【文献】
K. Yamanouchi et al.,Theoretical and Experimental Results of Flat Phase Linear-Wide Band-Loss Filters Using Dispersive Unidirectional Interdigital Transducers,Frequency Control Symposium, 2007 Joint with the 21st European Frequency and Time Forum. IEEE International,米国,IEEE,2007年 5月29日,699-703
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各弾性表面波変換器は、前記基板が、128°YカットX方向伝搬の基板、または、カット角が120〜136°の範囲のYカットX方向伝搬の基板、または、これらの基板の表面ならびに前記正電極および前記負電極上にSiO2膜を、その膜厚をHとすると、H/X01またはH/X02が0.1〜0.6の範囲になるよう付着させた基板から成り、
各すだれ状電極は、
前記電極周期長が短くなる方向に向かって、励起される弾性表面波の強度が大きくなるダウン方向のすだれ状電極から成り、前記正電極および前記負電極の膜厚をHelとすると、前記正電極および前記負電極がAl電極から成り、膜厚比(Hel/X01またはHel/X02)が0.002〜0.046の範囲、もしくは、前記正電極および前記負電極がCu電極から成り、膜厚比が0.002〜0.030の範囲、もしくは、前記正電極および前記負電極がCr電極から成り、膜厚比が0.005〜0.012の範囲、もしくは、前記正電極および前記負電極が、Cr膜厚が全体の5%以下のCu/Cr電極から成り、膜厚比が0.002〜0.02の範囲、もしくは、前記正電極および前記負電極が、Cr膜厚が全体の5%以下のAu/Cr電極から成り、膜厚比が0.002〜0.1の範囲となるよう構成されている、または、
前記電極周期長が長くなる方向に向かって、励起される弾性表面波の強度が大きくなるアップ方向のすだれ状電極から成り、前記正電極および前記負電極がAl電極から成り、膜厚比が0.048〜0.10の範囲、または、前記正電極および前記負電極がCu電極から成り、膜厚比が0.030〜0.100の範囲、または、前記正電極および前記負電極がCr電極から成り、膜厚比が0.013〜0.080の範囲、または、前記正電極および前記負電極が、Cr膜厚が全体の5%以下のCu/Cr電極から成り、膜厚比が0.030〜0.100の範囲、または、前記正電極および前記負電極が、Cr膜厚が全体の50%以上の、Al/Cr電極もしくはAu/Cr電極もしくはCu/Cr電極もしくはAg/Cr電極から成るとき、膜厚比が0.018〜0.08の範囲となるよう構成されていることを
特徴とする請求項5記載の弾性表面波フィルタ。
各弾性表面波変換器は、前記基板が、128°YカットX方向伝搬の基板、または、カット角が120〜136°カットの範囲のYカットX方向伝搬の基板、または、これらの基板の表面ならびに前記正電極および前記負電極上にSiO2膜を、その膜厚をHとすると、H/X01またはH/X02が0.1〜0.6の範囲になるよう付着させた基板から成り、
各すだれ状電極は、前記正電極および前記負電極の膜厚をHelとすると、前記正電極および前記負電極がAl電極から成り、膜厚比(Hel/X01またはHel/X02)が0.040〜0.060の範囲、または、前記正電極および前記負電極がCu電極から成り、膜厚比が0.026〜0.04の範囲、または、前記正電極および前記負電極がCr電極から成り、膜厚比が0.013〜0.020の範囲、または、前記正電極および前記負電極が、Cr膜厚が全体の5%以下のCu/Cr電極から成り、膜厚比が0.030〜0.045の範囲となるよう構成されており、
各すだれ状電極は、前記電極周期長が短くなる方向に向かって、励起される弾性表面波の強度が大きくなるダウン方向のすだれ状電極から成り、i番目の電極の幅が(3/10)Xi、またはその±10%の範囲となるよう構成されている、または、前記電極周期長が長くなる方向に向かって、励起される弾性表面波の強度が大きくなるアップ方向のすだれ状電極から成り、i番目の電極の幅が(7/10)Xi、またはその±10%の範囲となるよう構成されていることを
特徴とする請求項5記載の弾性表面波フィルタ。
各弾性表面波変換器は、前記基板が、128°YカットX方向伝搬の基板、またはカット角が120〜136°の範囲のYカットX方向伝搬の基板、または−5°〜40°YカットX方向伝搬のLiNbO3基板、またはX−112°Y LiTaO3基板、または伝搬方向が100°〜120°の範囲のLiTaO3基板、またはST−Cut Quartzもしくは40°〜46°YカットX方向伝搬の水晶基板、またはYカットZ方向伝搬の基板、または−5°〜40°YカットX方向伝搬のLiTaO3基板から成り、
各すだれ状電極は、前記電極周期長が長くなる方向に向かって、励起される弾性表面波の強度が大きくなるアップ方向のすだれ状電極から成り、前記正電極と前記負電極との間に誘電体膜が付着されていることを
