(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変形可能部分が、開放位置と閉止位置との間で動き、挟み付け力を前記閉止位置において前記組織試料に加え、それによって前記組織試料を望ましい方向に維持するように構成されたヒンジ挟み要素をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の包装済みの切り出し可能な組織試料支持構造体。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の図示された実施形態によって作られた、いくつかの予備成形された切り出し可能な組織試料支持構造体の斜視図である。
【
図2】
図1から取られた1つの切り出し可能な組織試料支持構造体の斜視図である。
【
図3】組織試料を収容スペース中に受け取るように変形された、又は開放された切り出し可能な組織試料支持構造体を示す斜視図である。
【
図4】
図3のゲル状支持構造体を、ゲル状支持構造体の収容スペース又はスリット中に組織試料を確保するための閉止状態で図示する斜視図である。
【
図5】切り出し可能なカセット中におかれた
図4の支持構造体を、カセットの蓋部が解放された状態で図示する斜視図である。
【
図6】
図5のカセットを、閉止され、パラフィンのブロック中に包埋され、ミクロトームの切り出し操作に備えてフレームに取り付けられた状態で示す断面図である。
【
図7】
図2の切り出し可能な組織試料支持構造体用の包装システムの具体的な実施形態を図示する斜視図である。
【
図8】
図7に示された、包装された組織試料支持構造体の断面図である。
【
図9A】別の一の具体的な実施形態によって形成され、組織試料支持凹部またはスロットを開閉することを可能にする装置中に収容された3つの切り出し可能な組織試料支持構造体の斜視図である。
【
図9B】
図9Aと同様の斜視図であるが、組織試料をその中に受け取るために凹部又はスロットを開けるように使用されている装置を示す斜視図である。
【
図10】組織試料を、その中にさらに保持する、密閉する、及び/又は収容するための収容容器接着スプレーをスプレーされている、
図9A及び9Bの切り出し可能な組織試料支持構造体を図示する斜視図である。
【
図11】組織試料を所定位置に密閉し収容するために使用される収容接着剤層を図示する、
図10の切り出し可能な組織試料支持構造体に亘って取られた断面図である。
【
図12】
図6と同様の断面図であるが、
図11の切り出し可能な組織試料支持構造体の使用を図示する断面図である。
【
図13】さらなる実施形態によって作られた、組織試料支持構造体の具体的な実施形態をさらに図示する図である。
【
図14】さらなる実施形態によって作られた、組織試料支持構造体の具体的な実施形態をさらに図示する図である。
【
図15】さらなる実施形態によって作られた、組織試料支持構造体の具体的な実施形態をさらに図示する図である。
【
図16】さらなる実施形態によって作られた、組織試料支持構造体の具体的な実施形態をさらに図示する図である。
【
図17A】それぞれのスリットに連通している穴の形状の収容スペースを有する、切り出し可能な組織試料支持構造体の別の具体的な実施形態を示す図である。
【
図18】複数の区画に切断できる、さらなる切り出し可能な組織試料支持構造体の具体的な実施形態を図示する図である。
【
図19】複数の区画に切断できる、さらなる切り出し可能な組織試料支持構造体の具体的な実施形態を図示する図である。
【
図20】複数の区画に切断できる、さらなる切り出し可能な組織試料支持構造体の具体的な実施形態を図示する図である。
【
図21A】細長い組織試料を収容する別の一の具体的な切り出し可能な組織試料支持構造体を示す図である。
【
図21B】それぞれの組織試料を保持し、支持構造体に組織試料を保持するための収容接着スプレーでスプレーされている、
図21Aの切り出し可能な組織試料支持構造体を図示する斜視図である。
【
図21C】
図6及び8と同様の断面図であるが、
図21Bの組織試料支持構造体の使用を図示する断面図である。
【
図22】多くのタイプの組織試料を保持するための実施形態に従って作られた別の切り出し可能な組織試料支持構造体の斜視図である。
【
図23】多くのタイプの組織試料を保持するための実施形態に従って作られた別の切り出し可能な組織試料支持構造体の斜視図である。
【
図24】多くのタイプの組織試料を保持するための実施形態に従って作られた別の切り出し可能な組織試料支持構造体の斜視図である。
【
図25】
図6と同様の断面図であるが、
図23又は
