(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の太陽電池付き時計では、遮蔽シートを配置することによって、太陽電池の切り欠き部にもセルが存在しているかのように見せている。かかる技術により、太陽電池が存在する領域と存在しない領域との間の色の差は、相当程度解消される。しかしながら、太陽電池の色には個体差があり、太陽電池と遮蔽シートの色を厳密に合わせることは難しく、太陽電池が存在する領域と存在しない領域の境界が、なお視認されてしまう事態が懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、太陽電池が存在する領域と存在しない領域の境界の視認性を低減させた太陽電池付き時計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0008】
(1)文字板と、前記文字板の裏側の一部に配置される太陽電池と、前記太陽電池の裏側であって、少なくとも前記太陽電池が配置されない領域を覆う遮蔽部材と、前記文字板と前記太陽電池との間に配置されるシートと、前記文字板と前記シートとの間に設けられ、前記太陽電池が存在する領域と存在しない領域とを覆う艶消し面又は艶消し層と、を有する太陽電池付き時計。
【0009】
(2)(1)において、前記艶消し面又は艶消し層は、少なくとも前記シートの表面に設けられる太陽電池付き時計。
【0010】
(3)(1)又は(2)において、前記艶消し面又は艶消し層は、表面又は裏面が凹凸面である太陽電池付き時計。
【0011】
(4)(1)乃至(3)において、前記艶消し層は、有色透明の層を含む太陽電池付き時計。
【0012】
(5)(1)乃至(4)において、前記遮蔽部材の色は、前記太陽電池の受光面の色よりも暗い太陽電池付き時計。
【0013】
(6)(1)乃至(5)において、前記シートは、前記文字板よりも厚い太陽電池付き時計。
【0014】
(7)(1)乃至(6)において、前記文字板は、表面に凹凸模様を有し、前記凹凸模様の一部は、平面視において、前記太陽電池が存在する領域と存在しない領域の境界に沿う太陽電池付き時計。
【0015】
(8)(1)乃至(7)において、平面視において、前記太陽電池が存在する領域と存在しない領域の境界を延長した線に沿う模様又は形状を有する装飾部材をさらに有する太陽電池付き時計。
【0016】
(9)(1)乃至(8)において、平面視において前記太陽電池と重ならない領域に配置され、時刻情報を含む電波を受信するアンテナをさらに有する太陽電池付き時計。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の(1)の側面によれば、太陽電池が存在する領域と存在しない領域の境界の視認性を低減させた太陽電池付き時計が得られる。
【0018】
また、上記本発明の(2)の側面によれば、太陽電池の受光面と離間した位置において光が一様に不規則に散乱される太陽電池付き時計が得られる。
【0019】
また、上記本発明の(3)の側面によれば、太陽電池が存在する領域と存在しない領域の境界が不明瞭に視認される太陽電池付き時計が得られる。
【0020】
また、上記本発明の(4)の側面によれば、太陽電池が存在する領域の色及び存在しない領域の色の明度がより低下した太陽電池付き時計が得られる。
【0021】
また、上記本発明の(5)の側面によれば、太陽電池が存在しない領域にも太陽電池が設けられているかのように視認される太陽電池付き時計が得られる。
【0022】
また、上記本発明の(6)の側面によれば、太陽電池の受光面と、艶消し面又は艶消し層とが離間した太陽電池付き時計が得られる。
【0023】
また、上記本発明の(7)の側面によれば、太陽電池が存在する領域の色と存在しない領域の色の差が小さく錯視される太陽電池付き時計が得られる。
【0024】
また、上記本発明の(8)の側面によれば、太陽電池が存在する領域の色と存在しない領域の色の差が小さく錯視される太陽電池付き時計が得られる。
【0025】