特徴とする請求項5記載の弾性表面波フィルタ。
【背景技術】
【0002】
従来のすだれ状電極(インターデジタルトランスジューサ、IDT)を用いて弾性表面波を励振受信するデバイス、即ち、圧電基板上のすだれ状電極によって弾性表面波を励振(出力)し、デバイスの左右双方向に均等に伝搬する波動を受信(入力)する変換器として用いられるタイプのトランスバーサル型弾性表面波フィルタおよびこれを用いた電子装置では、基本的に6dBのロスが存在することが知られている。そこで、このロスを減少させた低損失特性を得るため、従来から各種の一方向性弾性表面波変換器が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このような一方向性弾性表面波変換器は、以下の4種類に大別することができる。
(a)3種のIDT電極子に各々零度、120度及び240度の位相差を有する信号を印加する三相一方向性デバイス(例えば、非特許文献1参照)、
(b)一般のすだれ状電極子間を縫ってミアンダラインを設け、これを接地電極とし、90度位相差を有する信号を印加するグループ型一方向性変換器(例えば、非特許文献2参照)、
(c)アルミニウムすだれ状電極子と金の如き大密度金属の電極子(弾性表面波反射用)とをペアとし、弾性表面波の励振の中心と反射の中心との間隔を、励起した波動の波長の1/8とした内部反射一方向性変換器(例えば、非特許文献3参照)、
(d)伝搬方向に周期の異なる正規型の分散型すだれ状電極であって、周波数の増加と共に、遅延時間が小さくなるダウン方向の分散型すだれ状電極が、ダウン方向に方向性を有する一方向性変換器(例えば、非特許文献4参照)。
【0004】
しかし、(a)の三相一方向性変換器は、広い周波数範囲で波動伝搬の一方向性が保たれるが、3本のバスバーのうちの一本のバスバー上をオーバーブリッジせしめる必要があり、製造が極めて困難で、高価となるのみならず、複雑な位相器を要するという問題があった。また、シャープなカットオフ特性を得るためには、複雑な重み付け等が必要であるという問題もあった。(b)のグループ型一方向性変換器も、90度位相器(具体的にはコイル)を必要とする上、ミアンダラインの総延長が長くなり、オーミックな損失に基づくフィルタの挿入損失が大きくなってしまうという問題があった。また、シャープなカットオフ特性を得るためには、複雑な重み付け等が必要であるという問題もあった。(c)の内部反射型一方向性変換器は、励振の位置と反射の位置とを、λ/8ずれた配置とすることにより、位相器を必要としない一方向性すだれ状変換器であり、優れた特性が期待される。しかし、シャープなカットオフ特性を得るためには、複雑な重み付け等が必要であること、また広帯域特性を得るためには、並列接続が必要であること、などの問題があった。
【0005】
これらに対し、(d)の分散型すだれ状電極変換器は、一般に、周波数の増加と共に遅延時間が小さくなるダウン構造の正規型構造分散型すだれ状電極が順方向の方向性をもつこと、また、分散型すだれ状電極はシャープなカットオフ特性が得られること、などの特徴を有している。しかし、この構造では、通過帯域では、大きなリップルが生ずることや、カットオフ特性にリップルが生ずることなどの問題があった。また、このままでは、分散型特性をもったフィルタしか得られないという問題もあった。
【0006】
そこで、非分散型の特性を得るために、本発明者等により、ダウン構造分散型すだれ状電極の電極上に誘電体薄膜を蒸着した、ダウン方向に方向性を有する正規型構造の分散型すだれ状電極と、周波数の増加と共に遅延時間が大きくなるアップ構造分散型すだれ状電極の電極間に誘電体薄膜を蒸着した、アップ方向に方向性を有する正規型構造の分散型すだれ状電極とを用いた非分散型低損失フィルタが提案されている(例えば、非特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献4に記載の非分散型すだれ状電極は、非分散型の特性は得られるが、通過帯域やカットオフ特性に、まだ大きなリップルが生じてしまうという課題があった。また、誘電体薄膜を電極上および電極間に蒸着する必要があり、構造が複雑となり、製造が困難であるという課題もあった。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制し、比較的容易に製造することができる弾性表面波変換器、弾性表面波フィルタおよび弾性表面波フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る弾性表面波変換器は、基板の表面に配置されたすだれ状電極により、弾性表面波を励振および/または伝搬してきた弾性表面波を受信する弾性表面波変換器であって、前記すだれ状電極は、交互に配置された正電極と負電極とを有し、前記正電極と前記負電極との合計がN+1本(Nは
50以上の整数)であり、前記正電極および前記負電極のうち、1番目の電極からN+1番目の電極に向かって電極周期長が徐々に短くなる分散型のすだれ状電極から成り、前記正電極および前記負電極のうち、X
0を基準距離、D
