(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多価アルコールが、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,3−ビス(2’−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン−1−オール、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロパン−1,2−ジオール、3−(2’−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(2’−ヒドロキシエトキシ)ヘキサン−1,2−ジオール、6−(2’−ヒドロキシプロポキシ)ヘキサン−1,2−ジオール、1,1,1−トリス[(2’−ヒドロキシエトキシ)メチル]エタン、1,1,1−トリス[(2’−ヒドロキシプロポキシ)メチル]プロパン、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1,4−トリス(ジヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,5−トリス(ヒドロキシフェニル)−3−メチルペンタン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリメチロールプロパンエトキシレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレート、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、シクロデキストリン、D−マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−またはL−アラビトール、キシリトール、イジトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、グリトール、エリトリトール、トレイトール及びD−グロン酸−γ−ラクトンを含む群、及び特に、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,3−ビス(2’−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン−1−オール、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロパン−1,2−ジオール、3−(2’−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(2’−ヒドロキシエトキシ)ヘキサン−1,2−ジオール、6−(2’−ヒドロキシプロポキシ)ヘキサン−1,2−ジオール、1,1,1−トリス[(2’−ヒドロキシエトキシ)メチル]エタン、1,1,1−トリス[(2’−ヒドロキシプロポキシ)メチル]プロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリメチロールプロパンエトキシレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレート、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、シクロデキストリン、D−マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−またはL−アラビトール、キシリトール、イジトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、グリトール、エリトリトール、トレイトール及びD−グロン酸−γ−ラクトンから選択されることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人は、全く驚くべきことに、特に、アルコール官能基が脂肪族炭素によって保持される多価アルコールをポリアミド重合方法の間に使用することによって、熱、光及び悪天候に対して増加した安定性によって得られた改良されたポリアミドを生じさせることを実証した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
有利には、多価アルコールは、アルコール官能基が脂肪族炭素によって保持されるアルコールであり、特に脂肪族アルコールであるか、または更に、飽和結合だけを含むアルコールである。
【0010】
このような化合物は、ポリアミド重合の間に添加されるとき、カルボン酸タイプの末端基との反応によるかまたは鎖内のアミドとの反応によるか何れかで多価アルコールがポリアミド鎖に共有結合して存在し得る改良されたポリアミドを得ることを可能にする。特に、特許出願国際公開第2007/036929号パンフレットに説明されているように、ポリアミド合成の間に多価アルコールを添加することはポリアミドのカルボン酸末端基とのエステル官能基の形成につながり、それは、多価アルコールの遊離ヒドロキシル官能基のかなりの減少をもたらし、従って安定剤として作用するその能力のかなりの低下をもたらすことが知られている限り、熱安定化に及ぼすこのような効果は驚くべきであるように思える。しかしながら、実験の部において観察されるように、全く逆のことが起こり、老化試験後の機械的性質の大きな保持率が注目される。
【0011】
重合の間に多価アルコールが添加される本発明による改良されたポリアミドは、後続の押出によって混合物として添加される多価アルコールを含むポリアミド組成物の性質と同等であるかまたは更にすぐれている性質を得ることを可能にする。
【0012】
特に、共有結合は、アルコールを組成物から「洗浄」することにつながる現象を低減、制限または更に防ぐことを可能にする場合がある。これは、冷却回路内の部品など、高温液体と接触している部品の場合、特に有用であることがある。
【0013】
更に、ポリアミド重合の間に多価アルコールを添加することによって、小さな比率を使用する時でも、ポリアミド母材中の前記アルコールの十分な分散を得ることができると思われる。押出によって多価アルコールなどの分子を導入する間、付加される分子の量を完全に制御することは一般に難しく、利用できる性能の不安定さを生じ、確実に最少量を有するために多めの量の導入を必要とする限り、これはなおさら有利である。従って、多価アルコールの均一な分散は、添加剤のより小さな比率を使用しながら同時に、熱、光及び悪天候に対する安定化の良い効率を可能にし、従って、他の性質、例えば組成物の流動性に影響を与える場合がある、添加剤の過度に多い量の使用を避けることを可能にすると思われる。
【0014】
更に、ポリアミド重合の間に多価アルコールを使用することによって、多価アルコールの損失を避けることができると思われる。具体的には、これが押出によって溶融体中に添加されるとき、滲出が経時的に観察され、装置、特に供給ホッパー上への添加剤の堆積をもたらし、その付着物を生じさせると思われる。
【0015】
本発明によって少なくとも1つの多価アルコールで改良されたポリアミドは特に、多数の用途に十分であるレオロジー及び機械的性質の良い妥協点を有する。
【0016】
