(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333762
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ダクト用換気扇
(51)【国際特許分類】
F24F 7/10 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
F24F7/10 101A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-72267(P2015-72267)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191521(P2016-191521A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100118430
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 文彦
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】林 恭正
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−106896(JP,A)
【文献】
特開2009−236395(JP,A)
【文献】
実開昭57−148632(JP,U)
【文献】
特開2013−036673(JP,A)
【文献】
特開平09−145120(JP,A)
【文献】
特開平09−257291(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0130612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部分に埋設させて取付けられ、本体ケースと、この本体ケースの内周側に着脱可能に収容されるファンケースと、このファンケース内に収容されるファン及びモータとを有する換気扇本体と、
前記換気扇本体に着脱可能に取付けられてこの換気扇本体の下面側を覆う化粧パネルと、
前記化粧パネルの上面側に取付けられ、中央部に位置するコイル部とこのコイル部の両側に延出して拡開する方向に付勢された一対の腕部を有する捩りバネと、
前記ファンケースの下面側に取付けられ、前記腕部が挿入される挿入孔を有するとともにこれらの腕部が前記挿入孔の縁部に係止されることにより前記化粧パネルが前記換気扇本体に取付けられる取付金具と、を有し、
前記挿入孔の縁部には、前記挿入孔に挿入された一方の前記腕部が拡開する方向に向かうにつれて先細形状に傾斜してその頂点部に位置する第1係止部と、前記挿入孔に挿入された他方の前記腕部が拡開する方向に向かうにつれて先細形状に傾斜してその頂点部に位置する第2係止部とが設けられ、これらの第1係止部と第2係止部との位置は前記腕部が拡開する方向と直交する方向に向けて前記コイル部の厚さ寸法分ずれていることを特徴とするダクト用換気扇。
【請求項2】
前記挿入孔は、一対の前記腕部が挿入されるとともに挿入された一対の腕部が拡開する方向に長尺状に形成され、長尺方向の一端側に前記第1係止部が設けられて長尺方向の他端側に前記第2係止部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のダクト用換気扇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダクト用換気扇に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内空気を換気するためのダクト用換気扇が普及しており、これらのダクト用換気扇は、天井部分に埋設させて取付けられる換気扇本体と、この換気扇本体の下面を覆う化粧パネルとを有し、換気扇本体には天井裏に配設された排気ダクトが接続されている。化粧パネルは換気扇本体に着脱可能に取付けられており、ダクト用換気扇のメンテナンス時には、換気扇本体から化粧パネルを取外している。
【0003】
換気扇本体への化粧パネルの取付は、下記特許文献1に記載されたように、化粧パネルの上面側に取付けられた一対の捩りバネと、換気扇本体の下面側に取付けられて捩りバネの腕部を係止する係止部材とを用いて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-247086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、捩りバネを用いて化粧パネルを換気扇本体に取付ける場合、捩りバネの腕部が係止部材に係止される位置がバラツキを生じ易い。このバラツキにより、捩りバネから化粧パネルに対して化粧パネルを水平面内で捩る力が作用し、換気扇本体への化粧パネルの取付位置が正規の取付位置から水平面内で捩れる場合がある。換気扇本体への化粧パネルの取付位置が正規の取付位置から捩じれると、化粧パネルの取付位置が天井面の升目等に対して傾いた状態となり、天井部分の美観が損なわれる。