特許第6333719号(P6333719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333719試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333719
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/02 20060101AFI20180521BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20180521BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B03C1/02 B
   B03C1/00 A
   G01N1/28 J
   G01N33/48 A
【請求項の数】23
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-508371(P2014-508371)
(86)(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公表番号】特表2014-514152(P2014-514152A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012032423
(87)【国際公開番号】WO2012148648
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年2月12日
【審判番号】不服2016-9539(P2016-9539/J1)
【審判請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/479,778
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ライピン
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 松岡 智也
【審判官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/022994(WO,A1)
【文献】 特表昭63−501139(JP,A)
【文献】 特開2002−86015(JP,A)
【文献】 特開2004−99584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置であって、
磁場源と、
先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、
先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドと、
前記第1の磁場ガイドの長手軸及び前記第2の磁場ガイドの長手軸に平行な長手軸を有する単一の線形の流路から構成されている導管と
を備えており、
前記第1及び第2の磁場ガイドの1又は複数は、前記磁場源からの磁束を増やすように構成されており、
前記第1及び第2の磁場ガイドの前記先端は、互いに略向かい合って平行に並べられており、
前記装置は、前記試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の磁場ガイドは、先細になっているか又は前記先端で丸みを帯びている断面外形を有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の磁場ガイドの前記先端は、線形外形又は鋸歯状外形を夫々有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の磁場ガイドは夫々軟磁石を備えており、前記磁場源は永久磁石を備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第2の磁場源を更に備えており、
前記第1の磁場ガイドは、前記第2の磁場ガイドに対向する前記磁場源の表面に配置され、該磁場源からの前記磁束を増やすように構成されており、
前記第2の磁場ガイドは、前記第1の磁場ガイドに対向する前記第2の磁場源の表面に配置され、該第2の磁場源からの磁束を増やすように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記磁場源及び前記第2の磁場源は、略同一方向に並ぶ磁化ベクトルを有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の磁場ガイドは夫々、単一の先端を有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記磁場源の下流側に配置された音波凝集装置を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離する方法であって、
(a)(i) 磁場源と、
(ii) 先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、
(iii)先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドと
を備えた磁気分離装置を通して試料の流れを導くように構成された導管を前記磁気分離装置内に位置付け、前記第1及び第2の磁場ガイドの1又は複数は、前記磁場源からの磁束を増やすように構成されており、前記第1の磁場ガイドの前記先端は、前記第2の磁場ガイドの前記先端の近位にあり該先端に略平行であり、前記導管は前記第1の磁場ガイドの長手軸及び前記第2の磁場ガイドの長手軸に平行な長手軸を有する単一の線形の流路から構成されていることと、
(b) 前記試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために、前記試料に磁場を印加することと
を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記導管を前記磁場から離れて位置付けることと、
前記導管内に保持された前記磁気的に標識が付された部分を回収することと
を更に有することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記導管を前記磁場から離れて位置付けることは、前記磁気分離装置から前記導管を取り除くこと、及び前記導管から離れて前記磁場源を動かすことのうちの1又は複数を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料に磁場を印加する前に、前記試料中の対象部分に磁気標識を特異的に付着することを更に有することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料は生体試料を有していることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の磁場ガイドは夫々、単一の先端を有していることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記磁場源の下流側に配置された音波凝集装置を更に備えていることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項16】
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するためのシステムであって、
(a) 前記試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための1又は複数の磁気分離装置であって、該1又は複数の磁気分離装置の夫々は、
(i) 磁場源と、
(ii) 先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、
(iii)先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドと
を備えており、
前記第1及び第2の磁場ガイドの1又は複数は、前記磁場源からの磁束を増やすように構成されており、前記第1の磁場ガイドの前記先端は、前記第2の磁場ガイドの前記先端の近位にあり該先端に略平行であり、前記磁気分離装置は、前記試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されている前記磁気分離装置と、
(b) 前記磁気分離装置内に位置付けられ、前記磁気分離装置を通して前記試料の流れを導くように構成された導管と
を備えており、
前記導管は、前記第1の磁場ガイドの長手軸及び前記第2の磁場ガイドの長手軸に平行な長手軸を有する単一の線形の流路から構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項17】
前記導管は、磁場勾配を強める材料を実質的に含まないことを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
第1の磁気分離装置と、該第1の磁気分離装置の下流側に配置された第2の磁気分離装置とを備えていることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記1又は複数の磁気分離装置の下流側に配置されたフローサイトメータを更に備えていることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1及び第2の磁場ガイドは夫々、単一の先端を有していることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記磁場源の下流側に配置された音波凝集装置を更に備えていることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置であって、
磁場源と、
先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、
先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドと
を備えており、
前記第1及び第2の磁場ガイドの1又は複数は、前記磁場源からの磁束を増やすように構成されており、
前記第1及び第2の磁場ガイドは夫々、単一の先端を有しており、
前記第1及び第2の磁場ガイドの前記先端は、互いに略向かい合って平行に並べられており、
前記装置は、前記試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項23】
前記磁場源の下流側に配置された音波凝集装置を更に備えていることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0001】
【特許文献1】米国特許第5945281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
磁気的免疫検査が記載されており、該磁気的免疫検査では、磁性粒子に結合された検体特異抗体が、試料溶液からの検体の磁気分離を容易にするために、対象の検体に磁気的に標識を付すために使用される。典型的には、磁気的に標識が付された検体が試料チャンバの側部又は底部に凝集された後、試料流体は取り除かれる。このような検査は、捕捉された検体を試料流体から分離するために、試料処理のための流体工学を必要とし、本質的に複数のステップを有する。
【0003】
米国特許第5945281号明細書は磁気的免疫検査を記載しており、該磁気的免疫検査では、標識が付された対象検体は、試料流体から磁気的に分離され、試料チャンバから光学解析のための検出領域内に移動する。試料中の対象検体が、磁気捕捉剤及び標識を有する複合体を形成するように、試料は、磁気捕捉試薬及び標識を含有する試料チャンバに加えられる。複合体を検出領域に運ぶために複合体に電位が印加され、検出領域における複合体の存在が判断される。
【0004】
米国特許第6858440号明細書、米国特許第6645777号明細書、米国特許第6630355号明細書及び米国特許第6254830号明細書は、参照によって本明細書に夫々組み込まれ、試料容器の側部に食品試料中の病原菌を磁気的に凝集し、凝集した細胞を試料容器の側部を通して光学的に検出するための磁気集束免疫センサを記載している。磁気集束免疫センサは、集束磁石と、励磁及び検出光を伝送するために集束磁石の側部に取り付けられた光ファイバとを備えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置及び方法が提供される。前記装置の実施形態では、1又は複数の磁場源に配置された磁場ガイドが備えられており、磁場ガイドは、先端がある楔状部分を夫々有する。磁場ガイドの先端は、互いに略向かい合って平行に並べられている。ある場合では、前記装置は、試料の流れが磁場ガイドの先端に略平行であるように、試料の流れを磁場ガイドの先端の極めて近くに運ぶための導管を備えている。
【0006】
本開示の実施形態は、試料中の磁気的に標識が付された部分の磁気分離を高効率、高流量及び低コストで実現する。例えば、本開示の実施形態は、磁性粒子で標識が付されている細胞及び他の分子を生物学的流体試料から分離するために使用される。場合によっては、磁気的に標識が付された部分の試料からの分離の効率は、磁場源によって生成される磁場及び磁場勾配によって決まる。ある場合では、磁気標識への力、ひいては磁気分離の効率は、磁場及び磁場勾配の生成によって決まる。それ故、本開示の実施形態は、同一空間的位置で、例えば、試料が流れる磁場ガイドの先端間の領域及び/又は先端の近位にある領域で高磁場及び高磁場勾配の両方を実現してもよい。前記装置によって生成される高磁場及び高磁場勾配は、前記装置の分離効率を高め、それ故、高処理量で分離するために前記装置を介した試料流量を増加させ得る。
【0007】
ある実施形態では、前記装置は、前記装置を通って流れる試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されている。ある場合では、前記装置は、単一の磁場源などの磁場源を備えている。他の場合では、前記装置は、流体導管の両側に配置されてもよい第1の磁場源及び第2の磁場源を備えている。場合によっては、磁場源は、電磁石などの他の種類の磁石ではなく、永久磁石であってもよい。磁場源として永久磁石を含む装置の実施形態は、外部電源を必要とせずに持続性磁場を提供し、それ故、電磁石などの他の種類の磁石を備えた装置よりも複雑ではなく、製造コスト及び作動コストが低い。
【0008】
前記装置はまた、第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドを備えている。1つの磁場源を備えた装置の実施形態では、第1及び第2の磁場ガイドは、磁場源の両側に配置されてもよい。第1及び第2の磁場源を備えた装置の他の実施形態では、第1の磁場ガイドは、第2の磁場源に対向する第1の磁場源の表面に配置されてもよく、第2の磁場ガイドは、第1の磁場源に対向する第2の磁場源の表面に配置されてもよい。第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドは、先端がある楔状部分を夫々有する。第1及び第2の磁場ガイドは、第1の磁場ガイドの先端が第2の磁場ガイドの先端と略向かい合って平行に並べられているように配置されている。場合によっては、磁場ガイドは軟磁石である。
【0009】