図24の切り出し可能な組織試料支持構造体の使用を図示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜6は、本発明概念に従って作成され、自己支持型幾何学的形状に形成されたゲル化合物を含む、切り出し可能な組織試料支持構造体のための多くの可能性のある形を図示している。この明細書の全体を通じて、「ブロック」との用語は、ゲル化合物で作成され、幾何学的形状に予備成形された多くのタイプの組織試料支持構造体を記載するように使用されている場合が多いが、この用語はいずれかの三次元幾何学的形状に限定されることは意図されていない。そうではなく、ゲル化合物ブロックは、図示されている正方形若しくは長方形、又は他の湾曲形状、球状、楕円形状、若しくはそれ以外の形状を含むいずれの形状を有することもできる。
【0019】
ここで使用されるように、「ゲル化合物」は希薄な架橋システムとして規定されており、これは安定状態にある場合には流動性を示さず、ヒドロゲル、オルガノゲル、及び/又はエーロゲルを含む。ゲル化合物は、ほとんどは流体であるが、流体内の2次元的架橋ネットワークのために固体のような挙動を示す。ゲル化合物にその三次元構造を与えているのは、内部構成要素内の架橋結合である。このように、ゲル化合物は固体内における流体の分子の散乱であり、そこでは固体は連続相であり流体は散乱相である。
【0020】
図1は、押し出し成形又は鋳込み成形されたゲル化合物の、例えば厚み1.5mm、幅4mm×長さ5mmのシート10を示す。個々の切り出し可能な組織試料支持構造体又はブロック12が形成され、そのそれぞれは1.5mmの厚み、4mmの長さ、3mmの幅を有することができる。これら寸法は単に説明のためのみであり、使用者の需要によって変えることができる。ブロック12は、最初は剥離紙又はプラスティックトレイ14の上に保持されており、後述されるパッケージの一部分とすることができ、
図3に示されているように細い糸状の組織試料16は、ブロック12の2つの部分20、22間のスリット18としてここに示されている組織収容スペースに保持される。ブロック12の1つの部分20は、
図3に示すように折り返す若しくは開放することができ、次いで
図4に示すように閉止して組織試料16を望ましい方向で確保することができる。ゲル化合物は弾力性を有する(resilient)か、事実上弾性であり(elastic)、それによって
図3に示されたブロックは弾性的に対向する部分22に対して閉止して、組織試料16を2つの部分20,22間に保持する。代替的に、ブロック12が十分な弾性若しくは弾力性を有しない場合には、接着剤化合物又は他の手段を、
図4に示される閉じた位置で2つの部分20,22を保持するように使用することができる。組織試料16は組織収容スペース(すなわち、この実施形態ではスリット18)内に保持され、組織試料16の端部16aはブロック12の外側表面12aに対して同一平面となる。このようにして、組織試料16の端部16aは、以下に述べるような包埋及びミクロトームによる切り出しの手順のために正しく位置づけられるとともに方向づけられる。その際、それに隣接して組織試料が露出する外側表面12aは切り出し平面に面し、切り出しがミクロトームの刃によって行われるので、切り出しは組織試料の端部16aにおける薄い横断切片と、次いで組織試料の端部16aの内側の薄い横断切片とを含む。
【0021】
組織試料の処理、包埋、及びミクロトームによる切り出しの1つの方法が
図5及び
図6の検討から理解できる。これら図には、例えば特許文献6又は特許文献6に参照によって組み込まれたその他の特許及び公開された特許出願に記載されたようなカセット30が使用されている。この手順は特許文献6と、ここに参照として組み込まれた他の特許及び公開された出願によって完全に理解することができるので、さらなる開示は本願の理解に対して適切な場合を除いて必要ではない。
図5に示すように、中に組織試料16が保持されたゲルブロック12は、切り出し可能なカセット30中に載置される。カセット30の蓋部32が次いでゲルブロック12の一方の面12bに対して閉じられ、その一方で、
図6に最もよく示されているようにカセット30の底部34はゲルブロックの対向する面12aに係合する。ゲルブロック12と組織試料16との両方が組織試料16の処理中にカセット30中に保持され、組織試料16の処理は、切り出し可能なカセット30、ゲルブロック12、及び保持された組織試料16を、組織試料16から体液を抽出し、それら液体を例えばパラフィンと置換するように設計された様々な液体及び試薬中に浸漬するステップを含む。処理の後、切り出し可能なカセット30と、カセット30内に固定されるか又は別様に好適な支持部材に固定された、保持された組織試料16を有するゲルブロック12と、はフレーム36内の
