(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0026]以下の説明および添付図は、好ましい実施形態を記載および図示すると共に、機械式振動薬剤移送バルーン、システムおよび使用方法についてのいくつかの実現可能な構成を示す。これらの説明は、本発明の開示された態様および特徴を特定の実施形態に限定するものではなく、説明されるデバイスのみと共に使用することに限定するものでもない。当業者には、本発明の開示された態様および特徴が、本明細書に記載された本発明の態様および特徴の1つ以上を備え得る機械式振動薬剤移送バルーンのいかなる特定の実施形態にも限定されないことが理解されよう。
【0008】
[0027]狭窄血管または閉塞血管を開くために、経皮経管的血管形成(「PTA」)および経皮経管冠動脈形成(「PTCA」)が使用され得る。一般的に、バルーンが、血管の狭窄部分に配置され、次いで拡張される。拡張されたバルーンは、血管管腔を再び開く。次いで、バルーンは、収縮され取り除かれる。ステントが埋め込まれてもよい。しかしながら、そのような処置の後に、弾性収縮および再狭窄がしばしば生じる。
【0009】
[0028]ステント、薬剤溶出ステント、薬剤溶出バルーンなどが再狭窄を防止するのに役立つ。薬剤溶出ステントおよび薬剤溶出バルーンは、薬剤および/または治療剤を血管壁に移送することができ、それは、再狭窄を防止するのに役立つ。薬剤溶出バルーンの有効性は、多くの場合、バルーンが膨張される圧力、および/または、膨張されたバルーンが血管壁に接触している時間の長さに依存する。
【0010】
[0029]本発明によれば、薬剤溶出バルーンまたは薬剤がコーティングされたバルーン(薬剤コートバルーン)は、血管壁の副層への薬剤移送の有効性を増大することができる。本明細書に開示されるシステム、方法およびデバイスは、対象領域(すなわち、血管壁)への治療剤の移送を増大することができる。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは、薬剤コートバルーンを振動させるのに使用される。薬剤コートバルーンは、治療を必要とする血管の内部壁に接触するために膨張される。薬剤コートバルーンは、機械式振動伝達ワイヤに接続されていてもよい。次いで、薬剤コートバルーンは、振動されてもよい。この振動は、バルーンの表面から血管壁の内部に移送される薬剤の量を増大させることができ、したがって、治療の有効性が増大するとともに、再狭窄が防止される。薬剤コーティングは、パクリタクセルであってもよい。つまり、狭窄防止薬剤(例えば、パクリタクセル)を血管のより深い細胞層に移送するために、本明細書に開示されるシステム、デバイスおよび方法によって、薬剤コートバルーンが超音波周波数で縦振動される。
【0011】
[0030]本明細書で開示されるシステム、方法およびデバイスのこれらの構成要素について説明する助けになるように、以下の座標用語が使用される。「長手方向軸線」は、概して、薬剤移送バルーンの一部分と平行であると共に、薬剤移送バルーン内部を移動することができる血管の軸線と平行である。「横方向軸線」は、長手方向軸線に対して垂直である。「直交方向軸線」は、長手方向軸線および横方向軸線の両方に対して垂直に延在する。さらに、本明細書では、「長手方向」とは、長手方向軸線と実質的に平行な方向をいい、「横方向」とは、横方向軸線と実質的に平行な方向をいい、「直交方向」とは、直交方向軸線と実質的に平行な方向をいう。本明細書で使用される「軸線の」という用語は、薬剤移送バルーンデバイスの軸線をいい、したがって、本明細書で使用される「長手方向の」という用語と実質的に同義である。また、本システムを説明するのに使用される「近位」および「遠位」という用語は、例示的な用途(すなわち、使用用途の説明的な例)についての説明で一貫して使用される。したがって、近位および遠位は、薬剤移送バルーンデバイスのそれぞれの端部に関しても使用される。
【0012】
[0031]実施形態を完全に理解しやすいようにするために、以下では、薬剤移送バルーンシステム、方法およびデバイスについて図を参照して説明する。複数の実施形態での同様の構成要素は、以下の説明全体を通じて同様の符号を用いて言及される。
【0013】
[0032]
図1は、薬剤移送バルーン200とともに使用することができる超音波システム100の斜視図の一例を示している。超音波システム100は、超音波トランスデューサ126に取り外し可能に接続される超音波デバイス120を備えている。超音波デバイス120の遠位端は、薬剤移送バルーン200を備えている。