また、上記本発明の(9)の側面によれば、時刻情報を含む電波により時刻修正を行う太陽電池付き時計が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る衛星電波腕時計1を示す平面図である。同図には、衛星電波腕時計の外装(時計ケース)である胴10、胴10内に配置された文字板14と時刻を示す指針である時針15、分針16、秒針17が示されている。また、胴10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うための竜頭13、ボタン12が配置されている。胴10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。
【0029】
なお、同図に示した衛星電波腕時計1のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴10を丸型でなく角型にしてもよいし、竜頭13やボタン12の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針15、分針16、秒針17の3本としているが、これに限定されず、秒針17を省略しても、あるいは、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電波の受信状態や電池の残量、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよい。
【0030】
なお、本明細書では、衛星電波腕時計という用語を、腕時計であって、かつ、GPS衛星などの日付や時刻に関する情報を含む衛星信号を送信する衛星から当該衛星信号を受信し、それに含まれる日付や時刻に関する情報、すなわち基準情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している腕時計を指すものとして用いる。但し、本発明は衛星電波腕時計に限らず、一般的な標準電波を受信して内部時刻を修正する電波腕時計にも適用してよいし、こうした時刻修正機能を備えない腕時計に適用してもよい。さらに、腕時計だけでなく、置き時計や掛け時計に適用してもよい。
【0031】
なお、衛星電波腕時計1では、文字板14を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防が胴10に取り付けられている。また、風防の反対側においては裏蓋が胴10に取り付けられている。本明細書では、以降、衛星電波腕時計1の風防が配置される方向(
図1における紙面手前方向)を表側、裏蓋が配置される方向(
図1における紙面奥方
向)を裏側と呼ぶ。
【0032】
文字板2の裏側には、太陽電池30が配置され、表側から入光した光により発電がなされる。そのため、文字板14はある程度光線を透過する材質で形成される。詳細は後程説明するが、
図2に示されるように太陽電池30は概略円形をなし、10時方向から2時方向が扇状に切り欠かれている。そして、文字板14の裏側において、この切り欠かれた部分(太陽電池30が存在しない領域)に衛星信号を受信するためのパッチアンテナ20が配置されている。また、詳細は後程説明するが、
図4に示すように、パッチアンテナ20は、表側の面が衛星からの電波を受信する受信面20aとなっている。パッチアンテナ20の受信面20a、太陽電池30の受光面、文字板14は、互いに平行に設けられており、いずれも表側を向いている。
【0033】
ところで、一般に長波帯を用いて地上局から送信される標準電波を用いて時刻修正を行う電波時計では、フェライトあるいはアモルファス合金等の磁芯にコイルを巻いた形式のいわゆるバーアンテナが用いられることが多い。これに対し、本実施形態に係る衛星電波腕時計1では、はるかに周波数の高いUHF帯を用いて衛星から送信される信号を受信する。そのため、UHF帯の信号の受信に適した小型のアンテナとして、パッチアンテナ20を用いている。そして、衛星信号は高周波であるので、太陽電池30の電極がパッチアンテナ20の表側に配置されると、著しくその受信感度が低下する。そこで、上記のように太陽電池30の一部に切り欠き部を形成し、そこにパッチアンテナ20を配置して、受信面20aの上方、すなわち表側に太陽電池30の電極が配置されないようにしている。なお、パッチアンテナ20に代えて、チップアンテナや逆Fアンテナを採用してもよい。
【0034】
その他、衛星電波腕時計1の胴10の内部には、指針を駆動するための機構(ムーブメント)、太陽電池30で発電された電力を蓄積する蓄電池、衛星電波腕時計1の動作制御のためのコントローラ、受信した衛星信号を処理する受信回路などが収容されている。
