(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄塔脚部の基礎のコンクリートを斫り、露出させた主柱材の切断予定箇所に予め用意していた変位調整金具を取り付けて、前記変位調整金具により切断予定の主柱材を支持してから前記主柱材を切断し、不同変位を緩和し、前記変位調整金具ごと前記露出させた主柱材をコンクリート中に埋設して前記脚部の基礎を再建することを特徴とする鉄塔脚部の補強方法。
前記変位調整金具は、一方の前記平面プレートの周囲に、3個以上の変位調整ボルトを、隣接する変位調整ボルトと前記平面プレートの中心とのなす角度が180度より小さくなるように配し、他方の平面プレートの周囲に、前記変位調整ボルトに垂直となる変位調整ボルト受プレートを配したことを特徴とする請求項2又は3に記載の変位調整金具。
前記締結ボルトを挿通するためのボルト穴と前記主柱材に取り付けるための開口部を有する平板状のゲージプレートを前記平面プレート間に挟み込んで前記主柱材に取り付けて、前記変位調整ボルトで変位調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の変位調整金具。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤帯等では、地下水の過剰揚水や周囲の土木工事等の影響を受けやすく、その結果地盤沈下が発生する場合がある。このような地域に構築された送電用等の鉄塔のうち、比較的基礎への負荷荷重が大きい基幹系送電線用の鉄塔では、杭基礎や、より剛性の高いマット基礎が用いられているため、地盤沈下の影響を受けにくい。しかしながら、小規模な二次系送電線用の鉄塔で多く採用されている、一般に標準基礎といわれる逆T字型の独立基礎の場合には、脚間の不等沈下が発生する可能性があるため、地盤沈下の影響を受けやすい。
【0003】
以前より、送電用等の鉄塔においては、基礎の不等沈下が発生して、その不等沈下量が許容値を超えた場合には、何らかの補強工事もしくは鉄塔の建て替えが行われている。
【0004】
従来の補強工法としては、例えば、特許文献1には、不等沈下により不同変位を生じた鉄塔の傾斜を修正する主柱材のせり上げ、せり下げ工法が記載されている。これは
図13に示す説明図のように、送電用鉄塔の主柱材2の切断すべき位置の上下部分にそれぞれバンド35を取付け、これらバンド35の両横側に、ジャッキ取付材37を介して主柱材2と平行に油圧ジャッキ33を装着し、次いで主柱材2の所定位置を切断し、当該油圧ジャッキ33により、所定寸法分をせり上げ、またはせり下げた後、L型鋼の継材38で切断した主柱材2の上下を再結合する工法である。
【0005】
また、特許文献2には、不等沈下により発生した支柱材の応力を緩和開放する送電鉄塔の補強方法が記載されている。これは
図14に示す説明図のように、主柱材(支柱材)2を、ジャッキを介した支持鋼材で仮設支持し(図示せず)、鉄塔の基礎1の上部を斫り、露出させた主柱材2を切断して主柱材2に生じた応力を開放し、上下の切断した主柱材2の端部に支圧板39を取り付け、周囲に鉄筋40を配設した上でコンクリートを打設して、先の応力が開放された状態の位置で主柱材2を再建した基礎1中に固定する送電用鉄塔の補強方法である。さらに、特許文献2には、特許文献1の方法は、切断後の主柱材2を不等沈下量の分だけせり上げもしくはせり下げて、水平方向のずれを強制的に同軸上に位置矯正して再結合するもので、不等沈下による主柱材2の応力の開放は不完全であるが、本補強方法では応力の開放がなされているとの記載がある。
【0006】
また、特許文献3には、鉄塔の基礎の上部を斫り、つなぎ材を介して継脚部の主柱材を鉄塔の基礎に接合し、コンクリートを打設し、コンクリート養生を行って継脚部の基礎を強化後、鉄塔を吊り上げて主柱材のジョイント部を取外し、所定高さまで鉄塔をせり上げて、継脚部の主柱材と鉄塔の主柱材を締結する、鉄塔のかさ上げ工法が記載されている。ただし、不等沈下への言及はなされていない。
【0007】
また、特許文献4には、基礎の下部に垂直に固定した下脚材と鉄塔の上脚材とを連結材で連結固定して鉄塔用基礎材(基礎部分の主柱材)を構成し、この鉄塔基礎材を連結固定部も含めてコンクリートで埋設して構築する鉄塔用基礎構造が記載されている。又、下脚材側連結材と上脚材側連結材はボルトナットで連結され、左右又は前後に移動させる調整ボルトと上脚部材側と下脚部材側に設けられた長穴により、上脚材を下脚材に対して上下方向、水平方向及び傾斜方向にそれぞれ調整可能とした調整機構が記載されている。
【0008】
また、特許文献5には、鉄塔の取替え対象となる主柱材の上部と下部に、分割されたバンドで固定する方式の支え材取付台とジャッキ受台を設置し、間にジャッキを介して支え材を配置して、取替えの際の鉄塔の負荷を負担させ、取替えの対象となる主柱材を抜き取り、新たな主柱材を取り付ける鉄塔の主柱材取替え工法が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、鉄塔基礎の上部を斫り、内部の主柱材を露出させ、露出した主柱材を切断し、主柱材の切断端部に予め用意した変位調整金具を接続して不同変位を解消した状態で前記切断した主柱材を強固に再接続し、コンクリートを打設して先の露出した主柱材を変位調整金具と共に鉄塔基礎中に埋設する鉄塔脚部の補強方法である。
【0028】
第1の発明は、仮設支持して主柱材を切断した後、切断箇所に掛かる鉄塔の負荷を接合した変位調整金具に肩代わりさせる方法である。
