特許第6333829号(P6333829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ サン−ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333829
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】酸化クロム製品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/12 20060101AFI20180521BHJP
   C10J 3/46 20060101ALI20180521BHJP
   C10J 3/02 20060101ALI20180521BHJP
   C10J 3/57 20060101ALI20180521BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C04B35/12
   C10J3/46 Z
   C10J3/02 Z
   C10J3/57 Z
   F27D1/00 N
【請求項の数】24
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-536277(P2015-536277)
(86)(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公表番号】特表2016-503372(P2016-503372A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】IB2013059355
(87)【国際公開番号】WO2014060940
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】1259832
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン−ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ラファン,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】サン ミゲル,ローリー
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−532915(JP,A)
【文献】 特開平07−082019(JP,A)
【文献】 特表2010−505717(JP,A)
【文献】 特開2005−082429(JP,A)
【文献】 特開昭63−277560(JP,A)
【文献】 特開平06−206727(JP,A)
【文献】 特開2007−084357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/12
C10J 3/02
C10J 3/46
C10J 3/57
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスによって結合された凝集体を示し、かつ酸化物に基づく重量%として下記:
40%超の酸化クロムCr
50%未満の酸化アルミニウムAl
1%以上の酸化ジルコニウムZrO、ここで、該酸化ジルコニウムの少なくとも20重量%が立方晶形および/または正方晶形で安定化されている、
該酸化ジルコニウムZrOのための安定剤として作用する0.1%以上の酸化イットリウムY
1.9%未満の酸化ハフニウムHfO
を含み、酸化クロム、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムの合計含量Cr+Al+ZrOが70%超である、焼結された耐火製品であり、
該製品が、酸化ジルコニウムのための安定剤として作用するまたは作用しない、CaO、MgO、TiOおよびそれらの混合物から選択される共ドーパントを含み、重量%として、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化チタンの含量の合計CaO+MgO+TiOが、6.0%未満かつ0.5%超であり、酸化イットリウムおよび共ドーパントの50%超が該マトリックス中に存在する、前記製品
【請求項2】
酸化物に基づく重量%として、
酸化クロムCrの含量が65%超である、および/または
酸化アルミニウムAlの含量が35%未満である、および/または
酸化ジルコニウムZrOの含量が3%超である、および/または
酸化イットリウムYの含量が0.2%超である、および/または
酸化クロム、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムの合計含量Cr+Al+ZrOが80%超である、
請求項1に記載の製品。
【請求項3】
酸化物に基づく重量%として、
酸化クロムCrの含量が75%超である、および/または
酸化アルミニウムAlの含量が10%未満である、および/または
酸化ジルコニウムZrOの含量が4.5%超である、および/または
酸化イットリウムYの含量が0.3%超である、および/または
酸化クロム、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムの合計含量Cr+Al+ZrOが90%超である、および/または
酸化クロムCr、酸化アルミニウムAl、酸化ジルコニウムZrO、酸化イットリウムY、酸化カルシウムCaO、酸化ケイ素SiO、酸化マグネシウムMgO、酸化チタンTiOおよび酸化ハフニウムHfOの含量の合計が95%超である、
請求項2に記載の製品。
【請求項4】
酸化クロムCrの含量が80%超である、および/または
酸化アルミニウムAlの含量が5%未満である、および/または
酸化ジルコニウムZrOの含量が5%超である、
請求項3に記載の製品。
【請求項5】
重量%として酸化ジルコニウムの50%超が、立方晶形および/または正方晶形で安定化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
マトリックスに存在する酸化ジルコニウムのみが製品の総重量の2.5%超を占める、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
酸化イットリウムYの90%超がマトリックスに存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
マトリックス中の酸化アルミニウムAlの含量が、製品の酸化物の重量に基づく重量%として、1%超かつ10%未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製品。
【請求項9】
