(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも5つの異なる抗原または前記少なくとも5つの抗原をコードする核酸分子を含んでなり、前記抗原がマイコバクテリア種から独立して得られる、免疫原性組み合せ物であって、
前記少なくとも5つのマイコバクテリア抗原が、ESAT−6(Rv3875)、TB10.4(Rv0288)、Ag85B(Rv1886)、RpfB、RpfD、Rv0111、Rv0569、Rv1733c、Rv1807、Rv1813、Rv2029c、Rv2626、Rv3407およびRv3478からなる群から選択され、
免疫原性組み合わせ物が、活動感染期からの少なくとも1つの抗原、再燃感染期からの少なくとも1つの抗原、および潜伏感染期からの少なくとも1つの抗原を含んでなるまたはコードする多相性であり、かつ
免疫原性組み合わせ物が、少なくともRpfBおよびRpfDを含んでなるまたは発現する、
免疫原性組み合わせ物。
マイコバクテリア抗原が、結核菌(Mtb)、ウシ結核菌、ウシ結核菌BCG、M.アフリカナム、M.カネッティ、M.カプレ、およびネズミ型結核菌からなる群から選択される結核菌群のマイコバクテリア種から得られる、請求項1に記載の免疫原性組み合せ物。
免疫原性組み合わせ物が、少なくともESAT−6(Rv3875)、Ag85B(Rv1886)およびTB10.4(Rv0288)を含んでなるまたは発現する、請求項3に記載の免疫原性組み合せ物。
潜伏期の1または複数の抗原が、Rv0111、Rv0569、Rv1733c、Rv1807、Rv1813、Rv2029c、Rv2626およびRv3407からなる群から選択される、請求項1または2に記載の免疫原性組み合せ物。
免疫原性組み合せ物が、別個のポリペプチドの形態で、または1以上の融合ポリペプチドの形態で、または別個の1または複数の抗原および1または複数の融合物の両形態でマイコバクテリア抗原を含んでなるまたはコードする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の免疫原性組み合せ物。
ベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、泡沫状ウイルス、アルファウイルス、水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択されるプラスミドベクターまたはウイルスベクターである、請求項11に記載のベクター。
i.Rv2029c、Rv2626、Rv1733cおよびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドと、RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター;
ii.Rv2029c、Rv2626、Rv1733cおよびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドと、RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター;
iii.Rv2029c、Rv2626、Rv1733cおよびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドと、RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター;
iv.Ag85B、Rv2626 RpfB、RpfDおよびRv1733cを含んでなる融合ポリペプチドと、Rv2029c、TB10.4、ESAT−6およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター;
v.Ag85B、Rv2626 RpfB、RpfDおよびRv1733cを含んでなる融合ポリペプチドと、Rv2029c、TB10.4、ESAT−6およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター;ならびに
vi.RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター
からなる群から選択される、請求項11〜15のいずれか一項に記載のベクター。
【発明の概要】
【0011】
結核は、資源が限られた地域での規定の標準治療に対する患者のコンプライアンスの低さ、HIVの共感染によるTB流行の増悪、成人の防御には有効でないBCG接種の性能の低さといった種々の理由で、管理されていると言うにはほど遠い。高まりつつあるTBの世界的脅威および内在する
Mtb感染と抗マイコバクテリア免疫応答の複雑さという点で、特に風土病地域において、結核を診断、予防および治療するための改良されたワクチン戦略の必要性が依然としてある。
【0012】
本発明は、感染の自然経過のあらゆる相に合わせられた
Mtb抗原の免疫原性組合せを提供することにより、この、およびその他の必要を満たす。
【0013】
この技術的問題は、特許請求の範囲に定義される実施形態の提供によって解決される。
【0014】
本発明のその他、およびさらなる態様、特徴および利点は、下記の本発明の現在のところ好ましい実施形態の説明から明らかになる。これらの実施形態は、開示の目的で示されるものである。
【0015】
発明の簡単な概要
本発明は、一般に、少なくとも5つの異なる抗原または前記少なくとも5つの抗原をコードする核酸分子を含んでなる免疫原性組合せに関し、前記抗原は、マイコバクテリア種、特に、結核菌(
Mycobacterium tuberculosis)(
Mtb)などの結核菌群のマイコバクテリア種から独立に得られる。
Mtb抗原パネルをそれらの免疫原性および防御特性に基づいて分類するためにデータマイニングスコアリングシステムが開発され、使用された。配列アラインメント、生化学的およびバイオインフォマティクス的予測研究の際に、14の
Mtb抗原が選択され、抗原/ベクター組合せおよび融合ポリペプチドとして組み合わせられた。
【0016】
本発明の一態様において、本発明の抗原組合せは多相性であり、少なくとも5つのマイコバクテリア抗原がマイコバクテリア感染の自然経過2つまたは3つの相、すなわち、活動期、潜伏期および再燃期に由来する。マイコバクテリア抗原は、本明細書に記載のように、混合物の形態でまたは1以上の融合ポリペプチドとして使用/発現され得る。
【0017】
本発明はまた、特定のマイコバクテリア抗原の融合ポリペプチド、このような融合ポリペプチドをコード/発現する核酸分子およびベクター、および前記融合ポリペプチドを含んでなるまたはコードする組成物、ならびに前記融合物、ベクターおよび組成物を作製する方法に関する。本発明はまた、このようなマイコバクテリア抗原および融合ポリペプチドに対する抗体に関する。本発明はさらに、マイコバクテリア感染の診断、予防もしくは治療、またはマイコバクテリア感染に関連する病態の改善を目的としたこのような免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、組成物または抗体の使用に関する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、必要とする対象者において、マイコバクテリア感染を治療、予防もしくは阻害する、またはマイコバクテリア感染に関連する病態を改善する方法であって、この免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクターまたは組成物を提供または投与することを含んでなる方法、を含む。
【0019】
本発明のなおさらなる態様は、必要とする対象者において免疫応答を惹起する方法であって、この対象者において免疫応答を誘導もしくは刺激する目的、またはマイコバクテリア感染を予防もしくは治療する目的で、この免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクターまたは組成物を提供または投与することを含んでなる方法、に関する。
【0020】
本発明のなおさらなる態様は、複数の容器、および対象者にこの免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクターまたは組成物を提供または投与するための説明書を含んでなるパーツキットを提供する。
【0021】
本発明のなおさらなる態様は、この免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクターまたは組成物を含んでなる、マイコバクテリア感染(例えば、結核)の診断用の抗体アッセイのための試薬のキットを提供する。
【0022】
本発明により提供される抗原組合せは、個々の抗原に比べて改良されかつ予期されない免疫原性特性(例えば、免疫原性応答のレベル、質および/または範囲)を提供する。
【0023】
本発明は、マイコバクテリア感染分野で予防または治療目的の、例えば、
Mtb感染の予防および/または一次TBの予防および/または潜伏感染者における再活性化の予防のための、単独でのまたはBCGブースターとしての免疫療法に関して特に有用である。本発明はまた、標準的な(例えば、抗生物質療法)治療または現在開発されている他の任意の新規な治療(例えば、直接的または間接的小阻害分子;抗体または免疫療法など)と併用することもできる。本発明はまた、獣医学分野においても、例えば、動物、特にウシおよびヤギの育種において、マイコバクテリア感染および/または活動性疾患のリスクを軽減するまたは無くすために有用である。
【0024】
本発明は、一般に、マイコバクテリア種の少なくとも5つの抗原を含んでなる免疫原性組合せ、または前記少なくとも5つの抗原をコードする核酸分子に関する。
【0025】
定義
本明細書に出願全体を通じて使用される用語「1つ(a)」および「1つ(an)」は、文脈がそうではないことを明示しない限り、それらが「少なくとも1つ」、「少なくとも第1」、「1以上」または「複数」の参照化合物または工程を意味するという意味で使用される。
【0026】
用語「および/または」は、本明細書で使用される場合はどこであれ、「および」、「または」および「前記用語により接続された要素の総てまたは他の任意の組合せ」の意味を含む。
【0027】
用語「約」または「およそ」は、本明細書で使用する場合、示された値または範囲の10%以内、好ましくは8%以内、およびより好ましくは5%以内を意味する。
【0028】
用語「アミノ酸」、「残基」および「アミノ酸残基」は同義語であり、天然アミノ酸ならびにアミノ酸類似体(例えば、非天然、合成および、DまたはL光学異性体を含む修飾アミノ酸)を包含する。
【0029】
用語「ポリペプチド」は、共有結合的ペプチド結合を介して結合された少なくとも9以上のアミノ酸を含んでなるアミノ酸残基のポリマーを意味する。ポリペプチドは、直鎖、分岐型または環状であり得、天然アミノ酸および/またはアミノ酸類似体を含んでなり得る。ポリペプチドは、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、切断、ジスルフィド結合による架橋および/もしくはリン酸化によって、またはタグ(his、myc、Flagなど)もしくはさらにはターゲティングペプチド(シグナルペプチド、膜貫通ドメインなど)の付加的アミノ酸を含有することによって、化学的に修飾されてもよい。用語「ポリペプチド」は、タンパク質(通常、50以上のアミノ酸残基を含んでなるポリペプチドに対して使用される)、オリゴペプチド、およびペプチド(通常、50未満のアミノ酸残基を含んでなるポリペプチドに対して使用される)を包含すると理解される。従って、各ポリペプチドは、特定のアミノ酸によって特徴付けることができ、特定の核酸配列によりコードされ得る。
【0030】
製品、組成物および方法を定義するために使用する際に本明細書で使用する場合、用語「含んでなる(comprising)」(および含んでなる(comprising)の任意の形態、例えば、「含んでなる(comprise)」および「含んでなる(comprises)」)、「有する(having)」(および有する(having)の任意の形態、例えば、「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(および含む(including)の任意の形態、例えば、「含む(includes)」および「含む(include)」または「含有する(containing)」(および含有する(containing)の任意の形態、例えば、「含有する(contains)」および「含有する(contain)」)は、オープンエンドであり、付加的な、列挙されていない要素または方法工程を排除しない。従って、ポリペプチドは、あるアミノ酸配列がそのポリペプチドの最後のアミノ酸配列の部分であり得る場合には、そのアミノ酸配列を「含んでなる」。このようなポリペプチドは、最大数百の付加的アミノ酸残基(例えば、本明細書で述べられるようなタグおよびターゲティングペプチド)を有し得る。「から本質的になる」とは、何らかの本質的に重要な他の成分または工程を排除することを意味する。従って、列挙されている成分から本質的になる組成物は、微量の混入物および薬学上許容される担体は排除しない。ポリペプチドは、あるアミノ酸配列が最終的に少数の付加的アミノ酸残基だけを伴って存在する場合に、そのアミノ酸配列「から本質的になる」。「からなる」とは、他の成分または工程の微量と言えない要素を排除することを意味する。例えば、ポリペプチドは、そのポリペプチドが、列挙されているアミノ酸配列以外のいずれのアミノ酸も含まない場合に、そのアミノ酸配列「からなる」。
【0031】
用語「同一性」は、2つのポリペプチド配列または核酸配列の間のアミノ酸とアミノ酸またはヌクレオチドとヌクレオチドの一致を意味する。2つの配列間の同一性パーセンテージは、最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さを考慮に入れた、それらの配列が共通に持つ同一の位置の数の関数である。当技術分野においては、例えばAtlas of Protein Sequence and Structure (Dayhoffed, 1981, Suppl., 3: 482-9)のNCBIまたはALIGNで利用可能なBlastプログラムなど、アミノ酸配列間の同一性パーセンテージを決定するための様々なコンピュータプログラムおよび数学的アルゴリズムが利用可能である。ヌクレオチド配列間の同一性を決定するためのプログラムもまた、専用のデータベース(例えば、Genbank、the Wisconsin Sequence Analysis Package、BESTFIT、FASTAおよびGAPプログラム)で利用可能である。例として、「少なくとも80%の同一性」とは、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、「作動可能に連結される」とは、連結されている要素が、それらの意図される目的と協調して機能するように配置されることを意味する。例えば、プロモーターは、そのプロモーターが転写開始部から終結部まで転写を遂行して、許容性宿主細胞内の核酸分子中のコード配列の発現をもたらすならば、その核酸分子に作動可能に連結されている。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「マイコバクテリア」、「マイコバクテリア種」および「マイコバクテリアの」は、マイコバクテリウム科(
Mycobacteriaceae)に属する放線菌属(
Actinobacteria)のいずれのメンバーも意味して互換的に使用される。これらの用語は、実験室株ならびに臨床単離株も包含する。
【0034】
「マイコバクテリア感染」は、対象者のマイコバクテリア種への暴露と、その後の対象者または対象者組織への細菌の定着を意味する。この定着は、重大な疾患(例えば、マイコバクテリアに応じて結核、らい病、ブルーリ潰瘍(Bureli ulcer)など)を引き起こすことがあり、あるいは有害な徴候をもたらさない場合もある(無症候性または潜伏感染)。
【0035】
用語「組合せ」は、本明細書で使用する場合、様々な成分(例えば、マイコバクテリア抗原および/またはコード核酸分子)のあり得る任意の構成を意味する。このような構成としては、マイコバクテリア抗原の混合物(例えば、個々の抗原の混合物および/または抗原の融合物)または核酸分子の混合物(例えば、1以上のベクターにより運ばれる)ならびに1または複数のポリペプチドと1または複数の核酸分子の混合物が含まれる。本発明は、等モル濃度の各成分を含んでなる組合せ、ならびに大きく異なる濃度の組合せを包含する。各マイコバクテリア成分の最適濃度は当業者によって決定することができると認識される。
【0036】
用語「免疫原性」とは、免疫原性と認定された成分が導入された対象者において、測定可能なT細胞および/またはB細胞媒介免疫応答を誘導または刺激する能力を意味する。例えば、本発明の抗原性の組合せは、それが対象者において免疫応答を誘導または刺激することができるという意味で免疫原性であり、この免疫応答は、先天性および/または特異的(すなわち、前記免疫原性組合せに含まれる、または前記免疫原性組合せにより発現される少なくとも1つのマイコバクテリア抗原/エピトープに対して)、体液性および/または細胞性(例えば、抗体および/もしくはサイトカインの生産、ならびに/または細胞傷害性T細胞、B、Tリンパ球、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞、NK細胞などの活性化)であり得、通常、投与された対象者において防御的応答をもたらす。当技術分野では、本明細書に記載のようにin vivo(動物またはヒト)、またはin vitro(例えば、生体サンプル)のいずれかで成分の免疫原性を評価するために、極めて多様な直接的または間接的生物アッセイが利用できる。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「マイコバクテリア抗原」は、マイコバクテリア種内に存在するもしくはマイコバクテリア種から得られるポリペプチド、または抗体もしくはT細胞受容体が結合することができるその断片(例えば、エピトープ)を意味する。一般に、このような抗原は、主要組織適合性複合体(MHC)に関して特異的抗体またはT細胞受容体による認識に関与する1以上のBおよび/またはTエピトープ、特に、CTLまたはT
Hエピトープまたはその両方を含有する。本発明に関して、この用語は、天然のマイコバクテリアポリペプチドならびに以下に記載されるその断片および改変型(すなわち、変異体)を包含する。
【0038】
「エピトープ」は、抗体、T細胞受容体またはHLA分子により認識される部位を形成する最小のペプチドモチーフ(通常、8〜25アミノ酸残基のセット)に相当する。それらの残基は、連続的であっても(直鎖エピトープ)または連続的でなくてもよい(互いに直接隣接しない残基を含むコンフォメーショナルエピトープ)。
【0039】
用語「処置する(treating)」(および処置する(treating)の任意の形態、例えば、「処置(treatment)」、「処置する(treat)」)は、本明細書で使用する場合、予防(例えば、マイコバクテリアに感染するリスクのある対象者の予防)および/または治療(例えば、マイコバクテリアに感染していると診断された対象者)を包含する。処置は、最終的に従来の治療法、特に、活動性マイコバクテリア疾患(例えば、TB)の処置に現行使用されているものと併用して、対象者に有効薬剤(例えば、本明細書に記載の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクターおよび/または組成物)を外的または内的に投与することを必要とする。
【0040】
用語「対象者」は一般に、マイコバクテリア種に対する免疫応答の誘導または刺激から利益を得る脊椎動物、特に、家畜、農用動物、競技用動物、および霊長類からなる群から選択される哺乳動物を意味する。好ましくは、対象者は、マイコバクテリア、特に、
Mtbに感染していると診断されたか、または感染するリスクのある、従って、マイコバクテリア感染(例えば、活動性または潜伏結核)により引き起こされるもしくは関連する疾患または病態を有する可能性のある、または有するリスクのあるヒトである。
【0041】
「防御的応答」は、その処置が、処置されない対象者における応答に比べて処置された対象者に利益、例えば、免疫応答の誘導もしくは刺激、マイコバクテリア感染からの防御、または活動性疾患に対する抵抗性の増強、または潜伏マイコバクテリア感染の再活性化に対する予防、またはさらには活動性疾患発症後の治癒をもたらすという、その通常の意味を持つ。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「単離された」は、その自然環境から取り出された(すなわち、自然状態でその成分と会合している少なくとも1つの他の成分から分離された)成分(例えば、ポリペプチド、核酸分子、ベクターなど)を意味する。
【0043】
用語「から得られる」、「起源する(originating)」または「起源する(originate)」は、成分(例えば、ポリペプチド、核酸分子)の起源を特定するために使用され、例えば化学合成であり得るか組換え手段であり得るかなどの、その成分が作製される方法を限定することを意味しない。
【0044】
マイコバクテリア種
上記で定義したように、本発明の免疫原性組合せによって含まれてなる/コードされるマイコバクテリア抗原は、現時点で同定されているマイコバクテリウム(Mycobacterium)(M.)種の任意のメンバーから独立に得ることができる。当技術分野では、本発明に関して使用するための極めて多数のマイコバクテリアが記載されている。例示的マイコバクテリア種としては、限定されるものではないが、M.フレイ(
M.
phlei)、スメグマ菌(
M.
smegmatis)、M.アフリカナム(
M.
africanum)、M.カネッティ(
M.
canetti)、M.フォルツイタム(
M.
fortuitum)、M.マリナン(
M.
marinum)、M.ウルセランス(
M.
ulcerans)、結核菌(
M.
tuberculosis)(
Mtb)、パラ結核菌(
M.
paratuberculosis)、ウシ結核菌(
M.
bovis)、ネズミ型結核菌(
M.
microti)、M.セラツム(
M.
celatum)、鳥結核菌(
M.
avium)、らい菌(
M.
leprae)、M.レプラムリウム(
M.
lepraemurium)、M.イントラセルラーレ(
M.
intracellulare)、M.スクロフラセウム(
M.
scrofulaceum)、M.キセノピ(
M.
xenopi)、M.ゲナベンス(
M.
genavense)、M.カンサシイ(
M.
kansasii)、M.シミエ(
M.
simiae)、M.シュルガイ(
M.
szulgai)、M.ヘモフィルム(
M.
haemophilum)、M.アジアティカム(
M.
asiaticum)、M.マルモエンス(
M.
malmoense)、M.バッカエ(
M.
vaccae)、M.カプレ(
M.
caprae)、M.ピンニペディ(
M.
pinnipedii)およびM.シモイデイ(
M.
shimoidei)が挙げられる。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明での使用におけるマイコバクテリア抗原は、結核疾患を引き起こすと従来から考えられている種、ならびに免疫不全者(例えば、HIV感染患者)において結核および肺疾患を引き起こす環境性および日和見性のマイコバクテリア種を含む結核菌群のマイコバクテリア種から得られる。本明細書で使用するための結核菌群の例示的な種としては、限定されるものではないが、結核菌(
Mtb)、ウシ結核菌、ウシ結核菌BCG、M.アフリカナム、M.カネッティ、M.カプレ、およびネズミ型結核菌が挙げられる。好ましい実施形態は、H37RvおよびH37Raなどの
Mtb実験室株、およびKZN4207、T85、CDC1551(米国で単離)、F11(南アフリカで単離)、C、K85(オランダで単離)、CPHL−Aなどの臨床単離株、ならびにTN5904、Haarlem、KZN1435、BejingおよびKZN605などのMDRまたはXDR単離株を含む
Mtbに関する。特に獣医学的使用のためのマイコバクテリア抗原供給源としての他の好ましい種は、ウシ結核菌、ウシ結核菌BCGおよびM.カプレである。しかしながら、M.種間に存在するアミノ酸およびヌクレオチドレベルでの高い相同性パーセンテージを考えれば、実際には交差反応性が予想される。例えば、
Mtbおよびウシ結核菌のRv1733抗原は100%同一であるが、M.アフリカナムRv1733は、
Mtbと、210のアミノ酸のうち209が共通している。従って、
Mtb抗原の組合せは、
Mtb感染者(ヒト用途)と、ウシ結核菌およびM.カプレ(獣医学的用途)感染者の両方を処置するために有用である可能性がある。
【0046】
好適なマイコバクテリア抗原のアミノ酸配列およびコードヌクレオチド配列は、専門のデータバンクおよび文献において容易に入手できる。例えば、
Mtb配列は、Cole et al. (1998, Nature 393: 537)またはthe Wellcome Trust Sanger Institute, lnstitut Pasteurおよびその他(例えば、TB database (@tbdb.org)およびtuberculist (@tuberculist.epfl.ch)により管理されているものなどのウェブサイトに見出すことができる。しかしながら、本発明は、これらの例示的マイコバクテリア種に限定されない。実際に、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、異なる単離株および株間で異なる場合があり、この天然の遺伝的バリエーションも、下記のような非天然改変とともに本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
免疫原性組合せ
本明細書で使用する場合、「少なくとも5つ」は、5〜50(すなわち、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35など)、望ましくは5〜33、好ましくは7〜20、およびより好ましくは8〜18の範囲内に含まれる数であり、10〜15(例えば、12、13または14)が特に好ましい。好ましくは、本発明の組合せは、およそ10〜15の
Mtb抗原または対応する核酸分子を含んでなる。
【0048】
本発明に関して、「少なくとも5つのマイコバクテリア抗原」は互いに異なる(例えば、その組合せが少なくとも5つの異なるマイコバクテリア抗原を含んでなる/コードする限り、同じマイコバクテリア抗原の複数コピーを使用することができる)。
【0049】
代わりにまたは加えて、少なくとも5つのマイコバクテリア抗原のそれぞれが天然マイコバクテリア抗原(例えば、全長抗原)またはその改変型(断片または変異体)であり得る。
【0050】
「天然」マイコバクテリア抗原は、自然界のマイコバクテリア源から発見、単離、取得することができる。このような供給源としては、マイコバクテリアに感染したまたは曝された対象者から採取された生体サンプル(例えば、血液、血漿、血清、唾液、痰、組織切片、生検試料など)、寄託機関(例えば、ATCCまたはTB institutions)、ライブラリーにおいて入手可能な、または文献に記載されている、培養細胞ならびに組換え材料(例えば、マイコバクテリア単離株、マイコバクテリアゲノム、ゲノム断片、ゲノムRNAまたはcDNA、ならびにこのような要素を含むことが当技術分野で知られている任意のプラスミドおよびベクター)が含まれる。
【0051】
改変マイコバクテリア抗原(例えば、変異体)は一般に、本明細書に具体的に開示されているポリペプチドまたは天然のものとは1以上の位置が異なる。1以上のアミノ酸残基の置換、挿入、付加および/または欠失、非天然構成ならびにこれらの可能性の任意の組合せを含む、いずれの改変も想定することができる。アミノ酸置換は、保存的であっても保存的でなくてもよい。いくつかの改変が企図される場合、それらは連続的残基に関するものでも、かつ/または非連続的残基に関するものでもよい。1または複数の改変は、部位特異的突然変異誘発(例えば、Amersham、レ・ジュリス、フランスのSculptor(商標)in vitro突然変異誘発システムの使用)、PCR突然変異誘発、DNAシャッフリングおよび合成技術(例えば、所望のポリペプチド変異体をコードする合成核酸分子を生じる)などの当業者に公知のいくつかの方法によって作出することができる。
【0052】
それらの起源(天然または改変)は何であれ、本発明の免疫原性組合せに含まれるまたはコードされるマイコバクテリア抗原のそれぞれがB細胞および/またはT細胞エピトープを含む対応する天然抗原の1以上の免疫原性部分を保持することが好ましい。このような関連のある免疫原性部分を特定するための方法は当技術分野で周知である。例えば、T細胞エピトープは、生物アッセイ(例えば、合成オーバーラッピングオリゴペプチドのライブラリーを使用するIFNgアッセイ)または利用可能な予測プログラムを実施することにより特定することができる。
【0053】
一実施形態では、本発明の免疫原性組合せは、活動期、再燃期および潜伏期からなる群から選択される少なくとも2つの異なる感染期(例えば、活動期と再燃期、活動期と潜伏期、または再燃期と潜伏期)からのマイコバクテリア抗原を含んでなるまたはコードする。好ましい組合せは、3つの感染期からのマイコバクテリア抗原、特に
Mtb抗原を含んでなるまたはコードする「多相性」であり、少なくとも1つの抗原が活動感染期に由来し、少なくとも1つの抗原が再燃感染期に由来し、少なくとも1つの抗原が潜伏感染期に由来する。
【0054】
「活動期の抗原」は一般に、マイコバクテリアがin vivoにおいて活発に増殖および複製している際に主として発現されるタンパク質のセットである。本発明において使用するための多数の活動期マイコバクテリア抗原が文献に記載されている(例えば、Bertholet et al., 2008, J. Immunol. 181: 7948-57; Bertholet and al., 2010, Sci Transl Med 2: 53ra74)。特に、適当な活動期の1または複数の抗原は、ESAT−6(Rv3875)、CFP−10(Rv3874)、TB10.4(Rv0288)、Ag85A(Rv3804)、Ag85B(Rv1886)、Rv3619、Rv3620、ならびにPPEファミリータンパク質Rv3478およびRv2608およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。好ましい免疫原性組合せは、少なくともESAT−6(Rv3875)、Ag85B(Rv1886)およびTB10.4(Rv0288)を含んでなるまたはコードする。
【0055】
「潜伏期の抗原」は、マイコバクテリアが長期間存続できる低代謝活性の可逆的状態であるマイコバクテリア感染の休眠(または潜伏)期の際に主として発現される。本発明において使用するための多数の潜伏期マイコバクテリア抗原が文献に記載されている。例示的
Mtb潜伏期抗原は、栄養素の枯渇の際にアップレギュレートされる低酸素抗原および飢餓抗原に対する細菌応答を媒介するDosRレギュロンによりコードされているものである(Voskuil et al., 2003, J. Exp Med 198: 705-13; Leyten et al., 2006, Microbes Inf. 8: 2052-60; Roupie et al., 2007, Infection and Immunity 75: 941-9; Black et al., 2009, Clin Vaccine Immunol 16: 1203-12; Schuck et al., 2009, PLoS One 4: e5590; Vipond et al., 2006, Vaccine 24: 6340-50; Vipond et al., 2007, Tuberculosis 86: 218-24; Bertholet et al., 2008, J. Immunol. 181: 7948-57; Bertholet et al., 2010, Sci Transl Med 2: 53ra74, Mollenkopf et al., 2004, Infect Immun 72: 6471-9);WO03/000721;WO03/004520;WO03/035681;WO2004/006952およびWO2006/104389)。特に、適当な潜伏期の1または複数の抗原は、Rv0081、Rv0111、Rv0198、Rv0569、Rv1733c、Rv1735、Rv1737、Rv1806、Rv1807、Rv1813、Rv2005c、Rv2029c、Rv2032、Rv2626、Rv2627、Rv2628、Rv2660c、Rv3407およびRv3812およびRv3478およびそれらの任意の組合せからなる群から;より好ましくは、Rv0111、Rv1733、Rv2029およびRv2626から、またはRv0569、Rv1807、Rv1813、Rv3407およびRv3478から、またはRv0111、Rv1733、Rv2029、Rv2626、Rv0569、Rv1807、Rv1813、Rv3407およびRv3478の両方からなる群から選択される。
【0056】
「再燃期の抗原」は、休眠状態と活発な増殖および複製(マイコバクテリア感染の活動状態)との間の遷移期に主として発現される、または遷移に関与する任意の抗原を意味する。本発明において使用するための再燃期抗原は文献に記載されている(例えば、Mukamolova et al., 2002, Mol Microbiol 46: 623-35; Yeremeev et al., 2003, Infection and Immunity 71: 4789-94; Mukamolova et al., 2006, Mol Microbiol 59: 84-98; Tufariello et al., 2006, Infect Immun 74: 2985-95; Biketov et al., 2007, MMC Infect Dis 7: 146; Kana et al., 2008, Mol Microbiol 67: 672-84; Kana et al., 2009, FEMS Immunol Med Microbiol 58: 39-50; Russel-Goldman et al., 2008, Infect Immun 76: 4269-81; Gupta et al., 2010, Microbiol 156: 2714-22およびCommandeur et al., 2011, Clin Vaccine Immunol. 18: 676-83)。特に、適当な再燃期の1または複数の抗原は、RpfA、RpfB、RpfC、RpfDおよびRpfEおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。好ましい免疫原性組成物は、少なくともRpfBおよびRpfD(例えば、その免疫原性断片)を含んでなるまたはコードする。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組合せは、ESAT−6(Rv3875)、CFP−10(Rv3874)、TB10.4(Rv0288)、Ag85A(Rv3804)、Ag85B(Rv1886)、Rv3619、Rv3620、RpfA、RpfB、RpfC、RpfD、RpfE、Rv0081、Rv0111、Rv0198、Rv0569、Rv1733c、Rv1735、Rv1737、Rv1806、Rv1807、Rv1813、Rv2005c、Rv2029c、Rv2032、Rv2626、Rv2627、Rv2628、Rv2660c、Rv3407 Rv3478、およびRv3812からなる群から;好ましくは、ESAT−6(Rv3875)、TB10.4(Rv0288)、Ag85B(Rv1886)、RpfB、RpfD、Rv0111、Rv0569、Rv1733c、Rv1807、Rv1813、Rv2029c、Rv2626、Rv3407およびRv3478からなる群から;およびより好ましくは、配列番号1〜14で示されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドまたはその任意の変異体もしくは断片の群から選択される少なくとも5つのマイコバクテリア抗原を含んでなるまたはコードする。