0を0.05〜2.0の値とすると、i番目の電極とi+1番目の電極との間の距離X
i(iは1以上N以下の整数)が、
X
i=X
0×[1+(D
0/N)×{N−(i−1)}]×a
i
(ここで、0.7≦a
i≦1.3)
であり、i番目の電極の幅が、(X
i/2)×a
iであり、前記正電極と前記負電極とが互いに隣接する部分の長さ(交差幅)が、K+1番目(Kは2以上N/2より小さい整数)の電極からN−K番目の電極まで所定の長さを有し、K番目の電極から1番目の電極に向かって、
前記正電極または前記負電極のいずれか一方の電極を短くすることで徐々に短くなっており、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、
他方の電極を短くすることで徐々に短くなって
おり、50≦N<100のとき、5≦K≦15であり、100≦N<200のとき、10≦K≦20であり、200≦N<400のとき、15≦K≦30であり、400≦Nのとき、20≦K≦40であることを特徴とする。
【0011】
特に、前記正電極と前記負電極とが互いに隣接する部分の長さは、W
0を基準長さ、W
i(iは1以上N以下の整数)をi番目の電極とi+1番目の電極とが互いに隣接する部分の長さとすると、
W
1≦0.5W
0、W
N≦0.5W
0、
iがK+1からN−Kのとき、0.9W
0≦W
i≦1.1W
0、
iが2からK、かつ奇数のとき、W
i=W
0−{(W
0−W
1)/K}×(K+1−i)×b
i、
iが2からK、かつ偶数のとき、W
i=W
i−1
iがN−K+1からN−1、かつ奇数のとき、W
i=W
0−{(W
0−W
N)/K}×(i−N+K)×b
i
iがN−K+1からN−1、かつ偶数のとき、W
i=W
i−1
(ここで、0.8≦b
i≦1.2)
であることが好ましい。
【0012】
本発明に関する弾性表面波変換器で、前記正電極と前記負電極とが互いに隣接する部分の長さは、W
0を基準長さ、W
i(iは1以上N以下の整数)をi番目の電極とi+1番目の電極とが互いに隣接する部分の長さとすると、
W
1≦0.5W
0、W
N≦0.5W
0、
iがK+1からN−Kのとき、0.9W
0≦W
i≦1.1W
0、
iが2からKのとき、W
i=W
0−{(W
0−W
1)/K}×(K+1−i)×b
i、
iがN−K+1からN−1のとき、W
i=W
0−{(W
0−W
N)/K}×(i−N+K)×b
i
(ここで、0.8≦b
i≦1.2)
であってもよい。
【0013】
本発明に係る弾性表面波変換器は、1番目の電極からN+1番目の電極に向かって電極周期長が徐々に短くなる分散型のすだれ状電極を有するため、ダウン方向またはアップ方向に方向性を持つ一方向性特性を有する。ここで、ダウン方向のすだれ状電極は、電極周期長が短くなる方向に向かって、励起される弾性表面波の強度が大きくなる(弾性表面波が伝搬する)ものであり、アップ方向のすだれ状電極は、電極周期長が長くなる方向に向かって、励起される弾性表面波の強度が大きくなる(弾性表面波が伝搬する)ものである。また、正電極および負電極のインピーダンス(各電極材料の柔らかさ)Z
mと基板のインピーダンス(基板の柔らかさ)Z
0との関係が、Z
m>Z
0のときダウン方向、Z
m<Z
0のときアップ方向となる。
本発明に係る弾性表面波変換器は、電極間の距離と電極の幅とを所定の割合で変化させており、特性のよい分散型のすだれ状電極とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る弾性表面波変換器は、正電極と負電極とが互いに隣接する部分の長さを、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって徐々に短くすることにより、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制することができ、シャープなカットオフ特性を得ることができる。これにより、一方向性の分散型のトランスバーサル型フィルタや分散型共振器を構成することができる。
【0015】
このように、本発明に係る弾性表面波変換器は、すだれ状電極で励起または受信する弾性表面波の位相および振幅に関して、二次元の重み付けを行うことにより、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制することができる。また、本発明に係る弾性表面波変換器は、電極上および電極間に誘電体薄膜を蒸着する必要がないため、誘電体薄膜を蒸着するものと比べて、容易に製造することができる。また、電極上または電極間に誘電体薄膜を蒸着してもよいが、その場合でも、高度のマスク合わせを必要としないため、容易に製造することができる。なお、基板は、圧電基板から成ることが好ましい。
【0016】
本発明に
関する弾性表面波変換器で、前記すだれ状電極は、前記正電極と前記負電極とが互いに隣接する部分の長さが、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、正電極および/または負電極を短くすることで徐々に短くなっていることが好ましい。この場
