(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気ガスに含まれるNOx量は、エンジンの運転状態の変化とともに変化する。そのため、オゾン発生器は、エンジンの運転状態の変化にオゾンの添加量が追従すること、すなわち、エンジンの運転状態の変化に対するオゾン発生量の応答性が高いことが好ましい。一方で、無声放電方式のオゾン発生器においてオゾン発生量に高い応答性を得ることは困難であるため、NOx量が高い増加率の下で増加するエンジンの過渡状態においては、エンジンの運転状態が定常状態であるときと比べてNOx低減率が低い。
【0005】
本発明は、エンジンの過渡状態におけるNOx低減率を高めることが可能なオゾン発生量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するオゾン発生量制御装置において、エンジンからの排気ガスにおいてNOx量に対するNO
2量の比率がモル比であり、オゾン添加ノズルの後段に位置する選択還元型触媒にてNOxの還元に適した前記モル比が最適比であり、前記最適比よりも大きく、かつ、1以下の前記モル比が最大比であり、前記オゾン添加ノズルの前段における前記モル比が前段比であり、前記オゾン添加ノズルの後段、かつ、前記選択還元型触媒の前段における前記モル比が後段比である。そして、このオゾン発生量制御装置は、オゾン発生器が一度に発生するオゾン量の目標値の設定を繰り返す設定部であって、前記後段比を前記最大比まで上げるオゾン量を前記目標値とする前記設定部と、前記設定部による今回の設定と前記設定部による次回の設定との間に前記前段比の取得を繰り返し、前記前段比を取得するごとに、前記後段比を前記最適比まで上げるオゾン量の残余の有無を前記前段比に基づいて判定する判定部と、を備え、前記設定部は、前記今回の設定後に前記オゾン量の残余が無いと前記判定部が判定したときに前記次回の設定を行う。
【0007】
上記構成によれば、後段比を最適比まで上げるオゾン量の残余の有無が前段比に基づいて予め判定され、こうしたオゾン量の残余が無いと判定されたときに、後段比を最大比まで上げるオゾン量が目標量として設定される。それゆえに、NOx量が高い増加率の下で増加するエンジンの過渡状態においても、後段比を最適比に上げることに際してオゾン量が不足することを抑えられる。結果として、後段比が最適比に向けて高められてNOxの低減率が高められる。
【0008】
上記オゾン発生量制御装置にて、前記判定部は、前記オゾン添加ノズルの後段、かつ、前記選択還元型触媒の前段における今回の設定直後のオゾン量を今回の設定時における前記前段比に基づいて開始量として推定し、今回の設定以降、前記前段比を取得するごとに前記前段比に基づく予定消費量を推定し、前記予定消費量は、前記最適比と前記前段比との差に前記NOx量を乗算した値であり、今回の設定以降、前回の取得時までの前記予定消費量の積算値を前記開始量から減算した値であるオゾンの残量が、今回の取得時における前記予定消費量よりも小さいときに、前記オゾン量の残余が無いと判定してもよい。
【0009】
上記構成によれば、今回の設定直後のオゾン量が今回の設定時における前段比に基づいて開始量として推定され、今回の設定以降におけるオゾンの予定消費量もまた前段比に基づいて推定される。そして、これら前段比に基づく値の差分からオゾンの残量が推定される、すなわち、予定消費量の積算値を開始量から減算した値がオゾンの残量として推定されるため、オゾン量の残余の有無の判定の精度が高められる。
【0010】
上記オゾン発生量制御装置において、今回の取得時における前記前段比と前記最大比との差に前記NOx量を乗算した値が第1設定値であり、前記設定部は、初回の設定における前記目標値に前記第1設定値を設定することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、初回の設定における目標値の演算は、前段比とNOx量との取得によって可能となる。