共ドーパントがCaOである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品。
【請求項10】
CaOの含量が0.04%超である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製品。
【請求項11】
CaOの含量が0.1%超である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製品。
【請求項12】
CaOの含量が0.2%超である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製品。
【請求項13】
MgOの含量が0.1%超である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品。
【請求項14】
MgOの含量が0.5%超である、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
TiOの含量が0.5%超である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品。
【請求項16】
の含量が6.0%未満である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製品。
【請求項17】
酸化物に基づく重量%として、
酸化アルミニウムAlの含量が1%超である、および/または
酸化ケイ素SiOの含量が0.5%超かつ6%未満である、
請求項1〜16のいずれか1項に記載の製品。
【請求項18】
酸化アルミニウムAlの含量が2%超である、および/または
酸化ケイ素SiOの含量が3%未満である、
請求項1〜17のいずれか1項に記載の製品。
【請求項19】
酸化物に基づく重量%として、合計100%に対して、
60%<Cr<95%、
1%<Al<25%、
3%<ZrO<10%、
HfO<1.0%、
0.1%<Y<4.0%、
他の酸化物<10
を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製品。
【請求項20】
酸化物に基づく重量%として、合計100%に対して、
65%<Cr<90%、
2%<Al<10%、
4%<ZrO<8%、
HfO<0.5%、
0.2%<Y<3.0%、
他の酸化物<5%
を含む、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の製品を含む耐火ライニングで少なくとも部分的に裏張りされた内壁を備えた反応器を含むガス化装置。
【請求項22】
前記耐火製品が層の形またはブロックの形で提供される、請求項21に記載のガス化装置。
【請求項23】
下記の逐次の段階:
a)投入物を調製する段階、
b)上記投入物を型に投入し、そして成形して、プリフォームを形成する段階、
c)上記プリフォームを型から取り出す段階、
)上記プリフォームを1300〜1600℃の温度で焼成して、焼結された耐火製品を形成する段階
を含む製造法であって、上記投入物が、段階)の終わりに、請求項1〜20のいずれか1項に記載の焼結された耐火製品を結果するのに適し、かつ、該投入物は、少なくとも部分的に酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム粉末を含むマトリックス画分を含む、前記方法。
【請求項24】
上記投入物が、酸化カルシウムおよび酸化イットリウムでドープされた酸化ジルコニウム粉末をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にガス化反応器または「ガス化装置」の内側ライニングとして使用される、酸化クロムを含む耐火製品に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭をガス化するために使用されるガス化装置は、特に知られている。約50年間知られている、石炭をガス化する方法は現在、目覚ましく成長している。これは、非常に多様な炭化水素材料、例えば石炭、石油コークス、バイオマス、木材、木炭、およびさらにはリサイクルされ得る重油すらから出発して、一方ではクリーンなエネルギー源として、および他方では化学工業のためのベース化合物として使用される合成ガスを製造することを可能にするからである。さらに、この方法は、望ましくない成分、例えばNOx、硫黄または水銀を、大気への放出の前に、除去することを可能にする。
【0003】
ガス化の原理は、加圧下で、蒸気または酸素の存在下で、約1000〜1600℃の温度での制御された部分燃焼から成る。
【0004】
種々の型のガス化装置が存在する。すなわち、固定床ガス化装置、流動床ガス化装置または墳流床ガス化装置である。これらのガス化装置は、反応物の導入法、酸化剤/燃料混合物が製造される方法、温度および圧力条件、ならびに反応から生じる灰分または液体廃棄スラグを排出する方法において異なる。
【0005】
Saint−Gobain Industrial Ceramics Divisionのエネルギーシステム部のWade Taberによって書かれた「Refractories for Gasification」の表題の論文(Refractories Applications and News,8(4),2003年7〜8月)は、ガス化装置の内側耐火ライニングの構造を記載している。このガス化装置は、ガス化中に付される温度、圧力および化学環境の条件に耐え得る耐火製品の種々の層で裏張りされている。耐火製品の層はこうして、ガス化装置の内側金属壁を熱から、およびガスおよびスラグによる腐食から保護する。
【0006】
ガス化装置中のスラグは典型的に、SiO、FeOまたはFe、CaOおよびAlから成る。また、ガス化装置に供給する材料から結果する他の酸化物を含み得る。塩基性指数B=(CaO+MgO+Fe)/(Al+SiO)は典型的に約0.6であり、比C/S=CaO/SiOは典型的に0.4であり、含量は重量%としてである。
【0007】
スラグによる腐食および熱サイクルに付される耐火ライニングの寿命を長くするために、その厚さを増加することが試みられている。しかし、この解決法は、ガス化装置の作動体積および従って出力を低下させるという欠点を示す。
【0008】
Refractory Applications and News,9(5),2004年9月/10月、第20〜25頁のJames P.の論文「Refractory liner used in slagging gasfiers」は、ガス化装置、特に空冷システムのものの現在の耐火ライニングの寿命が、その高い酸化クロム含量にもかかわらず、非常に限られることを説明している。著者は、特に、S.J. Clayton、G.J. StiegelおよびJ.G. Wimerによる報告、「Gasification Technologies, Gasification Markets and Technologies−Present and Future, an Industry Perspective」、US DOE,DOE/FE report0447,2002年7月に言及している。
