特許第6333664号(P6333664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333664
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】液化ガス製造設備
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20180521BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20180521BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F25J1/00 B
   F25B9/00 A
   F25B9/00 Y
   F25B7/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-163969(P2014-163969)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-38193(P2016-38193A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004411
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162008
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 直之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 茂
(72)【発明者】
【氏名】若松 克寿
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−147568(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/048845(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/103332(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0053599(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/057626(WO,A2)
【文献】 国際公開第2016/001952(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/153612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00
F25B 7/00
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ガスを液化して液化ガスを製造する液化ガス製造設備において、
配管の集合体を保持するように構成されると共に、配管内の流体に対して空冷を行う空冷熱交換器が配置され、上空から見たときに長方形状をなすパイプラック部と、
前記供給ガスを、圧縮された予冷用冷媒を膨張させて予備冷却する予冷熱交換部と、
予冷用冷媒を圧縮する第1の圧縮機と、
前記予冷熱交換部により予冷された供給ガスを、圧縮された主冷媒を膨張させて冷却して液化する主熱交換部と、
この主熱交換部にて熱交換された主冷媒を各々圧縮する第2の圧縮機及び第3の圧縮機と、
前記第2の圧縮機及び第3の圧縮機により圧縮された主冷媒を、圧縮された予冷用冷媒を膨張させて冷却する補助熱交換部と、
予冷用冷媒を圧縮する第4の圧縮機と、を備え、
前記パイプラック部の外側にて当該パイプラック部の一方の長辺に沿って、前記第1の圧縮機、予冷熱交換部、補助熱交換部及び第4の圧縮機がこの順番で配置され、
前記パイプラック部の外側にて当該パイプラック部の他方の長辺に沿って、前記第2の圧縮機、主熱交換部及び第3の圧縮機がこの順番で配置され、
前記予冷熱交換部にて熱交換された予冷用冷媒の配管及び前記補助熱交換部にて熱交換された予冷用冷媒の配管は互いに合流し、合流後の配管が分岐されて前記第1の圧縮機及び第4の圧縮機に接続され、