【0058】
例として、配列番号1はRv0111のアミノ酸配列を;配列番号2はTB10.4のアミノ酸配列を;配列番号3はRv0569のアミノ酸配列を;配列番号4はRpfBのアミノ酸配列を;配列番号5はRv1733のアミノ酸配列を;配列番号6はRv1807のアミノ酸配列を;配列番号7はRv1813のアミノ酸配列を;配列番号8はAg85Bのアミノ酸配列を;配列番号9はRv2029のアミノ酸配列を;配列番号10はRv2626のアミノ酸配列を;配列番号11はRV2839cのアミノ酸配列を;配列番号12はRv3407のアミノ酸配列を;配列番号13はRv3478のアミノ酸配列を;配列番号14はESAT−6のアミノ酸配列を表す。
【0059】
本発明に関して想定され得る各改変マイコバクテリア抗原は、天然対応物に対する1以上の改変、特に、得られるポリペプチドの合成、プロセシング、安定性および/もしくは溶解度に対する、ならびに/またはその免疫原性に対して有益な1以上の改変を含んでなる。好適な改変の代表例としては、限定されるものではないが、(a)1または複数の内部高疎水性領域の欠失、(b)N末端シグナルペプチドの欠失(必要であれば、異種のものとの置換)、および/または(c)安定性、免疫原性および組換え発現に悪影響を及ぼし得る非折り畳み領域の欠失、および/または(d)生物活性を消失させるための触媒ドメインの欠失または突然変異が挙げられる。
【0060】
特に、適当な免疫原性組成物は、配列番号15〜24で示されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの群から選択されるマイコバクテリア抗原を含んでなるまたはコードする。より具体的には、配列番号15は、天然対応物に対して、疎水性のN末端部分(最初の残基〜約393番)の欠失により改変されたRv0111抗原(Rv0111
*)を表す。配列番号16は、天然対応物に対して、シグナルペプチド(最初の残基〜およそ29番の残基)の欠失、および触媒ドメインの欠失によって改変され、従って、RfpBのおよそ30番〜283番を保持するRpfB抗原を表す。配列番号17は、天然対応物に対して、N末端推定TMドメイン(最初の残基〜約61番)の欠失によって改変されたRv1733抗原(Rv1733
*)を表す。配列番号18は、天然対応物に対して、非折り畳みC末端部分(最後のおよそ60残基)の欠失によって改変されたRv1807抗原(Rv1807
*)を表す。配列番号19は、天然対応物に対して、N末端シグナルペプチド(最初の残基〜約34番)の欠失によって改変されたRv1813抗原(Rv1813
*)を表す。配列番号20は、天然対応物に対して、N末端シグナルペプチド(最初の残基〜約39番)の欠失によって改変されたAg85B(Ag85B
*)を表す。配列番号21は、天然対応物に対して、C末端部分(最後のおよそ25残基)の欠失によって改変され、かつ、Rv2029酵素活性を消失させるために265番を突然変異させた(例えば、D265N;Cabrera et al., 2010, Arch Biochem Biophys 502: 23-30)Rv2029抗原(Rv2029
*)を表す。配列番号22は、天然対応物に対して、関連する酵素活性を消失させることを目的とした3つの突然変異(例えば、E292K、T315AおよびQ347A)と最後の7残基の欠失を含み、触媒ドメイン(LD、すなわち、リゾチームドメインとも呼ばれる)ように改変されたRpfD抗原を表す。配列番号23は、天然対応物に対して、非折り畳みC末端部分(最後のおよそ33残基)の欠失によって改変されたRv3407抗原(Rv3407
*)を表す。配列番号24は、天然対応物に対して、非折り畳みC末端部分(最後のおよそ40残基)の欠失によって改変されたRv3478抗原(Rv3478
*)を表す。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組合せは、本明細書に示されるアミノ酸配列と、その全長ポリペプチドまたはその断片(例えば、50以上の連続するアミノ酸残基、例えば、60、75、80またはさらには90のアミノ酸残基の断片)にわたって少なくとも80%の同一性(例えば、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性)を示す少なくとも5つのマイコバクテリア抗原、特に、配列番号1〜24(開始Metを含むまたは含まない)のいずれかと少なくとも80%相同または同一のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの群から選択される少なくとも5つの
Mtb抗原を含んでなるまたはコードする。
【0062】
より好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組合せは、少なくともRv0111を含んでなり、または発現し、配列番号15で示されるRv0111
*が特に好ましい。
【0063】
さらにより好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組合せは、少なくともRv0111、Rv2626、RpfB、RpfD、TB10.4およびAg85Bを含んでなり、または発現し、配列番号15で示されるRv0111
*、配列番号10で示されるRv2626、配列番号16で示されるRpfB、配列番号22で示されるRpfD、配列番号2で示されるTB10.4および配列番号20で示されるAg85Bが特に好ましい。
【0064】
前述のように、本発明の免疫原性組合せは、その構成要素であるマイコバクテリア抗原および/またはコード核酸分子の任意の構成を包含する。従って、本発明の免疫原性組合せは、別個のポリペプチド(例えば、組換えにより生産された
Mtb抗原の混合物)の形態で、または1以上の融合ポリペプチド(少なくとも2つのマイコバクテリア抗原の共有結合的連結)の形態で、または1または複数の別個の抗原と1または複数の融合物の両方として、マイコバクテリア抗原を含んでなり得る、またはコードし得る。
【0065】
同様に、核酸分子の組合せは、別個の核酸分子もしくは共有結合的に連結された核酸分子(例えば、融合物コード核酸)のいずれか、または1以上のベクターにより運ばれ得る別個の核酸分子と融合された核酸分子の両方を包含する。マイコバクテリア抗原の数(5〜最大50)の数を考えれば、好ましい組合せは、下記のような抗原融合物をコードする1以上のベクターを含んでなる。ベクターの組合せとしては、本明細書に記載の様々なマイコバクテリア抗原または融合物を発現させるために同じタイプのベクター(例えば、2つのMVA)または異なるタイプのベクター(例えば、プラスミドDNAとMVA)を使用することができる。
【0066】
融合ポリペプチド
別の態様によれば、本発明はまた、本発明の免疫原性組合せにより含まれるまたはコードされる2以上のマイコバクテリア抗原を含んでなる単離された融合ポリペプチドならびにこのような融合ポリペプチドを含んでなる組成物を提供する。
【0067】
用語「融合」または「融合ポリペプチド」は、本明細書で使用する場合、2以上のポリペプチドの単一のポリペプチド鎖における共有結合的連結を意味し、遺伝的手段、すなわち、前記ポリペプチドのそれぞれをコードする核酸分子を融合することによって行われる。「インフレームで融合される」とは、融合されたコード配列が発現すると、融合されたポリペプチドのそれぞれの間に翻訳ターミネーターを含まない単一のポリペプチドが生じることを意味する。融合は、直接的(すなわち、間に付加的アミノ酸残基を含まない)であっても、または間接的(例えば、融合ポリペプチド間のリンカーによる)であってもよく、ポリペプチドのN末端もしくはC末端または内部において起こってよい。リンカーの存在は、融合ポリペプチドの適正な折り畳みおよび/または機能を助長し得る。本発明は、使用するリンカー配列の形態、サイズまたは数によって限定されない。例として、典型的なリンカーは3〜30アミノ酸長であり、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、アラニンおよび/またはプロリンなどのアミノ酸残基の繰り返しから構成される。
【0068】
以上のように、本発明の融合ポリペプチドを形成するマイコバクテリア抗原は天然型、および/または上記のようなその改変型(変異体)および/または断片であってもよい。融合ポリペプチドの形態で使用するためのこのようなマイコバクテリア抗原の組合せは、別個の抗原の混合物(または発現ベクター)中で使用される同じ抗原組合せに比べて改良された免疫原性を提供し得る。
【0069】
好ましくは、本発明の融合ポリペプチドは、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6など)の本明細書に記載のマイコバクテリア抗原、好ましくは、配列番号1〜24のいずれかと少なくとも80%(例えば、98または100%)同一のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの群から選択される少なくとも2つのポリペプチドを含んでなる。
【0070】
一実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、同じ感染期のマイコバクテリア抗原を含んでなる。潜伏期
Mtb抗原の例示的融合物は、Rv2029、Rv2626、Rv1733およびRv0111を含んでなり;活動期
Mtb抗原の例示的融合物は、Ag85B、TB10.4およびESAT6を含んでなり;再燃期
Mtb抗原の例示的融合物は、RpfBおよびRpfD抗原を含んでなる。
【0071】
別の実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、2つの異なる感染期からの、またはさらには活動期、再燃期および潜伏期からのマイコバクテリア抗原を含んでなる。このタイプの例示的融合物としては、限定されるものではないが、Rv2029、TB10.4、ESAT−6およびRv011を含んでなる潜伏期
Mtb抗原と活動期
Mtb抗原の融合物;RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる再燃期
Mtb抗原と活動期
Mtb抗原の融合物;ならびにAg85B、Rv2626、RpfB、−RpfDおよびRv1733を含んでなる潜伏期
Mtb抗原と再燃期
Mtb抗原と活動期
Mtb抗原の融合物が挙げられる。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、
・
Mtb抗原Rv0111(配列番号15で示されるRv0111が特に好ましい)を含んでなる融合ポリペプチド;
・
Mtb抗原Rv2029、Rv2626、Rv1733およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチド;
・
Mtb抗原Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチド;
・
Mtb抗原Ag85B、TB10.4およびESAT6を含んでなる融合ポリペプチド;
・
Mtb抗原RpfBおよびRpfDを含んでなる融合ポリペプチド(例えば、LD欠損RpfB抗原と酵素活性を消失させる突然変異を有するRpfDのLDドメインとの間の融合物である、いわゆるRPFB−Dhybにより示される通り);
・
Mtb抗原RpfB、RpfD(例えば、RPFB−Dhyb)、Ag85B、TB10.4およびESAT6を含んでなる融合ポリペプチド;
・
Mtb抗原Ag85B、Rv2626、RpfB、RpfD(例えば、RPFB−Dhyb)およびRv1733を含んでなる融合ポリペプチド;
・
Mtb抗原Rv2029、TB10.4、ESAT6およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチド;および
・
Mtb抗原Ag85B、Rv2626およびRv1733を含んでなる融合ポリペプチド
からなる群から選択される。
【0073】
本発明に関して、例示的融合ポリペプチドにおいて特定されたマイコバクテリア抗原は、N末端からC末端へといずれの順序であってもよく、列挙された順序である必要はない。従って、
Mtb抗原Ag85B、Rv2626およびRv1733を含んでなる融合物は、列挙されているAg85B−Rv2626−Rv1733融合物に対してさらにAg85B−Rv1733−Rv2626;Rv1733−Rv2626−Ag85B;Rv1733−Ag85B−Rv2626;Rv2626−Ag85B−Rv1733;Rv2626−Rv1733−Ag85BおよびAg85B−TB10.4−Rv2626−Ag85Bなどの融合物を包含する。
【0074】
マイコバクテリア抗原に関してさらに、本発明の免疫原性組合せおよび/または融合ポリペプチドは、場合により、マイコバクテリア種に由来し得る(例えば、1または複数の付加的マイコバクテリア抗原)または異種であり得る(すなわち、マイコバクテリアの異なる供給源由来の)他の成分を含んでなってもよい。このような1または複数の付加的成分は免疫原性であってもなくてもよい。代表的な付加的成分としては、限定されるものではないが、1または複数のタグペプチド、1または複数のターゲティングペプチド、1または複数のオリゴマー化ドメイン、1または複数のイムノアクチベーターペプチド/ポリペプチドおよびこのような1または複数の要素をコードする1または複数の核酸分子が挙げられる。
【0075】
一実施形態では、本発明の免疫原性組合せまたは融合ポリペプチド中に存在する、またはそれによりコードされる1または複数の任意のマイコバクテリア抗原は、シグナルペプチドおよび/または膜貫通ペプチドなどのターゲティングペプチドに作動可能に連結されてよい。このようなターゲティングペプチドは、当技術分野で周知である(例えば、WO99/03885参照)。簡単に述べれば、シグナルペプチド(SS)は、一般に、膜提示型または分泌型ポリペプチドのN末端に存在し、それらの小胞体(ER)への経路を開始させる。シグナルペプチドは、15以上の本質的に疎水性のアミノ酸を含んでなり、これはその後、ERに局在する特異的エンドペプチダーゼによって除去されて成熟ポリペプチドとなる。膜貫通ペプチド(TM)は、通常、本来は疎水性が極めて高く、細胞膜にポリペプチドを係留する働きをする。本発明に関して使用可能な膜貫通シグナルペプチドおよび/またはシグナルペプチドの選択肢は極めて広い。前記ペプチドは、膜係留型および/または分泌型ポリペプチド(例えば、細胞ポリペプチドまたはウイルスポリペプチド)、例えば、免疫グロブリン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、インスリン、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質または麻疹ウイルスFタンパク質のポリペプチドから得てもよいし、または合成してもよい。シグナルペプチドの好ましい挿入部位はN末端の転写開始コドンの下流であり、膜貫通ペプチドの好ましい挿入部位はC末端の、例えば、終止コドンのすぐ上流である。
【0076】
代わりにまたは加えて、本発明の免疫原性組合せまたは融合ポリペプチド中に存在する、またはそれによりコードされる1または複数の任意のマイコバクテリア抗原は、その単離および検出を容易にするため、またはこのような抗原または融合物を発現する宿主細胞の同定を容易にするために、タグペプチドと作動可能に連結されてもよい。限定されるものではないが、PKタグ、FLAGタグ(配列番号25)、MYCタグ(配列番号26)、ポリヒスチジンタグ(通常、5〜10個のヒスチジン残基のストレッチ;例えば、配列番号27)を含む、極めて多様なタグペプチドが本発明に関して使用可能である。タグペプチドは、付属の実施例に記載されているような抗タグ抗体を用いた免疫検出アッセイによって検出することができる。1または複数のタグペプチドは独立に、マイコバクテリア抗原または融合物のN末端に位置していてもよいし(タグ−ポリペプチド)、あるいはまたそのC末端に位置していてもよいし(ポリペプチド−タグ)、あるいはまた内部に位置していてもよいし、あるいはいくつかのタグを使用する場合にはこれらの位置のいずれに位置していてもよい。
【0077】
代わりにまたは加えて、本発明の免疫原性組合せまたは融合ポリペプチド中に存在する、またはそれによりコードされる1または複数の任意のマイコバクテリア抗原は、免疫原性特性を増強することができる1以上のイムノアクチベーターペプチド/ポリペプチドと作動可能に連結されてもよい。例えば、カルレティキュリン(Cheng et al., 2001, J. Clin. Invest. 108: 669)、
Mtb熱ショックタンパク質70(HSP70)(Chen et al., 2000, Cancer Res. 60: 1035)、ユビキチン(Rodriguez et al., 1997, J. Virol. 71: 8497)、およびTヘルパーエピトープ、例えば、Pan−Drペプチド(Sidney et al., 1994, Immunity 1: 751)、pstS1 GCGエピトープ(Vordermeier et al., 1992, Eur. J. Immunol. 22: 2631)、破傷風トキソイドペプチドP2TT(Panina-Bordignon et al., 1989, Eur. J. Immunol. 19: 2237)、P30TT(Demotz et al., 1993, Eur. J. Immunol. 23: 425)、ヘマグルチニンエピトープ(Rothbard et al., 1989, Int. Immunol. 1: 479)およびC4bpオリゴマー化ドメイン(Spencer et al., 2012, PLos One 7:e33555)が挙げられる。
【0078】
マイコバクテリア抗原に応じて、このような1または複数のペプチドの存在は、このようなペプチド無しで発現された組合せまたは融合物と比較した場合、得られる組合せまたは融合ポリペプチドの発現および/または免疫原性を増強させるために有益であり得る。発現の増強は、ウエスタンブロット法などの従来技術によって判定することができる。免疫原性の増強は、ELISpotアッセイなどの従来のアッセイを用いて判定することができる。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、ターゲティングペプチドおよび/またはタグペプチドに作動可能に連結される。例えば、付属の実施例の節で例示される融合物番号2、3、4および5は、N末端の開始Metのすぐ後に位置するシグナルペプチドおよびFlagタグに、そして、C末端の終止コドンのすぐ前にあるmycタグ、膜貫通ペプチドおよびHisタグに作動可能に連結され、一方、融合物番号9、10、11および12は、N末端の開始Metのすぐ後に位置するFlagタグに、そして、C末端の終止コドンのすぐ前にあるmycタグとその後のHisタグに作動可能に連結される。他方、融合物番号6、8、13および14は、N末端の開始Metのすぐ後に位置するシグナルペプチドおよびFlagタグに、そして、C末端の終止コドンのすぐ前にあるmycタグおよびHisタグに作動可能に連結される。
【0080】
好ましい融合ポリペプチドの例は、配列番号28〜39で示されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%の同一性、有利には少なくとも85%の同一性、望ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは98%の同一性、さらにより好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列、あるいはまた前記アミノ酸配列から本質的になる、あるいはまた前記アミノ酸配列からなるポリペプチドの群から選択される。より具体的には、配列番号28および29は、それぞれターゲティングペプチドを伴って、また伴わずに、Ag85B、TB10.4およびESAT6を含んでなる融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号2および10により示される通り)。配列番号30および31は、それぞれターゲティングペプチドを伴って、また伴わずにRpfBおよびRpfDを含んでなる、いわゆるRPFB−Dhyb融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号3および12により示される通り)。配列番号32および33は、それぞれターゲティングペプチドを伴って、また伴わずに、RPFB−Dhyb、Ag85B、TB10.4およびESAT6を含んでなる融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号4および11により示される通り)。配列番号34および35は、それぞれターゲティングペプチドを伴って、また伴わずに、Rv0569 Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号5および9により示される通り)。配列番号36は、シグナルペプチドとともにAg85B、Rv2626、RPFB−DhybおよびRv1733を含んでなる融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号6により示される通り)。配列番号37は、シグナルペプチドとともにAg85B、Rv2626、およびRv1733を含んでなる融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号8により示される通り)。配列番号38は、シグナルペプチドとともにRv2029、Rv2626、Rv1733およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号13により示される通り)。配列番号39は、シグナルペプチドとともにRv2029、TB10.4、ESAT−6およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドを含んでなる(付属の実施例の融合物番号14により示される通り)。
【0081】
融合ポリペプチドのより好ましい例は、下記のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%の同一性、有利には少なくとも85%の同一性、望ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは98%の同一性、さらにより好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を含んでなる、あるいはまた前記アミノ酸配列から本質的になる、あるいはまた前記アミノ酸配列からなるポリペプチドの群から選択される:
・配列番号28のおよそ32番〜およそ506番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号2または10融合物により示されるようなAg85B
*−TB10.4−ESAT−6);
・配列番号29のおよそ10番〜およそ484番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号2または10により示されるような融合物Ag85B
*−TB10.4−ESAT−6);
・配列番号30のおよそ32番〜およそ380番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号3および12により示されるような融合物RPFB−Dhyb);
・配列番号31のおよそ10番〜およそ358番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号3および12により示されるような融合物RPFB−Dhyb);
・配列番号32のおよそ32番〜およそ855番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号4および11により示されるような融合物RPFB−Dhyb−Ag85B
*−TB10.4−ESAT−6);
・配列番号33のおよそ10番〜およそ833番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号4および11により示されるような融合物RPFB−Dhyb−Ag85B
*−TB10.4−ESAT−6);
・配列番号34のおよそ32番〜およそ1115番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号5および9により示されるような融合物Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807);
・配列番号35のおよそ10番〜およそ1093番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号5および9により示されるような融合物Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807);
・配列番号36のおよそ32番〜およそ956番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号6により示されるような融合物Ag85B
*−Rv2626−RPFB−Dhyb−Rv1733
*);
・配列番号37のおよそ32番〜およそ607番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号8により示されるような融合物Ag85B
*−Rv2626−Rv1733
*);
・配列番号38のおよそ37番〜およそ932番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号13により示されるような融合物Rv2029−Rv2626−Rv1733
*−Rv0111
*);および
・配列番号39のおよそ37番〜およそ831番で示されるアミノ酸配列(融合物Rv2029
*−TB10.4−ESAT−6−Rv0111
*)。
【0082】
当然のことながら、このようなアミノ酸配列は、開始Metを備えることができる。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、細胞膜でのその提示を可能とするように、シグナルペプチドおよび/または膜貫通ペプチドなどの適当な1または複数のターゲティングペプチドをさらに含んでなる。さらにより好ましい融合ポリペプチドは、下記のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%の同一性、有利には少なくとも85%の同一性、望ましくは少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは98%の同一性、さらにより好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を含んでなる、あるいはまた前記アミノ酸配列からなるポリペプチドの群から選択される:
・配列番号28の1番(開始Met)〜およそ23番、およびおよそ32番〜およそ506番、およびおよそ517番〜およそ583番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号2により示されるような融合物SS−Ag85B
*−TB10.4−ESAT−6−TM);
・配列番号30の1番(開始Met)〜およそ23番、およびおよそ32番〜およそ380番、およびおよそ391番〜およそ457番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号3により示されるような融合物SS−RPFB−Dhyb−TM);
・配列番号32の1番(開始Met)〜およそ23番、およびおよそ32番〜およそ855番、およびおよそ866番〜およそ932番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号4により示されるような融合物SS−RPFB−Dhyb−Ag85B
*−TB10.4−ESAT−6−TM);
・配列番号34の1番(開始Met)〜およそ23番、およびおよそ32番〜およそ1115番、およびおよそ1126番〜およそ1192番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号5により示されるような融合物SS−Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807−TM);
・配列番号36の1番(開始Met)〜およそ23番、およびおよそ32番〜およそ956番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号6により示されるような融合物SS−Ag85B
*−Rv2626−RPFB−Dhyb−Rv1733
*);
・配列番号37の1番(開始Met)〜およそ23番、およびおよそ32番〜およそ607番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号8により示されるような融合物SS−Ag85B
*−Rv2626−Rv1733
*);
・配列番号38の1番(開始Met)〜およそ28番、およびおよそ37番〜およそ932番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号13により示されるような融合物SS−Rv2029−Rv2626−Rv1733
*−Rv0111
*);および
・配列番号39の1番(開始Met)〜およそ28番、およびおよそ37番〜およそ831番で示されるアミノ酸配列(付属の実施例の融合物番号14により示されるような融合物SS−Rv2029
*−TB10.4−ESAT−6−Rv0111
*)。
【0084】
一般に、本発明の免疫原性組合せおよび融合ポリペプチドに含まれるマイコバクテリア抗原およびこのような抗原をコードする核酸分子は、標準的な技術を用いて単離または作製することができる。それらは例えば細菌培養物から精製することもできるし、または当技術分野で利用可能な発現系のいずれかを用いて宿主細胞において組換えにより生産することもできるし、または本明細書に記載されているものなどの好適な1または複数の発現ベクターを投与した際に対象者に提供され得る。
【0085】
核酸分子および核酸組合せ
本発明はまた、本発明の免疫原性組合せおよび融合ポリペプチドに含まれる少なくとも5つのマイコバクテリア抗原をコードする単離された核酸分子、ならびにこのような核酸分子を含んでなる組成物を提供する。
【0086】
本発明の範囲内で、用語「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド配列」は互換的に使用され、ポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)(例えば、cDNA、ゲノムDNA、プラスミド、ベクター、ウイルスゲノム、単離されたDNA、プローブ、プライマーおよびそれらの任意の混合物)もしくはポリリボヌクレオチド(RNA)(例えば、mRNA、アンチセンスRNA)のいずれか、または混合ポリリボ−ポリデオキシリボヌクレオチドの任意の長さのポリマーを定義する。それらは、一本鎖または二本鎖、直鎖または環状、天然または合成核酸を包含する。
【0087】
上記に定義したように、本発明の核酸分子は天然核酸(例えば、マイコバクテリアのゲノムまたはゲノム断片から単離)であってもよいし、または人の手で1以上のヌクレオチドの置換、欠失、付加および/または挿入を含むように改変されてもよい。本発明は、クローニング、発現、安定性を改善することを目的とした任意の改変(例えば、適当な制限部位の導入、変性および/または所与の宿主細胞において翻訳を最適化するためのヌクレオチド配列の最適化および/または核酸分子またはその転写産物を不安定化し得る潜在的な負の要素の抑制)を包含する。いくつかの改変が企図される場合、それらは連続的なヌクレオチド残基に関するものでも、かつ/または非連続的なヌクレオチド残基に関するものでもよい。本発明により企図される1または複数の改変は、コードされるマイコバクテリア抗原および融合ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させないサイレント改変、ならびにコードされるマイコバクテリアポリペプチドに翻訳される改変を包含する。これらの改変は、非改変物に比べて、コードされるマイコバクテリア抗原および融合ポリペプチドの免疫原性力を低下させないことが好ましい。
【0088】
一実施形態では、本発明の核酸分子は、本発明に関して使用されるまたは宿主細胞内の1または複数の核酸分子との配列相同性を低減するために、全長ヌクレオチド配列または1もしくは複数のその一部にわたって変性させることができる。高度のヌクレオチド配列同一性を示す核酸配列の部分を変性することが実際に望ましく、当業者ならば、生産過程での安定性の問題を回避するために核酸分子の相同部分を変性させるために、配列アラインメントによってこのような部分を同定することができる。
【0089】
代わりにまたは加えて、本発明の核酸分子は、特定の宿主細胞または対象者、例えば、鳥類(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞、WO2010/130756およびWO2012/001075に記載のノバリケン(
Cairina moschata)細胞株)、哺乳類、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(
Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ポンベ(
Saccharomyces pombe)またはピキア・パストリス(
Pichia pastoris))または細菌(例えば、大腸菌(
E.
