(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インプラントの上部構造を作製するための支台模型に埋入されたインプラントアナログの位置精度を検証するときに、隣接する他のテンポラリシリンダと連結用部材により連結された状態で、前記インプラントアナログに取り付けられるテンポラリシリンダであって、
前記連結用部材を担持させる支持部がシリンダ本体に形成されたテンポラリシリンダ。
前記請求項1から16のいずれかの項に記載のテンポラリシリンダの支持部に担持させるために、少なくとも一方の端部が折り曲げられたワイヤ状のテンポラリシリンダの連結に用いられる連結用部材。
前記請求項2から11のいずれかの項に記載のテンポラリシリンダの支持部に担持させて、隣接する他のテンポラリシリンダを連結するために、前記テンポラリシリンダの前記支持部であるシリンダ本体から突出した突起部に引っ掛けるための欠損部が形成され、前記欠損部を前記テンポラリシリンダの突起部に引っ掛けた状態で、前記他のテンポラリシリンダの支持部に担持させる板状のテンポラリシリンダの連結に用いられる連結用部材。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態に係るテンポラリシリンダを図面に基づいて説明する。
図1に示すようにテンポラリシリンダ10は、シリンダ本体20と、突起部30とを備えている。
シリンダ本体20は、スクリュードライバ(図示せず)を差し込むための細長の挿入口21が形成されていることで、内部が軸線に沿って空洞が形成された筒状に形成されている。シリンダ本体20の基端部には、ねじ40が挿通するねじ孔22が形成されている。
突起部30は、シリンダ本体20に一対設けられている。突起部30は、シリンダ本体20の周囲面20aから水平方向に、かつそれぞれが反対方向に延びるように突出している。突起部30は、先端部から基端部に向かって徐々に細くなるように、円錐形状に形成されている
【0034】
このように構成されたテンポラリシリンダ10は、患者から採得された印象に基づいて作製される支台模型の精度を検証するため用いられる。
ここで、支台模型の製造方法について図面に基づいて説明する。
図3に示すように、まず、歯科医師は、患者の歯肉110に埋入されたインプラント体101にインプレッションコーピング102を立設する。
【0035】
次に、
図4に示すように、歯科医師は、印象材112を盛った印象トレイ111を準備して、患者の歯肉に被せ、印象材112に、患者の歯肉形状や、図示しない隣在歯の状態を転写して、印象材112を硬化させる。
次に、
図5に示すように、歯科医師は、インプレッションコーピング102をインプラント体101から取り外し、患者から取り外した印象トレイ111から、インプレッションコーピング102付きの印象材112を取り出す。
【0036】
または、歯科医師は、
図4に示す状態から、印象材112を印象トレイ111ごと、インプレッションコーピング102から取り外す。次に、歯科医師は、インプレッションコーピング102をインプラント体101から取り外した後に、インプレッションコーピング102を印象材112に復位させ、印象トレイ111を印象材112から外す。こうすることによっても、インプレッションコーピング102付きの印象材112を得ることができる。
そして、歯科医師は、このインプレッションコーピング102付きの印象材112を歯科技工所へ送付する。
【0037】
歯科技工所では、歯科技工士が、
図6に示すように、印象材112に取り込まれているインプレッションコーピング102にインプラントアナログ103を取り付ける。
そして、患者の印象が転写された印象材112を凹型として、インプラントアナログ103を含むかたちで、石膏などの成型材により凸型を成形する。
石膏が硬化すると、
図7に示すように、歯科技工士は、インプレッションコーピング102をインプラントアナログ103から外して、印象材112を石膏113から取り外す。このようにして作製される支台模型100は、インプラントアナログ103上に、上部構造が作製されるために用いられる。
【0038】
支台模型100は、
図4に示すように、印象材112に患者の印象が転写され、
図6および
図7に示すように、石膏113により印象材112の形状が転写されるため、印象材112の硬化の際や石膏113の硬化の際に、収縮する。この収縮は、隣接するインプラントアナログ103同士の位置関係と、患者の歯肉110に埋入されたインプラント体101同士の位置関係との相違となって表れる。支台模型100は、上部構造が作製されるために用いられるため、高い精度が求められる。