前記第1の圧縮機にて圧縮された予冷用冷媒の配管及び前記第4の圧縮機にて圧縮された予冷用冷媒の配管は互いに合流し、合流後の配管が分岐されて前記予冷熱交換部及び補助熱交換部に接続され、
前記予冷熱交換部にて冷却された供給ガスの配管は、前記パイプラック部を横断して前記主熱交換部に接続され、
前記第2の圧縮機及び第3の圧縮機にて圧縮された主冷媒の配管は、前記パイプラック部を横断して前記補助熱交換部に接続されていることを特徴とする液化ガス製造設備。
【請求項2】
前記第1の圧縮機は、複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の液化ガス製造設備。
【請求項3】
前記第2の圧縮機及び第3の圧縮機は、各々複数設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の液化ガス製造設備。
【請求項4】
前記第4の圧縮機は、複数設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液化ガス製造設備。
【請求項5】
前記第2の圧縮機にて圧縮された主冷媒の配管及び前記第3の圧縮機にて圧縮された主冷媒の配管は互いに合流し、合流された配管が前記補助熱交換部に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液化ガス製造設備。
【請求項6】
前記供給ガスは、前記パイプラック部の一方の短辺側から供給されて、他方の短辺側から送り出されるように配管が配置され、
前記予冷熱交換部にて予冷される前に供給ガスに対して処理を行う前処理部を、前記第2の圧縮機、主熱交換部及び第3の圧縮機の並びに対して、前記一方の短辺側に隣接してパイプラック部の外に設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の液化ガス製造設備。
【請求項7】
前記予冷熱交換部及び前記補助熱交換部のうちの少なくとも一方と前記主熱交換部とは、前記パイプラック部の短辺方向に沿って見たときに、少なくとも互いの一部が重なっていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液化ガス製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給ガスを液化して液化ガスを製造する設備に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスの製造工程は、天然ガスに対して酸性ガス除去及び水分除去などの前処理を行う工程、その後、予冷用冷媒により例えば−40℃付近まで予備冷却する工程、次いで天然ガスから重質ガスを除去した後、主冷媒により例えば−155℃から−158℃に冷却して液化する工程を備えている。予冷用冷媒としてはプロパンを主成分とする冷媒が用いられ、主冷媒としてはメタン、エタン、プロパン及び窒素を混合した混合冷媒が用いられる。
【0003】
これらの冷媒は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルにおいて循環利用される。冷凍サイクルにおいては、冷媒は気体の状態で圧縮機により圧縮され、次いで凝縮器により冷却されて液化され、液化した圧力の高い冷媒は、膨張弁や膨張タービンなどにより降圧されて低温化される。低温化された冷媒は天然ガスとの熱交換により気化して再び気体となる。予冷用冷媒は、圧縮機により圧縮された主冷媒を冷却することにも使用され、主冷媒は予冷用冷媒により冷却された後、天然ガスとの間で熱交換を行う。
【0004】
特許文献1には、このような液化ガス製造設備が記載されており、配管集合部をなすパイプラックの一方の側に、第1冷媒(予冷用冷媒)を用いた予冷熱交換器、第1冷媒を圧縮する第1冷媒圧縮機、第2冷媒(主冷媒)を用いた極低温熱交換器、第2冷媒を圧縮する第2冷媒圧縮機を配置している。
圧縮機の駆動源としては従来から例えば80MWもの大型の産業用のガスタービンが用いられている。一方、最近ではガスタービンとして性能及び効率がよい、航空機転用型の例えば25MW〜60MWの小型のガスタービンが開発されており、本発明者は小型のガスタービンを複数用いることにより設計の自由度が高くなると考えている。