上記オゾン発生量制御装置において、前記第1設定値から前記オゾンの残量を減算した値が第2設定値であり、前記設定部は、前記オゾン量の残余が無いと前記判定部が判定したときに前記目標値に前記第2設定値を設定することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、次回以降の目標値の設定において設定時におけるオゾンの残量が加味されるため、後段比を最大比に上げるためのオゾン量の添加の精度が高まる。
上記オゾン発生量制御装置において、前記設定部は、選択還元型触媒の温度が活性温度よりも低い温度であるときに前記目標値を設定することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、触媒温度が活性温度よりも低い温度である場合にオゾンが添加されるため、選択還元型触媒が活性温度に到達する前の期間においてNOxが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図5を参照して、オゾン発生量制御装置の一実施形態を説明する。まず、オゾン発生装置が搭載される排気浄化システムについて説明する。
図1に示されるように、排気浄化システム20は、エンジン10の排気通路11の途中に配設された各種触媒と、排気通路11を流れる排気ガスに対して各種添加剤を添加する装置とを備える。
【0016】
ディーゼル酸化触媒21は、エンジン10の排気通路11に配設されたタービン12の下流に位置する。ディーゼル酸化触媒21に流入する排気ガスにおける窒素酸化物(NOx)の大部分は一酸化窒素(NO)である。ディーゼル酸化触媒21は、排気ガスに含まれる炭化水素や一酸化炭素を酸化して水や二酸化炭素に変換するとともに、排気ガスに含まれるNOの一部を酸化して二酸化窒素(NO
2)に変換する。ディーゼル酸化触媒21にてNO
2に変換されるNOの量は、ディーゼル酸化触媒21の活性度と、NOxがディーゼル酸化触媒21の通過に要する時間とに依存する。ディーゼル酸化触媒21を通過した排気ガスは、DPF22に流入する。
【0017】
DPF22は、排気ガスに含まれる粒子状物質を補足する。補足された粒子状物質は、DPF22に流入する排気ガスを昇温させることにより焼却される。DPF22を通過した排気ガスには、まず、オゾン発生装置30によって生成されたオゾンが排気ガスの状態に応じて添加されたのち、次いで、尿素水添加装置23によって尿素水が添加される。排気ガスに添加された尿素水は、排気ガスの熱や後述する選択還元型触媒25の熱によって加水分解されてアンモニアガスと二酸化炭素とに変換される。
【0018】
オゾン発生装置30は、空気を原料ガスとしてオゾンを発生させ、発生したオゾンと未反応ガスとを含むオゾンガスをオゾン添加ノズル24から排気ガスに添加する。排気ガスに含まれるNOは、オゾンによって酸化され、NO+O
3→NO
2+O
2で示される反応式に従ってNO
2に変換される。その後、NO
2やO
2を含む排気ガスは、選択還元型触媒25に流入する。この際に、ディーゼル酸化触媒21と選択還元型触媒25との間の配管内では、配管内に先に流入した排気ガスの一部と、配管内に後に流入した排気ガスの一部とが互いに混ざり合う。そのため、後続の排気ガスに含まれるNOの一部は、先行の排気ガスに添加されたオゾンの一部と反応する。
【0019】
選択還元型触媒25は、アンモニアとNOxとを反応させることでNOxを窒素と水とに還元する。アンモニア酸化触媒26は、選択還元型触媒25の下流に位置し、選択還元型触媒25を通過したアンモニアを酸化して窒素と水とに変換する。
【0020】
なお、エンジン10の吸気通路13には、エアクリーナー14とコンプレッサー15とを繋ぐ配管に、吸入空気量Qaを測定する吸入空気量センサー17が取り付けられている。また、エンジン10の排気通路11には、ディーゼル酸化触媒21を通過した排気ガスにおけるNOx濃度Cxを測定するNOx濃度センサー27、ディーゼル酸化触媒21を通過した排気ガスの温度である排気温度Texを測定する排気温度センサー28が取り付けられている。また、エンジン10は、クランクシャフト18の回転数であるエンジン回転数Neを測定する回転数センサー29を備える。
【0021】
