【実施例】
【0025】
  図面を参照して実施例の電子部品装着システムについて説明する。電子部品装着システムは、基板作業システムの一例であり、回路基板に電子部品を装着するシステムである。
図1に示すように、実施例の電子部品装着システムは、データ管理装置10と、データサーバ100と、電子部品装着ライン200を備える。データ管理装置10とデータサーバ100と複数の電子部品装着ライン200は、電気通信回線300を介して互いに通信可能に接続されている。
【0026】
  電子部品装着ライン200は、はんだ印刷機202と、電子部品装着機204と、基板検査機206とを備えている。はんだ印刷機202と電子部品装着機204と基板検査機206は、それぞれ回路基板4に所定の作業を実施する基板作業機であり、回路基板4を搬送する基板コンベア208に沿って配置されている。はんだ印刷機202は、回路基板4にクリームはんだを印刷する装置である。電子部品装着機204(以下、装着機204と略す)は、クリームはんだが印刷された回路基板4に、複数の電子部品を装着する装置である。そして、基板検査機206は、電子部品が装着された回路基板4を、光学的に(即ち、カメラを用いて)検査する装置である。通常、電子部品装着ライン200は、複数の装着機204を有する。電子部品装着ライン200はさらに、基板コンベア208に回路基板4を供給する装置や、回路基板4のクリームはんだをリフローするリフロー炉を備えてもよい。
【0027】
  データサーバ100は、電子部品装着ライン200が用いる各種のデータを記憶する装置である。例えば、データサーバ100は、複数の生産プログラム102と、複数のパートデータ104を記憶する。生産プログラム102とパートデータ104は、装着機204が用いるデータである。これらのデータは、電気通信回線300を通じて、データサーバ100、データ管理装置10及び装着機204の間で送受信される。
【0028】
  図2に、生産プログラム102の一例を示す。
図2に示すように、生産プログラム102は、生産品目(例えばCB001)毎に用意され、回路基板4に装着すべき複数の電子部品(B欄)を、装着順序(A欄)、その電子部品を供給するフィーダの位置(C欄)、回路基板4上の装着位置(D欄)及びその他の情報とともに記述する電子データである。装着機204は、生産プログラム102を実行することによって、生産プログラム102に記述された複数の電子部品を、回路基板4上の定められた装着位置にそれぞれ装着する。生産プログラム102は、データ管理装置10を用いて、ユーザ又はオペレータによって作成される。
【0029】
  図3に、パートデータ104の一例を示す。パートデータ104は、電子部品の種類(P001、P002、・・・・)毎に用意され、電子部品に対応した装着機204の動作条件を記述するデータである。装着機204は、回路基板4へ各々の電子部品を装着するときに、当該電子部品のパートデータ104を参照して、パートデータ104に記述された動作条件で動作する。即ち、装着機204は、装着する電子部品に応じて、その動作を変更する。
【0030】
  一例ではあるが、パートデータ104は、外形データ106、装着条件データ108及び部品識別データ110を含んでいる。外形データ106は、電子部品の外形に関する情報を記述するデータであり、電子部品の各寸法や図面データを含んでいる。装着条件データ108は、電子部品の装着に係る動作条件を記述するデータであり、例えば、使用ノズル、ノズルでの吸着条件、ノズルの移動速度などを含んでいる。部品識別データ110は、電子部品の識別に係る動作条件を記述するデータであり、カメラによる電子部品の撮影方向、そのときの照明方向、及びパターンマッチングデータなどを含んでいる。
【0031】
  パートデータ104は、データ管理装置10を用いて、ユーザによって作成される。パートデータ104を作成するユーザは、外形データ106、装着条件データ108及び部品識別データ110中の複数のデータ項目のそれぞれについて、データ値を入力していく。複数のデータ項目には、データ値の入力が不可欠の必須項目と、データ値の入力が任意のオプション項目とが存在する。パートデータ104を作成する作業では、少なくとも全ての必須項目に対して、データ値を入力する必要がある。パートデータ104が未完成であると、即ち、データ値が未入力の必須項目が存在すると、装着機204は正しく動作することができない。
【0032】
