(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体の支持構造体を形成する車体フレームと、該車体フレームに搭載されたエンジンと、該エンジンを駆動源として回転駆動されることにより外部の空気を冷却風として吸込む冷却ファンと、該冷却ファンと対面して設けられ前記冷却ファンが発生する前記冷却風により加熱された流体を冷却する熱交換装置とを備え、
前記熱交換装置は、前記冷却ファンを取囲むように前記車体フレーム上に設けられた支持枠体と、前記冷却ファンに対面して該支持枠体の内部に設けられ前記冷却風を通過させることにより冷却対象となる流体を冷却する第1の冷却器と、該第1の冷却器の前記冷却風の上流側に対面して配置され他の流体を冷却する第2の冷却器とを含んで構成してなる建設機械において、
前記支持枠体と前記第2の冷却器との間には、前記第2の冷却器が前記冷却風を受承する受承面積を変化させるための移動装置が設けられ、
前記移動装置は、下側に位置して前記支持枠体に横方向に延びて取付けられた下枠部材と、上側に位置して前記第2の冷却器に横方向に延びて取付けられた上枠部材と、前記下枠部材と前記上枠部材との長さ方向の一側に設けられた一方の連結枠部材と、前記下枠部材と前記上枠部材との長さ方向の他側に設けられた他方の連結枠部材とにより構成し、
前記移動装置は、前記各枠部材の相対的な変位によって前記第2の冷却器が受承する前記冷却風の受承面積を変化させることができる構成とし、
前記一方の連結枠部材と前記他方の連結枠部材とには、上,下方向に延びる長孔が設けられ、前記移動装置は、該長孔により前記第2の冷却器を上,下方向に移動させることができる構成としたことを特徴とする建設機械。
前記移動装置は、前記第2の冷却器を、前記冷却ファンと対向しない位置から前記第2の冷却器の全面に亘って前記冷却ファンと対向する位置まで可変に移動させることができる構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
前記下枠部材と前記上枠部材とは、前記一方の連結枠部材と前記他方の連結枠部材とに対する連結部位が回動可能かつ締着可能に連結され、前記移動装置は、前記第2の冷却器を斜め方向に移動させることができる構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、エンジンを搭載した油圧ショベルを例に挙げ、
図1ないし
図13に従って詳細に説明する。
【0013】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に油圧ショベル1の車体を形成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ土砂の掘削作業等を行うフロント装置4とにより構成されている。
【0014】
ここで、上部旋回体3は、旋回フレーム5、キャブ6、カウンタウエイト7、エンジン8、冷却ファン9、油圧ポンプ10、外装カバー11、熱交換装置14、移動装置20を含んで構成されている。
【0015】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体なす車体フレームを形成している。この旋回フレーム5は、
図2、
図3に示すように、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、前記底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出しビーム5Fと、左後側に位置して前,後方向に延びた支持フレーム5Gとにより構成されている。各縦板5B,5Cの前側には、フロント装置4が俯仰動可能に取付けられている。また、支持フレーム5Gには、後述の熱交換装置14が取付けられている。
【0016】
キャブ6は、旋回フレーム5の左前側に搭載されている(
図1参照)。このキャブ6は、オペレータが搭乗するもので、内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー(いずれも図示せず)等が配設されている。さらに、キャブ6には、空調装置の室内機(いずれも図示せず)が設けられている。ここで、空調装置は、キャブ6内に冷気、暖気等の調和空気を供給するもので、室外機をなす後述のコンデンサ18を含んで構成されている。
【0017】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム5の後部に取付けられている。このカウンタウエイト7は、フロント装置4との重量バランスをとるもので、円弧状をした重量物として形成されている。