排気温度Texは、ディーゼル酸化触媒21の温度に関わる温度であって、ディーゼル酸化触媒21の活性度に応じて変化する値である。また、吸入空気量Qaは、排気ガスがディーゼル酸化触媒21を通過することに要する時間に関わる値である。そのため、排気温度Tex、および、吸入空気量Qaから、ディーゼル酸化触媒21を通過した排気ガスについて、NOxに対するNO
2のモル比x(=NO
2/NOx)が推定される。モル比xが0.5であるとき、排気ガスに含まれるNOxは、互いに同じ量のNOとNO
2とを含み、モル比xが1であるとき、排気ガスに含まれるNOxは、NO
2のみである。なお、選択還元型触媒25においてNOx量が低下する度合いであるNOx低減率Rは、例えば、モル比xが0.5であるときに最も高い。以下では、選択還元型触媒にてNOxの還元に適したモル比xが最適比xiであり、最適比xiの一例として0.5を示す。
【0022】
オゾン発生装置30は、原料ガス生成部32と、オゾン発生器36と、オゾン発生量制御装置45と、を備える。原料ガス生成部32において、コンプレッサー33は、大気中の空気を圧縮して酸素を含む原料ガスを生成し、一定の供給量Qsの原料ガスをエアドライヤー34へ連続的に供給する。エアドライヤー34は、原料ガスに含まれる水分を除去し、原料ガスを乾燥させる。酸素富化膜35は、エアドライヤー34から供給される原料ガスから窒素を分離し、原料ガスの酸素濃度を高める。原料ガス生成部32は、大気よりも水分含有量が少なく、且つ、大気よりも酸素濃度の高いガスである原料ガスをオゾン発生器36に供給する。オゾン発生器36は、原料ガスからオゾンを生成し、オゾンと未反応ガスとを含むオゾンガスをオゾン添加ノズル24に供給する。オゾン発生器36で生成されたオゾンガスは、オゾン添加ノズル24から排気ガスに添加される。
【0023】
オゾン発生器36は、無声放電方式のオゾン発生器であり、電源37に接続されたワイヤ状の放電電極38と、放電電極38を取り囲むように位置して放電電極38に対して誘電体39を介して対向する接地電極40と、を備える。放電電極38と誘電体39との間の空間は、放電空間41である。電源37の出力は、振幅Emおよび周波数fを有する交流電圧Eである。電源37は、オゾン発生量制御装置45から交流電圧Eの振幅Emおよび周波数fを示す信号が入力されると、その交流電圧Eを放電電極38に印加する。オゾン発生量制御装置45は、交流電圧Eの振幅Emおよび周波数fを演算する。交流電圧Eの1つの例は、正弦波状の電圧である。また、交流電圧Eの他の例は、正極パルスと、正極パルスに対してオーバーシュートする反転パルスとを含むパルス状の電圧である。パルス状の電圧において、振幅Emは正極パルスのピーク値であり、周波数fはピーク値の周期の逆数である。
【0024】
オゾン発生量制御装置45は、CPU、ROM、およびRAMを有するマイクロコンピューターを中心に構成される。オゾン発生量制御装置45は、各種処理を実行する制御部46と、各種制御プログラムや各種データを格納する記憶部47と、を備える。
【0025】
制御部46は、吸入空気量センサー17の測定結果である吸入空気量Qa、NOx濃度センサー27の測定結果であるNOx濃度Cx、および、排気温度センサー28の測定結果である排気温度Texの各々を所定の周期ごとに取得する。制御部46は、回転数センサー29の測定結果であるエンジン回転数Neを所定の周期ごとに取得する。
【0026】
制御部46は、記憶部47に格納された各種制御プログラムに基づいて添加処理を実行する。添加処理において、制御部46は、排気温度Texが閾値Tex1以下であることを条件の1つとして、吸入空気量Qa、NOx濃度Cx、および、排気温度Texを、記憶部47が記憶するモル比マップ48に適用して、オゾン発生量の目標値Gztを演算する。閾値Tex1は、選択還元型触媒25の温度が活性温度未満であると推定される温度であり、例えば200℃である。そして、制御部46は、目標値Gztが演算される度に目標値Gztの分だけのオゾンが生成されるように電源37の出力を制御する。
【0027】