図6に示した位置に固定され、このフレーム/カセットアセンブリは(図示されない)モールドの中に配置される。パラフィンのような包埋材料が次いで、フレーム36及び有孔カセット30を通じてモールドの中へ導入され、それによってパラフィンはモールドの形をとり、
図6に示すようにパラフィンブロック38へと固化する。次いでミクロトームによる切片が組織技術者によって操作されるミクロトームの刃によって、特許文献6に概ね記載されたように、カセット30の底部34を組織試料16に至るまで削ることによって採取される。この点で、非常に薄いリボン状の切片がパラフィンブロック38、ゲルブロック12、及び組織試料16から採取される。(図示されない)これらリボンは次いで(図示されない)ガラス製顕微鏡スライド上に、検査及び診断の目的で載置される。
【0022】
図7及び
図8は、
図1〜4に示したゲルブロック12を包装する方法及び形態を示す。この例では、ゲルブロック12は、好適なプラスティックトレイ40、又はワックスをコーティングされた紙或いは厚紙のような支持部材上に載置され、スライドコネクション(slide connection)のようなバッグを密閉するとともに密閉を開放することができる好適な固着手段を有するバッグ42の形をとることができるパッケージ中におかれる。バッグ42は清浄な又は消毒した状態にシールされ、好ましくはゲルブロックを、防湿若しくは少なくとも耐湿性の条件下に使用まで保持する。バッグ42をシールする前には、輸送及び貯蔵中のゲルブロック12の弾力性を維持する目的で、湿気をいずれかの好適な手段で加えることができる。また、添加剤は抗真菌剤、カビ防止剤、及び/又は抗菌剤化合物を含んでもよい。使用者は、紙又は厚紙トレイ40を滑らせ、ゲルブロックから紙又は厚紙40を剥がすことによって、ゲルブロック12をバッグ42から取り出すことができる。ゲルブロック12は、特有な、紙又は厚紙に張り付くが、使用のために容易に剥がすことを可能にする粘着性を有する。
【0023】
図9A及び9Bは、ゲルブロック12’用の包装構造の一部であってもなくてもよい装置50を示す。装置50は側壁52、54を有し、これら側壁はこれら側壁間にゲルブロック12’を可動に保持する。側壁52、54は、
図9A及び9Bに図示するように、一緒に圧縮するか又は圧迫することができる。これは、ゲルブロック12’それぞれのスリット56を開放し、それによって糸状の組織試料16のような組織の小さなかけらを容易に開放したスリット56内に垂直に挿入することを可能にする。このように組織試料16は、
図3〜6に関して図示するとともに説明したように、ゲルブロック12’の組織保持スペース又はスリット56の中に実質的に保持される。一旦組織試料16がスリット56中に配置され保持されると、ゲルブロック12’を、装置50から取り外して、例えば
図5及び
図6に関する上記記載に従って使用することができる。
【0024】
代替的に、ゲルブロック12’を装置50から取り外し、ゲルブロック12’のスリット56を含む表面12a’を、組織試料16をゲルブロック12’の中にさらに保持するために、接着剤又は他のコーティング剤でスプレーすることができる。
図10及び
図11に示すように、この物質58のスプレーコーティングは、ゲルブロック12’中に組織試料16を保持する接着剤層又はコーティング層60を生成するために使用することができる。このスプレーされた物質は、例えばゲルそれ自体又はポリビニルアセテート(PVA)、エチルビニルアセテート(EVA)、若しくはシアノアクリレート(CA)接着剤のようないずれかの好適な接着剤のスプレーの形態をとることができ、上述のように、例えば多孔率、耐汚染性、等のようなブロック12’を形成するゲル物質と同じ特性を一般的には有する。さらに
図12に示すように、ゲルブロック12’は、一般的には
図6に関して上述したように、カセット30の中に置かれ、接着剤層又は他のコーティング層60は、カセット30の底面又は底壁34によって規定された切り出し面に面し、組織試料の端部16aもまたこの切り出し面に面する。このように、カセット30の底部34が切り出されるか又は削り落とされた後、上述したように、ミクロトームが組織試料16に加えてパラフィンブロック38及びゲルブロック12’の切り出しを始める。
【0025】
図13〜16は、ここに記載したような配合物および特性を有する化合物で作られているが、様々な形の組織収容スペースを有する、ゲルブロックの様々な他の構成を示す。
図13は、細長い楕円形の凹部の形状の組織収容スペース72を有するゲルブロック70を示し、