合、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、正電極または負電極のいずれか一方のみを短くしてもよい。また、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、正電極および負電極の双方を短くしてもよい。いずれの場合であっても、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制することができる。
【0019】
本発明に係る弾性表面波フィルタは、本発明に係る弾性表面波変換器を1対有し、各弾性表面波変換器は、一方の弾性表面波変換器のすだれ状電極で励振したときの弾性表面波の強度が、他方の弾性表面波変換器に向かって大きくなり、前記他方の弾性表面波変換器のすだれ状電極で励振したときの弾性表面波の強度が、前記一方の弾性表面波変換器に向かって大きくなるよう、並べて配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る弾性表面波フィルタは、1対の弾性表面波変換器の分散型のすだれ状電極を、励振したときの弾性表面波の強度が大きくなる方向、すなわち弾性表面波が伝搬する方向で互いに向かい合わせ、並べて配置しているため、双方ともダウン方向またはアップ方向のすだれ状電極の場合に、分散型の弾性表面波フィルタとなり、一方がダウン方向、他方がアップ方向のすだれ状電極の場合に、非分散型の弾性表面波フィルタとなる。本発明に係る弾性表面波フィルタは、一方の弾性表面波変換器が送信側(入力側)、他方の弾性表面波変換器が受信側(出力側)として機能するトランスバーサル型のフィルタになっている。また、ダウン方向のすだれ状電極を送信側(入力側)とし、アップ方向のすだれ状電極を受信側(出力側)としたフィルタを用いることにより非分散型のフィルタが得られ、これも本発明に含まれる。また、各弾性表面波変換器が本発明に係る弾性表面波変換器であるため、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制することができ、シャープなカットオフ特性を得ることができる。
【0021】
本発明に係る弾性表面波フィルタで、1対の弾性表面波変換器は、双方ともダウン方向のすだれ状電極を有するものであっても、アップ方向のすだれ状電極を有するものであってもよく、一方がダウン方向のすだれ状電極を有するものであり、他方がアップ方向のすだれ状電極を有するものであってもよい。
【0022】
本発明に係る弾性表面波フィルタは、各弾性表面波変換器のすだれ状電極で励振または受信する弾性表面波の中心周波数が等しくなるよう構成されていることが好ましい。この場合、送信側の弾性表面波変換器のすだれ状電極で励振される弾性表面波の中心周波数と、受信側の弾性表面波変換器のすだれ状電極で受信される弾性表面波の中心周波数とを合わせることができ、フィルタとしての性能を高めることができる。
【0023】
この場合、例えば、各弾性表面波変換器が(1)式を満たす弾性表面波変換器から成り、前記一方の弾性表面波変換器のすだれ状電極の中央での電極間の距離X
01を、Nが偶数のとき、X
01=X
N/2、Nが奇数のとき、X
01=(X
(N−1)/2+X
(N+1)/2)/2とし、前記他方の弾性表面波変換器のすだれ状電極の中央での電極間の距離X
02を、Nが偶数のとき、X
02=X
N/2、Nが奇数のとき、X
02=(X
(N−1)/2+X
(N+1)/2)/2とし、前記一方の弾性表面波変換器の前記正電極と前記負電極とを短絡して、前記一方の弾性表面波変換器のすだれ状電極で弾性表面波を励起したときの、そのすだれ状電極の中央でのその弾性表面波の伝搬速度をV
01とし、前記他方の弾性表面波変換器の前記正電極と前記負電極とを短絡して、前記他方の弾性表面波変換器のすだれ状電極で弾性表面波を励起したときの、そのすだれ状電極の中央でのその弾性表面波の伝搬速度をV
02としたとき、
X
01=(V
01/V
02)×X
02×k (2)
(ここで、0.9≦k≦1.1)
となるよう構成されていてもよい。このとき、各弾性表面波変換器のすだれ状電極で励振または受信する弾性表面波の中心周波数をf
0とし、各すだれ状電極の中央での弾性表面波の波長をλ
0とすると、k=1.0の場合、
f
0=V
0/λ
0=V
01/2X
01=V
02/2X
02 (3)
となる。
【0024】
本発明に係る弾性表面波フィルタは、例えば、以下の製造方法により容易に製造することができる。本発明に係る弾性表面波フィルタの製造方法は、基板上の一方の弾性表面波変換器に対応する位置に、第1の金属膜を付着し、その上に、各弾性表面波変換器に対応するパターンを残してレジスト膜を形成し、さらにその上に、第2の金属膜を付着し、前記レジスト膜を、前記レジスト膜の上に付着した前記第2の金属膜とともに除去し、前記第2の金属膜に覆われた部分を残して、前記第1の金属膜をエッチングにより除去してもよい。
【0025】