従って、本発明は、特に経時的に、熱、光及び/または悪天候に対して増加した安定性によって得られた改良されたポリアミドを生じさせるための、ポリアミド重合方法においての少なくとも3つのヒドロキシル基を含む多価アルコールの使用に関する。特に、ポリアミド重合方法においての少なくとも3つのヒドロキシル基を含む多価アルコールの使用は、熱、光及び/または悪天候によって引き起こされた老化に対する安定効果を有し、特にまた、とりわけ、合成において使用されていない薬剤に対して光沢剤及び/または防汚剤として作用する。これは、例えば、押出パックの圧力を避けることを可能にし、従って装置の利用を改良することを可能にする場合がある。
【0017】
また、本発明は、先述の使用によって得ることができるポリアミドに関する。
【0018】
また、本発明は、高温、特に80℃以上の温度、より詳しくは110℃以上の温度及びより具体的には180℃以上の温度に暴露される用途のために製造された物品に関し、多価アルコールがこの重合の間に添加される重合方法によって得られた少なくとも1つのポリアミドを含む組成物を成形することによって得られる。
【0019】
ポリアミドの全重量に対して多価アルコール0.05重量%〜20重量%、有利には0.5重量%〜10重量%、特に1重量%〜5重量%、特に1重量%〜4重量%が一般に使用される。
【0020】
組成物の全重量に対して多価アルコール0.05重量%〜20重量%、有利には0.5重量%〜10重量%、特に1重量%〜4重量%、特に1重量%〜3.5重量%が一般に使用される。
【0021】
ポリアミドに共有結合した多価アルコール化合物のモル比は有利には10%〜100%及びより有利には30%〜70%である。結合した多価アルコール化合物のモル比は特に、結合した多価アルコール化合物のモル数の、多価アルコール化合物の全モル数に対する比によって計算される。
【0022】
多価アルコールは有利には、3〜9個のヒドロキシル基、特に4、6または8個を含有する。
【0023】
本発明の多価アルコールは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族及び芳香族化合物から選択されてもよく、N、S、O及び/またはPなどの1つまたは複数のヘテロ原子を含有してもよい。多価アルコールは、エーテル、アミン、カルボン酸、アミドまたはエステル基などの1つまたは複数の置換基を含有してもよい。
【0024】
また、多価アルコールは、式:
R-(OH)
n (I)
[上式中、
− nが3〜8であり、特に4、6、または8であり、
− Rが、N、S、O及び/またはPなどのヘテロ原子を場合により含む置換または非置換脂肪族、脂環式またはアリールアルキル炭化水素系基である]によって表わされる式(I)の化合物であってもよい。
【0025】
本発明の目的のために、用語「アリールアルキル」は、少なくとも1つのアルキル部と少なくとも1つのアリール部とを含む基Rを意味し、そこでアルコール官能基はアルキル炭素によって保持されている。
【0026】
特に、式(I)において−OHによって表わされるアルコール官能基は脂肪族炭素によって保持される。この場合、従って式(I)の化合物はフェノールタイプの化合物ではない。
【0027】
Rは有利には、2〜20個の炭素原子、より有利には4〜10個の炭素原子を含む。
【0028】
脂環式基Rは、特にシクロヘキサンであってもよい。
【0029】
基Rは、例えば、様々な基、例えばアミン官能基、チオール官能基またはハロゲン、例えばCl、F、BrまたはIで置換されてもよい。
【0030】
Rは有利には、N、S、O及び/またはPなどのヘテロ原子を場合により含む直鎖または分岐炭化水素系脂肪鎖に相当する。
【0031】
また、多価アルコールまたは本発明による式(I)の化合物は、1つまたは複数の官能基、特にアミン、例えば第一、第二及び/または第三アミンを含んでもよい。
【0032】
有利には、式(I)の化合物の脂肪族ヒドロキシル官能基は阻害されず、即ち、例えば、脂肪族ヒドロキシル官能基に対してアルファの炭素原子は好ましくは、分岐アルキルなどの嵩高い置換基で置換されていない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
従って挙げられてもよい多価アルコールには、トリオール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、2,3−ビス(2’−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン−1−オール、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロパン−1,2−ジオール、3−(2’−ヒドロキシプロポキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(2’−ヒドロキシエトキシ)ヘキサン−1,2−ジオール、6−(2’−ヒドロキシプロポキシ)ヘキサン−1,2−ジオール、1,1,1−トリス[(2’−ヒドロキシエトキシ)メチル]エタン、1,1,1−トリス[(2’−ヒドロキシプロポキシ)メチル]プロパン、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1,4−トリス(ジヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,5−トリス(ヒドロキシフェニル)−3−メチルペンタン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリメチロールプロパンエトキシレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレート、ポリオール、例えばペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、及びトリペンタエリトリトール、及び糖類、例えばシクロデキストリン、D−マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−またはL−アラビトール、キシリトール、イジトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、グリトール、エリトリトール、トレイトール及びD−グロン酸−γ−ラクトン、及び同様な化合物を含む群に記載された多価アルコールがある。
【0034】
好ましい多価アルコールには、少なくとも一対のヒドロキシル基を有し、それらがそれぞれ結合している炭素原子が少なくとも1個の原子、有利には炭素または酸素原子によって割り込まれている多価アルコールがある。
【0035】
有利には、熱可塑性組成物において使用される多価アルコールは、ジグリセロール、トリグリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールまたはジ−トリメチロールプロパンである。より有利には、使用される多価アルコールはジペンタエリトリトール及び/またはトリペンタエリトリトールである。
【0036】
一変種によって、式(I)の化合物はアミン官能基を有さず、特に、N、S、O及び/またはPなどのヘテロ原子を一切含まない。
【0037】
別の変種によって、式(I)の化合物はアミン官能基を含んでもよい。挙げられてもよい式(I)の化合物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(RN CAS:77−86−1)及び/またはそれらの塩である。
【0038】