各磁場ガイドは、楔状部分を有し、関連付けられた磁場源からの磁束を磁場ガイドの先端の近位にある領域の方へ導くように構成されてもよい。ある場合では、磁場ガイドの楔状部分は、磁場源と磁場ガイドとの間の界面であって比較的大きな断面積を有する界面から、比較的小さな断面積を有する磁場ガイドの先端に磁束を集束させる。磁場ガイドの楔状部分は、磁場ガイドを通して磁束を伝送する間に磁束漏れを最小限にし、関連付けられた磁場源からの磁束を集束させるように構成されてもよい。ある実施形態では、磁場ガイドの先細の楔状部分は、関連付けられた磁場源からの磁束を集束させ、その結果、磁場ガイドの先端の近位にある(例えば、先端の近く及び/又は先端間の)領域で磁場源からの磁束が増加する。磁場ガイドの先端の近位にある(例えば、先端の近く及び/又は先端間の)領域で結果として生じる高磁場強度及び高磁場勾配は、解析される試料中の標識が付されていない部分からの磁気的に標識が付された部分の分離の効率を上げる。
【0010】
前記装置を通した試料流体の流れを導くための流体導管は、流体導管の長手軸が第1及び第2の磁場ガイドの先端に略平行であるように、磁場ガイドの先端間の領域又は先端の近位にある領域に位置付けられてもよい。このように、ある実施形態では、試料流体は、磁場ガイドの先端の極めて近くに且つ該先端に略平行に流れるよう導管によって導かれる。磁場ガイドの先端の極めて近くに且つ該先端に略平行に導管を位置付けることにより、試料流体の流れが磁場ガイドの先端の近位にある領域で局所的に高い磁場及び磁場勾配に晒される時間を最大限にし、それ故、前記装置の分離効率が高まる。
【0011】
試料は導管を通って流れるので、試料中の磁気的に標識が付された部分は、前記装置によって生成された磁場により導管内に保持される。試料中の標識が付されていない部分は、導管内に保持されず、前記装置を通って流れる。保持された磁気的に標識が付された部分は、導管を磁場から離れて位置付けて、磁気的に標識が付された部分を導管から流し出すことによって回収され得る。導管は、手動で又は自動で磁場内に位置付けられてもよいし、磁場から離れて位置付けられてもよい。ある場合では、導管は、臨床用途に適する、例えば単回使用の導管などの使い捨てであってもよい。
【0012】
本開示の態様は、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するためのシステムであって、本明細書に記載されるような1又は複数の磁気分離装置を備えたシステムを更に含む。ある実施形態では、システムは、2つの磁気分離装置、例えば第1の磁気分離装置、及び第1の磁気分離装置の下流側に配置された第2の磁気分離装置を備えている。第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端は、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端と略同じ外形を有してもよい。例えば、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端と第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端とは、線形外形を夫々有してもよい。他の実施形態では、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端は、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端とは異なる外形を有する。例えば、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端は線形外形を夫々有してもよく、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端は鋸歯状外形を夫々有してもよい。
【0013】
従って、本開示の実施形態は、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置を含む。前記装置は、磁場源と、先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドとを備えている。第1及び第2の磁場ガイドの1又は複数は、磁場源からの磁束を増やすように構成されており、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端と略向かい合って平行に並べられており、前記装置は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されている。
【0014】
前記装置の実施形態はまた、第1及び第2の磁場ガイドの両方が、磁場源からの磁束を増やすように構成されていることを含んでもよい。
【0015】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドのうちの1又は複数の断面外形が、先端で先細になっていることを含んでもよい。
【0016】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドのうちの1又は複数が、先端で丸みを帯びた断面外形を有することを含んでもよい。
【0017】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端から第1の磁場ガイドの長さに沿って略一定の距離にあることを含んでもよい。
【0018】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイドの先端は、0.1mmから5mmまでの範囲で第2の磁場ガイドの先端から距離を置いていることを含んでもよい。
【0019】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイドの先端及び第2の磁場ガイドの先端は、線形外形を夫々有することを含んでもよい。
【0020】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイドの先端及び第2の磁場ガイドの先端は、鋸歯状外形を夫々有することを含んでもよい。
【0021】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドは、90度以下の頂角を夫々有することを含んでもよい。
【0022】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドは、軟磁石を夫々有することを含んでもよい。
【0023】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイドと第2の磁場ガイドとの間に位置付けられ、装置を通した試料の流れを導くように構成された導管を含んでもよい。
【0024】
前記装置の実施形態はまた、導管の長手軸が第1の磁場ガイドの長手軸及び第2の磁場ガイドの長手軸に略平行であるように、導管が位置付けられていることを含んでもよい。
【0025】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドが磁場源の両側に配置されていることを含んでもよい。
【0026】
前記装置の実施形態はまた、第2の磁場源を含んでもよい。
【0027】
前記装置の実施形態はまた、第1の磁場ガイドが、第2の磁場ガイドに対向する磁場源の表面に配置され、磁場源からの磁束を増やすように構成されており、第2の磁場ガイドが、第1の磁場ガイドに対向する第2の磁場源の表面に配置され、第2の磁場源からの磁束を増やすように構成されていることを含んでもよい。
【0028】
前記装置の実施形態はまた、前記装置が、前記装置内に導管を自動的に位置付けるように構成されていることを含んでもよい。
【0029】
前記装置の実施形態はまた、第1及び第2の磁場ガイドの先端の近位にある導管の断面寸法が、第1及び第2の磁場ガイドの先端より遠位の断面寸法より小さいように、導管は先細の断面形状を有することを含んでもよい。
【0030】
前記装置の実施形態はまた、導管が、磁場勾配を強める材料を実質的に含有しないことを含んでもよい。
【0031】
前記装置の実施形態はまた、導管が、磁場から離れて位置付けられ得るように構成されていることを含んでもよい。
【0032】
前記装置の実施形態はまた、磁場源が永久磁石を有することを含んでもよい。
【0033】
前記装置の実施形態はまた、永久磁石が希土類磁石を有することを含んでもよい。
【0034】
ある実施形態では、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離する方法が提供される。前記方法は、磁気分離装置を通して試料の流れを導くように構成された導管を磁気分離装置内に位置付けることと、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために磁場を印加することとを有する。磁気分離装置は、磁場源と、先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドとを備えており、第1及び第2の磁場ガイドの1又は複数は、磁場源からの磁束を増やすように構成されており、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端の近位にあり先端に略平行である。
【0035】
前記方法の実施形態はまた、位置付けることは、導管の長手軸が第1の磁場ガイドの長手軸及び第2の磁場ガイドの長手軸に略平行であるように、導管を前記装置内に位置付けることを有することを含んでもよい。
【0036】
前記方法の実施形態はまた、導管を磁場から離れて位置付けることと、導管内に保持された磁気的に標識が付された部分を回収することとを含んでもよい。
【0037】
前記方法の実施形態はまた、導管を磁場から離れて位置付けることは、導管を装置から取り除くことを有することを含んでもよい。
【0038】
前記方法の実施形態はまた、導管を磁場から離れて位置付けることは、導管から離れて磁場源を移動することを有することを含んでもよい。
【0039】
前記方法の実施形態はまた、回収することが、磁気的に標識が付された部分を導管から流し出すことを有することを含んでもよい。
【0040】
前記方法の実施形態はまた、試料に磁場を印加する前に、試料中の対象部分に磁気標識を特異的に付着させることを含んでもよい。
【0041】
前記方法の実施形態はまた、試料が生体試料を含有することを含んでもよい。
【0042】
ある実施形態では、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するためのシステムが提供される。前記システムは、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための1又は複数の磁気分離装置を備えており、1又は複数の磁気分離装置の夫々は、磁場源と、先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドとを有している。第1及び第2の磁場ガイドの1又は複数は、磁場源からの磁束を増やすように構成されており、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端の近位にあり該先端に略平行であり、前記磁気分離装置は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されている。前記システムはまた、磁気分離装置内に位置付けられ、磁気分離装置を通して試料の流れを導くように構成された導管を備えている。
【0043】
前記システムの実施形態はまた、導管の長手軸が第1の磁場ガイドの長手軸及び第2の磁場ガイドの長手軸に略平行であるように、導管が位置付けられていることを含んでもよい。
【0044】
前記システムの実施形態はまた、前記システムが1つの磁気分離装置を備えていることを含んでもよい。
【0045】
前記システムの実施形態はまた、前記システムが、第1の磁気分離装置と、第1の磁気分離装置の下流側に配置された第2の磁気分離装置とを備えていることを含んでもよい。
【0046】
前記システムの実施形態はまた、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端が、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端と略同じ外形を有することを含んでもよい。
【0047】
前記システムの実施形態はまた、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端と、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端とが、線形外形を夫々有することを含んでもよい。
【0048】
前記システムの実施形態はまた、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端が、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端とは異なる外形を有することを含んでもよい。
【0049】
前記システムの実施形態はまた、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端が、線形外形を夫々有し、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端が、鋸歯状外形を夫々有することを含んでもよい。
【0050】
前記システムの実施形態はまた、1又は複数の磁気分離装置の下流側に配置されたフローサイトメータを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1(a)】本開示の実施形態に係る2つの磁場源を備えた磁気分離装置を示す概略正面図である。
図1(b)】本開示の実施形態に係る2つの磁場源を備えた磁気分離装置を示す概略側面図である。
図1(c)】本開示の実施形態に係る2つの磁場源を備えた磁気分離装置を示す概略3次元斜視図である。
図2(a)】本開示の実施形態に係る導管を示す長手方向の概略断面図である。
図2(b)】本開示の実施形態に係る導管を示す概略正面図である。
図3(a)】本開示の実施形態に係る磁気分離装置内の磁場ガイド間に位置付けられた導管を示す概略正面図である。
図3(b)】本開示の実施形態に係る磁気分離装置内の磁場ガイド間に位置付けられた導管を示す概略正面図である。
図4(a)】本開示の実施形態に係る磁気分離装置を示す概略正面図である。
図4(b)】本開示の実施形態に係る鋸歯状外形を有する磁場ガイドを備えた磁気分離装置を示す概略側面図である。
図5】本開示の実施形態に係る磁場ガイドを横切って位置付けられた導管を示す概略図である。
図6(a)】本開示の実施形態に係る、磁場ガイドの先端間の距離が1.4mmである磁気分離装置について図1(a)に示されているような磁場ガイド間の間隙に亘ってシミュレーションされた磁場を示すグラフである。X軸は、図3(a)に示されているような磁場ガイドの先端間で左から右に間隙の中央に沿っている。
図6(b)】本開示の実施形態に係る、磁場ガイドの先端間の距離が1.4mmである磁気分離装置について図1(a)に示されているような磁場ガイド間の間隙に亘ってシミュレーションされた磁場勾配を示すグラフである。X軸は、図3(a)に示されているような磁場ガイドの先端間で左から右に間隙の中央に沿っている。
図6(c)】本開示の実施形態に係る、磁場ガイドの先端間の距離が1.4mmである磁気分離装置について図1(a)に示されているような磁場ガイド間の間隙に亘ってシミュレーションされた磁場と絶対磁場勾配との積を示すグラフである。X軸は、図3(a)に示されているような磁場ガイドの先端間で左から右に間隙の中央に沿っている。
図7】本開示の実施形態に係る磁気分離装置、音波凝集装置(acoustic concentrator)及びフローサイトメータを備えたシステムを示す概略図である。
図8(a)】本開示の実施形態に係る1つの磁場源を備えた磁気分離装置を示す概略正面図である。
図8(b)】本開示の実施形態に係る1つの磁場源を備えた磁気分離装置を示す概略3次元斜視部分図である。
図9】本開示の実施形態に係る、導管ホルダに動作可能に結合され、磁気分離装置内の磁場ガイドの先端の極めて近くに位置付けられた導管を示す概略断面図である。