【0039】
そこで、歯科医師は、
図8に示すように、患者の歯肉110に埋入されたインプラント体101に、
図1に示すテンポラリシリンダ10を取り付ける。このテンポラリシリンダ10をインプラント体101に取り付けるときは、ねじ40をシリンダ本体20の挿入口21から挿入して、基端部(底部)から突き出させた状態で、インプラント体101に挿入して、挿入口21からスクリュードライバを挿入して、インプラント体101にねじ40をねじ込むことで、テンポラリシリンダ10が固定される。
【0040】
このようにして、テンポラリシリンダ10がインプラント体101に取り付けられると、歯科医師は、連結用部材の一例である連結用ワイヤ114を、それぞれのテンポラリシリンダ10の突起部30の間に跨るように配置する。
このとき、連結用ワイヤ114を、下顎であれば、頬側の突起部30同士、または舌側の突起部30同士に配置する。また、上顎であれば、頬側の突起部30同士、または口蓋側の突起部30同士に配置する。
突起部30はシリンダ本体20から突出しているため、突起部30を連結用ワイヤ114のための支持部として載置することで、容易に連結用ワイヤ114を突起部30に架橋させることができる。
【0041】
突起部30は、円錐形状に形成されていることで、先端部30aから基端部30bに向かって徐々に細くなっているため、先端部30aから基端部30bに向かって下り傾斜である。従って、直径が太い先端部30aに連結用ワイヤ114を配置しても、直径が細い基端部30bに向かって自重により基端部30b側に寄るため、連結用ワイヤ114が突起部30から滑落し難い。
【0042】
テンポラリシリンダ10に連結用ワイヤ114を配置すると、歯科医師は、接着材である固定用レジン115を、突起部30上の連結用ワイヤ114を含む範囲に塗布することで、連結用ワイヤ114をテンポラリシリンダ10に固定する。
【0043】
テンポラリシリンダ10同士の連結が完了すると、歯科医師は、テンポラリシリンダ10をインプラント体101から取り付け時と反対の操作で取り外す。
そして、歯科医師は、連結用ワイヤ114により繋がったテンポラリシリンダ10を歯科技工所へ送付する。
【0044】
歯科技工所では、歯科技工士が、連結用ワイヤ114により繋がったテンポラリシリンダ10を、
図9に示すように、支台模型100に取り付ける。支台模型100のインプラントアナログ103の間隔が、患者のインプラント体101の間隔より広ければ、一端に位置するテンポラリシリンダ10を、これに対応するインプラントアナログ103に取り付けると、連結用ワイヤ114によりテンポラリシリンダ10の間隔が決定されるため、他のインプラントアナログ103に取り付けることができない。
【0045】
また、支台模型100のインプラントアナログ103の間隔が、患者のインプラント体101の間隔より狭ければ、一端に位置するテンポラリシリンダ10を、これに対応するインプラントアナログ103に取り付け、他のテンポラリシリンダ10を他のインプラントアナログ103に取り付けると、連結用ワイヤ114が弛んだ状態となる。
これにより、患者の状態を支台模型100が精度よく再現しているか否かが判断される。
【0046】
このように、テンポラリシリンダ10のシリンダ本体20には、連結用ワイヤ114を担持する支持部として突起部30が形成されているため、簡単に連結用ワイヤ114が配置することができ、接着材である固定用レジン115を付着させたときに、突起部30に引っ掛かり保持させることができる。従って、テンポラリシリンダ10は、容易に連結用ワイヤ114による固定が可能である。
【0047】
患者のインプラント体101が下顎に埋入されていると、テンポラリシリンダ10をインプラント体101に取り付けると、テンポラリシリンダ10の基端10a(ねじ40が突出する側)は下方に向き、先端10bは上方を向く。反対に、患者のインプラント体101が下顎に埋入されていると、テンポラリシリンダ10の基端10aは上方に向き、先端10bは下方を向く。
しかし、テンポラリシリンダ10の突起部30は水平方向に突出しているため、上顎と下顎とで、テンポラリシリンダ10の向きが入れ替わっても、連結用ワイヤ114を突起部30の上側に配置することで、テンポラリシリンダ10の上下方向の向きに関係無く、連結用ワイヤ114を突起部30に配置することができる。
特に、突起部30が円錐形状に形成されているため、上顎と下顎とで、テンポラリシリンダ10の向きが入れ替わっても、突起部30に配置した連結用ワイヤ114を自重により基端部30b側に寄せることができる。
【0048】
