(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料温度推定手段は、予め実験により求められた所定値を、前記燃料温度検出手段による検出値に加えることで、前記エンジンが停止された後の前記下流側配管内における前記液化ガス燃料の温度を推定することを特徴とする請求項2に記載の液化ガス燃料供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の装置では、液化ガス燃料をインジェクタへ供給するときに、燃料冷却装置を始終動作させていたので、その分だけ燃費が悪化するおそれがあった。また、エンジンが高負荷運転後に停止され、再始動されるときには、気化した液化ガス燃料に対処することができず、高温再始動性が悪化するおそれがあった。
【0007】
また、通常のエンジン自動車やハイブリッド自動車でポンププレ駆動制御を行う場合は、エンジンの始動時に燃料ポンプを駆動させる時間を確保しなければならず、そのために運転者は始動を待たなければならず、始動応答性が損なわれることになった。更に、間欠停止中に、デリバリパイプ内の条件が気化領域へ移ったことを検知して燃料ポンプを駆動させることは可能である。しかし、エンジン停止中に運転者の操作なく燃料ポンプが駆動・停止することは、その駆動音が騒音となって運転者に違和感を与えるおそれがあった。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、燃料冷却装置を動作させることによる燃費の悪化を抑えながらエンジンの高温再始動性を向上させ、エンジンの始動応答性を損なうことがなく、運転者にポンプ騒音による違和感を与えることがない液化ガス燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンへ液化ガス燃料を噴射供給するためのインジェクタと、液化ガス燃料を貯留するための燃料タンクと、燃料タンクに貯留された液化ガス燃料を配管を介してインジェクタへ圧送するための燃料ポンプと、配管を介して燃料ポンプからインジェクタへ圧送される液化ガス燃料を冷却するための燃料冷却装置とを備えた液化ガス燃料供給装置において、燃料冷却装置より下流の下流側配管内における液化ガス燃料の温度を検出するための燃料温度検出手段と、エンジンが運転されているときの燃料温度検出手段による検出値に基づき、エンジンが停止された後に下流側配管内における液化ガス燃料が気化するか否か
をエンジンの運転中に判断し、気化すると判断した場合に、液化ガス燃料を冷却するために
エンジンの運転中に燃料冷却装置を駆動制御するための制御装置を備えたことを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、エンジン運転中の燃料温度検出手段による検出値に基づき、エンジン停止後に下流側配管内における液化ガス燃料が気化すると判断した場合だけ燃料冷却装置が駆動されるので、燃料冷却装置を始終駆動させる必要がない。また、エンジン運転中に液化ガス燃料が適宜冷却されることで、エンジンの高温再始動時に液化ガス燃料の温度が低く抑えられるので、その燃料の気化が抑えられる。エンジン運転中に液化ガス燃料の冷却が行われるので、エンジン始動時に液化ガス燃料の気化に対処する必要がない。また、エンジン停止中に燃料ポンプ等の機器が運転者の操作なく駆動・停止することがない。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、エンジンへ液化ガス燃料を噴射供給するためのインジェクタと、液化ガス燃料を貯留するための燃料タンクと、燃料タンクに貯留された液化ガス燃料を配管を介してインジェクタへ圧送するための燃料ポンプと、配管を介して燃料ポンプからインジェクタへ圧送される液化ガス燃料を冷却するための燃料冷却装置とを備えた液化ガス燃料供給装置において、燃料冷却装置より下流の下流側配管内における液化ガス燃料の温度を検出するための燃料温度検出手段と、エンジンが運転されているときに、燃料温度検出手段の検出値に基づき、エンジンが停止された後の下流側配管内における液化ガス燃料の温度を推定するための燃料温度推定手段と、推定された温度が、所定の飽和蒸気圧線より求められる温度より高くなる場合に、液化ガス燃料を冷却するために