coli)、BCGまたはリステリア菌属(
Listeria))において高レベルの発現を提供するために最適化することができる。所与のアミノ酸をコードするために2以上のコドンが利用できる場合、生物のコドン使用頻度パターンは非ランダム性が高く、コドンの利用度は宿主が異なれば著しく異なり得るということが実際に観察されている。本発明で使用されるヌクレオチド配列はほとんどが細菌起源であるので、これらのヌクレオチド配列は高等真核細胞などの宿主細胞における効率的発現のためには不適当なコドン使用頻度パターンを持っているかもしれない。一般に、コドンの最適化は、対象とする宿主細胞において使用頻度の低いコドンに相当する1以上の「天然」(マイコバクテリア)コドンを、同じアミノ酸をコードする使用頻度のより高い1以上のコドンに置き換えることによって行われる。部分的な置換であっても発現の増強は達成できるので、使用頻度の低いコドンに相当する総ての天然コドンを置き換える必要はない。さらに、結果として得られる核酸分子への1または複数の制限部位の導入に適合させるために、最適化されたコドン使用頻度の厳守からいくらかの逸脱があってもよい。
【0090】
コドン使用頻度の最適化に関してさらに、宿主細胞または対象者における発現は、ヌクレオチド配列の付加的改変によってさらに改善することができる。例えば、本発明の核酸分子は、稀な非最適コドンのクラスター形成が集中した領域に存在しないようにするため、かつ/または発現レベルに負の影響を及ぼすと思われる「負の」配列要素を抑制もしくは改変するために改変することができる。このような負の配列要素としては、限定されるものではないが、極めて高い(>80%)または極めて低い(<30%)GC含量を有する領域;ATリッチまたはGCリッチな配列ストレッチ;不安定な順方向または逆方向反復配列;RNAの二次構造;ならびに/または内部TATAボックス、カイ部位、リボソーム進入部位、および/もしくはスプライシングドナー/アクセプター部位などの内部潜在調節要素が挙げられる。
【0091】
本発明は、配列番号1〜24のいずれかで示されるポリペプチドの群から選択される任意のマイコバクテリア抗原をコードする核酸分子を包含する。
【0092】
配列番号28〜39で示されるアミノ酸配列のいずれかまたはその任意の変異体および断片(例えば、上記に挙げられた配列番号28〜39の1または複数の例示的部分をコードする断片)と少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、100%)の同一性を示すアミノ酸配列を含んでなる融合ポリペプチドをコード核酸分子が特に注目される。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態は、配列番号40〜51のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその任意の変異体および断片(例えば、上記に挙げられた配列番号28〜39の例示的部分をコードする)と少なくとも80%の同一性、有利には少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列を含んでなる、あるいは前記ヌクレオチド配列から本質的になる、あるいはまた前記ヌクレオチド配列からなる核酸分子(すなわち、ストリンジェント条件下で列挙された核酸分子とハイブリダイズする核酸分子)に関する。
【0094】
本発明の核酸分子は、当技術分野で利用可能な配列データおよび本明細書で提供される配列情報を用いて作製することができる。例えば、本発明の核酸分子は、当技術分野で周知の慣例技術、例えば、PCR単離、および/またはそれが含まれることが分かっている特定の種のマイコバクテリアゲノムもしくはそのゲノム断片、cDNAおよびゲノムライブラリーまたは任意の従来技術のベクターからの従来の分子生物学によるクローニングを用いて単離することができる。あるいは、本発明の核酸分子はまた、自動プロセスで化学合成によって作製することもできる(例えば、オーバーラッピング合成オリゴヌクレオチドからアセンブルされる)。
【0095】
本発明の別の実施形態は、本発明の核酸分子の断片、例えば、制限エンドヌクレアーゼ断片およびPCR生成断片に関する。このような断片は、関連の1または複数の免疫原性部分をコードするプローブ、プライマーまたは断片を使用することができる。
【0096】
ベクター
本発明はまた、本発明の1以上の核酸分子を含んでなるベクターならびにこのようなベクターを含んでなる組成物に関する。
【0097】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、宿主細胞または対象者内で本明細書記載の1または複数の核酸分子のいずれかの送達、増殖および/または発現を可能とするのに必要な要素を含有するビヒクル、好ましくは、核酸分子またはウイルス粒子を意味する。この用語は、維持用ベクター(クローニングベクター)または様々な宿主細胞または対象者内での発現用のベクター(発現ベクター)、染色体外ベクター(例えば、多重コピープラスミド)または組み込みベクター(例えば、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、宿主細胞が複製する際にその核酸分子のさらなるコピーを生産するように設計される)ならびにシャトルベクター(例えば、原核生物宿主および/または真核生物宿主の両方で機能する)および導入ベクター(例えば、ウイルスゲノムに核酸分子を導入するため)を包含する。本発明の目的において、これらのベクターは天然の遺伝子源のもの、合成物もしくは人工物、または天然の遺伝子要素と人工の遺伝子要素の何らかの組合せであってもよい。
【0098】
本発明に関して、用語「ベクター」は、広義には、プラスミドおよびウイルスベクターを含むと理解されなければならない。「プラスミドベクター」は、本明細書で使用する場合、複製可能なDNA構築物を意味する。通常、プラスミドベクターは、対応する選択薬剤の存在下でプラスミドベクターを有する宿主細胞の正または負の選択を可能とする選択マーカー遺伝子を含有する。様々な正および負の選択マーカー遺伝子は当技術分野で公知である。例として、抗生物質耐性遺伝子を、対応する抗生物質の存在下で宿主細胞の選択を可能とする正の選択マーカー遺伝子として使用することができる。
【0099】
用語「ウイルスベクター」は、本明細書で使用する場合、ウイルスゲノムの少なくとも1つの要素を含み、かつ、ウイルス粒子中へまたはウイルス粒子へと封入され得る核酸ベクターを意味する。用語「ウイルス」、「ビリオン」、「ウイルス粒子」および「ウイルスベクター粒子」は、核酸ベクターが、ウイルス粒子の生成を可能とする好適な条件に従って適当な細胞または細胞株に形質導入された場合に形成されるウイルス粒子を表して互換的に使用される。本発明に関して、用語「ウイルスベクター」は、広義には、核酸ベクター(例えば、DNAウイルスベクター)ならびに生成されたそのウイルス粒子を含むと理解されなければならない。用語「感染性」は、宿主細胞または対象者に感染および侵入するウイルスベクターの能力を意味する。ウイルスベクターは、複製コンピテントもしくは複製選択的であり得(例えば、特定の宿主細胞で良好もしくは選択的に複製するように操作され)、または複製欠陥または複製障害となるように遺伝的に障害されてもよい。
【0100】
本発明に関して適当なベクターとしては、限定されるものではないが、細菌(例えば、大腸菌、BCGまたはリステリア菌)などの原核生物宿主細胞における発現のためのバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドベクター;酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(
Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリスにおける発現のためのベクター;昆虫細胞系(例えば、Sf9細胞)における発現のためのバキュロウイルスベクター;植物細胞系における発現のためのウイルスおよびプラスミドベクター(例えば、Tiプラスミド、カリフラワーモザイクウイルスCaMV、タバコモザイクウイルスTMV);ならびに高等真核細胞または対象者における発現のためのプラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。一般に、このようなベクターは市販されているか(例えば、Invitrogen、Stratagene、Amersham Biosciences、Promegaなど)、またはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、ロックヴィル、Md.)などの寄託機関から入手可能であるか、またはそれらの配列、構成および生産方法を記載し、当業者がそれらを適用することを可能とする多くの刊行物の実体が存在している。
【0101】
好適なプラスミドベクターの代表例としては、限定されるものではないが、pREP4、pCEP4(Invitrogen)、pCI(Promega)、pVAX(Invitrogen)およびpGWiz(Gene Therapy System Inc)が挙げられる。
【0102】
好適なウイルスベクターの代表例は、様々な異なるウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、泡沫状ウイルス、アルファウイルス、水疱性口内炎ウイルスなど)から作製される。上記のように、用語「ウイルスベクター」は、ベクターDNA、ゲノムDNAならびに生成されたそれらのウイルス粒子、特に、感染性ウイルス粒子を包含する。
【0103】
一実施形態では、本発明において使用されるウイルスベクターは複製欠陥型または複製障害型であり、これはそれが正常細胞(例えば、正常ヒト細胞)では、またはそれが投与された対象者では、有意な程度まで複製できないことを意味する(複製機能の障害または欠陥は、従来の手段、例えば、非許容細胞におけるDNA合成および/またはウイルス力価の測定によって評価することができる)。このような複製欠陥または障害ベクターは、一般に、増殖のために、欠損している/障害されている機能を送り込むまたは補う許容細胞株を必要とする。
【0104】
本発明に関して有用なウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクターが含まれ、これはワクチン接種、免疫療法、遺伝子導入または組換え生産に関して十分に報告されている多くの利点を有する(総説としては、“Adenoviral vectors for gene therapy”, 2002, Ed D. Curiel and J. Douglas, Academic Pressを参照)。本発明のアデノウイルスベクターは、様々なヒトまたは動物源から得ることができる(例えば、イヌ、ヒツジ、サルアデノウイルスなど)。いずれの血清型も使用可能であり、ヒトアデノウイルスが特に好ましく、Ad2、Ad5、Ad6などのC亜属、ならびにAd11、Ad34およびAd35などのB亜属が特に好ましい。また、動物Adの使用も有利であり得、chimp Ad3およびAd63などのチンパンジーAdが特に好ましい。引用したアデノウイルスはATCCから入手可能であるか、またはそれらの配列、構成および生産方法を記載し、当業者がそれらを適用することを可能とする多くの刊行物の実体が存在している(例えば、米国特許第6,136,594号;米国特許第6,133,028号;WO00/50573;WO00/70071;WO2004/083418;WO2004/097016およびWO2005/071093参照)。
【0105】
好ましい複製欠陥アデノウイルスベクターは、およそ459番〜3328番、またはおよそ459番〜3510番(受託番号M73260としてGeneBankに開示されているAd5の配列を参照)にわたるE1欠失を有するE1欠陥型である。クローニング能は、アデノウイルスゲノムの1または複数のさらなる部分(非必須E3領域の全体または一部(例えば、およそ27867番〜30743番の欠失)またはWO94/28152およびLusky et al., 1998, J. Virol 72: 2022に記載されいるような他の必須E2および/もしくはE4領域の全体または一部)を削除することによってさらに改善することができる。
【0106】
本発明の核酸分子は、独立に、アデノウイルスゲノムのどの位置に挿入してもよく、E1領域および/またはE3領域に変えての挿入が特に好ましい。本発明の核酸分子は、対象領域の本来の転写方向に対してセンス配向に配置してもアンチセンス配向に配置してもよい。
【0107】
本発明に関して特に適当なウイルスベクターの他の例としては、ポックスウイルスベクター、例えば、鶏痘ベクター(例えば、FP9)、カナリア痘ベクター(例えば、ALVAC)およびワクシニアウイルスベクターが挙げられ、後者が好ましい。好適なワクシニアウイルスとしては、限定されるものではないが、コペンハーゲン株、ワイエス株、NYVAC(米国特許第5,494,807号)および改変アンカラ(MVA)株(Antoine et al., 1998, Virol. 244: 365;WO02/42480)が挙げられる。組換えポックスウイルスを構築および生産するための一般条件は当技術分野で周知である(例えば、WO2010/130753;WO03/008533;米国特許第6,998,252号;米国特許第5,972,597号および米国特許第6,440,422号参照)。本発明の核酸分子は好ましくは、ポックスウイルスゲノム内の非必須遺伝子座に挿入する。コペンハーゲンワクシニアベクターにおける挿入のためにはチミジンキナーゼ遺伝子が、また、MVAベクターにおける挿入のためには欠失IIまたはIIIが特に適当である(WO97/02355)。
【0108】
本発明に関して好適な他のウイルスベクターは、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)から得ることができるモービリウイルスであり、麻疹ウイルスが特に好ましい。当技術分野では種々の弱毒株が利用可能であり(Brandler et al, 2008, CIMID, 31: 271; Singh et al., 1999, J. virol. 73(6): 4823)、例えば、限定されるものではないが、エドモンストンAおよびB株(Griffin et al., 2001, Field's in Virology, 1401-1441)、シュワルツ株(Schwarz A, 1962, Am J Dis Child, 103: 216)、S−191またはC−47株(Zhang et al., 2009, J Med Virol. 81 (8): 1477)がある。P遺伝子とM遺伝子の間、またはH遺伝子とL遺伝子の間への挿入が特に適当である。
【0109】
本発明において使用するための好適なベクターはまた、野生型または変異型(例えば、無毒)であり得る細菌細胞を含む。このような細菌細胞の周知の例としては、限定されるものではないが、無毒マイコバクテリア(例えば、ウシ結核菌BCG)、乳酸菌属(例えば、乳酸連鎖球菌(
Lactococcus lactis)、リステリア菌属(例えば、リステリア菌(
Listeria monocytogenes))ならびにサルモネラ菌属およびシュードモナス属などの他の微生物が挙げられる。好ましい実施形態は、BCGベクターのゲノム中に上記で定義したような1以上のマイコバクテリア抗原または融合ポリペプチドをコードする1または複数の核酸分子が、そのBCGベクターがこのような1または複数の要素を発現することを可能とする様式で組み込まれている、BCGベクターに関する。
【0110】
本発明はまた、脂質またはポリマーと複合体化してリポソーム、リポプレックスまたはナノ粒子などの粒子構造を形成させたベクター(例えば、プラスミドDNA)を包含する。
【0111】
本発明においては、本発明のベクターに含まれる核酸分子は、宿主細胞または対象者における発現に好適な形態であり、これは、本明細書に示される核酸分子のそれぞれが適当な調節配列に作動可能に連結されていることを意味する。本明細書で使用する場合、用語「調節要素」または「調節配列」は、所与の宿主細胞または対象者内で、1もしくは複数の核酸またはその誘導体(すなわち、mRNA)の複製、倍加、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または輸送を含め、1または複数の核酸分子の発現を可能とするか、発現に寄与するか、または発現を調節するいずれの要素も意味する。
【0112】
当業者ならば、調節配列の選択はベクター自体、宿主細胞または対象者、所望の発現レベルなどの因子によって決まり得ることを認識するであろう。プロモーターが特に重要である。本発明に関して、プロモーターは、多くのタイプの宿主細胞で核酸分子の発現を構成的に命令し得るか、またはある種の宿主細胞に特異的であり得るか(例えば、肺特異的調節配列)または特定の事象もしくは外因性因子に応答して(例えば、温度、栄養素の添加、ホルモンなどにより)、もしくはウイルス周期の相(例えば、後期または初期)に従って調節され得る。また、ベクター生産を最適化し、かつ、発現される1または複数のポリペプチドの潜在毒性を回避するために、特定の事象またはまたは外因性因子に応答して生産工程の際に抑制されるプロモーターを使用してもよい。
【0113】
哺乳類細胞における構成的発現に好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター(米国特許第5,168,062号)、RSVプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)−1のチミジンキナーゼ(TK)プロモーターおよびT7ポリメラーゼプロモーターが挙げられる。原核生物宿主では、trp、lac、ファージプロモーター、tRNAプロモーターおよび解糖系酵素プロモーターなどのプロモーターが使用可能である。有用な酵母プロモーターとしては、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、または他の解糖系酵素(例えば、エノラーゼもしくはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、マルトースおよびガラクトース利用を担う酵素のプロモーター領域が挙げられる。ポックスウイルスベクターでの発現には、ワクシニアウイルスプロモーターが特に適合している。代表例としては、限定されるものではないが、ワクシニア7.5K、H5R、11K7.5(Erbs et al., 2008, Cancer Gene Ther. 15: 18)、TK、p28、p11およびK1Lプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23: 1094-7; Hammond et al., 1997, J. Virol Methods 66: 135-8;およびKumar and Boyle, 1990, Virology 179: 151-8)に記載されているものなどの合成プロモーターならびに初期/後期キメラプロモーターが挙げられる。麻疹媒介発現に好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、麻疹転写単位の発現を指示するいずれのプロモーターも含まれる(Brandler and Tangy, 2008, CIMID 31: 271)。
【0114】
当業者ならば、本発明の1または複数の核酸分子の発現を制御する調節要素が、転写の適切な開始、調節および/または終結(例えば、ポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば、核局在シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)、および安定性(例えば、イントロンおよび非コード5’および3’配列)、宿主細胞または対象者での翻訳(例えば、開始Met、三分節系リーダー配列、IRESリボソーム結合部位、シャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列など)、および精製工程(例えば、本明細書に記載されるタグ)のための付加的要素をさらに含んでなってもよいことを認識するであろう。
【0115】
一実施形態では、本発明の免疫原性組合せおよび/または融合ポリペプチドに存在するまたはコードされるマイコバクテリア抗原をコードする核酸分子は、単一のベクターにより運ばれる。
【0116】
別の実施形態では、本発明の免疫原性組合せおよび/または融合ポリペプチドに存在するまたはコードされるマイコバクテリア抗原をコードする核酸分子は、2以上のベクターにより運ばれる。各ベクターは、上記に挙げられたものからの1以上のマイコバクテリア抗原または1以上の融合ポリペプチドをコードする。これらの2以上のベクターは、対象者に実質的に同時にまたは逐次に投与することができる。
【0117】
本発明の特に好ましい実施形態は、
i.Rv2029、Rv2626、Rv1733およびRv011を含んでなる融合ポリペプチドと、RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター(例示的ベクターは、融合物13と4、および融合物13と11をそれぞれコードする);
ii.Rv2029、Rv2626、Rv1733およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドと、RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター(例示的 ベクターは、融合物13と4と5、および融合物13と11と9をそれぞれコードする);
iii.Rv2029、Rv2626、Rv1733およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドと、RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター(例示的ベクターは、融合物13と4と9、および融合物13と11と5をそれぞれコードする);
iv.Ag85B、Rv2626、RpfB、RpfDおよびRv1733を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv2029、TB10.4、ESAT−6およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター(例示的ベクターは、融合物6と14をコードする);
v.Ag85B、Rv2626 RpfB、RpfDおよびRv1733を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv2029、TB10.4、ESAT−6およびRv0111を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター(例示的ベクターは、融合物6と14と5、および融合物6と14と9をそれぞれコードする));
vi.RpfB、RpfD、Ag85B、TB10.4およびESAT−6を含んでなる融合ポリペプチドと、Rv0569、Rv1813、Rv3407、Rv3478およびRv1807を含んでなる融合ポリペプチドとをコードするベクター(例示的ベクターは、融合物9と11、および融合物5と4をそれぞれコードする)
からなる群から選択される単一ベクター(またはウイルス粒子)に関する。
【0118】
より好ましくは、上記のベクターはMVAベクターである。
【0119】
必要であれば、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチドまたはベクターは、マイコバクテリア感染またはマイコバクテリア感染により引き起こされるもしくは関連する任意の疾患もしくは病態に対する治療活性または防御活性を改善することを目的に、選択されたマイコバクテリア抗原の付加的コピー、またはウシ結核菌もしくはM.カプレなどの異なるマイコバクテリア種に由来する付加的抗原、および/または他種に由来する付加的ポリペプチド(すなわち、異種ポリペプチド)をさらに含んでなり得る。好適な付加的ポリペプチドとしては、限定されるものではないが、サイトカインなどの免疫調節剤および潜在的共感染生物(例えば、HIV、HBVなど)に起源する他の任意の抗原が挙げられる。
【0120】
好ましい実施形態によれば、本発明のベクターは、感染性ウイルス粒子の形態である。一般に、このようなウイルス粒子は、(i)本発明のウイルスベクターを好適な細胞株に導入する工程、(ii)前記細胞株を前記感染性ウイルス粒子の生産を可能とするために好適な条件下で培養する工程、(iii)生産されたウイルス粒子を前記細胞株の培養物から回収する工程、および(iv)場合により、前記の回収されたウイルス粒子を精製する工程を含んでなる方法によって生産される。
【0121】
ウイルスベクターが複製欠陥型または複製障害型である場合、粒子は通常、許容細胞株においてまたはヘルパーウイルスの使用を介して生産され、これにより、欠損している/障害されている機能をトランスで供給する。例えば、E1欠損アデノウイルスベクターを補うために好適な細胞株としては、293細胞(Graham et al., 1997, J. Gen. Virol. 36: 59-72)ならびにHER−96およびPER−C6細胞(例えば、Fallaux et al., 1998, Human Gene Ther. 9: 1909-17;WO97/00326)またはこれらの細胞株の任意の誘導体が挙げられる。鳥類細胞は、限定されるものではないが、受精卵から得られるニワトリ胚から調製される一次ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)およびカモ細胞株(例えば、WO03/076601、WO2009/004016、WO2010/130756およびUS2011−008872に記載)を含め、ポックスウイルスベクターを増殖させるために特に好適である。
【0122】
感染性ウイルス粒子は、培養上清から、および/または溶解後の細胞から回収することができる。感染性ウイルス粒子は、標準的な技術(クロマトグラフィー、超遠心分離技術など)に従ってさらに精製することができる。
【0123】
本発明はまた、特定の宿主細胞への優先的ターゲティングを可能とするように改変されたベクターまたはウイルス粒子を包含する。標的化ベクターの特徴は、それらの表面に、細胞特異的マーカー(例えば、マイコバクテリア感染細胞)、組織特異的マーカー(例えば、肺特異的マーカー)などの細胞成分および表面露出成分を認識してそれと結合することができるリガンドが存在することである。好適なリガンドの例としては、マイコバクテリア抗原性ドメインに対する抗体またはその断片が挙げられる。ターゲティングは、ウイルスの表面に存在するポリペプチド(例えば、アデノウイルス線維、ペントン、pIXまたはワクシニアp14遺伝子産物)中にリガンドを遺伝的に挿入することによって行うことができる。
【0124】
宿主細胞および生産方法
別の態様において、本発明はまた、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子またはベクター(例えば、ウイルス粒子)を含んでなる宿主細胞、ならびにこのような宿主細胞を含んでなる組成物に関する。
【0125】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、広義には、限定されるものではないが、組織、器官、または単離された細胞における特定の機構に関すると理解されるべきである。このような細胞は、培養細胞株、初代細胞および増殖性細胞などの、独特なタイプの細胞または異なるタイプの細胞の群であり得る。本発明に関して、用語「宿主細胞」には、原核細胞、酵母などの下等真核細胞、および他の真核細胞、例えば、昆虫細胞、植物および哺乳類(例えば、ヒトまたは非ヒト)細胞、ならびに本発明のベクターを生産することができる細胞(例えば、293、HER96、PERC.6細胞、CEF、カモ細胞株など)が含まれる。この用語はまた、本明細書に記載のベクターのレシピエントとなり得る、またはレシピエントとなった細胞、ならびにこのような細胞の後代も含む。
【0126】
本発明の特定の実施形態によれば、宿主細胞はさらにカプセル封入することができる。細胞のカプセル封入技術は当技術分野で公知である。
【0127】
本発明のなおさらなる態様は、本発明のベクター(もしくは感染性ウイルス粒子)および/または宿主細胞を使用する、本発明の免疫原性組合せまたは融合ポリペプチドに含まれるまたはコードされるマイコバクテリア抗原の組換え生産のための方法である。一般に、本方法は、(i)ベクターを好適な宿主細胞に導入してトランスフェクトまたは感染宿主細胞を作出する工程、(ii)in vitroで前記トランスフェクトまたは感染宿主細胞を、その宿主細胞の増殖に好適な条件下で培養する工程、(iii)細胞培養物を回収する工程、および(iv)場合により、回収細胞および/または培養上清から、1もしくは複数のマイコバクテリア抗原または融合ポリペプチドを精製する工程を含んでなる。
【0128】
当業者は、ポリペプチドを発現させるために当技術分野で利用可能な多くの発現系およびベクターを宿主細胞に導入するための方法についての知識があると思われる。このような方法としては、限定されるものではないが、マイクロインジェクション、CaPO
4媒介トランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション/リポソーム融合、遺伝子銃、形質導入、ウイルス感染ならびに様々な手段を介した宿主生物への直接投与が挙げられる。本方法はまた、ポリ陽イオンポリマー(例えば、キトサン、ポリメタクリレート、PEIなど)および陽イオン脂質(例えば、DC−Chol/DOPE、トランスフェクタム、リポフェクチンなど)といった、宿主細胞における核酸の導入を助ける従来のトランスフェクション試薬と併用することもできる。
【0129】
宿主細胞は、従来の発酵バイオリアクター、フラスコ、およびペトリプレートで培養することができる。培養は、所与の宿主細胞に適当な温度、pHおよび酸素含量で行うことができる。本明細書では、このような目的で当技術分野において利用可能な種々の原核生物および真核生物発現系を詳細に記載する試みはしない。
【0130】
好ましい実施形態では、本方法は、大腸菌宿主細胞、特に、そのゲノムに、ラクトースまたはラクトース類似体(例えば、IPTG:イソプロピルb−D−1−チオガラクトピラノシド)によるT7ポリメラーゼの誘導発現を可能とするためのD13プロファージを保有する大腸菌株を使用する。このような株は様々な製造者から入手可能である(例えば、Lucigen、Merckなど)。プラスミドの導入後、形質転換大腸菌細胞をおよそ18℃〜およそ39℃の間に含まれる温度(およそ30℃またはおよそ37℃が特に好ましい)にて、6〜48時間の様々な時間(およそ8〜およそ24時間が特に好ましい)、ベクター選択マーカー(例えば、抗生物質の存在)および宿主株(例えば、IPTGなどのインデューサーの存在下)に適合された従来の培地で培養することができる。細胞培養物を回収し、溶解させることができる(例えば、洗剤による化学溶解、音波処理など)。細胞溶解液の遠心分離後、上清およびペレットの両方を、発現レベルならびに発現材料の溶解度(例えば、可溶性材料は細胞溶解液上清中に見られ、不溶性材料は封入体に捕捉され得る)を評価するためのさらなる分析(例えば、SDS PAGE)のために回収することができる。
【0131】
回収された1または複数のマイコバクテリア抗原または融合ポリペプチドは、場合により、硫酸アンモニウム沈殿、酸抽出、ゲル電気泳動、濾過およびクロマトグラフィー法(例えば、逆相、サイズ排除、イオン交換、アフィニティー、疎水性相互作用、ヒドロキシアパタイト、高速液体クロマトグラフィーなど)を含む周知の精製方法により精製することができる。使用される条件および技術は、正味電荷、分子量、疎水性、親水性などの因子によって異なり、当業者には自明である。さらに、精製のレベルは、意図される使用によって異なる。例えば、タンパク質濃度はブラッドフォード(Bransdford)アッセイ(Biorad)によって評価することができ、内毒素レベルはポータブル・テスト・システム(Portable Test System)(Charles River Laboratories)などの技術によって評価することができ、精製ポリペプチドの質量はMALDI(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化)またはエレクトロスプレー法を用いて測定することができる。
【0132】
組成物
別の態様において、本発明は、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター(例えば、感染性ウイルス粒子)、もしくは宿主細胞(本明細書では「有効薬剤」とも呼ばれる)のうちの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組合せ(例えば、異なるポリペプチドまたはベクター/ウイルス粒子の組合せ)を含んでなる組成物を提供する。好ましくは、本組成物は、治療上有効な量の有効薬剤に加えて、1以上の薬学上許容されるビヒクルを含んでなる医薬組成物である。