【0018】
エンジン8は、旋回フレーム5の後側に位置して、左,右方向に延在する横置き状態に搭載されている。このエンジン8は、例えばディーゼルエンジン(内燃機関)を用いて構成され、後述の油圧ポンプ10を回転駆動する駆動源を構成している。
【0019】
冷却ファン9は、エンジン8の左側に設けられている。この冷却ファン9は、エンジン8によって回転駆動されることにより、左サイドフレーム5D側から外部の空気を冷却風として吸込み、後述する熱交換装置14のラジエータ16、オイルクーラ17、コンデンサ18、燃料クーラ19等に冷却風を供給するものである。
【0020】
油圧ポンプ10は、エンジン8の右側に設けられている。この油圧ポンプ10は、エンジン8によって駆動されることにより、後述の作動油タンク12から供給される作動油を昇圧(加圧)して吐出するものである。一方、各種アクチュエータを駆動して戻される作動油は、後述のオイルクーラ17によって冷却された後に作動油タンク12に戻される。
【0021】
外装カバー11は、キャブ6の後側から側方に亘って旋回フレーム5に設けられている。この外装カバー11は、旋回フレーム5上に搭載されたエンジン8、冷却ファン9、油圧ポンプ10、後述の熱交換装置14等を覆うものである。外装カバー11は、エンジン8の冷却ファン9が回転駆動されたときに、側面ドア11Aから外気を冷却風として流入させ、各部を冷却して暖まった冷却風を外部に流出させるものである。
【0022】
図2に示すように、作動油タンク12は、エンジン8の前側に位置して旋回フレーム5の右側に設けられている。この作動油タンク12は、油圧ポンプ10に供給される作動油を貯えるもので、例えば上,下方向に延びる直方体状の耐圧タンクとして形成されている。
【0023】
燃料タンク13は、作動油タンク12の右側に隣接するように旋回フレーム5に設けられている。この燃料タンク13は、エンジン8に供給される燃料を貯えるもので、例えば直方体状の中空容器として形成されている。
【0024】
次に、流体としてのエンジン冷却水、作動油、冷媒、燃料を冷却風により冷却する本実施の形態による熱交換装置14の構成について、
図2ないし
図11を参照しつつ説明する。
【0025】
熱交換装置14は、
図2に示すように、エンジン8の冷却ファン9に対面するように旋回フレーム5の支持フレーム5G上に設けられている。この熱交換装置14は、
図2ないし
図4等に示す如く、後述の支持枠体15、ラジエータ16、オイルクーラ17、コンデンサ18、燃料クーラ19により構成されている。熱交換装置14は、加熱された各種の流体を冷却ファン9が発生する冷却風により冷却するものである。
【0026】
支持枠体15は、冷却ファン9を取囲むように旋回フレーム5上に位置し、旋回フレーム5の支持フレーム5G上に取付けられている。支持枠体15は、熱交換装置14の外枠をなし、冷却ファン9、ラジエータ16、オイルクーラ17、コンデンサ18、燃料クーラ19、移動装置20等を取囲んで支持する枠構造体として形成されている。この場合、エンジン8が左,右方向に延在する横置き状態に搭載された構造では、支持枠体15は、上部旋回体3の前,後方向が横幅方向となるように配置されている。
【0027】
支持枠体15は、前,後方向に延びて支持フレーム5G上に取付けられた下枠部位15Aと、該下枠部位15Aの前端から立上がった前枠部位15Bと、前記下枠部位15Aの後端から立上がった後枠部位15Cと、前記前枠部位15Bと後枠部位15Cとの上部に亘って前,後方向に延びた上枠部位15Dとにより構成されている。下枠部位15Aは、支持フレーム5Gと対面する横板15A1と、該横板15A1の左端から立上がった縦板15A2とからL字状の板体として形成されている。さらに、前記縦板15A2には、
図5に示すように、前寄りに位置して取付ブラケット15Eが設けられ、該取付ブラケット15Eには後述の移動装置20が取付けられている。
【0028】
ラジエータ16は、冷却ファン9に対面して支持枠体15内に設けられた第1の冷却器を構成している。このラジエータ16は、支持枠体15内のカウンタウエイト7側(後側)寄りに位置し、エンジン8の冷却ファン9による冷却風の流れ方向に対し直交するように、旋回フレーム5の前,後方向を横幅方向として配置されている。ラジエータ16は、エンジン8を冷却して温度上昇したエンジン冷却水を冷却するもので、エンジン8のウォータジャケットに接続されている。
【0029】