図14は、組織試料16を収容し保持するための一対の楕円形状の穴又は凹部82を有するゲルブロック80を示す。
図15は2つの細長い長方形状の凹部92を有するゲルブロック90を示し、
図16は、例えばミクロトームの切り出し面に対して端に方向づけられた皮膚組織のような組織104の平坦な欠片を保持する単一の細長い凹部102を有するゲルブロック100を示す。
【0026】
図17A及び
図17Bは、中央穴112と、この穴112の対向する側面から延びるスリット114、116との形の代替的組織収容スペースを有するまた別のゲルブロック110を示す。この穴112は、
図17Bに示すような筒状の組織片118などの円筒形状の組織片を保持するように構成されている。このために、ゲルブロックの対向端部120、122は、スリット114、116の助けで穴112を広げるように一緒に圧縮するか又は圧迫することができ、筒状の組織片118を次いで穴112の中に置くことができる。ゲルブロック110の弾力性又は弾性によって、ゲルブロック110の対向する側面124、126は一緒に元の位置に向かって戻り、それによって
図17Bに示すように、筒状の組織試料118を望ましい方向で圧縮するか保持する。
図13〜16に示されたゲルブロック並びに
図17A及び
図17Bに示されたゲルブロックは、ブロックそれぞれの組織試料をミクロトームの刃に曝す表面によって規定された平面に沿って切り出すことによって、上述したのと同じ方法で使用される。
【0027】
図18、19、及び20は、様々なタイプの組織収容スペース132、142、152を有し、例えば点線に沿って切り出すことができ、それによって使用者が組織試料支持構造体、すなわちゲルブロック130、140、150を使用者の必要に合わせてカストマイズすることができる、ゲルブロック130、140、150のさらなる例を示す。
【0028】
図21A、
図21B、及び
図21Cはまた別のゲルブロック160の代替的な実施形態を示し、ゲルブロック160は、
図21Aに示されるように、細い糸状の組織試料166を収容するための、1つの面に沿った細長い凹部162を含んでいる。さらに
図21Bに示すように、組織試料166を含む表面164は、コーティング169が表面164を覆うとともに組織試料166を覆うように形成されて、それによって組織試料166が凹部又は溝部162中に保持されるように接着物質168でスプレーすることができる。接着物質168は、上述したタイプのものとすることができる。保持された組織試料166を有するゲルブロック160は次いで、上述した方法で、例えば切り出し可能な組織カセット30(
図6参照)及びこのカセットの、ミクロトームの切り出し面を規定する底に面する組織試料166とともに使用される。次いで、切片が
図6に関して一般的に上述されたように取得される。
【0029】
図22は、本発明に従って作られた、異なるタイプ及び/又はサイズ及び/又は形状の複数の組織を保持するための様々な組織収容スペース172、174、176を含むまた別の代替的ゲルブロック170を示す。
【0030】
図23はまた別の実施形態を示し、この実施形態ではゲル化合物の2つのシート成形品180、182が、それらの間に組織試料184を挟むように使用される。予備成形されたゲル化合物の小さく、薄いシートは次いで、パラファン中に包埋され、ミクロトームで切り出される。好ましくは、ミクロトームによって最初に切り出されるシート182は少なくとも実用上可能な限り薄く、組織試料184に至るのに必要な切り出し切片数を最小化する。この例において組織試料を支える面182aが切り出し面を規定することが理解される。本発明の別の利点は、ゲル化合物の構造体が組織を真っ直ぐにする又は平らにして、完全かつ連続的な切片が刃によって取得される場合に理解される。例えば、組織試料184が、表面182aによって規定される平面から波状に及び湾曲している場合、組織試料184の上に載置された場合に、シート180の挟み効果が、試料184を、効果的な切り出しのために単一面に真っ直ぐにするか又は平らにする。
【0031】
図24は別の変形体を図示し、この変形体においては
図23のシートはゲルシート182’へわずかに変形されており、このゲルシート182’は、組織試料192を収容するための凹部190を有し、さらに、組織試料192が組織学試験室への搬送中に貯蔵されるホルマリンのような液体を絞り出し、排出するためのチャネル194、196を有する。これに関し、組織技術者は、小さな組織試料192(例えば削り粉等)を含む流体を、それを含むビンから凹部190中に注ぎ、流体を1つ以上のチャネル194、196を通じて排出し、組織試料192を凹部190中に残すことができる。
図25は、例えば