【0133】
本明細書で使用する場合、「薬学上許容されるビヒクル」は、対象者、特にヒトにおける投与に適合した担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、および吸収遅延剤などのいずれか、また総てを含むことを意図する。
【0134】
本明細書で使用する場合、「治療上有効な量」は、意図される使用に十分な用量である。予防的使用に関しては、この用語は、マイコバクテリア感染(例えば、
Mtb感染)の兆候および/または確立を予防または遅延させるのに十分な用量を意味する。「治療的」使用に関しては、本組成物は、マイコバクテリア種にすでに感染している対象者に、活動性疾患を治療する目的、または潜伏感染個体において再活性化を予防する目的で、最終的に本明細書に記載の1以上の従来の治療法と組み合わせて投与される。特に、本発明の組成物の治療上有効な量は、投与される対象者において免疫系の誘導または刺激を生じる(例えば、生得的および/または特異的応答の発現をもたらす)ために必要な量であり得る。
【0135】
処置される対象者は、新生児、幼児、若年成人または成人であり得る。対象者は、本明細書に記載の1または複数の有効薬剤で処置される前に、過去にカルメット・ゲラン菌(BCG)で免疫されていてもよく、または過去にマイコバクテリア感染に関して治療されていてもよい。対象者は別の病原生物(例えば、ヒト免疫不全ウイルスHIV)と共感染している場合またはしていない場合がある。
【0136】
特に、処置される対象者は、薬剤耐性(例えば、MDR、XDRまたはTDR)株であり得る病原性マイコバクテリア種(例えば、
Mtb)に感染している。感染しているマイコバクテリアは、本発明で使用される有効薬剤により含まれるまたはコードされる抗原が起源する任意のマイコバクテリアと同じ株または単離株であってもよいし、または異なる株または単離株に由来してもよい。
【0137】
本発明の組成物は、ヒトまたは動物用途に適当とするために、生理学的pHまたはやや塩基性のpH(例えば、およそpH7〜およそpH9)で適宜緩衝させる。好適なバッファーとしては、限定されるものではないが、リン酸バッファー(例えば、PBS)、重炭酸バッファーおよび/またはトリスバッファーが挙げられる。
【0138】
本発明の組成物はヒトまたは動物用途に適当な希釈剤をさらに含んでなり得る。本発明の組成物は、好ましくは、等張性、低張またはやや高張であり、比較的低いイオン強度を有する。代表例としては、無菌水、生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム)、リンゲル液、グルコース、トレハロースまたはサッカロース溶液、ハンクス液、および他の水性生理学的平衡塩溶液(例えば、Remington : The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro, Lippincott, Williams&Wilkinsの最新版を参照)。
【0139】
例えば、処方物のpH、浸透圧、粘度、明澄度、色、無菌性、安定性、溶解速度の変更もしくは維持、ヒトもしくは動物生物体での放出もしくは吸収の変更もしくは維持、血液関門を通る輸送の促進、または特定の器官(例えば、肺)における浸透を含む、望ましい薬学的または薬力学的特性を提供するために、付加的な薬学上許容される賦形剤を使用してもよい。
【0140】
加えて、本発明の組成物は、ヒトにおける全身適用または粘膜適用に好適な1以上のアジュバントを含んでなってもよい。好ましくは、このアジュバントは、本発明の組成物に対する免疫性、特に、例えば、Toll様受容体(TLR)、例えば、TLR−7、TLR−8およびTLR−9を介するT細胞媒介性免疫を刺激することができる。有用なアジュバントの代表例としては、限定されるものではないが、ミョウバン、フロイントの完全および不完全アジュバント(IFA)などの鉱油エマルション、リポ多糖またはそれらの誘導体(Ribi et al., 1986, Immunology and Immunopharmacology of Bacterial Endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)、QS21(WO98/56415)などのサポニン、イミキモド(WO2007/147529)などのイミダゾ−キノリン化合物、CpGなどのシトシンリン酸グアノシンオリゴデオキシヌクレオチド、およびIC−31(Kritsch et al., 2005, J. Chromatogr Anal. Technol Biomed Life Sci 822: 263)またはその任意の誘導体などの陽イオンペプチドが挙げられる。
【0141】
本発明の組成物に含まれる薬学上許容されるビヒクルはまた、製造および冷凍状態(例えば、−70℃、−20℃)、冷蔵状態(例えば、4℃)、周囲温度での長期保存(すなわち、少なくとも1か月、好ましくは少なくとも1年)の条件下でその安定性を保持することを可能としなければならない。このような「長期」処方物は当技術分野で公知である(例えば、WO98/02522;WO03/053463)。(a)1Mサッカロース、150mM NaCl、1mM MgCl
2、54mg/l Tween 80、10mMトリスpH8.5、(b)10mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mMトリス、pH7.2、および150mM NaCl、ならびに(c)するように適合された本発明の組成物に特に適合された生理食塩水が挙げられる。
【0142】
本発明の組成物は、例えば、固体、液体または凍結品などの種々の形態であり得る。固体(例えば、乾燥粉末または凍結乾燥品)組成物は、真空乾燥および凍結乾燥を含む工程によって得ることができる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、噴霧乾燥形態(例えば、WO2010/135495参照)または液滴形態(平均直径100〜5000μm)の液滴が特に好ましい)で気道(例えば、吸入、鼻腔内経路または肺内経路による)に送達するために処方される。
【0143】
本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、様々な投与様式に好適である。本発明に関しては、全身経路、局所経路または粘膜経路を含め、従来の投与経路のいずれもが適用可能である。
【0144】
全身投与としては、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、血管内、動脈内注射ならびにスタンプ式(scarification)が含まれる。注射は、従来のシリンジおよび針、または当技術分野で利用可能な他の任意の適当なデバイス(例えば、エレクトロポレーション)を用いて行うことができる。粘膜投与としては、限定されるものではないが、経口/食事性、鼻腔内、気管内、肺内、腟内または直腸内経路が挙げられる。気道における投与は、適当なディスペンサーを用いた、液滴、スプレー、または乾燥粉末組成物の霧化またはエアゾール化によって行うことができる。また、局所投与も、経皮的手段(例えば、パッチなど)を用いて行うことができる。本発明に関しては、鼻腔内、気管内および肺内投与だけでなく、筋肉内、皮内および皮下経路も特に好ましい。
【0145】
適当な用量は、様々なパラメーター、特に、組成物に含まれる1または複数の有効薬剤;投与様式;対象者の年齢、健康状態および体重;症状の性質および程度;併用処置の種類;処置の頻度;および/または予防もしくは治療の必要性の関数として適合させることができる。処置に対して適当な用量を決定するために必要な計算のさらなる精密化は、通常、関連する状況に照らして、医師により行われる。
【0146】
一般的な指針としては、ウイルスベクターを含んでなる組成物の好適な用量は、使用するベクターおよび定量技術によって約10
4〜約10
13vp(ウイルス粒子)、iu(感染単位)またはpfu(プラーク形成単位)と様々である。サンプル中に存在するvp、iuおよびpfuの量を評価するために利用可能な技術は、当技術分野で慣例である。例えば、アデノウイルス粒子の数(vp)は、通常、A260吸光度の測定またはHPLCにより決定され、iu力価は定量的DBP免疫蛍光により決定され、pfuは許容細胞の感染後のプラークの計数によって決定される。FDAのガイドラインによれば、好ましくは、vp/iu比は100未満である。好ましい用量は、約10
5〜約10
12vp(例えば、約5×10
8、約10
9、約5×10
9、約10
10、約5×10
10vpまたは約10
11vp)のアデノウイルスベクターを含有する。ワクシニア(例えば、MVA)に基づく組成物では、約5×10
5〜約10
9pfuの用量が好ましく、約5×10
6、約10
7、約5×10
7、約10
8または約5×10
8pfuが特に好ましい。麻疹に基づく組成物では、約5×10
4〜約10
7pfuの用量が好ましく、約10
5、5×10
5、10
6または5×10
6pfuが特に好ましい。プラスミドベクターに基づく組成物は、10μg〜20mgの間、有利には100μg〜2mgの間の用量で投与すればよい。タンパク質組成物は、その組成物に含まれるマイコバクテリア抗原のそれぞれについて10μg〜20mgの間、特に好ましくは約0.1mg〜約2mg/kg体重の用量で投与すればよい。投与は、単回用量でまたは一定の時間間隔の後に反復用量で行うことができる。
【0147】
反復投与(2、3、4、5、6、7、8、9、10回など)は互いに適当な時間だけ離すことができ、同じ投与経路または異なる投与経路によって、同じ部位にまたは異なる部位に行うことができる。さらに、各投与には同じ1または複数の有効薬剤を用いても異なるものを用いてもよい。例として、MVAに基づく組成物では、互いにおよそ1週間(例えば、3〜10日)だけ離して2回または3回の皮下投与が特に好適であり、Ad、麻疹およびプラスミドに基づく組成物では、1回または2回の筋肉内投与が特に好適である。第1シリーズのプライム投与の後(例えば、6ヵ月〜数年後)に、プライムされた抗マイコバクテリア免疫応答を想起させるために、1回以上の「リコール」投与を行うことができる。また、休止期の後に反復させる一連の投与周期(例えば、週単位の投与周期)によって進めることも可能である。
【0148】
特定の実施形態では、投与は、1以上のプライム組成物および1以上のブースター組成物の一連の投与を含んでなるプライムブースト法に従って行うことができる。一般に、プライム組成物とブースター組成物は、少なくともマイコバクテリア抗原、免疫原性ドメインまたはエピトープを共通に含んでなるまたはコードする、異なる有効薬剤である。プライム組成物とブースター組成物は、同じ投与経路または異なる経路投与によって同じ部位または異なる部位に投与することができる。例えば、ポリペプチドに基づく組成物は粘膜経路によって投与することができ、ベクターに基づく組成物は好ましくは、例えば、皮下または筋肉内経路によって注射される。例として、弱毒生菌(例えば、BCG)で宿主応答をプライムし、本明細書に記載の「有効薬剤」(例えば、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター(例えば、感染性ウイルス粒子)、もしくは宿主細胞、またはそれらの任意の組合せ)のうちの少なくとも1つでブーストすることを企図することができる。
【0149】
予防的使用および治療的使用
本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、好ましくは、マイコバクテリア感染またはそれにより引き起こされるもしくは関連する任意の疾患および病態を予防または治療する目的で使用するためのものである。このような使用は、マイコバクテリア抗原/エピトープに対する防御免疫応答を誘導または刺激することを目的とする。
【0150】
一実施形態では、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、必要とする対象者、特に、活動性疾患を発症した感染個体と密接に接触した、従って、マイコバクテリア感染症を発症するリスクのある対象者において、マイコバクテリアによる感染を予防するまたは感染のリスク(例えば、TBを有する個体から咳によって排出された飛沫中の桿菌の吸入による伝染)を遅延させることを目的とした方法で使用するためのものである。
【0151】
別の実施形態では、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、マイコバクテリア種、特に、
Mtbに感染した対象者において活動性疾患を治療することを目的とした方法において使用するためのものであり、本方法は、感染しているマイコバクテリア種に対して免疫応答を誘導し、それにより、活動性疾患の発症を遅延させる、または発症のリスクを軽減するために、活動性疾患を発症した感染者に、治療上有効な量の、本明細書に記載の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物のうちの少なくとも1つを投与する工程を含んでなる。
【0152】
「活動性疾患」は、顕在化した重篤な病徴を有するマイコバクテリア感染を意味する。例えば、ヒト対象では、TBは、一般臨床徴候(例えば、体重低下、虚弱、発熱、寝汗)、臨床徴候および/または症状(例えば、肺TBの場合には、咳、喀血、胸部痛)によって、および/または肺外徴候の場合には、感染部位(例えば、リンパ節、骨型、髄膜炎、泌尿生殖器型)に従って特徴付けられる。
【0153】
さらに別の実施形態では、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、マイコバクテリア種、特に、結核菌に潜伏感染した対象者において再活性化を予防または治療することを目的とした方法において使用するためのものであり、本方法は、感染しているマイコバクテリア種に対して免疫応答を誘導し、それにより、再活性化を予防する、または遅延させるために、前記潜伏感染者に、治療上有効な量の、本明細書に記載の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物のうちの少なくとも1つを投与することを含んでなる。
【0154】
「潜伏感染者」とは、病原性マイコバクテリア種(例えば、
Mtb)にすでに感染しているが、顕在化病徴または臨床徴候を示さない個体と理解される。一般に、潜伏感染者は、その体内にマイコバクテリアを保有し、臨床的には病気ではないが、特に免疫抑制の場合(例えば、HIVなどの別の病原体との共感染またはTNFa阻害剤などの免疫抑制処置下)では、後に臨床疾患(再活性化)に進行するリスクを保持する。
Mtb潜伏感染者は、
Mtb感染の診断を可能とする任意の検査(例えば、PPD反応性に関してはツベルクリン検査、マントー検査、および/またはIFNg放出アッセイ)によって検査すれば陽性となると思われる。
【0155】
用語「再活性化」は、マイコバクテリア感染に関して陽性判定であるが、明らかな病徴を顕していなかった対象者における、後の、マイコバクテリア関連疾患の顕在化病徴の発現を意味する。例えば、再活性化は、過去に顕在化活動性病徴を有していた、もしくは有してない、または感染を潜伏状態に持ち込むために十分な処置が施された感染者において見られ得る。例えば、
Mtb感染者は、過去にBCGで免疫を受けていた、または過去に
Mtb感染に関して処置(例えば、1以上の「第一選択」化学療法薬による)を受けていた者である。
【0156】
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、接種対象者においてBCGワクチン接種の有効性を増強するためのBCGブースターとして使用するためのものである。
【0157】
化学療法との併用
本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、1以上の従来療法、例えば、マイコバクテリア感染(例えば、
Mtb感染)に対して有効な1以上の化学療法薬と併用することができる。
【0158】
化学療法は一般に、現行法を用いて治療する医師により決定される。このような化学療法薬の例としては、限定されるものではないが、抗生物質ならびに直接的および間接的小阻害分子、抗体および当技術分野で記載されるような免疫療法が挙げられる。一般に、薬剤耐性でない
Mtb感染を治療するために現行使用されている「第一選択」抗生物質化学療法としては、イソニアジド、リファマイシン(すなわち、リファンピン、リファペンチンおよびリファブチン)、エタンブトール、ストレプトマイシン、ピラジンアミドおよびフルオロキノロンが含まれる。1以上の「第一選択」療法に薬剤耐性を示した
Mtb感染を治療するために使用される「第二選択」化学療法としては、オフロキサシン、シプロフロキサシン、エチオナミド、アミノサリチル酸、サイクロセリン、アミカシン、カナマイシンおよびカプレオマイシンが含まれる。1以上の化学療法薬は一般に、適当な期間、例えば、1か月または数ヶ月(例えば、1、2、3、4、5、6、9または12か月)またはそれより長期にわたって投与される。毎日、用量200〜600mg(例えば、300または400mg)の、6〜12か月の範囲の期間にわたる投与が適当である。
【0159】
一実施形態では、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、マイコバクテリア(例えば、
Mtb)感染に対する化学療法を経時的に軽減する目的で使用するためのものである。通常、本明細書に記載の1または複数の有効薬剤の投与は、特に感染しているマイコバクテリアが薬剤耐性である場合に、化学療法の有効性(例えば、臨床徴候の持続期間および/または重篤度の軽減、痰陰性化率(sputum conversion rate)の改善など)の増強、化学療法の長さおよび/または使用する化学療法薬の数の軽減を可能とする。
【0160】
本発明においては、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物は、1以上の化学療法薬を投与する前、投与と同時、または投与した後に投与することができる。一実施形態では、本明細書に記載の有効薬剤は、化学療法の投与を開始した少なくとも2週間後に投与される。
【0161】
好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞および/または組成物は、投与される対象者において免疫応答を誘導または増強する目的で使用するためのものである。従って、本発明はまた、対象者において本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞および/または組成物を投与した際に、マイコバクテリア抗原に対する免疫応答を誘導または刺激するための方法を包含する。
【0162】
誘導または刺激された免疫応答は、特異的(すなわち、マイコバクテリアエピトープ/抗原に対する)および/または非特異的(生得的)、体液性および/または細胞性であり得る。本発明に関して、免疫応答は、好ましくは、マイコバクテリア抗原/エピトープに対するCD4+媒介型もしくはCD8+媒介型またはその両方のT細胞応答である。
【0163】
本明細書に記載の1または複数の有効薬剤の、免疫応答誘導能または刺激能は、当技術分野において標準的な様々な直接的または間接的アッセイを用い、in vitroまたはin vivoのいずれかで評価することができる。試験およびバリデーションも付属の実施例の節に例示されている。
【0164】
例えば、非特異的免疫の誘導は、NK/NKT細胞(例えば、代表性および活性化のレベル)、ならびにIFN関連サイトカインおよび/またはケモカイン産生カスケード、TLRの活性化および生得免疫の他のマーカーの測定によって行うことができる(例えば、Riano et al., 2012, Tuberculosis 92: 148-59)。
【0165】
体液性応答を刺激する能力は、本明細書に記載の免疫原性組合せおよび融合ポリペプチドに含まれるまたはコードされる抗原のうちの少なくとも1つに特異的な抗体力価の上昇によって決定することができる。例示的技術としては、限定されるものではないが、抗体 結合、結合競合ならびにELISAおよびウエスタンブロットが挙げられる。
【0166】
細胞性免疫の評価は、例えば、本明細書に記載の免疫原性組合せおよび融合ポリペプチドに含まれるまたはコードされるマイコバクテリア抗原のうちの少なくとも1つに特異的な、Tリンパ球などの免疫細胞の頻度の上昇によって評価することができる。また、放射性標識時の細胞増殖をモニタリングすることもできる(例えば、[
3H]チミジン組み込みアッセイによるT細胞増殖アッセイ)。免疫応答を検出するための別の高感度法がELISpotであり、この方法では、IFNg産生細胞の頻度が決定される。抗原特異的Tリンパ球の細胞傷害能もまた、増感した対象者においてまたは適当な動物モデルの免疫誘導によって評価することができる。また、慣例のバイオアッセイ(例えば、マルチパラメーターフローサイトメトリー(ICS)、マルチプレックス技術またはELISAを用いたサイトカインプロファイル分析など)を用い、活性化されたT細胞により産生された関連のTh1および/またはTh2サイトカインの放出を定量することによって行うこともできる。また、関連のサイトカインをコードするmRNAの存在を判定するためにPCR技術を使用することもできる。当業者ならば、このような関連のサイトカインの量の有意な増加または減少を使用して本明細書に記載の1以上の有効薬剤の免疫原性活性を評価できることを認識するであろう。
【0167】
最後に、防御免疫応答は、適当な実験動物、例えば、マウス、ラットまたはモルモットにてin vivoで評価することができ(Ashwin et al., 2008, Am J Resp, 39: 503-8; Acosta et al., 2011, Malays J Med, 18: 5-12参照)、例えば、本明細書に記載の1以上の有効薬剤で事前に免疫した後のマイコバクテリア種(例えば、
Mtb)の病原性株でチャレンジ感染を受けた動物から単離された脾臓、肺または他の組織ホモジネートから得られたマイコバクテリアコロニー形成単位(cfu)における、同じ病原性株のマイコバクテリアに感染させた、事前に免疫されてない実験動物の対照群のマイコバクテリアcfuに比べた場合の減少を測定することによる。また、処置群と非処置群の間の比較は、動物生存率で評価することもできる(処置群の生存率の高さは防御免疫応答に相関する)。
【0168】
このような免疫学的読み取りは、本明細書に記載の有効薬剤により提供されるマイコバクテリア感染に対する防御免疫応答と良好な相関を示す。
【0169】
本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞または組成物により提供される防御的応答はまた、本明細書に記載の方法論に従ってヒト対象に投与した際に、ベースライン状態に対してまたは処置されない場合には予測される状態に対して評価することもできる。防御的応答は、医師または他の専門の医療スタッフにより一般に使用される関連の任意の臨床評価によって証明することができ、これらには例えば、
・ある集団、例えば、中国人集団またはある国の移住者集団内の疾患の罹患率および/または有病率および/または頻度の減少(例えば、本明細書に記載の有効薬剤を受容した群においてマイコバクテリア感染を有するまたはマイコバクテリア感染もしくはマイコバクテリア感染に関連する疾患を発症するリスクがあると診断された新規個体の割合が低いこと);
・処置対象者群で痰陰性化率のパーセンテージが高いこと;
・処置対象者群で活動性疾患の治癒のパーセンテージが高いこと;
・感染者と密接に接触した後のマイコバクテリアの伝染の程度の減少(例えば、感染を受けるリスクもしくは活動性疾患を発症するリスクの軽減もしくは遅延、および/または潜伏感染者における再活性化リスクの軽減もしくは遅延);
・病状の改善(例えば、標的組織もしくは生体サンプルにおける細菌cfuの低下;病徴、もしくはそれらの重篤度(例えば、標的器官における病巣の数および/もしくは重篤度)の低下、または安定(増悪しない)病状);ならびに
・処置対象者の現行治療に対する応答の改善(従来の化学療法薬の必要性、数、期間および/または用量の低減)
が含まれる。
【0170】
本発明に関して、防御的応答は一過性(投与中止後2週間)であっても、または持続的(数ヶ月または数年)であってもよい。臨床状態の自然経過は対象者ごとに相当異なり得るので、有意な数の対象者に防御的応答が見られることが必要なのであって、処置を受けた各対象者に防御的応答が見られる必要はない(例えば、2つの群の間の統計的有意差は、ターキーパラメトリック検定、クラスカル・ウォリス検定、マンおよびホイットニーに従うU検定、スチューデントのt検定、ウィルコクソン検定などの当技術分野で公知の任意の統計検定によって判定することができる)。
【0171】
このような測定は本明細書に記載の1または複数の有効薬剤の投与前(ベースライン)、および処置中の種々の時点、および処置の中止後少なくとも数(例えば、12)週間、行うことができる。
【0172】
一般的な指針としては、マイコバクテリア感染および関連の疾患は様々な手段によって検出することができる。例えば、
Mtb感染はまた、マントーツベルクリン皮膚検査(TST)、クォンティフェロン検査ならびにHBHA(ヘパリン結合赤血球凝集素;Hougardy et al., 2007; PLos One 2(10): e926)に対する応答のin vitro検出またはin vitroでのESAT6、CFP10およびTB7.7による刺激後のIP10の検出(Ruhwald et al., 2008; Microbes Infect 9: 806-12)などの、現在臨床使用されているいくつかの方法によって方向付けることもできる。活動性疾患を発症している対象者は、現行法に従って診断することができる。例として、TB診断は、臨床検体において、顕微鏡、培養技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびそのざまざまな変形により病原細菌を検出することに基づく。DNAフィンガープリント法およびスポリゴタイピング(spoligotyping)法も実施可能である。マイコバクテリア培養は、結核菌群の単離株の同定および薬剤感受性試験の標準法であるX線技術および臨床所見もまた、活動性肺疾患および/または肺外疾患の発見を補助するために実施することができる。他方、補体結合検査、赤血球凝集検査、ラジオイムノアッセイおよび酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含め、循環抗体を検出するために様々な抗原を用いる多くの血清学的アッセイが
Mtb感染の診断のために開発されている。
【0173】
抗体
さらなる態様において、本発明は、本発明の免疫原性組合せまたは融合ポリペプチドに含まれるまたはコードされるマイコバクテリア抗原のうちの少なくとも1つと選択的に結合する抗体に関する。
【0174】
本明細書で使用する場合、「抗体」は、抗原結合断片または抗原結合ドメインを含んでなり、かつ、標的タンパク質と選択的に結合する任意のポリペプチドが、標的タンパク質とは結合するが無関連のタンパク質と有意には結合しない場合のそのポリペプチドを包含する。ある特定の場合において、標的タンパク質と結合する抗体は、ある程度の交差反応性があるとしてもなお選択性であると理解される。一般に、抗体と抗原の間の結合は、会合定数K
Aが10
−6Mよりも高い場合に特異的であると見なされる。抗体濃度、溶液のイオン強度、温度、結合を可能とする時間、遮断薬(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などの適当な結合条件は、慣例の技術を用いて当業者により最適化することができる。
【0175】
本発明の抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多重特異性、ヒト、ヒト化、一本鎖、キメラ、合成、組換え抗体、ならびに限定されるものではないが、Fab、F(ab’)
2、FvおよびscFvフラグメントを含む、このような抗体の、抗原結合を保持するフラグメントであり得る。
【0176】
本発明の抗体は、当技術分野で慣例の技術を用い、例えば、動物(例えば、ウサギ、ウマなど)に本明細書に記載のマイコバクテリア抗原、融合タンパク質および/またはそのペプチド断片のいずれかの有効量を投与した後に、ディスプレー(例えば、ファージ、酵母またはリボソームディスプレー)またはハイブリドーマ法によって作製することができる。モノクローナル抗体を作製するための一般法は当技術分野で周知である。
【0177】
本発明の抗体は、単離された形態、溶液中(例えば、動物抗血清)または宿主細胞(例えば、ハイブリドーマ)中で提供することができる。さらに、本発明の抗体は、放射性標識(
131Iまたは
99Tcなど)、酵素標識(セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼなど)および化学標識(例えば、ビオチンなど)を含む適当な標識(検出可能な標識または機能的標識)とコンジュゲートさせることができる。
【0178】
本発明の抗体は様々な潜在的用途を有し、それらは本発明の範囲内にある。例えば、このような抗体は、(a)本発明における使用でマイコバクテリア抗原を検出するためのアッセイの試薬として、(b)生体サンプルにおいてマイコバクテリアの存在を検出するためのアッセイの試薬として、ならびに/または(c)本発明の方法に従って組換えにより生産されたマイコバクテリア抗原および融合ポリペプチドを検出する、および/もしくはタンパク質の混合物および他の夾雑物から回収する(例えば、培養宿主細胞からのアフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降による精製を可能とすることによる)ためのツールとして使用することができる。本発明の抗体はまた、例えば、マイコバクテリア暴露の後に対象者を処置するために治療目的で使用することもできる(例えば、受動免疫療法)。
【0179】
一実施形態では、本発明は、マイコバクテリアに感染したまたは感染の疑いのある対象者から採取した生体サンプル(例えば、血漿、血清、痰など)において、本発明の抗体を用いてマイコバクテリア抗原を検出および/または定量するための方法に関し、本方法は、前記生体サンプルと試薬としての本発明の抗体を、前記マイコバクテリア抗原と前記抗体試薬の間で複合体の形成を可能とする条件下で接触させる工程、ならびに前記複合体の形成を任意の適当な手段によって検出および/または定量する工程を含んでなる。標的マイコバクテリア抗原の存在の検出は、マイコバクテリア感染(例えば、
Mtb)の指標となる。
【0180】
別の実施形態では、本発明は、生体サンプル(例えば、マイコバクテリアに感染したまたは感染の疑いのある対象者から採取した血漿、血清など)において、マイコバクテリアに対する抗体を検出および/または定量するための方法に関し、本方法は、前記生体サンプルと、本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子、宿主細胞のいずれかを含んでなる試薬とを、前記抗体と上記に挙げた試薬のいずれかにより含まれるまたはコードされるマイコバクテリア抗原/エピトープの間で複合体の形成を可能とする条件下で接触させる工程、ならびに前記複合体の形成を任意の適当な手段によって検出および/または定量する工程を含んでなる。特異的抗体の存在の検出は、マイコバクテリア感染(例えば、
Mtb)の指標となる。
【0181】
当業者ならば、本発明の方法において使用される試薬の量を容易に決定することができる。抗原/抗体複合体の検出および/または定量の手段は慣例であり、当業者に周知である。例として、ブロット、ELISA、いわゆる、サンドイッチ技術、競合技術、およびPCR技術、特に、いわゆる「リアルタイム」技術が挙げられる。上記に挙げた試薬の使用は、検出可能な物質とのカップリング(すなわち、物理的連結)によって容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼ)、補欠分子族(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン、またはアビジン/ビオチン)、蛍光物質(例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、またはフルオレセイン誘導体)、発光物質、生物発光物質(例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、またはエクオリン)、および放射性物質(例えば、
125I、
131I、
35Sまたは
3H)が挙げられる。
【0182】
本発明はまた、マイコバクテリア(例えば、