しかしながら、小型のガスタービンを複数用いると、特許文献1に示されるレイアウトでは、配管の引き回しが複雑になり、また広いスペースが必要になって、液化ガス製造設備が大型化する。
【0005】
特許文献2には、天然ガスを液化するための冷凍サイクルにおいて複数のガスタービンにより夫々駆動される複数の圧縮機を用いた技術が記載されているが、本発明の課題を解決する技術については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−147568
【特許文献2】国際公開 WO2014/48845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、供給ガスを予備冷却するときの冷凍サイクル及び予備冷却された供給ガスを液化するときの冷凍サイクルに各々用いられる圧縮機として複数の圧縮機を用いながら、配管の引き回しの複雑化を抑え、液化ガス製造設備の設置スペースの増大を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液化ガス製造設備は、供給ガスを液化して液化ガスを製造する液化ガス製造設備において、
配管の集合体を保持するように構成されると共に、配管内の流体に対して空冷を行う空冷熱交換器が配置され、上空から見たときに長方形状をなすパイプラック部と、
前記供給ガスを、圧縮された予冷用冷媒を膨張させて予備冷却する予冷熱交換部と、
予冷用冷媒を圧縮する第1の圧縮機と、
前記予冷熱交換部により予冷された供給ガスを、圧縮された主冷媒を膨張させて冷却して液化する主熱交換部と、
この主熱交換部にて熱交換された主冷媒を各々圧縮する第2の圧縮機及び第3の圧縮機と、
前記第2の圧縮機及び第3の圧縮機により圧縮された主冷媒を、圧縮された予冷用冷媒を膨張させて冷却する補助熱交換部と、
予冷用冷媒を圧縮する第4の圧縮機と、を備え、
前記パイプラック部の外側にて当該パイプラック部の一方の長辺に沿って、前記第1の圧縮機、予冷熱交換部、補助熱交換部及び第4の圧縮機がこの順番で配置され、
前記パイプラック部の外側にて当該パイプラック部の他方の長辺に沿って、前記第2の圧縮機、主熱交換部及び第3の圧縮機がこの順番で配置され、
前記予冷熱交換部にて熱交換された予冷用冷媒の配管及び前記補助熱交換部にて熱交換された予冷用冷媒の配管は互いに合流し、合流後の配管が分岐されて前記第1の圧縮機及び第4の圧縮機に接続され、
前記第1の圧縮機にて圧縮された予冷用冷媒の配管及び前記第4の圧縮機にて圧縮された予冷用冷媒の配管は互いに合流し、合流後の配管が分岐されて前記予冷熱交換部及び補助熱交換部に接続され、
前記予冷熱交換部にて冷却された供給ガスの配管は、前記パイプラック部を横断して前記主熱交換部に接続され、
前記第2の圧縮機及び第3の圧縮機にて圧縮された主冷媒の配管は、前記パイプラック部を横断して前記補助熱交換部に接続されていることを特徴とする。
【0009】
前記液化ガス製造設備は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記第1の圧縮機は、複数設けられていること。前記第2の圧縮機及び第3の圧縮機は、各々複数設けられていること。前記第4の圧縮機は、複数設けられていること。
(b)前記第2の圧縮機にて圧縮された主冷媒の配管及び前記第3の圧縮機にて圧縮された主冷媒の配管は互いに合流し、合流された配管が前記補助熱交換部に接続されていること。
(c)前記供給ガスは、前記パイプラック部の一方の短辺側から供給されて、他方の短辺側から送り出されるように配管が配置され、前記予冷熱交換部にて予冷される前に供給ガスに対して処理を行う前処理部を、前記第2の圧縮機、主熱交換部及び第3の圧縮機の並びに対して、前記一方の短辺側に隣接してパイプラック部の外に設けたこと。