特に挙げられてもよい塩には、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウム、スルホン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムの他、カルボン酸の塩及びアミンの塩、例えばアジピン酸アンモニウム、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのアジピン酸塩などがある。
【0039】
本発明による組成物は、
− 170℃において1000時間老化後に少なくとも92%、特に少なくとも95%の極限引張強さの保持率を有する場合がある。
【0040】
本発明による組成物は、
− 210℃において500時間老化後に少なくとも95%の極限引張強さの保持率、及び/または
− 210℃において1000時間老化後に少なくとも60%、特に少なくとも65%の極限引張強さの保持率を有する場合がある。
【0041】
本発明による組成物は、
− 170℃において1000時間老化後に少なくとも70%、特に少なくとも80%または更に少なくとも85%のノッチなしシャルピー衝撃強さの保持率を有する場合がある。
【0042】
本発明による組成物は、
− 210℃において500時間老化後に少なくとも60%、特に少なくとも80%及び特に少なくとも90%のノッチなしシャルピー衝撃強さの保持率、及び/または
− 210℃において1000時間老化後に少なくとも45%、特に少なくとも55%及び特に少なくとも65%のノッチなしシャルピー衝撃強さの保持率を有する場合がある。
【0043】
特に、組成物は、DPEの等しい重量を含む組成物に対して少なくとも150%の、特に渦巻試験による平均流動長の改良を示す。
【0044】
上述の極限引張強さ及びノッチなしシャルピー衝撃強さは、実施例において示された手順によって測定される。
【0045】
本発明のポリアミドは、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸と脂肪族または環状または脂環式またはアリール脂肪族ジアミンとの重縮合によって得られたポリアミド、例えばPA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA10.6、PA12.12、PA4.6、MXD6、PA92、PA102、または少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸と脂肪族または芳香族ジアミンとの間、例えばPA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA13TまたはPA6T/MT、PA6T/6I、PA6T/66、PA66/6Tなどのタイプのポリテレフタルアミド、PA6I、PA6I/6Tなどのタイプのポリイソフタルアミド、PA10N、PA11N、PA12Nなどのタイプのポリナフタルアミド、Kevlarなどのポリアラミド、またはそれらのブレンド及びそれらの(コ)ポリアミドを含む群から特に選択される。また、本発明のポリアミドは、少なくとも1つのアミノ酸またはラクタムそれ自体の重縮合によって得られたポリアミド(アミノ酸をラクタム環の加水分解開環によって生成させることができる)、例えば、PA6、PA7、PA11、PA12もしくはPA13、またはそれらのブレンド及び(コ)ポリアミドから選択されてもよい。特に挙げられてもよいコポリアミドのタイプには、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12及びポリアミド11/12などがある。
【0046】
ジアミン及び二酸がヘテロ原子を有してもよい。5−ヒドロキシイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸またはそれらの塩、例えばリチウム、ナトリウムまたは亜鉛の塩が挙げられる。
【0047】
半結晶性脂肪族または半芳香族ポリアミドが特に好ましい。
【0048】
タイプ6、タイプ610、タイプ66及びタイプ66/6Tのポリアミドが特に好ましい。
【0049】
一般的には、ポリアミドは、ポリアミドの融点よりも20℃高い温度において1000s
−1の剪断速度で標準ISO 11443によって測定されたときに0.5〜1200Pa.s、有利には0.5〜500Pa.sの見掛溶融粘度を有する半結晶性ポリアミドである。特に、ポリアミドモノマーの重合の前または間に、あるいは溶融押出において、鎖の長さを変えるモノマー、例えば、特に、ポリアミドのモノマーまたはポリアミドと反応することができるアミンまたはカルボン酸官能基を示す二官能性及び/または一官能性化合物を添加することによって様々な分子量のポリアミドを使用してもよい。
【0050】
特に、ポリアミドモノマーの重合の前または間に、あるいは溶融押出において、鎖の長さを変えるモノマー、例えば、特に、ポリアミドモノマーまたはポリアミドと反応することができるアミンまたはカルボン酸官能基を有する二官能性及び/または一官能性化合物を添加することによって様々な分子量のポリアミドを使用してもよい。
【0051】
用語「カルボン酸」は、カルボン酸及びそれらの誘導体、例えば酸無水物、酸塩化物及びエステルを意味する。用語「アミン」は、アミン及びアミド結合を形成することができるそれらの誘導体を意味する。
【0052】
重合の開始時間または終了時に、脂肪族もしくは芳香族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸の任意のタイプまたは脂肪族もしくは芳香族モノアミンもしくはジアミンアミンの任意のタイプを使用することができる。
【0053】
少なくともアジピン酸及びヘキサメチレンジアミンまたはそれらの塩、例えばアジピン酸ヘキサメチレンジアミンから得られたポリアミドを特に使用してもよく、それは場合により、様々な比率の他のポリアミドモノマーを含むことができる。この目的のために、様々なモル量のテレフタル酸モノマーを含有するポリアミド66/6Tが挙げられる。
【0054】
特に、ポリアミドは、特に上記のポリアミドから誘導されたコポリアミド、またはこれらのポリアミドもしくは(コ)ポリアミドのブレンドであってもよい。
【0055】
また、ポリアミドモノマーの存在下で、重合の間、アミン官能基またはカルボン酸官能基タイプの少なくとも3つの同一の反応性官能基を含む少なくとも1つの多官能性化合物をブレンドすることによって特に得られた高メルトフローの分岐ポリアミドを使用してもよい。
【0056】
また、高メルトフローのポリアミドとして、星形高分子鎖及び適切な場合は直鎖高分子鎖を含む星形ポリアミドを使用してもよい。このような星形高分子鎖を含むポリマーは、例えば、国際公開第97/24388号パンフレット及び国際公開第99/64496号パンフレットの文書に記載されている。
【0057】
これらの星形ポリアミドは、ポリアミドモノマーの存在下で、重合の間、アミノ酸またはカプロラクタムなどのラクタム、アミン官能基またはカルボン酸官能基タイプの少なくとも3つの同一の反応性官能基を含む少なくとも1つの多官能性化合物をブレンドすることによって特に得られる。用語「カルボン酸」は、カルボン酸及びそれらの誘導体、例えば酸無水物、酸塩化物及びエステルを意味する。用語「アミン」は、アミン及びアミド結合を形成することができるそれらの誘導体を意味する。
【0058】