【0009】
仏国特許第2883282号明細書は、焼結された材料で作られた少なくとも1の領域を示すガス化装置の内側耐火ライニングを記載している。上記材料は、重量%として、少なくとも40%の酸化クロム(Cr)および少なくとも1%の酸化ジルコニウム(ZrO)を含み、上記酸化ジルコニウム(ZrO)の少なくとも20%が立方晶形および/または正方晶形で安定化されており、酸化ジルコニウムは特に酸化カルシウムで安定化されている。このライニングはこうして、より良好な腐食耐性を示す。
【0010】
国際公開第2008/109222号パンフレットはガス化装置の耐火ライニングを構成する耐火製品の保護のための処置を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許第2883282号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/109222号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Taber,"Refractores for Gasification",Refractories Applications and News,8(4),2003年7〜8月
【非特許文献2】James P.,"Refractory liner used in slagging gasfiers",Refractory Applications and News,9(5),2004年9月/10月、第20〜25頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ガス化装置の内側で遭遇する熱衝撃に十分に耐えながら、スラグによる腐食に対するさらに良好な耐性を示す耐火製品のためのニーズが継続して存在する。
【0014】
本発明は、このニーズを満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、この目的は、マトリックスによって結合された凝集体(aggregate)を示し、かつ酸化物に基づく重量%として、40%超の酸化クロム(Cr)、50%未満の酸化アルミニウム(Al)、1%以上の酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ジルコニウム(ZrO)のための安定剤として作用する0.1%以上の酸化イットリウム(Y)および1.9%未満の酸化ハフニウム(HfO)を含み、上記酸化ジルコニウム(ZrO)の少なくとも20重量%が立方晶形および/または正方晶形で安定化されており、酸化クロム、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムの合計含量(Cr+Al+ZrO)が70%超である、焼結された耐火製品によって達成される。
特に、本発明の製品は、酸化ジルコニウムのための安定剤として作用するまたは作用しない、CaO、MgO、TiOおよびそれらの混合物から選択される共ドーパントを含み、重量%として、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化チタンの含量の合計CaO+MgO+TiOが、6.0%未満かつ0.5%超であり、酸化イットリウムおよび共ドーパントの50%超が該マトリックス中に存在する。
【発明の効果】
【0016】
以下の説明で詳述されるように、驚いたことに、特に酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウムの存在が、浸潤に対するおよびスラグによる攻撃に対する耐性を改善し、また熱衝撃に対する耐性を保持し、さらには改善すらすることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に従う製品はまた、以下の任意の特徴の1つ以上を示し得る。
− 好ましくは、酸化クロム(Cr)の含量が、重量%として、50%超、さらには55%超、さらには60%超、さらには65%超、さらには70%超、さらには75%超、さらには80%超、さらには85%超、および/または95%未満である。
− 好ましくは、酸化アルミニウム(Al)の含量が、重量%として、1%超、さらには1.5%超、さらには2%超、および/または45%未満、さらには40%未満、さらには35%未満、さらには30%未満、さらには20%未満、さらには10%未満、さらには8%未満、さらには5%未満、さらには4%未満である。
− 好ましくは、マトリックス中の酸化アルミニウム(Al)の含量が、製品の酸化物の重量に基づく重量%として、1%超、さらには1.5%超、および/または10%未満、さらには8%未満、さらには5%未満である。
− 好ましくは、酸化ジルコニウム(ZrO)の含量が、重量%として、3%超、さらには4.5%超、さらには5%超、さらには6%超、および/または10%未満、9%未満または8%未満である。
− 好ましくは、重量%として、上記酸化ジルコニウムの30%超、40%超、50%超、60%超が、立方晶形および/または正方晶形で安定化されている。
− マトリックス中に存在する酸化ジルコニウムのみが好ましくは、製品の総重量の2.5%超、さらには4%超、さらには5%超を占める。
− 酸化クロム、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムの合計含量(Cr+Al+ZrO)が、重量%として、80%超、85%超、90%超である。
− Cr、Al、ZrO、YおよびHfO以外の酸化物の合計含量が、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満である。
− 好ましくは、酸化イットリウム(Y)の含量が、重量%として、0.15%超、さらには0.20%超、さらには0.25%超、さらには0.30%超、さらには0.35%超、さらには0.40%超、および/または6.0%未満、5.0%未満、4.0%未満、3.0%未満、2.0%未満、または1.0%未満である。
− 好ましくは、上記酸化イットリウム(Y)の90%超、95%超、さらには97%超、または実質的に100%がマトリックス中に存在する。
− 上記製品が、酸化ジルコニウムのための安定剤として作用するまたは作用しない、CaO、MgO、TiOおよびそれらの混合物から選択される、好ましくはCaOである、共ドーパント(codopant)を含む。