また、突起部30は、シリンダ本体20の頬側とその反対側との両方に形成されているため、インプラント体101に取り付けて連結用ワイヤ114により連結するときに、連結用ワイヤ114を担持させやすい方の突起部30を選んで、連結用ワイヤ114を突起部30に配置することができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、突起部30が円錐形状に形成されているが、三角形状の金属製の板片により形成されていてもよい。
【0050】
ここで、テンポラリシリンダの変形例について、図面に基づいて説明する。まず、突起部の変形例について説明する。
【0051】
(第1変形例)
図10(A)に示すように、テンポラリシリンダ11は、シリンダ本体20の周囲面20aから、支持部としてのY字状の突起部31が水平方向に突出している。
突起部31がY字状に形成されているため、連結用ワイヤを突起部31に配置したときに、突起部31の先端部の傾斜によって、連結用ワイヤが自重により基端部側に寄るため、突起部30から連結用ワイヤが滑落し難い。
また、この突起部31の先端部の傾斜は、突起部31がY字状に形成されているため、テンポラリシリンダ11の基端11aが下方を向いたり、上方を向いたりして、テンポラリシリンダ11の向きが入れ替わっても、先端部31a側から基端部31b側に向かって下り傾斜となる。従って、連結用ワイヤを突起部30の上方側に配置することで、突起部30から連結用ワイヤが落ちにくくすることができる。
【0052】
(第2変形例)
図10(B)に示すように、テンポラリシリンダ12は、シリンダ本体20の周囲面20aから、支持部としての突起部32が水平方向に突出している。突起部32は、円柱状でも、四角柱状でもよいが、この突起部32には、先端側および基端側に開口部が向いた凹部32aが形成されている。
図10(B)に示す凹部32aはV字状に形成されているが、断面が矩形状の溝でも、溝底が半円柱状でもよい。
【0053】
このように構成されるテンポラリシリンダ12は、突起部32に凹部32aが形成されているため、この凹部32aに連結用ワイヤを支持させることで、連結用ワイヤが滑落し難くなり、簡単に連結用ワイヤを下支えさせることができる。また、連結用ワイヤが凹部32aに嵌るため、連結用ワイヤと凹部32aの内側面とが固定用レジンによってしっかりと接着される。
更に、基端12a側に開口が向いた凹部32aと、先端12b側に開口が向いた凹部32aとの両方が形成されているため、上顎と下顎とで、テンポラリシリンダ12の向きが入れ替わっても、連結用ワイヤを担持させることができる。
【0054】
(第3変形例)
図10(C)に示すように、テンポラリシリンダ13は、シリンダ本体20の周囲面20aから、支持部としての突起部33が水平方向に突出している。突起部33は、円柱状でも、四角柱状でもよいが、この突起部33には、連結用ワイヤを挿通させるための貫通孔33aが、連結用ワイヤの配線方向に向いて形成されている。
図10(C)に示す貫通孔33aは円形状に形成されているが、多角形状、異形状でもよい。
【0055】
このように構成されるテンポラリシリンダ13は、突起部33に貫通孔33aが形成されているため、貫通孔33aに連結用ワイヤを挿通させることで、連結用ワイヤを下支えさせることができる。また、連結用ワイヤが貫通孔33aに挿通しているため、連結用ワイヤと貫通孔33aの内側面とが固定用レジンによってしっかりと接着される。
また、貫通孔33aが連結用ワイヤの配線方向に向いて形成されているため、インプラント体に取り付けたテンポラリシリンダ13に、連結用ワイヤを横方向からそのまま挿通させればよいため、連結用ワイヤの貫通孔33aへの挿入が容易である。
更に、連結用ワイヤが貫通孔33aに挿通しているため、上顎と下顎とで、テンポラリシリンダ13の向きが入れ替わっても、連結用ワイヤを担持させることができる。
【0056】
(第4変形例)
図10(D)に示すように、テンポラリシリンダ13aは、シリンダ本体20の周囲面20aから、
図1に示すテンポラリシリンダ10と同様に、支持部としての突起部30が水平方向に突出している。
この突起部30には、連結用ワイヤを挿通させるための貫通孔33axが、連結用ワイヤの配線方向と交差する方向に向いて形成されている。
図10(D)に示す貫通孔33axは円形状に形成されているが、多角形状、異形状でもよい。
【0057】
このように構成されるテンポラリシリンダ13aは、突起部30が形成されているため、
図1に示すテンポラリシリンダ10と同様の作用効果を得ることができる。
また、突起部30に貫通孔33axが形成されているため、貫通孔33axに連結用ワイヤを挿通させれば、連結用ワイヤを下支えさせることができる。