また、本発明に係る弾性表面波フィルタの製造方法は、基板上の一方の弾性表面波変換器に対応する位置に、誘電体膜を付着し、その上に、各弾性表面波変換器に対応するパターンを残してレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に覆われた部分を残して、前記誘電体膜をエッチングにより除去し、さらにその上に、金属膜を付着し、前記レジスト膜を、前記レジスト膜の上に付着した前記金属膜とともに除去してもよい。
【0026】
また、本発明に係る弾性表面波フィルタの製造方法は、基板上に、一方の弾性表面波変換器に対応するパターンを残して第1のレジスト膜を形成し、その上に、第1の金属膜を付着し、前記第1のレジスト膜を、前記第1のレジスト膜の上に付着した前記第1の金属膜とともに除去し、その上に、他方の弾性表面波変換器に対応するパターンを残して第2のレジスト膜を形成し、その上に、第2の金属膜を付着し、前記第2のレジスト膜を、前記第2のレジスト膜の上に付着した前記第2の金属膜とともに除去してもよい。
【0027】
また、本発明に係る弾性表面波フィルタの製造方法は、基板上の一方の弾性表面波変換器に対応する位置に、第1の金属膜を、他方の弾性表面波変換器に対応する位置に、第2の金属膜を付着し、その上に、各弾性表面波変換器に対応するパターンを残してレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に覆われた部分を残して、前記第1の金属膜および前記第2の金属膜をエッチングにより除去し、さらに前記レジスト膜を除去してもよい。
【0028】
また、本発明に係る弾性表面波フィルタの製造方法は、基板上に、各弾性表面波変換器に対応するパターンを残してレジスト膜を形成し、第1のマスクで、一方の弾性表面波変換器に対応する位置を覆った後、その上に第1の金属膜を蒸着し、前記第1のマスクを取り除き、第2のマスクで、他方の弾性表面波変換器に対応する位置を覆った後、その上に第2の金属膜を蒸着し、前記第2のマスクを取り除き、前記レジスト膜を、前記レジスト膜の上に付着した前記第1の金属膜および前記第2の金属膜とともに除去してもよい。
【0029】
また、本発明に係る弾性表面波フィルタの製造方法は、前記基板上に、各弾性表面波変換器に対応するパターンで、第1の金属膜を付着し、その上に第2の金属膜を付着し、一方の弾性表面波変換器に対応する位置の上に、レジスト膜を形成し、前記レジスト膜に覆われた部分を残して、前記第2の金属膜をエッチングにより除去し、さらに前記レジスト膜を除去してもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制し、比較的容易に製造することができる弾性表面波変換器、弾性表面波フィルタおよび弾性表面波フィルタの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
[弾性表面波変換器]
図1乃至
図4は、本発明の実施の形態の弾性表面波変換器を示している。
図1に示すように、弾性表面波変換器10は、弾性表面波を励振および/または伝搬してきた弾性表面波を受信する弾性表面波変換器であって、圧電基板から成る基板11と、基板11の表面に配置されたすだれ状電極12とを有している。
【0033】
すだれ状電極12は、正極側バスバー21と負極側バスバー22と複数の正電極23と複数の負電極24とを有している。正極側バスバー21および負極側バスバー22は、所定の間隔を開けて、互いに平行に並んで配置されている。各正電極23は、正極側バスバー21に沿って互いに間隔をあけて、正極側バスバー21から負極側バスバー22に向かって垂直に伸びるよう設けられている。各負電極24は、負極側バスバー22に沿って互いに間隔をあけて、負極側バスバー22から正極側バスバー21に向かって垂直に伸びるよう設けられている。各正電極23および各負電極24は、正極側バスバー21および負極側バスバー22に沿って、互いに接触しないよう、交互に配置されている。
【0034】
すだれ状電極12は、分散型のすだれ状電極から成っている。すだれ状電極12は、正電極23と負電極24との合計をN+1本(Nは5以上の整数)とすると、各正電極23および各負電極24のうち、1番目の電極からN+1番目の電極に向かって電極周期長、すなわち隣り合う電極と電極との間隔(各電極の中心線の間隔)が徐々に短くなっている。より具体的には、
図1に示すように、すだれ状電極12は、正電極23および負電極24のうち、X
0を基準距離、D
0を0.05〜2.0とすると、i番目の電極とi+1番目の電極との間の距離X
i(iは1以上N以下の整数)が、
X
i=X
0×[1+(D
0/N)×{N−(i−1)}]×a
i (1)
(ここで、0.7≦a
i≦1.3)
となっている。また、i番目の電極の幅が(X
i/2)×a
iとなっている。
【0035】
また、
図2乃至
図4に示すように、正電極23と負電極24とが互いに隣接する部分の長さ(交差幅)が、K+1番目(Kは2以上N/2より小さい整数)の電極からN−K番目の電極まで所定の長さを有し、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、徐々に短くなっている。すなわち、
図2および