Mtb)感染の診断用の、本発明の抗体を含んでなる抗原アッセイのため、および本発明の免疫原性組合せ、融合ポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物を含んでなる抗体アッセイのための試薬のキットに関する。
【0183】
上記に挙げた特許、刊行物およびデータベースエントリーの開示は総て、このような各個特許、刊行物またはエントリーが具体的かつ個々に、引用することにより本明細書の一部とされることが示されている場合と同じ程度で、引用することによりその全内容が具体的に本明細書の一部とされる。
【実施例】
【0185】
材料および方法
分析方法
感染の自然経過のあらゆる相で抗TB免疫を生じ得る免疫療法ワクチンにおいて有用であり得る第1選択の
Mtb遺伝子/抗原を同定する目的で、利用できる文献およびデータベースから
Mtb抗原の既存のデータを調べた。
【0186】
次に、選択された抗原を、異なるソースからのデータを書き換えて比較するために開発されたデータマイニングスコアリングシステムにかけた。各抗原の値を反映した総合的な最終「スコア」を生成した。このスコアは、その抗原の免疫原性ならびに動物モデルおよびヒトにおける感染性チャレンジに対するその防御能を考慮している(例えば、ヒトにおける防御データは、動物モデルにおいて免疫原性を誘導する場合よりも高いスコアとなる)。特定の抗原に対する総てのデータが収集されたところで、各カテゴリーに0〜5のグレードを、0を悪いと思われるグレード、5は最良として割り当てた。グレードの選択はまた、データの質(例えば、実験に用いた対象の妥当性、会社の厳密さ)だけではなく、データのロバスト性(例えば、実験が実施された回数、それらの知見を確かなものとする/裏付ける刊行物の数)にも基づいた。
【0187】
抗原の生化学的in silico分析
生化学的および生物学的データも、発現および融合物の設計を最適化するために重要なデータであり、潜在的発現問題の予想を可能とする。例えば、タンパク質の生物学的機能は、ベクターにより媒介される発現の際に遺伝的不安定性および/または安全性プロファイルをもたらす潜在的毒性に至り得る。さらに、タンパク質のアンフォールディングは、細胞分解速度が高いために安定性および発現レベルに影響を及ぼし得る。
【0188】
これらのタンパク質の構造および機能をより良く理解し特性評価をするために、総ての
Mtb抗原に対して大規模文献検索を行った。
【0189】
さらに、
Mtb抗原の特性評価のために生化学的およびバイオインフォマティクス的予測も行った。クラスIおよびII HLA分子の予測エピトープを調べるために、バイオインフォマティクス的予測ツール(Nielsen et al., 2007 PLos One 2: e796; Nielsen et al., 2008, PLoS Comput Biol 4: e1000107)を用いた。これらのエピトープ領域の同定は、選択された
Mtb抗原の最適化に、または免疫に基づくアッセイの開発を助けるために有用であり得る。
【0190】
さらに、生化学的特性および/または生物学的機能を予測し、従って、
Mtb抗原の選択および設計を可能とするために(例えば、全長天然型が発現され得るか、または改変が要されると思われるか)、大規模in silico構造予測解析を行った。
【0191】
より具体的には、
・タンパク質データバンク(PDB)構造ホモログの検索。使用プログラムはBLASTP(デフォルトパラメーターを使用)であり、選択データベースはNPS@3D SEQUENCES(PDB提供)であった。この検索により、25%より高い配列相同性を有する抗原またはタンパク質のNMRまたは結晶構造を見つけることができる。3D構造はCN3D 4.1.またはPDBビューワーを用いて表示した。
【0192】
・UNIPROT−SWISSPROTおよびTBデータベースの検索。対象とする
Mtb抗原のタンパク質ホモログをUNIPROT−SWISSPROTデータベースにて、クエリーとして一次構造を、およびNPS@上でのBLASTを用いて検索した。使用プログラムはBLAST(デフォルトパラメーターを使用)であり、選択データベースはUNIPROT−SWISSPROTであり、UNIPROT−SWISSPROTエントリーからタンパク質機能、ドメイン、潜在的シグナルペプチド、翻訳後修飾に関する一般情報ならびに書誌参照にアクセスすることができる。選択された
Mtb抗原についての一般情報(例えば、遺伝子機能、遺伝子間の遺伝的連関、遺伝子に関連する表現型および突然変異、免疫原性、ならびに書誌参照)を、TBデータベースでクエリーとしてRvタンパク質名を用いて検索した。
【0193】
・シグナルペプチドの予測:これらの短いN末端配列は、多くの場合、膜貫通ドメインとして予測され、天然成熟タンパク質には存在しない。シグナルペプチドの存在は、ある特定の抗原に関してはUNIPROT−SWISSPROTデータベースで、またはシグナルv3.0アルゴリズムの隠れマルコフモデルを用いて報告した。
【0194】
ホモログ検索でヒットしない場合には、さらなる検索を行った:
・3つの異なるプログラム(例えば、デンス・アラインメント・サーフェイス(dense Alignment surface)(DAS)法、アルゴリズムTMHMMおよびTopPred0.01)を用いた潜在的膜貫通ドメイン(TM)の予測。本発明者らの観察することろでは、このような疎水性TMドメインがともに存在することにより、MVAなどのウイルスベクター内で発現させた際に対応する抗原の遺伝的安定性が損なわれる可能性がある。
【0195】
・PROSITE SCANを用いたタンパク質のドメイン、ファミリーおよび機能的部位に関連する既知のタンパク質モチーフに関する検索。
【0196】
・いくつかの予測法(すなわち、SOPM、MLRC、HNN、DSC、PHD、PREDATOR)を用いた二次構造の予測。二次構造は、これら6つの方法がそれを予測した場合に可能性が高いと見なした。二次構造は、これら6つの方法のうち3つがそれを予測した場合に、可能性ありと見なした。
【0197】
・疎水性クラスター解析(HCA)。HCA法は、タンパク質折り畳みの本質的特徴、すなわち、親水性/疎水性二分法およびタンパク質球状ドメインの疎水的密集性に基づく。タンパク質配列の疎水性クラスターを同定するためにHCAプロットを用いた。これらのクラスターは、疎水性が埋め込まれたコア(hydrophobic buried core)を有する折り畳まれたタンパク質に特徴的である。抗原は、疎水性クラスターがそのタンパク質の少なくとも一部に存在していた場合に、おそらく折り畳まれた状態を有すると見なした。
【0198】
・非折り畳み領域の同定を可能とする天然変性領域の予測(MetaPrDOS予測)。この解析は、折り畳まれていないタンパク質の領域を予測することによってHCAプロットを補足する。閾値0.5を超える領域(変性傾向)は総て、タンパク質の非折り畳み部分と見なした。ほとんどの場合、タンパク質のN末端およびC末端部分は、それらの天然状態で折り畳まれていないことに留意されたい。このようなストレッチがそれらの末端に存在し、かつ、10残基より小さい場合に、それらを融合のための潜在的リンカーとして維持した。
【0199】
・コイルドコイルの予測(COILSプログラムを使用)。抗原のオリゴマー化状態は抗原融合物の設計に影響を及ぼし得る。少なくとも14残基枠の解析でタンパク質の一部に関して出力確率が1の値を示した場合に、コイルドコイルドメインを予測した。
【0200】
さらに、選択された
Mtb抗原が異なる
Mtb株および単離株の間で保存されていることを確認するために配列アラインメントを行った。より正確には、各選択抗原(例示的
Mtb抗原はH37Rv株に起源する)ならびに11種の他の
Mtb株(臨床単離株)およびタンパク質データベース(BLASTP検索)で同定されたウシ結核菌の、それらの等価物のアミノ酸配列間での多重配列アラインメントを、Clustal W2(@.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/)を用いて行った。結果として、TB抗原は、解析した12のマイコバクテリア株間で高い保存性を示し、同一性パーセンテージは、抗原およびマイコバクテリア株によって100%〜96%の範囲であった。主な例外がRv3478で見られ、この場合には、H37Rv配列とCDC1551配列間で88%の同一性が見られたに過ぎなかった。
【0201】
最後に、最終的なTB抗原選択を達成するためのもう1つの重要な基準は、様々な感染期からの抗原のバランスのとれた代表性を確保することであった。例えば、いくつかの潜伏期抗原は、ほとんどの活動期抗原よりも最終データマイニングスコアが低いにもかかわらず選択した。
【0202】
Mtb抗原の融合物の構築
12の
Mtb抗原融合物を
図1に示すように作出した。5つの融合物は、生化学的合理性に基づいて設計し(融合物3、5、6、8および14)、一方、融合物2、4および13はTB疾患の相に対して設計し、融合物2は活動期抗原を含有し、融合物4は活動期抗原と再燃期抗原を含有し、融合物13は潜伏期抗原から構成される。様々な遺伝子融合物の検出を助け、かつ、各
Mtb抗原に対する特異的抗体の必要性を避けるために、各融合物にタグ配列を付加した(それぞれN末端にFlagタグ(DYKDDDDK;配列番号25)、C末端にc−myc(EQKLISEEDL;配列番号26)タグとHis(HHHHHH;配列番号27)タグを付加)。
【0203】
他方、ある特定の場合において免疫原性活性を最適化すると推測される細胞表面への係留を確保するために、シグナルペプチド(シグナル配列またはSSとも呼ばれる)および膜係留ペプチド(膜貫通またはTMペプチド/ドメインとも呼ばれる)をそれぞれ
Mtb融合タンパク質のN末端およびC末端に付加した。しかしながら、Rv0111またはRv1733で終わる融合物では、これらのタンパク質がすでに膜係留ペプチドを含んでいるために、TMドメインの付加は必要でなかった。比較として、細胞の場(SSおよびTMペプチドが存在する場合の膜提示とこのようなペプチドが存在しない場合の細胞質の場)が発現レベルおよび免疫原性活性に及ぼす影響を検討するために、シグナル配列(SS)およびTMドメインを含まない4つの融合物も作出した。例えば、pTG18269は、pTG18269によりコードされる融合物がそのN末端にSSを備え、そのC末端のMycタグとHisタグの間にTMタグを備えていること以外は、pTG18295と同じ
Mtb抗原(Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807)をコードし、一方、pTG18295によりコードされる融合物は、このようなSSおよびTMペプチドを欠いている。
【0204】
異なる
Mtb抗原および融合物をコードする合成遺伝子はGeneart(レーゲンスブルク、ドイツ)により合成された。これらの配列をヒトコドン使用頻度に関して最適化し、ATG開始コドンの前にコザック配列(ACC)を付加した。さらに、いくつかのモチーフを排除した:ポックスウイルスベクターでの発現に有害なTTTTTNT、GGGGG、CCCCC、およびいくつかの他のベクターでの発現に有害であり得るAAAGGG、AAAAGG、GGGAAA、GGGGAA(および相補配列TTCCCC、TTTCCC、CCTTTT、CCCCTT)。
【0205】
これらの融合物を、
NotIおよび
BamHで消化したpGWizプラスミド(Gelantis)にクローニングした。このプラスミドは、改変型のCMVプロモーター、その後にCMV前初期遺伝子由来のイントロンA、および高効率人工転写ターミネーターが含有する。
【0206】
pTG18266(融合物番号2)の構築
融合物番号2のアミノ酸配列は、配列番号28で示される。アミノ酸1〜23は、狂犬病ウイルスERA株の糖タンパク質前駆体(Genbank番号M38452に記載)のN末端に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸24〜31はFlagタグに相当し、アミノ酸32〜317はAg85B
*に相当し、アミノ酸318〜412はTB10.4に相当し、アミノ酸413〜506はESAT6に相当し、アミノ酸507〜516はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸518〜583は、ERA株の狂犬病糖タンパク質に由来する膜係留ペプチドに相当し、アミノ酸584〜589はHisタグに相当する。配列番号40で示される融合物番号2をコードするヌクレオチド配列は合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18266を得た。
【0207】
pTG18267(融合物番号3)の構築
融合物番号3のアミノ酸配列は、配列番号30で示される。アミノ酸1〜23は、狂犬病ウイルスPG株の糖タンパク質前駆体(Genbank番号ay009097およびWO2008/138649の配列番号2に記載)のN末端に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸24〜31はFlagタグに相当し、アミノ酸32〜380はRPFB−Dhyb
*に相当し、アミノ酸381〜390はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸392〜457は、PG株(WO2008/138649の配列番号3)の狂犬病糖タンパク質に由来する膜係留ペプチドに相当し、アミノ酸458〜463はHisタグに相当する。配列番号42で示される融合物番号3をコードするヌクレオチド配列は合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18267を得た。
【0208】
pTG18268(融合物番号4)の構築
融合物番号4のアミノ酸配列は、配列番号32で示される。アミノ酸1〜23は、狂犬病ウイルスPG株の糖タンパク質前駆体(Genbank番号ay009097に記載)のN末端に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸24〜31はFlagタグに相当し、アミノ酸32〜380はRPFB−Dhyb
*に相当し、アミノ酸381〜666はAg85B
*に相当し、アミノ酸667〜761はTB10.4に相当し、アミノ酸762〜855はESAT6に相当し、アミノ酸856〜865はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸867〜932は、PG株の狂犬病糖タンパク質に由来する膜係留ペプチドに相当し、アミノ酸933〜938はHisタグに相当する。配列番号44で示される融合物番号4をコードするヌクレオチド配列は合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18268を得た。
【0209】
pTG18269(融合物番号5)の構築
融合物番号5のアミノ酸配列は、配列番号34で示される。アミノ酸1〜23は、狂犬病ウイルスERA株の糖タンパク質前駆体(Genbank番号M38452に記載)のN末端に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸24〜31はFlagタグに相当し、アミノ酸32〜118はRv0569に相当し、アミノ酸119〜227はRv1813
*に相当し、アミノ酸228〜325はRv3407に相当し、アミノ酸326〜717はRv3478に相当し、アミノ酸718〜1115はRv1807に相当し、アミノ酸1116〜1125はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸1127〜1192は、PG株の狂犬病糖タンパク質(WO2008/138649の配列番号3)に由来する膜係留ペプチドに相当し、アミノ酸843〜848はHisタグに相当する。配列番号46で示される融合物番号5をコードするヌクレオチド配列を合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18269を得た。
【0210】
pTG18270(融合物番号6)の構築
融合物番号6のアミノ酸配列は、配列番号36で示される。アミノ酸1〜23は、狂犬病ウイルスERA株の糖タンパク質前駆体(Genbank番号M38452に記載)のN末端に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸24〜31はFlagタグに相当し、アミノ酸32〜317はAg85B
*に相当し、アミノ酸318〜459はRv2626に相当し、アミノ酸460〜808はRPFB−Dhyb
*に相当し、アミノ酸809〜956はRv1733
*に相当し、アミノ酸957〜966はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸968〜973はHisタグに相当する。配列番号48で示される融合物番号6をコードするヌクレオチド配列を合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18270を得た。
【0211】
pTG18272(融合物番号8)の構築
融合物番号8のアミノ酸配列は、配列番号37で示される。アミノ酸1〜23は、狂犬病ウイルスERA株の糖タンパク質前駆体(Genbank番号M38452に記載)のN末端に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸24〜31はFlagタグに相当し、アミノ酸32〜317はAg85B
*に相当し、アミノ酸318〜459はRv2626に相当し、アミノ酸460〜607はRv1733
*に相当し、アミノ酸608〜617はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸619〜624はHisタグに相当する。配列番号49で示される融合物番号8をコードするヌクレオチド配列を 合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18272を得た。
【0212】
pTG18323(融合物番号13)の構築
融合物番号13のアミノ酸配列は、配列番号38で示される。アミノ酸1〜28は、麻疹ウイルス(Halle株、Genbank番号X05597−1に記載)のN末端のFタンパク質に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸29〜36はFlagタグに相当し、アミノ酸37〜349はRv2029
*に相当し、アミノ酸350〜491はRv2626に相当し、アミノ酸492〜639はRv1733
*に相当し、アミノ酸640〜932はRv0111
*に相当し、アミノ酸933〜942はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸944〜949はHisタグに相当する。配列番号50で示される融合物番号13をコードするヌクレオチド配列を合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18323を得た。
【0213】
pTG18324(融合物番号14)の構築
融合物番号14のアミノ酸配列は、配列番号39で示される。アミノ酸1〜28は、麻疹ウイルス(Halle株、Genbank番号X05597−1に記載)のFタンパク質のN末端に存在するシグナルペプチドに相当し、アミノ酸29〜36はFlagタグに相当し、アミノ酸37〜349はRv2029
*に相当し、アミノ酸350〜444はTB10.4に相当し、アミノ酸445〜538はESAT6に相当し、アミノ酸539〜831はRv0111
*に相当し、アミノ酸832〜841はc−mycタグ、Serリンカーに相当し、アミノ酸843〜848はHisタグに相当する。配列番号51で示される融合物番号14をコードするヌクレオチド配列を合成法により作出し、その合成遺伝子を、制限酵素
NotIおよび
BamH1で処理したpGWizにクローニングし、pTG18324を得た。
【0214】
融合物9〜12の構築
適当なプライマー対、すなわち、シグナルペプチド配列の削除用にはOTG20188(CGCGGCCGCACCATGGATTACAAGGATGACGACG;配列番号52)とOTG20189(CGTCGTCATCCTTGTAATCCATGGTGCGGCCGCG;配列番号53)、また、TM配列の削除用にはOTG20190(CATCTCAGAAGAGGATCTG−CATCATCATCATCATCATTG;配列番号54)とOTG20191(CAATGATGATGAT−GATGATGCAGATCCTCTTCTGAGATG;配列番号55)のを用い、定方向突然変異誘発(Quick Change部位特異的突然変異誘発キット、Stratagene)によって、プラスミドpTG18267、pTG18269、pTG18266およびpTG18268からターゲティング配列を削除した。得られたプラスミドはそれぞれ、配列番号43、47、41および45のヌクレオチド配列によりコードされている配列番号31、35、29および33のアミノ酸配列に相当するpTG18307(融合物番号12=細胞質融合物番号3)、pTG18295(融合物番号9=細胞質融合物番号5)、pTG18296(融合物番号10=細胞質融合物番号2)およびpTG18297(融合物番号11=細胞質融合物番号4)であった。
【0215】
個々のMtb遺伝子発現プラスミドの構築
NheI制限部位で隔てられたFlag配列およびc−myc−His配列を、pGWizプラスミドのCMVプロモーターの下流に導入した。CMVプロモーターの末端、Flag配列およびc−myc−His配列を含む合成DNA断片はGeneartにより合成され、プラスミドFLAG_TAG_1に挿入した。このプラスミドを
PvuIIおよび
BglIIで消化し、得られた断片を同じ酵素で処理したpGWizに挿入し、pTG18282を得た。次に、個々のRv3407、Rv0569、Rv1807、Rv1813
*、Rv3478およびRv2626遺伝子を、pTG18323を鋳型として用いたRv2626以外は、pTG18269からPCRにより増幅した。
【0216】
各TB遺伝子の単離に用いた増幅プライマー対を表1に示す。
【0217】
【表1】
【0218】
得られたアンプリコンを「In fusion Advantage」PCRクローニング法(Clontech)により、
NheIで線状化したpTG18282にクローニングした。これによりタグ配列と
Mtb遺伝子の融合が可能となる。作製されたプラスミドをそれぞれpTG18300(Rv3407)、pTG18301(Rv0569)、pTG18302(Rv1807)、pTG18303(Rv1813
*)、pTG18304(Rv3478)およびpTG18305(Rv2626)と呼称した。
【0219】
5’側でFlagと融合し、3’側でc−myc−His配列と融合したESAT6、Rv1733
*、Ag85B
*、TB10−4、Rv0111
*およびRv2029
*の発現カセットを含有する6つのプラスミドはGeneartにより合成され、pGWizに挿入した。それらをそれぞれpTG18308(ESAT6)、pTG18309(Rv1733
*)、pTG18310(Ag85B
*)、pTG18315(TB10.4)、pTG18329(Rv0111
*)、pTG18317(Rv2029
*)と呼称した。Rv1733
*およびRv0111
*タンパク質はTMドメインを含むので、発現の問題を回避するために、狂犬病ウイルスERA株の糖タンパク質前駆体のN末端に存在するシグナルペプチドをFlag配列の上流に融合させた。
【0220】
個々の
Mtb遺伝子をコードする場合でも融合
Mtb遺伝子をコードする場合でも、免疫に用いるプラスミドは内毒素不含条件で作製した。
【0221】
組換えMVAの構築
タグ配列の削除
タグ配列は、MVAベクターにそれらが存在しないように、
Mtb抗原融合物から除去した。
Mtb融合物カセット内に位置するタグ配列(すなわち、シグナルペプチドと
Mtb融合物の最初のアミノ酸の間に存在するFlag、および
Mtb融合物の最後のアミノ酸と膜係留ペプチドの間に存在するcmycタグ)は、QuikChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)および下記表2で示される適当なプライマー対を用いた定方向突然変異誘発により削除した。
Mtb融合物カセット外に位置するタグ配列(細胞質融合物およびHisタグの場合)は、融合物の両末端への開始Metおよびターミネーターコドンの付加を可能とするプライマー用いたPCRにより削除した。
【0222】
【表2】
【0223】
MVATG18355(融合物番号13)の構築
融合物番号13(配列番号38の1〜28および37〜932の部分により示されるSF−Rv2029
*−Rv2626−Rv1733
*−Rv0111
*)をコードするヌクレオチド配列を、p7.5Kプロモーター(配列番号80;CCACCCACTTTTTATAGTAAGTTTTTCACCCATAAATAATAAATACAATAATTAATTTCTCGTAAAAGTAGAAAATATATTCTAATTTATTGCACGGTAAGGAAGTAGAATCATAAAGAACAGT)の制御下に置いた。これを、適当なプライマー対OTG20405(配列番号81)とOTG20406(配列番号82)を用い、VV(ワクシニアウイルス)コペンハーゲン株DNAからPCRにより増幅し、一方、融合物番号13配列は、OTG20407(配列番号83)とOTG20408(配列番号84)を用い、プラスミドpTG18342からPCRにより増幅した。次に、p7.5Kおよび融合物番号13をコードする配列を、プライマーOTG20405(配列番号81)およびOTG20408(配列番号84)を用いるダブルPCRにより再構成した。得られた断片をワクシニア導入プラスミドpTG17960の
BglIIおよび
NotI制限部位に挿入し、pTG18355を得た。
【0224】
MVA導入プラスミドpTG17960は、MVAゲノムの欠失IIIにおける相同組換えによって、導入対象のヌクレオチド配列の挿入を可能とするように設計される。これはプラスミドpTG1E(Braun et al., 2000, Gene Ther. 7:1447に記載)に起源し、これにMVA欠失IIIを挟むようにフランキング配列(BRG3およびBRD3)をクローニングした(Sutter and Moss, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10847)。この導入プラスミドはまた、オワンクラゲ(
Aequorea victoria)増強緑色蛍光タンパク質(
eGFP遺伝子、pEGP−C1から単離、Clontech)と大腸菌(
Escherichia coli) キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(
gpt遺伝子)との間の融合物を、初期後期ワクシニアウイルス合成プロモーターp11K7.5(R. Wittek、ローザンヌ大学によって厚意により提供)の制御下に含む。キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼが合成されると、GPT
+組換MVAはミコフェノール酸、キサンチン、およびヒポキサンチンを含有する選択培地中で増殖可能となり(Falkner et al, 1988, J. Virol. 62, 1849-54)、
eGFPは組換えMVAプラークの可視化を可能とする。この選択マーカー
eGFP−GPTを2つの相同配列の間に同じ配向で配置する。クローン選択の後、この選択マーカーは、
eGFP−GPT−組換えMVAの増殖を可能とする選択なして数回継代培養することによって容易に除去することができる。
【0225】
MVATG18355の作出は、MVAを感染させ、ヌクレオフェクションによりpTG18355をトランスフェクトした(Amaxa Nucleofector技術に従う)初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)における相同組換えにより行った。ウイルスの選択は、ミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンを含有する選択培地の存在下で増殖させた後にプラーク精製により行った。前述のように、その後、選択マーカーは、非選択培地での継代培養により除去した。親MVAの混入がないことをPCRにより確認した。
【0226】
MVATG18364(融合物番号13+融合物番号4)の構築
融合物番号4(配列番号32の1〜23、続いて32〜855および866〜932の部分により示されるSR−RPFB−Dhyb
*−Ag85B
*−TB10.4−ESAT6−TMR)をコードするヌクレオチド配列を、野生型MVAのゲノムDNAから、プライマー対OTG20445(配列番号86)とOTG20446(配列番号87)を用いたPCRによりクローニングしたpH5Rプロモーター(配列番号85、TTTATTCTATACTTAAAAAATGAAAATAAATACAAAGGTTCTTGAGGGTTGTGTTAAATTGAAAGCGAGAAATAATCATAAATTATTTCATTATCGCGATATCCGTTAAGTTTG)の制御下に置いた。増幅産物を
NotIおよび
PacIで消化した。融合物番号4をコードする配列をpTG18339から、OTG20447(配列番号88)およびOTG20380(配列番号89)プライマーを用い、PCRにより増幅した。増幅産物を
PacIおよび
XhoIで消化した。両断片をともに、制限酵素
NotIおよび
XhoIで処理したpTG18355にクローニングし、pTG18364を得た。
【0227】
MVATG18364ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0228】
MVATG18365(融合物番号13+融合物番号11)の構築
融合物番号11(1番がMetイニシエーターで始まる配列番号33の10番〜833番の部分により示されるRPFB−Dhyb
*−Ag85B
*−TB10.4−ESAT6)をコードするヌクレオチド配列を、pH5Rプロモーターの制御下に置いた。プロモーターはpTG18364から、OTG20445(配列番号86)およびOTG20446(配列番号87)プライマーを用いたPCRにより得、増幅断片を
NotIおよび
PacIで消化した。融合物番号11をコードする配列を、pTG18297から、プライマー対OTG20448(配列番号90)とOTG20382(配列番号91)を用いたPCRによりクローニングし、増幅産物を
PacIおよび
XhoIで消化した。両断片をともに、制限酵素
NotIおよび
XhoIで処理したpTG18355にクローニングし、pTG18365を得た。
【0229】
MVATG18365ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0230】
MVATG18376(融合物番号13+融合物番号4+融合物番号5)の構築
融合物番号5(配列番号34の1番〜23番、続いて32番〜1115番および1126番〜1192番の部分により示されるSR−Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807−TMR)をコードするヌクレオチド配列を、B2Rプロモーター(配列番号92、TATATTATTAAGTGTGGTGTTTGGTCGATGTAAAATTT−TTGTCGATAAAAATTAAAAAATAACTTAATTTATTATTGATCTCGTGTGTACAACCGAAATC)の制御下に置いた。このプロモーターをVVウエスタンリザーブ株DNAから、プライマー対OTG20469(配列番号93)とOTG20470(配列番号94)を用いたPCRにより増幅し、増幅断片を
XhoIおよび
NheIで消化した。融合物番号5をコードする配列をpTG18340から、プライマー対OTG20472(配列番号95)とOTG20473(配列番号96)を用いて増幅した後、制限酵素
NheIおよび
BamHIで処理した。消化した両断片をともに、
XhoIおよび
BamHIで線状化したpTG18364にクローニングし、pTG18376を作出した。
【0231】
MVATG18376ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0232】
MVATG18377(融合物番号13+融合物番号11+融合物番号5)の構築
B2RプロモーターをpTG18376から、上記のプライマー対OTG20469とOTG20470を用いて増幅し、
XhoIおよび
NheIで消化した。融合物番号5(SR−Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807−TMR)をコードするヌクレオチド配列を上記のように増幅し、
XhoIおよび