また、貫通孔33axが連結用ワイヤの配線方向と交差する方向に向いて形成されているため、連結用ワイヤを挿通させると、連結用ワイヤが折れた状態となるため、固定用レジンで連結用ワイヤを突起部30に固定すれば、引張力に対する耐力を向上させることができる。特に、貫通孔33axを、連結用ワイヤを、配線方向と直交する方向に沿って形成することにより、連結用ワイヤをしっかりと突起部30に固定することができる。
更に、連結用ワイヤが貫通孔33axに挿通しているため、テンポラリシリンダ13aの向きが入れ替わっても、連結用ワイヤを担持させることができる。
【0058】
(第5変形例)
図10(E)に示すように、テンポラリシリンダ13bは、シリンダ本体20の周囲面20aから、
図1に示すテンポラリシリンダ10と同様に、支持部としての突起部30が水平方向に突出している。
この突起部30の先端面30cは、円弧面に形成されている。
図10(E)では、先端30cが半球状に形成されている。
【0059】
このように構成されるテンポラリシリンダ13bは、突起部30が形成されているため、
図1に示すテンポラリシリンダ10と同様の作用効果を得ることができる。
また、突起部30の先端面30cが半球状の円弧面に形成されているため、患者の口腔内で、突起部の先端が粘膜面に接触しても、粘膜面を傷付けに難くすることができる。
図10(E)では、突起部30が円錐形状であり、その先端面30cが半球状であるが、突起部を円柱と球体とを組み合わせた形状としてもよい。
また、
図10(A)から同図(D)の突起部30〜33の先端面を円弧面としたものとしてもよい。
【0060】
(第6変形例)
図10(F)に示すように、テンポラリシリンダ13cは、シリンダ本体20の周囲面20aに、支持部としての突起部41が突出している。この突起部41は、球体状に形成されている。
このように構成されるテンポラリシリンダ13cは、突起部41が球体状に形成されているため、患者の口腔内で、突起部の先端が粘膜面に接触しても、粘膜面を傷付けに難くすることができる。
【0061】
テンポラリシリンダ11〜13,13a〜13cでは、突起部30〜33が、シリンダ本体20の軸線を中心として、頬側とその反対側との両方から突出しているため、インプラント体101に取り付けて連結用ワイヤにより連結するときに、連結用ワイヤを担持させやすい方の突起部30〜33を選んで、連結用ワイヤを突起部30〜33に配置することができる。
【0062】
上記テンポラリシリンダ10〜13,13a〜13cは、連結用ワイヤを担持する支持部として機能する突起部30〜33を備えていたが、突起部の代わりに窪みを、シリンダ本体20に形成してもよい。支持部を突起部の代わりに窪みとすることで、シリンダ本体20から支持部を突出させていないため、狭い口腔内でも、連結用ワイヤによる支持部への配置が容易である。
【0063】
(第7変形例)
図11(A)に示すテンポラリシリンダ14は、シリンダ本体20の先端部20bに、支持部としての窪み34が形成されている。この窪み34は、先端部20bの中央部を挟んで、両肩部が切り欠かれるようにして形成された段差である。
この窪み34に連結用ワイヤを配置して固定用レジンを塗布して硬化させることで、テンポラリシリンダ14に連結用ワイヤを固定することができる。
【0064】
このように構成されるテンポラリシリンダ14は、シリンダ本体20の先端部20bに窪み34が形成されているため、窪み34の段差面34aに連結用ワイヤを支持させることで、連結用ワイヤを下支えさせることができる。また、連結用ワイヤを窪み34に載置して固定用レジンを塗布することで、連結用ワイヤが窪み34の段差面34aと立ち壁面34bとの両面に接触するため、連結用ワイヤと窪み34のそれぞれの面とが固定用レジンによってしっかりと接着される。
【0065】
(第8変形例)
図11(B)に示すテンポラリシリンダ15は、シリンダ本体20の先端部20bに、支持部としての窪み35が形成されている。この窪み35は、先端部20bの中央部を深く掘り下げるように切り欠かれた溝である。
この窪み35に連結用ワイヤを配置して固定用レジンを塗布して硬化させることで、テンポラリシリンダ15に連結用ワイヤを固定することができる。
【0066】
このように構成されるテンポラリシリンダ15は、シリンダ本体20の先端部20bに窪み35が形成されているため、窪み35に連結用ワイヤを載置することで、連結用ワイヤを下支えさせることができる。また、連結用ワイヤを窪み35に載置して固定用レジンを塗布することで、連結用ワイヤが窪み35の底面35aと溝壁面35bとの両面に接触するため、連結用ワイヤと窪み35のそれぞれの面とが固定用レジンによってしっかりと接着される。