第2の発明は、切断予定箇所に掛かる鉄塔の負荷を接合した変位調整金具に肩代わりさせてから、主柱材を切断する方法である。
【0029】
図1に第1の発明の鉄塔脚部の補強方法の工程の例を示す。
図1に示すように、鉄塔の対象とする1脚を選択し、工事に必要な分だけ地面5から基礎1を掘り出す。次に掘り出した基礎1のコンクリートを斫り、主柱材2を露出させる。その後、主柱材2を切断するために、主柱材の切断予定箇所より上部を仮設支持して、鉄塔の負荷を肩代わりさせる。なお、仮設支持を行う順番は施工の都合によって変更が可能である。最初に鉄塔の仮設支持を行っておけば、基礎1の掘削、コンクリートの斫り等の最中に対象となる脚部の強度が低下する場合にも対応できる。
【0030】
次に、仮設支持した状態で、露出させた主柱材2を切断し、上下の主柱材2の切断端部に変位調整金具10を取り付ける。また、取り付けた上下の変位調整金具10に締結ボルト18とナットをセットする。
【0031】
その後、仮設支持30を調整して、切断後の上下の主柱材2間の変位を調整し、不同変位を緩和、解消させる。この不同変位を緩和させた状態で、変位調整金具10をセットした締結ボルト18とナットで締結し、切断後の上下の主柱材2を強固に接続する。
【0032】
その後、先の露出させた主柱材2を、変位調整金具10ごと、コンクリートに埋設して基礎1を再建し、再建した基礎1を地面5に埋め戻す。コンクリートの養生完了後に、仮設支持30を完全に解除して鉄塔の不同変位の解消方法の施工が完了する。
【0033】
図2に第2の発明の鉄塔脚部の補強方法の工程の例を示す。鉄塔を仮設支持後、
図2に示すように、鉄塔の対象とする1脚を選択し、工事に必要な分だけ地面5から基礎1を掘り出す。次に掘り出した基礎1のコンクリートを斫り、主柱材2を露出させる。ここまでは第1の発明とほぼ同様である。
【0034】
その後、主柱材2を切断するために、主柱材2の切断予定箇所の上下に変位調整金具10を取り付け、上下の変位調整金具10を締結ボルト18とナットで締結して、変位調整金具10に切断予定箇所の主柱材2が受ける鉄塔の負荷を肩代わりさせる。
【0035】
次に、変位調整金具10に、鉄塔の負荷を肩代わりさせた状態で、露出させた主柱材2を切断する。
【0036】
次に変位調整金具10間の相対的な位置を、締結ボルト18とナットおよび変位調整金具10に設けられた変位調整ボルト16により、主柱材の軸方向及び軸に垂直な方向に変位させて、不同変位を緩和、解消する。不同変位を緩和した状態で、変位調整金具10間を締結ボルト18とナットで締結し、切断後の上下の主柱材2を強固に接続する。
【0037】
その後、第1の発明と同様に、先の露出させた主柱材2を、変位調整金具10ごと、コンクリートに埋設して基礎1を再建し、再建した基礎1を地面5に埋め戻す。コンクリートの養生完了後に、仮設支持等を解除して鉄塔の不同変位の解消方法の施工が完了する。
【0038】
なお、第2の発明の場合は、鉄塔の仮設支持は必須ではないので、仮設支持の有無、取り付け取り外しの手順等は施工の都合によって変更できるが、施工時の安全性を高めることができるので、少なくとも支線支持のような簡易な仮設支持を行うことが望ましい。特に最初に鉄塔の仮設支持を行っておけば、基礎1の掘削、コンクリートの斫り等により対象となる脚部の強度の低下が懸念される場合にも対応できる。
【0039】
以下、上記の各工程を詳細に説明する。
【0040】
先ず、不等沈下もしくは不等隆起が疑われる鉄塔等を対象として、鉄塔基礎の部分を調査測量することにより、鉄塔基礎の不等沈下もしくは不等隆起と鉄塔等の下脚部の不同変位の状況を把握する。この結果、不同変位を解消する必要があると認められる鉄塔等に対し、通常は相対的に不同変位の大きい脚部を対象として本発明の鉄塔等の不同変位を解消するための鉄塔脚部の補強方法を適用する。
【0041】
鉄塔の仮設支持の一例を
図3、
図4に示す。これは特許文献5の技術を応用したもので、対象となるコンクリート基礎1の下部と主柱材2の切断予定箇所より上部とに夫々ジャッキ受台31と支え材取付台32を設け、このジャッキ受台31と支え材取付台32間にジャッキ33を介して支え材34を配置して仮設支持を行う。支え材34は主柱材2の周囲に3本以上をほぼ均等に配置し、途中に複数の支え材34用の連結フランジ36を設けて連結構成にすると鉄塔の負荷を安定して支えることができる。
【0042】
この例では、下部はコンクリート基礎1にバンド35でジャッキ受台31を固定し、上部は主柱材2の腹材3接続用のガセットプレート4の下にバンド35で支え材取付台32を固定している。
【0043】
本発明では、主柱材2の切断箇所は、鉄塔基礎1のコンクリート中に埋設されていた箇所を対象とする。従って、鉄塔基礎1を土中より掘り出し、基礎1のコンクリートを斫り、コンクリート中に埋設されていた主柱材2を露出させ、露出した箇所を切断する。通常、鉄塔の場合は主柱材2の鉄塔基礎1のすぐ上から、腹材3が接続されてトラス構造を形成しており、このトラス構造を構成する主柱材2を切断して変位を調整すると、他の腹材3についても調整が必要となる。しかしながら、本発明のように、埋設されている主柱材2の部分で変位を調整する場合は他の腹材3への影響が少ない。さらに、再度コンクリートで埋設してしまえば、切断箇所及び変位調整箇所が外部には見えないので、不同変位解消後の鉄塔の外観が非常に良好である。
【0044】
主柱材2の切断前に、変位調整金具に鉄塔負荷を肩代わりさせない場合は(第1の発明)、変位調整金具への制約は少ない。