  上記の点に関して、本実施例のパートデータ104は、ステータス情報112をさらに含んでいる(
図3参照)。ステータス情報112は、パートデータ104の作成過程上のステータスを示す情報である。通常、パートデータ104は、複数の段階を経て作成される。第1の段階では、ユーザが各々のデータ項目にデータ値を入力して、パートデータ104を完成させる。第2の段階では、完成したパートデータ104の装着機204による試用が行われる。第3の段階では、装着機204による試用結果に基づいて、パートデータ104の承認が行われる。ステータス情報112は、このような作成過程において、パートデータ104がどの段階にあるのかを示す情報である。
【0033】
  一例ではあるが、本実施例のステータス情報112は、「未完成である」、「完成済みであって、試用待ちである」、「試用済みであって、承認待ちである」及び「承認済みである」のいずれかを示す。なお、パートデータ104が未完成とは、パートデータ104中の複数のデータ項目のうち、少なくとも全ての必須項目に対してデータ値の入力が完了していない状態を意図する。ステータス情報112の書き込み及び更新は、下記するように、データ管理装置10によって行われる。なお、ステータス情報112は、パートデータ104に限られず、基板作業機が用いる各種の電子データにも同様に付与することができる。
【0034】
  次に、データ管理装置10について説明する。データ管理装置10は、ユーザがデータサーバ100に記憶された各種の電子データを操作するための装置である。
図1に示すように、データ管理装置10は、電子計算機12と、ディスプレイ14と、マウス16と、キーボード18とを備える。ディスプレイ14とマウス16とキーボード18は、電子計算機12に接続されている。マウス16とキーボード18はユーザインターフェースであり、作業者は、マウス16とキーボード18を用いて、電子計算機12に対する各種の指示を行うことができる。
【0035】
  図4は、データ管理装置10の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、電子計算機12は、データ通信部20とメモリ30とデータ処理部40とを備える。データ通信部20は、データサーバ100及び電子部品装着ライン200と、電気通信回線300を介して通信可能に接続する。メモリ30は、データ通信部20がデータサーバ100から取得した電子データや、データ処理部40が作成したデータを一時的に記憶する。
【0036】
  データ処理部40は、主に、編集処理部42と、ステータス情報処理部44と、表示処理部46とを備える。編集処理部42は、パートデータ104及びその他の電子データを、作業者の指示に基づいて編集する処理を実行する。ステータス情報処理部44は、パートデータ104に対して、ステータス情報112の書き込み処理、編集処理及び読み出し処理を実行する。これらの処理は、ユーザの指示に基づいて行われる。表示処理部46は、パートデータ104及びその他の電子データの編集画面をディスプレイ14に表示する。ユーザは、ディスプレイ14に表示された編集画面により、マウス16やキーボード18を用いて、各々のデータ項目にデータ値を入力する。また、表示処理部46は、ステータス情報処理部44が読み出したステータス情報112を、パートデータ104のデータ名称104a(識別情報の一例)とともに、ディスプレイ14に視認可能に表示することができる。
【0037】
  図5は、データ管理装置10がディスプレイ14に表示する表示画面50の一例を示す。
図5に示すように、データ管理装置10は、複数のパートデータ104のデータ名称104aを、それぞれのステータス情報112と共に、リスト形式で同時に表示することができる。ステータス情報112は、アイコンA〜Dを用いて表示される。従って、ユーザは、複数のパートデータ104のステータスを容易に把握することができる。なお、
図5中の凡例52に示すように、アイコンA〜Dは、それぞれ「未完成である」、「完成済みであって、試用待ちである」、「試用済みであって、承認待ちである」及び「承認済みである」を示す。なお、アイコンA〜Dの具体的な態様、即ち、アイコンA〜Dの形状、模様、色彩及び動作は特に限定されない。
【0038】
  データ管理装置10は、例えばユーザの指示に基づいて、特定のステータス情報112を有するパートデータ104のみを、選択的に表示することもできる。一例ではあるが、本実施例のデータ管理装置10は、
