特許第6333811号(P6333811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333811
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】アントラキノンアゾ染料
(51)【国際特許分類】
   C09B 56/12 20060101AFI20180521BHJP
   D06P 1/18 20060101ALI20180521BHJP
   D06P 1/20 20060101ALI20180521BHJP
   D06P 3/54 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C09B56/12CSP
   D06P1/18
   D06P1/20
   D06P3/54 Z
【請求項の数】1
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-515452(P2015-515452)
(86)(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公表番号】特表2015-524013(P2015-524013A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】EP2013059990
(87)【国際公開番号】WO2013182391
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】12170978.6
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300052420
【氏名又は名称】ハンツマン アドバンスト マテリアルズ (スイッツァランド) ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS (SWITZERLAND) GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペーターマン,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ラーク,ウルス
(72)【発明者】
【氏名】ムーラー,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ペセック,イボンヌ
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−074362(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/072966(WO,A1)
【文献】 特開昭56−076458(JP,A)
【文献】 特開昭57−090080(JP,A)
【文献】 特表2008−540751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、
は、水素原子を表し、
、ヒドロキシ基を表し
は、水素原子を表し、
は、水素原子を表し、
Dは、式(2)
【化2】
(式中、
、n−ブチル基を表す。)で表される基を表す。]で表されるアゾ染料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントラキノンアゾ染料、及び半合成の又は合成の疎水性繊維材料の染色又は捺染におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カップリング成分とする4−メチル−5−シアノ−6−ヒドロキシ−2−ピリドンに基づくアントラキノンアゾ染料は、光及び移染に対するそれらの堅牢性のおかげで、顔料の様々な、例えば紙及びプラスチックの塗料及び着色のような用途で使用できることが欧州特許43937号に記載されている。
米国特許7,005,507号は、ポリエステルにおいて着色に強い、アルカリ安定の染色、又は捺染をもたらす置換した3−シアノ−4−メチルピリジン、及びベンゼン、ナフタレン、ジフェニル、アゾベンゼン、チオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、チアジアゾール、インダゾール、ベンゾトリアゾール、ピラゾール、アントラキノン、ナフトエ酸イミド、クロモン、フタルイミド、又はジフェニレンオキシド類のジアゾ成分から製造された染料が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
全般に優れた性質、及び特に高温の光堅牢性を有する山吹色からオレンジ色の色合いにおける非常に優れたビルドアップ性、及び着色に強い染色又は捺染をもたらすことによって特徴付けられる新しい染料又は染料混合物のニーズがある。
【0004】
驚くべきことに、本発明に係るアゾ染料は、かなりの程度まで上記で与えられた基準を満たすことが、今回見出された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1)
【化1】
[式中、
は、水素原子又はヒドロキシ基を表し、
は、水素原子又はヒドロキシ基を表し、基R及びRの少なくとも一方は、ヒドロキシ基を表し、
は、水素原子、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表し、
は、水素原子、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表し、
Dは、式(2)又は式(3)
【化2】
(式中、
は、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシアルキル基、炭素原子数2乃至12のアルケニル基、炭素原子数6乃至30のアリール基、又は炭素原子数7乃至36のアラルキル基を表し、並びに