図6、12、及び21Cに記載されたような切り出し可能なカセット30と併せたゲルシート180、182又は182’の使用を図示する。すべての図に同様に、同様の参照符号が同様の構造及び機能に使用され、したがって、そのような共通の最小の追加的な記載は必要とはされない。
図25は、切り出し可能なカセット30を使用した際のまた別の利点の明確な図を示す。すなわち、下側シート182は組織試料184がカセットの底部34に直接接触するのを防ぐ。組織試料184が底部34に接触すると、底部34の不連続性(すなわち、その多孔性構成)のためにアーチファクトが組織試料中に導入されてしまう場合がある。面182aと対向する面180aとは組織試料184を挟み込み、底部34及びシート182が、ミクロトームプロセスの最初の部分中に刃によって切り出された、又は削り出された後に、ミクロトームの刃(図示せず)に組織の連続した切片を切り出させる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、ゲル化合物はヒドロゲル、オルガノゲル、エーロゲル、又はこれらの組み合わせを含む。ヒドロゲルはポリマー鎖のネットワークであり、そこでは水は分散した媒体である。例としてのヒドロゲルは、それに限定されることはないが、シリコンヒドロゲル、プロテインベース、炭水化物ベース、又はポリオールベースのヒドロゲルを含む。オルガノゲルは、三次元の架橋したネットワーク中に閉じ込められた(entrapped)液状有機相から成る、非晶質で、非ガラス質の固体物質である。例としてのオルガノゲルは、それに限定されることはないが、レシチンベース及び様々なデンドリオマーベースのオルガノゲルである。エーロゲルは多孔性合成材料であり、ゲルの流動要素が空気又はガスである。例としてのエーロゲルは、それに限定されることはないが、シリカベース及び炭素ベースエーロゲルである。
【0033】
ここで開示されるゲルブロックを作るために使用されるゲル化合物は様々な方法で形成されるが1つの実施例が以下に提供される。本発明の実施形態によれば、ゲル化合物は、架橋を受けることができる巨大分子(macromolecules)、架橋剤、防腐剤、及び水又は他の好適な溶媒のような原料から形成される。別の任意な原料は、例えば染料を含む。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、ゲル化合物は架橋した巨大分子を含むヒドロゲルを含む。したがって、巨大分子は架橋を受けることができる。一つの面では、巨大分子は複数のヒドロゲルグループを含むことができ、好適な架橋剤と反応させることができる。巨大分子の例には、ゼラチン、コーンスターチのようなでんぷん、及び寒天が含まれる。他の好適な巨大分子は、セラム、アルブミン、又はポリリシンもしくはポリオールのような合成ポリマーを含む。同様に、多くの炭水化物(例えば、多くのガム、又はセルロースとその誘導体)もまたコーンスターチのように架橋する。ゲル化合物の特徴は、特にせん断強度において異なってもよい。したがって、処方は原材料の選択に基づいて最適化されなければならない。
【0035】
ホウ砂、メラミンホルムアルデヒド、アルミン酸ナトリウム、又は四ホウ酸カリウムのような典型的な架橋剤を、ゲル構造体を作るのに使用することができる。一実施形態によれば、架橋剤はホウ砂である。
【0036】
典型的な防腐剤は抗菌薬を含み、これはカビの生育を妨げる。好適な抗菌薬はメチルパラベンを含む。プロピルパラベンのような他の抗菌薬及びその他を使用することができる。抗菌薬無しでは、ゲル化合物は数日後にカビだらけになる場合がある。
【0037】
色の使用は任意的である。様々なタイプの合成着色剤又は他の染料を使用することができる。一実施形態によれば、食品用水性染料がゲル化合物の製造中に使用される。さまざまな染料を要求に合わせて使用することができる。ゲル化合物に色を付けることの1つの目的は、技術者にゲル化合物のブロック中の組織のために作成された空洞を容易に見えるようにするコントラストを提供して、組織のブロック中への迅速な挿入を可能にし、それによって効率を改善することである。染料は、様々な組織処理及び染色中に洗い流すことができる。
【0038】
ゲル化合物は水をさらに含む。脱イオン水又は蒸留水が好適であり、水道水も同様である。ゲル化合物を準備することの重要な因子は温度と水である。人肌の水でさえ重度の凝集を生じさせるので、好ましくは水は冷たく(例えば約25℃未満)なければならない。一実施形態によれば、水温は例えば約5℃〜20℃である。グリコールタイプの共溶媒(co−solvents)を水との組み合わせで使用して水分含有量と、乾燥によるゲルの収縮を減らす、及び/又は特性を変化させるか又は新しい特性を組み込むことができる。