図10(a)】本開示の実施形態に係る導管ホルダに動作可能に結合された導管を示す概略正面図である。
図10(b)】本開示の実施形態に係る導管ホルダに動作可能に結合された導管を示す概略3次元斜視図である。
図11】本開示の実施形態に係る、導管ホルダに動作可能に結合され、磁気分離装置内に位置付けられた導管を示す3次元斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置が提供される。前記装置の態様は、磁場源と、先端がある楔状部分を有する第1の磁場ガイドと、先端がある楔状部分を有する第2の磁場ガイドとを含んでいる。第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端と略向かい合って平行に並べられており、前記装置は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されている。また、前記装置を用いる方法に加えて、前記装置及び方法と共に使用すべく構成されたシステム及びキットも提供される。
【0053】
本発明を更に詳細に説明する前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されておらず、言うまでもなく変更され得ることを理解すべきである。更に、本発明の範囲が添付の請求項によってのみ限定されているので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけに用いられており、限定することを意図していないことを理解すべきである。
【0054】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が別段に明示しない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値が本発明に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として本発明に包含される。記載された範囲が限度のうちの一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限度の一方又は両方を除外した範囲も本発明に包含される。
【0055】
ある範囲が、用語「約」の後に続く数値と共に本明細書に示されている。用語「約」の後に続く正確な数字と、用語「約」の後に続く数字に近いか又は近似した数字との文字どおりのサポートを提供するために、用語「約」が本明細書に使用されている。数字が具体的に述べられた数字に近いか又は近似した数字であるか否かを決定する際に、述べられていない近いか又は近似した数字は、数字が示されている文脈で、具体的に述べられた数字の実質的な同値を示す数字であってもよい。
【0056】
本明細書に使用されている全ての技術的な用語及び科学的な用語は、別の方法で定義されていない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に述べられている方法及び材料と同様の又は相当する全ての方法及び材料が本発明の実施又は試験で更に使用され得るが、典型的な例証となる方法及び材料を説明する。
【0057】
本明細書に引用されている全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許が、具体的に且つ個別に参照によって組み込まれると示されているかのように参照によって本明細書に組み込まれ、刊行物の引用に関連する方法及び/又は材料を開示して記載すべく、参照によって本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであって、先行発明を理由として、本発明がこのような刊行物に先行する権限がないことを認めるものであるとみなされるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認する必要がある。
【0058】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」が、本明細書及び請求項で用いられている場合、文脈が別段に明示しない限り、複数の指示対象を含むことを留意すべきである。更に、請求項がいかなる選択的な要素も排除して記載されていることを留意すべきである。従って、この記述は、請求項の要素の記載に関する「唯一の(solely)」、「のみの(only)」等の排他的用語の使用、又は「否定的な(negative)」限定の使用のための先行記載として機能すべく意図される。
【0059】
明瞭化のために別個の実施形態で述べられている本発明のある特徴が、単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよいと認識される。逆に、簡潔化のために単一の実施形態で述べられている本発明の様々な特徴が別々に提供されてもよく、又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。1つ1つの組み合わせが、このような組み合わせが実施可能な処理及び/又は装置/システム/キットを包含する程度に個々に明示的に開示されているように、実施形態の全ての組み合わせが特に本発明によって包含され、本明細書に開示されている。更に、このような可変性要素について述べている実施形態に記載されている全てのサブコンビネーションも、化学基の1つ1つのこのようなサブコンビネーションが本明細書に個々に明示的に開示されているように特に本発明によって包含され、本明細書に開示されている。
【0060】
当業者が本開示を読むと明らかであるように、本明細書に説明され例示された個々の実施形態は夫々、別々の構成要素及び特徴を有しており、別々の構成要素及び特徴は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、又はいずれかの特徴と容易に組み合わされてもよい。全ての記載された方法は、記載された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。
【0061】
本開示の実施形態について更に説明する際に、まず、本装置の実施形態の態様を更に詳細に説明する。次に、本装置と使用されてもよい方法、システム及びキットの実施形態を検討する。
【0062】
装置
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置が提供される。装置は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分(例えば、磁気標識と結合されていない部分)から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されてもよい。場合によっては、装置は、装置内で磁気的に標識が付された部分を保持しながら、対象ではない部分を保持しないことによって、対象ではない部分(例えば、磁気的に標識が付されていない部分)から対象の磁気的に標識が付された部分を分離する。対象の部分に磁気的に標識が付されるので、装置は、磁気的に標識が付された部分を装置内の磁場源に引き付け、磁気的に標識が付された部分を装置内に保持することによって、磁気的に標識が付された部分を前記装置内で保持するように構成されてもよい。他の場合では、装置は、対象ではない磁気的に標識が付された部分を装置内に保持しながら、対象である部分を保持しないことによって、対象である部分(例えば、磁気的に標識が付されていない対象の部分)から対象ではない磁気的に標識が付された部分を分離する。これらの実施形態では、対象の部分に磁気的に標識が付されないので、対象の部分は、装置内に保持されず、装置を通って流れる。装置は、磁気的に標識が付された部分を装置内の磁場源に引き付け、対象ではない磁気的に標識が付された部分を装置内に保持することによって、対象ではない磁気的に標識が付された部分を装置内に保持するように構成されてもよい。
【0063】
装置は、液体試料を解析するためのフロースルー式装置として構成されてもよい。「フロースルー式」とは、液体試料が、入口を通って装置に入り、導管などの流路内で装置を通して運ばれ、次いで出口を通って装置を出ることを意味する。試料は装置を通って流れるので、装置は、装置を通して試料の連続的な流れを運び、試料中の磁気的に標識が付された部分を連続的に分離するように構成されてもよい。ある実施形態では、装置は、1μL/分以上、例えば10μL/分以上の流量であって、50μL/分以上、又は100μL/分以上、又は200μL/分以上、又は300μL/分以上、又は400μL/分以上、又は500μL/分以上、又は750μL/分以上、又は1mL/分以上、又は2mL/分以上、又は5mL/分以上、又は10mL/分以上を含む流量を有するように構成されている。
【0064】
磁気分離装置は、単純試料又は複合試料から磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されてもよい。「単純試料」とは、1又は複数の磁気的に標識が付された部分と、いくつかの、もしあれば溶媒とは別の他の分子種とを含有する試料を意味する。「複合試料」とは、対象の1又は複数の磁気的に標識が付された部分を含有し、対象ではない多くの他の分子、例えば様々なタンパク質、細胞なども含有する試料を意味する。ある実施形態では、複合試料は血液試料であり、血液試料とは、血液又はその一部、例えば血清を意味する。ある実施形態では、複合試料は血清試料である。ある実施形態では、本明細書に開示された装置を用いて検査される複合試料は、10以上、例えば20以上、100以上、例えば103 以上、104 以上(例えば15,000、20,000又は25,000以上など)の分子構造の点で互いに異なる別個の(すなわち、異なる)分子部分を含有する試料である。
【0065】
ある実施形態では、装置は、磁気的に標識が付された部分を生体試料から分離するように構成されている。「生体試料」は、生物から取得される様々な試料種類を包含し、診断検査又はモニタリング検査で使用され得る。例えば、生体試料は、血液、血液由来試料、及び生物学的起源の他の液体試料、例えば生検標本などの固体組織試料又は固体組織試料から取り出される組織培養若しくは細胞、及びその子孫を包含する。生体試料はまた、生体試料を調達した後に任意の手法で、例えば、試薬を用いた処理、可溶化、ある要素についての濃縮化、又は標識付与(例えば、磁気標識を用いた標識付与)などによって操作された試料を含んでもよい。用語「生体試料」は、臨床試料を包含し、培養細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、生体液及び組織試料も包含する。
【0066】
対象の部分は、本明細書に開示されている装置によって検出可能な磁気標識と安定的に結合され得るあらゆる部分を含んでもよい。「安定的に結合される」とは、磁気標識及び対象の部分が、使用条件下で、例えば検査条件下で空間内で互いに関連した位置を維持することを意味する。このように、磁気標識及び対象の部分は、非共有的に又は共有的に互いに安定的に結合され得る。非共有的結合の例は、非特異性吸着、静電気(例えば、イオン、イオン対相互作用)に基づく結合、疎水性相互作用、水素結合相互作用、対象の部分又は磁気標識に共有結合された特異的結合対要素を通した特異的結合、それらの組み合わせなどを含む。共有結合の例は、磁気標識と対象の部分に存在する官能基、例えば−OHとの間に形成された共有結合を含み、官能基は、導入された連結基の要素として自然に発生しているか又は存在してもよい。従って、磁気標識は、対象の部分の表面に吸着され、物理吸着され、化学吸着され、又は共有結合されてもよい。
【0067】
磁場源
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置の実施形態の態様は、1又は複数の磁場源を含む。磁場源は、磁場を生成するように構成されてもよい。ある場合では、磁場源は、不均一な磁場を生成する。「不均一な」とは、磁場が磁場勾配を有することを意味し、磁場の強度は磁場内の位置によって異なる。例えば、磁場は、磁場勾配を有してもよく、磁場強度は、1つの領域で強く、その領域から更に離れた位置に向かって徐々に低下する。それ故、磁場源は、磁場勾配を有する磁場を生成するように構成されてもよい。
【0068】
場合によっては、装置は、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するために十分な磁場を生成するように構成されている。試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための磁場の能力は、様々なパラメータ、例えば磁場強度、磁場勾配、磁気標識の種類、磁気標識のサイズ、磁気的に標識が付された部分と磁場源との距離などによって決まる。場合によっては、磁場が磁気標識に作用することができる力は、磁場強度及び磁場勾配に比例する。ある場合では、磁場源は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために十分な磁力を有する磁場を生成するように構成されている。例えば、磁場と磁場勾配との積が、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために十分であるように、磁場源は、磁場勾配を有する磁場を生成するように構成されてもよい。
【0069】
磁場源は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を容易に分離するあらゆる形状のものであってもよい。例えば、磁場源が磁場源の横幅よりも大きい長さを有するように、磁場源は細長くてもよい。
【0070】
ある実施形態では、装置は、試料の流れが磁場源の近位にあるように、装置を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。磁場源と試料との距離を最小限にし、それによって磁場源と試料中の磁気的に標識が付された部分との距離を最小限にすることにより、磁気的に標識が付された部分を装置内に保持することが容易になる。ある場合では、装置は、磁場源の近位にある流路の長さを最大限にするように、装置を通して試料の流れを導くように構成されている。例えば、試料の流れが磁場源の長手軸に略平行であるように、装置は、装置を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。
【0071】
ある実施形態では、装置は1つの磁場源を備えている。ある場合では、磁場源は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために十分な磁場を生成するように構成されている。例えば、磁場源は、装置内に磁気的に標識が付された部分を保持するために十分な磁場を生成するように構成されてもよい。1つの磁場源を含む実施形態では、試料が磁場源の近くの領域を通って流れるように、装置は、装置を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。ある場合では、試料の流れが、磁場源の長手軸に略平行であるように、装置は、装置を通して試料の流れを導くように構成されている。装置はまた、磁場源によって生成された磁場及び磁場勾配が最も強い磁場源の近くの領域を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。
【0072】