従って、本発明の多価アルコールはポリアミド重合の間に添加される。溶融重合が特に好ましく、場合により水以外の溶剤を含有しない重合媒体を用いて、液体状態で行われる。重合媒体は例えば、モノマーを含む水溶液、またはモノマーを含む液体であってもよい。
【0059】
重合の間の添加は一般に、多価アルコールとポリアミドとの間の共有結合の形成をもたらす。特に、これらの共有結合は、多価アルコールを組成物から「洗浄」することにつながる現象を低減、制限または更に防ぐことを可能にする場合がある。これは、冷却回路内の部品など、高温液体と接触している部品の場合、特に有用であることがある。
【0060】
本発明の方法によるポリアミド重合は特に、標準的なポリアミド重合の操作条件下で行われる。ポリアミド重合は、多価アルコールが存在しない場合の重合と全く同様な条件下で行なわれてもよい。
【0061】
従って、その態様の別の態様によって本発明の主題は、ポリアミド重合を可能にする、特に温度及び圧力の条件下にポリアミド先駆物質を多価アルコールと接触させて置き、その後に、その回収を行なう工程を含む、ポリアミド重合方法である。前記先駆物質はポリアミドモノマー、塩、オリゴマー及び/またはプレポリマーであってもよい。
【0062】
このような重合方法は、簡潔にいうと、
a)ポリアミドのモノマーの混合物を撹拌しながら且つ加圧下で加熱する工程と、
b)所定の時間にわたって加圧及び温度下に混合物を維持すると共に適したデバイスによってスチームを除去し、その後に除圧し、従って、形成された水の除去によって重合を継続するために、特に窒素または真空下に混合物の融点を超える温度において所定の時間にわたって維持する工程とを含んでもよい。
【0063】
ジカルボン酸モノマー及びジアミンモノマーから出発する重合は一般に、3つのステージを含む。第一のステージは、「N塩」として公知の、ジ(アンモニウムカルボキシレート)塩水溶液の濃縮である。この工程の後にアミド化が行われるが、それは、以下の段階、即ち、加圧下の蒸留段階と除圧段階とを一般に含む、酸とアミン官能基との縮合である。次いで、所望の重合度が達せられるまで縮合が大気圧においてまたは真空下で継続される。このステージは最終ステージと称される。次いで、ポリアミドは一般に押出され、次に粒状化段階として粒状にされる。
【0064】
ラクタム及びアミノ酸から出発する重合、特にポリアミド6の製造は、モノマーと水とを混合する工程、加熱工程、場合により、圧力を増加させる工程、その後に、除圧工程、場合により、真空下での仕上工程、一般に、得られた生成物の粒状化工程、抽出工程及び乾燥工程を含んでもよい。
【0065】
多価アルコールは、ポリアミド66については、「N塩」を濃縮する工程の開始前、またはポリアミド6については、モノマーと水とを混合する工程の開始前に導入されてもよく、仕上工程の終了前に導入されてもよい。多価アルコールをポリアミドを構成するモノマーの混合物に添加することが特に好ましい。また、この多価アルコールは、加圧下の蒸留段階の後、好ましくは除圧段階の後に導入されてもよい。また、多価アルコールは、仕上工程の開始と終了との間に導入されてもよい。
【0066】
ポリアミドの重合方法は、連続的または回分式であり得る。
【0067】
連続法の場合、除圧段階は、フラッシャーを通過させることによって行なわれ、多価アルコールは、フラッシャーの入口から、特に除圧工程の開始時に、フラッシャーを通過させることによって導入されてもよい。
【0068】
回分法の場合、多価アルコールをポリアミドのモノマーの混合物と一緒に添加することが好ましい。
【0069】
多価アルコールをポリアミド重合の開始時、間または終了時に、ジアミンまたは二酸の量の存在下または非存在下で添加して、反応性官能基の完全な化学量論を確実にすることができる。化学量論のこの調節は特に、改良されたポリアミドの鎖の大きさを変えることを可能にする。
【0070】
本発明の多価アルコールタイプの安定剤は、ポリアミドまたはポリアミドのモノマーのアミン及び/またはカルボン酸官能基と化学結合することができる。
【0071】
多価アルコールは、重合の終了時に、または「後期の」添加で添加されてもよく、それは前記アルコールとポリアミド鎖またはポリアミドモノマーとの反応数を制限することを可能にする。従って多価アルコールは主に、ポリアミド中で主に遊離形態のままであり、即ち共有結合によって結合していない。
【0072】
従って多価アルコールをポリアミド重合の間または終了時に反応媒体に添加することができる。ポリアミド重合の終了時に、特に、ポリアミド化反応器を空にする直前に多価アルコールを溶融流として添加することができる。ポリアミド化反応器の押出ダイの前に置かれたスタティックミキサーを使用することによって溶融ポリアミドと多価アルコールとの混合物の均質性を得ることができる。
【0073】
多価アルコールを固体形態で、例えば粉末またはフレークの形態で、溶融形態で、適した溶剤中の、例えば水中の分散体または溶解された形態として反応媒体に添加してもよい。
【0074】
本発明のポリアミドを使用して、様々な化合物、充填剤及び/または添加剤を混合することによって一般に得られるポリアミド組成物を製造してもよい。当該方法は、様々な化合物の性質によって、程度の差はあるが大体高温において及び程度の差はあるが大体高剪断力において行なわれる。化合物を同時にまたは連続的に導入することができる。一般に押出装置を使用し、その中で材料を加熱し、次に溶融し、剪断力を加え、搬送する。特定の実施形態によって、場合により溶融体中の予混合物を、最終組成物を調製する前に調製することができる。例えば、マスターバッチを製造するために樹脂中の、例えばポリアミドの予混合物を調製することができる。
【0075】
本発明による組成物は、1つまたは複数の他のポリマー、好ましくはポリアミドまたはコポリアミドを含んでもよい。
【0076】
本発明による組成物は、組成物の全重量に対して、先述の重合方法によって得られた、本発明によるポリアミド20重量%〜90重量%、有利には20重量%〜70重量%及びより有利には35重量%〜65重量%を含んでもよい。
【0077】
また、組成物は、強化剤または増量剤を含んでもよい。
強化剤または増量剤は、ポリアミド組成物の製造のために慣例的に使用される充填剤である。強化繊維充填剤、例えばガラス繊維、炭素繊維または有機繊維、非繊維質充填剤、例えば粒状またはラメラ充填剤及び/または剥脱性または非剥脱性ナノ充填剤、例えばアルミナ、カーボンブラック、粘土、リン酸ジルコニウム、カオリン、炭酸カルシウム、銅、珪藻土、黒鉛、マイカ、シリカ、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、ウォラストナイト、ポリマー充填剤、例えば、ジメタクリレート粒子、ガラスビーズまたはガラス粉末などが特に挙げられる。
【0078】
有利には、強化用繊維、例えばガラス繊維が特に使用される。好ましくは、最も広範囲に使用される繊維は、7〜14μmの直径及び5mm未満の長さを有する「細断」タイプのガラス繊維である。これらの充填剤は、繊維とポリアミド母材との間の機械的接着を確実にする表面サイズを有することができる。
【0079】
本発明による組成物は、組成物の全重量に対して強化剤または増量剤5重量%〜60重量%及び有利には10重量%〜40重量%を含むことができる。
【0080】