(d)前記予冷熱交換部及び前記補助熱交換部のうちの少なくとも一方と前記主熱交換部とは、前記パイプラック部の短辺方向に沿って見たときに、少なくとも互いの一部が重なっていること。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、配管の集合体を保持するパイプラック部の一方側において、供給ガスを予備冷却する予冷熱交換部及び主冷媒を冷却する補助熱交換部を設け、更にこれら熱交換部にて熱交換された予冷用冷媒を互いに分担して(並列で)圧縮する圧縮機を、これら熱交換部の両側に配置している。またパイプラック部の他方側において、予備冷却された供給ガスを液化する主熱交換部を設け、この主熱交換部にて熱交換された主冷媒を圧縮する圧縮機を複数台ずつ主熱交換部の両側に配置している。従って冷凍サイクルに用いられる圧縮機として複数の圧縮機を用いながら、配管の引き回しの複雑化を抑え、液化ガス製造設備の設置スペースの増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るLNG製造設備を上空側から見た概略平面図である。
図2】前記LNG製造設備に設けられている予冷熱交換部及び補助熱交換部の構成例を示すブロック図である。
図3】前記LNG製造設備に設けられている液化部及び圧縮機の構成例を示すブロック図である。
図4】LNG製造設備のパイプラックの構造を模式的に示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る液化ガス製造設備である、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)の製造設備の実施形態について説明する。
初めに、本LNG製造設備の概略構成について、図1の平面図を参照しながら説明する。
【0013】
天然ガス(以下、「NG」と記す)を処理する順序に沿って説明すると、LNG製造設備は、供給ガスであるNG中の酸性ガスを除去する酸性ガス除去部1と、NG中に含まれる水分を除去する水分除去部2と、酸性ガス及び水分を除去する前処理が行われたNGを予備冷却して、約−20℃〜−70℃の範囲の例えば−38℃〜−39℃の中間温度に冷却する予冷熱交換部3と、中間温度に冷却された気液混合ガスを不図示の重質分除去部に送って、炭素数2以上の重質分(エタン及びそれよりも重い成分)を除去した後、メタンを主成分とし、若干のエタン、プロパン、ブタンを含むNGを−155℃〜−158℃に冷却して液化し、液化ガスであるLNGを得る液化部5とを備える。
ここで図1中に示したプロセス配管10が原料のNGまたは製品LNGが流れる配管を示している。また、酸性ガス除去部1、水分除去部2は、本例に係るLNG製造設備の前処理部に相当している。
【0014】
予冷熱交換部3は、予冷用冷媒である例えばプロパン(図2中、「C3」と記してある)を用いて前処理後のNGを予冷する。この予冷用冷媒は、後段の液化部5にて用いられる主冷媒(図2図3中、「MR(Mixed Refrigerant)」と記してある)の冷却にも用いられている。以下、予冷用冷媒による主冷媒の冷却を「補助冷却」と呼ぶ。
図2は、既述の予冷熱交換部3と、主冷媒の冷却を行う補助熱交換部8と、これらNGの予冷、及び主冷媒の予備冷却に用いられた予冷用冷媒を圧縮する第1の圧縮機4、第4の圧縮機9と、を示している。
【0015】
予冷熱交換部3は、複数系統の熱交換器を含み、図2では、一系統の熱交換器30を代表して示している。各熱交換器30は直列に接続された例えば4個の熱交換要素31、32、33、34からなる。本明細書では、「熱交換器」と用語を区別するために、直列に接続されている各熱交換器を「熱交換要素」と呼ぶ。なお、熱交換要素31は熱交換器30の中に配置されなくてもよい。
【0016】
予冷用冷媒供給配管301より熱交換器30に供給された予冷用冷媒は、直列に接続された熱交換要素31、32、33、34をこの順に流れ、同じく熱交換要素31、32、33、34のチューブ内をこの順に通流するNGとの熱交換によりNGを冷却する。各熱交換要素31、32、33、34の入口側には膨張弁311、321、331、341が設けられている。これら膨張弁311、321、331、341にて予冷用冷媒を断熱膨張させることにより、予冷用冷媒の温度を低下させて、各熱交換要素31、32、33出口のNGの温度を次第に低下させ、最終段の熱交換要素34の出口(熱交換器30の出口)にて例えば−37℃〜−40℃、好ましくは−38℃〜−39℃に冷却された気液混合状態のNGを得る。
【0017】