【0039】
[化学物質の調達]
ゼラチンは様々な分子量範囲で納入される(ブルーム(bloom)と呼称される)。科学カタログは多くの範囲を提供している。これらは特別に高純度化され、分級されているので、値段が高い。食料雑貨品店のゼラチンはより広い分子量範囲を有するが、少なくともブランドネームを有するものは高いバッチ間の均一性を有している。ゼラチンはすぐに入手できる材料であり、非常に良好な柔軟性と物理的特性を有するゲル化合物を作るが、ゼラチンから成るゲル化合物は、エオシンによってピンク色に着色し、このことはゲルを組織から区別するのを困難にさせる。いずれのゼラチンを使用することもできるが、以下の例ではKnoxブランドのゼラチンが使われた。一実施形態によれば、ゼラチンは、ゲル化合物の全重量に対して約2〜30重量%の範囲の量でゲル化合物中に存在することができる。
【0040】
でんぷんは多くの植物源(小麦、とうもろこし、いも等)から作ることができる。コーンスターチは非常に廉価、かつ一貫した高い品質でいつでも入手可能である。異なる供給元からのでんぷんは異なる分子量の範囲を有する場合があり、処方は選択された原材料に基づいて最適化する必要がある。以下の例に対しては、Hulman & Co.’s Clabber Girl(登録商標)の家庭用コーンスターチが使用された。一実施形態によれば、でんぷんは、ゲル化合物の全重量に対して約2〜30重量%の範囲の量でゲル化合物中に存在することができる。
【0041】
寒天は、紅藻から得られる多糖錯体(polysaccharide complex)(CAS:9002−18−0)である。寒天は約70%のアガロースと、約30%のアガロペクチンとからなる。アガロースは寒天のゲル形成部分であり、一方でアガロペクチンはゲル化しない部分である。この用途では、寒天が、アガロースより廉価であったので、アガロースを押さえて選択された。科学カタログは寒天の多くの範囲と変形体とを主に培地としての使用のために提供している。純粋なアガロース又はいくつかの寒天製品は、特別に高純度化され選別されており、したがってその価格は高い。Phytagel(商標)及び/又はスクレログルカン(Scleroglucan)タイプの材料のような寒天の代用品を使用することができる。標準の平均価格の寒天(Sigma Aldrich Product# A1296)が以下の例に使用された。一実施形態によれば、寒天は、ゲル化合物の全重量に対して約0.1〜15重量%の範囲の量でゲル化合物中に存在することができる。
【0042】
ホウ砂は四ホウ酸ナトリウムである。鉱物として、ホウ砂は十水塩の形で一般に見られるが、商業的に入手可能なホウ砂は、(流れ性及び溶解の容易さを改善するために)その水和度を大きく変えられている。ブランド名(20 Mule Team)の家庭用のホウ砂が以下の例に使用された。水和度は秤量において非常に重要であり、したがって処方の際には考慮しなければならない。一実施形態によれば、この架橋剤は、ゲル化合物の全重量に対して約0.05〜5重量%の範囲の量でゲル化合物中に存在することができる。
【0043】
メチルパラベンは多くの供給元から広く入手可能である。一実施形態によれば、防腐剤は、ゲル化合物の全重量に対して約0.05〜5重量%の範囲の量でゲル化合物中に存在することができる。
【0044】
ここに記載されたようにゲル化合物のシートが、浅く、付着しにくい皿状容器中に形成された。しかし、押し出しのような代替的オプションを使用することができる。
【0046】
[バッチサイズ]
標準的な処方、又は1倍の処方は、100平方インチの皿状容器中に注がれた場合に約2mm厚さのゲルを生成する。異なるサイズの皿状容器及び異なる厚さのゲルに対して、処方は比例的に増減することができる。
【0047】
[例1のゲル化合物の調合]
前以て秤量した量のコーンスターチ、ゼラチン、及びメチルパラベンを鍋の中で合わせ、全体的に混合して、水を加えた際の凝集塊の形成を最小化する。注意:他の固体成分にホウ砂を添加してはならない。冷水(例えば、25℃未満)を混合された粉材料に混合せずに加えてスターチに約1分以上水和させる。水を含んだ混合物を完全に混ぜ合わせ、実質的にすべてのコーンスターチ、ゼラチン、及びメチルパラベンがその中に均一に分散するようにする。水を含んだ混合物を沸騰し始めるまで、かき混ぜるか又は別様に周期的に混合させながら加熱する。その後、水を含んだ混合物の加熱を停止し、前以て秤量した量のホウ砂を、ホウ砂が完全に分散するまで数秒間、機械的に混合しながら加える。
【0048】