【0014】
[0033]超音波トランスデューサ126は、信号発生器127に電気的に接続される。超音波デバイス120は、近位部分122と遠位部分121とを有する細長い本体を備えていてもよい。超音波デバイス120は、超音波エネルギー移送部材、または、長手方向に延在する少なくとも1つの内腔を有するカテーテルであってもよい。超音波エネルギー移送部材は、カテーテルを通って延在する。
【0015】
[0034]信号発生器127は、超音波トランスデューサ126に電気信号を送ることができる。次いで、超音波トランスデューサ126は、電気信号を超音波振動に変換することができる。次いで、超音波振動は、超音波伝達部材および薬剤移送バルーンを介して伝達されることができ、したがって、超音波振動が治療場所に移送される。いくつかの実施形態では、超音波振動は、縦超音波振動である。治療場所は、狭窄または再狭窄を有する血管および/または血管壁の領域であってもよい。血管には、静脈および動脈が含まれ得る。本明細書で説明される方法およびデバイスは、身体の他の内腔および組織(例えば、胆管)にも適用することができる。
【0016】
[0035]超音波デバイス120は、また、超音波トランスデューサ126に動作可能に接続されるYコネクタ123を備えていてもよい。例えば、Yコネクタ123は、デバイスノブ124および摺動カラー125によって超音波トランスデューサ126に接続されてもよい。超音波トランスデューサ126は、信号発生器127に接続されてもよく、信号発生器127は、足踏み式オンオフスイッチ128に接続されてもよい。信号発生器127は、点滴(IV)ポール129によって支持されてもよい。オンオフスイッチ128が押し下げられると、信号発生器127は、電気信号を超音波トランスデューサ126へ送信することができ、超音波トランスデューサ126は、その電気信号を超音波エネルギーに変換する。このような超音波エネルギーは、その後、超音波デバイス120を通過し、遠位部分121へ移送され得る。従来のガイドワイヤ(図示せず)がデバイス120と一緒に利用されてもよい。
【0017】
[0036]続けて
図1を参照すると、Yコネクタ123の正面部分は、当技術分野で周知の技法を用いて超音波デバイス120の近位端122に接続されてもよい。注入ポンプ130、点滴バッグ(図示せず)または注射器(図示せず)が、注入管131を用いてYコネクタ123の注入ポートすなわちサイドアーム132に接続されてもよい。注入ポンプ130は、冷媒流体をデバイス120の中へ、および/または、デバイス120を通って注入するのに使用することができる。冷媒流体のこのような流れは、超音波伝達部材の過熱を防止するのに利用することができ、また、超音波伝達部材の外面を濡らすように機能し、それによって、冷媒流体と超音波伝達部材との間に温度平衡をもたらすことができる。冷媒流体の温度および/または流量は、超音波伝達部材の適切な冷却および/または他の温度制御が行われるように調整されてもよい。灌注流体は、薬剤および/または微小気泡を含むことができる。薬剤は、再狭窄を防止する助けとなり得る。上記に加えて、注入ポンプ130または注射器は、撮像の目的でX線撮影造影剤をデバイス120に注入するのに利用することができる。注入ポンプ130を介して超音波デバイス120に選択的に注入され得るヨードX線撮影造影剤の例として、Berlex Labs、Wayne、N.J.からAngiovist 370が、また、Malinkrodt、St.Louis、MoからHexabrixが、それぞれ市販されている。注入ポンプ130または注射器は、薬剤移送バルーン200を膨張および/または収縮させるのに使用することができる。
【0018】
[0037]概して、超音波デバイス120は、ガイドワイヤを通すため、吸引を行うため、灌注流体、色素および/または類似物を注入および/または吸引するための、適切な任意の数のサイドアームもしくはポート、または、他の適切な任意のポートもしくは接続部を備えていてもよい。また、このデバイスは、適切な任意の超音波トランスデューサ126、信号発生器127、接続デバイス(単数または複数)および/または類似物と共に使用されてもよい。したがって、
図1に示された例示的な実施形態、および、超音波デバイス120と共に使用するための近位の装置またはシステムについての以下のいずれの説明も、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0019】
[0038]
図2Aは、