図6に示すように、ユーザが凡例52中の一つのステータス(例えばアイコンA)をマウスポインタ54で選択すると、当該ステータス(アイコンA)のパートデータ104のデータ名称104aのみを、選択的に表示する。このような構成であると、ユーザは、特定のステータスにあるパートデータ104のみを、容易に把握することができる。
【0039】
  図7に示すように、データ管理装置10は、複数の生産プログラム102のデータ名称102a(識別情報の一例)を、リスト形式で同時に表示することもできる。この場合、ステータス情報処理部44は、各々の生産プログラム102について、生産プログラム102に記述された複数の電子部品(
図2のB欄参照)のパートデータ104から、ステータス情報112をそれぞれ読み出す。そして、表示処理部46は、読み出された複数のステータス情報112のなかから、予め定められた優先順位に応じて、一つのステータス情報112を選択的に表示する。その結果、ディスプレイ14には、複数の生産プログラム102のデータ名称102aが、それぞれのステータス情報112を示すアイコンA〜Dと共に表示される。ここで、表示するステータス情報112の優先順位については、データ作成の進み具合や電子部品の重要度といった観点など、様々な観点に基づいて適宜定めることができる。また、
図8に示すように、データ管理装置10は、例えばユーザの指示に基づいて、特定のステータス情報112を有する生産プログラム102のみを、選択的に表示することもできる。また、ユーザが表示された生産プログラム102の中から一つを選択したときに、その生産プログラム102で表示されたステータス情報112を有するパートデータ104のリストを表示するようにしてもよい。
【0040】
  データ管理装置10は、データ通信部20によって、データサーバ100に記憶された電子データを、電子部品装着ライン200を構成する各装置202、204、206に送信することができる。例えば、データ通信部20は、生産プログラム102を、生産プログラム102に記述された複数の電子部品のパートデータ104と共に、データサーバ100から装着機204に送信する。このとき、データ通信部20は、それぞれのパートデータ104からステータス情報112を取得する。そして、読み取ったステータス情報112の少なくとも一つが、パートデータ104が未完成であることを示すときは、生産プログラム102及びパートデータ104の送信を中止する。それにより、未完成の電子データが装着機204で誤って使用されることを未然に防止する。一方、読み取ったステータス情報112の全てが、パートデータ104が完成済みであることを示すときは、データ通信部20は、生産プログラム102及びパートデータ104の送信を実行する。このとき、読み取ったステータス情報112の中に、パートデータ104が未承認であることを示すもの(例えば、「完成済みであって、試用待ちである」又は「試用済みであって、承認待ちである」)が含まれるときは、例えば表示処理部46が、当該パートデータ104の部品名(又はその他の識別情報)を、ディスプレイ14に表示する処理を行うことが好ましい。このような構成によると、送信された電子データが装着機204によって利用されるときに、ユーザ又はオペレータは、パートデータ104が未承認である電子部品を事前に把握することができ、当該電子部品に対する装着機204の動作を重点的に確認することができる。
【0041】
  次に、
図9を参照して、装着機204について説明する。装着機204は、主に、回路基板4に電子部品を装着する装着ヘッド210と、装着ヘッド210を回路基板4に対して搬送するヘッド搬送装置212と、装着ヘッド210に電子部品を供給する部品フィーダ214と、ディスプレイ216と、それらを制御する制御装置218とを備えている。
【0042】
  制御装置218は、データ通信部220とメモリ230と動作指令部232とデータ処理部240とを備える。データ通信部220は、データサーバ100及び電子部品装着ライン200と、電気通信回線300を介して通信可能に接続する。メモリ230は、データ通信部220がデータサーバ100から取得した生産プログラム102やパートデータ104を、一時的に記憶する。動作指令部232は、メモリ230に記憶された生産プログラム102やパートデータ104を実行して、装着ヘッド210、ヘッド搬送装置212及び部品フィーダ214に動作指令を与える。それにより、装着機204は、回路基板4に電子部品を装着する。