他の実施形態では、装置は、任意の数の磁場源、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45又は50、又はそれ以上の磁場源を必要に応じて備えてもよいが、装置は2つの磁場源を備えている。例えば、装置は、第1の磁場源及び第2の磁場源を備えてもよい。ある場合では、第1の磁場源及び第2の磁場源は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために十分な不均一な磁場(例えば、磁場勾配を有する磁場)を生成するように構成されている。第1の磁場源及び第2の磁場源は、磁気的に標識が付された部分を装置内に保持するために十分な磁場を生成するように構成されてもよい。ある実施形態では、第1及び第2の磁場源は、磁場が第1及び第2の磁場源間の領域内に生成されるように配置されている。このように、第1及び第2の磁場源は、第1及び第2の磁場源間の領域内に磁気的に標識が付された部分を保持するために十分な磁場を生成するように構成されてもよい。
【0073】
ある実施形態では、第1の磁場源は第2の磁場源に対向する表面を有しており、第2の磁場源は第1の磁場源に対向する表面を有しており、そのため、これら2つの表面が互いに対向する。第2の磁場源に対向する第1の磁場源の表面は、略平面であってもよい。同様に、第1の磁場源に対向する第2の磁場源の表面は、略平面であってもよい。場合によっては、互いに対向する第1の磁場源の表面及び第2の磁場源の表面は互いに略平行である。これらの場合では、第1及び第2の磁場源の対向する表面は、互いに略一定の距離に設けられてもよい。他の実施形態では、第1の磁場源の一端部が、第1の磁場源の反対側端部よりも第2の磁場源により近いように、第1及び第2の磁場源の対向する表面は互いに平行ではない。ある場合では、第1の磁場源及び第2の磁場源は両方とも細長い。第1の磁場源の長手軸は、第2の磁場源の長手軸に略平行であってもよい。
【0074】
第1の磁場源及び第2の磁場源を含む実施形態では、第1の磁場源の磁化ベクトル及び第2の磁場源の磁化ベクトルは、略同一方向に並べられてもよい。場合によっては、第1の磁場源及び第2の磁場源が略同一方向に並べられた磁化ベクトルを有することにより、第1の磁場源と第2の磁場源との間の領域における磁場及び磁場勾配の形成が容易になる。ある実施形態では、第1の磁場源の磁化ベクトルは、第2の磁場源に対向する表面に略垂直である。ある場合では、第2の磁場源の磁化ベクトルは、第1の磁場源に対向する表面に略垂直である。場合によっては、第1及び第2の磁場源の磁化ベクトルは両方とも、第1及び第2の磁場源の互いに対向する表面に略垂直であり、略同一方向に並べられる。
【0075】
第1及び第2の磁場源を含む実施形態では、装置は、試料が第1の磁場源と第2の磁場源との間の領域を通って流れるように、装置を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。ある場合では、上記のように、第1及び第2の磁場源は、第1及び第2の磁場源の長手軸が略平行であるように並べられている。これらの場合では、装置は、試料の流れが第1及び第2の磁場源の長手軸に略平行であるように、装置を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。装置はまた、第1及び第2の磁場源によって生成された磁場及び磁場勾配が最も強い第1の磁場源と第2の磁場源との間の領域を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。
【0076】
磁場源は、永久磁石、電磁石、超伝導磁石、それらの組み合わせなどを含んでもよい。ある実施形態では、磁場源は、1又は複数の永久磁石を含む。「永久磁石」は、磁場が、時間が経つにつれて実質的に減少しないような持続性磁場を有する磁性材料から形成されている。対照的に、用語「軟磁石」は、印加される外部磁場の存在下で磁化され得る材料から形成されているが、外部磁場が取り除かれると前記材料の磁性は実質的に減少する。磁場源が1又は複数の永久磁石を含む実施形態では、永久磁石の使用により、磁場源に動力を供給するために装置に入力される外部エネルギーを必要とすることなく、磁場の生成が容易になる。ある場合では、永久磁石は、略同じ磁場強度及び磁場勾配を有する磁場を生成する電磁石又は超伝導磁石よりもコストが低い。これらの場合では、永久磁石の使用により、磁場源のコストが減少し、それ故、装置全体のコストが減少する。ある場合では、磁場源が1又は複数の永久磁石を含むとき、永久磁石の使用により、電磁石及び/又は超伝導磁石を備えた装置よりも簡易な装置の製造が容易になる。例えば、永久磁石を備えた装置の実施形態は、電磁石及び/又は超伝導磁石と関連付けられた要素、例えば電源、磁場源と関連付けられた電気回路、電磁石及び/又は超伝導磁石と関連付けられた冷却要素、温度センサなどを含む必要がない。
【0077】
場合によっては、磁場源は、2以上の永久磁石を含む。永久磁石は、あらゆる望ましい形状を有してもよく、場合によっては、立方体又は棒状の永久磁石であってもよい。ある場合では、磁場源は、1cmから100cmまで、例えば1cmから75cmまでの範囲であって、1cmから50cmまで、又は1cmから25cmまで、又は1cmから10cmまで、又は5cmから10cmまで、例えば5cmから6cmまでを含む範囲の長さと、0.1cmから100cmまで、例えば0.1cmから75cmまでの範囲であって、0.1cmから50cmまで、又は0.1cmから25cmまで、又は0.1cmから10cmまで、又は0.1cmから5cmまで、又は0.1cmから2cmまで、又は0.5cmから2cmまで、例えば1cmから1.5cmまでを含む範囲の幅と、0.1cmから100cmまで、例えば0.1cmから75cmまでの範囲であって、0.1cmから50cmまで、又は0.1cmから25cmまで、又は0.1cmから10cmまで、又は0.1cmから5cmまで、又は0.1cmから2cmまで、又は0.5cmから2cmまで、例えば1cmから1.5cmまでを含む範囲の高さとを有してもよい。
【0078】
磁場源は、永久磁石、例えば希土類磁石であってもよい。希土類磁石は、サマリウムコバルト磁石(例えば、SmCo5 )、ネオジム合金(NdFeB)磁石(例えば、Nd2 Fe14B)などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0079】
ある実施形態では、磁場源は、0.01Tから10Tまで、又は0.01Tから5Tまで、又は0.01Tから2Tまで、又は0.1Tから2Tまで、又は0.1Tから1.5Tまでの範囲であって、0.1Tから1Tまでを含む範囲の磁場を生成する。ある場合では、磁場源は、0.1T/mmから10T/mmまで、例えば0.1T/mmから7T/mmまで、又は0.1T/mmから5T/mmまで、又は0.1T/mmから3T/mmまで、例えば0.1T/mmから2T/mmまでの範囲であって、0.1T/mmから1T/mmまでを含む範囲の磁場勾配(例えば、絶対磁場勾配)を有する磁場を生成するように構成されている。場合によっては、磁場と磁場勾配(例えば、絶対磁場勾配)との積が、0.001T2 /mmから100T2 /mmまで、例えば0.01T2 /mmから75T2 /mmまでの範囲であって、0.1T2 /mmから50T2 /mmまで、又は0.1T2 /mmから25T2 /mmまで、又は0.1T2 /mmから10T2 /mmまで、又は0.1T2 /mmから5T2 /mmまで、又は0.1T2 /mmから3T2 /mmまで、例えば0.1T2 /mmから1T2 /mmまでを含む0.1T2 /mmから2T2 /mmまでを含む範囲内であるように、磁場源は磁場勾配を有する磁場を生成する。
【0080】
磁場ガイド
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置の態様はまた、1又は複数の磁場ガイドも含む。磁場ガイドは、磁場源から試料流路まで磁場を導くように構成されてもよい。場合によっては、磁場ガイドは、磁場源によって生成された磁場を集束させるように構成されている。磁場ガイドは、磁場源の磁束を増やすことによって、磁場を集束させてもよく、磁束は、所与の表面積を通過する磁場の量(例えば、磁場密度)である。磁束は、磁場強度、表面積、磁場と表面との角度によって決まる。例えば、磁場ガイドは、より小さい領域を通して磁場を導くことによって磁場を集束させ、それ故、磁束を増やしてもよい。ある場合では、より小さな領域を通して磁場を導くことにより、磁場密度を増やし、その結果、磁束が増加する。磁場源及び磁場ガイドは、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために十分な磁束を生成するように構成されてもよい。場合によっては、磁場ガイドは、0.01Tから10Tまで、又は0.01Tから5Tまで、又は0.01Tから2Tまで、例えば0.1Tから2Tまでの範囲であって、0.5Tから1.5Tまでを含む範囲の磁束密度を有する磁場を生成するように構成されている。
【0081】
ある場合では、磁場ガイドは、最小限の磁束損失で磁場を磁場源から試料流路まで導くように構成されている。ある場合では、磁場ガイドは、実質的に磁束を損失せずに磁場を磁場源から試料流路まで導くように構成されている。理論に制約させる意図は持たずに、自己減磁場が、軟磁石の表面近くの軟磁石に存在することによって、磁場ガイドは、磁束の減少を最小限にするように構成されてもよい。例えば、磁場ガイドは、最初の磁束から50%以下、例えば40%以下の磁束の減少であって、最初の磁束から30%以下、又は25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は7%以下、又は5%以下、例えば3%以下、又は2%以下、又は1%以下を含む磁束の減少で、磁場を磁場源から試料流路まで導くように構成されてもよい。
【0082】
ある実施形態では、磁場ガイドは、先細の部分を有して、磁場ガイドの先細の部分を通して磁場源から磁場を導くことによって、磁場を集束させるように構成されている。「先細の」とは、磁場ガイドの一部が、より大きい断面積のより広い端部を有しており、磁場ガイドの一部の断面積が、磁場ガイドのより狭い反対側端部に向かって次第に小さくなることを意味する。例えば、磁場ガイドは楔状部分を有してもよく、楔状部分の基部はある面積を有する。楔状部分の基部に平行な楔状部分の断面は、基部とは反対側の楔状部分の端部に向かって(すなわち、楔状部分の先端に向かって)次第に小さくなる面積を有する。
【0083】
場合によっては、磁場ガイドは、楔状部分を有しており、磁場を楔状部分の基部から楔状部分の先端まで導くように構成されている。磁場を楔状部分の基部から楔状部分の先端まで導くことにより、上記のように、磁場源からの磁場の磁束の増加が容易になる。磁場ガイドの楔状部分の先端で磁束を増やすことにより、磁場ガイドがない場合に存在する磁場及び磁場勾配よりもより強い磁場及びより強い磁場勾配が磁場ガイドの先端の近くで生成される。磁場ガイドのための他の先細の形状、例えば、角錐、円錐、錐台、それらの組み合わせなどが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
場合によっては、磁場ガイドは、先又は端部(例えば、先端)に向かって先細になっている部分を含む。例えば、磁場ガイドの断面外形は、磁場ガイドの先端で先細になっていてもよい。他の実施形態では、磁場ガイドの断面外形は、先端が丸みを帯びた(例えば、弧状の)断面外形を有するように丸みを帯びた端部に向かって先細になっている。本明細書に使用されている用語「楔状」は、断面外形が先端で先細になっている先端を有する磁場ガイドの実施形態を含むことを意味する。用語「楔状」はまた、断面外形が先端で先細になっていない先端を有する磁場ガイドの実施形態も含む。例えば、磁場ガイドの先端は、丸みを帯びている、先端を切られた、尖っていないなどの断面外形を有してもよい。磁場ガイドの先端は、磁場ガイドの先端に隣接して位置付けられた導管の幅(又は直径)と略同じ幅を有してもよい。ある実施形態では、磁場ガイドの先端は、導管の幅(又は直径)より小さい幅を有する。ある場合では、磁場ガイドの先端の幅は、5mm以下、例えば4mm以下、又は3mm以下、又は2mm以下、又は1mm以下、又は0.5mm以下、又は0.1mm以下である。
【0085】
場合によっては、磁場ガイドの楔状部分の先端は頂角を有しており、頂角は、先端で交わる磁場ガイドの2つの面の間の角度である。ある場合では、頂角は、150度以下、又は135度以下、例えば120度以下、又は105度以下であって、90度以下、又は75度以下、又は60度以下、又は45度以下、例えば30度以下を含む。ある実施形態では、頂角は60度である。
【0086】
ある実施形態では、磁場ガイドの先端は、磁場ガイドの長手軸に略平行であってもよい。加えて、磁場ガイドの先端は、磁場源の長手軸に略平行であってもよい。1つの磁場源を用いる実施形態では、磁場源は、磁場源と関連付けられた1又は複数の磁場ガイドを有してもよい。例えば、磁場源は、磁場源と関連付けられた第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドを有してもよい。ある実施形態では、装置は、磁場源の第1の表面に配置された第1の磁場ガイドと、同じ磁場源の第2の表面に配置された第2の磁場ガイドとを備えている。場合によっては、第1及び第2の磁場ガイドは、磁場源の対向する表面に配置されている。ある実施形態では、第1の磁場ガイドは第1の先端を有する楔状であり、第2の磁場ガイドは第2の先端を有する楔状であり、第1の先端は、第2の先端と略向かい合って平行に並べられている。第1の先端は、第2の先端から第1の先端の長さに沿って略一定の距離に位置付けられてもよい。ある場合では、磁場源は、上記のように永久磁石を含んでおり、磁場源の第1及び第2の表面は磁場源のN極及びS極である。
【0087】
1以上の磁場源を含む実施形態では、各磁場源は、磁場源と関連付けられた磁場ガイドを有してもよい。各磁場ガイドは、磁場ガイドの長手軸が、磁場ガイドに関連付けられた磁場源の長手軸に略平行であるように位置付けられてもよい。
【0088】
ある実施形態では、磁場ガイドの先端は線形外形を有する。「線形」とは、磁場ガイドの先端が略直線状であることを意味する。場合によっては、磁場ガイドの先端は、非線形外形、例えば、鋸歯状、正弦波、矩形波、三角波の外形、それらの組み合わせなどを有するが、これらに限定されるものではない。非線形外形の先端を有する磁場ガイドは、先端の非線形部分の近くに磁場及び/又は磁場勾配を局所的に増加させることを容易にする。
【0089】
磁場ガイドは磁場源の近位にあってもよい。ある場合では、磁場ガイドは磁場源と接する。例えば、磁場ガイドは、磁場ガイドと磁場源との接触を容易にするように磁場源に取り付けられてもよい。上記のように、装置は1つの磁場源を備えてもよい。これらの実施形態では、磁場源は、上記のような楔状部分を含んでもよい。磁場源はまた、楔状部分と磁場源との間に延長部分を含んでもよい。磁場ガイドの延長部分は、磁場源の表面から離れた位置に楔状部分を位置付けるように構成されてもよい。例えば、磁場ガイドの延長部分は、磁場ガイドの延長部分の第1の表面の一部で磁場源に接してもよい。磁場ガイドの延長部分は、磁場源の上面より上方に延ばされてもよい。磁場源の上面の上方に延びる磁場ガイドの延長部分の第1の表面の一部は、磁場ガイドの楔状部分を有してもよい。ある実施形態では、磁場ガイドの延長部分及び楔状部分は連続している(例えば、同じ材料部品から形成されている)。他の場合では、磁場ガイドの延長部分及び楔状部分は、互いに取り付けられる別個の部品である。上記のように、装置はまた、第1の磁場ガイドとは反対側の磁場源の表面に配置された第2の磁場ガイドを備えてもよい。上記した第1の磁場ガイドと同様に、第2の磁場ガイドは、延長部分及び楔状部分を含んでもよい。第1及び第2の磁場ガイドは、第1の磁場ガイドの楔状部分の先端が第2の磁場ガイドの楔状部分の先端の近位にあるように構成されてもよい。ある場合では、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端に略平行である。第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端と向かい合って並べられてもよい。例えば、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端の略真向かいに並べられてもよい。ある実施形態では、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端と略向かい合って平行に並べられている。使用中、第1の磁場ガイドの先端と第2の磁場ガイドの先端との距離は、5cm以下、例えば2cm以下であってもよく、1cm以下、又は7mm以下、又は5mm以下、又は3mm以下、又は2mm以下、又は1mm以下を含む。