制御部46は、上記目標値Gztと記憶部47に記憶された電圧マップ49とに基づいて電源37の出力を制御する。電圧マップ49は、オゾン発生量の各々に対して交流電圧Eの振幅Emおよび周波数fが一義的に規定されたデータである。電圧マップ49は、予め測定されたオゾン発生量の測定値に基づくデータである。電圧マップ49においては、供給量Qsの原料ガスがオゾン発生器36に供給され、且つ、放電電極38に対して振幅Emおよび周波数fを有する交流電圧Eが所定の出力期間だけ印加され、このときのオゾン発生量の測定値に対し、そのときの振幅Emおよび周波数fが対応付けられている。
【0028】
制御部46は、目標値Gztに対応付けられた振幅Emおよび周波数fを電圧マップ49から選択する。制御部46は、選択された振幅Emおよび周波数fを有する交流電圧を出力期間だけ電源37に出力させるための出力制御信号を電源37に出力する。制御信号が入力された電源37は、放電電極38に対して出力期間だけ交流電圧Eを印加する。
【0029】
図2を参照して、目標値Gztを演算する演算ブロックについて詳しく説明する。
図2に示されるように、制御部46は、設定部、および、判定部の一例であり、第1の演算部51、および、第2の演算部52として機能する。第1の演算部51は、前段比演算部53、および、NOx量演算部54として機能し、第2の演算部52は、第1設定値演算部55、消費量推定部56、および、目標値演算部57として機能する。第1の演算部51は、所定の演算周期ごとに、排気ガスにおけるモル比xとNOx量Gxとを演算する。第2の演算部52は、第1の演算部51の演算結果を用いて、電源37の出力を制御するためのオゾンの目標値Gztを演算する。
【0030】
排気ガスにおけるモル比xにおいて、ディーゼル酸化触媒21を通過した排気ガスであって、かつ、オゾン添加ノズル24の前段におけるモル比xは、前段比x1である。また、排気ガスにおけるモル比xにおいて、オゾン添加ノズル24の後段、かつ、選択還元型触媒25の前段におけるモル比xは、後段比x2である。
【0031】
前段比演算部53は、所定の演算周期ごとに前段比x1を演算する。前段比演算部53は、所定の演算周期ごとに取得された排気温度Texおよび吸入空気量Qaを、記憶部47に記憶されたモル比マップ48に適用することにより前段比x1を演算する。モル比マップ48は、吸入空気量Qaと排気温度Texとに対して前段比x1が一義的に対応付けられたデータである。
【0032】
NOx量演算部54は、所定の演算周期毎に、取得された吸入空気量Qa、および、NOx濃度Cxに基づき、所定の演算周期毎の排気ガスにおけるNOx量Gxを演算する。
第1設定値演算部55は、所定の演算周期ごとの前段比x1、後段比x2の最大値である最大比k、および、NOx量Gxに基づいて第1設定値Gz1を演算する。第1設定値Gz1は、添加処理の開始に際して最初に設定される目標値Gztであって、初回の設定において後段比x2を最大比kまで上げるためのオゾン量である。また、第1設定値Gz1は、次回以降の目標値Gztの設定において基準とされる値である。第1設定値演算部55は、所定の演算周期ごとのNOx量Gx、および、前段比x1、さらには、予め設定された最大比kに基づき、演算値である前段比x1と最大比kとの差分をNOx量Gxに乗算した値(Gx×(k−x1))を第1設定値Gz1として演算する。
【0033】
なお、最大比kは、最適比xiよりも大きく、かつ、NOxがNO
2のみであるときのモル比である1以下の値である。最大比kは、エンジン10の過渡状態におけるNOx低減率を効果的に高めるうえで0.8〜1であることが好ましい。
【0034】
消費量推定部56は、演算周期ごとの演算結果に基づいて予定消費量Gz3を推定する。予定消費量は、今回の演算周期における前段比x1が最適比xiまで上がると仮定されたときの今回の演算周期における排気ガスでのオゾンの消費量である。消費量推定部56は、今回の前段比x1と最適比xiとの差に今回のNOx量Gxを乗算した値(Gx×(xi−x1))を予定消費量Gz3として演算する。
【0035】
目標値演算部57は、添加処理の開始後、第1設定値演算部55から最初に入力される第1設定値Gz1を目標値Gztの初期値として設定する。