【0035】
なお、文字板14は胴10の表側の開口よりも広く、その周縁部を胴10が覆っている。このため、文字板14は、胴10の開口の輪郭線(見切り線)Xよりも内側の領域(露出領域)のみが風防を介して外部から見えるようになっており、輪郭線Xよりも外側の領域(非露出領域)は胴10により隠されて外部から見えない。
【0036】
図2は、衛星電波腕時計1の胴10の内部に収容される太陽電池30を示す平面図である。
図3は、衛星電波腕時計1の胴10の内部に収容される遮蔽部材40を示す平面図である。さらに、
図4は、太陽電池30及びパッチアンテナ20が隣接する領域を中心に示す衛星電波腕時計1の部分断面図である。
【0037】
図2に示すように、太陽電池30は、10時方向から2時方向を扇状に切り欠いた形状を有する基板30bを備えている。
図2に示す例では、切り欠き部30cのなす角度は120°である。上述したように、切り欠き部30cの内側領域(太陽電池30が存在しない領域、非配置領域と呼ぶ。)には、受信面20aが風防側を向くようにしてパッチアンテナ20が配置される。切り欠き部30cのなす角度は、パッチアンテナ20が収容できる角度であればどのようなものであっても構わない。但し、後述するように、文字板14や文字板14の上に配置される装飾部材に設けられる模様と、切り欠き部30cの辺とが平面視において重なることが好ましい。なお、太陽電池30が存在しない領域を非配置領域と呼ぶのに対して、太陽電池30が存在する領域を配置領域と呼ぶ。
【0038】
基板30bの周縁には互いに離間した位置に複数の係合部(凹凸形状)が設けられており、これら係合部が胴10自体或いは胴10の内部に収容される図示しない枠体であるソーラーセル支持枠に係合している。これにより、基板30bは衛星電波腕時計1内で回動不能に支持される。なお、これら係合部は上記輪郭線Xよりも外側に形成されており、文字板14の表側からは透けて見えないようになっている。さらに、太陽電池30の中央には指針軸を挿通するための開口が形成されており、表面には半導体薄膜及び電極を備えた発電単位であるセル30aが複数形成されている。
【0039】
遮蔽部材40は太陽電池30の裏側に配置され、太陽電池30の切り欠き部30cを遮蔽するものである。遮蔽部材40の色は、素材(例えば樹脂)自体の色であってよいし、他の色の部材の表面を着色してもよい。この着色は、任意の不透明塗料による塗膜であってもよいし、太陽電池30のセル30aを構成する層から電極として機能する導電層を除いた半導体層としてもよく、さらにその両者を積層するようにしてもよい。着色を塗膜とした場合には遮蔽部材40の製造が安価かつ容易であるのに対し、着色を半導体層とした場合には、着色とセル30aの色や質感を合わせやすい利点がある。半導体層である着色に、微調整のためさらに塗膜を追加してもよい。なお、着色を半導体層とした場合に導電層を除く理由は、パッチアンテナ20による衛星からの電波の受信に影響を与えないようにするためである。また、着色を半導体層とする場合には、セル30aの半導体層として用いられるPIN層(P層とN層の間に真正半導体層であるI層を介在させた形式のPINダイオードの層)を半導体層として用いてよいが、これに替え、I層、若しくはP層又はN層のいずれかのみを用いて半導体層としてもよい。遮蔽部材40は、その色や質感のみセル30aと近似していればよく、太陽電池30としての機能は必要ないからである。
【0040】
遮蔽部材40の色は、太陽電池30の受光面の色と同一にすることが困難であるため、太陽電池30の受光面の色よりも暗いことが望ましい。具体的には、遮蔽部材40の色は、セル30a又は基板30bの色よりも暗いことが望ましい。遮蔽部材40の色が太陽電池30の受光面の色より暗い場合は、そうでない場合と比較して、文字板14の表側から見て非配置領域にもセル30a又は基板30bが存在しているように見せやすい。ここで、色が暗いとは、例えば、色を表す方法としてマンセル表色系を採用する場合においては、色の明度が低いことを意味するものとしてよい。遮蔽部材40と太陽電池30との境界は外観上判別困難であることが望ましいため、遮蔽部材40の色相及び彩度は、セル30a又は基板30bの色相及び彩度と近いことが望ましい。また、他の例として、色を表す方法としてCIExyY表色系を採用する場合には、色が暗いとは、視感反射率Yの値が小さいことを意味するものとしてよい。CIExyY表色系を採用する場合、遮蔽部材40が有するx及びyの値は、セル30a又は基板30bが有するx及びyの値に近いことが望ましい。