【0067】
(第9変形例)
図11(C)に示すテンポラリシリンダ16は、シリンダ本体20の周囲面20aの頬側と、その反対側とに、支持部としての窪み36が形成されている。この窪み36は、周囲面20aから軸線に向かって切り欠かれた溝である。
上顎の場合には、この窪み36の溝壁36bであって、シリンダ本体20の先端部20b側の溝壁36bに連結用ワイヤを支持させる、または下顎の場合には、この窪み36の溝壁36aであって、シリンダ本体20の基端部20c側の溝壁36aに連結用ワイヤを支持させて、固定用レジンを塗布して硬化させることで、テンポラリシリンダ16に連結用ワイヤを固定することができる。
【0068】
このように構成されるテンポラリシリンダ16は、シリンダ本体20の周囲面20aに窪み36が形成されているため、連結用ワイヤを窪み36に配置することで、連結用ワイヤを下支えさせることができる。また、窪み36に連結用ワイヤを配置して固定用レジンを塗布することで、連結用ワイヤが窪み36の溝壁36a,36bのいずれかの面と溝底36cとの両面に接触するため、連結用ワイヤと窪み36のそれぞれの面とが固定用レジンによってしっかりと接着される。
【0069】
(第10変形例)
図11(D)に示すテンポラリシリンダ17は、シリンダ本体20の周囲面20aの頬側と、その反対側とに、支持部としての窪み37が形成されている。この窪み37は、周囲面20aから軸線に向かって切り欠かれた溝である。また、窪み37は、連結用ワイヤが挿入される開口部が奥側より狭く形成されている。
このように、テンポラリシリンダ17では、窪み37の開口部が奥側より狭く形成されているため、連結用ワイヤを窪み37に配置すると、テンポラリシリンダ17から外れに難くすることができる。
【0070】
(第11変形例)
図11(E)に示すテンポラリシリンダ18は、シリンダ本体20の周囲面20aの頬側、または、その反対側に、支持部としての窪み38が形成されている。この窪み38は、周囲面20aからシリンダ本体20の軸線を超えて、深く切り欠かれた溝である。
このように、テンポラリシリンダ18では、窪み38が軸線より深く形成されているため、連結用ワイヤを窪み38に配置すると、窪み38から出難くすることができるため、テンポラリシリンダ18から外れに難くすることができる。
【0071】
(第12変形例)
上記テンポラリシリンダ14〜18では、連結用ワイヤを担持する支持部として機能する窪み34〜38がシリンダ本体20に形成されていたが、窪みの代わりに貫通孔を、シリンダ本体20に形成してもよい。
図12に示すテンポラリシリンダ19では、シリンダ本体20に連結用ワイヤを挿通させるための貫通孔39が形成されている。
図12に示す貫通孔39は矩形状に形成されているが、円形状、多角形状、異形状でもよい。
【0072】
このように構成されるテンポラリシリンダ19は、シリンダ本体20に貫通孔39が形成されているため、貫通孔39に連結用ワイヤを挿通させることで、連結用ワイヤを下支えさせることができる。また、連結用ワイヤが貫通孔39に挿通しているため、連結用ワイヤと貫通孔39の内側面とが固定用レジンによってしっかりと接着される。
更に、連結用ワイヤが貫通孔39に挿通しているため、テンポラリシリンダ13の向きが入れ替わっても、連結用ワイヤを担持させることができる。
【0073】
テンポラリシリンダ14,16,17,19では、窪み34,36,37および貫通孔39が、シリンダ本体20の軸線を中心として、頬側とその反対側との両方に形成されているため、インプラント体101に取り付けて連結用ワイヤにより連結するときに、連結用ワイヤを担持させやすい方の窪み34,36,37または貫通孔39を選んで、連結用ワイヤを配置することができる。
【0074】
このように構成されたテンポラリシリンダ10〜19(
図1,
図10,
図11および
図12参照)を、テンポラリアバットメントとすることができる。
テンポラリシリンダ10〜19をテンポラリアバットメントとするときには、テンポラリシリンダ10〜19を次のように加工する。なお、
図13(A)においては、テンポラリシリンダ10を図示している。
【0075】
シリンダ本体20に突起部30〜33,41が設けられたテンポラリシリンダ10〜13,13a,13b,13cである場合には、突起部30〜33,41を、切断治具などにより切除する(
図13(A)の切断線C1)。そして、上部構造の高さに合わせてシリンダ本体20の先端部20b側を切除することで、シリンダ本体20を短くする(
図13(A)の切断線C2)。