【0090】
上記のような他の実施形態では、装置は、2つの磁場源、例えば互いに近位に配置された第1及び第2の磁場源を備えてもよい。場合によっては、第1の磁場ガイドは第1の磁場源と関連付けられており、第2の磁場ガイドは第2の磁場源と関連付けられている。第1の磁場ガイドは、第2の磁場源の近位にある第1の磁場源の表面で第1の磁場源に位置付けられてもよい。例えば、磁場ガイドが楔状である実施形態では、第1の磁場ガイドの基部が第2の磁場源の近位にある第1の磁場源の表面に接するように、第1の磁場ガイドは第1の磁場源に配置されてもよい。同様に、第2の磁場ガイドは、第1の磁場源の近位にある第2の磁場源の表面で第2の磁場源に位置付けられてもよい。例えば、磁場ガイドが楔状である実施形態では、第2の磁場ガイドの基部が、第1の磁場源の近位にある第2の磁場源の表面に接するように、第2の磁場ガイドは第2の磁場源に配置されてもよい。この配置では、第1及び第2の磁場ガイドは、第1の磁場源と第2の磁場源との間に位置付けられてもよい。加えて、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端の近位にあってもよい。ある場合では、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端に略平行である。第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端と向かい合って並べられてもよい。例えば、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端の略真向かいに並べられてもよい。ある実施形態では、第1の磁場ガイドの先端は、第2の磁場ガイドの先端と略向かい合って略平行に並べられている。使用中、第1の磁場ガイドの先端と第2の磁場ガイドの先端との距離は、5cm以下、例えば2cm以下であってもよく、1cm以下、又は7mm以下、又は5mm以下、又は3mm以下、又は2mm以下、又は1mm以下を含む。
【0091】
上記のように、第1及び第2の磁場ガイドは、磁場源によって生成された磁場を集束させるように構成されてもよい。場合によっては、第1及び第2の磁場ガイドは、第1及び第2の磁場ガイドの先端の近位にある領域に磁場を集束させる。例えば、第1及び第2の磁場ガイドは、第1及び第2の磁場ガイドの先端間の領域に磁場を集束させてもよい。第1及び第2の磁場ガイドは、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために十分な第1及び第2の磁場ガイドの先端の近位にある磁束を生成するように構成されてもよい。場合によっては、第1及び第2の磁場ガイドは、0.01Tから10Tまで、又は0.01Tから5Tまで、又は0.01Tから2Tまで、例えば0.1Tから2Tまでの範囲であって、0.5Tから1.5Tまでを含む範囲の磁束密度を有する磁場ガイドの先端の近位にある磁場を生成するように構成されている。
【0092】
ある実施形態では、磁場ガイドは軟磁石を含む。用語「軟磁石」は、印加された外部磁場の存在下で磁化され得る材料から形成されているが、外部磁場が取り除かれると前記材料の磁性は実質的に減少する。軟磁石は、強磁性材料、例えば鉄(例えば、アニールされた鉄)、ステンレス鋼及びニッケル、フェリ磁性材料、例えば金属のセラミック酸化物、それらの組み合わせなどを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0093】
場合によっては、磁場ガイドは、1cmから100cmまで、例えば1cmから75cmまでの範囲であって、1cmから50cmまで、又は1cmから25cmまで、又は1cmから10cmまで、又は5cmから10cmまで、例えば5cmから6cmまでを含む範囲の長さと、0.1cmから100cmまで、例えば0.1cmから75cmまでの範囲であって、0.1cmから50cmまで、又は0.1cmから25cmまで、又は0.1cmから10cmまで、又は0.1cmから5cmまで、又は0.1cmから2cmまで、又は0.5cmから2cmまで、例えば1cmから1.5cmまでを含む範囲の幅と、0.1cmから100cmまで、例えば0.1cmから75cmまでの範囲であって、0.1cmから50cmまで、又は0.1cmから25cmまで、又は0.1cmから10cmまで、又は0.1cmから5cmまで、又は0.1cmから2cmまで、又は0.5cmから2cmまで、例えば1cmから1.5cmまでを含む範囲の高さとを有してもよい。
【0094】
本開示に係る磁気分離装置の実施形態の例は、図1(a)、図1(b)及び図1(c)の概略図に示されている。装置は、2つの軟磁場ガイド2を備えている。各軟磁場ガイド2は、永久磁石1に取り付けられている。2つの軟磁場ガイド2は、永久磁石1に取り付けられた端部から、互いに直接対向する2つの磁場ガイドの先端に向かって先細になっている形状を有する。磁場ガイド2の先端は、図1(b)及び図1(c)に示されているように略線形である。永久磁石1は、同一方向に向いて永久磁石1と磁場ガイド2との間の界面に垂直である磁化12を有する。磁場ガイド2及び永久磁石1は、永久磁石駆動型の磁束集中構造を形成し、永久磁石1からの磁束は、磁場ガイド2の先細の形状によって集束される(例えば、増やされる)。磁場ガイド2は、磁場ガイドの先端の近位にある領域で局所的に高磁束密度を生成する。場合によっては、高磁束は、磁場ガイドの先端の近位にある領域、例えば先端の近く及び/又は先端間などの領域に高磁場及び高磁場勾配を生成する。
【0095】
磁気分離装置の別の実施形態が、図4(a)及び図4(b)に示されている。図4(a)に示されているように、磁場源(例えば、永久磁石)1及び磁場ガイド2の配置は図1(a)におけるものと同じである。しかしながら、図4(b)に示されているように、線形外形を有する代わりに、磁場ガイド2は、鋸歯状外形の先端を有する。ある実施形態では、鋸歯状先端に沿った角部は局所的に強められた磁場及び磁場勾配を有しており、そのため、試料中の磁気的に標識が付されていない部分からの磁気標識及び磁気的に標識が付された部分の分離が容易になる。
【0096】
磁気分離装置の別の実施形態が、図8(a)及び図8(b)の概略図に示されている。前記装置は、2つの軟磁場ガイド2を備えている。磁場ガイド2は、同じ永久磁石1の両側に取り付けられている。磁場ガイド2は、先細の形状の楔状部分を夫々有する。磁場ガイド2の楔状部分は、磁場ガイドの先端に向かって減少する断面積を有する。磁場ガイド2の先端は、略線形であり、互いに直接対向して位置付けられている。永久磁石1は、永久磁石1と磁場ガイド2との間の界面に垂直な磁化12を有する。磁場ガイド2及び永久磁石1は、永久磁石駆動型の磁束集中構造を形成し、永久磁石1からの磁束は、磁場ガイド2の楔状部分の先細の形状によって集束される(例えば、増やされる)。磁場ガイド2は、磁場ガイドの先端の近位にある(例えば、先端の近く及び/又は先端間の)領域で局所的に高磁束密度を生成する。場合によっては、高磁束は、磁場ガイドの先端の近位にある領域で高磁場及び高磁場勾配を生成する。
【0097】
ある実施形態では、装置は、1又は複数の磁束シンク(sink)を備えている。磁束シンクは、磁場源の表面に配置されてもよい。場合によっては、磁束シンクは、磁場ガイドと接した磁場源の表面とは反対側の磁場源の表面に配置されている。ある場合では、磁束シンクは、磁場源の磁場を増やすように構成されている。磁束シンクは、磁場源の自己減磁場(例えば、永久磁石の自己減磁場)を減らすことによって磁場源の磁場を増やすように構成されてもよい。ある場合では、磁束シンクは軟磁石を含む。
【0098】
導管
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置の実施形態は、導管を更に含んでもよい。導管は、装置を通して試料の流れを導くように構成されてもよい。このように、導管は、チャネル、管、窪みなどで試料の流れ(例えば、試料溶液)を運ぶように構成されてもよい。ある実施形態では、導管が中央流路を囲む外壁によって画定されているように、導管は囲われている。中央流路は、導管の長手軸と並べられてもよい。中央流路は、あらゆる簡便な形状を有してもよく、例えば、円形、楕円形、四角形、矩形、五角形、六角形の断面外形、不規則な断面外形、それらの組み合わせなどを有する流路を有してもよいが、これらに限定されるものではない。使用中、導管はまた、試料中の磁気的に標識が付された部分を保持するように構成されてもよい。
【0099】
場合によっては、導管の少なくとも一部は、磁場ガイド間、例えば第1の磁場ガイドと第2の磁場ガイドとの間に位置付けられている。導管の長手軸が、第1の磁場ガイドの長手軸及び第2の磁場ガイドの長手軸に略平行であるように、導管は、第1の磁場ガイドと第2の磁場ガイドとの間に位置付けられてもよい。例えば、導管の長手軸が、第1及び第2の磁場ガイドの夫々の先端に略平行であるように、導管は第1及び第2の磁場ガイドの先端間に位置付けられてもよい。ある場合では、導管を磁場ガイドの先端に略平行に位置付けることにより、導管の長さ、それ故、磁場ガイドの先端間にある試料流体の流れが最大限になる。場合によっては、導管を磁場ガイドの先端に略平行に位置付けることにより、試料の流れが磁場ガイド間にある時間が最大限になる。導管を磁場ガイドの先端に略平行に並べることにより、磁気的に標識が付された部分を導管内に保持することが容易になる。
【0100】
場合によっては、導管の少なくとも一部は、磁場ガイド、例えば隣り合う第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドの近位に位置付けられている。場合によっては、導管は、第1及び第2の磁場ガイドの先端に隣接して位置付けられているが、第1及び第2の磁場ガイドの先端間には位置付けられない。ある場合では、導管が1又は複数の磁場ガイドの外面と直接接するように、導管は位置付けられている。例えば、導管が磁場ガイドの楔状部分の角度の付いた外面に接するように、導管は位置付けられてもよい。ある場合では、導管は、磁場ガイドの先端間に直接位置付けられなくてもよいが、むしろ、上記のように、先端に隣接して、磁場ガイドの外面に接する。導管の長手軸が第1の磁場ガイドの長手軸及び第2の磁場ガイドの長手軸に略平行であるように、導管は第1及び第2の磁場ガイドの近位に位置付けられてもよい。例えば、導管の長手軸が第1及び第2の磁場ガイドの夫々の先端に略平行であるように、導管は、第1及び第2の磁場ガイドに隣接して位置付けられてもよい。ある場合では、磁場ガイドの先端に略平行に導管を位置付けることにより、導管の長さ、それ故、磁場ガイドの先端に隣接する試料流体の流れが最大限になる。場合によっては、磁場ガイドの先端に略平行に導管を位置付けることにより、試料の流れが磁場ガイドの近位にある時間が最大限になる。導管を磁場ガイドの先端に略平行に並べることにより、導管内で磁気的に標識が付された部分を保持することが容易になる。
【0101】
場合によっては、導管は、磁場ガイド間に位置付けられた導管の一部でより狭い断面積を有するように構成されている。例えば、磁場ガイド間に位置付けられた導管の一部の上流側の導管の断面積は、磁場ガイド間に位置付けられた導管の一部の断面積より大きくてもよい。同様に、磁場ガイド間に位置付けられた導管の一部の下流側の導管の断面積は、磁場ガイド間に位置付けられた導管の一部の断面積より大きくてもよい。それ故、ある場合では、第1の磁場ガイドと第2の磁場ガイドとの間に位置付けられた導管の一部は、第1の磁場ガイドと第2の磁場ガイドとの間に位置付けられた導管の一部の上流側又は下流側の導管の一部の断面積より小さい断面積を有する。
【0102】
ある実施形態では、導管は、手動で磁場ガイド間に位置付けられてもよい。例えば、導管は、磁場ガイド間に手動で並べられてもよいし、磁場ガイド間から手動で取り除かれてもよい。導管は、1又は複数の位置合わせガイド、例えば、これらに限定されるものではないが、ノッチ、タブ、溝、ガイドポストなどを導管の外部に有するように構成されてもよく、そのため、導管を磁場ガイド間に位置付けることが容易になる。ある実施形態では、装置は、導管を磁場ガイド間に自動的に位置付けるように構成されてもよい。導管は、装置が導管を磁場ガイド間に位置付けるために使用する上記のような1又は複数のマーキング又は位置合わせガイドを含んでもよい。
【0103】
場合によっては、導管は、磁場から離れて位置付けられ得るように構成されており、例えば、磁場源及び磁場ガイドから離れて位置付けられ得るように構成されている。磁場から離れて導管を位置付けることにより、検査中に導管内に保持され磁気的に標識が付された部分の回収が容易になる。ある場合では、装置は、磁場ガイドから離れて導管を自動的に位置付けるように構成されてもよい。
【0104】
ある場合では、導管は、再使用可能であるように構成されている。再使用可能な導管は、検査間に洗浄されるように構成されてもよく、例えば、検査間に導管を通して洗浄液又は緩衝剤を流すことによって洗浄されるように構成されるが、これに限定されるものではない。ある場合では、導管は、装置から導管を取り除くことなく、洗浄され再使用されるように構成されてもよい。他の場合では、導管は、装置から取り除かれ、洗浄され、次いで、後の検査のために装置に再挿入されるように構成されてもよい。ある実施形態では、導管は、使い捨てであるように構成されている。使い捨てであるとは、導管が、一回又は複数回(例えば、20回以下、15回以下、10回以下、又は5回以下)使用され、次いで、処分され、新しい導管と交換されてもよいことを意味する。例えば、導管は、単回使用の導管であるように構成されてもよく、導管は、単一検査のために使用され、次いで、取り除かれ、処分されるように構成されている。新しい導管は、後の検査で使用されてもよい。
【0105】
ある実施形態では、導管は、5cm以下、例えば2cm以下であって、1cm以下、又は7mm以下、又は5mm以下、又は3mm以下、又は2mm以下、又は1mm以下を含む高さ(例えば、丸い断面外形を有さない導管の場合)又は内径(例えば、丸い断面外形を有する導管の場合)を有してもよい。導管の長さは、1cmから1000cmまで、例えば2cmから750cmまでの範囲であってもよく、5cmから500cmまで、又は5cmから250cmまで、又は10cmから100cmまで、例えば10cmから50cmまで、例えば10cmから25cmまでを含む範囲であってもよい。
【0106】