このため、換気扇本体への化粧パネルの取付けに際しては、化粧パネルの取付位置が正規の取付位置となるように調節する必要があり、この調節を行うことにより換気扇本体への化粧パネルの取付作業に手間がかかっている。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、天井部分に埋設された換気扇本体に化粧パネルを取付ける場合、水平面内での化粧パネルの捩れの調節を行うことなく化粧パネルを正規の取付位置に取付けられるようにしたダクト用換気扇を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のダクト用換気扇は、天井部分に埋設させて取付けられ
、本体ケースと、この本体ケースの内周側に着脱可能に収容されるファンケースと、このファンケース内に収容されるファン及びモータとを有する換気扇本体と、換気扇本体に着脱可能に取付けられてこの換気扇本体の下面側を覆う化粧パネルと、化粧パネルの上面側に取付けられ、中央部に位置するコイル部とこのコイル部の両側に延出して拡開する方向に付勢された一対の腕部を有する捩りバネと、
ファンケースの下面側に取付けられ、腕部が挿入される挿入孔を有するとともにこれらの腕部が挿入孔の縁部に係止されることにより化粧パネルが換気扇本体に取付けられる取付金具と、を有し、挿入孔の縁部には、挿入孔に挿入された一方の腕部が拡開する方向に向かうにつれて先細形状に傾斜してその頂点部に位置する第1係止部と、挿入孔に挿入された他方の腕部が拡開する方向に向かうにつれて先細形状に傾斜してその頂点部に位置する第2係止部とが設けられ、これらの第1係止部と第2係止部との位置は腕部が拡開する方向と直交する方向に向けてコイル部の厚さ寸法分ずれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ファンケースへの化粧パネルの取付構造を示す縦断側面図である。
【
図3】取付金具の挿入孔への捩りバネの挿入状態を示す底面図である。
【
図4】取付金具の挿入孔への捩りバネの挿入手順を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はダクト用換気扇1を示す分解斜視図であり、
図2はその一部を示す縦断側面図である。ダクト用換気扇1は、天井部分に埋設させて取付けられる換気扇本体2と、換気扇本体2に着脱可能に取付けられて換気扇本体2の下面を覆う化粧パネル3とを有している。
【0010】
換気扇本体2は、本体ケース4と、この本体ケース4の内周側に着脱可能に収容されるファンケース5と、このファンケース5内に着脱可能に収容されるファン6及びモータ7とを有している。
【0011】
本体ケース4は、鋼材製の角型のケースであり、天井部分に埋設されて固定されている。本体ケース4の下面は開口されており、この開口部分からファン6とモータ7を有するファンケース5を着脱できるようになっている。本体ケース4の一つの側面部には、天井裏に配設されている排気ダクト(図示せず)が接続される排気口8が設けられている。
【0012】
ファンケース5は、鋼材製の略円筒型のケースであり、その内部にファン6とモータ7とが着脱可能に収容されている。ファンケース5の下面は開口されており、この開口部分にはベルマウス19が設けられている。ベルマウス19にはファン6の直径よりも小さい直径の吸込み口が開口している。ファンケース5からファン6を取り外す際には、ベルマウス19を取り外した後、モータ7の軸からファン6を取り外す必要がある。モータ7はファン6を取り外した後、ファンケース5から着脱できるようになっている。
【0013】
化粧パネル3は、中央部に通風領域となるグリル9を有し、グリル9の周囲に枠部10を有している。化粧パネル3の上面部である枠部10の上面部には、一対の捩りバネ11が取付けられている。捩りバネ11は、ピアノ線、硬鋼線、バネ用ステンレス等により形成され、中央部に位置するコイル部12(
図2参照)と、コイル部12の両側に延出して拡開する方向(互いに離間する方向)に付勢された一対の腕部13とを有している。各腕部13の先端部には、引っ掛け用の屈曲部14が設けられている。
【0014】
ファンケース5の下面側には、捩りバネ11の腕部13が挿入される挿入孔15を有する取付金具16が固定されている。取付金具16は、換気扇本体2に化粧パネル3を取付けた場合、化粧パネル3に取付けられている捩りバネ11と上下方向で対向するように位置決めされている。
【0015】
挿入孔15は、捩りバネ11の一対の腕部13が挿入される長尺状に形成されている。挿入孔15に挿入される腕部13は、腕部13の拡開する方向が挿入孔15の長尺方向となる向きに向けられている。
【0016】