− 酸化カルシウム(CaO)の含量が、重量%として、0.03%超、さらには0.04%超、さらには0.05%超、さらには0.1%超、さらには0.2%超、さらには0.5%超、および/または5.0%未満、さらには4.0%未満、さらには3.0%未満、さらには2.0%未満、さらには1.0%未満である。
− 酸化マグネシウム(MgO)の含量が、重量%として、0.1%超、さらには0.2%超、さらには0.5%超、および/または4.0%未満、さらには3.0%未満、さらには2.0%未満、さらには1.0%未満である。
− 酸化チタン(TiO)の含量が、重量%として、0.5%超、および/または4.0%未満、さらには3.0%未満、さらには2.0%未満、さらには1.0%未満である。
− 好ましくは、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化チタンの含量の合計(CaO+MgO+TiO)が、重量%として、6.0%未満、さらには5.0%未満、さらには4.0%未満、さらには3.0%未満、および/または0.5%超、1.0%超、さらには2.0%超である。
− 好ましくは再び、共ドーパントが、少なくとも部分的に、酸化ジルコニウムのための安定剤として作用する。
− 1実施態様では、重量%として、酸化イットリウムのおよび共ドーパント(特に酸化カルシウム)の50%超、75%超、さらには90%超、95%超、さらには実質的に100%が、マトリックス中に存在する。
− 好ましくは、酸化ケイ素(SiO)の含量が、重量%として、0.5%超、さらには0.7%超、さらには1%超、および/または6%未満、さらには5%未満、さらには4%未満、さらには3%未満、さらには1.5%未満である。
− 好ましくは、製品中の酸化ハフニウム(HfO)の含量が、重量%として、1.8%未満、さらには1.7%未満、さらには1.5%未満、さらには1.2%未満、さらには1%未満、0.8%未満、0.5%未満、0.3%未満、さらには0.2%未満、さらには0.1%未満である。
− 好ましくは、酸化クロム(Cr)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化ハフニウム(HfO)の含量の合計が、重量%として、95%超、好ましくは98%超であり、製品の他の成分が、好ましくは不純物である。不純物は慣用的に、主としてFeの形の鉄、およびアルカリ金属の酸化物、例えばNaOおよびKO、を含む。不純物のそのような含量は、本発明によって付与される利点に疑いをかけないと考えられる。
− 好ましくは、上記酸化物が、製品の90%超、95%超、99%超、さらには実質的に100%を占める。
− 製品の開放空隙率(open porosity)が、5%超、8%超、10%超、および/または25%未満、20%未満、さらには15%未満である。
− 製品が、ガス化装置の反応器の内壁に対して施与された層の形、または上記壁を保護するために配置されたブロックの集まりの形で提供される。好ましくは、上記層全体または上記集まりのブロックの全てが、本発明に従う製品で構成される。
【0018】
驚いたことに、本発明者らはまた、本発明に従う製品が腐食に対して注目すべき耐性を示し得ることを見出した。
【0019】
特に、本発明に従う製品は、スラグの浸透に対して改善された耐性を示す。腐食耐性が、スラグによる溶解に対する耐性から、およびスラグの耐火製品への浸透に対する耐性から結果することが知られている。特に、この浸透は、浸透層に関して種々の特性を結果し、また剥離を結果する、すなわち耐火製品のかけらが、使用中に分離されるようになり得る。剥離は、高いクロム含量を有する製品の場合の損傷の主要な原因であることが知られている。高いクロム含量を有する製品はさらに、化学的溶解に対して良好な耐性を有することが知られている。
【0020】
好ましくは、上記凝集体が、製品の重量の60%超、70%超、および/または90%未満、または80%未満を占め、100%までの残部がマトリックスで構成される。
【0021】
1実施態様によれば、製品の構造が、凝集体の重量の80%超、85%超、95%超、さらには97%超が酸化クロムおよび/または酸化アルミニウムで構成される凝集体を示し、上記凝集体が、マトリックスの重量の90%超、さらには94%超が酸化ジルコニウムおよび/または酸化イットリウムおよび/または酸化クロムおよび/または酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素および任意的にCaO、MgO、TiOおよびそれらの混合物から選択される共ドーパントで構成されるマトリックスによって結合されており、上記共ドーパントが酸化ジルコニウムのための安定剤として作用しまたは作用しない。特に、上記共ドーパントがCaOであり得る。
【0022】
本発明はまた、内壁が少なくとも部分的に、本発明に従う耐火製品を含む、さらにはそのような製品で構成された耐火ライニングで裏張りされた反応器を含むガス化装置に関する。
【0023】
上記耐火製品は、層の形、またはブロックの形で提供され得る。
【0024】
本発明はまた、焼結によって本発明に従う焼結された耐火製品を結果するのに適するプリフォーム、および成形によって本発明に従うプリフォームを結果するのに適する粒状混合物に関する。
【0025】
最後に、本発明は、下記の逐次の段階:
a)投入物(charge)を形成する段階、
b)上記投入物を型に投入し、そして、例えば上記投入物を型内で振動させるおよび/または加圧するおよび/またはたたく(pound)ことにより成形して、プリフォームを形成する段階、
c)上記プリフォームを型から取り出す段階、
d)好ましくは、上記プリフォームを、好ましくは空気中または湿度が制御された雰囲気中で、好ましくはプリフォームの残留水分量が0〜0.5%であるように、乾燥する段階、
e)上記プリフォームを、好ましくは酸化性雰囲気中で、1300〜1600℃の温度で焼成して、焼結された耐火製品を形成する段階
を含む製造法に関する。
【0026】
本発明によれば、上記投入物が、段階e)の終わりに、本発明に従う焼結された耐火製品を結果するのに適し、かつマトリックス画分を含む。上記マトリックス画分は、少なくとも部分的に、さらには完全に、酸化イットリウムで、好ましくは酸化ジルコニウムおよび酸化イットリウムの合計重量に基づく重量%として、1%超の、さらには2%超の、さらには3%超の酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム粉末を含む。
【0027】
1実施態様によれば、マトリックス画分が、共ドーパントをさらに含む酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム粉末を含む。好ましくは、共ドーパントがCaOである。