図1に示された薬剤移送バルーン200を備える超音波デバイスの側面図である。図示するように、Yコネクタ123の遠位部分は、カテーテル本体204に接続される。超音波伝達部材230は、デバイスノブ124、Yコネクタ123、カテーテル本体204および移送バルーン200を通ることができる。
【0020】
[0039]デバイスノブ124は、近位ハウジング208を備えていてもよい。ハウジング208は、ハウジング208の外表面積を増大させるための1つ以上の表面構造212を備えていてもよい。表面積を増大させることによって、超音波伝達部材230によって発生した熱を放散するハウジング208の能力を向上させることができる。表面構造212は、適切な任意のサイズおよび形状とすることができ、例えば、隆起、切れ目、凹凸、溝などを備えていてもよい。適切な任意の数の表面構造212が使用されてもよい。さらに、ハウジング208は、アルミニウム、ステンレス鋼、他の任意の伝導性金属(単数または複数)、または、適切な任意の非金属伝導性材料など、1つ以上の熱放散材料で形成されていてもよい。
【0021】
[0040]続けて
図2を参照すると、Yコネクタ123は、カテーテル本体204に接続されてもよい。カテーテル本体204は、薬剤移送バルーン200に接続されてもよい。Yコネクタ123は、当該技術分野で公知の任意の接続方法によってカテーテル本体204に接続されてもよく、いくつかの実施形態では、固定的に取り付けられる。
【0022】
[0041]カテーテル本体204は、血管閉塞に到達するための適切な任意の直径および長さを有する、全体として柔軟で管状の細長い部材であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、カテーテル本体204は、約100〜200cmの範囲の長さを有する。一実施形態では、カテーテル本体204は、約0.5〜5.0mmの範囲の外径を有する。別の実施形態では、例えば比較的細い血管で使用するために、カテーテル本体204は、約0.25〜2.5mmの範囲の外径を有していてもよい。ただし、本発明の範囲から逸脱することなく、他の適切な任意の長さまたは直径が使用されてもよい。本発明で使用できるこれらと類似のカテーテル本体の例は、米国特許第5,267,954号および第5,989,208号に記載されている。これらの特許は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。カテーテル本体204は、超音波伝達部材230を絶縁し、デバイスの使用中に操作者の手が超音波伝達部材230に触れることを防止することができる。カテーテル本体204は、薬剤移送バルーン200用の膨張内腔としても機能する。
【0023】
[0042]
図2Bは、薬剤移送バルーン200を備える超音波デバイス120の断面図を示している。図示するように、ハウジング208は、内部キャビティ244を備えていてもよい。音波コネクタ252がキャビティ244内に配置されている。超音波伝達部材230は、音波コネクタ252からキャビティ244を通って遠位方向に延在している。
【0024】
[0043]内部キャビティ244は、1つ以上の振動吸収部材250を備えていてもよい。振動吸収部材250によって、超音波伝達部材230からハウジング208を通って伝達される振動を低減することによって、使いやすさを向上させることができる。音波コネクタ252によって、超音波伝達部材230を超音波トランスデューサデバイス126に接続しやすくすることができる。超音波伝達部材230は、音波コネクタ252から内部キャビティ244、Yコネクタ216、カテーテル本体204および薬剤移送バルーン200を通って遠位方向に延在し、遠位先端201のところで終端してもよい。
【0025】
[0044]超音波伝達部材(およびその遠位先端)と、超音波トランスデューサと、音波コネクタと、これらの超音波デバイスとの接続部と、を備える超音波システムおよびデバイスのさらなる詳細が、米国特許第6,007,514号、第6,427,118号、第6,702,748号、第6,855,123号、第6,942,620号、第6,942,677号、第7,137,963号、第7,220,233号、第7,297,131号、第7,335,180号、第7,393,338号、第7,540,852号、第7,604,608号、米国特許出願公開第2008/0108937号、第2008/0287804号、第2010/0317973号に開示されている。これらの開示は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0026】
[0045]続けて