結果的に得られた材料をできるだけ早く薄い付着しにくい皿状容器中に注ぐ。皿状容器を、材料がすべての角部及び端部に流れるようにすべての方向に傾け、次いで水平に置き、重力によって材料を均一な厚さにする。皿状容器をプラスティックのラップで覆い、材料を動かさずに室温まで冷却させてゲル化合物のシートを形成させる。2時間以上後に、ゲル化合物のシートを一枚のシートとして皿状容器から取り外す。例えば、シートは、一端に沿ってスパチュラ又は同様の道具で持ち上げ、次いで上に引き上げることによって皿状容器から取り外すことができる。ゲル化合物のシートは滑らかな一枚のプラスティックのラップ上に置かれ、切断される。ゲルは12×18mm(又は要求されるサイズ)のブロックに切断される。特定の組織形状を支持するために望ましいスリット又は穴が次いでブロックに形成される。組織を支持するために必要とされる形状及び空洞は、処理中の型を使用して、又は製造後の打ち抜き(die cutting)によって達成することができる。
【0049】
[化学的説明]
ゼラチンは、正しく処理された場合には強固なゲルを生じさせる。室温での水和した形では、その分子はきつく包まれたボール状で互いに(又は他の原料と)相互作用せず、凝集塊を最小化する。分散液は幾らか粘性を有するが、そのままではゲルではない。温度が沸点まで上がるにつれて、分子はほどかれて、長い交絡したひも状になる。冷却の際に、それらは交絡した構造を維持し、水を閉じ込めたスポンジ様の塊になる。純粋なゲラチンの分散液は、温度に依存して、可逆的にゲル状又は液状である。
【0050】
また、コーンスターチはゼラチンと同様の巨大分子である。コーンスターチは、隣接する分子との間の強い相互作用のため、冷水に入れると非常に凝集しやすい。乾燥すると、でんぷん及びゼラチンの粒子は互いにくっつき、水和中のでんぷん‐でんぷんの相互作用を最小化し、よって乾燥した原料を一緒に混合する必要を最小化する。ゼラチンと同様に、でんぷん分子は高温では解けた状態にあるが、冷却の際には柔軟なゲルを形成する。でんぷんは増粘剤として使用されるが、高濃度では非常に小さなせん断強度でゲルを形成する。ゲル中におけるでんぷんの機能は、架橋のための反応性水酸基を提供することである。
【0051】
ホウ砂は、でんぷんのような炭水化物中にみられる水酸基と反応する架橋剤である。架橋はゲル化を不可逆的にする。この反応は、最初は迅速であり、したがってゲルは、混合物中にホウ砂が混ざると直ちに注型されなければならない。
【0052】
ホウ砂とでんぷんだけが永久ゲルを生成するが、これら2つの組み合わせは、この用途の目的において必要とされるせん断強度のような物理的特性を得るために使用された。
【0054】
[バッチサイズ]
標準的なバッチサイズは、100平方インチの皿状容器中に注がれた場合に約2mm厚さのゲルを生成する。異なるサイズの皿状容器に対して、又は異なる厚さのゲルを得る場合には、処方は比例的に増減しなければならない。
【0055】
[例2のゲル化合物の調合]
ゲルを作るために使用される空の容器の重量が測定され、記録される。前以て秤量した量のコーンスターチ、寒天、及びメチルパラベンを容器の中で合わせ、全体的に混合して、水を加えた際の凝集塊の形成を最小化する。注意:ホウ砂は他の乾燥した成分に添加されてはならない。冷水(例えば、25℃未満)が加えられる。この水性の混合物は全体的に混練され、実質的にコーンスターチ、ゼラチン、及びメチルパラベンが均一にその中に分散していることを確実とされる。望ましい色の食用染料が、水性混合物に添加され、染料を分散させ均一な色を混合物に与えるようによく混合する。水性混合物は、攪拌するか又は別様に工程を通じて定期的に混合されながら沸騰が開始するまで加熱される。この後、水性混合物の加熱は停止される。容器とその内容物が測量される。必要に応じて、水が添加され、混合されて、処方中の蒸発による水の損失を補給し埋め合わせる。予め測量された量のホウ砂が添加され、水性混合物は、ホウ砂が完全に分散する/溶解するまで数秒間、攪拌される。
【0056】
結果的に得られた材料をできるだけ早く薄い付着しにくい皿状容器中に注ぐ。皿状容器を、材料がすべての角部及び端部に流れるようにすべての方向に傾け、次いで水平に置き、重力によって材料を均一な厚さにする。皿状容器をプラスティックのラップで覆い、材料を動かさずに室温まで冷却させてゲル化合物のシートを形成させる。十分なゲル化時間が与えられた後、ゲル化合物のシートを一枚のシートとして皿状容器から取り外す。例えば、シートは、一端に沿ってスパチュラ又は同様の道具で持ち上げ、次いで上に引き上げることによって皿状容器から取り外すことができる。ゲル化合物のシートは滑らかな一枚のプラスティックのラップ上に置かれ、切断される。ゲルは12×18mm(又は要求されるサイズ)のブロックに切断される。特定の組織形状を支持するために望ましいスリット又は穴が注意深くゲルブロック中に形成される。組織を支持するために必要とされる形状及び空洞は、処理中の型を使用して、又は製造後の打ち抜き(die cutting)によって達成することができる。