オイルクーラ17は、ラジエータ16と同様に、冷却ファン9に対面して支持枠体15内に設けられた第1の冷却器を構成している。このオイルクーラ17は、ラジエータ16の前側に並列となるように設けられている。このオイルクーラ17は、支持枠体15内のキャブ6側(前側)寄りに位置し、ラジエータ16とほぼ同一の平面をなすように配置されている。オイルクーラ17は、冷却ファン9による冷却風を通過させることにより、冷却対象となる流体としての作動油を冷却するもので、制御弁装置(図示せず)、作動油タンク12等に接続されている。
【0030】
コンデンサ18は、ラジエータ16、オイルクーラ17の左サイドフレーム5D側(冷却風の流れ方向の上流側)に隣接して、ラジエータ16、オイルクーラ17と同様に、支持枠体15内に設けられた第1の冷却器を構成している。このコンデンサ18は、キャブ6内の室内機から供給される気化した冷媒の熱を放出(冷却)して液体に戻すもので、室内機、エンジン8によって駆動されるコンプレッサ(図示せず)等と共に空調装置を構成している。
【0031】
燃料クーラ19は、第1の冷却器をなすラジエータ16、オイルクーラ17、コンデンサ18の冷却風の上流側に対面して配置された第2の冷却器を構成している。この燃料クーラ19は、
図9に示すように、他の流体としての燃料を冷却する横長な冷却器本体19Aと、該冷却器本体19Aの下面部に設けられた取付ブラケット19Bとを含んで構成されている。燃料クーラ19は、その取付ブラケット19Bが2本のボルト19C、ナット19Dを用いて後述の移動装置20に取付けられている。燃料クーラ19は、エンジン8に供給する燃料を冷却することにより、燃料の膨張を抑制して燃料消費率の向上を図るものである。燃料クーラ19は、冷却ファン9が発生する冷却風を受承し得る面積を変化させることにより、燃料の冷却効率を可変に調整することができる。
【0032】
次に、本発明の特徴部分である移動装置20の構成および動作について詳しく説明する。
【0033】
移動装置20は、支持枠体15と燃料クーラ19との間に設けられている。具体的には、移動装置20は、支持枠体15の下枠部位15Aに設けられた取付ブラケット15Eに取付けられると共に、燃料クーラ19を熱交換装置14に沿って上,下方向ないし前,後方向に移動可能に支持するものである。この移動装置20は、下枠部材21、上枠部材22、前連結枠部材23、後連結枠部材24からリンク構造を構成している。移動装置20は、各枠部材21,22,23,24の相対的な変位(例えば、スライド、回動)によって燃料クーラ19の位置を移動させ、燃料クーラ19が冷却風を受承する受承面積を変化させることができる。
【0034】
即ち、移動装置20は、燃料クーラ19を、冷却ファン9と対向しない位置(
図5に示す位置)から、燃料クーラ19の全面に亘って冷却ファン9と対向する位置(
図12に示す位置)まで可変に移動させることができる。この場合、燃料クーラ19が冷却風を受承する受承面積は、燃料クーラ19が冷却ファン9と対向する面積に対応して変化する。
【0035】
下枠部材21は、移動装置20の下側に位置して横方向(旋回フレーム5の前,後方向)に延びて取付けられている。この下枠部材21は、狭幅で長尺な板体として形成され、該下枠部材21には、両端部を残してほぼ全長に延びる長孔21Aが設けられている。また、下枠部材21の両端部には、それぞれのめねじ孔21B,21Cが設けられている。これらのめねじ孔21B,21Cは、下枠部材21と各連結枠部材23,24とを連結する連結部位を構成し、例えば貫通孔と溶接ナットとにより形成されている。
【0036】
ここで、下枠部材21は、長孔21Aに2本のボルト21Dを挿通し、各ボルト21Dを下枠部位15Aの取付ブラケット15Eに螺着することにより、該下枠部位15Aに固定的に取付けることができる。移動装置20は、各ボルト21Dを緩めた状態では長孔21Aに沿って移動することができ、燃料クーラ19を横方向(前,後方向)に移動させることができる。
【0037】
上枠部材22は、移動装置20の上側に位置して燃料クーラ19に横方向に延びて取付けられている。この上枠部材22は、狭幅で長尺な板体として形成され、その全長に亘って長孔22Aが設けられている。ここで、燃料クーラ19は、長孔22Aに取付ブラケット19Bのボルト19Cを挿通しナット19Dに螺着することにより、上枠部材22に固定的に取付けることができる。移動装置20は、各ボルト19Cを緩めた状態では長孔22Aに沿って燃料クーラ19を横方向(前,後方向)に移動させることができる。
【0038】
また、長孔22Aのうち一端部位22A1と他端部位22A2には、後述する前連結枠部材23のボルト23Dと後連結枠部材のボルト24Dとがそれぞれ挿通される。即ち、一端部位22A1と他端部位22A2とは、上枠部材22と各連結枠部材23,24とを連結する連結部位を構成する。