及びRは、他方と各々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシアルキル基、炭素原子数6乃至30のアリール基、又は炭素原子数7乃至36のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。]で表されるアゾ染料{但し、式(1)[式中、Rは水素原子を表し、Rはヒドロキシ基を表し、R及びRは水素原子を表し、及びDは式(2)で表される基(式中、Rはエチル基を表す。)を表す。]で表される化合物を除く。}に関する。
【0006】
アルキル基を表すところの式(2)及び式(3)中の基R、R、及びRは、何れも、直鎖又は枝分かれ基であり得る。
例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、及びn−ドデシル基である。
【0007】
基R、R、又はRとして適する炭素原子数1乃至12のヒドロキシアルキル基は、例えば2−ヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基、及び2−、3−、又は4−ヒドロキシブチル基である。
【0008】
アルコキシ基も直鎖又は枝分かれであり得る。適するアルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、及びn−デシルオキシ基、並びに3−(2−メトキシエトキシ)プロピル基である。
【0009】
置換基Rとしてのアルケニル基は、好ましくは2乃至6個、特に2又は3個の炭素原子を含む。例えば、ビニル基、アリル基、及びクロチル基である。
【0010】
アリール基は、例えばフェニル基、トリル基、メシチル基、イシチル基、ナフチル基、及びアントリル基である。
【0011】
適するアラルキル基は、例えばベンジル基及び2−フェニルエチル基である。
【0012】
基R及びRとして適するハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、好ましくは塩素原子又は臭素原子である。
【0013】
更に好ましいものとしては、上記で定義した式(1)[前記Dが式(2)(式中、Rは、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、又は2−フェニルエチル基を表す。)で表される基を表す。]で表されるアゾ染料が与えられる。
【0014】
特に好ましいものとしては、式(1)[前記Dが式(3){式中、R及びRは、他方と各々独立して、水素原子、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−(2−メトキシエトキシ)プロピル基、フェニル基、4−n−ブチルフェニル基、又は2−フェニルエチル基を表す。}で表される基を表す。]で表されるアゾ染料が与えられる。
【0015】
式(1)で表される染料は、既知の方法に従って、例えば式(5)
【化3】
(式中、R、R、R及びRは上記式(1)で定義したとおりである。)で表されるアミノアントラキノンを慣用の手順に従ってジアゾ化し、そして、得られたジアゾニウム塩を式(6)又は式(7)
【化4】
(式中、R、R及びRは上記式(2)及び(3)で定義したとおりである。)で表されるカップリング成分とカップリングすることによって製造することができる。
【0016】
式(5)で表される化合物のジアゾ化は、それ自体既知の方法により、例えば含塩酸又は含硫酸等の酸性水性媒体中の亜硝酸ナトリウムを用いて行われる。しかしながら、ジアゾ化は、また他のジアゾ化剤、例えばニトロシル硫酸を使用して行われ得る。ジアゾ化において、追加の酸は、反応媒体、例えばリン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸もしくは塩酸又はそれら酸の混合物(例えば、プロピオン酸及び酢酸の混合物)中に存在し得る。ジアゾ化は、−10乃至30℃、例えば−10℃乃至室温の温度で有利に行われる。
【0017】
ジアゾ化された式(5)で表される化合物と式(6)又は式(7)で表されるカップリング成分のカップリングは、同様に既知の方法、例えば酸性の水性媒体又は水性有機媒体中で、有利には−10乃至30℃、特に10℃未満の温度で達成される。使用される酸の例は、塩酸、酢酸、プロピオン酸、硫酸、及びリン酸である。
【0018】
式(5)で表される化合物は、既知であるか、又はそれ自体既知である方法で製造し得る。
【0019】
1−ヒドロキシ−5−アミノアントラキノン及び1−ヒドロキシ−8−アミノアントラキノンは、独国特許148875号に従い、H.Waldmann,J.prakt.Chem130(1931),92−102によると5−アミノキニザリンに合成することができる。
【0020】
式(6)及び式(7)で表されるカップリング成分は、また既知であるか、又はそれ自体既知である方法で製造し得る。
【0021】
式(7)で表されるカップリング成分は、米国特許3,853,895号に従い、2,6−ジクロロ−3−シアノ−4−メチルピリジンを最初に化合物R−NHと、そして次にR−NH(R及びRは上記で定義したとおりである。)と反応させることによって通常製造される。R及びRは一致しない場合、通常二つの異なった異性体が生じる。得られるカップリング成分混合物から、個々のカップリング成分は、続くクロマトグラフ分離によって得ることができる。
しかしながら、得られる染料の使用志向性質に関して、異性体のカップリング成分を分離する必要はないが、これらは混合物としてジアゾニウム塩と反応することができ、よって単一成分と比較して有害作用がない染料混合物を提供する。