【0041】
なお、遮蔽部材40の着色は、遮蔽部材40の表面のうち非配置領域に施せば十分である。しかし、遮蔽部材40の全面に着色することにより、遮蔽部材40及び太陽電池30の位置を精密に合わせなくとも、パッチアンテナ20が遮蔽されることになる。そのため、遮蔽部材40の全面に着色する場合には、より簡単な組み立て工程で、配置領域と非配置領域との境界の視認性を低減させた太陽電池付き時計1が得られる。また、遮蔽部材40の別の構成として、遮蔽部材40を太陽電池30の表側に配置して、透明部材で形成したシートのうち非配置領域を覆う領域のみを着色することも考えられる。この場合は、太陽電池30に対して、遮蔽部材40を精密に位置合わせする必要があるため、好ましくない。
【0042】
遮蔽部材40の周縁にも互いに離間した位置に複数の係合部(凹凸形状)が設けられており、これら係合部が胴10自体或いは胴10の内部に収容される図示しないソーラーセル支持枠に係合している。これにより遮蔽部材40も衛星電波腕時計1内で回動不能に支持される。これら係合部も輪郭線Xより外側に形成されている。
【0043】
本実施形態において、遮蔽部材40は一枚のシートであるが、遮蔽部材40はシート状でなくてもよい。例えば、胴10の内部に収容される枠体であるソーラーセル支持枠の表面を塗膜面等として、ソーラーセル支持枠の上に太陽電池30を配置することとしてもよい。その場合、ソーラーセル支持枠の裏面側或いは内部にパッチアンテナ20が配置されることとなる。そのような場合であっても、ソーラーセル支持枠の表面の色を太陽電池30の受光面の色よりも暗くすることによって、非配置領域にもセル30a又は基板30bが存在しているように見せることができる。
【0044】
図4に示すように、文字板14と太陽電池30との間にはシート50が配置される。シート50の表面には艶消し層60が設けられる。太陽電池30の受光面に外光を当てるため、シート50及び艶消し層60は、ある程度光線を透過する材質で形成される。
【0045】
艶消し層60は、表側に凹凸面を有することにより、光を拡散する層である。ここで、シート50が厚みを有することにより、艶消し層60と太陽電池30の受光面との間の距離が保たれる。そして、文字板14側から入射し、太陽電池30の受光面で反射して文字板14側に戻る光、及び遮蔽部材40の表面で反射して文字板14側に戻る光が、艶消し層60で一様に不規則に拡散されるようになる。そのため、文字板14側から観察した場合に、配置領域と非配置領域との境界が不明瞭となり、いわゆるマッハ効果が抑制されるため、配置領域と非配置領域間の色の差異がほとんど視認されなくなる。
【0046】
これに対し、仮に、艶消し層60がシート50の裏面に形成される等により、太陽電池30を構成するセル30aの表面と艶消し層60とが離間せずに接する場合は、艶消し層60がセル30aと接触する領域と、艶消し層60が遮蔽部材40と離間する領域とで、艶消し層60による光の散乱状態に差異が生じる。そのため、両領域において光の散乱状態が一様ではなくなり、配置領域と非配置領域間の色の差異が目立ってしまう。これは、艶消し層60の裏面側に部材が接する領域では、艶消し層60の裏面の凸部から空間を経ずにその部材に光が入射するのに対し、艶消し層60の裏面に部材が接しない領域では、艶消し層60の裏面全体から空間内に光が放射されるため、両者で光の経路に大きな差異が生じることによる。
【0047】
艶消し層60は、太陽電池30の発電に必要な光量を透過する材質であれば、有色であってよい。艶消し層60を有色透明とする場合、艶消し層60の色は、セル30a及び基板30bの色よりも黒いことが望ましい。ここで、色が黒いとは、例えば、色を表す方法としてマンセル表色系を採用する場合においては、色の彩度が低いことを意味するものとしてよい。また、例えば、色を表す方法としてCIExyY表色系を採用する場合には、色が黒いとは、x=1/3、かつy=1/3の点で表される色により近いことを意味するものとしてよい。x=1/3、かつy=1/3の点は一般に無彩色であることを表す。
【0048】