目標値演算部57は、演算周期ごとのオゾンの残量Gz4を演算する。目標値演算部57は、初回の演算周期において、第1設定値Gz1から予定消費量Gz3を減算した値を残量Gz4として演算する。目標値演算部57は、初回以降の演算周期において、消費量推定部56から入力される予定消費量Gz3に基づき、前回の演算周期における残量Gz4から今回の演算周期における予定消費量Gz3を減算することにより、今回の演算周期における残量Gz4を演算する。
【0036】
目標値演算部57は、今回の演算周期におけるオゾン量の残余の有無を判定する。すなわち、目標値演算部57は、前回の演算周期における残量Gz4が今回の演算周期における予定消費量Gz3以下であるか否かを判定する。目標値演算部57は、前回の演算周期における残量Gz4が、今回の演算周期における予定消費量Gz3よりも多いときに新たな残量Gz4を演算する。これに対して、前回の演算周期における残量Gz4が、今回の演算周期における予定消費量Gz3以下であるとき、目標値演算部57は、今回の演算周期においてオゾン量の残余が無いと判定し、次回の目標値Gztを演算する。この際、目標値演算部57は、今回の演算周期における第1設定値Gz1から、前回の演算周期における残量Gz4を減算した値である第2設定値Gz2を、今回の演算周期における目標値Gztとして演算する。
【0037】
すなわち、目標値演算部57は、今回の目標値Gztの設定以降、前回の前段比x1の演算時までの予定消費量Gz3の積算値を、オゾンの総消費量として取り扱う。そして、目標値演算部57は、今回の目標値Gztの設定直後のオゾン量である開始量から総消費量を減算してオゾンの残量Gz4を監視し、今回の取得時におけるオゾンの残量Gz4が今回の取得時における予定消費量Gz3以下であるとき、オゾンの残余が無いと判定する。さらに、目標値演算部57は、オゾンの残量Gz4を加味したうえで、後段比x2を最大比kまで上げるオゾン量を目標値Gztとして設定する。
【0038】
図3を参照して、オゾン発生量制御装置45が実行する添加処理の一例について説明する。添加処理は、エンジンが始動すると開始されるとともに繰り返し実行される。
図3に示されるように、ステップS11において、制御部46は、今回の演算周期における吸入空気量Qa、排気温度Tex、NOx濃度Cxを含む各種情報を取得する。ステップS12において、制御部46は、今回の演算周期における排気温度Texが閾値Tex1よりも低いか否かを判断する。排気温度Texが閾値Tex1以上である場合(ステップS12:NO)、制御部46は、添加処理を一旦終了する。
【0039】
一方、今回の演算周期における排気温度Texが閾値Tex1よりも低い場合(ステップS12:YES)、制御部46は、今回の演算周期における前段比x1とNOx量Gxとを演算する。すなわち、制御部46は、ステップS11にて取得された吸入空気量Qaおよび排気温度Texをモル比マップ48に適用して前段比x1を演算し、また、ステップS11にて取得された吸入空気量QaおよびNOx濃度Cxに基づくNOx量Gxを演算する(ステップS13)。ステップS14において、制御部46は、ステップS13で演算された前段比x1とNOx量Gxとに基づき、今回の演算周期における第1設定値Gz1と予定消費量Gz3とを演算する。そして、制御部46は、初回の開始量として第1設定値Gz1を目標値Gztに設定するとともに、第1設定値Gz1および予定消費量Gz3に基づいて残量Gz4を演算する(ステップS15)。次いで、制御部46は、目標値Gztに対応付けられた交流電圧Eを電圧マップ49から選択し(ステップS16)、選択された交流電圧Eを出力させるための制御信号を、今回の設定における制御信号として電源37に出力する(ステップS17)。
【0040】
ステップS18において、制御部46は、次回の演算周期における吸入空気量Qa、排気温度Tex、および、NOx濃度Cxを含む各種情報を取得する。そして、制御部46は、ステップS18において取得された排気温度Texが閾値Tex1よりも低いか否かを判断する(ステップS19)。排気温度Texが閾値Tex1以上である場合(ステップS19:NO)、制御部46は、添加処理を一旦終了する。
【0041】