エンジンの運転中に燃料冷却装置を駆動制御するための制御手段とを備えたことを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、液化ガス燃料につきエンジン停止後の温度として推定された温度が、所定の飽和蒸気圧線より求められる温度より高くなる場合だけ燃料冷却装置が駆動されるので、燃料冷却装置を始終駆動させる必要がない。また、エンジン運転中に液化ガス燃料が適宜冷却されることで、エンジンの高温再始動時に液化ガス燃料の温度が低く抑えられるので、その燃料の気化が抑えられる。エンジン運転中に液化ガス燃料の冷却が行われるので、エンジン始動時に液化ガス燃料の気化に対処する必要がない。また、エンジン停止中に燃料ポンプ等の機器が運転者の操作なく駆動・停止することがない。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、燃料温度推定手段は、予め実験により求められた所定値を、燃料温度検出手段による検出値に加えることで、エンジンが停止された後の下流側配管内における液化ガス燃料の温度を推定することを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、予め実験により求められた所定値を燃料温度検出手段による検出値に加えるだけなので、エンジンの停止後の液化ガス燃料の温度を容易に推定できる。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、インジェクタへ圧送される液化ガス燃料の圧力を調整するための圧力調整手段を更に備え、制御手段は、推定された温度が飽和蒸気圧線より求められる温度より低くなる場合に、その低くなる程度に応じてインジェクタへ圧送される液化ガス燃料の圧力を低減するために
エンジンの運転中に圧力調整手段を駆動制御すると共に、その圧力を低減させた分だけ
エンジンの運転中に燃料ポンプによる液化ガス燃料の圧送力を低下させることを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、燃料ポンプによる液化ガス燃料の加圧分が低減されるので、燃料ポンプにかかる負荷が低減する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、燃料冷却装置を動作させることによる燃費の悪化を抑えながらエンジンの高温再始動性を向上させることができ、エンジンの始動応答性を損なわず、運転者にポンプ騒音による違和感を与えないようにすることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、燃料冷却装置を動作させることによる燃費の悪化を抑えながらエンジンの高温再始動性を向上させることができ、エンジンの始動応答性を損なわず、運転者にポンプ騒音による違和感を与えないようにすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、燃料冷却装置の好適な制御を簡易化することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、燃料ポンプの耐久寿命を延ばすことができ、燃料ポンプによる消費電力を低減することができ、その分だけエンジンの燃費を更に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、本発明における液化ガス燃料供給装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。この実施形態では、液化ガス燃料供給装置を、液化ガス燃料として液化石油ガス(LPG)燃料を使用したLPGエンジンシステムに具体化して説明する。
【0023】
図1に、この実施形態の液化ガス燃料供給装置を概略構成図により示す。車両に搭載されたLPGエンジンシステムは、エンジン1と、そのエンジン1にLPG燃料を供給する液化ガス燃料供給装置2とを含む。液化ガス燃料供給装置2は、液相状態でLPG燃料を貯留するための燃料タンク3を備える。燃料タンク3に外付けされた燃料ポンプ4は、同タンク3に貯留されたLPG燃料を吸入して燃料通路5へ吐出するように構成される。燃料通路5は、エンジン1へ向けて延びる。この実施形態で、燃料ポンプ4は、モータによりインペラを回転させることで燃料を吸入して燃料通路5へ吐出するように構成される。燃料ポンプ4には、電源を供給するのためにバッテリ6が接続される。この燃料ポンプ4は、ポンプコントローラ7により駆動されるように構成される。