【0028】
好ましくは、マトリックス画分が、5μm超のメジアンサイズを示す少なくとも1の安定化された酸化ジルコニウム粉末を含む。
【0029】
熱衝撃に対して優れた耐性を示す本発明に従う焼結された耐火製品を製造することを可能にする実施態様によれば、マトリックス画分が、製品に基づく重量%として、下記を含む。
− 1%超、好ましくは2%超、さらには2.5%超、または3%超、および/または10%未満、好ましくは7.5%未満、好ましくは5%未満の第一の粉末、ここで、上記粉末は、重量%として、80%超、好ましくは90%超、さらには実質的に100%の、酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウムを含む粒子で構成されている、
酸化ジルコニウムに基づく重量%として、上記酸化ジルコニウムの40%超、好ましくは50%超、好ましくは60%超、および/または90%未満、さらには80%未満が好ましくは正方晶形および/または立方晶形で安定化されている、
上記第一の粉末のD90パーセンタイルが100μm未満、さらには60μm未満、さらには50μm未満、および/または10μm超、20μm超、さらには30μm超である、
好ましくは、上記第一の粉末のメジアンサイズD50が2μm超、さらには5μm超、および/または30μm未満、さらには20μm未満、さらには15μm未満である、および
− 1%超、さらには1.5%超、および/または10%未満、7%未満、5%未満の第二の粉末、ここで、上記粉末は、重量%として、80%超、好ましくは90%超、さらには実質的に100%の、酸化カルシウムおよび酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウムを含む粒子で構成されている、
酸化ジルコニウムに基づく重量%として、上記酸化ジルコニウムの40%超、好ましくは50%超、好ましくは60%超、および/または90%未満、さらには80%未満が好ましくは正方晶形および/または立方晶形で安定化されている、
上記第二の粉末のD90パーセンタイルが100μm未満、さらには60μm未満、さらには50μm未満、および/または20μm超、さらには30μm超、さらには40μm超である、
好ましくは、上記第二の粉末のメジアンサイズD50が2μm超、さらには5μm超、さらには10μm超、および/または30μm未満、さらには20μm未満、さらには15μm未満である。
【0030】
第一の粉末では、酸化イットリウムの重量%が好ましくは、酸化イットリウムおよび酸化ジルコニウムの合計に基づく重量%として、3%超、5%超、および/または15%未満、10%未満、さらには8%未満である。
【0031】
第二の粉末では、酸化ジルコニウム、酸化カルシウムおよび酸化イットリウムの合計に基づく重量%として、酸化カルシウムの重量%が好ましくは、1%超、2%超、および/または10%未満、5%未満であり、および/または酸化イットリウムの重量%が好ましくは、0.5%超、および/または5%未満、3%未満である。
【0032】
酸化ジルコニウム源は、酸化ハフニウム、慣用的に2%未満の酸化ハフニウムを含み得る。
【0033】
定義
「プリフォーム」は慣用的に、バインダー、一般的には一時的なバインダー、によって結合された粒子の集まりを意味し、そのミクロ構造が焼結中に変化するだろうと理解される。プリフォームは特に、ブロックまたは層の形、例えば反応器の壁に噴霧されたもの、を示し得る。
【0034】
「粒子」は、粉末または「粒状混合物」内の固体物体を意味すると理解される。特に、150μm超のサイズを示す粒子(「グレイン(grains)」として知られる)と150μm以下のサイズを示すもの(「微粒子」または「マトリックス粒子」として知られる)とが区別される。グレインの集まりは「凝集体」を構成する。マトリックス粒子の集まりは、「マトリックス画分」を構成する。
【0035】
さらに、「凝集体」および「マトリックス画分」はまた、プリフォームの形に統合された後のグレインおよびマトリックス粒子を意味する。「凝集体」はまた、焼結後にマトリックスによって結合されたグレインを意味する。
【0036】
「粒状混合物」は、粒子の乾燥混合物(互いに結合されていない)を意味すると理解される。
【0037】
粒子の「サイズ」は、大きい方の寸法dMと小さい方の寸法dmとの平均:(dM+dm)/2を意味する。粒状混合物の粒子のサイズは、慣用的に、レーザー粒子サイザーによって行われる粒子サイズ分布の解析によって評価される。レーザー粒子サイザーは、例えば、HoribaからのPartica LA−950であり得る。
【0038】
粉末のパーセンタイルまたは「センタイル」10(D10)、50(D50)、90(D90)および99.5(D99.5)は、粉末の粒子の累積粒子サイズ分布曲線上のそれぞれ10重量%、50重量%、90重量%および99.5重量%に対応する粒子のサイズである。ここで、粒子のサイズは、増加する順によって分類される。例えば、粉末の粒子の10重量%はD10未満のサイズを有し、粒子の90重量%は、D10以上のサイズを有する。パーセンタイルは、レーザー粒子サイザーを使用して作られる粒子サイズ分布を使用して評価され得る。
【0039】
「最大サイズ」は、当該粉末の99.5(D99.5)パーセンタイルを意味する。
【0040】
粉末の「メジアンサイズ」は、D50パーセンタイルを意味する。すなわち、粒子を重量の等しい第一と第二の集団に分割するサイズであり、このような第一および第二の集団はそれぞれ、メジアンサイズ以上のサイズまたはメジアンサイズ未満のサイズを示す。
【0041】
「ブロック」は、(ライニング層と違って)粒状混合物を含む投入物を成形することによって得られる固体物体を意味すると理解される。
【0042】
「マトリックス」は、グレイン間に連続した構造を付与し、かつ焼結中にマトリックス画分から得られる、結晶性または非結晶性の相を意味すると理解される。
【0043】
「焼結」は、プリフォームの耐火粒子が転化されて、上記プリフォームの他の粒子を互いに結合するマトリックスを形成するところの熱処理を意味する。
【0044】
「耐火製品」は、1000℃超の融点または解離点を示す製品を意味すると理解される。
【0045】
「不純物」は、出発材料と共に非意図的にかつ必然的に導入されたかまたはそれらとの反応から結果として生じる不可避的構成成分を意味する。不純物は必要な構成成分ではなく、単に許容されるものである。好ましくは、不純物の重量による量は、2%未満、1%未満、0.5%未満、さらには実質的にゼロである。
【0046】