図2Bを参照すると、サイドアーム132は、Yコネクタ123内の内腔223と流体連通する内腔232を備えていてもよい。Yコネクタ123内の内腔223は、カテーテル本体204を通って延在する内腔と流体連通してもよい。したがって、サイドアーム132に導入された流体は、カテーテル本体204に流れ込み、そこを通って超音波伝達部材230と接触してもよい。この流体は、カテーテル本体204自体に設置された孔部など、遠位部分の開口(図示せず)または他の適切な任意の孔部または開口を通ってカテーテル本体204から流出してもよい。また、流体は、カテーテル本体204を通って、薬剤移送バルーン200に入るとともに薬剤移送バルーン200から出てもよい。
【0027】
[0046]適切な任意の流体が、サイドアーム132およびカテーテル本体204に通されて、薬剤移送バルーン200に流入してもよい。適切な流体には、例えば、冷却流体、潤滑流体、過飽和食塩水、造影剤/生理食塩水の混合物などが含まれる。超音波伝達部材230および支持ワイヤ320を薬剤移送バルーン200内で冷却および/または潤滑することによって、超音波伝達部材230の摩擦および/または摩耗および裂けを低減することができ、したがって、超音波伝達部材の耐用寿命を延命化し、全体的性能を向上させることができる。
【0028】
[0047]薬剤移送バルーン200は、超音波デバイス120の遠位部分121に接続されてもよい。薬剤移送バルーン200は、遠位先端201と薬剤コートバルーン壁300とを備えていてもよい。遠位先端201は、ガイドワイヤ内腔を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、遠位先端201は、完全な閉塞を穿刺および/または横断するように構成される。
【0029】
[0048]
図2Bに示すように、薬剤移送バルーン200は、薬剤コートバルーン壁300と、接合部325,322のところでそれぞれ超音波伝達部材230に遠位側および近位側で接合される支持ワイヤ320と、を備えている。薬剤移送バルーン200は、適切な任意のサイズまたは形状であってもよく、任意の数の支持ワイヤ320を備えていてもよい。
【0030】
[0049]薬剤コートバルーン壁300は、ナイロン、ペバックス、PET、ポリウレタン、および、当該技術分野で公知の他の類似の材料などの材料から形成されていてもよい。薬剤コートバルーン壁300の外面は、少なくとも1つの活性成分および/または治療剤を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、活性成分は、再狭窄を防止する効能を有する薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤コートバルーン壁300の外面は、親水性であるか、または、親水剤によって処理されて親水性に形成される。また、薬剤コートバルーン壁300の外面は、1つ以上の添加剤および/または促進剤を備えていてもよい。当該技術分野で公知の方法を使用して、薬剤コートバルーン壁300の外面の少なくとも一部分、および/または、薬剤コートバルーン壁300の外面の全体をコーティングすることができる。
【0031】
[0050]適切な任意の薬剤が薬剤コートバルーン壁300に備えられていてもよい。そのような薬剤には、狭窄防止薬剤または増殖防止薬剤(例えば、シロリムス、パクリタクセル、ゾタロリムス、エベロリムス、バイオリムスA9など)が含まれ得る。
【0032】
[0051]支持ワイヤ320および超音波伝達部材230は、超音波エネルギーを超音波トランスデューサから超音波伝達部材230の遠位端201まで効率的に伝達できる任意の材料から形成されてもよい。これらの材料には、純チタンもしくは純アルミニウム、または、チタン合金またはアルミニウム合金(例えば、NiTi)などの金属が含まれるが、それらに限定されない。
【0033】
[0052]超音波伝達部材230は、1つ以上のテーパ状領域および/または段部を備えていてもよい。このテーパ状領域および段部は、超音波伝達部材230の長さに沿って遠位方向に幅または直径が増大および/または減少していてもよい。一実施形態では、超音波伝達部材230は、近位端から遠位方向に延在する方向にテーパ状に形成された少なくとも1つの部分を備えている。他の実施形態では、超音波伝達部材230は、近位端から遠位方向に延在する方向に連続的にテーパ状に形成されている。一実施形態では、超音波伝達部材230は、近位側の約800μmから遠位側の約200μmまで直径がテーパ状に形成されている。
【0034】