【0024】
この実施形態で、エンジン1は、4気筒のレシプロタイプのものであり、各気筒に対応して、エンジン1へLPG燃料を噴射供給するための4つのインジェクタ8が設けられる。各インジェクタ8は、デリバリパイプ9に並列に設けられる。各インジェクタ8は、電磁弁を含み、電気的に開閉駆動されるように構成される。従って、燃料タンク3に貯留されたLPG燃料は、燃料ポンプ4から吐出されることにより燃料通路5及びデリバリパイプ9を介して各インジェクタ8へ圧送されるようになっている。各インジェクタ8へ圧送されたLPG燃料は、各インジェクタ8が動作することで、各気筒へ噴射供給される。各インジェクタ8から噴射されるLPG燃料は、各気筒にて、吸気通路(図示略)から取り込まれた空気と共に可燃混合気を形成し、燃焼に供される。デリバリパイプ9で余ったLPG燃料は、戻り燃料として戻り通路10を介して燃料タンク3へ戻される。戻り通路10には、デリバリパイプ9の中の燃料圧力をある一定の所定値に調整するための圧力動作式のプレッシャレギュレータ11が設けられる。
【0025】
ここで、デリバリパイプ9には、その中の燃料温度(デリバリ燃温)TDFを検出するための第1燃温センサ31が設けられる。同じくデリバリパイプ9には、その中の燃料圧力(デリバリ燃圧)PDFを検出するための第1燃圧センサ32が設けられる。この実施形態で、後述する燃料冷却装置12より下流に位置する燃料通路5とデリバリパイプ9は、本発明の下流側配管に相当し、第1燃温センサ31は、本発明の燃料温度検出手段に相当する。
【0026】
一方、燃料タンク3には、その中の燃料温度(タンク燃温)TTFを検出するための第2燃温センサ33が設けられる。同じく燃料タンク3には、その中の燃料圧力(タンク燃圧)PTFを検出するための第2燃圧センサ34が設けられる。
【0027】
更に、燃料通路5の途中には、同通路5及びデリバリパイプ9を介して燃料ポンプ4から各インジェクタ8へ圧送されるLPG燃料を冷却するための燃料冷却装置(F/C)12が設けられる。この燃料冷却装置12には、車両に設けられたエアコン13を流れる冷媒が冷媒通路14を介して流れるように構成される。これにより、燃料通路5を流れる液相状態のLPG燃料と冷媒との間で熱交換を行い、LPG燃料を冷却するようになっている。ここで、エアコン13は、周知のように圧縮機、凝縮器及び蒸発器と、それらをつなぐ配管等とから構成され、配管を流れる冷媒を冷却可能に構成される。従って、エアコン13がオンされ、内部で冷媒が冷却されることにより、その冷媒が冷媒通路14を介して燃料冷却装置12に流れる。これにより、燃料通路5を流れるLPG燃料が冷却されるようになっている。一方、エアコン13がオフされると、燃料冷却装置12を冷媒が流れなくなる。これにより、燃料通路5を流れるLPG燃料が冷却されなくなる。このエアコン13は、エアコン電子制御装置(エアコンECU)21により駆動制御されるように構成される。
【0028】
この実施形態では、各インジェクタ8、燃料ポンプ4及びエアコン13を制御するためにエンジンECU30が設けられる。エンジンECU30は、本発明の制御装置、燃料温度推定手段及び制御手段に相当する。エンジンECU30には、各インジェクタ8、ポンプコントローラ7、エアコンECU21、各燃温センサ31,33及び各燃圧センサ32,34が接続される。エンジンECU30は、各燃温センサ31,33及び各燃圧センサ32,34の検出値に基づき、各インジェクタ8、ポンプコントローラ7及びエアコンECU21を制御するようになっている。
【0029】
エンジンECU30は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を備える。エンジンECU30は、入力回路を介して入力される各種センサ31〜34からの検出値に基づき、所定の制御プログラムに従って燃料供給制御を実行するように構成される。
【0030】
次に、エンジンECU30が実行する燃料供給制御の内容を
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、エンジンECU30は、各センサ31〜34により検出されるタンク燃圧PTF、タンク燃温TTF、デリバリ燃圧PDF及びデリバリ燃温TDFの値をそれぞれ取り込む。
【0032】