従って、2,6−ジクロロ−3−シアノ−4−メチルピリジンとR−NH及びR−NHとの反応から生じる異性体のカップリング成分、並びに、それらから生じる染料混合物は、通常分離できない。
【0022】
本発明に係るアゾ染料は、他の特定の黄色のアントラキノンアゾ染料と有利に組み合わせることができ、よって卓越したビルドアップ特質を示し、且つ、優れた堅牢性、特に高温の光堅牢性を有する所望の山吹色の色合いにある染色物又は捺染物が得られる染料混合物を提供する。
【発明の効果】
【0023】
それ故、本発明は更に
(A)少なくとも一つの上記で定義した式(1)で表される染料、及び
(B)少なくとも一つの式(4)
【化5】
(式中、
は、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシアルキル基、炭素原子数2乃至12のアルケ
ニル基、炭素原子数6乃至30のアリール基、又は炭素原子数7乃至36のアラルキル基を表す。)で表される染料を含み、
成分A:Bの重量比は1:4乃至4:1である、染料混合物に関する。
【0024】
式(4)で表される染料は、例えば欧州特許43937号に記載されている。
【0025】
本発明に係る混合物において有利に使用され得る、式(4)で表される適する染料は、式(401)、(402)、及び(403)で表される化合物である。
【化6】
【0026】
好ましい実施形態では、式(401)で表される化合物20乃至40質量%、式(402)で表される化合物20乃至40質量%、及び式(403)で表される化合物20乃至40質量%を含む混合物(式(401)、(402)、及び(403)で表される化合物の量の合計は100%である。)は、本発明に係る染料混合物における成分(B)として塗布される。
【0027】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、半合成の及び、特に合成の疎水性繊維材料、より特には織物材料の染色及び捺染に使用され得る。斯様な半合成の及び/又は合成の疎水性繊維材料を含むブレンドから構成される織物材料は、同様に本発明に係るアゾ染料又は染料混合物を使用して染色又は捺染され得る。
【0028】
考慮される半合成繊維材料は、特にセルロース2アセテート及びセルローストリアセテートである。
合成疎水性繊維材料は、特に、例えばテレフタル酸とエチレングリコール等のグリコールとのポリエステル等の、線状形の、芳香族ポリエステル、又はテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとの縮合生成物;α,α−ジメチル−4,4−ジヒドロキシ−ジフェニルメタンとホスゲンとのポリカーボネート等のポリカーボネート、並びにポリ塩化ビニル及びポリアミドベースの繊維からなる。
【0029】
織物材料への、本発明に係るアゾ染料及び染料混合物の適用は、既知の染色手順に従って達成される。例えば、ポリエステル繊維材料は、80乃至140℃の温度で、慣用のアニオン性又は非イオン性の分散剤及び所望により慣用の膨張剤(キャリアー)の存在する水分散液から吸尽工程で染色される。セルロース2アセテートは、好ましくは65乃至85℃の温度で染色され、そしてセルローストリアセテートは115℃までの温度で染色される。
【0030】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、これらがポリエステル/羊毛及びポリエステル/セルロース繊維の混合繊維の染色にも満足に使用できるように、染浴中で、同時に存在している羊毛及び綿を着色せず、また斯様な材料を(非常に適する条件にて)僅かに着色する。
【0031】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、サーモゾル方法に従う染色、吸尽及び連続方法での染色及び捺染方法に適している。吸尽方法が好ましい。浴比は、装置、基板、及び構成の形態の性質に依存する。しかしながら、広範囲内、例えば1:4乃至1:100、好ましくは1:6乃至1:25で選択される。
【0032】
上記の織物材料は、様々な加工形態、例えば繊維、ヤーン又は不織布の形態、織物又は編物の形態であることができる。
【0033】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物を、使用前に染色調合剤に変質させることは有利である。その目的のために、アゾ染料は、その粒径が平均0.1乃至10ミクロンであるように粉砕される。磨砕は分散剤の存在下で行うことができる。例えば、乾燥したアゾ染料は、分散剤と共にすり潰されるか、又は分散剤と共にペースト状に混練され、その後真空下で又は噴霧で乾燥させる。斯様にして得られた調合剤は、捺染ペースト及び染浴を調整するために、水を添加した後、使用できる。
【0034】
捺染のために、慣用の造粘剤、例えばアルギン酸塩、ブリティッシュガム、アラビアガム、結晶ガム、ローカストビーン粉、トラガカント、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン等の変性又は未変性の天然製品、又はポリアクリルアミド、ポリアルクリル酸もしくはそれらのコポリマー、もしくはポリビニルアルコール等の合成製品が使用できる。
【0035】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、上述した材料、特にポリエステル材料に、特に光、より特に非常に優れた高温の光堅牢性、熱固着、プリーツ付け、塩素及び水、汗及び洗濯に対する堅牢性等の湿潤等に、非常に良好な使用中の堅牢性を有するムラのない色合いを付与し;完成した染色は、また摩擦に対する優れた堅牢性によって特徴付けられる。
【0036】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、また他の染料と一緒に、混合された色合いの調整に満足に使用できる。