ある実施形態では、導管は、磁場勾配を強める材料を実質的に含まないように構成されている。例えば、導管は、非磁性材料及び/又は非磁化性材料から形成されてもよい。場合によっては、導管の中央流路は、(磁気標識自体を除外して)磁場勾配を強める材料を実質的に含まない。例えば、導管の中央流路は、(例えば、検査自体に使用される任意の緩衝剤及び磁気標識などを含む)試料以外のあらゆる材料(例えば、マトリクス材、磁化可能な粒子(例えば、磁化可能な球体/楕円体)、磁化可能なワイヤ、磁化可能な円柱など)を実質的に含まなくてもよい。場合によっては、磁化可能な材料などの材料を実質的に含んでいない中央流路を有する導管を備えていることにより、分離され磁気的に標識が付された部分の後の回収が容易になる。例えば、導管の中央流路に磁化可能な材料などの材料が用いられた導管と比べて導管がこのような材料を実質的に含まない場合、分離され磁気的に標識が付された部分は、導管からより簡単に流し出される。例えば、このような材料を実質的に含まない導管内の流体流路への制限がないこと及び/又は導管内で磁気的に標識が付された部分を保持する残留磁化を有する流路内の磁化可能な材料がないことにより、分離され磁気的に標識が付された部分は導管からより簡単に流し出される。
【0107】
ある実施形態では、導管は、可撓性の材料を含む。磁場ガイドは、磁場ガイド間に位置付けられている場合、場合によっては導管の表面に接してもよい。ある場合では、第1の磁場ガイド(例えば、第1の磁場ガイドの先端)は導管の表面に接し、第2の磁場ガイド(例えば、第2の磁場ガイドの先端)は導管の反対側の表面に接する。磁場ガイドは、導管にかなりの圧力を加えることなく、導管の表面に接するように構成されてもよい。他の実施形態では、装置は、第1の磁場ガイドの先端と第2の磁場ガイドの先端との間で導管を圧縮するように構成されている。場合によっては、導管の高さ(例えば、内径)が何の圧縮もなく導管の高さのほんの一部にまで圧縮されるように、導管は圧縮される。例えば、導管は、導管の最初の高さの90%以下、例えば80%以下まで圧縮されてもよく、導管の最初の高さの70%以下、又は60%以下、又は50%以下まで圧縮されてもよい。ある実施形態では、導管が導管の中心近くまで圧縮されてもよいが、導管の外側端部の方へ略同じ高さを維持してもよいように、導管は構成されている。これらの実施形態では、導管は、圧縮下で、導管の外側端部近くの流路の高さよりも低い高さを有する中央流路を有してもよい。導管のより狭い中央流路を通した流量は、導管のより広い周縁部を通した流量よりも低いため、導管の外側端部近くの流路の高さよりも低い高さを有する中央流路を有することにより、磁気的に標識が付された部分を導管内に保持することが容易になる。
【0108】
導管は、例えば、試料溶液緩衝剤、圧力、温度などの検査条件と適合するあらゆる材料から形成されてもよい。例えば、導管は、試料、試料中の部分、緩衝剤などに略反応しない材料を含んでもよい。導管は、導管が可撓性であるように可撓性材料を含んでもよい。場合によっては、導管は、上記のように導管が磁場ガイドの先端間で圧縮される場合に、導管の最初の形状から変形する及び/又は伸びるように構成されている。導管が磁場ガイド間で圧縮される場合に、導管は、壊れたり、割れたり、裂けたりすることなどなしに、導管の最初の形状から変形する及び/又は伸びるように構成されてもよい。場合によっては、導管は、ガラス、又はポリマー、例えば、これらに限定されるものではないが、シリコン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などを含む。ある実施形態では、導管は、可撓性材料、例えば可撓性ポリマー材料(例えば、シリコン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PEEKなど)を含む。
【0109】
場合によっては、導管は、導管の外面に配置された被覆層を有する。被覆層は、周囲環境から導管を保護するように構成されてもよく、場合によっては、上記のように、導管の磁場ガイド間での位置付けを容易にするために、1又は複数の位置合わせガイドを含んでもよい。被覆層は、被覆層が可撓性であるように可撓性材料を含んでもよいし、被覆層の最初の形状から変形してもよいし、及び/又は伸びてもよい。場合によっては、上記のように導管が磁場ガイドの先端間で圧縮される場合、被覆層は、被覆層の最初の形状から変形する及び/又は伸びるように構成されている。導管が磁場ガイド間で圧縮される場合に、被覆層は、壊れたり、割れたり、裂けたりすることなどなしに、最初の形状から変形する及び/又は伸びるように構成されてもよい。ある実施形態では、導管は、可撓性材料、例えば可撓性ポリマー材料(例えば、シリコン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PEEKなど)を含む。
【0110】
本開示の実施形態に係る導管の例は、図2(a)及び図2(b)に示されている。導管20は、装置を通して試料の流れを運ぶように構成された中央流路22を有する。導管は、矩形断面外形(図2(b)を参照)で構成されてもよい。場合によっては、矩形断面外形を有する導管は、装置の磁場ガイド間での導管の位置合わせを容易にする。
【0111】
図3(a)及び図3(b)は、本開示の実施形態に係る磁気分離装置内で磁場ガイド間に位置付けられた導管の概略正面図を示す。導管3は、図3(a)及び図3(b)に示されているように、磁場ガイドの対向する先端間の間隙内に位置付けられている。磁気的に標識が付された生物学的又は化学的部分を有する液体試料は、導管3内を磁場ガイドの先細の先端に沿って流れる。磁場源によって生成された磁場及び磁場勾配は、流れる試料から磁気標識及び磁気的に標識が付された部分を引き付ける。次いで、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は、磁場ガイドの先端の近位にある導管の内面に引き寄せられて保持される。それ故、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は、流れている溶液から分離され、導管内に保持される。溶液試料が導管を通って流れ、複数の磁気標識及び磁気的に標識が付された部分が流れている溶液から分離された後、導管3は、磁場ガイド2間の間隙から取り除かれ、導管内の磁場は略ゼロになる。導管内に保持された磁気標識及び磁気的に標識が付された部分を緩衝剤溶液を用いて導管から流し出すことによって、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は、導管から回収され得る。
【0112】
図3(a)は、導管3が矩形中心流路を有する実施形態を示し、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は、導管の中心の方に保持される。図3(b)は、導管が、狭くなった中心流路を有する(例えば、中心流路が、流路の周縁部近くの流路の高さよりも低い高さを有する)実施形態を示す。図3(b)では、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は、中心流路の狭くなった中心部分の近くに保持される。場合によっては、導管の側部領域は、狭くなった中心流路よりも大きい高さ間隔を有するので、溶液が導管内を流れると、導管の中心部分を通って流れる溶液は、側部領域を通って流れる溶液より遅い流量になる。それ故、ある場合では、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は、図3(a)に示されている実施形態よりも流れの大きな力(sheer force)を受けず、磁気分離効率が容易になる。
【0113】
図6(a)、図6(b)及び図6(c)は、本開示の実施形態に係る磁場ガイドの先端間の距離が1.4mmである磁気分離装置について図1(a)に示されているような磁場ガイド間の間隙に亘ってシミュレーションされた磁場(図6(a))、磁場勾配(図6(b))、磁場と絶対磁場勾配との積(図6(c))のグラフを示す。X軸は、図3(a)に示されているように磁場ガイドの先端間で左から右に間隙の中心に沿っている。図6(a)は、1.4テスラ以上の磁場がある実施形態において実現され得ることを示す。図6(b)は、図6(a)に示されている磁場プロファイルから計算された磁場勾配のグラフを示し、勾配ピークは、磁場ガイドの先端間の間隙に亘って0.8T/mm以上である。勾配値は、磁場ガイドの先端の方への磁気標識への強磁力を示す。図6(c)は、磁場と絶対磁場勾配との積のグラフを示し、積は、導管を通って流れる磁気的に標識が付された部分への磁力に比例する。場合によっては、導管内の磁気的に標識が付された部分は、磁場ガイドの先端の+/−0.5mmの範囲内に引き付けられ保持される。
【0114】
図5は、本開示の実施形態に係る磁気分離装置内に位置付けられた導管の別の実施形態を示す。図5は、磁場ガイド54及び磁場源(例えば、永久磁石)56と磁場ガイド54及び磁場源(例えば、永久磁石)56との間に位置付けられた流路58を有する導管52を備えている磁気分離装置50の概略図を示す。図5に示されている流路58は、磁場ガイドの先端の近位にある導管の断面寸法が先端より遠位の断面寸法より小さいように、先細の断面形状を有する。このため、先端が互いにより近くに位置付けられることが可能になり、更に導管52を磁場ガイド54の先端間に位置付けることが容易になる。
【0115】
導管ホルダ
ある実施形態では、装置は、導管に動作可能に結合された導管ホルダを備えている。ある場合では、導管ホルダは、導管を磁気分離装置に動作可能に結合するように構成されている。例えば、導管ホルダは、導管を磁場ガイド間に位置付けることを容易にするように構成されてもよい。ある場合では、導管ホルダは、導管の外部に取り付けられた細長いタブを含む。細長いタブが導管の長手軸に略平行であるように、細長いタブは導管の外部に取り付けられてもよい。場合によっては、導管の長手軸が、磁気分離装置の長手軸に略平行であるように、例えば上記のように磁場ガイドの先端に略平行であるように、導管ホルダは、磁気分離装置内に導管を位置付けることを容易にする。
【0116】
ある場合では、磁気分離装置は、導管に動作可能に結合された導管ホルダと嵌合するように構成されている。例えば、磁気分離装置は、導管ホルダ上の1又は複数の対応する位置合わせガイドに対応する1又は複数の嵌合要素、例えば、これらに限定されるものではないが、ノッチ、タブ、溝、チャネル、ガイドポストなどを有するように構成されてもよい。1又は複数の嵌合要素は、導管を磁気分離装置の磁場ガイド間に位置付けることを容易にする。ある場合では、磁気分離装置は、導管ホルダと嵌合するように構成されたチャネルを備えている。導管の長手軸が、磁気分離装置の長手軸に略平行であるように、例えば上記のように磁場ガイドの先端に略平行であるように、チャネルは、磁気分離装置内に導管ホルダを位置付けるように構成されてもよい。
【0117】
ある実施形態では、導管ホルダは、磁場ガイド間に手動で位置付けられてもよい。例えば、導管ホルダは、磁気分離装置の対応する嵌合要素(例えば、チャネル)と導管ホルダを並べることによって磁気分離装置内に手動で位置付けられてもよい。ある場合では、導管ホルダは、磁気分離装置から手動で取り除かれてもよい。ある実施形態では、前記装置は、導管ホルダを磁気分離装置内に自動的に位置付けるように構成されてもよい。導管ホルダは、前記装置が導管ホルダを磁気分離装置内に自動的に位置付けるために使用される上記のような1又は複数のマーキング又は位置合わせガイドを含んでもよい。
【0118】
図9は、磁気分離装置内に位置付けられた導管の概略断面図を示す。流体試料は導管901を通って流れ、導管901は、導管ホルダ902に動作可能に結合され、磁気分離装置内で磁場ガイド2の先端の極めて近くに位置付けられている。導管901は、可撓性又は剛性であり得る管であり、図9に示されているように、導管の外面で磁場ガイド2と接するが、磁場ガイドの先端間には位置付けられていない。導管ホルダ902は、導管901の長手軸が磁場ガイド2の長手軸に略平行であるように、磁気分離装置内に導管901を位置付けることを容易にする。
【0119】
図10(a)は、導管ホルダ1002に動作可能に結合された導管1001の正面図である。図10(b)は、導管ホルダ1002に動作可能に結合された導管1001の3次元概略図である。導管1001は、磁気分離装置を通して試料流体の流れを運ぶ中央流路を有する。導管1001はまた、2つの開口部1003及び1004を有しており、開口部は、必要に応じて流体貯蔵器、流体移送コネクタ又はアダプタに結合されてもよい。
【0120】
図11は、磁気分離装置1103内に位置付けられた導管ホルダ1102に動作可能に結合された導管1101の3次元斜視図である。導管1101は、図9に示されているように磁場ガイドの対向する先端間の間隙の上方に位置付けられている。磁気的に標識が付された生物学的又は化学的部分を有する液体試料は、導管1101内で磁場ガイドの先細の先端に隣接して流れる。磁場源によって生成された磁場及び磁場勾配は、流れている試料中の磁気標識及び磁気的に標識が付された部分を引き付ける。次いで、磁気標識及び磁気的に標識が付された要素は、磁場ガイドの先端の近位にある導管の内面に引き寄せられて保持される。それ故、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は、流れている溶液から分離され、導管内に保持される。試料溶液が導管を通って流れ、複数の磁気標識及び磁気的に標識が付された部分が、流れている溶液から分離された後、導管は、磁場ガイドから離れて位置付けられ、導管内の磁場は略ゼロになる。保持された磁気標識及び磁気的に標識が付された部分を溶液(例えば、緩衝剤溶液)を用いて導管から流し出すことによって、磁気標識及び磁気的に標識が付された部分は導管から回収され得る。
【0121】
磁気標識
磁気標識は、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置によって保持される部分に付される。対象の磁気標識が、例えば、磁場源間及び/又は装置の磁場ガイド間で装置によって生成された磁場の極めて近くで導管の一部を通って流れる場合、対象の磁気標識は装置によって保持されてもよい。
【0122】
本開示のある実施形態の実施に有用な磁気標識は、磁性粒子、例えば、これらに限定されるものではないが、強磁性、常磁性、超常磁性、反強磁性、又はフェリ磁性などの粒子である。場合によっては、磁性粒子は、磁場が存在しない場合には「非磁性」を表わす(例えば、略ゼロの残留磁化を有する)。略ゼロの残留磁化を有する磁性粒子は、外部磁場が存在しない場合には、溶液内で互いに実質的に凝集しない。
【0123】
磁性粒子は、生物学的環境内で化学的に安定していてもよく、検査条件における磁性粒子の使用を容易にする。ある場合では、磁性粒子が、例えば対象の検体に特異的に結合する抗体などの対象の生体分子に容易に付着されるように、磁性粒子は、生体適合性、例えば水溶性及び官能基を有する。磁性粒子を特定の抗体に結合する又は会合することによって、磁性粒子は、抗体と相補的抗原との間の特異的結合相互作用を通して特定の検体を対象にしてもよい。場合によっては、磁気標識は、互いの非共有結合又は共有結合を通して上記のようにタンパク質又は抗体に結合されてもよい。非共有的結合の例は、非特異性吸着、静電気(例えば、イオン、イオン対相互作用)に基づく結合、疎水性相互作用、水素結合相互作用、磁性粒子の表面に共有結合された特異的結合対要素を通した特異的結合などを含む。共有結合の例は、生体分子と、磁性粒子の表面に存在する官能基、例えば−OHとの間に形成された共有結合を含み、官能基は、導入された連結基の要素として自然に発生しているか又は存在してもよい。
【0124】
ある実施形態では、磁性粒子はナノ粒子である。「ナノ粒子」とは、1nmから1000nmまでの範囲の平均サイズ(例えば、平均直径)を有する粒子を意味する。ある実施形態では、磁性ナノ粒子の平均サイズ(例えば、平均径)は、サブミクロンのサイズ、例えば、1nmから1000nmまで、又は1nmから500nmまで、又は5nmから250nmまで、例えば5nmから150nmまでであり、5nmから50nmまでを含む。例えば、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nm、16nm、17nm、18nm、19nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm及び200nmの平均径を有する磁性ナノ粒子、並びにこれらの値の内の任意の2つの間の範囲にある平均径を有するナノ粒子が、本明細書における使用に適する。ある実施形態では、磁性粒子は、略一様な形状である。例えば、磁性粒子は球形状であってもよい。球形状に加えて、本明細書における使用に適した磁性ナノ粒子は、円板、ロッド、コイル、繊維、角錐などとして形作られ得る。