次に、ステップ110で、エンジンECU30は、エンジン停止後のデリバリ燃温TDFを推定する。すなわち、エンジンECU30は、現在のデリバリ燃温TDFに、エンジン停止後(例えば、60分後)の温度上昇分TQRを加算することにより、エンジン停止後のデリバリ燃温TDFを推定する。ここで、温度上昇分TQRは、例えば、
図3に表で示すような温度データを参照することで求めることができる。この温度データにおける温度上昇分TQRは、予め実験により求められた所定値である。この温度データでは、デリバリ燃温TDFが「−10℃」から「60℃」の間で上昇するに連れ、温度上昇分TQRが「65℃」から「25℃」の間で減少するようになっている。従って、例えば、現在のデリバリ燃温TDFが「40℃」である場合、エンジン停止後の温度上昇分TQRは「40℃」であるから、エンジン停止後のデリバリ燃温TDFは「40+40=80(℃)」と推定することができる。
【0033】
次に、ステップ120で、エンジンECU30は、タンク燃圧PTFとタンク燃温TTFから飽和蒸気圧線を推定する。この飽和蒸気圧線は、例えば、
図4にグラフで示すような飽和蒸気圧特性データを参照することにより推定することができる。
図4において、横軸はタンク燃温TTFを示し、縦軸はタンク燃圧PTFを示す。
図4に示す複数の曲線は、飽和蒸気圧曲線であって、それらの曲線の違いは、燃料中のLPGの割合の違いを意味する。ここで、最上位の曲線はプロパン100%の場合を示し、それより下の曲線は順次プロパンの含有率が低下し、ブタンの含有率が増加する場合を示す。
【0034】
次に、ステップ130では、エンジンECU30は、エンジン停止後(例えば、60分後)にデリバリパイプ9内でLPG燃料が気化するか否かを判断する。すなわち、エンジンECU30は、デリバリ燃圧PDFがプレッシャレギュレータ11により調整される所定値となるときに、ステップ110で推定されたデリバリ燃温TDFが、ステップ120で推定された飽和蒸気圧線より求められる温度より高くなるか否かを判断する。これを
図5を参照して説明する。
図5は、飽和蒸気圧線C1と温度と圧力の関係を示すグラフである。この飽和蒸気圧線C1は、あるタンク燃温TTF1とあるタンク燃圧PTF1との関係から推定されたものである。LPG燃料は、燃料ポンプ4で加圧されることにより、あるタンク燃圧PTF1からあるデリバリ燃圧PDF1へ上昇する。このデリバリ燃圧PDF1は、プレッシャレギュレータ11により調整された所定値に相当する。あるデリバリ燃圧PDF1に対応して飽和蒸気曲線C1により温度T1が求められる。この温度T1よりもエンジン停止後のデリバリ燃温TDFが高くなる(TDF2)場合は、あるデリバリ燃圧PDF1が飽和蒸気圧線C1より求められる圧力P1より低くなる。このため、デリバリパイプ9内のLPG燃料は気化する。これに対し、飽和蒸気曲線C1より求められる温度T1に対し、エンジン停止後のデリバリ燃温TDFが低くなる(TDF1)場合は、あるデリバリ燃圧PDF1が飽和蒸気圧線C1より求められる圧力P2より高くなることから、デリバリパイプ9内のLPG燃料は気化しない。このステップ130の判断結果が肯定となる場合、デリバリパイプ9内でLPG燃料が気化すると判断でき、エンジンECU30は、処理をステップ140へ移行する。このステップ130の判断結果が否定となる場合、エンジンECU30は、その後の処理を一旦終了する。
【0035】
そして、ステップ140では、エンジンECU30は、燃料冷却をオンした後、処理をステップ100へ戻す。ここで、エンジンECU30は、エアコンECU21へエアコン13をオンするように指令し、これを受けてエアコンECU21がエアコン13をオンする。これにより、燃料冷却装置(F/C)12に冷媒が流れ、燃料ポンプ4からデリバリパイプ9へ圧送されるLPG燃料が冷却される。
【0036】
図6に、上記した燃料供給制御の効果をグラフにより示す。
図6において、白丸、白三角、黒丸、黒三角は、それぞれデリバリパイプ9内のデータを示し、白丸と黒丸はそれぞれエンジン運転中のデータを、白三角と黒三角はエンジン停止後のデータを示す。また、白丸と白三角は本実施形態のデータを、黒丸と黒三角は従来技術のデータを示す。