[0053]いくつかの実施形態では、超音波伝達部材230、ワイヤ、または、導波部は、カテーテル本体204の内腔を通って長手方向に延在する。超音波エネルギーは、超音波伝達部材230を通って、ハウジング208の近位端に接続された超音波トランスデューサ126からデバイスの遠位部分まで移動することができる。超音波伝達部材230は、約10Hzから約20MHzまでの周波数で動作することができる。一実施形態では、振動周波数は、20kHzである。一実施形態では、振動周波数は、17kHzである。超音波伝達部材230は、連続モード、パルスモード、または、その両方の組み合わせで動作してもよい。
【0035】
[0054]
図3Aは、一実施形態による膨張された薬剤移送バルーン200を示している。図示するように、カテーテル本体204は、連絡部350のところで薬剤コートバルーン壁300に融合または接合される。このようにして、流体は、必要に応じて薬剤コートバルーン壁300を膨張および収縮させるために、カテーテル本体204を通って、薬剤移送バルーン200に流入するとともに、薬剤移送バルーン200から流出するように移送され得る。
【0036】
[0055]
図3Bは、
図3Bの断面を示しており、また、接合部325,322のところでそれぞれ超音波伝達部材230に遠位側および近位側で接合される支持ワイヤ320を示している。支持ワイヤ320は、はんだ付け、溶接、または、他の機械的な接合によって超音波伝達部材230に固定されてもよい。
【0037】
[0056]
図3Cに示すように、超音波伝達部材230は、カテーテル本体204の少なくとも1つの内腔を通ってもよい。このようにして、流体は、カテーテル本体204を通され、超音波伝達部材230を取り囲み、また、薬剤移送バルーン200の内部に流入することができる。他の実施形態では、カテーテル本体204は、追加的な内腔を備えていてもよい。例えば、カテーテル本体は、例えばYコネクタから超音波伝達部材230の遠位先端201まで、超音波伝達部材230を取り囲む内腔を備えていてもよい。このように、カテーテル本体の分離された内腔は、Yコネクタおよび薬剤移送バルーン200の内部まで、および、Yコネクタおよび薬剤移送バルーン200の内部から液体を供給するために、膨張/収縮専用の内腔として使用され得る。
【0038】
[0057]
図3Dに戻ると、薬剤移送バルーン200が、薬剤コートバルーン壁300の内径部分に位置決めされた4つの支持ワイヤ320を備えていることが分かる。このようにして、支持ワイヤは、薬剤コートバルーン壁300の内面に接触するとともに固定される。しかしながら、
図3D’および
図3D’’に示すように、いくつかの実施形態では、支持ワイヤは、
図3D’のようにバルーン壁の外径部分に配置されるとともに固定されるか、
図3D’’のようにバルーン材料内に埋め込まれる。さらに、薬剤移送バルーン200は、4つよりも多いか、または、4つよりも少ない支持ワイヤ320を備えていてもよい。例えば、
図4A〜4Dに示す実施形態では、薬剤移送バルーン400は、薬剤コートバルーン壁300の内径部分の周りで均等に離間された12個の支持ワイヤ320を有している。
【0039】
[0058]
図5Aは、一実施形態による収縮された薬剤移送バルーン500を示している。薬剤コートバルーン壁300の近位端は、カテーテル本体204の遠位端に融合または接合される。薬剤コートバルーン壁300の遠位端は、超音波伝達部材230の遠位端201の近傍に融合または接合される。
【0040】
[0059]
図5Bに示すように、一実施形態では、支持ワイヤ320は、近位接合部322および遠位接合部325のところで超音波伝達部材230に近位側および遠位側で接合されてもよい。この実施形態では、4つの支持ワイヤ320は、超音波伝達部材230の上および周りで捻られ、薬剤コートバルーン壁300内に埋め込まれる。カテーテル本体204は、バルーンキャビティ510と流体連通してもよい。バルーンキャビティ510内の圧力が上昇すると、4つの支持ワイヤ320は、
図5Cに示すように、ほどけて、薬剤コートバルーン壁300とともに拡張することができる。
【0041】
[0060]
図6A〜6Dは、治療処置中に機械的に振動されるように構成された薬剤移送バルーン900の例示的な使用方法の工程を示している。
図6は、部分的な動脈閉塞650を有する動脈600の縦断面図を示している。閉塞650は、アテローム、血栓、プラーク、石灰化物質、または、それらの組み合わせからなってもよい。図示目的で、部分的な動脈閉塞650は、