【0039】
前連結枠部材23は、一方の連結枠部材をなすもので、下枠部材21と上枠部材22との長さ方向の一側、即ち、前側位置を連結して設けられている。この前連結枠部材23は、狭幅で長尺な板体として形成され、前連結枠部材23には、長さ方向の基端部位にボルト挿通孔23Aが設けられている。また、前連結枠部材23には、長さ方向の中間部位から先端に亘って長孔23Bが設けられている。前連結枠部材23は、ボルト挿通孔23Aに挿通したボルト23Cを下枠部材21のめねじ孔21Bに螺着することにより、下枠部材21の前側に回動可能かつ締着可能に連結されている。また、前連結枠部材23は、上枠部材22の長孔22Aに挿通されたボルト23Dを長孔23Bに挿通させ、この状態でボルト23Dの先端にナット23Eを螺着することにより、上枠部材22の前側に回動可能かつ締着可能に連結されている。
【0040】
後連結枠部材24は、他方の連結枠部材をなすもので、下枠部材21と上枠部材22との長さ方向の他側、即ち、後側位置を連結して設けられている。この後連結枠部材24は、狭幅で長尺な板体として形成され、後連結枠部材24には、長さ方向の基端部位にボルト挿通孔24Aが設けられている。また、後連結枠部材24には、長さ方向の中間部位から先端に亘って長孔24Bが設けられている。後連結枠部材24は、ボルト挿通孔24Aに挿通したボルト24Cを下枠部材21のめねじ孔21Cに螺着することにより、下枠部材21の後側に回動可能かつ締着可能に連結されている。また、後連結枠部材24は、上枠部材22の長孔22Aに挿通されたボルト24Dを長孔24Bに挿通させ、この状態でボルト24Dの先端にナット24Eを螺着することにより、上枠部材22の後側に回動可能かつ締着可能に連結されている。
【0041】
次に、移動装置20を用いて支持枠体15の下枠部位15Aに燃料クーラ19を取付ける手順を、
図9を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、移動装置20の組立作業について述べる。最初に、下枠部材21の各めねじ孔21B,21Cと各連結枠部材23,24の各ボルト挿通孔23A,24Aとに各ボルト23C,24Cをそれぞれ挿通し螺着することにより、下枠部材21と各連結枠部材23,24とを締着する。そして、上枠部材22の長孔22Aと各連結枠部材23,24の各長孔23B,24Bとに各ボルト23D,24Dとを挿通し螺着することにより、上枠部材22と各連結枠部材23,24とを締着する。
【0043】
次に、移動装置20を取付ブラケット15Eに取付け、移動装置20に燃料クーラ19を取付ける手順を記載する。最初に、下枠部材21の長孔21Aに各ボルト21Dを挿通して、下枠部材21と取付ブラケット15Eとを締着し、移動装置20を取付ブラケット15Eに取付ける。最後に、上枠部材22の長孔22Aと燃料クーラ19の取付ブラケット19Bとに各ボルト19Cを挿通し、各ナット19Dを用いて螺着することにより、移動装置20に燃料クーラ19を取付ける。
【0044】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0045】
まず、オペレータは、キャブ6に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用のレバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後進させることができる。一方、オペレータは、作業用のレバーを操作することにより、フロント装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0046】
油圧ショベル1を稼動しているときには、エンジン8の冷却ファン9により外装カバー11の側面ドア11A等から外部の空気を流入させ、この空気を冷却風として熱交換装置14のラジエータ16、オイルクーラ17、コンデンサ18、燃料クーラ19に供給することにより、それぞれを流れる流体を冷却することができる。
【0047】
次に、移動装置20を用いて燃料クーラ19の位置を調整する場合について、
図5、
図10ないし
図13を参照して説明する。まず、移動装置20のスライド機能によって燃料クーラ19を移動させて、燃料クーラ19が受承する冷却風の流量を最小から最大に変化させる場合を例示する。
【0048】
ここで、例えば油圧ショベル1を寒冷地等で使用する場合は、燃料を冷却する必要がないので、燃料クーラ19を冷却ファン9と対向しない位置(冷却ファン9による冷却風がほとんど当たらない位置)に移動させている。これに伴い、上流側の燃料クーラ19が冷却風の流通経路から排除されるから、ラジエータ16、オイルクーラ17、コンデンサ18に多くの冷却風を当てることができる。