図6から明らかなように、この実施形態では、エンジン運転中にエンジン停止後のデリバリ燃温TDFの上昇を推定してLPG燃料が適度に冷却される。そのため、燃料ポンプ4による加圧後のあるデリバリ燃圧PDF1において、あるデリバリ燃温TDF1(白丸)は、従来技術のあるデリバリ燃温TDF2(黒丸)より低くなる。その結果、エンジン停止後には、あるデリバリ燃温TDF3(白三角)は、飽和蒸気曲線C1により求められる温度T1(ばつ印)より低くなる。これは、従来技術のあるデリバリ燃温TDF4(黒三角)が、飽和蒸気曲線C1により求められる温度T1より高くなるのと異なる。この結果、LPG燃料が気化することを抑えることができる。
【0037】
以上説明したこの実施形態の液化ガス燃料供給装置によれば、LPG燃料につきエンジン1の停止後の温度として推定されたデリバリ燃温TDFが、所定の飽和蒸気圧線C1より求められる温度T1より高くなる場合だけ、LPG燃料が燃料冷却装置12が駆動されるので、燃料冷却装置12を始終駆動させる必要がない。その結果、エンジン1の燃費の悪化を防止することができる。また、エンジン1の運転中にLPG燃料が適宜冷却されることで、エンジン1の高温再始動時にLPG燃料の温度が低く抑えられるので、その燃料の気化が抑えられる。このため、エンジン1の高温再始動時にも、気化したLPG燃料がエンジン1に供給されることがなく、エンジン1の高温再始動性を向上させることができる。
【0038】
この実施形態では、エンジン1の運転中にLPG燃料の冷却が行われるので、エンジン1の始動時にLPG燃料の気化に対処する必要がない。このため、従来のようにポンププレ駆動制御を行うことでエンジン始動時に燃料ポンプを駆動させる時間を確保する必要がなく、運転者がエンジン1の始動を待つ必要がなく、エンジン1の始動応答性を損なうことがない。また、エンジン1の停止中に燃料ポンプ3等の機器が運転者の操作なく駆動・停止することがない。このため、その駆動音が騒音となって運転者に違和感を与えることがない。
【0039】
この実施形態では、エンジン1の停止後のデリバリ燃温TDFを推定するために、予め実験により求められた所定値を、第1燃温センサ31による検出値に加えるだけなので、エンジン1の停止後におけるデリバリ燃温TDFを容易に推定することができる。このため、燃料冷却装置12の好適な制御を簡易化することができる。
【0040】
<第2実施形態>
次に、本発明における液化ガス燃料供給装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
なお、以下の説明において前記第1実施形態と同等の構成については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なる点を中心に説明する。
【0042】
図7に、この実施形態の液化ガス燃料供給装置を概略構成図により示す。この実施形態では、戻り通路10に圧力動作式のプレッシャレギュレータ11を設ける代わりに、調整圧力を電子制御で可変とする電動式プレッシャレギュレータ16を設け、そのプレッシャレギュレータ16をエンジンECU30で制御するように構成した点で第1実施形態と構成が異なる。この電動式プレッシャレギュレータ16は、本発明の圧力調整手段に相当する。
【0043】
また、この実施形態では、燃料供給制御の内容の点で第1実施形態と構成が異なる。エンジンECU30が実行する燃料供給制御の内容を
図8のフローチャートを参照して説明する。
図8のフローチャートでは、ステップ150,160の処理が加わった点で、
図2のフローチャートと構成が異なる。
【0044】
処理がこのルーチンへ移行すると、エンジンECU30は、第1実施形態と同様にステップ100〜ステップ140の処理を実行する。その後、ステップ130から移行してステップ150では、デリバリパイプ9内のLPG燃料が気化しない場合、気化に対してどれだけ余裕があるかを算出する。
図9に、
図6に準ずるグラフを示す。
図9に示すように、例えば、あるデリバリ燃圧PDF1において、飽和蒸気圧線C1により求められる温度T1(ばつ印)に対する、あるデリバリ燃温TDF3の温度差ΔTを求める。エンジンECU30は、この温度差ΔTを算出する。
【0045】
そして、ステップ160で、エンジンECU30は、算出された余裕(温度差ΔT)に応じて、デリバリ燃圧PDFを低減させる。そのために、エンジンECU30は、電動式プレッシャレギュレータ16を制御し、その後の処理を終了する。すなわち、
図9に示すように、あるデリバリ燃圧PDF1をそれより低いあるデリバリ燃圧PDF2へ低減させる。