上に定義されたようなポリアミドを含む本発明による組成物は、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤、即ち、ポリアミド組成物の衝撃強さを改良することができる化合物を含む。これらの耐衝撃性改良剤は有利には、ポリアミドと反応する官能基を含む。
【0081】
本発明によって、用語「ポリアミドと反応する官能基」は、特に、共有結合性、イオン結合または水素結合相互作用またはファンデルワールス結合によってポリアミドの酸またはアミン官能基と反応するかまたは化学的に相互作用することができる基を意味する。このような反応性基は、ポリアミド母材中の耐衝撃性改良剤の十分な分散を確実にすることを可能にする。十分な分散は一般に、母材中の0.1〜2μmの平均サイズを有する耐衝撃性改良剤粒子によって得られる。
【0082】
ポリアミドの不均衡ΔEG=CEG−AEG(酸末端基の濃度CEG−アミン末端基の濃度AEG)の酸またはアミン性質の関数としてポリアミドと反応する官能基を含む耐衝撃性改良剤が有利には使用される。従って、例えば、ΔEGが「酸」である場合(CEG>AEG)、有利には、特に、共有結合性、イオン結合または水素結合相互作用またはファンデルワールス結合によってポリアミドの酸官能基と反応するかまたは化学的に相互作用することができる反応性官能基が使用される。例えば、ΔEGが「アミン」である場合(AEG>CEG)、特に、共有結合性、イオン結合または水素結合相互作用またはファンデルワールス結合によってポリアミドのアミン官能基と反応するかまたは化学的に相互作用することができる反応性官能基が好ましくは使用される。「アミン」性質のΔEGを示すポリアミドと反応する官能基を有する耐衝撃性改良剤が有利には使用される。
【0083】
耐衝撃性改良剤は、例えばエチレン/アクリル酸(EAA)製品に関してポリアミドと反応する官能基をそれら自体に非常によく含むことができる。
【0084】
また、例えば無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)について一般にグラフト化または共重合によって、ポリアミドと反応する官能基をそれに付加することができる。
【0085】
本発明によって、以下のモノマーの少なくとも1つまたはそれらの混合物を含むオリゴマーまたはポリマー化合物である耐衝撃性改良剤を使用してもよく、即ち、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ジエン、アクリレート、ブタジエン、スチレン、オクテン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、ビニルエステル、例えばアクリル酸及びメタクリル酸エステル及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。また、本発明によるこれらの化合物は、更に、上述のモノマー以外のモノマーを含むことができる。
【0086】
エラストマーベースとして公知である場合がある耐衝撃性改良剤化合物のベースは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)ゴム、エチレン及びブテンゴム、エチレン及びアクリレートゴム、ブタジエン及びスチレンゴム、ブタジエン及びアクリレートゴム、エチレン及びオクテンゴム、ブタジエン及びアクリロニトリルゴム、エチレン/アクリル酸(EAA)製品、エチレン/酢酸ビニル(EVA)製品、エチレン/アクリル酸エステル(EAE)製品、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)コポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)コポリマー、メタクリレート/ブタジエン/スチレン(MBS)タイプのコアー/シェルエラストマー、または上に列挙された少なくとも2つのエラストマーの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0087】
また、上に列挙された群の他にこれらの耐衝撃性改良剤は、ポリアミドと反応する官能基、例えば、特に、以下の官能基、即ち、酸、例えばカルボン酸、塩化された酸、エステル、特に、アクリレート及びメタクリレート、イオノマー、グリシジル基、特にエポキシ基、グリシジルエステル、無水物、特に無水マレイン酸、オキサゾリン、マレイミドまたはそれらの混合物を一般にグラフト化または共重合されて含むことができる。エラストマー上のこのような官能基は、例えば、エラストマーの調製の間にコモノマーを使用することによって得られる。
【0088】
ポリアミドと反応する官能基を含む耐衝撃性改良剤として、エチレン、アクリル酸エステル及びグリシジルメタクリレートのターポリマー、エチレンの及びブチルエステルアクリレートのコポリマー、エチレン、n−ブチルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのコポリマー、エチレンの及び無水マレイン酸のコポリマー、無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、無水マレイン酸でグラフト化されたスチレン/マレイミドコポリマー、無水マレイン酸で修飾されたスチレン/エチレン/ブチレン/スチレンコポリマー、無水マレイン酸でグラフト化されたスチレン/アクリロニトリルコポリマー、無水マレイン酸でグラフト化されたアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー、及びそれらの水素化された変種が特に挙げられる。
【0089】
全組成物中の耐衝撃性改良剤の重量比は、組成物の全重量に対して特に3%〜25%及び有利には4%〜8%である。
【0090】
また、本発明による組成物は、組成物の熱及び/または光安定化に関与する他の添加剤を含んでもよく、例えば、CuI及びKI対、ヒンダードフェノール化合物、HALSタイプの少なくとも1つのヒンダードアミン単位を有する安定剤、有機または鉱物リン系安定剤、例えば次亜リン酸ナトリウムまたはマンガンを含む群から選択される添加剤を含んでもよい。
【0091】
一変形形態によると、それは組成物の全重量に対して0.1重量%〜1.5重量%及び特に0.5重量%〜1.2重量%の範囲のCuI/KI含有量を含む。
【0092】
別の変形形態によると、それはCuI/Kハロゲンタイプの安定剤の限定された含有量を含むかまたは更に含有量ゼロである。
【0093】
また、組成物は、例えば
− ヒンダードフェノール、及び
− HALSタイプの少なくとも1つのヒンダードアミン単位を有するタイプの安定剤の限定された含有量を含むかまたは更に含有量ゼロであってもよい。
【0094】
用語「限定された含有量」は、組成物の全重量に対して0.5重量%以下、特に0.2重量%、特に0.1重量%または更に0.05重量%の含有量を意味する。
【0095】
また、本発明による組成物は、ポリアミド組成物の製造において通常使用される添加剤を含むことができる。従って、潤滑剤、難燃剤、可塑剤、成核剤、紫外線防止剤、触媒、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、マット化剤、成形助剤または他の従来の添加剤が挙げられてもよい。
【0096】
特定の実施形態によって、組成物はまた、少なくとも1つの充填剤、特に以下に規定されたような特に補強充填剤、特に以下に規定されたような少なくとも1つの難燃剤、及び/または特に以下に規定されたような少なくとも1つの添加剤を含み、これらの化合物はおそらく、説明に示される内容において存在している。