切断前に鉄塔負荷を肩代わりさせる場合は(第2の発明)、切断前に、主柱材に取り付ける必要があり、しかも変位調整金具同士を強固に締結する必要があるので、そのための工夫が必要である。第2の発明に使用する場合の変位調整金具は、分割タイプの平面プレートもしくは主柱材の断面形状に応じた取付用の穴を持つ平面プレートが必要である。
【0045】
(第1の実施形態)
最初に、第1の発明に適用する変位調整金具の一例を
図5に示す。ここで、
図5の[A]は上側の変位調整金具であり、
図5の[C]はその側面図、
図5の[B]は下側の変位調整金具であり、
図5の[D]はその側面図である。これは、主柱材を切断後に取り付けるための変位調整金具である。また、
図5に示した変位調整金具を用いて、主柱材の切断箇所を再接続した状態を
図6、
図7に示す。ここで、
図6の「A」は切断された主柱材の上下に変位調整金具を取り付け、変位調整金具同士を締結した状態を示す側面図であり、
図6の[B]は
図6の[A]のA−A断面図に相当し、これらの変位調整金具を上方から見た図であり、
図7は斜視図である。
図6の[B]では締結ボルト18、ナットA19、ナットB20、ナットC21を表示していない。また、
図7は、接合と変位調整の状態を説明するために一部簡略化し、寸法比率もデフォルメしている。
【0046】
この例では送電用山形鋼鉄塔に適用する変位調整金具を示しているので、変位調整金具10は3個の長孔14を設けた平面プレート11を用い、主柱材2に取り付けるための取付部材である山形鋼より加工した立面プレート12と補強用のリブ13がこの平面プレート11に垂直に溶接されている。また、この立面プレート12には主柱材2に取り付けるためのボルト穴6が設けられている。
【0047】
仮設支持に切断予定箇所に掛かる鉄塔の負荷を肩代わりさせた状態で、露出させた主柱材2の所定の箇所を切断する。また、変位調整金具10を取り付けるためのボルト穴6を主柱材2に加工する。この際には、変位調整金具10の挿入代を見込んで切断加工を行う。
【0048】
次に、この変位調整金具10を主柱材2の切断端部に夫々取付用ボルトナットで取り付ける。
【0049】
この変位調整金具10は、3個以上の長孔14を有する平面プレート11と取付部材である立面プレート12からなり、主柱材2の切断端部夫々に取付ける際には、上下の主柱材2に取り付けた変位調整金具10の平面プレート11同士を対向させて、各長孔14の交差した箇所に締結ボルト18を挿通してボルトナットで締結する構造である。このように両平面プレート11に長孔14がほぼ直交して交差するように設けられているので、この長孔14同士が重なる範囲内であれば、不同変位を解消する際に切断された主柱材2間に軸ずれが生じても締結ボルト18を挿通してボルトナットで締結することが可能である。
【0050】
さらに、上下の変位調整金具10の平面プレート11間の間隔が不同変位を解消する際等に変動しても締結ボルト18とナットA19、ナットB20、ナットC21で締結することで主柱材2の切断箇所を強固に接続することができる。
【0051】
このようにして、仮設支持30を調整して不同変位を緩和、解消した状態で、切断した主柱材2間を変位調整金具10で強固に再接続する。なお、
図5の上側と下側の変位調整金具10は1セットとして組み合わせて用いるもので、この1セットの変位調整金具を主柱材へ取り付ける際には、上側と下側を入れ替えても使用可能である。ここでの上側、下側の表現は単に説明の便宜上のものである。
【0052】
また、この変位調整金具10を主柱材2の切断端部に取付けた状態で、主柱材2の軸方向の変位は、締結ボルト18とナットA19で一方の平面プレート11に締結ボルト18を固定し、ナットB20とナットC21を調節することにより、相対的に他方の平面プレート11を移動させて対向する平面プレート11間の距離を調節することができる。
【0053】
さらにこの変位調整金具では、一方の変位調整金具10には、変位調整用台座29を介して3個の変位調整ボルト16がそれぞれ回転自在に取り付けられ、もう一方の変位調整金具10にはこの変位調整ボルト16を受ける3個の変位調整ボルト受プレート17が取り付けられている。これによって、主柱材2の軸方向に垂直な平面内の変位は、3つの変位調整ボルト16を回転することにより、併進方向に移動させて軸ズレを調節することができる。
【0054】
以上で変位の調節が完了したら、ナットA19、ナットB20、ナットC21を締め付けて上下の平面プレート11の相対位置を固定し、切断した主柱材2間を強固に再接続する。また、変位調整ボルト16も均等に締め付けて、その位置に平面プレート11を固定するのが良い。このように本発明の変位調整金具10を用いることで、不同変位を緩和して、切断した主柱材をフランジ接合により、高強度に固定することができる。また、変位調整ボルト16を夫々締めることによっても、主柱材2の切断箇所が動かないように固定することができる。
【0055】
図5に示すように、変位調整金具10の変位調整ボルト16は、平面プレート11の中心に対して3個以上を周囲に均等に配置することが望ましい。この場合、少なくとも隣り合う変位調整ボルト16の平面プレート11の中心となす角度が180度以下となるようにする必要がある。180度以下としないと、変位調整ボルト16と変位調整ボルト受プレート17により上下の平面プレート11を相対的に併進移動させることができない方向が生じると共に、相対的に動くのを規制できない方向が生じる。
【0056】
また、他方の変位調整ボルト受プレート17は夫々、対応する変位調整ボルト16と垂直になるように取り付けられていることが望ましい。垂直になっていない場合は、上下の平面プレート11が相対的に動くのを規制できない可能性がある。