艶消し層60が有色透明であれば、文字板14側から観察した場合に、配置領域と非配置領域間の色の差異がより低下して視認される。すなわち、太陽電池30の個体差により太陽電池30と遮蔽部材40との間に色や質感の差異が生じた場合にも、共通の艶消し層60を通して見ることにより、両者の差異がより知覚されにくくなるのである。なお、艶消し層60は、その表面に直接塗料を塗布しないことが望ましい。なぜなら、艶消し層60の表面に塗料が塗布されると、艶消し層60の表面に設けられた凹凸面の凹部が、塗料によって埋められて、塗料が有する屈折率などの光学特性に応じて凹凸面による光拡散効果が低下するからである。なお、艶消し層60の表面側に塗料によって有色層を設ける場合は、艶消し層60に直接塗料を塗布するのではなく、後述する第3の変形例のように、文字板14側に塗料を塗布して有色層を形成することで、この問題が解消される。また、本実施例において、艶消し層60を透明とし、シート50を有色透明としても良い。
【0049】
本実施形態のように、太陽電池30の裏面側に遮蔽部材40を配置することにより、これらの位置合わせを容易にした構成では、配置領域と非配置領域に高さの違いが生じる。そのような構成であっても、艶消し層60をシート50の表面に形成して、配置領域及び非配置領域から離間して配置することにより、これらの領域で光拡散効果が一様に発揮され、これらの領域の色の差異を目立たなくすることができる。
【0050】
図5は、第1の変形例に係る衛星電波腕時計1のうち、太陽電池30及びパッチアンテナ20が隣接する領域を中心に示す部分断面図である。第1の変形例では、文字板14の裏面に第1艶消し層61が設けられ、シート50の表面に第2艶消し層62が設けられる。第1艶消し層61の裏面と、第2艶消し層62の表面とには、それぞれ凹凸面が設けられる。このように、艶消し層を2層とすることで、文字板14側から入射し、太陽電池30の受光面で反射する光がより強く拡散されることとなり、配置領域と非配置領域との境界の視認性がより低下する。第1の変形例において、第1艶消し層61及び第2艶消し層62のいずれか一方を有色透明としてもよいし、両方を有色透明としてもよい。また、第2艶消し層62を設けず、第1艶消し層61のみを設ける構成としてもよい。
【0051】
図6は、第2の変形例に係る衛星電波腕時計1のうち、太陽電池30及びパッチアンテナ20が隣接する領域を中心に示す部分断面図である。第2の変形例における第1艶消し層61は、第1有色層61aと第1艶消し層61bとが、この順で文字板14の裏面に積層されて形成されている。また、第2艶消し層62は、第2有色層62aと第2艶消し層62bとが、この順でシート50の表面に積層されて形成されている。ここで、第1艶消し層61bと第2艶消し層62bは対向して設けられ、それぞれ凹凸面が対向するよう配置されている。すなわち、第1艶消し層61bの裏面と、第2艶消し層62bの表面とは、凹凸面である。第1有色層61a及び第2有色層62aは有色透明の層であり、光線を透過する程度の厚み及び色を有する塗膜であってよい。また、第1艶消し層61b及び第2艶消し層62bは、透明であってよい。第2の変形例の場合、第1有色層61a及び第2有色層62aの厚み及び色を調整することで第1艶消し層61及び第2艶消し層62の透過率を調整することができる。そのため、第1艶消し層61b及び第2艶消し層62bの厚みを精密に調整しなくとも、所望の透過率が得られるという利点がある。なお、第1艶消し層61及び第2艶消し層62は、いずれか一方が設けられていればよい。
【0052】
仮に、第1艶消し層61bや第1有色層61aを、第2艶消し層62bの表面に直接形成すると、第2艶消し層62bの表面に設けられた凹凸面の凹部が第1艶消し層61bで埋められ、さらに、第1艶消し層61bの表面に設けられた凹凸面の凹部が第1有色層61aで埋められることにより、これらの艶消し層の光拡散効果が低下することとなる。これに対し、
図6に示したように、これらの層をシート50の表面と文字板14の裏面に形成して対向させることにより、それぞれの艶消し層の表面が凹凸を維持し、光拡散効果が低下しない。そして、文字板14の裏面に第1艶消し層61bを形成することにより、
図10に示すような、光沢面の凹凸模様を文字板10の表面に形成することができる。
【0053】