図3に示す場合、すだれ状電極12は、正電極23と負電極24とが互いに隣接する部分の長さ(交差幅)は、W
0を基準長さ、W
iをi番目の電極とi+1番目の電極とが互いに隣接する部分の長さとすると、
W
1≦0.5W
0、W
N≦0.5W
0、
iがK+1からN−Kのとき、0.9W
0≦W
i≦1.1W
0、
iが2からK、かつ奇数のとき、W
i=W
0−{(W
0−W
1)/K}×(K+1−i)×b
i、
iが2からK、かつ偶数のとき、W
i=W
i−1
iがN−K+1からN−1、かつ奇数のとき、W
i=W
0−{(W
0−W
N)/K}×(i−N+K)×b
i
iがN−K+1からN−1、かつ偶数のとき、W
i=W
i−1
(ここで、0.8≦b
i≦1.2)
となっている。なお、短くなった電極の位置には、無電界部の電極25として、反対側の電極が伸びている。
【0036】
また、
図4に示す場合、すだれ状電極12は、正電極23と負電極24とが互いに隣接する部分の長さ(交差幅)が、W
0を基準長さ、W
iをi番目の電極とi+1番目の電極とが互いに隣接する部分の長さとすると、
W
1≦0.5W
0、W
N≦0.5W
0、
iがK+1からN−Kのとき、0.9W
0≦W
i≦1.1W
0、
iが2からKのとき、W
i=W
0−{(W
0−W
1)/K}×(K+1−i)×b
i、
iがN−K+1からN−1のとき、W
i=W
0−{(W
0−W
N)/K}×(i−N+K)×b
i
(ここで、0.8≦b
i≦1.2)
となっている。なお、短くなった電極の位置には、無電界部の電極25として、反対側の電極が伸びている。
【0037】
より具体的には、
図2に示すように、K番目の電極から1番目の電極に向かって、正電極23または負電極24のいずれか一方の電極(
図2では正電極23)が、上記のW
i(iが1からKまで)に従って徐々に短くなり、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、他方の電極(
図2では負電極24)が、上記のW
i(iがN+1−KからNまで)に従って徐々に短くなっていてもよい。また、
図3に示すように、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、正電極23または負電極24のいずれか一方のみ(
図2では正電極23のみ)が、上記のW
i(iが1からKまで、およびN+1−KからNまで)に従って徐々に短くなっていてもよい。また、
図4に示すように、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって、正電極23および負電極24の双方が、上記のW
i(iが1からKまで、およびN+1−KからNまで)に従って徐々に短くなっていてもよい。
【0038】
なお、Nは、50以上が好ましく、50≦N<100のとき、5≦K≦15であり、100≦N<200のとき、10≦K≦20であり、200≦N<400のとき、15≦K≦30であり、400≦Nのとき、20≦K≦40であることが好ましい。
【0039】
また、正電極23および負電極24は、それぞれCr、Al、Cu、Mo、Au、Ag、W、RuまたはTiのうちの少なくとも1種類を含む薄膜から成っていることが好ましい。また、すだれ状電極12で励振または受信する弾性表面波の中心周波数f
0の調整するために、正電極23および負電極24の各電極上および電極間に、誘電体膜が付着されていてもよい。この誘電体膜は、例えば、TeO
2、SiO
2、SiO、ZnO、LiNbO
3、Ta
2O
5、PZT、Al
2O
3、SiC、AlNまたはガラスから成ることが好ましい。
【0040】
次に、作用について説明する。
弾性表面波変換器10は、1番目の電極からN+1番目の電極に向かって電極周期長が徐々に短くなる分散型のすだれ状電極12を有しているため、ダウン方向またはアップ方向に方向性を持つ一方向性特性を有する。また、弾性表面波変換器10は、正電極23と負電極24とが互いに隣接する部分の長さを、K番目の電極から1番目の電極に向かって、および、N+1−K番目の電極からN+1番目の電極に向かって徐々に短くすることにより、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制することができ、シャープなカットオフ特性を得ることができる。これにより、一方向性の分散型のトランスバーサル型フィルタや分散型共振器を構成することができる。
【0041】
このように、弾性表面波変換器10は、すだれ状電極12で励起または受信する弾性表面波の位相および振幅に関して、二次元の重み付けを行うことにより、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制することができる。また、弾性表面波変換器10は、電極上および電極間に誘電体薄膜を蒸着する必要がなく、誘電体薄膜がない場合には、誘電体薄膜を蒸着するものと比べて、容易に製造することができる。また、電極上または電極間に、誘電体薄膜を蒸着する場合でも、高度のマスク合わせを必要としないため、容易に製造することができる。
【0042】
[弾性表面波フィルタ]
図5乃至