【0097】
変種によって、組成物は、難燃剤、特にトリアジンタイプの難燃剤を含有しない。
【0098】
これらの充填剤及び添加剤は、例えば、重合の間または溶融ブレンディングによって各々の充填剤または添加剤に適した通常の手段によって、改良されたポリアミドに添加されてもよい。
【0099】
特定の実施形態によって、多価アルコールは、
− 特に20重量%〜90重量%の範囲の含有量の、ポリアミドと、
− 場合により、特に5重量%〜60重量%の範囲の含有量の、強化剤及び/または増量剤と、
− 場合により、特に3重量%〜25重量%の範囲の含有量の、耐衝撃性改良剤と、
− 場合により、特に0〜15重量%の範囲の含有量の、添加剤を含むかまたは更にそれからなる組成物中で、特に1重量%〜5重量%の範囲の含有量において使用され、
重量パーセントは組成物の全重量に対してである。
【0100】
ポリアミド組成物は一般に、組成物に関与する様々な化合物を低温条件下でまたは溶融体中でブレンドすることによって得られる。プロセスは、様々な化合物の性質によって多少高いかまたは低い高温及び多少高いかまたは低い高剪断力において行われる。化合物は同時にまたは連続的に導入することができる。一般に押出装置を使用し、その中で材料を加熱し、次に溶融し、剪断力を加え、搬送する。
【0101】
全ての化合物を単一操作の間に、例えば押出操作の間に溶融相においてブレンドすることができる。例えば、ポリマー材料の粒体をブレンドして、それらを溶融して多少高いかまたは低い高剪断にかけるためにそれらを押出装置内に導入することができる。特定の実施形態によると、最終組成物を調製する前に化合物の一部を溶融体中で予めブレンドすることも溶融体中でなく予めブレンドすることもできる。
【0102】
本発明による組成物は、押出装置を使用して調製されるとき、粒体の形で状態調節されるのが好ましい。粒体は、物品を得るために溶融を含むプロセスを用いて形成されるものとする。従って、物品は組成物から構成される。通常の実施形態によると、改良されたポリアミドは例えば二軸スクリュー押出装置で棒状体の形で押出され、次に、粒体に細断される。次いで、上記のように製造された粒体を溶融し、溶融組成物を成形装置、例えば射出成形装置に供給することによって成形品を製造する。
【0103】
本発明による組成物は、プラスチックを成形するための任意のプロセス、例えば、成形プロセス、特に射出成形、押出、押出ブロー成形、あるいは回転成形などにおいて使用されてもよい。押出法は特に紡糸法またはフィルムを製造するための方法であってもよい。
【0104】
また、本発明は、含浸布タイプの物品または連続繊維を含有する複合物品の製造に関する。これらの物品は特に、布と固体または溶融状態の本発明によるポリアミド組成物とを接触して置くことによって製造されてもよい。布は、特に、接着剤による接着、フェルト化、編組、製織または編成などの任意の方法によって一体化される糸または繊維を集成することによって得られた繊維表面である。また、これらの布は、例えばガラス繊維、炭素繊維等をベースとした繊維または糸状網目構造と称される。それらの構造物はランダム、一方向性(1D)または多方向性(2D、2.5D、3Dまたはその他)であってもよい。
【0105】
また、本発明は、例えば押出、成形、または射出成形によって本発明による組成物を成形することによって得られた物品に関する。物品として、例えば、自動車産業またはエレクトロニクス及び電気工業において使用される物品が挙げられる。
【0106】
特に、物品は、特に当該説明において規定されたような充填剤、特に補強充填剤を含む。
【0107】
「高温、特に80℃以上の温度に曝露される用途のために製造された物品」という表現は一般に、高温にされる、流体、即ち液体またはガスを含有するかまたは輸送するために製造された物品、例えば、約100℃の最適且つほとんど一定の温度にエンジンを保持することが意図される自動車の冷却回路の物品を意味する。従って、本発明によるこれらの物品は、それらを高温に曝露するそれらの用途によって規定される。これは、機能の通常のモードにおいてこの技術的制約に基づいたそれらの設計、製造及び使用目的を含む。
【0108】
その態様の別の態様によって、本発明の主題は、長時間加熱を含む、特に、高温液体または流体との長時間接触を含む用途においての物品の使用である。この接触は、500時間または1000時間超程度であってもよい。
【0109】
高温に晒される物品として、挙げられてもよい例には、水/グリコール冷却回路の物品、例えばラジエータタンク、移送管、温度自動調節タンク、脱ガスタンク、ラジエータ、空気回路の物品、例えばターボ管、空気/空気交換器(中間冷却器)、ターボ冷却器の空気インレットまたはアウトレットボックス、排ガス再循環回路、空気取入器及び関連配管、触媒コンバータ、エンジンファン群の部品、中間冷却器、及び油回路の物品、例えばシリンダーヘッドカバー、油溜め、油濾過装置、分配溜め及び送油アセンブリ配管などがある。これらの物品は、自動車などのエンジン駆動車の分野において公知である。
【0110】
本発明の原理の理解を容易にするために説明において特定の用語が用いられる。それにもかかわらず、これらの特定の用語を用いることによって本発明の範囲に制限が加えられることはないと理解されなければならない。用語「及び/または」は、及び、または及びこの用語に関連する要素の他の可能な全ての組み合わせの意味を包含する。
【0111】
本発明の他の詳細または利点は、単に一例として示された以下の実施例に照らし合わせてより明白になるであろう。
【実施例】
【0112】
実験の部
特性決定
標準ISO 307による蟻酸中の溶液としての粘度指数(mL/g単位のIV)
【0113】
酸末端基(CEG)及びアミン末端基(AEG)含有量:電位差測定によって分析され、meq/kg単位で表される。
【0114】
融点(Mp)及び関連エンタルピー(ΔHf)、並びに冷却時の結晶化温度(T
c):10℃/分の速度でPerkin Elmer Pyris 1装置を用いた示差走査熱量分析(DSC)によって測定される。
【0115】
比較例1:PA66の調製
150g(0.572モル)のN塩(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の1:1塩)、136gの脱イオン水及び2gの消泡剤を重合反応器内に置いた。ポリアミド66をポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって272℃において30分の仕上によって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。
【0116】
得られたポリマーは以下の特性を有する:CEG=85.7meq/kg、AEG=43.7meq/kg、及び135mL/gのIV。
【0117】
実施例1:DPEの存在下でのPA66の調製(最終ポリアミド中に2.5重量%の目標「DPE構造」の含有量)