図7は、第3の変形例に係る衛星電波腕時計1のうち、太陽電池30及びパッチアンテナ20が隣接する領域を中心に示す部分断面図である。第3の変形例では、文字板14の裏面に有色層63が設けられ、シート50の表面に透明艶消し層64が設けられる。有色層63は有色透明の層であり、光線を透過する程度の厚み及び色を有する塗膜であってよい。第3の変形例では、有色層63の厚み及び色により、文字板14側から入射する光の透過率を調整することができる。そのため、文字板14側で視認される、太陽電池30の受光面の色及び遮蔽部材40の色の明度を有色層63の厚み及び色により調整することができる。また、透明艶消し層64により、文字板14側から入射する光、及び太陽電池30の受光面で反射して文字板14側に戻る光を一様に不規則に拡散することができる。そのため、配置領域と非配置領域間との境界の視認性が低下する。なお、文字板14の裏面に透明艶消し層64を設け、シート50の表面に有色層63を設けることとしてもよいし、シート50の表面に有色層63を設け、有色層63の表面に艶消し層64を設けても良い。
【0054】
図8は、第4の変形例に係る衛星電波腕時計1のうち、太陽電池30及びパッチアンテナ20が隣接する領域を中心に示す部分断面図である。第4の変形例では、有色シート51の表面に艶消し面65が設けられる。艶消し面65は、有色シート51の表面に直接微細な凹凸を形成した粗面によって構成される。有色シート51が厚みを持つことにより、艶消し面65は、太陽電池30の受光面から離間して設けられる。艶消し面65は凹凸面であり、文字板14側から入射した光、及び太陽電池30の受光面で反射して文字板14側に戻る光を一様に不規則に拡散する。そのため、配置領域と非配置領域との境界の視認性が低下する。有色シート51は、有色透明な材質で形成されるシートであり、その透過率は文字板14よりも低い。第4の変形例では、有色シート51の厚み及び色により、文字板14側から入射する光の透過率を調整することができる。そのため、文字板14側で視認される、太陽電池30の受光面の色及び遮蔽部材40の色の明度を有色シート51の厚み及び色により調整することができる。なお、艶消し面65を、
図4等に示した艶消し層で構成しても良い。
【0055】
図9は、第5の変形例に係る衛星電波腕時計1のうち、太陽電池30及びパッチアンテナ20が隣接する領域を中心に示す部分断面図である。第5の変形例における文字板14の厚みはw1であり、シート50の厚みはw2である。ここで、w1<w2であり、第5の変形例に係るシート50は、文字板14よりも厚い。一般的に、腕時計の胴の内部に配置することのできる部品の総厚みは、胴の厚さによって制限される。そして、胴の内部の空間のうちほとんどは、ムーブメント、蓄電池、パッチアンテナ、及び受信回路等によって占められる。その結果、文字板14及びシート50の総厚みは、数百μm程度に制限される場合がある。ここで、文字板14側から入射し、太陽電池30の受光面で反射して文字板14側に戻る光、及び遮蔽部材40の表面で反射して文字板14側に戻る光をより強く散乱させるためには、艶消し層60の凹凸面から太陽電池30の受光面までの距離を大きく取る必要がある。第5の例では、シート50の厚みを文字板14の厚みより厚くすることによって、艶消し層60から太陽電池30の受光面までの距離を大きくすることができる。これにより、文字板14及びシート50の総厚み(おおよそw1+w2)が所定の値に制限される場合であっても、配置領域と非配置領域との境界の視認性が低下する。
【0056】
なお、艶消し層60等は、光を反射、又は屈折する微粒子を含む層によって形成してもよい。例えば、球状透明の微粒子を含む層を艶消し層60として用いることができる。その場合であっても、文字板14側から入射した光は艶消し層60等によって一様に不規則に散乱され、太陽電池30の受光面で反射して文字板14側に戻る光、及び遮蔽部材40の表面で反射して文字板14側に戻る光も艶消し層60等によって一様に不規則に散乱されることになる。艶消し層60等の構成がいかなるものであっても、入射した光を一様に不規則に散乱するものであれば、配置領域と非配置領域との境界の視認性が低下する。
【0057】