図6A〜6Dに関して説明されるデバイスおよび方法に関連付けて示されている。しかしながら、本明細書に記載された全てのデバイスおよび方法を静脈内の閉塞に適用することもできる。さらに、薬剤移送バルーンが動脈内および動脈のまわりで使用されるように図示され説明されるものの、このデバイスは、静脈および毛細血管を含む他の血管、または、他のチューブ状チャネル(例えば、リンパ系のチャネル)にも使用され得る。このデバイスは、完全な動脈閉塞または静脈閉塞に関しても使用され得る。
【0042】
[0061]
図6Aに示すように、部分的な動脈閉塞650は、内腔の一部分を塞いでおり、したがって、血液の流れを塞いでいる。そのような閉塞を開き、病変部を通る血液の流れを回復させ、したがって、血液供給および心臓機能を改善することが望ましい。動脈は、中央内腔601と、3つの層を有する動脈壁(すなわち、内膜602、中間層603および外膜604)と、を有している。3つの層の全ては、弾性組織、平滑筋および接続組織(コラーゲン)からなる。動脈壁の組織は、内膜下空間と呼ばれる場合が多い。外膜、すなわち、動脈の外側の層の外部の領域は、血管の外側空間と呼ばれる。図示するように、一実施形態では、薬剤移送バルーン900aの使用方法は、ガイドワイヤ800を中央内腔601内に位置決めすることによって開始され得る。
【0043】
[0062]この方法は、
図6Bに示すように、薬剤移送バルーン900をガイドワイヤ801上に通して対象場所に到達することによって継続し得る。対象場所には、部分的な動脈閉塞650が含まれ得る。本実施形態では、薬剤移送バルーン900は、薬剤移送バルーン900の遠位端に配置された短いガイドワイヤ内腔805を備えている。薬剤移送バルーン900は、カテーテル本体204と薬剤コートバルーン壁300とを備えている。薬剤コートバルーン壁300は、薬剤コートバルーン壁300内に埋め込まれた少なくとも1つの支持ワイヤ320を備えている。超音波伝達部材230は、カテーテル本体204を通って、薬剤コートバルーン壁300内に埋め込まれた少なくとも1つの支持ワイヤ320と接続される。
【0044】
[0063]カテーテル本体204、超音波伝達部材230、および/または、薬剤コートバルーン壁300内に埋め込まれた支持ワイヤ320は、1つ以上の可視化マーカーを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、可視化マーカーは、X線不透過性マーカーを備えている。可視化マーカーは、薬剤移送バルーン900の位置および向きを決定する助けとなり得る。
【0045】
[0064]この方法は、
図6Cおよび
図6Dに示すように継続され得る。図示するように、薬剤移送バルーン900が対象場所に位置決めされると(すなわち、中央内腔内で部分的な動脈閉塞650のまわりに位置決めされると)、薬剤移送バルーン900は、膨張される。上述したように、薬剤移送バルーン900は、超音波デバイスの膨張ポートを通じて液体を注入することによって膨張され得る。次いで、液体は、カテーテル本体204を通って流れ、バルーン内部に流入する。したがって、薬剤コートバルーン壁300は、部分的な動脈閉塞650および/または内部血管壁610に接触するように形成され得る。
【0046】
[0065]この方法は、超音波振動を薬剤移送バルーン900に加えることによって継続する。一実施形態では、
図1のシステム100が使用される。本実施形態では、ユーザは、フットスイッチ128を押し下げることによってシステム100を起動する。次に、信号発生器127は、電気信号を超音波トランスデューサ126に送信する。次いで、超音波トランスデューサ126は、電気信号を超音波振動に変換する。超音波振動は、超音波伝達部材230を介して薬剤移送バルーン900に伝達される。
【0047】
[0066]いくつかの実施形態では、超音波伝達部材230は、縦に振動する。したがって、薬剤コートバルーン壁300内に埋め込まれて超音波伝達部材230に接続された1つ以上の支持ワイヤ320も縦に振動する。相対的に薄い支持ワイヤ320は、相対的に厚い超音波伝達部材230と比べて、薬剤コートバルーン壁300の表面にわたって高周波振動を伝えることができる。したがって、膨張された薬剤コートバルーン壁300は、部分的な動脈閉塞650および/または内部血管壁610と接触した状態で縦に振動することができる。このようにして、薬剤は、薬剤コートバルーン壁300から物理的に剥がれることができる。さらに、高周波振動によって、薬剤が血管壁の層(すなわち、内膜602、中間層603および/または外膜604)に入ることができる。また、超音波振動によって、キャビテーション効果を生じさせることができる。キャビテーション効果は、血管壁の内部に移送される薬剤の量を増大させることもできる。