化合物または元素の「前駆体」は、本発明に従う製造法の実施中に上記化合物または元素を付与し得る構成成分を意味すると理解される。
【0047】
酸化物の含量は、工業の通常の慣例に従ってより安定な酸化物の形で表される、対応する化学元素の各々の含量の全体を意味する。
【0048】
特に断らない限り、本発明に従う製品の酸化物の含量は全て、酸化物に基づく重量%である。
【0049】
「1を含む」は、特に断らない限り、「少なくとも1を含む」を意味すると理解される。
【0050】
本発明に従う焼結された耐火製品は、マトリックスによって結合されかつ囲まれたグレインで構成される。
【0051】
グレインは、種々の化学分析値を示し得、特に酸化クロムを含み得る。
【0052】
特に、凝集体は、その重量の80%超、さらには85%超、さらには90%超、さらには95%超、さらには97%超が、酸化クロムおよび/または酸化アルミニウム、特に酸化クロムで構成され得る。
【0053】
マトリックスは好ましくは、酸化ジルコニウムを含む。マトリックス中に存在する酸化ジルコニウムのみが、好ましくは製品の総重量の2.5%超、さらには5%超、さらには10%超を占める。酸化ジルコニウムは酸化イットリウムによって安定化されており、少なくとも20重量%が立方晶形および正方晶形で安定化されている。
【0054】
特に、マトリックスは、その重量の90%超、さらには94%超が、酸化ジルコニウムおよび酸化イットリウムおよび/または酸化クロムおよび/または酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素で、および任意的にCaO、MgO、TiOおよびそれらの混合物から選択される共ドーパントで構成され得る。上記共ドーパントは、酸化ジルコニウムのための安定剤として作用し、または作用しない。好ましくは、共ドーパントがCaOである。
【0055】
1実施態様では、製品が、酸化物に基づく重量%として合計100%に対して、
60%<Cr<95%、好ましくは65%<Cr<90%、
1%<Al<25%、好ましくは2%<Al<10%、好ましくはAl<5%、
3%<ZrO<10%、好ましくは4%<ZrO<8%、
HfO<1.0%、好ましくはHfO<0.5%、
0.1%<Y<4.0%、好ましくは0.2%<Y<3.0%、
他の酸化物<10%、好ましくは他の酸化物<5%
を含む。
【0056】
本発明に従う焼結された耐火製品で作られたブロックを製造するために、上記段階a)〜e)を含む方法が使用され得る。
【0057】
段階a)〜e)は、焼結製品を製造するために慣用的に使用される段階である。
【0058】
段階a)では、下記:
焼結された耐火製品を形成するために意図された酸化物の粒子でおよび/またはこれらの酸化物の前駆体の粒子で構成された粒状混合物、
任意的に1以上の添加剤、
任意的に水
を含む投入物が調製される。
【0059】
投入物の粒状混合物の組成は、ブロックの最終の組成の相関的要素(function)として決定される。
【0060】
好ましくは、粒状混合物が、重量で90%超、95%超、さらには実質的に100%の、20mm未満のサイズを有する粒子で構成される。
【0061】
好ましくは、グレインが、粒状混合物の重量の60%超、さらには70%超、および/または90%未満、80%未満を占める。100%までの残部は、マトリックス粒子で構成される。
【0062】
投入物中の酸化物または酸化物の前駆体の量を決定する方法は、当業者に十分知られている。特に、当業者は、出発投入物に存在する酸化クロム、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムが、製造された耐火製品において再遭遇することを知っている。いくつかの酸化物はまた、添加剤によって提供され得る。したがって、焼結された耐火製品の構成成分の1つの同じ量に関して、出発投入物の組成が、特にこの投入物に存在する添加剤の量および性質の相関的要素(function)として、変わり得る。
【0063】
酸化クロムは、任意的に酸化アルミニウムを含む、酸化クロムの焼結されたまたは溶融された粒子の混合物の形で提供され得る。
【0064】
好ましくは、酸化ジルコニウムの源が、80重量%超の、好ましくは90重量%超の酸化ジルコニウムを含む。
【0065】
酸化ジルコニウムは、安定化された酸化ジルコニウム粉末、好ましくは酸化イットリウムによって安定化されたものの形で提供される。酸化ジルコニウムの少なくとも20重量%は、立方晶形および/または正方晶形で安定化されている。酸化ジルコニウムは、共ドーパントを含み得る。好ましくは、共ドーパントがCaO、MgO、TiOおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、共ドーパントがCaOである。
【0066】
好ましくは、酸化ジルコニウムが、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび共ドーパントの総重量に基づく重量%として、3%超、さらには4%超、さらには5%超まで、酸化イットリウムおよび任意的に共ドーパント(好ましくはCaO、MgO、TiOおよびそれらの混合物から選択される)でドープされている。好ましくは、共ドーパントがCaOであり、酸化ジルコニウム粉末中のその含量が酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび酸化カルシウムの総重量に基づいて2〜4%である。
【0067】
安定化された酸化ジルコニウムは、好ましくは、その重量の70%超、80%超、90%超、さらには実質的に100%がマトリックス粒子の形で導入される。
【0068】
酸化ハフニウムHfOは常に、酸化ジルコニウムの源に一般に2%未満の量で天然に存在する。1実施態様では、酸化ハフニウムが不純物としてのみ、特に酸化ジルコニウムの源と共に、導入される。
【0069】
酸化アルミニウムは、特に、酸化クロムおよび酸化アルミニウムの焼結されたまたは溶融された粒子の混合物の形で凝集体に、または焼成されたまたは反応性のアルミナの、さらにはホワイトコランダムの粒子の混合物の形でマトリックス画分に提供され得る。
【0070】
添加剤は、成形段階b)中に投入物に十分な可塑性を付与するために、および段階c)およびd)の終わりに得られたプリフォームに十分な機械的強度を与えるために、投入物に添加され得る。当業者に周知の使用され得る添加剤の例として、以下が挙げられ得るが、それらに限定されない。
一時的な(すなわち、乾燥および焼成段階中に全部または一部が除去される)有機バインダー、例えば、樹脂、セルロース誘導体またはリグノン、またはポリビニルアルコール;好ましくは一時的バインダーの量が、投入物の粒状混合物の重量に対して0.1〜6重量%である;