図9に示すように、このようにデリバリ燃圧PDFを低減しても、エンジン停止後のあるデリバリ燃温TDF3が、飽和蒸気曲線C1より求められる温度T1より高くなることはない。また、デリバリ燃圧PDFを下げた分だけ、燃料ポンプ4によるLPG燃料の加圧分を低減できることになる。
【0046】
以上説明したこの実施形態の液化ガス燃料供給装置によれば、第1実施形態の作用効果に加え、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、この実施形態では、エンジンECU30は、推定されたデリバリ燃温TDFが飽和蒸気圧線C1より求められる温度T1より低くなる場合に、その低くなる程度(温度差ΔT)に応じて各インジェクタ8へ圧送されるLPG燃料の圧力(デリバリ燃圧PDF)を低減するために、電動式プレッシャレギュレータ16を駆動制御すると共に、その圧力を低減させた分だけ燃料ポンプ4によるLPG燃料の圧送力を低下させるようになっている。従って、燃料ポンプ4によるLPG燃料の加圧分が低減されるので、燃料ポンプ4にかかる負荷が低減する。この結果、燃料ポンプ4の耐久寿命を延ばすことができ、燃料ポンプ4による消費電力を低減でき、その分だけエンジン1の燃費を更に低減することができる。
【0047】
<第3実施形態>
次に、本発明における液化ガス燃料供給装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0048】
図10に、この実施形態の液化ガス燃料供給装置を概略構成図により示す。この実施形態では、液化ガス燃料供給装置から戻り通路10と電動式プレッシャレギュレータ16を省略した点で第2実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態では、デリバリパイプ9で余ったLPG燃料を燃料タンク3へは戻さないリターンレスタイプの液化ガス燃料供給装置となっている。そのために、エンジンECU30は、エンジン1の運転状態に応じた必要十分な量のLPG燃料を各インジェクタ8へ供給するために、燃料ポンプ4の出力を調整制御するようになっている。また、この実施形態では、
図8のフローチャートのステップ160において、エンジンECU30が、電動式プレッシャレギュレータ16を制御することで、あるデリバリ燃圧PDF1をあるデリバリ燃圧PDF2へ低減させる代わりに、燃料ポンプ3の出力を制御することで、あるデリバリ燃圧PDF1をあるデリバリ燃圧PDF2へ低減させるようになっている。この点で、この実施形態は第2実施形態と構成が異なる。
【0049】
従って、この実施形態でも、第2実施形態と同等の作用効果を得ることができる。加えて、液化ガス燃料供給装置をリターンレスタイプに構成したことから、装置の配管構成を簡略化することができる。
【0050】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することで実施することができる。
【0051】
(1)前記各実施形態では、エンジン1の運転中に、第1温度センサ31の検出値に基づき、エンジン1が停止された後のデリバリパイプ9内におけるLPG燃料の温度を推定し、その推定された温度が所定の飽和蒸気圧線より求められる温度より高くなる場合に、LPG燃料を冷却するために燃料冷却装置12を駆動制御するように構成した。これに対し、エンジン1の運転中に、第1温度センサ31の検出値から所定のマップ等を参照することにより、エンジン1の停止後にデリバリパイプ9内におけるLPG燃料が気化するか否かを判断し、気化すると判断した場合に、LPG燃料を冷却するために燃料冷却装置12を駆動制御するように構成してもよい。
【0052】
(2)前記各実施形態では、液化ガス燃料供給装置を、液化ガス燃料を使用した通常のエンジン自動車に具体化したが、液化ガス燃料を使用したハイブリッド自動車にも具体化することができる。この場合、エンジンの間欠停止中に、デリバリパイプ内の条件が気化領域へ移ることがなく、エンジン停止中に運転者の操作なく燃料ポンプを駆動・停止させる必要がないことから、燃料ポンプの駆動音が騒音となって運転者に違和感を与えることがない。
【0053】
(3)前記各実施形態では、液化ガス燃料としてLPG燃料を使用したが、液化ガス燃料としてジメチルエーテル(DME)やそれ以外の燃料を使用することもできる。