【0048】
[0067]いくつかの実施形態では、超音波エネルギーが超音波デバイスを介して薬剤移送バルーン900まで移動するときに、薬剤移送バルーン900が同一の起動サイクルにおける後の時間よりもランダムかつ活動的に振動する初期期間が存在する。初期期間の後、薬剤移送バルーン900は、定常状態に落ち着く。換言すれば、超音波エネルギーが最初に薬剤移送バルーン900に到達したときに、縦振動は、高周波振動が支持ワイヤ320および薬剤コートバルーン壁300に伝達される状態で、初期吸収され、したがって、振動すなわち「衝撃」を与えて、バルーンから薬剤が剥離する。このようにして、いくつかの実施形態では、超音波エネルギーがパルスすなわち「オンオフ」の態様で提供される。例えば、いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは、短い期間の間のみで移送され、その後に、動作しない短い期間が続く。いくつかの実施形態では、超音波エネルギーは、30秒ごとの自動的なタイムアウトを有して最大5分の間、移送される。
【0049】
[0068]
図6Dに示すように、薬剤移送バルーン900は、4つの支持ワイヤ320を備えている。薬剤移送バルーン900の内部910の圧力が増大すると、薬剤コートバルーン300は拡張し、薬剤コートバルーン300の外面の少なくとも一部分は、部分的な動脈閉塞650に接触する。図示するように、部分的な動脈閉塞650は、血管管腔の直径の全体のまわりに位置している。しかしながら、部分的な動脈閉塞650は、薬剤コートバルーン300の外面の少なくとも一部分が血管壁の内面に接触できるように、血管管腔の直径の全体のまわりに位置していなくてもよい。さらに、薬剤移送バルーン900の内部910の圧力が増大すると、支持ワイヤ320は、集中した力を部分的な動脈閉塞650に加えることができる。そのような力は、部分的な動脈閉塞650を修正、穿刺および/または割ることができる。薬剤移送バルーン900が振動されるとき、振動する支持ワイヤ320は、部分的な動脈閉塞650をさらに修正、穿刺および/または割ることもできる。
【0050】
[0069]超音波振動が薬剤移送バルーン900に加えられた後、薬剤移送バルーン900は、収縮され取り除かれることができる。流体は、バルーンの内部から、また、カテーテル本体204を通って取り除かれることができる。いくつかの実施形態では、ステントが血管内に配置される。
【0051】
[0070]
図7に戻ると、薬剤移送バルーン700の一実施形態は、内部ガイドワイヤ内腔710を備えている。内部ガイドワイヤ内腔710は、カテーテル本体204と、バルーンの内部と、を通ることができる。次いで、内部ガイドワイヤ内腔710は、バルーンを通過して出ることができる。バルーンは、シールされるか、あるいは、ガイドワイヤ内腔とバルーンとの間の境界に接合され得る。このようにして、内部ガイドワイヤ内腔710は、ガイドワイヤ上に通され、対象場所に位置決めされ得る。
【0052】
[0071]このように、上述の様々な実施形態は、閉塞血管の治療を行うための多くの方法を提供する。さらに、説明した技法は、様々な医療処置と併せて使用することで広く適用することができる。勿論、このような目的または利点のすべてが、本明細書に記載のシステムを使用する任意の特定の実施形態によって、必ずしも達成できるとは限らないことを理解されたい。すなわち、例えば、システムは、本明細書で教示または提案される他の目的または利点を必ずしも達成しなくても、本明細書で教示された1つの利点または一群の利点を達成または最適化するような態様で開発され得ることが、当業者には理解されよう。
【0053】
[0072]さらに、当業者には、様々な実施形態からの様々な特徴を相互に置換できることが理解されよう。これらの技法およびデバイスは、特定の実施形態および例に関して開示されたが、当業者には、これらの技法およびデバイスが、具体的に開示された実施形態を越えて、他の実施形態および/または用途に、また、これらの自明な修正形態および均等物に拡張できることが理解されよう。さらに、記載された本発明の様々な態様および特徴は、別々に、一緒に組み合わせて、または、互いに置換して実施できること、ならびに、これらの特徴および態様の様々な組合せおよびサブコンビネーションを作ることができ、それらも本発明の範囲内に入ることが意図されている。したがって、本明細書に開示されたシステムの範囲は、上述の特定の開示された実施形態によって限定されるべきものではなく、次の特許請求の範囲を公正に読むことのみによって決定されるべきである。