成形剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム;
水硬性バインダー、例えばCaOアルミネート型のセメント;
解膠剤、例えばアルカリ金属ポリホスフェートまたはメタクリレート誘導体;
焼結促進剤、例えば二酸化チタンまたは水酸化マグネシウム;
加工処理を促進し、焼結を助けるであろうクレー型の添加剤。
【0071】
これらの添加剤は、クレーの種類に応じて、アルミナおよび酸化ケイ素、および少しのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、さらには酸化鉄すらを与える。
【0072】
添加剤の量は、制限されない。特に、焼結プロセスにおいて慣用的に使用される量が適する。
【0073】
好ましくは、投入物におけるクレーの含量が、酸化物に基づく重量%として、0.5%超、1.0%超、1.5%超、および/または5.0%未満、3.0%未満である。
【0074】
酸化ジルコニウムの源は慣用的に、痕跡量の酸化ハフニウムを含む。
【0075】
適切ならば、添加剤が、耐火製品の組成に寄与する酸化物の1以上を与えるならば、この付与は、好ましくは、粒状混合物の組成の決定において考慮される。
【0076】
好ましくは、投入物が、重量%として、
60%超、好ましくは90%超のグレイン、
40%未満のマトリックス粒子、
7%未満の1以上の成形添加剤
を含む。
【0077】
好ましくは、グレインおよびマトリックス粒子が一緒になって、投入物の重量の94%超、好ましくは95%超を占める。
【0078】
投入物の種々の構成成分の混合は、実質的に均一な塊が得られるまで続けられる。
【0079】
好ましくは、粒状混合物に基づく重量%として1〜5%の水が添加される。
【0080】
投入物は好ましくは、コンディショニングされる。有利には、こうして使用に備える。
【0081】
本発明はまた、上述した粒状混合物および段階a)中に調製されたまたは調製され得る投入物に関する。
【0082】
段階b)では、投入物が型に入れられ、次いで成形される。
【0083】
加圧による成形の場合には、400〜800kg/cmの特定の圧力が適する。加圧は好ましくは、一軸加圧または等方圧のやり方で、例えば液圧プレスを使用して、行われる。有利には、手動または空気圧による打ち込み(ramming)および/または振動操作によって先行され得る。
【0084】
段階c)では、こうして得られたプリフォームが型から取り出される。
【0085】
段階d)では、乾燥が、適度に高い温度で行われ得る。好ましくは、110〜200℃の温度で行われる。慣用的には、プリフォームのフォーマットに依存して、プリフォームの残留水分量が0.5%未満になるまで、10時間〜1週間続く。
【0086】
本発明はまた、段階c)または段階d)で得られたプリフォームに関する。
【0087】
段階e)では、乾燥したプリフォームが焼成される。低温から低温までの約3〜15日間という焼成時間は、組成物に従って変わり得るが、プリフォームのサイズおよび形状によっても変わり得る。焼成サイクルは好ましくは、慣用的に空気中で1300〜1600℃の温度で行われる。
【0088】
好ましくは、段階e)の終わりに得られた焼結された耐火製品は、1kg超の重量を有するおよび/または寸法の全てが100mm超であるブロックの形で存在する。
【0089】
驚いたことに、段階e)の終わりに得られた焼結された耐火製品は、ガス化装置反応器の内側で遭遇する応力に対して、特にスラグまたは溶融された灰分による浸潤に対して、特に耐性を有することが分かった。
【0090】
焼成段階e)は、全部または一部が、反応器におけるプリフォームの組み立ての後に行われ得る。
【0091】
ブロックは、当業者に周知の技術に従って、適切な膨張ジョイントによって組み立てられる。
【0092】
本発明に従う製品の製造は、上述した方法に限定されない。特に、本発明はまた、反応器、特にガス化装置、のライニングの形の本発明に従う耐火製品に関する。このために、投入物(例えば上記段階a)に従って製造されたもの)が、反応器の壁の内側表面に層として、例えばキャスティング(casting)、ビブロキャスティング(vibro−casting)または噴霧によって、要求に従っておよび高い柔軟性を伴って、施与され、次いで、反応器の予熱の間にインシチューで焼結されて、本発明に従う耐火製品で作られたライニングを製造し得る。焼結は好ましくは、大気圧で、好ましくは酸化性雰囲気で、好ましくは1300〜1600℃の温度で行われる。
【0093】
本発明の記載を不必要に長くしないために、種々の態様の本発明に従うありうる組み合わせの全てが示されているわけではない。しかし、上記製品、マトリックスまたは凝集体または方法に関して上述した初期のおよび/または好ましい範囲および値のありうる組み合わせの全てが意図されることが明らかに理解される。
【実施例】
【0094】
下記の実施例は、本発明を説明することを可能にするが、完全に網羅しているわけではない。これらの実施例に関して、下記の出発材料が使用された。
約98重量%のCrおよび2重量%のTiOを含み、かつ少なくとも90重量%の20ミクロン超かつ5mm未満のサイズを有する粒子で構成された焼結された酸化クロム粉末(粉末G1)、
約88重量%のCr、約6重量%のAl、約3.5重量%のSiOおよび約1.8重量%のTiOを含み、かつ少なくとも90重量%の20ミクロン超かつ5mm未満のサイズを有する粒子で構成された焼結された酸化クロム粉末(粉末G2)、
約45重量%のCr、約52重量%のAl、約1.1重量%のSiOおよび約1.6重量%のTiOを含み、かつ少なくとも90重量%の20ミクロン超かつ5mm未満のサイズを有する粒子で構成された焼結された酸化クロム粉末(粉末G3)、
メジアンサイズ(D50)が2ミクロン未満である顔料酸化クロム粉末(>98%のCr)(粉末P1)、
4.2重量%のCaOで安定化され、粒子のサイズが50ミクロン未満であり、メジアンサイズが約12μmであり、上記粒子が、約70%の正方晶形および/または立方晶形の酸化ジルコニウムを含む、酸化ジルコニウム粉末(>98重量%のZrO)(粉末P2)、
メジアンサイズ(D50)が10ミクロン未満であるアルミナ粉末(>98重量%のAl)(粉末P3)、
約3.2重量%のCaOおよび約1.1重量%のYで安定化され、ジルコニアに基づく重量%として約70%の正方晶形および/または立方晶形の酸化ジルコニウムを含み、粒子のサイズが60ミクロン未満であり(D90=47μm)、メジアンサイズが約13μmである、酸化ジルコニウム粉末(>91重量%のZrO)(粉末P4)、