一方、排気温度Texが閾値Tex1よりも低い場合(ステップS19:YES)、制御部46は、次回の演算周期における前段比x1とNOx量Gxとを演算する。すなわち、制御部46は、ステップS18にて取得された吸入空気量Qaおよび排気温度Texをモル比マップ48に適用して前段比x1を演算し、また、ステップS18にて取得された吸入空気量QaおよびNOx濃度Cxに基づくNOx量Gxを演算する(ステップS20)。ステップS21において制御部46は、ステップS20で演算された前段比x1とNOx量Gxとに基づき、次回の演算周期における第1設定値Gz1と予定消費量Gz3とを演算する。
【0042】
ステップS22において、制御部46は、残量Gz4が次回の演算周期における予定消費量Gz3以下であるか否かを判断する。残量Gz4が予定消費量Gz3よりも大きい(Gz4>Gz3)場合(ステップS23:NO)、制御部46は、ステップS22の処理に用いた残量Gz4からステップS21で演算した予定消費量Gz3を減算することにより残量Gz4を更新する(ステップS23)。そして、制御部46は、ステップS18の処理に移行して再びステップS22までの処理を繰り返す。
【0043】
一方、残量Gz4が予定消費量Gz3以下(Gz4≦Gz3)である場合(ステップS22:YES)、制御部46は、次回の演算周期における目標値Gztを演算する。すなわち、制御部46は、ステップS21で演算された次回の演算周期における第1設定値Gz1から、ステップS22の処理に用いられた残量Gz4を減算することにより次回の設定における目標値Gztを演算する(ステップS24)。
【0044】
そして、制御部46は、ステップS21で演算された第1設定値Gz1から予定消費量Gz3を減算することにより新たな残量Gz4を演算する(ステップS25)。そして、制御部46は、ステップS16の処理に移行して次回の設定における目標値Gztに基づき、次回の設定における交流電圧Eの振幅Emと周波数fとを選択する。
【0045】
図4および
図5を参照して、オゾン発生量制御装置45の作用について説明する。
図4は、排気温度Texが閾値Tex1以下である場合において、選択還元型触媒25に流入する排気ガスのモル比xと、選択還元型触媒25におけるNOx低減率Rとの関係を示すグラフである。
【0046】
図4に示されるように、モル比xが0.5よりも小さいx3以上であり、且つ、1以下の場合には、NOx低減率Rとして低減率R1以上が得られ、最適比xi=0.5の場合に最も高い最大低減率Rmaxが得られる。NOx低減率Rがモル比xに対してこうした特性を有する一方で、上記オゾン発生量制御装置45は、まず、最適比xiよりも高いモル比xが得られる第1設定値Gz1を先行の排気ガスに添加して、こうした先行の排気ガスが選択還元型触媒25に流入するまでの間に、先行の排気ガスと後続の排気ガスとを混合させる。そして、混ざり合った排気ガスにおいてモル比xが最適比xi未満になる前に、オゾン発生量制御装置45は新たなオゾンを添加する。
【0047】
すなわち、
図5に示されるように、混ざり合った排気ガスに対してオゾンを供給し、その全てのオゾンがNOと反応した場合のモル比xを仮想モル比xaとすると、仮想モル比xaは、オゾンが添加される時刻t1において最大比kである。そして、仮想モル比xaは、時刻t1から徐々に低下する。
【0048】
次いで、残量Gz4が予定消費量Gz3以下となる演算周期は、仮想モル比xaが最適比xi以下になると推定される期間であって、こうした演算周期の開始時である時刻t2において新たにオゾンが添加される。この際、新たに添加されるオゾンの量、すなわち目標値Gztは、時刻t2における第1設定値Gz1から残量Gz4が減算された値である。これにより、時刻t2では、目標値Gztのオゾンが添加されることで残量Gz4を含めた第1設定値Gz1のオゾンが排気ガスに供給される。新たなオゾンの添加により、仮想モル比xaは、時刻t2において再び最大比kに復帰する。そして、再び仮想モル比xaが最適比xi以下になると推定される時刻t3において新たなオゾンが添加される。
【0049】
このように、オゾン発生量制御装置45は、仮想モル比xaが最適比xiよりも大きい範囲に維持されるようにオゾン発生量を制御する。そのため、各設定における排気ガスには、予定消費量Gz3の分のオゾンが目標値Gztとして設定される場合よりも、多くのオゾンが添加されている。