【0037】
更に、本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、三色染色又は捺染技術に適する成分として使用できる。
【0038】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、また超臨界COから疎水性織物材料を染色するのに非常に適している。
【0039】
本発明は、また本発明に係るアゾ染料及び染料混合物の上述した使用、及び半合成の又は合成の疎水性繊維材料、特に織物材料の染色又は捺染の工程に関し、そして、該材料が
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物を塗布するか又はこれら材料に混和することを含む方法である。上記の疎水性繊維材料は、好ましくは織物ポリエステル材料である。本発明に係る方法によって処理できる更なる基材、及びまた好ましい工程の条件は、上記の本発明に係るアゾ染料及び染料混合物の使用の詳細な説明において見出すことができる。本発明は、また該方法による疎水性繊維材料、特にポリエステル織物材料の染色又は捺染に関する。
【0040】
本発明に係るアゾ染料及び染料混合物は、また現代の再生処理、例えば感熱転写捺染に適している。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明を説明するのに有効です。特に断りのない限り、部は質量部であり及び百分率は質量パーセントである。温度は、摂氏度で与えられている。質量部と体積部との関係は、グラムと立方センチメートルとの関係と同じである。
【0042】
I.合成例
I.1 1−ヒドロキシ−5−アミノ−6,8−ジクロロアントラキノンの製造
1−ヒドロキシ−5−アミノアントラキノン28.7gをN−メチルピロリドン(NMP)128.5gに溶解した。塩素ガスを該溶液に0乃至5℃の温度で3時間通過させた。反応混合物を室温で一晩中撹拌した。その後、生じた溶液をろ過し、そしてろ過ケーキをNMP中で再結晶させた。
H NMR(250MHz,CDCl)δ=12.32(s,1H),7.97(s,1H),7.80(t,1H),7.71(dd,1H),7.35(dd,1H)
【0043】
I.2 1−ヒドロキシ−5,7−ジクロロ−8−アミノアントラキノンの製造
1−ヒドロキシ−8−アミノアントラキノン28.7gをNMP177gに溶解した。塩素ガスを該溶液に0乃至5℃の温度で3時間通過させた。反応混合物を室温で一晩中撹拌した。その後、生じた溶液をろ過し、そしてろ過ケーキをNMP中で再結晶させた。
H NMR(250MHz,CDCl)δ=12.42(s,1H),7.89(s,1H),7.56(t,1H),7.56(dd,1H),7.30(dd,1H)
【0044】
I.3 1,4−ジヒドロキシ−5−ニトロ−8−アミノアントラキノンの製造
ホウ酸5.0gを硫酸150gに溶解した。続いて、1,4−ジヒドロキシ−5−アミノアントラキノンを室温で添加した。そして、混酸13.0g(硫酸中に52%硝酸)、その後、硫酸50gを6乃至10℃の温度で滴下した。室温で8日間撹拌した後、反応混合物としては氷500g、水200g、及びスルファミン酸10gを得た。得られた懸濁液をろ過し、そして酢酸及び水で洗浄した。
H NMR(250MHz,CDCl)δ=12.83(s,1H),8.60(d,1H),7.68(d,1H),7.36(d,1H),7.31(d,1H)
【0045】
実施例I.4:
式(101)で表される化合物
【化7】
5−アミノ−1−ヒドロキシアントラキノン2.4gをニトロシル硫酸(40%)3.2gと、18乃至20℃の室温の濃硫酸18g中で反応させた。ジアゾ化は18時間後に終了した。生じた溶液は、氷浴で10乃至20℃の温度を保つように冷却された10%NaOH水溶液4g中の1−ブチル−3−シアノ−6−ヒドロキシ−2−ピリドン2.1gの溶液に滴下した。pH値は、30%NaOH水溶液37gの添加によって1乃至2の間に維持される。反応が完了した後、混合物をろ過した。残留物は、エタノール/水混合物で洗浄し、そして真空中で乾燥した。
H NMR(250MHz,CDCl)δ=16.4(s,1H),12.50(s,1H),8.40(dd,1H),8.28(dd,1H),8.02(dd,1H),7.90(t,1H),7.74(t,1H),7.36(dd,1H),4.09(t,2H),2.68(s,3H),1.67(m,2H),1.44(m,1H),0.98(t,3H)
【0046】
実施例I.2−I.93
実施例I.1に記載の一般的な手順に従う以下の染料は、全般に優れた堅牢性を有するPES染料を調製することができる。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0047】
II.適用例
II.1 ポリエステルの吸尽染色
ポリエステル繊維100gを室温で、1:20の浴比で、
式(101)で表されるアゾ染料0.5g、
硫酸アンモニウム1g/L、及び
商業用レべリング剤0.5g/Lを含む染液に浸漬した。
その染液は80%ギ酸を使用して、4.5乃至5のpH値に調整されている。それから、染液を最初に3℃/分の加熱速度で60℃まで加熱し、次に2℃/分の加熱速度で135℃まで加熱された。
135℃で、染色は60分間行った。次に、染液を40℃に冷却し、そして染色されたポリエステル繊維を水で洗浄し、30%水酸化ナトリウム溶液5mL/L、85%亜ジチオン酸ナトリウム溶液2g/L、及び業務用洗剤1g/Lを含む浴中で70乃至80℃で20分間、還元的に浄化した。仕上がった染色物を水で洗浄し、そして乾燥した。
全般に優れた堅牢性、特に極めて優れた高温の光堅牢性を有する着色に強いオレンジ(?)染色物が得られた。