株)製)を乾燥膜厚15μmになるようにスプレー塗装し、80℃×5分乾燥させた。試験板を室温まで冷却した後、二液型クリヤーコート塗料CC−1〜19の主剤と硬化剤を均一に混合して乾燥膜厚30μmになるようにスプレー塗装し、室温で10分間放置した後、140℃×20分焼き付けて試験片を作成した。正し、耐汚れ性の試験片は中塗り塗料として白色のHS−H300ホワイトを用い、水系ベースコート塗料として白色のアクアBC−3ホワイトを用いた白色試験板にて試験を行った。
【0069】
塗膜性能試験結果を表6〜表8に示した。
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
本発明の実施例1〜23は、相溶性不良による白濁のような塗膜の透明性に問題がなく、優れた耐傷付き性、耐汚れ性、耐酸性、耐ガソリン性を示した。一方比較例1〜7は、全ての試験を満足させる事は出来なかった。