BamHIで線状化したpTG18364のB2Rプロモーターの制御下にクローニングし、pTG18377を作出した。
【0233】
MVATG18377ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0234】
MVATG18378(融合物番号13+融合物番号4+融合物番号9)の構築
融合物番号9(1番がMetイニシエーターで始まる配列番号35の10番〜1093番の部分により示される通りRv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807)をコードするヌクレオチド配列を、pTG18295から、プライマー対OTG20483(配列番号97)とOTG20474(配列番号98)を用いたPCRにより増幅した。増幅産物を
NheIおよび
BamHIで消化し、制限酵素
XhoIおよび
NheIで処理したB2Rプロモーター(上記のようにpTG18376から増幅)とともに、
XhoIおよび
BamHIで線状化したpTG18364にクローニングし、pTG18378を得た。
【0235】
MVATG18378ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0236】
MVATG18379(融合物番号13+融合物番号11+融合物番号9)の構築
融合物番号9(Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807)をコードするヌクレオチド配列およびB2Rプロモーターをとも上記のように増幅し、
XhoIおよび
BamHIで線状化したpTG18365にともにクローニングし、pTG18378を得た。
【0237】
MVATG18379ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0238】
MVATG18404(融合物番号14+融合物番号6)の構築
融合物番号14(配列番号39の1番〜28番および37番〜831番の部分により示されるSF−Rv2029
*−TB10.4−ESAT6−Rv0111
*)をコードするヌクレオチド配列を、pTG18343から、プライマー対OTG20407(配列番号83)とOTG20525(配列番号99)を用いたPCRにより増幅した。p7.5Kプロモーターは、pTG18355から、OTG20524(配列番号100)およびOTG20406(配列番号82)プライマーを用いたPCRにより得た。次に、融合物番号14をコードする配列を、OTG20524(配列番号100)およびOTG20525(配列番号99)を用いたダブルPCRにより、p7.5Kプロモーターの制御下にクローニングした。得られた断片を制限酵素
BamHIおよび
NotIで処理し、ワクシニア導入プラスミドpTG17960の
BglIIおよび
NotI制限部位に挿入し、pTG18395を得た。
【0239】
融合物番号6(配列番号36の1番〜23番および32番〜956番の部分により示されるSS−Ag85B
*−Rv2626−RPFB−Dhyb
*−Rv1733
*)をコードするヌクレオチド配列を、pTG18341から、プライマー対OTG20527(配列番号101)とOTG20376(配列番号102)を用いたPCRにより増幅し、増幅産物を
PacIおよび
XhoIで消化した。pH5Rプロモーターを上記のようにpTG18355から増幅し、
NotIおよび
PacIで消化した。消化した両断片をともに、
NotIおよび
XhoIで線状化したpTG18395にクローニングし、プラスミドpTG18404を得た。
【0240】
MVATG18404ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0241】
MVATG18417(融合物番号14+融合物番号6+融合物番号5)の構築
B2Rプロモーターの制御下に置かれた融合物番号5(SR−Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807−TMR)をコードするヌクレオチド配列を、pTG18376の
XhoIおよび
BamHI消化により得た。得られた断片を、同じ制限酵素で処理したpTG18404に挿入し、pTG18417を得た。
【0242】
MVATG18417ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0243】
MVATG18418(融合物番号14+融合物番号6+融合物番号9)の構築
B2Rプロモーターの制御下に置かれた融合物番号9(Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807)をコードするヌクレオチド配列を、pTG18379の
XhoIおよび
BamHI消化により得た。得られた断片を、同じ制限酵素で処理したpTG18404に挿入し、pTG18418を得た。
【0244】
MVATG18418ウイルスの作出は、CEFにおいて、上記のように相同組換えにより行った。
【0245】
生産およびタンパク質精製
4つの大腸菌株を個々の
Mtb抗原の発現に関して試験した。これらの株は総て、それらのゲノム内に、ラクトースまたはラクトース類似体(すなわち、IPTG)によるT7ポリメラーゼの発現誘導を可能とするDE3プロファージを保持する。これらの4株は、タンパク質発現の標準株としてのBl21(DE3)(Lucigen)、有毒タンパク質発現用のC41(DE3)(Lucigen)、大腸菌とは異なるコドン使用頻度を有するタンパク質の発現用のBl21(DE3)Rosetta(Merck Chemical)、および膜貫通ペプチド(例えば、Rv1733)を有するタンパク質の発現用のC43(DE3)(Lucigen)であった。さらに、抗原生産を最適化するために、3つの異なる温度と生産時間を試験した。
【0246】
最適条件を決定するための発現アッセイ
各大腸菌株を、生産対象の
Mtb抗原をコードするプラスミドで形質転換させた。新たに形質転換させたプレートから5つのコロニーが単離され、これをアンピシリンの存在下、50mlのLB(ルリア培地)培地に播種し、振盪下、37℃一晩増殖させた。自動誘導培地(autoinducible medium)(グルコース/ラクトースおよび抗生物質を含有するAI培地;Studier, 2005, Protein Expr Purif. 41: 207-34)のフラスコに前培養試料を播種した後、18℃、30℃および37℃のいずれかでそれぞれ24、8時間および8時間培養した。インキュベーション終了時に、600nmでの吸光度を測定し、細胞を遠心分離により採取した。細胞ペレットをPBSに再懸濁させ、試験する各培養条件についてOD600nmを50前後に調整した後、細胞を音波処理により溶解させた。次に、細胞溶解液を4℃にて10,000gで10分間遠心分離し、その後、上清の試料(一般に10μL)およびペレットをSDS−PAGEにロードし、最適条件を評価した。
【0247】
Mtb抗原の生産および精製
Hisタグ含有
Mtb抗原の精製は、事前に決定した最適条件を適用して2Lフラスコで増殖させた500mL培養物から行った。細胞を遠心分離により採取し、250mLの培養物に相当するペレットを使用まで−20℃で保持した。採取した細菌を、抗原の溶解度に応じてPBSまたはグアニジンに再懸濁させ、細胞溶解のための音波処理を施し、提供者の推奨に従い、非変性条件または変性条件のいずれかで、Niセファロース6ファーストフローレジン(GE Healthcare;参照番号17−5318)でのIMACアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。漸増濃度のイミダゾール(50mM、100mMおよび250mM)を適用することにより、タンパク質を溶出させた。純粋なタンパク質を含有する画分をプールし、抗原の溶解度に応じてPBSまたは尿素に対して透析した。
【0248】
タンパク質の特性評価
溶出画分に存在する精製された
Mtb抗原の量と質を評価するために様々な試験を行うことができる。
【0249】
内毒素レベル Charles River Laboratoriesからのポータブル・テスト・システム(PTS)を用いて測定した。検出範囲0.005〜0.5EU/mLのカートリッジを製造者の推奨に従って使用した。
【0250】
タンパク質濃度は、製造者の推奨に従い、ブラッドフォードアッセイ(Bioroad)によって測定した。サンプルバッファーに希釈したウシ血清アルブミン(BSA)を標品として用いた。
【0251】
溶出画分および透析溶液の
純度は、SDS−PAGE(4〜12% Invitrogen)での電気泳動により評価することができる。
【0252】
精製タンパク質の
質量は、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化)またはエレクトロスプレー法を用いて測定した。タンパク質が完全であるかどうかを決定するために、測定質量と計算質量を比較した。溶液中またはゲルのバンド中いずれかのタンパク質の同一性は、トリプシン消化後に生じたペプチドの質量測定によって確認した。ペプチドの質量は、MALDIおよび/またはタンデム質量分析と連結した液体クロマトグラフィー(LC/MS/MS)により測定した。タンパク質の同一性を確認するために、ペプチドの測定質量と計算質量を比較した。
【0253】
Mtb抗原に対する抗体の生産
種々の
Mtb抗原に対する抗体は、ウサギを2つの異なる抗原特異的ペプチドの混合物(Eurogentec; Seraing、Belgium)で免疫した後に生産された。このような15または16アミノ酸残基のペプチドは、エピトープB予測プログラムを実行した後に選択された。Rv1733
*、Rv2029
*、Rv0569、Rv1807、Rv0111、RPFB−Dhyb
*、Rv1813
*およびRv3407抗原に対する抗血清は、ウサギを0日目の2つの特異的ペプチドおよび7、10および18日目の3回のブースターで免疫した後に生成した。最初のペプチド注射の前と21日目に血液サンプルを採取した。最終的なウサギの採血は29日目に行った。Rv3478では、ウサギに対して0、22、49および77日目に2つの特異的16マーペプチドを注射した。最初のペプチド注射の前と31および59日目に血液サンプルを採取した。最終的なウサギの採血は87日目に行った。
【0254】
最終的な血清を、特異的ペプチドを用いたELISAおよび個々の
Mtb遺伝子発現プラスミドを用いたウエスタンブロット分析により評価した。
【0255】
Mtb融合タンパク質のin vitro試験
DNA媒介発現産物に対するウエスタンブロット
リポフェクタミン2000(Invitrogen;#11668−019)を用い、プロテアソーム阻害剤MG132(10μM)の存在下(トランスフェクション18時間後に増殖培地に添加)、2×10
6個のHEK293細胞を
Mtb抗原融合物または個々の遺伝子をコードする種々のプラスミド5μgでトランスフェクトした。pGWIZプラスミドを陰性対照として用いた。48時間後、培地を廃棄し、細胞を、β−メルカプトエタノール(5%v:v)を添加した450μL/ディッシュのトリス−グリシン−SDS 2×バッファー(ref:LC2676;Novex)で溶解させた。次に、溶解液を音波処理し、95℃で5分間煮沸した。30μLの細胞溶解液を、Criterion Precastゲルシステム(Biorad)を用い、プレキャスト10%Criterionゲル上で電気泳動に付した。電気泳動後、タンパク質をPVDF膜(Macherey Nagel、741260)に転写した。免疫検出は1/500希釈のモノクローナル抗Flag M2ペルオキシダーゼ(HRP)抗体(Sigma;#A8592)または1/5000希釈のモノクローナル抗Hisペルオキシダーゼ抗体(Invitrogen;#R931〜25)を用いて行った。免疫複合体は、ImmunStar WesternCキット(Biorad、ref170.5070)を用いて可視化した。
【0256】
上記のようにウサギの免疫後に得られた血清(1/1000希釈)を、Rv1733
*、Rv2029
*、Rv0569、Rv1807、Rv0111
*、Rpf−B−D、Rv1813
*、Rv3407およびRv3478のウエスタンブロット検出にも用いた。ESAT6、Ag85B
*、TB10.4およびRv2626の検出には市販の抗体を用い、それぞれ、ESAT6にはマウスモノクローナル抗体HYB076−08(Santa−Cruz;#sc−57730、1/500希釈)、Ag85B
*にはウサギポリクローナル抗血清NR−13800(BEI、1/5000希釈)、Rv2626にはマウスモノクローナル抗体26A11(Lifespan−Biosciences;#LS−C91052 1/1000希釈)およびTB10.4にはポリクローナルウサギ抗体ABIN361292(Antibodies−online、1/1000希釈)を用いた。
【0257】
MVA媒介発現産物に対するウエスタンブロット
10
6個のA549細胞に、プロテアソーム阻害剤MG132(10μM)(感染30分後に培養培地に添加)の存在下、種々のMVA産生
Mtb抗原融合物をMOI 1で感染させた。MVATGN33.1エンプティベクターを陰性対照として用いた。24時間後、培地を廃棄し、細胞を、β−メルカプトエタノール(5%v:v)を添加した300μL/ディッシュのトリス−グリシン−SDS 2×バッファー(ref:LC2676;Novex)で溶解させた。次に、溶解液を音波処理し、95℃で5分間加熱した。20μLの細胞溶解液を、Criterion Precastゲルシステム(Biorad)を用い、プレキャスト4〜15%Criterionゲル上で電気泳動に付した。電気泳動後、タンパク質をPVDF膜(Trans−blot(登録商標)Turbo(商標)トランスファーシステム(#170−4155、Biorad))に転写した。免疫検出は、上記のようにDNAプラスミドの発現産物との関連で
Mtb特異的抗体を用いて行った。免疫複合体は、ImmunStar WesternCキット(Biorad、ref 170.5070)を用いて可視化した。
【0258】
マウスモデルにおける免疫原性評価
DNA免疫プロトコール
マウスは、融合物をコードするプラスミドまたは前記融合物に含まれる個々の
Mtb抗原をコードするプラスミドの混合物のいずれかで、2週または3週間隔で3回免疫した。100μLの無菌PBS中、100μgのDNAを前脛骨筋に筋肉内経路で注射した。細胞性免疫応答を、最後のDNA注射から2週間後にELISpot IFNγアッセイにより評価した。
【0259】
MVA免疫プロトコール
MVA TB候補の免疫原性を、BALB/c、トランスジェニックHLA−A2、C57BL/6およびC3H/HeNマウスで評価した。各MVAベクターを尾の基部に、100μLのトリス−HCl緩衝およびスクロース含有バッファー中1×10
7pfuの用量で1回、皮下投与した。細胞性免疫応答を、MVA注射から7日後にELISpot IFNγアッセイにより評価した。
【0260】
ペプチドライブラリー
ペプチドライブラリーを用い、免疫マウス由来の脾細胞をex−vivoで再刺激した。より正確には、上記融合物に含まれる14総ての
Mtb抗原をカバーする679のペプチド(11アミノ酸のオーバーラッピングある15マー)を合成した(ProImmune)。ペプチドプールは、DMSO中、終濃度1μモル/Lで調製した。各
Mtb抗原の全長をカバーするためには1〜4プールが必要であった。
【0261】
Rv1733は、18および17ペプチドの2プールによりカバーされた。プール1:18ペプチドはRv1733残基62〜144をカバーし;プール2:17ペプチドはRv1733残基134〜210をカバーする。
【0262】
Rv2029は、19ペプチドの4プールによりカバーされた。プール1:19ペプチドはRv2029残基1〜87をカバーし;プール2:19ペプチドはRv2029残基77〜163をカバーし;プール3:19ペプチドはRv2029残基153〜239をカバーし;プール4:19ペプチドはRv2029残基229〜314をカバーする。
【0263】
Rv0569は、Rv0569残基1〜88をカバーする20ペプチドの1プールによりカバーされた。
【0264】
Rv1807は、最初の3プールが25ペプチド、および4つ目のプールが22ペプチドの、4プールによりカバーされた。プール1:25ペプチドはRv1807残基1〜111をカバーし;プール2:25ペプチドはRv1807残基101〜211をカバーし;プール3:25ペプチドはRv1807残基201〜311をカバーし;プール4:22ペプチドはRv1807残基301〜399をカバーする。
【0265】
Rv0111は、最初の3プールが20ペプチド、および4つ目のプールが19ペプチドの、4プールによりカバーされた。プール1:20ペプチドはRv0111残基361〜451をカバーし;プール2:20ペプチドはRv0111残基441〜531をカバーし;プール3:20ペプチドはRv0111残基521〜611をカバーし;プール4:19ペプチドはRv0111残基601〜685をカバーする。
【0266】
RpfB−Dhybは、最初の3プールが22ペプチド、および4つ目のプールが19ペプチドの、4プールによりカバーされた。プール1:22ペプチドはRpfB残基30〜127をカバーし;プール2:22ペプチドはRpfB残基117〜215をカバーし;プール3:22ペプチドはRpfB残基205〜284およびRpfD残基53〜71をカバーし;プール4:19ペプチドはRpfD残基61〜146をカバーする。
【0267】
Rv1813は、Rv1813残基34〜143をカバーする25ペプチドの1プールによりカバーされた。
【0268】
Rv3407は、Rv3407残基1〜99をカバーする22ペプチドの1プールによりカバーされた。
【0269】
Rv3478は、24ペプチドの4プールによりカバーされた。プール1:24ペプチドはRv3478残基1〜107をカバーし;プール2:24ペプチドはRv3478残基97〜203をカバーし;プール3:24ペプチドはRv3478残基193〜299をカバーし;プール4:24ペプチドはRv3478残基289〜393をカバーする。
【0270】
Rv2626は、17ペプチドおよび16ペプチドの2プールによりカバーされた。プール1:17ペプチドはRv2626残基1〜79をカバーし;プール2:16ペプチドはRv2626残基69〜143をカバーする。
【0271】
Ag85Bは、23ペプチドの3プールによりカバーされた。プール1:23ペプチドはAg85B残基39〜141をカバーし;プール2:23ペプチドはAg85B残基131〜233をカバーし;プール3:23ペプチドはAg85B残基223〜325をカバーする。
【0272】
ESAT−6は、ESAT−6残基1〜95をカバーする21ペプチドの1プールによりカバーされた。
【0273】
TB10.4は、TB10.4残基1〜95をカバーする21ペプチドの1プールによりカバーされた。
【0274】
IFNγELISpotアッセイ
免疫マウス由来の脾細胞を採取し、赤血球を溶解させた(Sigma、R7757)。2×10
5細胞/ウェルを、抗マウスIFNγモノクローナル抗体(BD Biosciences;10μg/mL、551216)をコーティングしたマルチスクリーンプレート(Millipore、MSHA S4510)において、10%FCS(JRH、12003−100M)、80U/mLペニシリン/80μg/mLストレプトマイシン(PAN、P06−07−100)、2mM L−グルタミン(Gibco、25030)、1×非必須アミノ酸(Gibco、11140)、10mM Hepes(Gibco、15630)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco、31350)および50μMβ−メルカプトエタノール(Gibco、31350)を添加したαMEM培養培地(Gibco、22571)中、10単位/mLの組換えネズミIL2(Peprotech、212−12)の存在下、陰性対照としては単独で、または
・終濃度1μモル/Lの上記ペプチドプール、
・陽性対照としては、5μg/mlのコンカナバリンA(Sigma、C5275)
・無関連ペプチド
とともに3反復で40時間培養した。
【0275】
IFNγ産生T細胞は、従前に記載されている通り(Himoudi et al., 2002, J. Virol. 76: 12735-46)、ELISpot(サイトカイン特異的酵素結合免疫スポット)アッセイにより定量した。結果は、3反復ウェルに関して得られた平均値として示す。見られた応答の陽性の実験閾値(すなわち、カットオフ)を、培地単独で見られたスポットの平均値+2標準偏差に相当する閾値を計算することにより求め、10
6細胞について報告した。CTL ELISpotリーダーに関連したテクニカルカットオフ(それを超えるとそのリーダーのCV(変動係数)が一貫して20%未満となる値)も50スポット/10
6細胞と定義された。ELISpot応答の統計分析は、クラスカル・ウォリス検定と、有意差が見られた場合にはその後にマン・ホイットニー検定を用いることによって行った。0.05以上のP値が有意と見なされる。
【0276】
マウスにおける結核菌感染に対するMtb抗原含有ワクチンの治療効力の評価
エアロコントールユニットを搭載する内蔵型ヘンダーソン装置(contained Henderson apparatus)(Hartings et al., 2004, J Pharmacol Toxicol Methods 49: 39-55)を用いて0週目に、雌C57BL/6マウス(6〜8週齢)にエアゾールチャレンジを行った。結核菌チャレンジ株H37Rv(NCTC7416)をケモスタットにて培養し(James et al., 2000, J Appl Microbiol 88: 669-77)、平均直径2μmの微粒子をCollisonネブライザーで生成し、動物の鼻に直接送達した。Collisonネブライザー内の懸濁液は、各マウス群におよそ100CFU/肺の推定吸入用量を送達するように調整した。
【0277】
マウスを、感染後10週目および14週目にMVATG18364、MVATG18376またはMVATG18377の、尾の基部の一か所への皮下投与(10
7pfu/100μL/マウス)で免疫した。一マウス群には、陰性対照としてMVATGN33.1(10
7pfu/100μL/マウス)を注射した。
【0278】
マウスを6週目から15週目の10週間、週に1回、イソニアジド(INH、25mg/kg体重)およびリファペンチン(RIF、10mg/kg体重)の強制経口投与により処置した(Aagaard et al., 2011, Nat Med, 17: 189-194から採用したプロトコール)。5匹のマウスを6週目の薬剤処置前に屠殺にした。
【0279】
処置期の終了時のクリアランスを測定するために抗生物質処置の終了時(感染15週間後)に各群のマウス5匹を屠殺し、他は21週目に屠殺した。器官(例えば、脾臓)を無菌的に摘出し、剖検当日に凍結し、細菌量分析向けの処理を行った。器官ホモジネートのサンプルの連続希釈系を7H11 Middlebrook OADC選択寒天に播種し、マイコバクテリア生菌の計数(CFU)のために最大3週間インキュベートした。細菌量データは、Log10総コロニー形成単位(CFU)として表した。
【0280】
MVA候補の治療効力を比較し、マン・ホイットニー検定を用いてランク付けした。0.05より優れたp値を有意と見なした。
【0281】
結果
実施例1:免疫原性組合せのために好適なMtb抗原の選択:
Mtbゲノムはおよそ4000の遺伝子を発現するが、これらの遺伝子産物の大多数の、
Mtb生活環における機能および役割はまだ同定されていない。
Mtbゲノムから、感染の自然経過のあらゆる相で抗TB免疫を生起することができる免疫療法ワクチンを提供するために最も適当な遺伝子/抗原セットを特定することを目的に、材料および方法に記載の通り、
Mtb抗原に関する既存のデータを利用可能な文献およびデータベースから調べた。
【0282】
これらの文献分析によって、3つの感染期の総てに属す33の
Mtb抗原、すなわち、活動期の7抗原、5つの再燃期(Rpf)抗原および19の潜伏期抗原ならびに2つのPE/PPE抗原、のセットを「予備選択」することができる。
・
活動期の抗原:ESAT−6(Rv3875)、CFP−10(Rv3874)、TB10.4(Rv0288)、Ag85A(Rv3804)、Ag85B、(Rv1886)・および2つの「ESAT−6様抗原」(Rv3620およびRv3619)。
・毒性と関連すると思われる2つの
PE/PPE抗原(Rv2608およびRv3478)。
・
再燃期の抗原:5つの既存のRpf群遺伝子(RpfA(Rv0867c)、RpfB(Rv1009)、RpfC(Rv1884c)、RpfD(Rv2389)、RpfE(Rv2450c))が予備選択された。Rpf群は、その発現が休眠細胞の再燃のために必要とされる、分泌型または膜結合型の壁分解酵素である。
・19の
潜伏期抗原は、記載されている既存の150を超える潜伏期遺伝子から予備選択された。より正確には、12がDosRレギュロンに属し、45の遺伝子のセットは、その発現が潜伏期に増強され、5つは
Mtbがin vivoで直面する潜伏条件を模倣すると思われる培養条件の際に発現が変調される遺伝子の中から選択された。3つの潜伏期抗原はまた、最近記載された前臨床期および初期臨床期に基づいて選択された(Bertholet et al., 2008, J. Immunol. 181: 7948-57; Bertholet et al., 2010, Sci Transl Med 2: 53ra74, Mollenkopf et al., 2004, Infect Immun 72: 6471-9)。要するに、予備選択された19の潜伏期抗原は、Rv1733c、Rv2029c、Rv1735、Rv1737、Rv2628、Rv0569、Rv2032、Rv2627c、Rv0111、Rv3812、Rv1806、Rv1807、Rv0198、Rv2626、Rv0081、Rv2005c、Rv2660、Rv3407およびRv1813であった。
【0283】
次に、33の予備選択
Mtb抗原のランク付けを行うために二次選択を行った。
Mtb抗原の二次選択は、免疫能および防御能(最高スコアの保持)ならびに生化学的予測を反映するデータマイニングベースの選択プロセスに基づいた(材料および方法参照)。
【0284】
下記の抗原が選択された。
・
潜伏期抗原: Rv1733、Rv2029、Rv0569、Rv0111、Rv1807およびRv3407。Rv2626およびRv1813も、それらの極めて良好なデータマイニングスコアおよび生化学的予測スコアのために選択された。
・
活動期抗原: ESAT−6(Rv3875)、TB10.4(Rv0288)、Ag85B(Rv1886)およびRv3478。予備選択された活動期Rv3619抗原は良好なデータマイニングスコアを有したが、ESAT−6様タンパク質は、ESAT−6自体よりも良好なスコアを示しながら、選択リストに保持されなかったことに留意しなければならない。別の例として、活動期Rv2608およびRv3478抗原は同じデータマイニングスコアを有していたが、ヒトコホート研究におけるより高い奏功者パーセンテージを誘導するその能力に基づいてRv3478が選択された。
・
再燃期抗原: RpfBおよびRpfD。5つの再燃期遺伝子産物のうち、3つのRpf(RpfB、DおよびE)が、ランニングデータマイニングスコアリングプロセスの後に極めて類似したスコアで目立ったが、主に2つの理由でRpfBおよびDのみが選択された。第一に、5つのRpfのうち4つの間で細胞応答および体液性応答に関して交差反応性が報告されている(Yeremeev et al., 2003, Infect Immun 71: 4789-94)、ただし、本発明者らの見解ではRpfBはその選択が妥当であると思われた。第二に、配列分析の後に、RpfBとDの間のリゾチームドメイン(LD)の配列相同性がRpfBとEの間の相同性よりも低いことに基づいてRpfEの代わりにRpfDが選択された。従って、5つのRpfに対する免疫応答を生じるためには、RpfBとDを保持することで十分であると思われる。
【0285】
実施例2:融合物の設計
材料および方法に記載されているように選択された
Mtb抗原の生化学的特性および/または生物学的機能を予測するために、大規模in silico構造予測および文献分析を行った。
【0286】
選択された14の抗原候補を、違うタイプの分析を必要とする3群に分類した。
・種々のウイルスベクターでのそれらの発現に関して利用できるデータがある抗原、すなわち、MVA(Kolilab et al. 2010, Clin Vaccine Immunol 17: 793-801)、ワクシニアウイルス(Malin et al. 2000, Microbes Infect 2: 1677-85)およびアデノウイルス(Mu et al., 2009, Mol Ther 17: 1093-100; Dietrich et al. 2005, J Immunol 174: 6332-9;およびHavenga et al. 2006; J Gen Virol 87: 2135-43)におけるAg85B ESAT−6およびTB10−4。これらの場合、文献の分析が、ベクター構築において挿入すべき配列を設計するための主要な情報源となった。
・ウイルスベクター化に関して報告されているデータは無いが、既知の構造を有するタンパク質との同一または相同な抗原。これらの場合、構造データが、ベクター構築において挿入すべき
Mtb配列を設計するための主要な情報源となった(Rv2626、Rv2029、RpfB、RpfDおよびRv0569)。
・ウイルスベクター化に関して報告されているデータが無く、既知の構造を有するタンパク質との相同性も無い抗原。これらの場合、in silico生化学的解析および予測を用いて、抗原の特性評価を行い、ベクター構築において挿入すべき
Mtb配列を設計した(Rv0111、Rv3407、Rv3478、Rv1807およびRv1813)。
【0287】
Ag85B抗原の設計
Ag85Bは、KolilabのMVAベクターでは保存されているが、Malinのワクシニアウイルスおよびアデノウイルス構築物では保存されていない、40残基長のペプチドシグナルを示す。Ag85BシグナルペプチドはTMドメインと予測され、本発明者らは本発明のベクター構築においてこのAg85Bペプチドシグナルを保持しなほうがよいと考えた。本明細書に記載のベクター構築において使用すべきAg85B
*の推奨される一次構造は、配列番号20で示されるアミノ酸配列に相当する。
【0288】
ESAT−6抗原の設計
ESAT−6は、CFP−10とヘテロ二量体複合体を形成し、このヘテロ二量体相互作用は両タンパク質の折り畳みを誘導する予想される。CFP10と複合体を形成した際、ESAT−6だけがモルテン・グロビュール様状態およびヘリックス−ターン−ヘリックスをとる。従って、そのパートナーと結合したESAT−6は、単独で発現されるESAT−6よりも安定となり得る。しかしながら、本明細書に記載のベクター構築において使用すべきESAT−6の推奨される一次構造は、最終的にその開始Metを欠く(例えば、融合物の内部の位置にある場合)全長タンパク質(配列番号14で示されるアミノ酸配列)に相当する。
【0289】
TB10−4(Rv0288)の設計
TB10−4は、ESAT−6と同じタンパク質ファミリーに属す。TB10−4のNMR構造は、それがRv0287とヘテロ二量体複合体(その構造を安定化させると思われる)を形成することを示した。ポックスウイルスによるTB10−4発現を報告している刊行物は無いが、アデノウイルスベクターにおいて、Ag85AまたはAg85BのいずれかのC末端部分と融合した形で全長TB10−4の発現が報告されている。これに基づけば、本明細書に記載のベクター構築において使用すべきTB10.4の推奨される一次構造は、最終的にその開始Metを欠く全長タンパク質(配列番号2で示されるアミノ酸配列)に相当する。
【0290】
Rv2626の設計
Rv2626の結晶化(Sharpe et al., 2008, J Mol Biol 383: 822-36)は、サブユニット内およびサブユニット間ジスルフィド結合を有するホモ二量体として発現されることを示した。Rv2626に関して予測されるシグナルペプチドは無い。Rv2626は極めてよく定義された折り畳みを有するので、本明細書に記載のベクター構築において使用すべきRv2626の推奨される一次構造は、最終的にその開始Metを欠く全長タンパク質(配列番号10で示されるアミノ酸配列)に相当する。
【0291】
Rv0569の設計
Rv0569構造は知られていないが、このタンパク質はRv2302と、(88残基のうち)76のアミノ酸オーバーラップ領域において62%の同一性(81%の類似性)を示す。この後者の構造はNMRにより解明されており(Buchko et al., 2006, Bacteriol 188: 5993-6001)、逆平行β−シートコアとC末端α−ヘリックスを有する、溶液中で極めて良好に折り畳まれた構造を示した。このタンパク質に関してコイルドコイル予測は無い。Rv0569タンパク質に関して既知の機能は無い。潜在的に極めてよく定義された折り畳みのために、本明細書に記載のベクター構築において使用すべき