[化学的説明]
【0057】
寒天(又はアガロース)は、正しく処理された場合には強固なゲルを生じさせる。乾燥した紛体の形では、その分子はきつく包まれた粒子状で互いに(又は他の原料と)相互作用せず、凝集塊を最小化する。その水分散液は幾らか粘性を有するが、ゲルではない。温度が沸点まで上がるにつれて、分子はほどかれて、長い交絡したひも状になる。冷却の際に、それらは交絡した構造を維持し、水を閉じ込めたスポンジ様の塊になる。純粋な寒天(又はアガロース)の分散液は、温度に依存して、物理特性及び安定性を有する可逆的なゲルを作る。
【0058】
また、コーンスターチは寒天と同様の巨大分子である。しかし、コーンスターチは、隣接する分子との間の強い相互作用のため、冷水に入れると非常に凝集しやすい。乾燥すると、でんぷん及び寒天の粒子はたがいにくっつき、水和中のでんぷん‐でんぷんの相互作用を最小化し、よって乾燥した原料を一緒に水和に先立って混合する必要がある。寒天と同様に、でんぷん分子は高温では解けた状態にあり、冷却の際には柔軟なゲルを形成する。でんぷんは増粘剤として使用されるが、高濃度では非常に小さなせん断強度でゲルを形成する。ゲル中におけるでんぷんの機能は、架橋のための反応性水酸基を提供すること及びゲルの物理特性を最適化することである。
【0059】
ホウ砂は、でんぷん又は寒天のような炭水化物中にみられる水酸基と反応する架橋剤である。架橋はゲルを永久的に固化させる。この反応は最初は迅速であり、したがってゲルは、混合物中にホウ砂が混ざると直ちに注型されなければならない。
【0060】
ホウ砂と、寒天又はでんぷんのいずれかと、だけが永久ゲルを生成するが、これら2つの組み合わせ(ホウ砂/寒天若しくはホウ砂/でんぷん)は、この用途の目的のために必要とされるせん断強度のような物理的特性を得るために使用された。
【0061】
寒天はここに記載した実施形態において重要な成分である。ゼラチンのような他のゲル形成材料を押さえて寒天を使用する好ましい理由の1つは、寒天がエオシンによって着色されないことである。したがって、顕微鏡観察中に、組織は周囲のゲルから非常に容易に区別することができる。
【0062】
メチルパラベンは抗菌薬である。抗菌薬無しでは、ゲルは数日後にはカビだらけになる。
【0063】
水は、この処方の最も大きな成分である。脱イオン水又は蒸留水が好適であり、水道水も同様である。ゲル化合物を準備することの重要な因子は温度と水である。人肌の水でさえ重度の凝集を生じさせるので、好ましくは水は冷たく(例えば約25℃未満)なければならない。温水がコーンスターチの大きな凝集度を引き起こし、それが最初の混合を困難にさせるので、でんぷん‐寒天混合物中に最初に添加する場合には、水は冷たくなければならない。
【0064】
[製造プロセスにおけるばらつき]
最初の乾燥物質(例えば、寒天、コーンスターチ、及びメチルパラベン)、並びに水の添加の順番は、製造プロセスの使いやすさによって変更することができる。
【0065】
材料は従来の方法で、又はマイクロ波を使用して加熱することができる。マイクロ波による加熱が小さなバッチを加熱するのに特に好適であることが分かった。より具体的には、加熱時間が大幅に削減され、より均一な加熱が、材料の沈殿及び容器の底部へのくっつき無しに得られることが観察された。
【0066】
寒天、コーンスターチ、ホウ砂、水等のような原材料の比率のばらつきは、ゲルの物理的特性に次数が変わるほど影響を与える。しかし、機能する物理特性を有するゲルは、反応物の非常に広い範囲に亘って得ることができる。例1及び例2に記載した配合は、記載した製造プロセスの下で改善されたバッチ対バッチの一貫性を提供することが分かった。
【0067】
本発明が1つ以上の実施形態の説明によって示され、実施形態は非常に詳細に説明されてきたが、それらは特許請求の範囲に記載の発明をそのような詳細にまで制限する又は限定することを意図されていない。ここに記載された多くの特徴は、記載された組み合わせ、又は使用者の需要による組み合わせで使用することができる。さらなる利点及び変更が当業者には容易に理解できるであろう。したがって、本発明はそのより広い特徴において、特定の詳細、代表的な装置及び方法、並びに図視され説明された図による例に限られるものではない。したがって、逸脱はあったとしてもそのような詳細からの逸脱であって、本発明の概念の技術的範囲から逸脱するものではない。