【0057】
不同変位を緩和、解消するために行う、切断した主柱材2間の位置調整を仮設支持の調整等で行う場合は、これらの変位調整ボルト16と変位調整ボルト受けプレート17は、必須ではない。ただし、この変位調整金具10は鉄塔の荷重を担うものであり、相当の強度を確保するために、重量物とならざるを得ず、上下の平面プレート11間の位置調整も容易な作業ではない。従って、これらの変位調整ボルト16と変位調整ボルト受けプレート17のような、軸方向へ垂直な方向への変位調整手段を備えていることが望ましい。
【0058】
また、変位調整用台座29の強度等を含め、変位調整金具10への変位調整ボルト16の取り付け強度を充分なものとしておけば、主柱材2に変位調整金具10を取り付けた後には、仮設支持に依存せずに、これらの変位調整ボルト16により軸方向に垂直な方向への変位調整を行うことも可能である。
【0059】
もし、他の形鋼の鉄塔に適用する場合は、その主柱材2の形状に適した変位調整金具10の取付部材と取付方法を採用すれば良い。例えば鋼管鉄塔に適用する場合には、施工箇所の主柱材2である鋼管側に複数のリブを溶接し、変位調整金具10側ではそのリブに接続するための取付部材として山形鋼のような立面プレート12等を平面プレートに複数溶接しておき、主柱材2に溶接したリブと平面プレート11に溶接した立面プレート12とを用いて、例えば、そのリブと立面プレートに取付用のボルト穴を設けて、取付用のボルトナットを用いれば、主柱材2に変位調整金具10を取り付けることができる。現場で主柱材2の切断箇所に平面プレート11を溶接して取り付けることも可能ではあるが、主柱材2の切断箇所をフリーにした状態で、鉄塔荷重を仮設支持のみで支える時間は極力短縮することが望ましいので、現場での平面プレート11の溶接は避け、切断前に主柱材2に取り付けるための加工(取付用のボルト穴加工や取付用リブの溶接等)を行い、変位調整金具10にも主柱材へ取り付けるための取付部材として立面プレート12等が予め備えられているものを用い、取付用ボルトナットで取り付ける方が望ましい。
【0060】
不同変位を緩和、解消した後、
図12に示すように、露出させた主柱材2を変位調整金具10ごとコンクリートで埋設し、破線で示した基礎1を再建する。基礎1の再建の際は、主柱材2と変位調整金具10の周囲に、下部基礎の鉄筋と合わせて、その基礎相応の鉄筋を組み上げ、コンクリートで埋設する。コンクリートの養生が充分になされたら、仮設支持30を解除する。また、再建した基礎1の必要分を土砂等により埋め戻しを行う。
【0061】
なお、今後も不等沈下等が発生する見込みが高い場合には、基礎1の不等沈下を防止するために、基礎1の周囲に杭打ちを行ってその杭と基礎1を接続するとか、鉄塔の4脚の基礎1を接続してマット基礎を構築する等の基礎強化対策を行えば良い。このような対策を行う場合にも、本発明の変位調整金具10を用いて、本発明の不同変位を解消する方法を適用することができる。
【0062】
また、コンクリート中に埋設された場合、支柱材の切断箇所上部と下部間での荷重の伝達が上手くいかずに、変位調整金具10が支圧板のような働きをすると、その箇所からコンクリートにひび割れが発生する可能性がある。ひび割れの可能性が大きいような形状の変位調整金具を用いる場合等には、金属カバーやモルタル等で変位調整金具の周囲を覆い、支圧板としての働きが小さくなるように抵抗を低くしてコンクリート中に埋設することが望ましい。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、第2の発明に適用する変位調整金具10の例を
図8に示す。ここで
図8の[A]は上側のゲージプレート、
図8の[B]は下側のゲージプレート、
図8の[C]は上側の変位調整金具、
図8の[D]は下側の変位調整金具のそれぞれ上方から見た平面図であり、
図8の[E]は塔外側変位調整金具、
図8の[F]は塔心側変位調整金具のそれぞれ側面図である。なお、
図8の[C]、[D]は主柱材に取り付けた状態を示しており、主柱材の断面、取付用ボルト、ナットも図示している。また、
図8に示した本発明の変位調整金具を、主柱材の切断予定箇所に接続した状態を
図9、
図10に示す。ここで
図9の[A]は変位調整金具を主柱材に取り付けた状態を示す側面図であり、
図9の[B]は
図9の[A]のA−A断面図に相当し、変位調整金具を主柱材に取り付けた状態を上方から見た図面であり、
図10は斜視図である。ただし、
図9の[A]は締結ボルト、ナットA〜Dで変位調整金具を締結した状態を示し、
図9の[B]は締結ボルト、ナットA〜Dが取り付けられていない状態を示している。また、
図10は、接合と変位調整の状態を説明するために一部簡略化し、寸法比率もデフォルメしており、平面プレート11間に位置する主柱材2も透過して見えた様に表現している。
【0064】
この第2の発明に適用する変位調整金具の例では、切断する前に主柱材2に取り付けられる様に、変位調整金具10の平面プレート11が分割されている。
【0065】