Mtb Rv0569の推奨される一次構造は、最終的にその開始Metを欠く全長タンパク質(配列番号3で示されるアミノ酸配列)に相当する。
【0292】
Rv2029の設計
Rv2029構造は未知であるが、このタンパク質は、大腸菌のホスホフルクトキナーゼ−2(pfk2)と、(339のうち)310aaのオーバーラップ領域で35%の同一性を示す。さらに、PROSCAN検索によれば、完全に保存された糖鎖キナーゼシグネチャーが同定された。従って、Rv2029は、おそらく
Mtbにおいてホスホフルクトキナーゼ活性を有する。ホスホフルクトキナーゼは、解糖の際にフルクトース−6−リン酸のリン酸化を触媒する。大腸菌pfk2構造は、ATPが結合している場合は四量体であり、培地中にATPが存在していない場合には二量体である(酵素活性のアロステリックな調節)。この大腸菌酵素では、C末端の最後の4つの残基の欠失が、ATP誘導性の四量体形成を完全に阻害する。従って、Rv2029のオリゴマー化のヘテロ性(二量体型と四量体型の混在)を回避するためには、このC末端部分の欠失(すなわち、最後の25残基の欠失)が推奨される。さらに、Rv2029の酵素活性を消失させるためには、突然変異D265N(Metイニシエーターから始めれば265番またはMet無しでは264番)が、大腸菌pfk−2におけるこの酵素活性がほぼ完全に消失させるので推奨される(Cabrera et al., 2010, Arch Biochem Biophys 502: 23-30)。これに基づけば、本明細書に記載のベクター構築において使用すべきRv2029抗原(Rv2029
*)の推奨される一次構造は、配列番号21で示されるアミノ酸配列に相当する。
【0293】
RpfBおよびRpfDの設計
再燃促進因子(Resuscitation Promoting Factor)(Rpf)は、細菌の再活性化(休眠から増殖への遷移)の際に産生される分泌型タンパク質である。結核菌は5つの異なるRpf(A〜E)を有し、その総てが、保存されている触媒ドメイン(リゾチーム様ドメイン)を含む。このドメインの他に、これらの5つのタンパク質間で有意な類似性は無い。RpfB構造は、この分子の約半分(残基194〜362)に関して得られており、シグナルペプチドが予測されている(残基1〜29;Ruggiero et al. 2009, J Mol Biol 385: 153-62)。全長タンパク質(そのシグナルペプチドを欠く)は、大腸菌で発現される場合には単量体として挙動する。
【0294】
RpfBに関して、構造が得られてないタンパク質の部分(30〜193)を解析するために、in silico予測および解析を行った。シグナルペプチド以外には、膜貫通ドメインは予測されなかった。HCAプロット、二次構造予測および天然変性領域予測は、30〜193領域のよく定義されている折り畳みと一致する。PROSCANを用いたコイルドコイル予測および既知のモチーフに関する検索では、有意な結果が得られなかった。
【0295】
触媒ドメインの活性は、スメグマ菌(
Mycobacterium smegmatis)再燃アッセイ(突然変異E292K;Mukamolova et al. 2006, Mol Microbiol 59: 84-98)において、ミクロコッカス・ルテウス(
Micrococcus luteus)Rpfの再燃活性に不可欠な保存された残基に依存することが示された。さらに、2つの残基T315およびQ347がリゾチームの基質結合に関与しており、RpfBでは保存されている(Cohen-Gonsaud, et al. 2005, Nat Struct Mol Biol 12, 270-3)。
【0296】
さらに、その触媒ドメインを有するRpfB分子をRpf群の中でも最も発散度の高い触媒ドメイン(すなわち、RpfD触媒ドメイン)で置換したものに相当するRPFB−Dハイブリッドを設計することが選択された。従って、ウイルスベクターで発現させるべきRPFB−Dハイブリッドは、3つの突然変異(E292K、T315AおよびQ347A)によって中和された触媒活性を有し、シグナルペプチドを欠くハイブリッドタンパク質である。融合物において使用されるこのRPFB−Dハイブリッドタンパク質の推奨される一次構造は、RpfBの配列番号31残基10〜残基283で示されるアミノ酸配列とRpfDの残基51〜残基147が融合し、最終的に開始Metを欠くものに相当する。
【0297】
Rv1807の設計
Rv1807構造は公開されていないが、PDBデータベースに対するBLAST検索は、ある
Mtb PPEタンパク質(Rv2430)の最初の150残基とのみマッチを示した。PE/PPEは、N末端部分にPE(プロリン、グルタミン酸)モチーフまたはPPE(プロリン、プロリン、グルタミン酸)モチーフを共通に持つ大きな
Mtbタンパク質ファミリーである(100前後のPEおよび60PPEメンバー)。PEタンパク質はPPEとのヘテロ二量体として発現され、それらの機能はまだ知られていない。UNIPROT−SWISSPROTに対するBLAST検索ではいくつかのマッチを示したが、それらは総て付加的
Mtb PPEであり、さらなる情報を得ることはできなかった。
【0298】
大腸菌では、可溶性PPE(Rv2430)またはPE(Rv2431)の発現はヘテロ二量体として発現される場合にのみ可能であるように見える(Strong et al. 2006, Proc Natl Acad Sci 103: 8060-5)。これらの著者らは、大腸菌において単独で発現されるRv1807が封入体を形成することを報告している。PROSCAN検索は、既知のモチーフとの有意なマッチを示さなかった。このタンパク質に関しては、シグナルペプチドも膜貫通ドメインも報告は無く、予測もされていない。HCAプロットならびに二次構造予測は、最後の60〜70残基の領域以外は、タンパク質全体のよく定義された折り畳みと一致していた。さらに、最後の60残基は、天然変性領域予測を用い、折り畳まれていないと予測されるが、Rv1807に対するコイルドコイル予測では有意な結果は得られなかった。
【0299】
ESAT6およびTB10−4については、Rv1807とそのパートナー(すなわち、Rv1806)の共発現は、タンパク質の安定性と従って潜在的にその免疫原性にも、おそらく有利な影響を与える。誤った折り畳みのタンパク質(単量体型)の発現は、組換えベクターの安定性を損なうおそれがある(タンパク質毒性)。さらに、Rv1807の非折り畳みC末端部分も免疫原性および/または組換えウイルスの安定性のいずれにも不利な影響を持つおそれがある。融合物において使用されるRv1807の推奨される一次構造は、全長タンパク質(配列番号6)に相当する。全長抗原で問題がある場合には、最後の60残基が削除されたC末端切断抗原(配列番号18に示される通り)を使用することができる。
【0300】
Rv3478の設計
Rv3478は、もう1つのPPEタンパク質である。そのPPEドメインは、Rv1807のPPEドメインと57%同一である(2つの全長タンパク質間で41%の同一性)。UNIPROT−SWISSPROTに対するBLAST検索ではいくらかのマッチを示したが、これらは総て他の
Mtb PPEであった。HCAプロットは、タンパク質配列全域に疎水性のパッチの存在を示した。言い換えれば、HCAプロットは、Rv3478において非折り畳み親水性領域を示さなかった。しかしながら、Rv1807では、Rv3478の最後の40〜50残基は折り畳まれていないと予測される(二次構造および天然変性予測の両方に基づく)。このタンパク質に関しては、シグナルペプチドも膜貫通ドメインも報告は無く、予測もされていない。Rv3478に対するコイルドコイル予測では有意な結果は得られなかった。Rv1807については、推奨される一次構造は全長タンパク質(配列番号13)または、問題があれば、最後の40残基が削除されたC末端切断抗原(配列番号24に示される通り)である。
【0301】
Rv0111の設計
Rv0111は、おそらくアシルトランスフェラーゼ活性を有する膜タンパク質であると予測される。残基58〜427にわたるDAS、TMHMMおよびTopPredにより、10の膜貫通ドメインが予測される。シグナルペプチドは予測されなかった。二次構造は一次構造全域で予測され、449〜469に、予測天然変性領域に相当するギャップを持つ。Rv0111に対するコイルドコイル予測では、有意な結果は得られなかった。
【0302】
Proscan分析では、80%以上の類似性を有する4つのヒット、すなわち、アルド/ケトレダクターゼ酵素部位、アシルトランスフェラーゼリポイル結合部位、糖輸送タンパク質シグネチャーおよび真核生物リポカリンタンパク質が得られた。最初の3つのシグネチャーはこのタンパク質の最初の300残基内にあるので、潜在的生物活性を回避するために、タンパク質の少なくともこの部分を除去することが推奨される。これにより、タンパク質の膜貫通ドメインの大部分も取り除くことができる。従って、ウイルスベクターにおいて使用すべきRv0111の推奨される一次構造は、このタンパク質のC末端部分(例えば、配列番号15に示されるような天然抗原の残基393〜685)であり、分泌型構築物の場合には原形質膜係留のためにTMを1つだけ備える。発現に問題があれば、TMドメインを欠いたさらなる末端切断抗原(配列番号15の残基37で始まる天然Rv0111の残基429〜685)を使用することができる。
【0303】
Rv1813の設計
Rv1813構造は公開されておらず、PDBに対するBLAST検索でもマッチは得られなかった。Rv1813は小タンパク質(143残基)であり、シグナルペプチド(1〜32)を含み、膜貫通ドメインを欠くと予測される。このタンパク質は、Uniprot−Swissprotデータベースの他のタンパク質と有意な相同性を示さない。HCAプロット、二次構造予測および天然変性領域予測は総て、タンパク質全体のよく定義された折り畳みと一致する。コイルドコイル予測では、有意な結果は得られなかった。TBベースでは機能は報告されておらず、PROSCAN検索では、既知のモチーフとの有意なマッチは得られなかった。従って、ウイルスベクターにおいて使用すべきRv1813の推奨される一次構造は、そのシグナルペプチド(残基1〜34)を欠く全長タンパク質であり場合のアミノ酸配列は配列番号19で示される。
【0304】
Rv3407の設計
Rv3407構造は公開されておらず、PDBに対するBLAST検索でもマッチは得られなかった。Rv3407は小タンパク質(99残基)であり、Uniprot−Swissprotデータベースの他のタンパク質と有意な相同性は無い。このタンパク質に関しては、シグナルペプチドも膜貫通ドメインも報告は無く、予測もされていない。HCAプロットおよび二次構造予測は、タンパク質全体のよく定義された折り畳みと一致した。しかしながら、天然変性領域予測は、定義された構造において最後の33残基は折り畳まれていない可能性があることを示した。HCAおよび二次構造予測とは一致しないこの最後の結果は、パートナータンパク質と結合した際に折り畳まれるMORE(「分子認識エレメント(Molecular Recognition Element)」)のシグネチャーであり得る。Rv3407の場合、C末端αヘリックスは、Rv3407がそのパートナーと結合した場合にのみ存在し得る。コイルドコイル予測では、有意な結果は得られなかった。このタンパク質に関してTBベースでは機能は報告されておらず、PROSCAN検索では、既知のモチーフとの有意なマッチは得られなかった。Rv3407の推奨される一次構造は、全長タンパク質(配列番号12)である。安定性に問題があれば、最後の33残基が削除されたC末端端切断抗原(配列番号23に示される通り)を使用することができる。
【0305】
Rv1733の設計
Rv1733は、UNIPROT−SWISSPROTおよびTBベースによれば、2つの膜貫通ドメインを有する膜タンパク質であると予測される(これはDAS、TMHMMおよびTopPredを用いた場合にも予測される)。最初のTMドメインはシグナルペプチドと予測された。このタンパク質では、これらの膜貫通ドメインの他に、二次構造はほとんど予測されない。HCAプロットは、2つの膜貫通ヘリックス間に疎水性パッチがほとんど存在しないことを示す。最後に、これら2つの膜貫通ヘリックス間に天然変性領域(約20残基長)が予測された。これらの結果を総て併せると、膜貫通ドメインの近傍におそらくルーズな折り畳みがあることが示される。そのシグナルペプチドを欠くRv1733に対するPROSCAN検索では、既知のモチーフとの有意なマッチは得られなかった。Rv1733に対するコイルドコイル予測では、有意な結果は得られなかった。従って、ウイルスベクターにおいて使用すべきRv1733の推奨される一次構造は、配列番号17示されるように、そのシグナルペプチド(最初の62の残基)を欠く全長タンパク質である。あるいは、全長Rv1733(配列番号5)も使用可能である。
【0306】
実施例3:Mtb遺伝子融合物の構築
12の異なる融合タンパク質を
図1および表3に示されるように作出した。より具体的には、生化学的合理性に基づき、それぞれ下記のような5つの融合物を設計した:
・融合物番号3(RPFB−Dhyb
*);
・融合物番号5(Rv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807);
・融合物番号6(Ag85B
*−Rv2626−RPFB−Dhyb
*−Rv1733
*);
・融合物番号8(Ag85B
*−Rv2626−
Rv1733
*);および
・融合物番号14(Rv2029
*−TB10.4−ESAT6−Rv0111
*)。
【0307】
前記融合物を設計するために下記の生化学的合理性に従った。
・2つの二量体タンパク質(すなわち、Rv2626およびRv2929
*)は、ステリッククラッシュを回避するために同じ融合物において融合させるべきでない。
・2つの膜タンパク質(すなわち、Rv1733
*およびRv0111
*)は、潜在的毒性問題を回避するために同じ融合物において使用されるべきでない。
・TMを有するタンパク質(Rv1733
*およびRv0111
*)は、分泌型構築物のためには原形質膜係留を可能とするように融合物の末端に挿入されるべきである。
・可能であれば、融合タンパク質は、その融合物の残りの部分に「シャペロン」効果をもたせるためには、十分な折り畳みを持つタンパク質(すなわち、Ag85B
*、Rv2029
*、Rv2626、Rv0569、RPFB−Dハイブリッド
*)で始めるべきである。
・3つの融合物を作製すること、そのうち2つは抗原の最小セット(すなわち、Ag85B
*、Rv2029
*、Rv2626、Rv0111
*、Rv1733
*、TB10−4、ESAT−6、RPFB−Dハイブリッド
*)を有し、最後の融合物は抗原の残りの部分(任意選択)(すなわち、Rv0569、Rv1813
*、Rv3407、Rv1807、Rv3478)を有する。
【0308】
他方、融合物はまた、TB疾患の相に対しても設計された。融合物番号2は、活動期抗原(Ag85B
*−TB10.4−ESAT6)を含み、融合物番号4は活動期抗原および再燃期抗原(RPFB−Dhyb
*−Ag85B
*−TB10.4−ESAT6)を含む。融合物番号13は、潜伏期抗原(Rv2029
*−Rv2626−Rv1733
*−Rv0111
*)から構成される。
【0309】
材料および方法に記載されているように、一連のペプチド、すなわち、コードされる遺伝子産物の検出を容易にすることを目的としたN末端FlagタグおよびC末端c−mycおよびHisタグペプチド、ならびに免疫原性活性を増強するためのN末端シグナルおよびC末端膜係留ペプチド(Rv0111
*またはRv1733
*で終わる融合物には、これらのタンパク質がすでにこのようなドメインを含んでいるので、TMドメインの付加は必要でないことに留意)がそれぞれ
Mtb抗原融合物に付加された。
【0310】
比較として、コードされる
Mtb抗原の細胞質発現を評価するために、SSおよびTMペプチドを欠いた融合物も構築した。融合物番号3(pTG18267)、番号5(pTG18269)、番号2(pTG18266)および番号4(pTG18268)をSSペプチドおよびTMペプチドから削除し、融合物番号12(pTG18307)、番号9(pTG18295)、番号10(pTG18296)および番号11(pTG18297)を得た。N末端FlagタグおよびC末端c−mycおよびHisタグはこれらの構築物において保持した。
【0311】
【表3】
【0312】
比較のため、上記融合物において使用した個々の
Mtb遺伝子をコードするプラスミドはPCRにより増幅し、または遺伝子配列がGeneartにより合成された。より正確には、Rv3407、Rv0569、Rv1807、Rv1813
*およびRv3478を増幅するためにはpTG18269を鋳型として用い、Rv2626を増幅するためにはpTG18323を鋳型として用いた。ESAT6、Rv1733
*、Ag85B
*、TB10−4、Rv0111
*およびRv2029
*は合成遺伝子として作製した。
【0313】
個々の遺伝子は融合物と同じコンテキストに置く、すなわち、pGWizのCMVプロモーターの下流に挿入し、5’側はFlagと、3’側はc−myc−His配列と融合した。Rv1733
*およびRv0111
*タンパク質はTMドメインを含むので、狂犬病ウイルスERA株の糖タンパク質前駆体のN末端に存在するシグナルペプチドをFlag配列の上流に融合させた。作出したプラスミドをそれぞれpTG18300(Rv3407)、pTG18301(Rv0569)、pTG18302(Rv1807)、pTG18303(Rv1813
*)、pTG18304(Rv3478)、pTG18305(Rv2626)、pTG18308(ESAT6)、pTG18309(Rv1733
*)、pTG18310(Ag85B
*)、pTG18315(TB10.4)、pTG18329(Rv0111
*)、pTG18317(Rv2029
*)と呼称した。
【0314】
種々の融合タンパク質を、対応する発現プラスミドを導入した後に、真核生物発現系で評価した。発現はウエスタンブロットにより評価し、免疫原性活性は、マウスのDNA免疫の後にELISpot IFNγアッセイにより評価した。可能であれば、細胞質型(SSおよびTMを欠く場合)および膜係留型発現の免疫原性、ならびに融合物により提供された免疫原性と個々の
Mtb抗原を発現するプラスミドの混合物を用いた場合に得られた免疫原性を比較した。
【0315】
実施例4:Mtb抗原および融合物の発現分析
個々の発現であれ融合物としての発現であれ、
Mtb遺伝子の発現は、トランスフェクトHEK293細胞から得られた細胞溶解液からウエスタンブロットにより解析した。
【0316】
4.1 個々のMtb抗原をコードするプラスミドでトランスフェクトした細胞溶解液のウエスタンブロット解析
個々の
Mtb抗原の免疫検出は、発現カセット(例えば、抗Flag M2ペルオキシダーゼ(HRP)抗体、モノクローナル抗c−mycペルオキシダーゼ抗体およびモノクローナル抗Hisペルオキシダーゼ抗体)に含まれるタグペプチドに対する抗体、または
Mtb抗原に特異的な抗体を用いて行った。具体的には、Rv1733
*、Rv2029
*、Rv0569、Rv1807、Rv0111
*、Rpf−B−D、Rv1813
*、Rv3407、およびRv3478の検出のためにはウサギの免疫後に得られた血清(材料および方法参照)を用い、ESAT6、Ag85B
*、TB10.4およびRv2626の検出のためには市販の抗体を用いた。
【0317】
結果を表4にまとめる。より具体的には、用いた免疫検出系(抗Flag、抗His抗体、特異的ウサギ血清および市販の抗体)によらず、総ての個々のタンパク質について、予測されたサイズに相当するバンドが検出された。いくつかのタンパク質では、用いた免疫検出系によっては、付加的な産物も検出された。さらに、Rv3407以外は高レベルの発現が検出され、TB10.4およびESAT6は比較的低かった。代表的な
Mtb抗原のパネルに関する発現検出の例を
図2に示す、すなわち、Rv2029
*(
図2A)、RPFB−Dhyb(
図2B)、ESAT6(
図2C)およびRv2626(
図2D)。
【0318】
【表4】
【0319】
4.2 Mtb抗原融合物をコードするプラスミドでトランスフェクトされた細胞溶解液のウエスタンブロット解析
HEK293細胞を、種々の
Mtb遺伝子融合物を発現するプラスミドでトランスフェクトし、発現産物を上記と同じ条件でウエスタンブロットにより解析した。トランスフェクションは、プロテアソーム阻害剤MG132の存在下、また不在下でも行った。この場合にもまた、免疫検出は抗Flag M2ペルオキシダーゼ(HRP)抗体、モノクローナル抗c−mycペルオキシダーゼ抗体およびモノクローナル抗Hisペルオキシダーゼ抗体ならびに抗
Mtb特異的抗体を用いて行った。
【0320】
タグを有する融合物の予測サイズを以下に示す。
融合物番号2(pTG18266):63.6kDa
融合物番号3(pTG18267):49.0kDa
融合物番号4(pTG18268):99.7kDa
融合物番号5(pTG18269):122.0kDa
融合物番号6(pTG18270):103.5kDa
融合物番号8(pTG18272):67.3kDa
融合物番号9(pTG18295):112.9kDa
融合物番号10(pTG18296):53.8kDa
融合物番号11(pTG18297):90.0kDa
融合物番号12(pTG18307):39.3kDa
融合物番号13(pTG18323):101.5kDa
融合物番号14(pTG18324):90.6kDA
【0321】
Mtb抗原融合物は総て、抗Flagモノクローナル抗体および抗Hisモノクローナル抗体を用いて検出した。
Mtb融合産物はまた、pTG18266、pTG18267、pTG18268およびpTG18269を除き、抗c mycモノクローナル抗体でも検出した。細胞質対応物(pTG18296、pTG18307、pTG18297およびpTG18295)はこの抗myc抗体で十分検出されたことから、これらの融合物では隣接するTMドメインのためにc−mycエピトープに接近できない可能性がある。
図3は、抗Flag免疫検出後の、潜伏期抗原(融合物番号9をコードするpTG18295)、活動期抗原(融合物番号10をコードするpTG18296)、再燃期抗原(融合物番号12をコードするpTG18307)および再燃期および活動期の両抗原(融合物番号11をコードするpTG18297)を包含する
Mtb融合物のウエスタンブロット解析を示す。抗His抗体による免疫検出も同じ発現パターンを示した。
【0322】
図4は、対応する特異的血清を用いた免疫検出後のTB10.4(
図4A)、Rv0569(
図4B)およびRv2626(
図4C)を含む
Mtb融合物、それぞれTB10.4を含有する融合物番号2(pTG18266)、番号10(pTG18296)、番号4(pTG18268)、番号11(pTG18297)、番号14(pTG18324);Rv0569を含有する融合物番号5(pTG18269)および番号9(pTG18295)、ならびにRv2626を含有する融合物番号13(pTG18323)、番号6(pTG18270)および番号8(pTG18272)のウエスタンブロット解析を示す。pGWizは陰性対照として、TB10.4をコードするpTG18315は陽性対照として示す。
【0323】
免疫検出系によらず、総ての融合物について予測されたサイズに相当するバンドが強く示され、いくつかの場合では、付加的融合産物も見られた。特に、pTG18270、pTG18272およびpTG18323では二量体が検出された。これらの3つの融合物は、還元条件に耐性のある二量体を形成する能力を持つRv2626を含んでいる。抗Flag抗体および抗His抗体による免疫検出は、pTG18323およびpTG18269に関して、一部、付加的な、マイナーなタンパク質分解産物が強く示された。さらに、pTG18266、pTG18268、pTG18269、pTG18270、pTG18272、pTG18323およびpTG18324では、抗Flag抗体および抗His抗体で、予測されたサイズよりも大きい付加的産物も検出された。これらのバンドは、in vitroにおけるN−グリコシダーゼF処理により実証されたように(すなわち、細胞抽出物のN−グリコシダーゼ処理の後に予測されたサイズに発現産物が見られた)、N−グリコシル化産物に相当する。融合物番号4(pTG18267、RpfB−D
*)を除き、シグナルペプチドを含有する総ての融合物は、N−グリコシル化産物をもたらす。N−グリコシル化産物は、抗原特異的抗体でも検出され、Rv2626を含有する融合物pTG18270、pTG18272およびpTG18323では二量体もまた検出された。一部の融合物で特異的血清を用いた場合にも、融合物および血清にもよるが、タンパク質分解産物の証拠が得られた(データは示されていない)。例えば、pTG18269では約40kDa、pTG18295では約36kDaと38kDaの付加的バンドがRv3407特異的血清を用いて検出されたが、Rv0569特異的血清を用いた場合には見られなかった。
【0324】
総ての融合物について同等の高レベルの発現が見られ、MG132の存在下で高い量の産物が検出された。膜係留融合物(pTG18269、pTG18268)の発現レベルは、細胞質融合物(pTG18296)よりも良好に発現されたpTG18266を除き、それらの細胞質対応物(pTG18295、pTG18297)を用いた場合に検出された発現レベルに匹敵していた。融合物番号5(pTG18269)はRv1807特異的抗体を用いた場合には極めて弱い検出であったが、細胞質融合物(pTG18295)の場合にはそうではなかった。Rv1807特異的エピトープは、隣接するTM配列のために、この融合物内では接近できない可能性がある。
【0325】
実施例5:DNA免疫評価
種々の
Mtb抗原融合物の免疫原性活性を、DNA免疫後の種々のマウスモデルで評価した。
【0326】
5.1. 活動期のMtb抗原に基づく融合物により誘導される免疫原性の評価
細胞膜係留型(SS/TM:pTG18266)または細胞質型(pTG18296)のいずれかで融合物「Ag85B−TB10.4−ESAT6」を発現するプラスミドを用い、BALB/cマウスに筋肉内経路から3週間隔で3回の免疫を行った。比較のため、融合物に含まれる個々の
Mtb抗原をコードするプラスミドの混合物(pTG18310(Ag85B)+pTG18315(TB10.4)+pTG18308(ESAT6))および陰性対照としてのエンプティpGWizでもマウスを免疫した。細胞性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後、材料および方法に記載の種々のペプチドプールによるex vivo再刺激の後に、ELISpot IFNγアッセイによって評価した。
【0327】
図5に示されるように、pTG18266(係留型のAg85B−TB10.4−ESAT融合物を発現する)で免疫した総てのマウスで、Ag85BおよびTB10.4抗原に対して強い細胞応答が誘導され、一方、8匹の動物のうち6匹でESAT−6に対するIFNγ産生細胞が生成された(
図5a)。pTG18296(細胞質型のAg85B−TB10.4−ESAT融合物を発現する)で免疫したマウスでも、Ag85BおよびTB10.4抗原に対するIFNγ産生細胞の活性化が検出されたが、係留型融合物により誘導されたものに比べて低いレベルであり、一方、ESAT−6に対しては極めて弱い応答が検出されたに過ぎなかった(
図5b)。非常に興味深いことに、
図5a/5bおよび
図5cを比較すると、個々のプラスミドから独立に発現される場合(pTG18310、pTG18315およびpTG18308の混合物)ではなく、Ag85B、TB10.4およびESAT−6が融合タンパク質(pTG18266およびpTG18296)として発現される場合に、3つの抗原総てに対して最も強い応答が検出された。予想されたように、エンプティプラスミドによる免疫は特異的免疫応答を誘導しなかった(
図5d)。
【0328】
よって、少なくとも活動期の
Mtb抗原では、これらの結果によれば、得られる
Mtb抗原融合物の免疫原性活性を最適化するためには、細胞表面で発現される抗原融合物(SSおよびTMペプチドを有する)設計することの利益が強調される。
【0329】
5.2. 活動期および再燃期のMtb抗原に基づく融合物により誘導される免疫原性の評価
細胞膜係留型(SS/TM:pTG18268)または細胞質型(pTG18297)のいずれかで融合物「RpfB−Dhyb−Ag85B−TB10.4−ESAT6」を発現するプラスミドを用い、BALB/cマウスに筋肉内経路から3週間隔で3回の免疫を行った。比較のため、融合物に含まれる個々のTB抗原をコードするプラスミドの混合物(pTG18307(RpfB−Dhyb)+pTG18310(Ag85B)+pTG18315(TB10.4)+pTG18308(ESAT6))および陰性対照としてのエンプティpGWizでもマウスを免疫した。細胞性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後、材料および方法に記載の種々のペプチドプールによるex vivo再刺激の後に、ELISpot IFNγアッセイによって評価した。
【0330】
図6に示されるように、pTG18268プラスミド(係留型のRpfB−DHyb−Ag85B−TB10.4−ESAT−6融合物を発現する)による免疫は、対応するペプチドプールによるex vivo再刺激後に高レベルのIFNγ産生細胞が検出されることを特徴とする、RpfB−DHyb、Ag85BおよびTB10.4抗原に特異的な強い応答をもたらしたが、ESAT−6に対するIFNγ産生細胞は少数の動物で低いレベルで誘導されたに過ぎなかった(
図6a)。pTG18297(細胞質型のRpfB−DHyb−Ag85B−TB10.4−ESAT−6融合物を発現する)で免疫されたマウスでも、RpfB−DHyb、Ag85BおよびTB10.4抗原に対するIFNγ産生細胞の活性化が検出されたが、係留型融合物により誘導されたものに比べて低いレベルであり、一方、ESAT−6に対しては極めて弱い応答が検出されたに過ぎなかった(
図6b)。ESAT−6を除き、
図6cに示されるように、個々のプラスミドから独立に発現される場合(pTG18307+pTG18310+pTG18315+pTG18308の混合物)ではなく、融合タンパク質(pTG18268およびpTG18297
図6aおよび6b)として発現される場合に、RpfB−DHyb、Ag85BおよびTB10.4に対して最も強い抗
Mtb応答が得られた。予想されたように、エンプティプラスミドによる免疫は特異的免疫応答を生じなかった(
図6d)。
【0331】
5.3. 再燃期のMtb抗原に基づく融合物による誘導される免疫原性の評価
細胞膜係留型(SS/TM:pTG18267)または細胞質型(pTG18307)のいずれかで融合物「RpfB−Dhyb」を発現するプラスミドを用い、BALB/cマウスに筋肉内経路から3週間隔で3回の免疫を行った。エンプティpGWizを陰性対照として用いた。細胞性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後、材料および方法に記載の4つのペプチドプールによるex vivo再刺激の後に、ELISpot IFNγアッセイによって評価した。
【0332】
図7に示されるように、pTG18267(SS/TMペプチドを有する係留型のRpfB−DHyb融合物を発現する)を接種したマウスにおいて高レベルのIFNγ産生細胞が見られ、このことは、これらのマウスが強い特異的細胞応答を惹起したことを示す(
図7a)。pTG18307(細胞質型のRpfB−DHyb融合物を発現する)による免疫もIFNγ産生細胞の活性化をもたらしたが、やや程度が低かった(
図7b)。さらに、この応答は、pTG18267で処置した動物群内の方が、pTG18307で処置した群内よりも均質であると思われた。予想されたように、エンプティプラスミドによる免疫は特異的免疫応答を生じなかった(
図7c)。
【0333】
5.4. 潜伏期のMtb抗原に基づく融合物により誘導される免疫原性の評価
細胞膜係留型(pTG18269)または細胞質型(pTG18295)のいずれかで融合物「Rv0569−Rv1813−Rv3407−Rv3478−Rv1807」を発現するプラスミドを用い、BALB/cマウスに筋肉内経路から3週間隔で3回の免疫を行った。比較のため、融合物に含まれる個々の