150g(0.572モル)のN塩(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の1:1塩)、90%のジペンタエリトリトールと10%のモノペンタエリトリトール(MPE)との混合物、即ち0.0127モルのDPEと0.0026モルのMPEとを含む、Acrosによって供給された90%のジペンタエリトリトール(DPE)3.6g、136.3gの脱イオン水及び2gの消泡剤を重合反応器内に置いた。DPEの存在下で重合されるポリアミド66をポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって272℃において30分の仕上げによって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。
【0118】
得られたポリマーは以下の特性を示す:CEG=52.8meq/kg、AEG=88.1meq/kg。従ってそれは、DPEを使用せずに合成されたPA66と比較して、カルボン酸末端官能基よりも多いアミン末端官能基を含有し、DPE及びMPEをポリアミド鎖に結合するグラフト反応が生じたことを示す。粘度指数はIV=104.6mL/gである。ポリマーは半結晶性であり、以下の熱的特性を有する:Tc=224.5℃、Mp=261.8℃(ポリアミド66の値に等しい値)。
【0119】
DPEの存在下で重合したPA66は、DPEを使用せずに重合したPA66のΔEG=CEG−AEG=42meq./kgとは対照的にΔEG=CEG−AEG=−35.3meq./kgを有し、それは、DPE(及びMPE)がそのヒドロキシル官能基によってアジピン酸の酸官能基と77.3meq./kgの比率まで部分的に反応したことを示す。DPEによって与えられたヒドロキシル官能基の量は、(6×0.0127+4×0.0026)×1000/((150×226.34/262.34+3.6)/1000)=651meq/kgである。DPE(及びMPE)の反応したヒドロキシル官能基のモル分率は、DPE及びMPE中の反応したヒドロキシル官能基の量の、ヒドロキシル官能基の初期量に対する比に等しく、即ち77.3/651=12%である。ヒドロキシル官能基の等しい反応性が考えられる場合、これは、1のDPEに対して平均で0.7のヒドロキシル官能基が反応し、1のMPEに対して0.5のヒドロキシル官能基が反応したことを意味する。平均で、これはDPEの70モル%が結合し、MPEの50モル%がポリアミドに化学結合していることを意味する。
【0120】
比較例2:PA66の調製
80.0kg(304.9モル)のN塩、72.8kgの脱イオン水及び5.5gの消泡剤Silcolapse 5020(登録商標)を重合反応器に添加する。ポリアミドをポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって275℃において30分の仕上によって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。
【0121】
得られたポリマーは137.5mL/gの粘度指数を有する。
【0122】
実施例2:DPEの存在下でのPA66の調製(最終ポリアミド中に2重量%の目標「DPE構造」の含有量)
80.0kg(304.9モル)のN塩、1.38kg(5.43モル)のジペンタエリトリトール、72.8kgの脱イオン水及び5.5gの消泡剤Silcolapse 5020(登録商標)を重合反応器内に置いた。改良されたポリアミドDPEをポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって275℃において30分の仕上によって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。粒体は光沢のある表層アスペクトを有する。
【0123】
得られたポリマーは以下の特性を示す:CEG=54meq/kg、AEG=79meq/kg、及び106.5mL/gのIV。
【0124】
実施例3:DPEの存在下でのPA66の調製(最終ポリアミド中に3重量%の目標「DPE構造」の含有量)
80.0kg(304.9モル)のN塩、2.07kg(8.15モル)のジペンタエリトリトール、72.8kgの脱イオン水及び5.5gの消泡剤Silcolapse 5020(登録商標)を重合反応器内に置いた。改良されたポリアミドDPEをポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって275℃において30分の仕上によって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。粒体は光沢のある表層アスペクトを有する。
【0125】
得られたポリマーは以下の特性を示す:CEG=44meq/kg、AEG=96meq/kg。
【0126】
実施例4及び5:調合物の調製
押出の前に、実施例2及び3及び比較例2のポリアミド粒体を1500ppm未満の含水量に乾燥させる。40kg/hにおいて及び270rpmの速度において運転するWerner & Pfleiderer ZSK 40二軸スクリュー同時回転押出機内で様々な成分及び添加剤を溶融ブレンドすることによって調合物を調製する。8つの領域の温度設定はそれぞれ:250、255、260、260、265、270、275、280℃である。調合物の全ての成分を押出機の開始時に添加する。押出機を出た棒状体を水槽中で冷却し、粗砕機を用いて粒体の形に切断し、粒体を熱封止バッグに包装する。射出成形する前に、1500ppm未満の湿分を得るために粒体を乾燥させる。
【0127】
得られた調合物は以下の通りである。
− 比較例C3:比較例C2のポリアミド+AJAY Europe製のCuI/KI+ガラス繊維(Owens Corning Vetrotex製のOCV983)
− 比較例C4:比較例C2のポリアミド+DPEと呼ばれる、Perstorp製のジペンタエリトリトール「Di−penta」+ガラス繊維
− 実施例4:実施例2のポリアミド+ガラス繊維
− 実施例5:実施例3のポリアミド+ガラス繊維
【0128】
ISO 527/1A標準に従って引張機械的性質(引張弾性率、破壊応力、終局ひずみ−5つの試料で得られた平均値)及びISO 179−1/1eU標準に従って衝撃機械的性質(ノッチなしシャルピー(Charpy)−10個の試料で得られた平均値)を空気中で熱老化の前と後に23℃において特性決定するために、調製された調合物を厚さ4mmの多機能試験片の形で、80℃の型温度を有する280℃のDemag 50Tプレス上に射出する。
【0129】
空気通風される熱老化は、170℃または210℃に調節されたHeraeus TK62120インキュベータ内に試験片を置くことによって行われる。様々な老化時間において、試験片をインキュベータから取り出し、室温に冷却し、それらの機械的性質を評価する前にそれらが一切の湿気を吸収しないように熱封止バッグ内に置く。
【0130】
次に、与えられた老化時間においての引張破壊強さまたは衝撃強さの保持率が、老化前のこれらの同じ性質に対して決定される。従って、保持率はパーセンテージとして決定される。
【0131】
調合物及び性質を以下の表1に記載する。
【0132】
【表1】
【0133】
従って、DPEの存在によって、CuI/KI混合物に対して、通風炉内で210℃で老化後に衝撃強さの保持率及び極限引張強さを改良できることが明らかに観察された。これは所望の効果である。他方、全く驚くべきことに、重合の間にDPEを導入することによって押出の時にそれが導入される場合よりも引張機械的性質及び衝撃機械的性質の両方の保持率を高めることが観察される。
【0134】