【0076】
また、シリンダ本体20に窪み34〜38が設けられたテンポラリシリンダ14〜18である場合には、窪み34〜38を含む先端部20b側を上部構造の高さに合わせて切除することで、シリンダ本体20を短くする。
更に、シリンダ本体20に貫通孔39が設けられたテンポラリシリンダ19である場合には、貫通孔39を含む先端部20b側を上部構造の高さに合わせて切除する。
そうすることでシリンダ本体20の残余部分を、テンポラリアバットメントとすることができ、テンポラリシリンダ10〜19を廃棄せずに、利用することができる。
【0077】
また、突起部30〜33が設けられたテンポラリシリンダ10〜13,13a,13bである場合には、突起部30〜33を切除し、上部構造を作製した後に、上部構造から突出したシリンダ本体20を切除してもよい。
同様に、テンポラリシリンダ14〜19においても、上部構造を作製した後に、上部構造から突出したシリンダ本体20を切除してもよい。
そうすることで、スクリュードライバを挿入するための挿入口(アクセスホール)が、上部構造の歯冠部に、テンポラリシリンダ10〜19の切断面によりできるため、上部構造の歯頸部から歯冠部までを金属棒により支持させることができる。
【0078】
なお、テンポラリシリンダ10〜19においては、基端部20cから先端部20bに向かって先細り形状とすることができる。
図13(B)に示すシリンダ本体20mでは、突起部や窪みは省略している。
シリンダ本体20mを先細り形状とすることで、上部構造を作製してシリンダ本体20mから作製したテンポラリアバットメントに被せるときに、テンポラリアバットメントの先端部の外径より、上部構造の穴の開口部の内径が大きいため、上部構造を被せやすい。
特に、上部構造としてブリッジを被せるときには、ブリッジを被せる方向が制約される。しかし、シリンダ本体20mを先細り形状とすることで、ブリッジでも被せやすくすることができる。
このように、シリンダ本体20mが先細り形状に形成されていることで、口腔内の状態をより精密に再現でき、より正確な上部構造を患者に提供できる。
【0079】
次に、本実施の形態に係るテンポラリシリンダを連結するための連結部材を図面に基づいて説明する。
連結用部材は、ワイヤ状の連結用ワイヤを用いることができる。この連結用ワイヤは、金属細線を撚り合わせたもので、変形させると、その変形した形状を保持する剛性を有している。
図14(A)および同図(B)に示す連結用ワイヤ116,117は、
図8および
図9に示す連結用ワイヤの両端部であって、テンポラリシリンダ10,13の間隔から外側の両端部(116a,116b、117a,117b)を折り曲げて、テンポラリシリンダ10,13を連結している。なお、
図14(A)および同図(B)では、固定用レジンは図示してない。
【0080】
図14(A)に示す連結用ワイヤ116は、
図1に示すテンポラリシリンダ10の突起部30に載置されて連結している。突起部30は円錐形状に形成されているため、連結用ワイヤ116が突起部30に載置されると、連結用ワイヤ116は突起部30の基端部側に寄るので滑落し難い。
【0081】
連結用ワイヤ116は、一方の端部116aと他方の端部116bとが同じ側に折り曲げられているため、連結用ワイヤ116を突起部30に載置するだけで、連結用ワイヤ116を安定した状態で、突起部30に配置することができる。
この状態では、連結用ワイヤ116はその配線方向に移動し難くなる。従って、連結用ワイヤ116は、突起部30の突出方向(基端部から先端部へ向かう方向)だけでなく、突起部30の突出方向と直交する方向にも移動し難くなる。そのため、連結用ワイヤ116を突起部30に仮置きした状態で、固定用レジンで固定することができる。
【0082】
図14(A)に示す例では、連結用ワイヤ116により、
図1に示すテンポラリシリンダ10を連結していたが、連結用ワイヤ116は、
図10(A)から同図(E)、
図11(A)から同図(E)および
図12に示すテンポラリシリンダ11〜19においても用いることができる。
特に、連結用ワイヤ116の両端部116a,116bが直角に折り曲げられていることで、安定度を増加させることができる。また、
図10(D)に示すテンポラリシリンダ13aにおいては、連結用ワイヤ116を突起部30に載置する操作で、両端部116a,116bを貫通孔33axに挿通させることができる。
【0083】
図14(B)に示す連結用ワイヤ117は、
図10(C)に示すテンポラリシリンダ13の突起部33の貫通孔33aに挿通されて連結している。
連結用ワイヤ117は、一方の端部117aと他方の端部117bとが折り曲げられているため、連結用ワイヤ117の配線方向に移動し難くなる。