Mtb抗原をコードするプラスミドの混合物(pTG18300(Rv3407)+pTG18301(Rv0569)+pTG18302(Rv1807)+pTG18303(Rv1813)+pTG18304(Rv3478))および陰性対照としてのエンプティpGWizでもマウスを免疫した。細胞性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後、材料および方法に記載の種々のペプチドプールによるex vivo再刺激の後に、ELISpot IFNγアッセイによって評価した。
【0334】
図8に示されるように、pTG18269プラスミド(係留型のRv0569−Rv1813−Rv3407−Rv3478−Rv1807融合物を発現する)による免疫は、Rv3407およびRv3478抗原に特異的な強い応答をもたらし、Rv1807に対しては程度は低かった(
図8a)。pTG18295(細胞質型のRv0569−Rv1813−Rv3407−Rv3478−Rv1807融合物を発現する)で免疫したマウスでは、これら3つの抗原に対して同等レベルのIFNγ産生細胞が得られた(
図8b)。プラスミド混合物を注射したマウスでも応答は同桁内であった(
図8c)。他方、どの場合でも、Rv1813およびRv0569に対して有意な応答は検出できなかった(
図8a、bおよびc)。予想されたように、エンプティプラスミドによる免疫は特異的免疫応答を生じなかった(
図8d)。
【0335】
異なるMHCハプロタイプをカバーするため、抗
Mtb抗原応答の検討に他の系統のマウスも使用した:BALB/cマウスは、H−2
d、C57BL/6マウスはH−2
b、CBA/JおよびC3H/HeNマウスはH−2
kである。
【0336】
潜伏期「Rv2029−Rv2626−Rv1733−Rv0111」からの抗原を発現するpTG18323または陰性対照としてのエンプティpGWizを用い、マウスに筋肉内経路から2週間隔で3回の免疫を行った。細胞性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後、材料および方法の節に記載の種々のペプチドプールによるex vivo再刺激の後に、ELISpot IFNγアッセイによって評価した。
図10に示されるように、pTG18323プラスミドによるC3H/HeNマウスの免疫は、Rv2029抗原(ペプチド番号1の陽性プール)、Rv2626抗原(陽性プール番号2)およびRv1733抗原(陽性プール番号2)に特異的な強い免疫応答を生じた(
図10a)。pGWizでの免疫およびRv0111ペプチドプールでのex vivo再刺激の後に非特異的バックグラウンド応答が検出された(
図10b)ことから、pTG18323接種後の抗Rv0111特異的応答の検出が複雑化する。
【0337】
Rv2029、Rv2626およびRv1733抗原に特異的な免疫応答も、pTG18323で免疫されたH−2
k CBA/Jマウスで見られたものと同等のレベルで検出された。対照的に、BALB/cマウスでは、Rv2626ペプチドで再刺激した後にのみIFNγ産生細胞が特異的に検出され、一方、C57BL/6マウスではシグナルは検出されなかった。
【0338】
全体的に見れば、これらの結果は、供試した
Mtb抗原融合物配列がマウスの異なるハプロタイプにおいてロバストな細胞性免疫応答を誘導できることを強調する。
【0339】
5.5. 生化学的規則に基づく融合物により誘導される免疫原性の評価
Mtb抗原の生化学的特性に従って設計された融合物番号6、8または14をコードするプラスミド、すなわち、pTG18270(Ag85B−Rv2626−RpfB−Dhyb−Rv1733)、pTG18272(Ag85B−Rv2626−Rv1733)およびpTG18324(Rv2029−TB10.4−ESAT−6−Rv0111)を用い、BALB/cマウスまたはC57BL/6マウスに筋肉内経路から2週間隔で3回の免疫を行った。比較のため、陰性対照としてのエンプティpGWizでもマウスを免疫した。細胞性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後、材料および方法の節に記載の種々のペプチドプールによるex vivo再刺激の後に、ELISpot IFNγアッセイによって評価した。
【0340】
pTG18270で免疫したBALB/cとC57BL/6マウスの両方でAg85B抗原およびRpfB−Dhyb抗原に特異的な強い細胞応答が誘導され、一方、BALB/cマウスのみでRv2626に特異的な高レベルのIFNγ産生細胞が検出された。pTG18272による免疫は、BALB/cマウスにおいてはAg85Bに特異的な、また、C57BL/6マウスにおいてはAg85B抗原およびRv2626抗原に特異的なIFNγ産生細胞の活性化をもたらしたが、pTG18270により誘導される応答に比べてレベルは低かった。pTG18324で免疫したマウスでは、TB10.4抗原およびESAT−6抗原に特異的な高レベルのIFNγ産生細胞が検出され、一方、Rv2029およびRv0111に特異的なIFNγ産生細胞も誘導されたが、レベルは低かった。予想されたように、エンプティプラスミドによる免疫は特異的免疫応答を誘導しなかった。
【0341】
全体的に見れば、融合物の安定性および生産を高めるために生化学的に基づく合理性に従って設計された供試融合物は、種々の感染期からの
Mtb抗原に特異的な良好な免疫原性応答を示す。
【0342】
5.6. Mtb抗原融合物により誘導される抗Rv1733体液性応答の評価
融合物「Ag85B
*−Rv2626−Rv1733
*」(pTG18270)および融合物「Ag85B
*−Rv2626−RPFB−Dhyb
*−Rv1733
*(pTG18272)を発現するプラスミドを用い、BALB/cマウスに筋肉内経路から3週間隔で3回の免疫を行った。比較のため、融合物に含まれる個々の
Mtb抗原をコードするプラスミドの混合物(pTG18310(Ag85B
*)+pTG18305(Rv2626)+pTG18309(Rv1733
*))および陰性対照としてのエンプティpGWIZでもマウスを免疫した。体液性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後に評価した。免疫マウスの血清をプールし、ウエスタンブロットにより解析した。より具体的には、100ng/レーンの組換えタンパク質Rv1733(大腸菌で生産、実施例8参照)をアクリルアミドゲルにロードし、1/200希釈の血清で免疫検出を行った。結果として、pTG18270、pTG18272および個々の
Mtb抗原をコードするプラスミドの混合物で免疫したマウスの血清を用いて、Rv1733タンパク質に対する特異的検出が見られた。
【0343】
5.7. Mtb抗原融合物により誘導される抗Rv1813体液性応答の評価
細胞膜係留型(SS/TM:pTG18269)または細胞質型(pTG18295)のいずれかで融合物「Rv0569−Rv1813−Rv3407−Rv3478−Rv1807」を発現するプラスミドを用い、BALB/cマウスに筋肉内経路から3週間隔で3回の免疫を行った。比較のため、融合物に含まれる個々の
Mtb抗原をコードするプラスミドの混合物(pTG18300(Rv3407)+pTG18301(Rv0569)+pTG18302(Rv1807)+pTG18303(Rv1813)+pTG18304(Rv3478))および陰性対照としてのエンプティpGWizでもマウスを免疫した。体液性免疫応答は、最後のDNA注射から2週間後に評価した。免疫マウスの血清をプールし、100ng/レーンの組換えタンパク質Rv1813(大腸菌で生産、実施例8参照)をアクリルアミドゲルにロードし、ウエスタンブロットにより解析した。免疫検出は1/200希釈の血清を用いて行った。結果として、Rv1813タンパク質は、pTG18269(細胞膜係留型の融合物をコードする)で免疫したマウスの血清を用いて特異的に検出された。
【0344】
実施例6: Mtb抗原を発現する組換えMVAの作出遺伝子
1または最大3の
Mtb融合物の発現のために合計10種のMVAワクチン候補を作出し、種々の
Mtb抗原の発現を、感染したA549細胞から得られた細胞溶解液から、ウエスタンブロットにより解析した。
【0345】
6.1 TB疾患の相による組換えMVAの作出
TB疾患の種々の相に代表的な
Mtb融合物の発現用の1、2または3つのカセットを含むように7種の組換えMVA候補を作出した。融合物番号4および融合物番号11は両方とも、細胞膜で係留型(N末端シグナルおよびC末端膜係留ペプチドを備えた融合物番号4)として発現されるかまたは細胞質で発現される(融合物番号4の細胞質型に相当する融合物番号11)活性期抗原および再燃期抗原(RPFB−Dhyb
*−Ag85B
*−TB10.4−ESAT6)を含む。融合物番号13は潜伏期抗原(Rv2029
*−Rv2626−Rv1733
*−Rv0111
*)を含む。融合物番号5および融合物番号9は両方とも、異なる細胞の場で、すなわち、細胞膜に係留されて(融合物番号5はN末端シグナルおよびC末端膜係留ペプチドを含む)または細胞質で(融合物番号9)発現される付加的潜伏期抗原(Rv056−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807)を含む。
【0346】
総て併せると、7つのMVA候補は次の通りである:
・MVATG18355は、融合物番号13をp7.5Kプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18364は、融合物番号13をp7.5Kプロモーターの制御下に、および融合物番号4をpH5Rプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18365は、融合物番号13をp7.5Kプロモーターの制御下に、および融合物番号11をpH5Rプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18376は、融合物番号13をp7.5Kプロモーターの制御下に、融合物番号4をpH5Rプロモーターの制御下に、および融合物番号5をB2Rプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18377は、融合物番号13をp7.5Kプロモーターの制御下に、融合物番号11をpH5Rプロモーターの制御下に、および融合物番号5をB2Rプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18378は、融合物番号13をp7.5Kプロモーターの制御下に、融合物番号4をpH5Rプロモーターの制御下に、および融合物番号9をB2Rプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18379は、融合物番号13をp7.5Kプロモーターの制御下に、融合物番号11をpH5Rプロモーターの制御下に、および融合物番号9をB2Rプロモーターの制御下に含む。
【0347】
6.2 生化学的合理性における組換えMVAの作出
生化学的合理性に対して設計された
Mtb融合物の発現用の2つまたは3つのカセットを含むように3つの組換えMVA候補を作出した。融合物番号6は、下記の抗原:Ag85B
*−Rv2626−RPFB−Dhyb
*−Rv1733
*を含み、一方、融合物番号14は、Rv2029
*−TB10.4−ESAT6−Rv0111
*を含む。両融合物ともN末端シグナルペプチドが付加されたが、これらの融合物がRv0111またはRv1733で終わり、すでに膜係留ペプチドを含んでいるためにTMドメインは付加されなかった。
【0348】
・MVATG18404は、融合物番号14をp7.5Kプロモーターの制御下に、および融合物番号6をpH5Rプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18417は、融合物番号14をp7.5Kプロモーターの制御下に、融合物番号6をpH5Rプロモーターの制御下に、および融合物番号5をB2Rプロモーターの制御下に含む。
・MVATG18418は、融合物番号14をp7.5Kプロモーターの制御下に、融合物番号6をpH5Rプロモーターの制御下に、および融合物番号9をB2Rプロモーターの制御下に含む。
【0349】
6.3 MVAにより発現されたMtb抗原および融合物のウエスタンブロット解析
A549細胞に上記の種々のMVA候補を感染させ(MOI1)、発現産物を、材料および方法に記載の条件下でウエスタンブロットにより解析した。免疫検出は、本明細書に記載の種々の
Mtb抗原に特異的な抗体を用いて行った。具体的には、Rv1733
*、Rv2029
*、Rv0569、Rv1807、Rv0111
*、RPFB−Dhyb
*、Rv1813
*、Rv3407、およびRv3478の検出にはウサギの免疫後に得られた血清(材料および方法参照)を用い、ESAT6、Ag85B
*、TB10.4およびRv2626の検出には市販の抗体を用いた。
【0350】
結果として、供試された組換えMVAによらず、総ての融合物で予測されたサイズに相当するバンドが強く示された。より具体的には、MVATG18355、MVATG18364、MVATG18365、MVATG18376、MVATG18377、MVATG18378およびMVATG18379を感染させた細胞に起源する細胞溶解液において抗Rv2626および抗Rv0111免疫検出後に、およそ98.4kDa(融合物番号13の予測サイズ)のバンドが検出された。融合物番号4を含有するMVATG18364、MVATG18376およびMVATG18378、ならびに融合物番号11を含有するMVATG18365、MVATG18377およびMVATG18379をそれぞれ感染させた細胞に起源する細胞溶解液において抗ESAT6免疫検出後に、およそ96.7kDa(融合物番号4の予測サイズ)のバンドとおよそ87kDa(融合物番号11の予測サイズ)のバンドが検出された。さらに、融合物番号5を含有するMVATG18376およびMVATG18377、ならびに融合物番号9を含有するMVATG18378およびMVATG18379をそれぞれ感染させた細胞に起源する細胞溶解液において抗Rv3407免疫検出後に、およそ119.7kDa(融合物番号5の予測サイズ)のバンドとおよそ109.9kDa(融合物番号9の予測サイズ)のバンドが検出された。最後に、それぞれ抗Rv2626および抗Rv0111免疫検出後に、MVATG18404を感染させた細胞に起源する細胞溶解液において、およそ100.4kDa(融合物番号6の予測サイズ)のバンドとおよそ87.5kDa(融合物番号14の予測サイズ)のバンドが検出された。
【0351】
さらに、いくつかの場合では、付加的融合物産物も見られた。特に、融合物番号13および融合物番号6では、おそらくは還元条件に耐性のある二量体を形成するRv2626の能力の結果として二量体が検出された。融合物番号13に関しては、全長融合物番号13(予測サイズ98.4kDa)の発現が実際に検出されたが、低レベルであった。抗Rv2626(70kDa前後)および抗Rv0111(30kDa前後)を用いた場合には主要なタンパク質分解産物が見られ、融合物番号13のタンパク質分解切断が示唆される。
【0352】
同じ抗原(RPFB−Dhyb
*−Ag85B
*−TB10.4−ESAT6)を含むが、膜係留型(融合物番号4)または細胞質型(融合物番号11)のいずれかである融合物番号4と番号11は、同等レベルの発現が検出された。融合物番号4では予測サイズよりも大きなバンド(96.7kDaではなく115kDa)が見られ、おそらくN−グリコシル化産物に相当する。両融合物で、少量のタンパク質分解産物も検出された。
【0353】
融合物番号5および番号9(両方ともRv0569−Rv1813
*−Rv3407−Rv3478−Rv1807抗原の融合物に相当するが、膜係留型(融合物番号5)または細胞質型(融合物番号9)で発現される)を発現するMVAの細胞溶解液において、抗Rv3407を用いた場合に同等レベルの発現が明らかになった。融合物番号5を発現する細胞溶解液には予測サイズよりも大きなバンド(98.4kDaではなく120kDa)が存在し、おそらくN−グリコシル化産物に相当する。他方、融合物番号5は抗Rv1807抗体では極めて弱く検出されたが、細胞質型の場合にはそうではない。Rv1807特異的エピトープは隣接するTMR配列のために膜係留型融合物においては接近できない可能性があると推測される。
【0354】
実施例7: Mtb抗原を発現するMVA候補ワクチンの免疫原性の評価
7.1 BALB/cマウスにおけるMtb抗原を発現するMVA候補ワクチンの免疫原性の評価
BALB/cマウスを、両方とも「Rv2029−Rv2626−Rv1733−Rv0111」(融合物番号13に相当)ならびに「RpfB−Dhyb−Ag85B−TB10.4−ESAT6」(融合物番号4または番号11に相当)を発現するMVATG18365およびMVATG18364で免疫した。融合物番号13では、SSドメインがN末端に存在し、Rv1733およびRv0111は、融合物の発現を細胞表面に向けるはずであるTMドメインを伴って発現される。MVATG18364により発現される融合物番号4はSSドメインとTMドメインの両方を含むが、融合物番号11(MVATG18365)は含まず、理論的には細胞質(bcytoplasmic)発現を保持しているはずである。特異的細胞性免疫応答は、注射から1週間後、本明細書に記載のペプチドプールで再刺激した後にIFNγ ELISpotアッセイにより評価した。マウスはまた、陰性対照としてのエンプティMVAベクター(MVATGN33.1)でも免疫した。
【0355】
それぞれ
図11aおよびbに示されるように、MVATG18365およびMVATG18364の両ベクターは、BALB/cマウスにおいて、MVATGN33.1ベクターと比べた場合に、Rv2626、Rv0111、RpfB−Dhyb、Ag85BおよびTB10.4に特異的なIFNγ陽性応答を誘導した。これらの応答は、同等の応答を示すRv2626を除き、MVATG18365(細胞質の融合物)に比べてMVATG18364(係留型融合物)を用いた場合に一貫して強かった。Rv2029、Rv1733およびESAT6に特異的なより弱い散発的応答が検出された。
【0356】
さらに、「実施例6」の節に記載の総ての組換えMVA候補ワクチンをBALB/cマウスに注射し、総てのMtb抗原に特異的な細胞性免疫応答を、材料および方法の節に記載のIFNγ ELISpotアッセイにより評価した。BALB/cマウスにおいて各MVA候補により誘導された応答の範囲と強度の概要を
図12に示す。TB疾患の相または生化学的合理性に従って設計されたMtb抗原融合物を含む総てのMVAワクチンが、BALB/cマウスにおいて14のうち12の抗原に特異的なIFNγ応答を誘導できた。2つの潜伏期抗原Rv1733およびRv0569に特異的な陽性細胞応答は検出されなかった。
【0357】
7.2 トランスジェニックHLA−A2マウスにおけるMtb抗原を発現するMVA候補ワクチンの免疫原性の評価
本発明者らがDNAに基づく研究で観察したところでは、マウスハプロタイプが選択されたMtb抗原の免疫原性に影響を及ぼす(第5節参照)。MVA候補により誘導されるRv1733およびRv0569抗原の免疫原性をさらに分析するために、ヒトMHCクラスI分子、HLA−A2を発現するトランスジェニックマウスに、両抗原を発現する組換えMVAを注射した。細胞性免疫応答は、注射から1週間後、本明細書に記載のペプチドプールによる再刺激の後にIFNγ ELISpotアッセイにより評価した。マウスはまた、陰性対照としてのエンプティMVAベクター(MVATGN33.1)でも免疫した。具体的には、HLA−A2マウスを、「Rv2029−Rv2626−Rv1733−Rv0111」(融合物番号13に相当)、「RpfB−Dhyb−Ag85B−TB10.4−ESAT6」(融合物番号4に相当)ならびに「Rv0569−Rv1813−Rv3407−Rv3478−Rv1807」(融合物番号5または番号9に相当)を発現するMVATG18376ワクチンまたはMVATG18378ワクチンで免疫した。MVATG18376により発現された融合物番号5では、SSドメインおよびTMドメインがそれぞれN末端部分およびC末端部分で発現された。
図13は、MVATG18376ワクチンで免疫したHLA−A2マウスにおいて誘導されたIFNγ応答を示す。14のうち7つの抗原に特異的な免疫応答が検出された(
図13a)。脾細胞がRpfB−Dhyb抗原およびAg85B抗原に特異的なペプチドで再刺激された場合に高レベルのIFNγ産生細胞が検出された(それぞれ1397スポット/10
6細胞および1160スポット/10
6細胞)。対照的に、Rv1807、Rv1813、Rv3407およびESAT6に特異的な低レベルの細胞応答がMVATG18376ワクチンによって誘導された。さらに、細胞をRv0569特異的ペプチドで再刺激した場合に、MVATGN33.1エンプティワクチンで検出されたシグナル(36スポット/10
6細胞、
図13b)に比べて、低い(1×カットオフ<中央値<2×カットオフ、186スポット/10
6細胞、
図13a)が有意なレベルのIFNγ産生細胞が検出された。MVATG18378候補を接種したHLA−A2マウスでも同等の結果が導かれ、Rv0111抗原およびTB10.4抗原に特異的な付加的な弱い応答を誘導した。MVATG18376およびMVATG18378の両ワクチンにより誘導されたIFNγ応答を
図15にまとめる。HLA−A2トランスジェニックマウスでは、注射されたMVA候補によらず、Rv1733、Rv2029、Rv2626およびRv3478に特異的な、検出可能な応答は見られなかった。
【0358】
7.3 C57Bl/6マウスにおけるMtb抗原を発現するMVA候補ワクチンの免疫原性の評価
Rv0569抗原およびRv1733抗原の免疫原性を証明するために、H−2
bハプロタイプC57BL/6マウスを、「Rv2029−Rv2626−Rv1733−Rv0111」(融合物番号13に相当)、「RpfB−Dhyb−Ag85B−TB10.4−ESAT6」(融合物番号11に相当)ならびに「Rv0569−Rv1813−Rv3407−Rv3478−Rv1807」(融合物番号5または番号9に相当)を発現するMVATG18377ワクチンまたはMVATG18379ワクチンで免疫した。細胞性免疫応答は、注射から1週間後、本明細書に記載のペプチドプールによる再刺激の後に、IFNγ ELISpotアッセイにより評価した。マウスはまた、陰性対照としてのエンプティMVAベクター(MVATGN33.1)でも免疫した。細胞IFNγ応答を
図15にまとめる。両MVAワクチンともRv1807、RpfB−Dhyb、Rv3478、Ag85BおよびESAT6抗原に特異的な強い免疫応答を惹起することができた(92〜861スポット/10
6細胞の範囲)が、TB10.4抗原およびRv0569抗原に特異的な陽性IFNγ応答は、MVATG18379候補で免疫したマウスでのみ検出された(それぞれ78および58スポット/10
6細胞)。免疫C57BL/6マウスでは、Rv1733、Rv2029、Rv2626、Rv0111、Rv1813およびRv3407に特異的な陽性応答は検出されなかった。
【0359】
7.4 C3H/HeNマウスにおけるMtb抗原を発現するMVA候補ワクチンの免疫原性の評価
プラスミドを接種したH−2
kハプロタイプC3H/HeNマウスにおいてRv1733に特異的な免疫原性が証明されたので(第5.4節参照)、Rv1733タンパク質を含有する融合物を発現するMVATG18376、MVATG18378、MVATG18377およびMVATG18379をこのマウス系統に注射した。細胞性免疫応答は、注射から1週間後、本明細書に記載のペプチドプールによる再刺激の後に、IFNγ ELISpotアッセイにより評価した。マウスはまた、陰性対照としてのエンプティMVATGN33.1ベクターでも免疫した。
図14に示されるように、MVATG18377ワクチンは、MVATGN33.1に比べてC3H/HeNマウスにおいてIFNγ応答を誘導した。Rv2029およびRv2626ペプチドで脾細胞を再刺激した際に、高レベルのIFNγ産生細胞が検出された(それぞれ660および353スポット/10
6細胞)。RpfB−Dhyb、Rv1813、Rv3407およびRv3478抗原に特異的な、78〜250スポット/10
6細胞の範囲の低い細胞性免疫応答もまた、免疫C3H/HeNマウスにおいて誘導された。DNA接種C3H/HeNマウスにおいて示されたように、このマウス系統では、エンプティMVATGN33.1ワクチンを注射したマウスから生じるシグナル(9スポット/10
6細胞、
図14b)に比べて、Rv1733特異的IFNγ応答(183スポット/10
6細胞)が惹起された。MVATGN33.1による免疫およびRv0111、Ag85BおよびRv1807ペプチドプールによるex vivo再刺激の後に非特異的バックグラウンド応答が検出されたが(
図14b)、これはMVATG18377接種後のこれらの抗原に特異的な応答の検出を困難にする。
【0360】
C3H/HeNマウスにおいて、MVATG18377に加え、MVATG18376、MVATG18378およびMVATG18379により誘導された免疫応答を
図15に示す。4つの供試MVA候補のうち、MVATG18377が最も免疫原性が高かった(14のうち7つの抗原)。MVATG18376およびMVATG18378は、14抗原のうち2つのみ(Rv2029およびRv2626)に特異的な細胞性免疫応答を誘導し、一方、MVATG18379は、両抗原だけでなくRv1733に対しても応答を惹起することができた。MVATG18377およびMVATG18379は、融合物「Rv0569−Rv1813−Rv3407−Rv3478−Rv1807」を除き、同じ融合タンパク質を発現する。MVATG18377では、SSドメインおよびTMドメインは融合物番号5のそれぞれN末端部分およびC末端部分で発現され、MVATG18379には両ドメインとも存在しない。この融合物に存在する5つの抗原のうち3つはMVATG18377においては免疫原性であったが、MVATG18379で免疫原性であったものは無かった。これらの結果は、融合タンパク質を細胞膜へ向けることがそれらの免疫原性を高めることを示す。
【0361】
全体的に見れば、MVAベクターならびにDNAプラスミドのよる免疫が、本出願に記載される融合物に含まれる総ての
Mtb抗原をターゲティングする強力かつ特異的な細胞応答の誘導をもたらす。供試した2つの抗原に特異的な体液性免疫応答はDNA免疫マウスにおいても検出された。DNAプラスミドの場合、MVAにより発現される
Mtb融合物の膜係留が特異的免疫応答の誘導レベルをある程度高める。
【0362】
実施例8: Mtb抗原の生産および精製
8.1 選択されたMtb抗原のバイオマス生産のための最適条件
4つの大腸菌株を個々の
Mtb抗原の発現ならびに種々の培養条件(例えば、温度)に関して試験した。
【0363】
これらのアッセイは、選択された14の抗原の総てが少なくとも1つの細菌株、1つの定義温度で発現可能であったが、
Mtb抗原ごとに有意差が見られたことを強く示す。実際に、種々の大腸菌株で、どの培養条件でも容易に生産できる
Mtb抗原もあれば(例えば、Rv0111、Rv0569、Rv1807、Rv2029、Rv2626、RpfB−D融合物)、極めて特異的な宿主細胞および条件を必要とする抗原もある(例えば、Rv1733、Rv1813、TB10−4)。他方、検出可能であるが低いレベルで発現されたRv3407、Ag85BおよびRv1813を除き、ほとんどの
Mtb抗原に関して種々の大腸菌株で高い発現レベルを得ることができた。さらに、特定の
Mtb抗原は可溶性材料として生産されるが(例えば、細胞溶解液上清から直接回収することができるRv2626、Rv3407およびAg85B)、他のものは不溶性材料中にある(例えば、細胞溶解後にペレットから回収されるRPFB−D、Rv0111、Rv1733、Rv2029、Rv3478、Rv1807、ESAT6およびTB10.4)。興味深いことに、Rv0569は、18℃で培養された形質転換Bl21細胞から生産された場合には可溶性であり、Bl21細胞が37℃で培養される場合には、可溶性材料と不溶性材料の両方(溶解後の上清およびペレット中)にある。
【0364】
8.2 Mtb抗原の精製
材料および方法に記載されるように、
Mtb抗原はニッケルカラム、その後最終的にはゲル濾過カラムでのIMACクロマトグラフィーにより精製した。
【0365】
Rv2626(37℃にてC41(DE3)細胞で生産された可溶性材料から精製)、RPFB−D融合物(37℃にてBl21(DE3)で生産された封入体を可溶化したものから精製された変性RpfB−D)およびTB10.4(37℃にてC41(DE3)細胞で生産された可溶性材料および不溶性材料から精製)に関して、代表的な精製アッセイを示す。溶出画分を、それぞれ
図9a、bおよびcに示されるように、SDS−PAGEにてアッセイした。
【0366】
図9Aに示されるように、Rv2626精製プールは目に見える夾雑物を示さなかった。主要バンドが予想されたRv2626分子量の位置に見られるとともに、マイナーバンド(いわゆる、バンドB)も見られ、これはMSによりRv2626と同定された。Rv2626は、変性および還元に部分的に耐性のある二量体を形成することが知られている。従って、マイナーなバンドBは二量体型のRv2626に相当すると思われる。
【0367】
SDS−PAGEで可視化した際(レーン1〜8は中間体精製画分を表し、レーン9〜11は5、10および15μLの精製プールを表す)、RPFB−Dhyb精製プールは目に見える夾雑物を示さなかった(
図9B参照)。
【0368】
TB10−4は、変性条件とその後の最終工程では非変性条件で精製した。
図9Cに示されるように、精製プールのゲル分析は、目に見える夾雑物を示さなかった(レーン2〜6は中間体精製画分を表し、レーン7〜9は1、3および6μLの精製プールを表す)。
【0369】
これら3つの場合で、精製プールにおいて内毒素レベルを測定したところ、最大レベルが10EU/mgタンパク質であることが示された。
【0370】
従って、これら3つのタンパク質は、許容される量、純度および内毒素レベルで精製された。
【0371】
要約すると、本発明は、
Mtb抗原の最適な組合せを提供する。大規模な文献的、データマイニングスコアリング的、および生化学的in silico解析の後に14の
Mtb抗原が選択され、これらを個々にまたは融合物の形態でプラスミドベクターにクローニングした。ウエスタンブロット法により証明されるように、総ての融合物が高レベルで発現され、N末端もしくはC末端に存在するタグに対する、または融合物に存在する各
Mtb抗原に対する一連の抗体による免疫検出の後に、適正な予測されたサイズで検出された。BALB/cマウスにおける免疫アッセイは、T細胞応答を誘導するための、選択された
Mtb抗原組合せおよび融合物の免疫原性能を裏付ける。
【0372】
さらに、選択された
Mtb抗原(融合物中のRpfBおよびRpfD)を、組換え手段により細菌で個々に生産した。大腸菌での発現条件を、細菌株および培養条件(例えば、増殖温度)などの基準を検討することによって最適化した。総てのタンパク質が首尾良く発現され、リットル規模で生産された。
【0373】
実施例9: マウスにおける結核菌感染に対するMtb抗原含有ワクチンの治療効力の評価
3つのMtb発現MVA候補、MVATG18364、MVATG18376およびMVATG18377の治療効力を、Mtb株H37Rvを事前に感染させたマウスにおいて、抗生物質併用投与の治療状況で検討した。陰性対照として、MVATGN33.1も1つの群に注射した。抗生物質処置の終了時(感染後15週目)および6週後(感染後21週目)に処置マウスから採取した脾臓において細菌量を評価した。マウス群、薬物投与計画および免疫スケジュールを表5に記載する。
【0374】
【表5】
【0375】
Mtb感染後6週目、化学療法およびMVA免疫の開始前には、総てのマウス群の脾臓でマイコバクテリアが現れていた(総cfu2.64 log
10)。予想されたように、マイコバクテリア量は、化学療法の処置中に低下した。化学療法単独で処置した群2では、Mtbレベルは徐々に低下し、15週目には総cfuが1.18 log
10に、21週目には総cfuが0.70 log
10に達した。興味深いことに、15週目では、マイコバクテリア量は、抗生物質単独(群2)および対照エンプティMVAと抗生物質の組合せ(群6)で処置したマウスよりも、抗生物質とMtb抗原発現MVAで併用処置したマウスの方が低く(群3〜5では15週目の総CFUは0.70 log
10)、Mtb発現MVAがより強力な抗菌効果に寄与したことを示唆する。処置の終了から6週間後(21週目)では、マイコバクテリアは増殖しておらず、MVA接種マウスにおける細菌量は抗生物質両方単独処置マウスで見られたものと同等のレベルに抑えられていた(総cfuが0.70〜0.85 log
10の範囲)。対照として、薬物療法と組み合わせたエンプティMVATGN33.1ベクターは、15週目および21週目において抗生物質投与計画単独よりも良好な抗マイコバクテリア効果を誘導しなかった。