本発明は、以下の形態としても実現可能である。
[形態1]
薬剤移送バルーンカテーテルであって、
発生器に接続されるように構成された近位端と、遠位端と、を有する超音波伝達部材を備え、
前記発生器は、前記超音波伝達部材に縦振動を提供するように構成され、
前記薬剤移送バルーンカテーテルは、さらに、
前記超音波伝達部材の前記遠位端に接続されるとともに、膨張状態と収縮状態との間を移動可能なバルーンと、
少なくとも、前記バルーンが前記膨張状態にあるときに、前記超音波伝達部材から前記バルーンに前記縦振動を伝達するように、前記超音波伝達部材と前記バルーンとに接続される少なくとも1つのワイヤと
を備える薬剤移送バルーンカテーテル。
[形態2]
形態1に記載のデバイスであって、
遠位端と、少なくとも1つの内腔と、を有するカテーテル本体をさらに備え、
前記少なくとも1つの内腔は、前記カテーテル本体を通って長手方向に延在し、
前記カテーテル本体は、前記超音波伝達部材の少なくとも一部分を取り囲むとともに、前記バルーンと流体接続される
デバイス。
[形態3]
形態1または形態2に記載のデバイスであって、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記超音波伝達部材の第1の場所に接合される近位端と、前記超音波伝達部材の第2の場所に接合される遠位端と、を有しており、
前記第2の場所は、前記第1の場所から遠位側に離間されている
デバイス。
[形態4]
形態1ないし形態3のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記超音波伝達部材に接続されるとともに前記バルーンの表面に接触する4本のワイヤを備える
デバイス。
[形態5]
形態1ないし形態3のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記超音波伝達部材に接続されるとともに前記バルーンの表面に接触する12本のワイヤを備える
デバイス。
[形態6]
形態1ないし形態5のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記バルーンの内面に接触する
デバイス。
[形態7]
形態1ないし形態5のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記バルーンの外面に接触する
デバイス。
[形態8]
形態1ないし形態7のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記少なくとも1つのワイヤは、前記バルーン内に埋め込まれる
デバイス。
[形態9]
形態1ないし形態8のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記バルーンは、少なくとも1つの治療剤でコーティングされる
デバイス。
[形態10]
形態9に記載のデバイスであって、
前記少なくとも1つの治療剤は、狭窄防止薬剤を含む
デバイス。
[形態11]
血管用の薬剤移送デバイスであって、
カテーテル本体であって、該カテーテル本体を通って長手方向に延在する少なくとも1つの内腔を有するカテーテル本体と、
前記内腔を通って長手方向に延在する細長い超音波伝達部材と、
前記超音波伝達部材に接続される少なくとも1つの支持ワイヤを有する、薬剤コーティングされたバルーンと
を備える薬剤移送デバイス。
[形態12]
形態11に記載のデバイスであって、
前記超音波伝達部材は、前記薬剤コーティングされたバルーンを通って長手方向に延在する
デバイス。
[形態13]
血管での再狭窄を防止する方法であって、
少なくとも1つの薬剤でコーティングされた膨張可能なバルーンを遠位端に有する超音波デバイスを、前記血管の中央内腔内に位置決めする工程と、
前記バルーンを膨張させる工程と、
前記バルーンから前記薬剤を遊離させて該薬剤を前記血管の内部部分に移送するために、前記超音波デバイスの前記遠位端に振動を伝達する工程と
を備える、血管の再狭窄を防止する方法。
[形態14]
形態13に記載の方法であって、
前記膨張可能なバルーンは、少なくとも1つの内部ワイヤを備える
方法。
[形態15]
形態13または形態14に記載の方法であって、
前記振動は、超音波である
方法。
[形態16]
形態13ないし形態15のいずれか一項に記載の方法であって、
前記振動は、縦方向にある
方法。
[形態17]
形態13ないし形態16のいずれか一項に記載の方法であって、
前記薬剤は、狭窄防止薬剤である
方法。