この例では送電用山形鋼鉄塔に適用する変位調整金具を示しているので、変位調整金具10は主柱材2である山形鋼の内側に取り付ける、長孔14を1つ設けた平面プレート11に、主柱材2である山形鋼の内側に取り付けるためのボルト穴6が設けられた山形鋼の立面プレート12が垂直に溶接された塔心側変位調整金具22と、主柱材2である山形鋼の外側に取り付ける、長孔14を2つ設けた平面プレート11に、主柱材2である山形鋼の外側に取り付けるためのボルト穴6が設けられた山形鋼の立面プレート12と補強用のリブ13が垂直に溶接された塔外側変位調整金具23とに2分割されている。変位調整金具10は、主柱材2をこの塔内側変位調整金具22と塔外側変位調整金具23とで挟むようにして、取り付けられる。このように、2分割されているので、主柱材2が切断される前に変位調整金具10を取り付けることが可能であり、主柱材2の切断予定箇所の上側と下側にそれぞれ、これらの分割タイプの変位調整金具10が取り付けられる。
【0066】
さらにこの例では、それぞれ2個の変位調整ボルト16が回転自在に取り付けられた2枚のゲージプレート24を上下の平面プレート11間に挟んで取り付ける。このゲージプレート24には、主柱材2である山形鋼に取り付けられるように取付用開口部26が設けられており、変位調整金具10の平面プレート11同士を締結するための締結ボルトを挿通するための締結ボルト用ボルト穴25が設けられている。また、変位調整ボルト16はこのゲージプレート24を主柱材2である山形鋼に取り付けた場合に、これらの変位調整ボルト16の延長上に主柱材2である山形鋼があるように配置されている。
【0067】
先の露出させた主柱材2に、変位調整金具10を取り付けるためのボルト穴6を加工し、主柱材2の切断予定箇所の上下に変位調整金具10をそれぞれ取り付け、2枚のゲージプレート24を取り付けて、上下の変位調整金具10を締結ボルト18で、
図9、
図10のように接続する。
【0068】
ちなみに、
図8の[C]の上側の変位調整金具10が最上方に位置し、次に
図8の[A]の上側のゲージプレート24、さらに
図8の[B]の下側のゲージプレート24、最下方に
図8の[D]の下側の変位調整金具10が順番に重ねられて
図9の[B]に示されるような変位調整金具が取り付けられた状態になる。さらに、締結ボルト18、ナットA19、ナットB20、ナットC21、ナットD27を用いて上下の変位調整金具を締結することにより、
図9の[A]、
図10に示すような主柱材の切断予定箇所の上下を変位調整金具で締結した状態になる。なお、この場合には、上下の変位調整金具10、上下のゲージプレート24はそれぞれ同一形状、寸法のものを使用することが可能であり、これは部品製作上優位な点である。
【0069】
このように締結して、変位調整金具10に、切断予定箇所に掛かる鉄塔の負荷を肩代わりさせた状態で、主柱材2の所定の箇所を切断する。このような変位調整金具10であれば、セーバソーで主柱材2を所定の切断面に沿って、この変位調整金具10と干渉することなく切断することが可能である。例えば、切削油を注油しながらセーバソーを用いて断面サイズが130mm×9mmの等辺山形鋼の主柱材を切断する場合には、この変位調整金具を取り付けた状態のままでも、30分程度で切断することが可能である。
【0070】
この分割タイプの変位調整金具10の場合も合計3個以上の長孔14を有する平面プレート11を主柱材2の切断予定部の上下に夫々に取付けるようになっており、ゲージプレート24が挟み込まれているが、上下の主柱材2に取付けた変位調整金具10の平面プレート11同士を対向させて、各長孔14の交差した箇所にボルトを挿通してナットで締結する構造である。このように両プレート11を対抗させた場合に長孔14同士が略直交するよう設けられているので、この長孔14同士が重なる範囲内であれば、ボルトを挿通してナットで締結した状態で、不同変位を解消するために切断した主柱材2間を、主柱材2の軸に垂直方向に変位させることが可能である。この例では、締結ボルト18として頭部のない棒ねじを用いている。棒ねじを用いるとボルトを挿通する場合に施工が容易であるが、頭部の代わりに止め用のナットD27を必要とする。
【0071】
さらに、主柱材2の切断箇所を変位調整金具10で強固に接続した状態で、締結ボルト18とナットA19、ナットB20、ナットC21、ナットD27を用いて、不同変位を解消するために上下の変位調整金具10の平面プレート11間の間隔を調整することができる。
【0072】
もし、他の形鋼の鉄塔に適用する場合は、その主柱材2の形状に適した変位調整金具10の取付部材と取付方法と分割形状を採用すれば良い。また、ゲージプレート24の開口部26も形鋼に適した形状を採用する。例えば鋼管鉄塔に適用する場合には、施工箇所の主柱材2である鋼管側に複数のリブを溶接し、変位調整金具10側ではそのリブに接続するための取付部材として山形鋼のような立面プレート12等を平面プレートに複数溶接しておき、主柱材2に溶接したリブと平面プレート11に溶接した立面プレート12とを用いて、例えば、そのリブと立面プレートに取付用のボルト穴を設けて、取付用のボルトナットを用いれば、主柱材2に変位調整金具10を取り付けることができる。現場で主柱材2の切断予定箇所に平面プレート11を溶接して取り付けることも可能である。しかしながら、切断前に変位調整金具10を主柱材2に取り付けるためには、少なくとも分割形式の平面プレート、もしくは主柱材の断面形状に応じた取付用の穴を持つ平面プレート11を備えた変位調整金具10が必要である。
【0073】
また、この第2の実施形態では、主柱材2の軸方向に垂直な平面上の変位はゲージプレート24を用いて調整する。このゲージプレート24は切断前の主柱材2に取り付けるための開口部26を有する平板状のプレートで、締結ボルト18を挿通するためのボルト穴25が設けられ、調整用ボルト16が回転自在に強固に取り付けられている。この場合のゲージプレート24も締結ボルト用ボルト穴25の関係で主柱材2を切断する前に取り付ける必要があるので、大きな開口部26を設けているが、大きな開口部26を設ける代わりに分割タイプとして、主柱材の断面に対応する開口部26を設けても良い。