また、連結用ワイヤ117の両端部117a,117bが異なる側に曲げられているため、連結用ワイヤ117を貫通孔33aに挿通するときには、それぞれの貫通孔33aに対して交互に挿通させることができる。
【0084】
例えば、先端部20b側に曲がった一方の端部117aを一方のテンポラリシリンダ13の貫通孔33aに挿通させ、一方の端部117aの折り曲げ部分を中心に直線部分117cを回動させながら、貫通孔33aの位置に直線部分117cまで進行させた後に、基端部20cに曲がった他方の端部117bを引きながら、他方のテンポラリシリンダ13の突起部33の貫通孔33aに挿通させる。
【0085】
そうすることで、基端部20cに曲がった他方の端部117bが、先端部20b側に曲がった一方の端部117aとは異なる側に曲がっているため、連結用ワイヤ117の両端部117a,117bを、簡単に貫通孔33aに挿通させることができる。
このように、患者の狭い口腔内でも、連結用ワイヤ117を簡単に配置することができる。
【0086】
図14(B)に示す例では、連結用ワイヤ117により、
図10(C)に示すテンポラリシリンダ13を連結していたが、
図12に示すテンポラリシリンダ19でも同様である。
【0087】
なお、
図14(A)および同図(B)に示す連結用ワイヤ116,117は、両端部(116a,116b、117a,117b)が折り曲げられていたが、いずれか一方の端部だけでもよい。また、端部(116a,116b、117a,117b)は鈍角に折り曲げられているが、一方の端部を折り曲げるときには、鋭角としてもよい。
【0088】
図14(C)に示すように、連結用ワイヤ118は、一方の端部118aが鋭角に折り曲げられている。こうすることで、連結用ワイヤ118の端部118aが、一方のテンポラリシリンダ10の突起部30に引っ掛けられれば、他方のテンポラリシリンダ10の突起部30には、連結用ワイヤ118の端部118aを中心に回転させて、他方の端部118bを載置することで、突起部30により他方の端部118bを支持させることができる。
【0089】
このとき、他方の端部118bは折り曲げられていなくてもよいが、他方の端部118bがシリンダ本体20の基端部20c側に鈍角に折り曲げられていると、他方の端部118bを突起部30に載置したときに、他方の端部118bを、更に安定した状態で、突起部30に配置することができる。
【0090】
連結用ワイヤ118の端部118aが鋭角に折り曲げられているときに、
図14(D)に示すように、端部118aが連結用ワイヤ118自体に至るまで折り曲げられることで、端部118aがリング状に形成されている。
【0091】
このように、連結用ワイヤ118の端部118aがリング状に形成されていることで、最初に、端部118aを、一方のテンポラリシリンダ10の突起部30に、突起部30の先端部側から挿通させ、次に、端部118aを中心に連結用ワイヤ118を回転させて、端部118bを他方のテンポラリシリンダ10の突起部30に載置する。そうすることで、突起部30により他方の端部118bを支持させることができる。
【0092】
次に、連結用部材を板状とした場合について、図面に基づいて説明する。
連結用部材は、板状の連結用板材を用いることができる。この連結用板材は、金属製である。なお、
図15では、固定用レジンは図示してない。また、
図15(A)から同図(C)においては、右側のテンポラリシリンダ10を一方のテンポラリシリンダ10、このテンポラリシリンダ10と隣接する他のテンポラリシリンダ10を他方のテンポラリシリンダ10と称す。
【0093】
図15(A)に示す連結用板材119は、一方のテンポラリシリンダ10と他方のテンポラリシリンダ10とを連結している。
連結用板材119には、第1欠損部119aと、第2欠損部119bとが形成されている。第1欠損部119a(欠損部)は、一端部側に、短手方向に沿って形成された切り欠き部である。第2欠損部119bは、他端部から中央部まで、連結用板材119の長手方向に沿って形成された切り欠き部である。
【0094】
この連結用板材119により一方のテンポラリシリンダ10と他方のテンポラリシリンダ10とを連結するときには、まず、第2欠損部119bを一方のテンポラリシリンダ10のシリンダ本体20から突出した突起部30に嵌め込む。次に、他方のテンポラリシリンダ10の突起部30が挿通する第2欠損部119bの位置を、長手方向に沿ってずらしながら、連結用板材119を回転させて、第1欠損部119aを、支持部である突起部30に挿通させる。