【0125】
方法
本開示の態様は、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離する方法を含む。磁気的に標識が付された部分は、試料の他の要素、例えば、磁気的に標識が付されていない部分(例えば、磁気標識と結合されない部分)から分離されてもよい。
【0126】
ある実施形態では、方法は、上記のように磁気分離装置内に導管を位置付けることを有する。位置付けることは、手動で又は自動的に実行されてもよい。位置付けることが手動で実行される実施形態では、導管が装置の磁場ガイドの近位に(例えば、磁場ガイドに隣接して又は磁場ガイド間に)並べられるように、ユーザが導管を装置内に位置付けてもよい。例えば、導管を位置付けることは、導管の長手軸が磁場ガイドの長手軸(例えば、第1の磁場ガイドの長手軸及び第2の磁場ガイドの長手軸)に略平行であるように導管を並べることを有してもよい。位置付けることが、装置によって自動的に実行される実施形態では、装置は、ユーザの介入なしに磁場ガイドの近位に(例えば、磁場ガイドに隣接して又は磁場ガイド間に)導管を位置付けるようにプログラムされてもよい。例えば、装置は、導管の長手軸が磁場ガイドの長手軸(例えば、第1の磁場ガイドの長手軸及び第2の磁場ガイドの長手軸)に略平行であるように、導管を自動的に並べてもよい。
【0127】
方法の態様は、磁場を試料に印加することを更に有する。場合によっては、試料は、導管を通って流れる試料溶液であり、それ故、方法は、導管を通って流れる試料に磁場を印加することを有する。場合によっては、方法は、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離するために十分な磁束を有する磁場を印加することを有する。磁場は、試料が導管を通って流れる際に連続的に印加されてもよいし、又は、パルス状に非連続的に印加されてもよい。ある実施形態では、磁場源は上記のような永久磁石であり、それ故、磁場は、試料が導管を通って流れる際に試料に連続的に印加される。
【0128】
ある実施形態では、方法は、磁場から離れて導管を位置付けることを有する。導管は、導管に印加された外部磁場が略ゼロであるように、磁場から離れて位置付けられてもよい。磁場から離れて導管を位置付けることは、導管を装置から取り除くことによって実現されてもよい。例えば、導管は、磁場ガイドの近位にある(例えば、磁場ガイドに隣接した又は磁場ガイド間の)位置から取り除かれ、磁場源及び磁場ガイドから離れた位置に移動されてもよい。磁場から離れて導管を位置付けることにより、検査中に導管内に保持され磁気的に標識が付された部分の後の回収が容易になる。場合によっては、導管を磁場から離れて位置付けることは、手動で実行されてもよい一方、他の実施形態では、導管を磁場から離れて位置付けることは、自動的に(例えば、ユーザの介入なしに)実行されてもよい。
【0129】
場合によっては、導管を磁場から離れて位置付けることは、磁場源(及び関連付けられた磁場ガイド)を導管から離れて移動させることによって実現されてもよい。例えば、1つの磁場源を含む実施形態では、磁場ガイドが、導管内の磁気的に標識が付された部分を保持するために十分な磁場強度、勾配強度及び/又は磁束を有する磁場を生成しないように、磁場源及び関連付けられた磁場ガイドは導管から離れた位置に移動されてもよい。
【0130】
2つの磁場源を含む実施形態では、第1の磁場源及び第2の磁場源は、導管から離れた位置に移動させられてもよい。磁場源間の距離が検査中の磁場源間の距離より大きいように、磁場源は移動させられてもよい。例えば、磁場ガイドの先端間の距離が検査中の磁場ガイドの先端間の距離より大きいように、磁場源は導管から離れた位置に移動させられてもよい。ある場合では、磁場ガイドが、磁気的に標識が付された部分を導管内に保持するために十分な磁場強度、勾配強度及び/又は磁束を有する磁場を生成しないように、磁場源は、導管から離れた位置に移動させられてもよい。
【0131】
導管を磁場から離れて位置付けることにより、検査中に導管内に保持された磁気的に標識が付された部分の後の回収が容易になる。例えば、導管を磁場から離れて位置付けた後に、導管内に保持された磁気的に標識が付された部分は、磁気的に標識が付された部分を導管から流し出すことによって回収されてもよい。例えば、磁気的に標識が付された部分は、磁気的に標識が付された部分を導管から流し出す(例えば、洗浄する)ために導管を通して緩衝剤又は他の適合した溶液を流すことによって回収されてもよい。或いは、磁気的に標識が付された部分は、遠心分離、真空の印加、ポンピング、それらの組み合わせなどによって導管から回収されてもよい。
【0132】
本明細書に開示された方法の態様は、回収された磁気的に標識が付された部分を凝集することを更に有してもよい。本明細書に記載されているように磁気分離検査を実行した後に、磁気分離検査中に導管内に保持された磁気的に標識が付された部分は、上記のように磁気的に標識が付された部分を導管から流し出すことによって導管から回収されてもよい。ある実施形態では、導管から流し出される溶液内における磁気的に標識が付された部分の凝集を高めることが望ましい。それ故、方法は、導管から流し出された溶液内に磁気的に標識が付された部分を凝集すること(例えば、該部分の凝集を高めること)を有してもよい。磁気的に標識が付された部分を凝集することは、凝集装置を通して磁気的に標識が付された部分を含有する導管から流し出された溶液を通過させることを有してもよい。例えば、凝集装置は、音波凝集装置を有してもよいが、これに限定されるものではない。更に、音波凝集装置の記載は米国特許第6929750号明細書に見出され、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0133】
本明細書に開示されている検査方法は、定性的であっても定量的であってもよい。それ故、本明細書に使用されている用語「検出」又は「分離」は、定性的決定及び定量的決定の両方を指し、従って、試料中の磁気的に標識が付された部分の「測定」及び「レベルの決定」を含む。
【0134】
本明細書に開示されている方法の態様は、磁気分離検査の実行前に(例えば、試料に磁場を印加する前に)試料中の1又は複数の対象部分に磁気標識を付着させることを更に有してもよい。このように、方法は、磁気分離検査を実行する前に試料中の1又は複数の部分に磁気的に標識を付すことを有してもよい。磁気標識は、上記のような非共有相互作用又は共有相互作用を通して対象の部分(又は複数部分)と安定的に結合されてもよい。例えば、磁気標識は、分子の結合対間の結合相互作用を通して対象の部分と結合されてもよい。
【0135】
分子の結合対は、対象の結合相互作用に応じて変わってもよい。対象の結合相互作用は分子の結合対間のあらゆる相互作用を含み、結合相互作用は、結合相互作用の環境条件下での分子の結合対間の特異性で生じる。対象の結合相互作用の例は、核酸ハイブリッド形成相互作用、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−核酸相互作用、酵素−基質相互作用及び受容体−リガンド相互作用、例えば、抗体−抗原相互作用及び受容体アゴニスト又はアンタゴニスト相互作用を含むが、これらに限定されるものではない。
【0136】
対象の分子結合相互作用を有する分子の例は、バイオポリマーと、有機又は無機の小分子であってもよい小分子とを含むが、これらに限定されるものではない。「バイオポリマー」は、1又は複数の種類の繰り返し単位のポリマーである。バイオポリマーは、(合成的に生成されてもよいが)生体系に見出されてもよく、ペプチド、ポリヌクレオチド、及び多糖に加えて、アミノ酸類似体若しくは非アミノ酸基、又はヌクレオチド類似体若しくは非ヌクレオチド基からなるか或いはこれらを含む化合物を含んでもよい。このように、バイオポリマーは、従来のバックボーンが非自然発生的なバックボーン又は合成のバックボーンと交換されているポリヌクレオチドと、従来の塩基の1又は複数がワトソンクリック型の水素結合相互作用に関係し得る(自然又は合成の)基と交換されている核酸(又は合成の若しくは自然発生的な類似体)とを含む。例えば、「バイオポリマー」は、DNA(cDNAを含む)、RNA、オリゴヌクレオチド、PNA、他のポリヌクレオチドなどを含んでもよい。「バイオモノマー」は、バイオポリマーを形成するために同じ又は他のバイオモノマー(例えば、2つの連結基の1つ又は両方が、除去可能な保護基を有してもよい2つの連結基を有する単一アミノ酸又はヌクレオチド)と連結され得る単一のユニットを基準とする。
【0137】
場合によっては、分子の結合対はリガンド及び受容体であり、所与の受容体又はリガンドは、バイオポリマーであってもよいし、バイオポリマーでなくてもよい。本明細書に使用されている用語「リガンド」は、対象の化合物に共有的に又はそうでなければ化学的に結合することが可能な部分を指す。リガンドは、自然に発生してもよいし、人工であってもよい。リガンドの例は、細胞膜受容体のためのアゴニスト及びアンタゴニスト、毒素及び毒液、ウィルス性エピトープ、ホルモン、麻酔剤、ステロイド、ペプチド、酵素基質、補足因子、薬剤、レクチン、糖、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴ糖、タンパク質などを含むが、これらに制限されない。本明細書に使用されている用語「受容体」は、リガンドに関する親和性を有する部分である。受容体は、直接的に又は特異的結合物質を介して結合要素に共有的に又は非共有的に結合されてもよい。受容体の例は、抗体、細胞膜受容体、特定の抗原決定基と反応する単クローン抗体及び抗血清、ウィルス、細胞、薬剤、ポリヌクレオチド、核酸、ペプチド、補足因子、レクチン、糖、多糖、細胞膜、細胞小器官などを含むが、これらに制限されない。「リガンド受容体対」は、2つの分子が、複合体を形成するために分子認識によって結合されているときに形成される。
【0138】
従って、方法は、分子の結合対間の結合相互作用を検出することを有してもよい。結合相互作用は、本明細書に記載されるような磁気標識を用いて標識が付される分子の結合対の1つの要素を含んでもよい。例えば、分子の結合対の1つの要素は、磁気的に標識が付されてもよいし、結合対複合体を形成するために相補的な結合対要素に結合してもよい。結合対複合体は、本明細書に記載されているような磁気分離装置及び方法を用いて試料中の対象ではない部分から分離されてもよい。磁気分離検査を実行した後に、結合対複合体は、あらゆる簡便な方法、例えば、これらに限定されるものではないが、フローサイトメトリー、蛍光検出、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、電気泳動、それらの組み合わせなどを用いて検出されてもよい。
【0139】
本開示の方法の態様は、分離された磁気的に標識が付された部分を解析することを更に有してもよい。場合によっては、磁気的に標識が付された部分は、上記のように試料中の磁気的に標識が付されていない部分から分離された後に解析される。このように、方法は、磁気分離装置から溶離液中の磁気的に標識が付された部分を解析することを有してもよい。ある実施形態では、方法は、磁気的に標識が付された部分についての情報を決定するために、磁気的に標識が付された部分を解析することを有する。例えば、磁気的に標識が付された部分を解析することは、磁気分離装置によって保持された磁気的に標識が付された部分の数を数えることを有してもよい。場合によっては、解析することは、磁気的に標識が付された部分を分類することを有する。例えば、方法は、フローサイトメトリー装置を用いて磁気的に標識が付された部分を数えること及び/又は分類することを有してもよい。ある場合では、磁気的に標識が付された部分を解析することは、磁気的に標識が付された部分の1又は複数の物理的特性及び/又は化学的特性、例えば、これらに限定されるものではないが、蛍光、質量、電荷、化学的組成、UV吸収、赤外線吸収、光散乱、それらの組み合わせなどを決定することを有する。
【0140】
システム
本開示の実施形態に係るシステムは、試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための1又は複数の磁気分離装置を備えている。1又は複数の磁気分離装置の夫々は、本開示に従って記載されているように構成されてもよい。例えば、磁気分離装置は、本明細書に記載されているように、磁場源、第1の磁場ガイド、及び第2の磁場ガイドを備えている。加えて、システムは、第1の磁場ガイド及び第2の磁場ガイドの近位に位置付けられた導管を備えている。
【0141】
ある実施形態では、システムは、2以上の磁気分離装置を備えている。例えば、システムは、2以上の磁気分離装置、例えば3以上、又は4以上、又は5以上、又は6以上、又は7以上、又は8以上、又は9以上、又は10以上の磁気分離装置を備えてもよい。磁気分離装置が互いの上流側及び下流側に直列に位置付けられるように、磁気分離装置は直列に配置されてもよい。磁気分離装置を直列に配置することにより、磁気的に標識が付された部分を同じ試料から順次分離することが容易になる。場合によっては、磁気分離装置は並列に配置されている。磁気分離装置を並列に配置することにより、磁気的に標識が付された部分を複数の試料から同時に分離することが容易になる。ある場合では、磁気分離装置は、直列且つ並列に配置されている。
【0142】
ある実施形態では、システムは、2以上の磁気分離装置、例えば2つの磁気分離装置(例えば、第1の磁気分離装置及び第2の磁気分離装置)を備えている。第1及び第2の磁気分離装置は、上記のように直列に配置されてもよい。場合によっては、装置は、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端が第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端と略同じ外形を有するように構成されてもよい。例えば、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端並びに第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端は、線形外形(又は、上記のように、必要に応じて任意の他の外形)を夫々有してもよい。他の実施形態では、装置は、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端が第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端とは異なる外形を有するように構成されてもよい。例えば、第1の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端は線形外形を夫々有してもよいし、第2の磁気分離装置の第1及び第2の磁場ガイドの先端は鋸歯状外形を夫々有してもよい。上記の例は、例示する目的のために挙げられており、磁気分離装置の先端の外形の他の組み合わせも可能である。
【0143】
本開示のシステムの実施形態はまた、凝集装置(例えば、粒子凝集装置)を備えてもよい。凝集装置は磁気分離装置の下流側に配置されてもよい。場合によっては、凝集装置は、磁気分離装置からの溶離液中の磁気的に標識が付された部分の凝集を高めるように構成されている。凝集装置は、あらゆる種類の凝集装置であってもよく、ある実施形態では、音波凝集装置である。