【0074】
主柱材2に上下の変位調整金具10を取り付ける際に、2枚のゲージプレート24もこの主柱材2に一緒に取り付けられ、締結ボルト18が長孔14とボルト穴25に挿通され、締結用のナットA19,ナットB20,ナットC21、ナットD27によって、上下の変位調整金具と一緒に締結される。
【0075】
以上のように、この変位調整金具10を取り付けた状態で主柱材2を切断し、その後変位調整金具10とゲージプレート24によって主柱材2の軸方向及び軸に垂直方向に変位させて不同変位を緩和、解消させる。
【0076】
主柱材2の軸方向の変位は、締結ボルト18とナットD27とナットA19で一方の平面プレート11に締結ボルト18を固定し、ナットB20とナットC21を調節することにより、相対的に他方の平面プレート11を移動させて対向する平面プレート11間の距離を調節することができる。これは第1の実施形態の変位調整金具とほぼ同様である。
【0077】
また、主柱材2の軸方向に垂直な平面内の変位は、変位調整ボルト16を回転することにより、併進方向に移動させて軸ズレを調節することができる。この例では、1枚のゲージプレート24に対向するように変位調整ボルト16が設けられているので、この対向する変位調整ボルト16を調整して、軸に垂直な平面の一方向に並進させることが可能であり、もう1枚のゲージプレート24にも対向するように変位調整ボルト16が設けられているので、この対向する変位調整ボルト16を調整して、軸に垂直な平面の一方向に並進させることが可能である。この場合、近接する平面プレート11とゲージプレート24は、平面プレート11の長孔14の方向とゲージプレート24の変位調整ボルト16の対向する方向を揃えて取り付ける。この2枚のゲージプレート24間では変位調整ボルト16の対向する方向がほぼ直交するように設けられているので、軸に垂直な平面内の全方向に亘って変位させて不同変位による位置ズレを緩和、解消させることができる。
【0078】
この軸に垂直な平面内での移動の場合は、変位調整ボルト16により、ゲージプレート24が主柱材2に対して移動するが、ゲージプレート24に設けられた締結ボルト用ボルト穴25により、締結ボルト18が常に規制されているので、締結ボルト18が同時に移動することになり、併せて平面プレート11同士を相対的にスムーズに移動させることができる。ゲージプレート24と平面プレート11とは面接触しているだけでフリーとなっているので、このボルト穴25による締結ボルト18への規制がないと、ゲージプレート24で、主柱材2の軸に垂直な平面内の変位を調整することができない。また、この変位調整の際には、スライド時の摩擦面、及び各調節ボルトに潤滑油を塗布して行うと変位調整をスムーズに行うことができる。さらに、スライド時の摩擦面にメッキ処理を施しておくとよりスムーズに変位調整が可能である。
【0079】
この例では、ゲージプレート24に設けられた締結ボルト用ボルト穴25を締結ボルト18とほぼ同じ寸法に設定することにより、締結ボルト18は遊びが少ない状態で同時に移動することになり、平面プレート11同士を相対的にスムーズに移動させることができる。ただし、この例では、締結ボルト18間のピッチも規制されるため、変位調整が限定され、不同変位の緩和が制限される可能性がある。締結ボルト用ボルト穴25を余裕のある寸法とすれば、制限は緩和されるが、徒に余裕を持たせると、変位調整の作業時の遊びが大きくなり、不同変位を緩和、解消する際の作業が困難になる。締結ボルト用ボルト穴25を、締結ボルト18とほぼ同寸法の幅で、このゲージプレート24が近接する平面プレート11に設けられた長孔14にほぼ直交する方向(もしくは変位調整ボルト16の対向する方向にほぼ直交する方向)に延在する長穴とすることにより、この変位調整の限定を緩和することができ、移動時の遊びも少なくできる。
【0080】
図9に示すように、ゲージプレート24の変位調整ボルト16は、主柱材2対して対向させて配置することが望ましい。この例の場合は主柱材2が山形鋼なので、一方のゲージプレート24には山形の一方の辺を挟むように対向させて変位調整ボルト16を配置し、さらにもう1方のゲージプレート24には直交する山形の別の一方の辺を挟むように対向させて変位調整ボルト16を配置している。なお、この山形の一方の辺は、取り付けられた平面プレート11に設けられた長孔16の方向とほぼ一致する側の辺が選定される。また、対向させる主柱材2が他の形鋼のような場合にはそれに合わせて複数個の変位調整ボルト16を配置したゲージプレート24を制作すればよい。例えば鋼管鉄塔のような場合には、鋼管の中心を挟んで対向させて変位調整ボルト16を配置して、2つのゲージプレート24間でほぼ直交するように配置すれば良く、少なくとも変位調整ボルト16の先端が主柱材2に相対し、2枚のゲージプレート24間で配置が直交することが望ましい。
【0081】
この場合も第1の実施形態と同様に、不同変位を緩和、解消した後、
図12に示すように露出させた主柱材2を変位調整金具10ごとコンクリートで埋設し、基礎1を再建する。基礎1の再建の際は、主柱材2と変位調整金具10の周囲に、下部基礎の鉄筋と合わせてその基礎相応の鉄筋を組み上げ、コンクリートで埋設する。コンクリートの養生が充分になされたら、支線支持を解除する。また、再建した基礎1の必要分を土砂等により埋め戻しを行う。
【0082】
(第3の実施形態)