図10は、第6の変形例に係る衛星電波腕時計1を示す平面図である。第6の変形例に係る文字板14の表面には、指針の回転軸を中心として放射状に拡がる凹凸模様70が施されている。凹凸模様70の一部は、平面視において、太陽電池30が存在する領域と存在しない領域の境界に沿って形成される。また、第6の変形例に係る衛星電波腕時計1は、文字板14の上に装飾部材80が設けられている。装飾部材80は、文字板14に直接貼り付けられていてもよいし、胴10により文字板14とともに挟み込まれるようにして固定されていてもよい。装飾部材80には、指針の回転軸を中心とする放射線に重なる装飾部材模様82が施されている。装飾部材模様82の一部は、平面視において、太陽電池30が存在する領域と存在しない領域の境界を延長した線に沿って形成される。
【0058】
凹凸模様70は、平面視において、太陽電池30が存在する領域と存在しない領域との境界に沿って形成されることによって、配置領域の色と、非配置領域の色との差を視認しづらくするという錯視効果を発揮する。特に、本例における凹凸模様70のうち、指針の回転軸から10時方向に伸びる模様と、指針の回転軸から2時方向に伸びる模様とは、平面視において、配置領域と非配置領域との境界に重なる。そのような模様は、遮蔽部材40と太陽電池30との境界を覆い、遮蔽部材40と太陽電池30との色の差を小さく視認させる錯視効果が最も大きい模様となる。なお、凹凸模様70を形成する間隔は
図10で示した例と異なっていてもよい。また、太陽電池30の切り欠き部30cが扇状以外の形状である場合、文字板14の表面に当該形状に沿った凹凸模様を形成することとしてよい。なお、凹凸模様70は、艶消し層60とは異なり、光を反射しやすい文字板14の表側の光沢面に形成することが望ましい。その場合、放射状に光の線が視認され、遮蔽部材40と太陽電池30との色の差を小さく視認させる錯視効果が発揮される。
【0059】
装飾部材模様82は、平面視において、太陽電池30が存在する領域と存在しない領域との境界の延長線に重なるように形成されることによって、配置領域の色と、非配置領域の色との差を視認しづらくするという錯視効果を発揮する。特に、本例における装飾部材模様82のうち、10時方向に形成される模様と、2時方向に形成される模様とが、大きな錯視効果を発揮する。また、装飾部材模様82が、文字板14の表面に形成された凹凸模様70の延長線と重なるように形成される場合に、より強い錯視効果が発揮される。凹凸模様70と装飾部材模様82とが、遮蔽部材40と太陽電池30との境界を覆う一本の線として視認され、遮蔽部材40と太陽電池30との色の差がより小さく錯視されるためである。なお、装飾部材模様82は、立体的形状によって形成されるものであってもよい。例えば、装飾部材80の円周方向に周期的な段差を設けて模様としてもよい。
【0060】
また、文字板14の上に装飾部材80を設けず、太陽電池30がベゼルの内周付近まで位置して、太陽電池30とベゼルが近接する場合に、ベゼルの表面に装飾部材模様82と同様な模様を設けてベゼルを装飾部材とし、遮蔽部材40と太陽電池30との色の差を小さく視認させてもよい。さらに、文字板14の上に装飾部材80を設け、かつ、ベゼルの表面に装飾部材模様82と同様な模様を設けることとしてもよい。その場合、装飾部材模様82とベゼルの表面に設けられる模様の両方を、太陽電池30が存在する領域と存在しない領域との境界の延長線に重なるように形成し、遮蔽部材40と太陽電池30との色の差をより小さく視認させることが望ましい。
【0061】
本実施形態に係る太陽電池30の切り欠き部30cは、
図2に示すように扇状であり、切り欠き部30cのなす角度は、一例として120°である。太陽電池30が胴10内部に配置された状態においては、切り欠き部30cの辺は、10時方向及び2時方向に伸びる。そのため、例えば衛星電波腕時計1をカタログに掲載したり店頭に展示したりする場合に、
図1に示すように指針を10時9分35秒の位置に合わせる等することで、時針15と分針16とを、太陽電池30が存在する領域と、存在しない領域との境界に重ねることができる。従って、展示状態において、遮蔽部材40と太陽電池30との境界に指針を重ねることができ、配置領域の色と非配置領域の色の差を視認しづらくすることができる。一般に、腕時計は、時計の針が10時8分〜9分付近を示す位置で、時計がカタログに掲載されたり展示されたりすることが多いため、12時位置を中心として、切り欠き部30cのなす角度を約120°に形成することにより、配置領域の色と非配置領域の色の差を視認しづらくすることができる。