【0144】
本開示のシステムの態様はまた、粒子解析装置を含んでもよい。粒子解析装置は、磁気分離装置の下流側に配置されてもよく、場合によっては凝集装置の下流側に配置されてもよい。粒子解析装置は、磁気的に標識が付された部分を解析し、磁気的に標識が付された部分についての情報を決定するように構成されてもよい。例えば、粒子解析装置は、磁気分離装置によって保持された磁気的に標識が付された部分の数を数えるように構成されてもよい。場合によっては、粒子解析装置は、磁気的に標識が付された部分を分類するように構成されてもよい。ある場合では、粒子解析装置は、磁気的に標識が付された部分の1又は複数の物理的特性及び/又は化学的特性、例えば、これらに限定されるものではないが、蛍光、質量、電荷、化学的組成、UV吸収、赤外線吸収、光散乱、それらの組み合わせなどを決定するために磁気的に標識が付された部分を解析してもよい。ある実施形態では、粒子解析装置は、フローサイトメータ、質量解析計、電気泳動装置、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置、UV分光計、赤外線分光計などを含む。場合によっては、粒子解析装置はフローサイトメータである。
【0145】
本開示のシステムは、磁気分離検査の実行及び/又は分離された磁気的に標識が付された部分の後の解析を容易にする他の支援装置及び/又は追加的な構成要素を更に備えてもよい。例えば、システムは、磁気分離検査を実行するようにプログラムされたコンピュータ、システムを通して試料溶液及び/又は緩衝剤の流れを供給するように構成された流体処理要素(例えば、ポンプ、真空源、流体貯蔵器、バルブ、入口、出口など)、磁気分離装置と関連付けられた構成要素(例えば、磁場源及び磁場ガイドを位置付けるように構成されたモータ)、及び必要に応じて他の構成要素を更に備えてもよい。
【0146】
システムは一般的に、本明細書に記載されているような1又は複数の磁気分離装置と、1又は複数の磁気分離装置を制御するように構成されたプロセッサとを備えてもよい。これら2つの構成要素は、単一のユニットとして同じ製品に一体化されてもよいし、又は(例えば、システムとして)2以上の異なるユニットに分配されてもよく、2以上の異なるユニットは、例えば有線通信プロトコル又は無線通信プロトコルを介して互いに通信する。
【0147】
従って、本開示の態様は、システム、例えば、上記のように試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するように構成されたコンピュータベースのシステムを更に備えている。「コンピュータベースのシステム」は、本発明の情報を解析するために使用されるハードウェア、ソフトウェア、及びデータ記憶装置を指す。コンピュータベースのシステムの実施形態の最小限のハードウェアは、中央処理装置(CPU)(例えば、プロセッサ)、入力装置、出力装置、及びデータ記憶装置を含む。現在利用可能なコンピュータベースのシステムのうちのいずれか1つが、本明細書に開示されている実施形態における使用に適する。データ記憶装置は、上記のような本情報を記録することが可能なあらゆる製品、又はこのような製品にアクセスすることが可能なメモリアクセス手段を含んでもよい。例えば、主題のシステムの実施形態は、以下の構成要素、すなわち、(a)例えばユーザコンピュータ又はワークステーションを介してシステムと1又は複数のユーザとの間の情報移送を容易にするための通信モジュールと、(b)磁気的に標識が付された部分の解析に関係する1又は複数のタスクを実行するための処理モジュールとを含んでもよい。
【0148】
磁気分離装置に加えて、本開示のシステムは、複数の追加の構成要素、例えばモニタ、プリンタ及び/又はスピーカなどのデータ出力装置、例えばインターフェースポート、キーボード、マウスなどのデータ入力装置、流体処理要素、電源などを備えてもよい。
【0149】
有用性
主題の装置、方法、システム及びキットは、試料中の磁気的に標識が付されていない部分から磁気的に標識が付された部分を分離することが望まれている様々な異なる用途に使用される。例えば、主題の装置、方法、システム及びキットは、試料中の対象の部分の存在を検出するために使用される。対象の部分は、本明細書に記載されている装置、方法、システム及びキットを用いることによって、(例えば、導管内に保持される一方、磁気的に標識が付されていない部分は導管を通って流れることによって)磁気的に標識が付され、次いで、磁気的に標識が付されていない部分から分離されてもよい。他の実施形態では、対象の部分に磁気的に標識が付されず、試料中の対象ではない他の部分に磁気的に標識が付される。これらの実施形態では、対象の磁気的に標識が付されていない部分は、装置によって保持されずに導管を通って流れ、磁気的に標識が付されていない部分は収集されてもよく及び/又は更に解析されてもよい。対象ではない磁気的に標識が付された部分は、導管内に保持され、それ故、対象の磁気的に標識が付されていない部分から分離される。
【0150】
ある実施形態では、主題の装置、方法、システム及びキットは、対象の結合相互作用を検出する際に使用される。ある実施形態では、結合相互作用は、例えば、これらに限定されるものではないが、核酸ハイブリッド形成、タンパク質−タンパク質相互作用、受容体−リガンド相互作用、酵素−基質相互作用、タンパク質−核酸相互作用などの結合相互作用である。場合によっては、主題の方法、システム及びキットは、分子結合相互作用の検出が望まれる薬剤開発プロトコルに使用される。例えば、薬剤開発プロトコルは、抗体と抗原との間の分子結合相互作用、又は核酸間のハイブリッド形成相互作用、又はタンパク質間の結合相互作用、又は受容体とリガンドとの間の結合相互作用、又は酵素と基質との間の結合相互作用、又はタンパク質と核酸との間の結合相互作用などを検出するために主題の装置、方法、システム及びキットを使用してもよい。例えば、このような結合相互作用を検出することにより、抗体ベースの薬剤の開発が容易になる。
【0151】
主題の装置、方法、システム及びキットはまた、複合試料に含まれる結合対間の分子結合相互作用を検出する際に使用される。場合によっては、複合試料は、試料内にある対象ではない他のタンパク質又は分子から対象の結合分子を分離することなく直接的に解析されてもよい。ある場合では、対象ではないタンパク質又は分子は、磁気標識によって結合されず、磁気分離装置の導管内に保持されない。それ故、主題の装置、方法、システム及びキットは、複合試料が使用されてもよい検査プロトコルであって、対象の結合相互作用が、対象の結合相互作用の検出のために必要な試料の浄化を用いずに検出されてもよい検査プロトコルに使用される。
【0152】
キット
更に、上記の方法の1又は複数の実施形態を実施するため及び/又は上記の装置及びシステムの実施形態で使用するためのキットが提供される。主題のキットは、変わってもよいし、様々な構成要素及び試薬を含んでもよい。対象の試薬及び構成要素は、磁気分離装置又は該磁気分離装置の構成要素に関して本明細書に記載されたものを含み、これらに限定されるものではないが、磁気標識(例えば、磁性ナノ粒子)、結合剤、緩衝剤、流体流れ導管(例えば、使い捨ての流体流れ導管)などを含む。
【0153】
場合によっては、キットは、(例えば、上記のような)方法に使用される試薬と、コンピュータにロードされると、本明細書に記載されているような磁気分離検査を実行するためにコンピュータを動作させるコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読媒体と、コンピュータプログラムを取得するためのアドレスを有する物理的な基板とを少なくとも含む。
【0154】
上述した構成要素に加えて、主題のキットは、主題の方法を行うための使用説明書を更に備えてもよい。これらの使用説明書は、主題のキット内に様々な形態で備えられてもよく、使用説明書のうちの一又は複数がキット内に備えられてもよい。これらの使用説明書が備えられる一形態は、好適な媒体又は基板上に印刷された情報であり、例えば、情報が印刷されている一又は複数の紙片、キットの包装体、又は添付文書等である。更なる別の手段は、情報が記録されているコンピュータ可読媒体であり、例えば、CD、DVD、ブルーレイ、コンピュータ可読メモリ装置(例えば、ハードドライブ又はフラッシュメモリ)等である。存在し得る更なる別の手段は、離れた場所で情報にアクセスするためにインターネットを介して使用可能なウェブサイトアドレスである。あらゆる簡便な手段がキット内に設けられ得る。
【0155】
以下の実施例は、本開示の実施形態を構成して使用する方法の完全な開示及び記載を当業者に提供するために提示されており、本発明者が本発明とみなすものの範囲を限定するものではなく、以下の実験例は行われた全ての実験例又は行われた唯一の実験例であることを示すものでもない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するように努力しているが、多少の実験誤差及び偏差も考慮されるべきである。特に示されていない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は、大気圧又は大気圧に近い圧力である。
【0156】
実験
実験は、本開示の実施形態に係る試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための装置を用いて実行された。
【0157】
材料及び方法
磁気分離装置
磁気分離装置は、6つの永久磁石(N45希土類ネオジム(NdFeB)棒磁石、2インチ×0.5インチ×0.5インチ、CMS Magnetics,Inc.製)及び6つの楔状の磁場ガイドを備えていた。磁場ガイドは、ステンレス鋼から形成されており、60度の頂角を有した。各磁場ガイドの先端は線形外形を有した。6つの永久磁石は、2組に分けて配置された。各組の3つの磁石の全寸法は6インチ×0.5インチ×0.5インチであった。第1組の磁石及び第2組の磁石は、装置内で互いに直接対向して位置付けられた。各永久磁石は、取り付けられた対応する磁場ガイドを有し、第1組の磁場ガイドの先端は、第2組の磁場ガイドの先端に直接対向して且つ平行であった。分離検査の間、2組の磁場ガイドの先端間の間隙は1mmであった。磁場ガイドの先端間の間隙における磁束密度は1.1テスラと測定され、磁場勾配は0.8T/mmであった。磁束は、第1組の磁石から第2組の磁石まで磁場ガイドの先端間の間隙に局所化された。
【0158】
導管
導管は、3mmの外径及び2mmの内径を有するシリコンチューブであった。導管の有効長は6インチであり、導管と接した磁石の組の長さに対応した。
【0159】
試料中の磁気的に標識が付された部分を分離するための試薬及び試料
ビオチンヒトCD4Tリンパ球富化(Lymphocyte Enrichment)検査混合物及びストレプトアビジンで被覆された磁性粒子を含んだBD Imag(登録商標)ヒト CD4 T Lymphocyte Enrichment Set(Becton,Dickinson and Co.製)が実験に使用された。磁性粒子は、200nmから400nmまでの範囲の平均直径と200μg/mlの蓄積濃度(stock concentration)とを有する超常磁性粒子であった。製造業者推奨のプロトコルに従い、百万個の細胞当たり5μlのカクテルが使用された。培養及び洗浄後、百万個の細胞当たり5μlのストレプトアビジンで被覆された磁性粒子が使用された。実験用試料は、クエン酸ナトリウム(Sodium Citrate)を有するBD Vacutainer(登録商標)CPT(登録商標)Cell Preparation Tube(Becton,Dickinson and Co.製)を用いて調製されたヒト末梢血液単核細胞(PBMC)であった。PBMCは、1ml当たり2百万個から5千万個の細胞の濃度で0.5%のウシ血清アルブミン(BSA)及び20mMのEDTAを有する1xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で懸濁された。検査混合物中のビオチン化抗体は、CD4+Tリンパ球を除くPBMCにおける全個体数に結合された。検査混合物中の磁性粒子に結合されたストレプトアビジンは、ビオチンに特異的に結合された。上記の2つのステップの結合方法を用いて、CD4+Tリンパ球を除くPBMCにおける全細胞は、ビオチンで標識が付されたPBMCとストレプトアビジンで被覆された磁性粒子との間の特異的結合相互作用によって磁気的に標識が付された。
【0160】
試料は、磁気分離装置内の磁場ガイド間に位置付けられた導管を通って流れ、磁気的に標識が付された細胞は、磁場ガイドの先端間の間隙における磁場で捕捉された。磁気的に標識が付されなかったCD4+Tリンパ球は、導管内に保持されず、導管を通って、磁石の下流側に位置付けられた検出器又は収集管まで通過した。分離が終了すると、導管が磁場ガイド間から取り除かれ、捕捉された細胞は、高圧力下で緩衝剤を用いて流し出された。ヒト制御性T細胞はCD4+Tリンパ球の小亜集団であるので、非CD4+Tリンパ球の磁気減少は、試料内における制御性T細胞を富化する手段である。
【0161】
操作条件
磁気的に標識が付された細胞及び標識が付されていない細胞は、蠕動ポンプ又は空気圧によって駆動された導管内で磁気分離装置を通過した。流量は200μl/分から400μl/分であった。例えば、空気圧縮機が、導管内で400μl/分の流量を実現するために、導管内の試料に18psiを印加するように使用された。1mlの試料体積中2百万個から5千万個のPBMCを用いて、分離及び回収が10分以内で完了した。実験は室温で実行された。任意には、標識が付されたPBMCは、分離検査を実行する前に氷上に保存された。
【0162】
結果
磁気的に捕捉された細胞及び捕捉されなかった細胞の両方は、蛍光染色の後にフローサイトメータを用いて解析された。結果は、磁気分離装置が98%の分離効率を有したことと、90%の制御性T細胞が回収されたこととを示した。
【0163】
上記の発明は、理解の明瞭化のために、図示及び例示によりある程度詳しく説明されているが、ある変更及び調整が、添付の請求項の趣旨又は範囲から逸脱することなく本発明になされてもよいことが、本発明の教示を考慮すると当業者に容易に明らかとなる。
【0164】
従って、前述の内容は本発明の本質を単に示しているに過ぎない。本明細書に明示的に説明されていないか又は示されていないが、本発明の本質を具体化して本発明の趣旨及び範囲に含まれる様々な構成を当業者が考案することが可能であることは明らかである。更に、本明細書に述べられている全ての例及び条件的な用語は、本発明の本質と、本技術分野を進展させるために本発明者により与えられた概念とを理解する際に読者を支援することを本質的に意図するものであり、このように具体的に述べられた例及び条件に限定するものではないと解釈されるべきである。更に、本発明の本質、態様及び実施形態だけでなく、本発明の具体的な例を述べている本明細書における全ての記載は、本発明の構造的且つ機能的な等価物の両方を含むことを意図するものである。加えて、このような均等物は、現時点で既知の均等物及び今後開発される均等物の両方、すなわち構造に関わらず同一の機能を有する開発された全ての要素を含むことを意図するものである。従って、本発明の範囲は、本明細書に示され説明された例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲により具体化される。
【0165】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に従って、2011年4月27日に出願された米国仮特許出願第61/479,778号明細書の優先権を主張しており、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11