図7は、本発明の実施の形態の弾性表面波フィルタを示している。
図5乃至
図7に示すように、弾性表面波フィルタ30は、本発明の実施の形態の弾性表面波変換器10を1対有している。
【0043】
各弾性表面波変換器10は、共通の基板11の上に、それぞれのすだれ状電極12を形成して成っている。各弾性表面波変換器10は、一方の弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で励振したときの弾性表面波の強度が、他方の弾性表面波変換器10に向かって大きくなり、他方の弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で励振したときの弾性表面波の強度が、一方の弾性表面波変換器10に向かって大きくなるよう、並べて配置されている。すなわち、各弾性表面波変換器10は、弾性表面波が伝搬する方向で互いに向かい合わせて、並べて配置されている。
【0044】
各弾性表面波変換器10は、例えば、
図5に示すように、双方ともダウン方向のすだれ状電極12aを有し、そのダウン方向のすだれ状電極の方向(励振される弾性表面波が伝搬する方向)13aが向かい合うよう並べられていてもよい。また、
図6に示すように、双方ともアップ方向のすだれ状電極12bを有し、そのアップ方向のすだれ状電極の方向(励振される弾性表面波が伝搬する方向)13bが向かい合うよう並べられていてもよい。また、
図7に示すように、一方がダウン方向のすだれ状電極12aを有し、他方がアップ方向のすだれ状電極12bを有し、そのダウン方向のすだれ状電極の方向(励振される弾性表面波が伝搬する方向)13aと、そのアップ方向のすだれ状電極の方向(励振される弾性表面波が伝搬する方向)13bとが向かい合うよう並べられていてもよい。
【0045】
また、各弾性表面波変換器10は、
図2に示すダウン方向またはアップ方向のすだれ状電極12を有するものを組み合わせてもよく、
図3に示すダウン方向またはアップ方向のすだれ状電極12を有するものを組み合わせてもよく、
図4に示すダウン方向またはアップ方向のすだれ状電極12を有するものを組み合わせてもよい。双方ともダウン方向またはアップ方向のすだれ状電極12を有するものを組み合わせたものが、分散型の弾性表面波フィルタ30となり、一方がダウン方向、他方がアップ方向のすだれ状電極12を有するものを組み合わせたものが、非分散型の弾性表面波フィルタ30となる。なお、
図2に示す構成のうち、ダウン方向のすだれ状電極12を組み合わせる場合、各すだれ状電極12の正電極が短くなる側部同士、または、負電極が短くなる側部同士を隣接させると、フィルタ性能が低下する可能性がある。
【0046】
弾性表面波フィルタ30は、各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で励振または受信する弾性表面波の中心周波数が等しくなるよう構成されている。具体的には、
X
01=(V
01/V
02)×X
02×k (2)
(ここで、0.9≦k≦1.1)
を満たすよう構成されている。
【0047】
ここで、X
01は、一方の弾性表面波変換器10のすだれ状電極12の中央での電極間の距離であり、Nが偶数のとき、X
01=X
N/2、Nが奇数のとき、X
01=(X
(N−1)/2+X
(N+1)/2)/2である。また、X
02は、他方の弾性表面波変換器10のすだれ状電極12の中央での電極間の距離であり、Nが偶数のとき、X
02=X
N/2、Nが奇数のとき、X
02=(X
(N−1)/2+X
(N+1)/2)/2である。また、V
01は、一方の弾性表面波変換器10の正電極23と負電極24とを短絡して、その弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で弾性表面波を励起したときの、そのすだれ状電極12の中央でのその弾性表面波の伝搬速度である。また、V
02は、他方の弾性表面波変換器10の正電極23と負電極24とを短絡して、その弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で弾性表面波を励起したときの、そのすだれ状電極12の中央でのその弾性表面波の伝搬速度である。
【0048】
なお、このとき、各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で励振または受信する弾性表面波の中心周波数は等しくなり、各すだれ状電極12の中央でのその弾性表面波の波長も等しくなる。その中心周波数をf
0、弾性表面波の波長をλ
0とすると、k=1.0の場合、
f
0=V
0/λ
0=V
01/2X
01=V
02/2X
02 (3)
の関係が成り立っている。
【0049】
次に、作用について説明する。