また、熱交換要素31、32、33からは、NGを冷却した予冷用冷媒の一部が抜き出される。図2には、各熱交換要素31、32、33出口の圧力レベルに応じて、熱交換要素31から抜き出される予冷用冷媒の配管に「HP(High Pressure)」、熱交換要素32から抜き出される予冷用冷媒の配管に「MP(Middle Pressure)」、熱交換要素33から抜き出される予冷用冷媒の配管に「LP(Low Pressure)」の符号を付してある。また、最終段の熱交換要素34の出口の予冷用冷媒の配管には「LLP(Low Low Pressure)」の符号を付してある。
【0018】
次に、主冷媒の補助冷却を行う補助熱交換部8の構成について説明する。補助熱交換部8は、冷却される流体が主冷媒である他は、既述の予冷熱交換部3とほぼ同様の構成となっている。
即ち、予冷用冷媒供給配管801より熱交換器80に供給された予冷用冷媒は、直列に接続された熱交換要素81、82、83、84をこの順に流れ、同じく熱交換要素81、82、83、84のチューブ内をこの順に通流する主冷媒との熱交換により主冷媒を冷却する。各熱交換要素81、82、83、84の入口側に設けられた膨張弁811、821、831、841にて予冷用冷媒を断熱膨張させることにより、予冷用冷媒の温度を低下させ、各熱交換要素81、82、83出口の主冷媒の温度を次第に低下させて、最終段の熱交換要素84の出口(熱交換器80の出口)にて例えば−37℃〜−40℃、好ましくは−38℃〜−39℃に冷却された主冷媒を得る。
【0019】
また熱交換要素81、82、83からは、主冷媒を冷却した予冷用冷媒の一部が抜き出される点についても予冷熱交換部3と同様である。そして図2には、これら熱交換要素81、82、83、84から抜き出された予冷用冷媒、及び最終段の熱交換要素84の出口の予冷用冷媒の配管に、各予冷用冷媒の圧力レベルに応じて、予冷熱交換部3側の熱交換要素31、32、33、34側の配管に付したものと共通の符号を付してある。
【0020】
予冷熱交換部3の熱交換要素31、32、33、34の抜出、出口配管を流れる予冷用冷媒と、補助熱交換部8の熱交換要素81、82、83、84の抜出、出口配管を流れる予冷用冷媒とは、同じ圧力レベル同士の配管が互いに合流して、共通の配管内を下流側へ向けて流れる。
【0021】
ここで上述の予冷熱交換部3、補助熱交換部8には、NGまたは主冷媒の冷却に用いられた予冷用冷媒を圧縮する第1の圧縮機4及び第4の圧縮機9が併設されている。本例において第1の圧縮機4、第4の圧縮機9はガスタービン圧縮機により構成され、不図示のガスタービンにて燃料ガスを燃焼させて得た駆動力により第1の圧縮機4、第4の圧縮機9を回転させて予冷用冷媒を圧縮する。図示の便宜上、図2には各々1台の第1の圧縮機4、第4の圧縮機9が記載されているが、各予冷熱交換部3、補助熱交換部8に設けられた熱交換器30、80の系統数などに応じて、第1の圧縮機4、第4の圧縮機9は複数台ずつ設けられてもよい。
【0022】
図2に示すように、予冷熱交換部3及び補助熱交換部8側から合流した各圧力レベルの予冷用冷媒は、第1の圧縮機4、第4の圧縮機9に向けて分岐し、各圧力レベルに対応する段に給気される。そして第1の圧縮機4、第4の圧縮機9内で圧縮され、所定の圧力まで昇圧された予冷用冷媒は、気体の状態で各々第1の圧縮機4、第4の圧縮機9から吐出され(図2中に「C3(HHP)気体」と記してある)、圧縮機出口配管501、901を介して、気体の状態で後述のパイプラック部100に設けられたエアフィンクーラ(AFC101)へ向かって流れていく。
【0023】
その後、AFC101によって冷却される予冷用冷媒冷却配管103を流れた予冷用冷媒は、液体となって予冷用冷媒合流配管104に合流する(図2中に「C3(HHP)液体」と記してある)。さらに予冷用冷媒は、この予冷用冷媒合流配管104を通った後、予冷用冷媒供給配管301、801に分岐され、予冷熱交換部3、及び補助熱交換部8に供給される。
【0024】
次に図3を用いて液化部5、及びこの液化部5にてNGの液化に用いられた主冷媒を圧縮する第2の圧縮機6、第3の圧縮機7の構成について説明する。
液化部5は、主冷媒である、例えば窒素、メタン、エタン、プロパンの混合冷媒(MR)を用いて予冷後のNGを液化する。
【0025】