【0050】
また、エンジンの運転状態が過渡状態にあるときにNOxが急激に増加し、この際のオゾン発生器36の応答性が低いとなれば、オゾンが添加されるとしてもモル比xは大幅に低下してしまう。そして、予定消費量Gz3の分のオゾンが目標値Gztとして設定される場合には、最適比xiを基準としてモル比が低下してしまう。これに対し、上記オゾン発生量制御装置45は、仮想モル比xaを最適比xiよりも大きい値に維持していることから、仮想モル比xaが同じ分だけ低下したとしても最適比xiに近い値が得られる。その結果、たとえオゾン発生器36の応答性が低くとも、エンジンの過渡状態においてNOx低減率が高まる。
【0051】
上記実施形態のオゾン発生量制御装置によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)エンジンの過渡状態におけるNOx低減率が高まる。
(2)
図4に示すように、仮想モル比xaが最適比xiよりも大きい範囲に維持することにより、NOx低減率RがNOx低減率R1以上に維持されやすくなる。
【0052】
(3)残量Gz4が予定消費量Gz3以下であることを条件にオゾンが添加されることから、連続する2つの演算周期において目標値Gztを演算することも可能である。すなわち、オゾンを連続的に添加することも可能である。
【0053】
(4)選択還元型触媒25が活性温度よりも低い温度である場合にオゾンが添加されることから、選択還元型触媒25が活性温度に到達する前の期間のNOxが低減される。
(5)最大比kが0.8よりも大きい値に設定されることにより、第1設定値Gz1は、排気ガスに含まれるNOの8割以上がNO
2に変換される量である。これにより、オゾンの添加時により多くのオゾンが添加されることから、オゾンの添加頻度が低減される。
【0054】
(6)最大比kが1に設定されることにより、オゾンの添加時にはさらに多くのオゾンが添加される。その結果、NOx量が急激に増加したとしてもNOx低減率の著しい低下が抑えられる。
【0055】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・オゾン発生量制御装置45は、選択還元型触媒25の温度に関わらず添加処理を実行してもよい。
【0056】
・次回以降の設定における目標値Gztは、後段比x2を最大比kまで上げるオゾン量であればよく、例えば、設定時におけるオゾンの残量の計測値を第1設定値Gz1から減算した値であってもよい。
【0057】
・添加処理における初回の設定での開始量は、その設定時における前段比に関わらず、予め設定された値であってもよい。こうした開始量であっても、初回の設定以降におけるオゾン量の残余の有無を判定することは可能であって、上述した効果は得られる。
【0058】
・オゾンの消費量は、前回の設定から経過した時間と、経過した時間におけるNOx量と、経過した時間における前段比とに基づいて演算されてもよく、こうしたオゾン量を用いてオゾン量の残余の有無が判断されてもよい。
【0059】
・オゾン量の残余の有無は、今回の設定時におけるオゾンの残量の測定値と、前段比から推定された予定消費量との比較に基づいて判定されてもよい。
・最大比kは、0.5よりも大きく、且つ、1以下の値であればよく、例えばエンジン回転数Neの微分値や吸入空気量Qaの微分値に応じて変動する値であってもよい。すなわち、例えば、エンジン10の運転状態が定常状態にあるときに最大比kを低くしたり、過渡状態にあるときに最大比kを高くしたりしてもよい。
【0060】
・予定消費量Gz3は、Gx×(xi−x1)と等モルのオゾン量であってもよいし、前段比と予定消費量とを排気温度ごとに対応付けたマップに基づくオゾン量であってもよく、要は、前段比に基づいて得られる値であればよい。
【0061】
・第1設定値Gz1は、Gx×(k−x1)と等モルのオゾン量であってもよいし、前段比と第1設定値とを排気温度ごとに対応付けられたマップに基づくオゾン量であってもよい。要は、後段比を最大比まで上げるために前段比に基づいて得られる値であれよい。