次に、第2の発明に適用する変位調整金具10の別例を
図11に示す。ここで
図11の[A]は上側の変位調整金具を主柱材に取り付けた状態を示す斜視図である。下側は上側と対称に表れるため、下側を省略して、上側のみを図示している。また、
図11の[B]、[C]、[D]は変位調整ボルトの説明図である。
図11の変位調整金具は第2の実施形態(
図8〜10)に示した変位調整金具に類似しており、異なるのは、ゲージプレート24を必要としない代わりに、平面プレート11に取り付けた変位調整ボルト16を用いる点である。
【0083】
この
図11に示す変位調整金具は、第2の発明に適用する別例なので、切断する前に主柱材2に取り付けられる様に、変位調整金具10の平面プレート11が分割されている。
【0084】
また、この例では送電用山形鋼鉄塔に適用する変位調整金具を示しているので、変位調整金具10は主柱材2である山形鋼の内側に取り付ける、長孔14を1つ設けた平面プレート11に、主柱材2である山形鋼の内側に取り付けるためのボルト穴6が設けられた山形鋼の立面プレート12が垂直に溶接された塔心側変位調整金具22と、主柱材2である山形鋼の外側に取り付ける、長孔14を2つ設けた平面プレート11に、主柱材2である山形鋼の外側に取り付けるためのボルト穴6が設けられた山形鋼の立面プレート12と補強用のリブ13が垂直に溶接された塔外側変位調整金具23とに2分割されている。変位調整金具10は、主柱材2をこの塔内側変位調整金具22と塔外側変位調整金具23とで挟むようにして、取り付けられる。このように、2分割されているので、主柱材2が切断される前に変位調整金具10を取り付けることが可能であり、主柱材2の切断予定箇所の上側と下側にそれぞれ、これらの分割タイプの変位調整金具10が取り付けられる。
【0085】
さらにこの例では、ゲージプレート24を必要としないが、その代わりに、変位調整ボルト16を平面プレート11に取り付けて、変位調整を行うことができる構成になっている。
図11の[A]に示すように、変位調整ボルト16は平面プレート11に取り付けられた変位調整用台座29に取り付けられ、その変位調整ボルト16の先端には、締結ボルト18と係合する変位調整用駒28が取り付けられている。
【0086】
この
図11に示す変位調整金具10を用いた場合も、ゲージプレート24を取り付ける必要がない点が異なるだけで、第2の実施形態の場合と同様に、変位調整金具10を主柱材2の切断予定箇所の上下に取り付け、切断予定箇所に掛かる鉄塔の負荷をその変位調整金具10に肩代わりさせた状態で、主柱材2の所定の箇所を切断し、その後、変位調整を行って不同変位を緩和、解消する。
【0087】
主柱材2の軸方向の変位調整は、締結ボルト18とナットD27とナットA19で一方の平面プレート11に締結ボルト18を固定し、ナットB20とナットC21を調節することにより、相対的に他方の平面プレート11を移動させて対向する平面プレート11間の距離を調節することができる。これは前出の変位調整金具とほぼ同様である。
【0088】
主柱材2の軸方向に垂直な方向の変位調整は、ゲージプレート24を用いる代わりに、平面プレート11に取り付けた変位調整ボルト16を用いて行う。
図11の[A]に示すように、変位調整ボルト16は平面プレート11に取り付けられた変位調整用台座29に取り付けられ、その変位調整ボルト16の先端には、締結ボルト18と係合する変位調整用駒28が取り付けられている。
【0089】
図11に示す変位調整用台座29には、変位調整ボルト16を挿通するための溝が備えられており、平面プレート11の長孔14の延長上に、強固に取り付けられる。
図11の[A]、
図11の[B]に示す変位調整用駒28は、締結ボルト18を挿通可能な穴が設けられており、変位調整ボルト16の先端に強固に取り付けられる。この構成により、締結ボルト18に変位調整用駒29を係合させて、変位調整ボルト16を変位調整用台座18にセットすることが可能である。セットして、変位調整ボルト16に取り付けたナットを回転調節することで、平面プレート11に対して締結ボルト18を長穴に沿って移動させることができる。平面プレート11と締結ボルト18の位置を調整することによって、上側の平面プレート11と下側の平面プレート11の相対位置の調整ができるので、上下の主柱材2間の変位調整を行って不同変位を緩和、解消することが可能となる。
【0090】
この場合は、ゲージプレート24を用いなければ、上下の平面プレート11に設けられた長孔14が重なる範囲内であれば、第2の実施形態のような制限を受けずに、主柱材2の軸方向に垂直な方向の変位調整を行うことが可能である。
【0091】
変位調整用駒28に設ける締結ボルト18との係合部としては、締結ボルト18と係合させて、長孔14に沿って、移動させることができるものであれば良いが、
図11の[B]に示すような締結ボルト18の径に合わせた貫通孔や、
図11の[C]に示すような締結ボルト18の径に合わせたU字形状の溝とすると、締結ボルト18を係合させて長孔14に沿って、両方向に移動させることができるので望ましい。
【0092】
また、変位調整用台座29に変位調整ボルト16に合わせた溝を形成しておくことにより、変位調整を行う段階になってから変位調整ボルト16をセットすることが可能となる。変位調整台座29は、平面プレート11のどちらの面に設けても構わないが、
図11の[A]のように上下に対向する平面プレート11の対向面と反対側の面に設けると、