液化部5は、主熱交換部である熱交換器51と、液化されたLNGをフラッシュさせて、不純物の除去や圧力調整を行うLNG精製設備52と、液化されたLNGからガスを分離して再液化する再液化部とを備えている。なお図3では、図示の便宜上、熱交換器51、LNG精製設備52を示し、再液化部は図示を省略してある。また、これら熱交換器51やLNG精製設備52などについても複数系統設置してもよく、本例では一系統の熱交換器51、LNG精製設備52を代表して示している。
【0026】
熱交換器51は、予冷熱交換部3側から供給された、予冷後のNGがチューブ内を通流する熱交換器51に、不図示の膨張弁または膨張タービンを介して断熱膨張させた主冷媒を複数段に分けて導入し、各段にて順次、主冷媒の導入温度を自己冷却により低下させていく。この結果、チューブ内を通流するNGが段階的に冷却されて、最終的に−155℃〜−158℃のLNGが得られる。このLNGは、LNG精製設備52にて精製、圧力調整された後、−160℃のLNG製品としてLNG貯蔵設備や出荷設備へと送られる。
さらに熱交換器51からは、LNGの液化に用いられた主冷媒が気体の状態で流出する(図3中に「MR(気体)」と記してある)。
【0027】
この液化部5には、LNGを液化した後の主冷媒を圧縮する第2の圧縮機6及び第3の圧縮機7が併設されている。本例において第2の圧縮機6、第3の圧縮機7はガスタービン圧縮機により構成され、不図示のガスタービンにて燃料ガスを燃焼させて得た駆動力により第2の圧縮機6、第3の圧縮機7を回転させて主冷媒を圧縮する。また第2の圧縮機6については、例えば低圧圧縮、高圧圧縮を行う2台の圧縮機61、62は、AFC101により冷却される中間冷却配管105aを介して直列に連結して構成されている。第3の圧縮機7についても同様に、2台の圧縮機71、72は、AFC101により冷却される中間冷却配管105bを介して直列に連結した構成となっている。図示の便宜上、図3には第2の圧縮機6、第3の圧縮機7を各々1系統だけ記載しているが、液化部5に設けられた熱交換器51の系統数などに応じて、第2の圧縮機6、第3の圧縮機7は複数系統ずつ設けられている。
【0028】
熱交換器51から流出した主冷媒は、主冷媒分岐配管53を介して第2の圧縮機6、第3の圧縮機7へ向けて分岐し、低圧圧縮を行う圧縮機61、71に給気される。そして圧縮機61、71内で圧縮され、所定の圧力まで昇圧された主冷媒は、気体の状態で圧縮機61、71から吐出され、パイプラック部100側の中間冷却配管105a、105bを通ってAFC101により冷却される。
【0029】
冷却された主冷媒は、第2の圧縮機6、第3の圧縮機7にて、高圧圧縮を行う圧縮機62、72に給気され、所定の圧力まで昇圧される。そして圧縮機62、72から吐出された主冷媒は、気体の状態でパイプラック部100側の主冷媒冷却配管106を通ってAFC101で冷却された後、合流して、気体の状態で既述の補助熱交換部8へと供給される。
【0030】
図4は、本例のLNG製造設備を、図1のA−A’方向から矢視した側面図である。パイプラック部100は、LNG製造設備内の各機器に接続された配管を支持する架構が複数階層に積層して設けられ(図4には2階層に積層された例を示している)、さらにこれら配管を支持する階層の上部には、AFC(Air Fin Cooler:空冷熱交換器)101が配置されている。
【0031】
AFC101は、冷却対象の流体が通流する配管の集合体であるチューブバンドル102の上面側または下面側に配置されている(図4には上面側配置の例を示してある)。AFC101は、フィンを回転させてチューブバンドル102内の各配管の周囲に大気の流れを形成することにより、配管内の流体の冷却を行う。
【0032】
チューブバンドル102を構成する配管には、既述の予冷用冷媒が通流する予冷用冷媒冷却配管103や、主冷媒が流れる中間冷却配管105a、105b、主冷媒冷却配管106が含まれる。そして予冷用冷媒はAFC101によって冷却された後、予冷熱交換部3、補助熱交換部8に供給され、主冷媒は、AFC101によって冷却された後、補助熱交換部8に供給される。
【0033】
図1に示すように、上空から見たときパイプラック部100は、図面に向かって左右方向に細長い長方形形状となっており、このパイプラック部100の長辺方向に沿って複数台のAFC101が並べて配置されている。
【0034】