更に、耐老化性もまた、CuI/KI混合物に対して、重合の間にDPEを導入することによって170℃において改良される。
【0135】
実施例6:工業用ヤーンのための調合物の調製
押出の前に、比較例2のポリアミド粒体を1500ppm未満の含水量に乾燥させる。40kg/hにおいて及び270rpmの速度において運転するWerner & Pfleiderer ZSK 40二軸スクリュー同時回転押出機内で添加剤を溶融ブレンドすることによって調合物を調製する。8つの領域の温度設定はそれぞれ:250、255、260、260、265、270、275、280℃である。調合物の全ての成分を押出機の開始時に添加する。押出機を出た棒状体を水槽中で冷却し、粗砕機を用いて粒体の形に切断し、粒体を熱封止バッグに包装する。射出成形する前に、1500ppm未満の湿分を得るために粒体を乾燥させる。
【0136】
得られた調合物は以下の通りである。
− 比較例C5:比較例C2のポリアミド+DPEと呼ばれる、Perstorp製のジペンタエリトリトール「Di−penta」、粒体は艶消しの表層アスペクトを有する。
【0137】
実施例2及びC5を190℃の窒素ストリーム下、固定床内で固体の形態で後縮合して、押出の前にそれらの粘度指数を増加させる。
【0138】
バッチの押出を直径18mmの一軸スクリュー押出機によって1kg/hで実施し、そのための5つの領域の温度設定はそれぞれ:280、290、295、295、300℃である。押出パックは、直径48mmの10μm織金属フィルターと0.33*4Dの14個の孔を有するダイとを備え、その公称温度は実施例2については293℃及び比較例C5については285℃に設定される。押出はBarmag SW4ワインダーによって450m/分で行なわれ、サイズ剤としてヤーン上に1%のDelionF5103を使用する。
【0139】
実施例及び性質を以下の表2に記載する。
【0140】
【表2】
【0141】
従って、後縮合の後、実施例C5の粒体は、後縮合によって拡大された滲出のために非常に艶消しの表層アスペクトを有する。
1H NMRによって分析された滲出物はDPEである。後縮合の後、実施例2の粒体はまだ、光沢のある表層アスペクトを有する。従って、本発明による添加剤の使用は、前記添加剤の滲出の有害な作用、特に装置の付着物及び添加剤の損失を防ぐ。
【0142】
更に、実施例C5のポリマーは、試験を早期に止めなければならない程、押出パックのフィルターを急速に詰まらせる。他方、本発明のポリマーは押出に問題点はない。
【0143】
実施例7:トロメタミンによって官能化されたPA66の調製
150g(0.572モル)のN塩(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の1:1塩)、Sigma−Aldridgeによって供給されたトロメタミン(THAM)2.49g(0.017モル)、1.236g(0.0085モル)のアジピン酸、136.3gの脱イオン水及び2gの消泡剤を重合反応器内に置いた。THAMの存在下で重合したポリアミド66を272℃において5分の仕上によってポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。
【0144】
得られたポリマーは以下の特性を示す:AEG=140.6meq./kg、CEG=131.1meq./kg。ポリマーは半結晶性であり、以下の熱的特性を有する:Tc=215.5℃、Mp=259.7℃(ポリアミド66の値に等しい値)。
【0145】
THAMの存在下で重合したPA66は、THAMを使用せずに重合したPA66のΔEG=CEG−AEG=42meq./kgとは対照的にΔEG=CEG−AEG=−9.5meq./kgを有し、それはTHAMが化学的に反応したことを示す。
【0146】
実施例8:ジペンタエリトリトールまたはDPEの存在下でのPA66の調製(最終ポリアミド中に3重量%の目標「DPE構造」の含有量)
150g(0.572モル)のN塩(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の1:1塩)、4.0g(0.016モル)のジペンタエリトリトール、1.1g(0.008モル、即ち117meq./kgポリアミド)のアジピン酸、136.3gの脱イオン水及び2gの消泡剤を重合反応器内に置いた。DPEの存在下で重合されるポリアミド66をポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって272℃において30分の仕上によって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。
【0147】
得られたポリマーは以下の特性を示す:CEG=80.2meq/kg、AEG=55.8meq/kg。DPEの存在下で重合したPA66は、ΔEG=CEG−AEG=24.4meq./kgを有する。DPEを使用せずにまたはアジピン酸で補償して重合した比較例1のPA66はΔEG=CEG−AEG=42meq./kgを有し、それは、多価アルコールがそのヒドロキシル官能基によってアジピン酸の酸官能基と117+42−24.4=135meq./kgの比率まで部分的に反応したことを示す。実施例1の計算と同様に、多価アルコールの反応したヒドロキシル官能基の平均モル分率は135/721=19%である。ヒドロキシル官能基の等しい反応性が考えられる場合、これは、1のDPEに対して平均で1.1ヒドロキシル官能基が反応し、1のMPEに対して0.7のヒドロキシル官能基が反応したことを意味する。平均で、これはDPEの全てが結合したこと、及びMPEの70モル%がポリアミドに化学結合していることを意味する。
【0148】
実施例9:トリペンタエリトリトールまたはTPEの存在下でのPA66の調製(最終ポリアミド中に3重量%の目標「TPE構造」の含有量)
150g(0.572モル)のN塩(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の1:1塩)、4.0g(0.011モル)のトリペンタエリトリトール、0.8g(0.005モル、即ち80meq./kgのPA)のアジピン酸、136.3gの脱イオン水及び2gの消泡剤を重合反応器内に置いた。トリペンタエリトリトール(TPE、Aldrich)の存在下で重合したポリアミド66をポリアミド66タイプの重合の標準的な方法によって272℃において30分の仕上によって製造する。得られたポリマーを棒状体の形態でキャストし、冷却し、棒状体を切断することによって粒体に形成する。
【0149】
得られたポリマーは以下の特性を示す:CEG=76.1meq/kg、AEG=60.4meq/kg。TPEの存在下で重合したPA66は、ΔEG=CEG−AEG=15.7meq./kgを有する。TPEを使用せずにまたはアジピン酸で補償して重合した比較例1のPA66はΔEG=CEG−AEG=42meq./kgを有し、それは、多価アルコールがそのヒドロキシル官能基によってアジピン酸の酸官能基と80+42−15.7=107meq./kgの比率まで部分的に反応したことを示す。実施例1の計算と同様に、多価アルコールの反応したヒドロキシル官能基の平均モル分率は107/642=17%である。ヒドロキシル官能基の等しい反応性が考えられる場合、これは、1のTPEに対して平均で1.3ヒドロキシル官能基が反応したことを意味する。平均で、これはTPEの全てがポリアミドに化学結合していることを意味する。