【0049】
即ち、
図5に示す燃料クーラ19の位置が、冷却ファン9と対向しない位置となる。この場合、移動装置20の上枠部材22を、各連結枠部材23,24の各長孔23B,24Bの最下部位置に締着させることにより、燃料クーラ19を冷却ファン9と対向する位置から下側に外れた位置に移動させる。これにより、燃料クーラ19は、冷却ファン9の冷却風の流れ方向で重ならず、冷却ファン9と離間して配置することができる。この結果、燃料クーラ19が受承する冷却風の流量を最小にできるので、燃料の冷え過ぎを抑制して空燃比(燃焼性能)を良好にすることができる。
【0050】
また、外気温度が高い作業現場で作業を行う場合には、燃料クーラ19が冷却ファン9と対向する面積を変化させて、燃料クーラ19が冷却風を受承する受承面積を大きくする必要がある。即ち、
図10に示す燃料クーラ19の位置が、冷却ファン9と部分的に対向する位置となる。この場合、上枠部材22を、各連結枠部材23,24の各長孔23B,24Bの上,下方向の中間位置に締着させることにより、燃料クーラ19の上側の一部を冷却ファン9と対向させることができる。これにより、燃料クーラ19は、冷却ファン9が発生する冷却風の一部を受承できるから、燃料を冷却することができる。
【0051】
さらに高い温度となる作業現場で作業を行う場合には、燃料クーラ19が冷却ファン9の冷却風をより多く受承するようにする必要がある。即ち、
図11に示す燃料クーラ19の位置が、冷却ファン9と広く対抗する位置となる。この場合、上枠部材22を、各連結枠部材23,24の各長孔23B,24Bの最上部位置に締着させることにより、燃料クーラ19の広い範囲(略半分)を冷却ファン9と対向させることができる。
【0052】
ここで、燃料クーラ19による燃料の冷却効果を最大にするには、
図12に示す燃料クーラ19の位置が、冷却ファン9と全面に亘って対向する位置となる。この場合、下枠部材21の長孔21Aの前端側に取付ブラケット15Eを締着し、燃料クーラ19の取付ブラケット19Bを上枠部材22の長孔22Aの後端側に締着させることにより、燃料クーラ19のほぼ全面を冷却ファン9と対向させることができる。これにより、燃料クーラ19は、冷却風の流れ方向で全体が冷却ファン9と重なるから、燃料クーラ19が受承する冷却風の流量を最大限まで多くすることができ、燃料クーラ19によって燃料を効果的に冷却することができる。
【0053】
次に、移動装置20の回動機能によって燃料クーラ19を移動する場合を例示する。
図13に示すように、各連結枠部材23,24を、各ボルト23C,23D,24C,24Dを用いて、後側に傾けて締着させることにより、燃料クーラ19を斜め方向に移動させることができる。
【0054】
かくして、本実施の形態によれば、支持枠体15の取付ブラケット15Eと燃料クーラ19との間には、燃料クーラ19が冷却ファン9による冷却風を受承する受承面積を変化させるための移動装置20を設けている。この受承面積は、燃料クーラ19が冷却ファン9と対向する面積に対して変化する構成とした。これにより、移動装置20を変位させることにより燃料クーラ19が受承する冷却風の流量を可変に調整することができる。この結果、燃料クーラ19の冷却性能を大きな振り幅で可変にでき、種々の作業環境に対応することができる。
【0055】
また、移動装置20は、支持枠体15の取付ブラケット15Eと燃料クーラ19との間に設ける構成とした。これにより、熱交換装置14のレイアウトを変えることなく燃料クーラ19が受承する冷却風の流量を可変にすることができるので、熱交換装置14を安価に設置することができる。また、旋回フレーム5上に大きなスペースを確保する必要がなく、移動装置20をコンパクトに設けることができる。
【0056】
また、移動装置20は、燃料クーラ19を、冷却ファン9と対向しない位置から燃料クーラ19の全面に亘って冷却ファン9と対向する位置まで可変に移動させることができる構成とした。これにより、燃料クーラ19が受承する冷却風の流量を可変にすることができるので、油圧ショベル1の作業環境に応じて、任意の位置に燃料クーラ19を配置することができる。
【0057】