図3に示すように、挿入孔15の長尺方向の一端側の縁部には、挿入孔15に挿入された一方の腕部13が拡開する方向に向かうにつれて先細形状に傾斜してその頂点部に位置し、腕部13を係止する第1係止部17が設けられている。また、挿入孔15の長尺方向の他端側の縁部には、挿入孔15に挿入された他方の腕部13が拡開する方向に向かうにつれて先細形状に傾斜してその頂点部に位置し、腕部13を係止する第2係止部18が設けられている。これらの第1係止部17と第2係止部18との位置は、腕部13が拡開する方向と直交する方向に向けて、コイル部12の厚さ寸法分“A”ずれている。すなわち、厚さ寸法“A”はバネがコイル状に巻層された厚さ分のことであり、用いられるバネの巻数や構造的特徴に応じて適宜変更してよい。
【0017】
このような構成において、このダクト用換気扇1は、天井部分に換気扇本体2が埋設させて取付けられ、換気扇本体2の下面を覆う化粧パネル3が換気扇本体2に着脱可能に取付けられている。
【0018】
換気扇本体2への化粧パネル3の取付けは、化粧パネル3の上面側に取付けられた捩りバネ11の腕部13を、ファンケース5の下面側に固定された取付金具16の挿入孔15に挿入することにより行われている。より詳しくは、捩りバネ11の腕部13は拡開する方向に付勢されており、拡開した腕部13が挿入孔15の長尺方向の縁部に設けられた第1係止部17と第2係止部18とに係止されることにより換気扇本体2への化粧パネル3の取付けが行われている。
【0019】
図4は、挿入孔15への捩りバネ11の挿入手順を説明しており、
図4(a)は、捩りバネ11の腕部13が取付金具16の挿入孔15に挿入される前の状態を示している。一対の腕部13には指をかけて矢印で示す向きに力が加えられており、腕部13は拡開する方向と逆方向(腕部13が互いに接近する方向)にすぼめられ、腕部13の先端部の幅寸法は、挿入孔15の長尺方向の幅寸法より小さくなっている。
【0020】
図4(b)は、化粧パネル3を上方へ移動させることにより腕部13の先端部が挿入孔15に挿入された状態を示している。一対の腕部13は、すぼまる方向に力を加えた状態に維持されている。
【0021】
図4(c)は、腕部13の先端部を挿入孔15に挿入した後、腕部13から指を離した状態を示している。腕部13から指を離すと、腕部13は拡開する方向に撓み、腕部13が挿入孔15の第1係止部17と第2係止部18とに係止され、化粧パネル3が換気扇本体2に保持される。
【0022】
化粧パネル3が換気扇本体2に保持された後、化粧パネル3をさらに上方に押し上げることにより、捩りバネ11が腕部13を第1係止部17と第2係止部18とに係止した状態で上昇し、化粧パネル3が所定の取付位置まで上昇することにより換気扇本体2への化粧パネル3の取付けが終了する。
【0023】
ここで、挿入孔15の第1係止部17と第2係止部18とは、挿入孔15に挿入された腕部13が拡開する方向に向かうにつれて先細形状に傾斜した頂点部に設けられており、しかも、これらの第1係止部17と第2係止部18との位置が、腕部13が拡開する方向と直交する方向に向けてコイル部12の厚さ寸法分“A”ずれている。
【0024】
このため、挿入孔15に挿入された腕部13が拡開し、一方の腕部13が第1係止部17に係止されるとともに他方の腕部13が第2係止部18に係止された場合、一対の腕部13は拡開する方向に撓むのみで、捩りバネ11をコイル部12の周りに捩る力は発生しない。したがって、捩りバネ11から化粧パネル3に対して、化粧パネル3を水平面内で捩る力は作用せず、化粧パネル3の取付位置が正規の取付位置に対して水平面内で捩れるということが発生しない。このため、捩りバネ11の腕部13を取付金具16の挿入孔15に挿入した後に化粧パネル3を押し上げるだけで、化粧パネル3を正規の取付位置に取付けることができる。したがって、換気扇本体2への化粧パネル3の取付けに際しては、捩りバネ11を取付金具16の挿入孔15に挿入して化粧パネル3を押し上げるだけでよく、化粧パネル3の取付位置が正規の取付位置となるように水平面内で化粧パネル3を捩って位置調節するという必要がなくなり、換気扇本体2への化粧パネル3の取付作業を、手間をかけず容易に行うことができる。
【0025】
腕部13の先端部には屈曲部14が設けられており、化粧パネル3の着脱時に屈曲部14が第1・第2係止部17、18に引っ掛かって吊り下げ状態に保持される。このため、着脱しようとする化粧パネル3が何らかの原因で不意に脱落するということを防止することができ、着脱作業の安全性を高めることができる。
【0026】
取付金具16は、ファンケース5の下面側に固定されている。このため、換気扇本体2をメンテナンスのために本体ケース4に対して着脱する場合、取付金具16と換気扇本体2とが共に着脱される。したがって、換気扇本体2の着脱時に取付金具16が着脱の障害になるということがなく、換気扇本体2を着脱する作業を容易に行うことができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
1…天井換気扇、2…換気扇本体、3…化粧パネル、5…ファンケース、6…ファン、7…モータ、11…捩りバネ、12…コイル部、13…腕部、15…挿入孔、16…取付金具、17…第1係止部、18…第2係止部