【0043】
  データ処理部240は、主に、ステータス情報読取部244と、表示処理部246とを備える。ステータス情報読取244は、パートデータ104からステータス情報112を読み出す処理を実行する。表示処理部246は、装着機204の動作状態や、後述する異常表示といった、各種の情報をディスプレイ216に表示する。
【0044】
  図10は、装着機204の制御装置218が実行する処理を示す。
図10に示すように、制御装置218は、データ通信部220によって、生産プログラム102やパートデータ104といった電子データを受信すると(S10でYES)、ステータス情報読取部244によって、当該電子データに含まれるステータス情報112を読み取る(S12)。制御装置218は、読み取ったステータス情報112が電子データの未完成を示す場合(S14でYES)、表示処理部246によって、ディスプレイ216に類型1の異常表示を行う(S16)。装着機204はその動作を中断する。類型1の異常表示とは、使用中の電子データが未完成データであることをオペレータに報知し、電子データの再確認をオペレータに促すものである。それにより、装着機204は、未完成の電子データの使用を未然に防止する。
【0045】
  ステータス情報112に問題がなければ(S14でNO)、制御装置218は生産プログラム102の実行を開始する(S18)。生産プログラム102の実行中、制御装置218は、なんらかの異常を検知すると(S20でYES)、生産プログラム102の実行を中止する(S22)。この場合、制御装置218は、先に読み取ったステータス情報112に応じて(S24、S26)、類型2又は類型3の異常表示を行う(S28、S30)。
【0046】
  詳しくは、ステータス情報112が「完成済みであって、試用待ちである」を示す場合(S24でYES)、又は、「試用済みであって、承認待ちである」の場合(S26でYES)、制御装置218は、表示処理部246によって、ディスプレイ216に類型2の異常表示を行う(S28)。類型2の異常表示とは、使用中の電子データが未承認データであることをオペレータに報知し、電子データの再確認をオペレータに促すものである。一方、ステータス情報112が「承認済みである」を示す場合(S24及びS26でNO)、制御装置218は、表示処理部246によって、ディスプレイ216に類型3の異常表示を行う(S30)。類型3の異常表示とは、使用中の電子データが承認済みデータであることをオペレータに報知し、装着機204の再確認をオペレータに促すものである。
【0047】
  このように、装着機204は、異常を停止してその動作を停止したときに、使用中の電子データのステータス情報112に応じて、類型2又は類型3の異常表示を選択的に行う。それにより、装着機204のオペレータは、異常の原因を速やかに特定し、それを除去して、装着機204を早期に再稼働させることができる。
【0048】
  以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0049】
  本実施例では、ステータス情報112がパートデータ104のみに含まれているが、ステータス情報112はさらに、生産プログラム102又はその他の電子データに含まれてもよい。また、ステータス情報112は、装着機204が用いるデータに限られず、はんだ印刷機202や基板検査機206といった、他の基板作業機が用いる電子データに含まれてもよい。
【0050】
  データ管理装置10は、基板作業機が用いる電子データに、ステータス情報112を自動的に付与する構成とすることもできる。この場合、ステータス情報処理部44は、電子データのなかに、データ値が未入力のデータ項目が存在するとき、好ましくは、データ値が未入力の必須項目が存在するときに、電子データが未完成であることを示すステータス情報112を電子データに書き込むことが好ましい。
【0051】
  データ管理装置10は、スマートフォンやタブレットといった携帯端末であってもよい。また、データ管理装置10は、ステータス情報112や類型1から3の異常表示を、ユーザ又はオペレータの携帯端末に送信し、当該携帯端末をディスプレイとして用いる構成とすることもできる。
【0052】
  本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。