また、移動装置20は、下側に位置して支持枠体15に横方向に延びて取付けられた下枠部材21と、上側に位置して燃料クーラ19に横方向に延びて取付けられた上枠部材22と、下枠部材21と上枠部材22との長さ方向の一側に設けられた一方の前連結枠部材23と、下枠部材21と上枠部材22との長さ方向の他側に設けられた他方の後連結枠部材24とにより構成した。この前連結枠部材23と後連結枠部材24とには、上,下方向に延びる各長孔23B,24Bを設け、下枠部材21と上枠部材22とには、横方向に延びる各長孔21A,22Aを設ける構成とした。
【0058】
これにより、上,下方向に延びた長孔23B,24Bを用いて燃料クーラ19を上,下方向に移動させることができ、横方向に延びた長孔21A,22Aを用いて燃料クーラ19を横方向に移動させることができる。この結果、移動装置20は、各枠部材21,22,23,24の相対的な変位によって燃料クーラ19が受承する冷却風の受承面積を変化させることができる。
【0059】
また、下枠部材21と上枠部材22とは、前連結枠部材23と後連結枠部材24とに対する各めねじ孔21B,21Cおよび一端部位22A1、他端部位22A2が回動可能かつ締着可能に連結されている。これにより、移動装置20は、燃料クーラ19を斜め方向に移動させることができ、燃料クーラ19が受承する冷却風の受承面積を回動動作によって変化させることができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、移動装置20の下枠部材21に対し各連結枠部材23,24を各ボルト23C,24Cを用いて、回動可能かつ締着可能に連結する構成とした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図14に示
す変形例のように構成してもよい。即ち、
図14に示
す変形例のように、移動装置31は、下枠部材32の両端に、前連結枠部材33、後連結枠部材34を一体形成し、各連結枠部材33,34に対し上枠部材35を上,下方向にスライド可能に締結する構成としてもよい。
【0061】
さらに、本実施の形態では、移動装置20は、各枠部材21,22,23,24に各長孔21A,22A,23B,24Bを設けて、各枠部材21,22,23,24をスライドさせる構成とした場合を例示している
。図15に示す
参考例
では、移動装置41を、下枠部材42、上枠部材43、前連結枠部材44、後連結枠部材45を、スライド用の長孔は設けずにボルト46を用いて回動可能に連結する構成として
いる。
【0062】
また、本実施の形態では、エンジン8を左,右方向に延在する横置き状態で旋回フレーム5に搭載し、油圧ポンプ10をエンジン8の右側に配置し、熱交換装置14をエンジン8の左側に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、エンジン8を左,右方向で反転させ、これに応じて油圧ポンプ10をエンジン8の左側に配置し、熱交換装置14をエンジン8の右側に配置する構成としてもよい。このような構成に対しても本発明を適用することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、第1の冷却器としてラジエータ16、オイルクーラ17、コンデンサ18を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば第1の冷却器としてラジエータ16のみを用いてもよいし、オイルクーラ17のみを用いる構成としてもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、第1の冷却器(例えば、ラジエータ16とオイルクーラ17)に対し、第2の冷却器として燃料クーラ19を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばコンデンサ18を移動装置20に取付け、このコンデンサ18を第2の冷却器として用いる構成としてもよい。さらに第2の冷却器として吸入空気を冷却するインタクーラを用いる構成としてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、熱交換装置14にラジエータ16とオイルクーラ17とコンデンサ18と燃料クーラ19とを設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば熱交換装置14にラジエータ16とオイルクーラ17と燃料クーラ19だけを設ける構成としてもよい。また、熱交換装置14にオイルクーラ17と燃料クーラ19だけを設ける構成とすることもできる。一方、本実施の形態の熱交換装置14に、インタクーラ等を配置する構成としてもよい。
【0066】
さらに、本実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用できるものである。