これにより、第1欠損部119aが一方のテンポラリシリンダ10の突起部30に引っ掛けられて支持され、第2欠損部119bが他方のテンポラリシリンダ10の突起部30に載置されて担持される。
【0095】
そして、固定用レジンにて、突起部30と連結用板材119の接続部分を含む範囲を固定する。このようにして、連結用板材119によりテンポラリシリンダ10,10を連結することができる。連結用板材119によりしっかりとテンポラリシリンダ10,10を連結することができるため、確実にテンポラリシリンダ10,10の位置関係を固定することができる。
【0096】
図15(B)に示す連結用板材120は、一方のテンポラリシリンダ10と他方のテンポラリシリンダ10とを連結している。
連結用板材120には、第1欠損部120aと、第2欠損部120bとが形成されている。第1欠損部120a(欠損部)は、一端部側に、短手方向に沿って形成された切り欠き部である。第2欠損部120bは、他端部から中央部まで、連結用板材119の長手方向に沿って形成された長孔である。
【0097】
この連結用板材120により一方のテンポラリシリンダ10と他方のテンポラリシリンダ10とを連結するときには、
図15(A)に示す連結用板材119と同様の操作で行うことができる。
これにより、第1欠損部120が一方のテンポラリシリンダ10の突起部30に引っ掛けられて支持され、第2欠損部120bが他方のテンポラリシリンダ10の突起部30に載置されて担持される。
このような連結用板材120としても、しっかりとテンポラリシリンダ10,10を連結することができるため、確実にテンポラリシリンダ10,10の位置関係を固定することができる。
【0098】
なお、本実施の形態では、テンポラリシリンダ10,10を連結用板材119,120により連結する手順として、第1欠損部119a,120aを先に取り付け、その後に、第2欠損部119b,120bを取り付けているが、反対の手順としてもよい。
その場合には、第1欠損部119a,120aは、突起部30の先端部から基端部に向かって差し込むようにして取り付ける。
【0099】
また、本実施の形態では、第1欠損部119a,120aが連結用板材119,120の長手方向に沿って形成され、第2欠損部119b,120bが短手方向に沿って形成され、開口部を有している。しかし、第1欠損部および第2欠損部は、両端部に、突出部の位置に対応させて設けられた円形状の貫通孔とすることもできる。
【0100】
図15(C)に示す連結用板材121は、一方のテンポラリシリンダ10と他方のテンポラリシリンダ10を連結している。
連結用板材121には、第1欠損部121aと、第2欠損部121bとが形成されている。第1欠損部121a(欠損部)は、一端部側に、短手方向に沿って形成された切り欠き部である。第2欠損部121bは、他端部から中央部まで、連結方向と直交する連結用板材121の板幅方向で、第1欠損部121aが開口した側の半分が除去された切り欠き部である。第2欠損部121bの幅方向における切り欠き位置は、第1欠損部121aの切り欠き位置と同じ位置である。
【0101】
この連結用板材121により一方のテンポラリシリンダ10と他方のテンポラリシリンダ10とを連結するときには、まず、第1欠損部121aを一方のテンポラリシリンダ10のシリンダ本体20から突出した突起部30に挿通させる。次に、突起部30に挿通させた第1欠損部121aを中心に連結用板材121を回転させて、他方のテンポラリシリンダ10の支持部である突起部30に載置する。
これにより、第1欠損部121aが一方のテンポラリシリンダ10の突起部30に引っ掛けられて支持され、第2欠損部121bが他方のテンポラリシリンダ10の突起部30に載置されて担持される。
【0102】
そして、固定用レジンにて、突起部30と連結用板材121の接続部分を含む範囲を固定する。このようにして、連結用板材121によりテンポラリシリンダ10,10を連結することができる。
【0103】
図15(C)では、連結用板材121に第2欠損部121bが形成されているため、他方のテンポラリシリンダ10の突起部30に連結用板材121を載置したときに、連結用板材121を水平とすることができる。しかし、連結用板材121が傾斜した状態となってもよければ、第2欠損部121bは省略することができる。
【0104】
なお、3本以上のテンポラリシリンダを連結用部材で連結するときには、最初のテンポラリシリンダと2番目のテンポラリシリンダとを連結し、次に2番目のテンポラリシリンダと3番目のテンポラリシリンダとを連結していくように、1本ずつずらしながら上記操作を行って連結部材で連結することで、3本以上のテンポラリシリンダを連結することが可能である。