以上に説明した構成を備えるLNG製造設備において、図1に示すように、既述の第1の圧縮機4、予冷熱交換部3、補助熱交換部8及び第4の圧縮機9は、パイプラック部100の外側にて当該パイプラック部100の一方の長辺に沿って、この順番で配置されている。例えば図1においては、右から順に第1の圧縮機4→予冷熱交換部3→補助熱交換部8→第4の圧縮機9が配置されている。
【0035】
一方、第2の圧縮機6、液化部5(主熱交換部である熱交換器51)及び第3の圧縮機7は、パイプラック部100の外側にて、当該パイプラック部100の他方の長辺に沿って、この順番で配置されている。例えば図1においては、右から順に第2の圧縮機6→液化部5→第3の圧縮機7が配置されている。
【0036】
さらに、予冷熱交換部3及び補助熱交換部8のうちの少なくとも一方と、液化部5(熱交換器51)とは、パイプラック部100の短辺方向に沿って見たときに、少なくとも互いの一部が重なっている。言い替えると、予冷熱交換部3及び補助熱交換部8のうちの少なくとも一方と、液化部5とは、パイプラック部100を挟んで対向して配置されている。
【0037】
そして、予冷熱交換部3にて冷却されたNGのプロセス配管10は、パイプラック部100を横断して前記液化部5の熱交換器51に接続され(図1中、「10a」の符号を付してある)、第2の圧縮機6及び第3の圧縮機7にて圧縮された主冷媒の配管(図1図3の主冷媒冷却配管106)は、パイプラック部100を横断して補助熱交換部8に接続されている。
【0038】
そして、NGは、パイプラック部100の一方の短辺側(図1に向かって右手側)から供給されて、他方の短辺側(同じく向かって左手側)から送り出されるように配管が配置されている。このとき前処理部である酸性ガス除去部1、水分除去部2は、第2の圧縮機6、液化部5(熱交換器51)及び第3の圧縮機7の並びに対して、NGの供給位置である前記一方の短辺側に隣接してパイプラック部の外に設けられている。
なお、既述の重質分除去部は、例えば液化部5に配置される。
【0039】
本実施の形態に係るLNG製造設備によれば以下の効果がある。配管の集合体を保持するパイプラック部100の一方側において、NGを予備冷却する予冷熱交換部3及び主冷媒を冷却する補助熱交換部8を設け、更にこれら熱交換部3、8にて熱交換された予冷用冷媒を互いに分担して(並列で)圧縮する第1の圧縮機4、第4の圧縮機9を、これら熱交換部3、8の両側に配置している。またパイプラック部100の他方側において、予備冷却された供給ガスを液化する主熱交換部である熱交換器51を設け、この熱交換器51にて熱交換された主冷媒を圧縮する第2の圧縮機6、第3の圧縮機7を複数台ずつ熱交換器51の両側に配置している。従って冷凍サイクルに用いられる圧縮機4、9、6、7として複数の圧縮機4、9、6、7を用いながら、配管の引き回しの複雑化を抑え、液化ガス製造設備の設置スペースの増大を抑えることができる。
【0040】
また、熱交換器51から第2の圧縮機6、第3の圧縮機7へ主冷媒を送る主冷媒分岐配管53は、70インチ近くにもなる大径配管である。そこで第2の圧縮機6、第3の圧縮機7を熱交換器51の両側に配置することにより、大口径配管を用いる距離を短縮できる。一方で、パイプラック部100の長辺の一方に補助熱交換部8を配置し、他方に第2の圧縮機6、第3の圧縮機7を配置することにより、これらの圧縮機6、7を出た高圧の流体が流れる、比較的、小径の主冷媒冷却配管106がパイプラック部100を横断する。この結果、大径配管を横断させる場合に比べてパイプラック部100の高さの増大を抑えることができる。
【0041】
以上に説明したLNG製造設備において、第1の圧縮機4、第4の圧縮機9、第2の圧縮機6、第3の圧縮機7の駆動力は、ガスタービンにより得る場合に限定されず、モーターであってもよい。また、圧縮機の種類もターボ型圧縮機に限らず、往復動型のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 酸性ガス除去部
100 パイプラック部
101 AFC
102 チューブバンドル
104 予冷用冷媒合流配管
3 予冷熱交換部
4 第1の圧縮機
5 液化部
51 熱交換器
6 第2の圧縮機
7 第3の圧縮機
8 補助熱交換部
9 第4の圧縮機
図1
図2
図3
図4