図11の[B]のような締結ボルト18に係合する貫通孔を設けた変位調整用駒28を備えた変位調整ボルト16を変位調整段階でセットできるが、逆の対向面に設けた場合は締結ボルトの取り付けの段階から変位調整ボルト16をセットしておく必要がある。
図11の[C]のような締結ボルト18に係合する溝を設けた変位調整用駒28を備えた変位調整ボルト16の場合は、変位調整用台座が平面プレートのどちら側に設けられても、変位調整ボルト16を変位調整段階でセットすることができる。
【0093】
変位調整用台座29は、長孔14の延長線上に設けると、平面プレート11に対して締結ボルト18を長穴に沿って移動させるのに都合がよい。変位調整ボルト16を変位調整用台座29にセットして変位調整ボルト16に取り付けたナットを変位調整用台座29に接してこのナットを回転させて、変位調整用駒28(締結ボルト18)と変位調整用台座29間の距離を調整する。このナットを変位調整用駒28(締結ボルト18)と変位調整用台座29の間に位置させれば、この距離を長くする方向に調節できる。変位を調整する際に、このナットの位置の設定が可能なので、移動させようとする方向に応じて設定すれば、1個のナットでも変位調整が可能であるが、
図11の[D]のように、2個のナットを変位調整用台座29を挟むように設ければ、随時、双方向の変位調整が可能であり、この2つのナットで締結ボルト18の位置を固定することも可能となる。
【0094】
変位調整用台座29は、平面プレートに溶接して取り付けておけばよいが、変位調整を行う際にさえ、平面プレート11に強固に固定されていればよいので、平面プレート11と変位調整用台座29とを継ぎ手等で継合させても良い。例えば、平面プレート11に継合用凹部(穴等)を設けておき、変位調整用台座29に継合用突起を設けて、変位調整のが必要な際に、平面プレート11に変位調整用台座29を継合し、変位調整ボルト16をセットしても良い。この場合は、変位調整が終わったら、変位調整用駒28を備えた変位調整ボルト16と変位調整用台座29を取り外すことも可能であり、これらの部品を同様な他の工事でも利用することができる。
【0095】
なお、この場合も第2の実施形態と同様に他の形鋼の鉄塔に適用する場合は、その主柱材2の形状に適した形状で、対向して直交するような長孔14を設けた変位調整金具10を用いれば良い。また、第2の発明の場合には、変位調整金具10として平面プレート11を主柱材2の切断予定箇所の上下に溶接して取り付けても良い。
【0096】
この場合も第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、不同変位を緩和、解消した後、
図12に示すように露出させた主柱材2を変位調整金具10ごとコンクリートで埋設し、基礎1を再建する。基礎1の再建の際は、主柱材2と変位調整金具10の周囲に、下部基礎の鉄筋と合わせてその基礎相応の鉄筋を組み上げ、コンクリートで埋設する。コンクリートの養生が充分になされたら、支線支持を解除する。また、再建した基礎1の必要分を土砂等により埋め戻しを行う。
【0097】
なお、第2の実施形態、第3の実施形態に示した分割タイプの変位調整金具10は第1の発明の、仮設支持によって、鉄塔の負荷を肩代わりさせて主柱材を切断する場合にも、適用可能であることは明らかである。また、第1の発明に対して、第1の実施形態で説明した変位調整金具10に取り付けた変位調整ボルト16と変位調整ボルト受けプレート17からなる軸方向に垂直な方向の変位調整手段の替わりに、第2の実施形態で説明した変位調整ボルト16を取り付けたゲージプレート24からなる軸方向に垂直な方向の変位調整手段、又は第3の実施形態で説明した平面プレート11に取り付けた、締結ボルト18と係合する変位調整用駒28を備えた変位調整ボルト16からなる軸方向に垂直な方向の変位調整手段を適用可能である。
【0098】
また、第2の発明の変位調整金具10で接続してから主柱材を切断する場合にも第1の実施形態で説明した変位調整金具10に取り付けた変位調整ボルト16と変位調整ボルト受けプレート17からなる軸方向に垂直な方向の変位調整手段を適用可能である。この際には、例えば
図8のような分割タイプの変位調整金具10を用い、ゲージプレート24を使用する代わりに
図5、
図6のような、変位調整ボルト16と変位調整ボルト受けプレート17をこの分割タイプの変位調整金具10に設けるとよい。
【0099】
変位調整金具10に取り付けた変位調整ボルト16と変位調整ボルト受けプレート17の場合は、部品点数が少なくて済むが、変位調整ボルト16を取り付ける平面プレート11と、直接作用する変位調整ボルト受けプレート1を取り付ける相手平面プレート11との距離が大きいので、変位調整ボルト16を取り付ける変位調整用台座29を頑丈にするため重厚にする必要があり、第2の発明に適用する場合には、より強度を必要とするので特に重厚に製作する。第2の実施形態の変位調整ボルト16を取り付けたゲージプレート24および第3の実施形態の締結ボルト18と係合する変位調整用駒28を備えた変位調整ボルト16の場合は、部品点数は増えるが、変位調整ボルト16を取り付ける位置(ゲージプレート24または平面プレート11)と変位調整ボルト16が直接作用する位置(主柱材2または締結ボルト18)間の距離が小さいので、コンパクトにできる。
【0100】
また、第2の発明の場合は、第1の発明の場合よりも、変位調整ボルト16の必要性が高く、変位調整ボルト16を備えている方が、他の変位調整手段を必要としないので望ましい。ただし、別途、上下の主柱材(特に上の主柱材)を把持して油圧等で変位調整を行う等の他の変位調整方法を採用、もしくは併用することも可能である。