約6.4重量%のYで安定化され、ジルコニアに基づく重量%として約70%の正方晶形および/または立方晶形の酸化ジルコニウムを含む酸化ジルコニウム粉末(>91重量%のZrO)であって、粒子のサイズが50ミクロン未満であり(D90=34μm)、メジアンサイズが約8μmである粉末(粉末P5a)、または粒子のサイズが50ミクロン未満であり(D90=8μm)、メジアンサイズが約3μmである粉末(粉末P5b)、
メジアンサイズ(D50)が5〜10ミクロンである酸化イットリウム粉末(>99%のY)(粉末P6)、
添加剤:約40%のAl、約55%のSiO、約2.3%のTiO、約2%のFeおよび約0.6%のCaOを含むRR40クレー
【0095】
試験された製品は、上記段階a)〜e)に従って製造された。
【0096】
段階a)では、表1に示す出発材料が、0.5〜2%のRR40クレーおよび約3%の水と混合され、また、0.3〜0.7%のバインダー(ステアリン酸マグネシアおよびBretax C)が上記粒状混合物に添加された。%は、上記粒状混合物に基づく%である。
【0097】
酸化ケイ素は、本質的にクレーの添加に由来する。
【0098】
段階b)では、投入物を型内で600kg/cmの圧力で固めることが、プリフォームを形成するように行われた。
【0099】
段階d)では、焼成が、空気中で、1400〜1600℃の温度で、焼結された耐火製品が形成されるように行われた。
【0100】
嵩密度(Bd)および開放空隙率(Op)の測定が、腐食前の製品に関して、基準ISO5017にしたがって行われた。
【0101】
800℃と20℃との間での熱衝撃に付された製品の破壊の曲げ弾性率における変化が、基準ISO5014に従って評価された。表1において、熱衝撃試験後の破壊値の残留曲げ弾性率が「MOR res」と表示され、MORの低下(20℃で測定された初期MORに関する「MOR res」)が「ΔMOR」と表示される。「MOR res」は、できるだけ高くなければならない。(絶対値で少なくとも20%の)より低い「ΔMOR」は、製品の特性のより大きい安定性を示す。同様に、表1において、3つの熱衝撃試験後の破壊値の残留曲げ弾性率が、「MOR res3」と表示され、MORの低下(20℃で測定された初期MORに関する「MOR res3」)が「ΔMOR3」と表示される。
【0102】
他の測定は、焼結後に、ガス化装置のライニングの高温面によって体験される運転条件を表わす腐食に付された製品に関して行われた。この腐食は、下記方法で得られた。長さが200mmであり、台形の断面を有し、その底辺がそれぞれ63mmおよび90mmであり、高さが33mmである、試験されるべき製品の8個の試験片が、溶融されたスラグが入れられる回転炉を形成するために、金属枠に1600℃の温度で5時間入れられる。試験片および枠が1分につき2回転の速度で回転される。
【0103】
使用されたスラグは、下記組成を示す(重量%)。
SiO:約30〜50%、
Al:約10〜20%、
FeまたはFeO:15〜25%、
CaO:約10〜20%、
他の成分、例えばMgO:100%までの残部。
【0104】
このスラグの塩基性指数B、すなわち(CaO+MgO+Fe)/(SiO+Al)の重量比は、典型的に、0.6のオーダーであった。CaO/SiOの重量比は0.4のオーダーであった。
【0105】
スラグに由来するCaOの浸透の深さが、金属組織学断面において行われたミクロプローブアナライザーによって測定される。浸透の指標(Ip)は、参照実施例(実施例2〜8のための実施例1、実施例10、13および14のための実施例9、実施例12のための実施例11および実施例16のための実施例15)の試験片の浸透深さの、考慮下の実施例の試験片の浸透深さに対する比を100倍したものに等しい。Ipはすなわち、参照製品の場合には100であり、110より大きい値は、スラグの浸透に対してより良好な耐性を有することを示す。165より大きい値は、スラグの浸透に対して非常に有意に改善された耐性を示す(+50%)。
【0106】
得られた結果を下記表1にまとめる。
HfO含量は実質的に0.1%に等しい
【0107】
【0108】
【0109】
上記表から確認できるように、酸化イットリウムでドープされた酸化ジルコニウムの添加が、製品中の酸化イットリウムの含量が0.1重量%に達すると、特により高い含量(特に70重量%超)の酸化クロムを有する製品の場合には、スラグの浸透に対する耐性(Ip)に関して非常に有利な効果を有し、その結果、剥離の現象が減少し、したがって、この種の製品の寿命を改善することが可能である。
【0110】
この添加はまた、熱衝撃に対する耐性を保持し、さらには改善すらすることを可能にする。これは、実施例5と6とのまたは実施例8と7との比較によって示されるように、マトリックス画分に導入された酸化イットリウムでドープされた酸化ジルコニウム粉末が5μm超のメジアンサイズを示すときにはよりそうである。
【0111】
熱衝撃に対する耐性はまた、実施例8と実施例4および5との比較、実施例13または14と実施例10との比較、または最後に実施例16と実施例15との比較によって示されるように、酸化カルシウムおよび酸化イットリウムでドープされた酸化ジルコニウム粉末が、酸化イットリウムでドープされた酸化ジルコニウム粉末と協同で使用されるとき、顕著に改善される。
【0112】
実施例1と2との比較は、酸化ジルコニウムから独立した酸化イットリウムの添加は、上記性能を改善しないことを示す。すなわち、酸化ジルコニウムが、焼結前に、少なくとも部分的に、さらには完全に、酸化イットリウムで安定化されることが重要である。
【0113】
ガス化装置における用途では、実施例5〜8、13および14が、最良であるとみなされる。特に実施例8、13および14は、CaOの浸透に対する耐性、熱衝撃に対する耐性および製造コスト(CaOはYより安価である)の間の非常に良好な妥協を差し出す。
【0114】
実施例11と12との比較はまた、その凝集体が酸化クロムおよび酸化アルミニウムで構成されるところの焼結された製品に関するCaOの浸透に対する耐性を改善し、一方で熱衝撃に対する良好な耐性を保持することに関して、酸化イットリウムで安定化された酸化ジルコニウムの粒子で形成された粉末の添加の利点を示す。これらの実施例の比較はまた、酸化イットリウムでの安定化が、酸化カルシウムでの安定化よりも有効であることを確認する。
【0115】
EDS(エネルギー分散分光計)分析と結合された走査電子顕微鏡(SEM)による分析は、本発明の製品において、酸化イットリウム(および適切ならば酸化カルシウム)が実際にマトリックスの酸化ジルコニウムと一緒にされることを確認することを可能にする。
【0116】
もちろん、本発明は、説明のための非制限的実施例として提供された上記実施態様に限定されない。
【0117】
特に、本発明に従う焼結された耐火製品の用途は、ガス化装置に限定されない。