弾性表面波フィルタ30は、1対の弾性表面波変換器10の分散型のすだれ状電極12を、励振したときの弾性表面波の強度が大きくなる方向、すなわち弾性表面波が伝搬する方向で互いに向かい合わせ、並べて配置しているため、双方ともダウン方向のすだれ状電極12aまたはアップ方向のすだれ状電極12bの場合に、分散型の弾性表面波フィルタとなり、一方がダウン方向のすだれ状電極12a、他方がアップ方向のすだれ状電極12bの場合に、非分散型の弾性表面波フィルタとなる。弾性表面波フィルタ30は、一方の弾性表面波変換器10が送信側(入力側)、他方の弾性表面波変換器10が受信側(出力側)として機能するトランスバーサル型のフィルタになっている。また、本発明の実施の形態の弾性表面波変換器10により、通過帯域やカットオフ特性でのリップルを抑制することができ、シャープなカットオフ特性を得ることができる。
【0050】
なお、具体的な例では、各弾性表面波変換器10の基板11が、128°YカットX方向伝搬の基板、または、カット角が120〜136°の範囲のYカットX方向伝搬の基板、または、これらの基板の表面ならびに正電極および負電極上にSiO
2膜を、その膜厚をHとすると、H/X
01またはH/X
02が0.1〜0.6の範囲になるよう付着させた基板から成っているとき、各すだれ状電極12を、以下のように構成することができる。すなわち、ダウン方向のすだれ状電極12aの場合、正電極23および負電極24の膜厚をH
elとすると、これらの電極がAl電極から成るとき、膜厚比(H
el/X
01またはH
el/X
02)が0.002〜0.046、Cu電極から成るとき、膜厚比が0.002〜0.030、Cr電極から成るとき、膜厚比が0.005〜0.012、Cu/Cr電極(Cr膜厚は全体の5%以下)から成るとき、膜厚比が0.002〜0.02、Au/Cr電極(Cr膜厚は全体の5%以下)から成るとき、膜厚比が0.002〜0.1の範囲となるよう構成する。また、アップ方向のすだれ状電極12bの場合、各電極がAl電極から成るとき、膜厚比が0.048〜0.10、Cu電極から成るとき、膜厚比が0.030〜0.100、Cr電極から成るとき、膜厚比が0.013〜0.080、Cu/Cr電極(Cr膜厚は全体の5%以下)から成るとき、膜厚比が0.030〜0.100、Al/Cr電極またはAu/Cr電極またはCu/Cr電極またはAg/Cr電極(いずれも、Cr膜厚は全体の50%以上)から成るとき、膜厚比が0.018〜0.08の範囲となるよう構成する。
【0051】
また、各弾性表面波変換器10の基板11が、128°YカットX方向伝搬の基板、または、カット角が120〜136°カットの範囲のYカットX方向伝搬の基板、または、これらの基板の表面ならびに正電極および負電極上にSiO
2膜を、その膜厚をHとすると、H/X
01またはH/X
02が0.1〜0.6の範囲になるよう付着させた基板から成っているとき、各すだれ状電極12を、以下のように構成することができる。すなわち、各電極がAl電極から成るとき、膜厚比(H
el/X
01またはH
el/X
02)が0.040〜0.060、Cu電極から成るとき、膜厚比が0.026〜0.04、Cr電極から成るとき、膜厚比が0.013〜0.020、Cu/Cr電極(Cr膜厚は全体の5%以下)から成るとき、膜厚比が0.030〜0.045の範囲となるよう構成する。さらに、ダウン方向のすだれ状電極12aの場合、i番目の電極の幅が(3/10)Xi、またはその±10%の範囲となり、アップ方向のすだれ状電極12bの場合、i番目の電極の幅が(7/10)Xi、またはその±10%の範囲となるよう構成する。
【0052】
また、各弾性表面波変換器10の基板11が、X−112°Y LiTaO
3基板、または伝搬方向が100°〜120°の範囲のLiTaO
3基板、またはST−Cut Quartzもしくは40°〜46°YカットX方向伝搬の水晶基板、またはYカットZ方向伝搬の基板、または0°〜40°YカットX方向伝搬のLiTaO
3基板から成っているとき、各すだれ状電極12を、以下のように構成することができる。すなわち、ダウン方向のすだれ状電極12aの場合、各電極がAl電極から成るとき、膜厚比(H
el/X
01またはH
el/X
02)が0.005〜0.2、Cu電極から成るとき、膜厚比が0.005〜0.2、Cr電極から成るとき、膜厚比が0.005〜0.2の範囲となるよう構成する。また、アップ方向のすだれ状電極12bの場合、各電極がAu電極から成るとき、膜厚比が0.005〜0.2、Au/Cr電極(Cr膜厚は全体の5%以下)から成るとき、膜厚比が0.005〜0.2の範囲となるよう構成する。
【0053】
また、各弾性表面波変換器10の基板11が、128°YカットX方向伝搬の基板、またはカット角が120〜136°の範囲のYカットX方向伝搬の基板、または−5°〜40°YカットX方向伝搬のLiNbO
3基板、またはX−112°Y LiTaO
3基板、または伝搬方向が100°〜120°の範囲のLiTaO
3基板、またはST−Cut Quartzもしくは40°〜46°YカットX方向伝搬の水晶基板、またはYカットZ方向伝搬の基板、または−5°〜40°YカットX方向伝搬のLiTaO
3基板から成っているとき、各すだれ状電極12を、各電極間に誘電体膜を付着させたアップ方向のすだれ状電極12bとして構成することができる。
【0054】
[弾性表面波フィルタの製造方法]
図8乃至
図13は、本発明の実施の形態の弾性表面波フィルタ30の製造方法を示している。
図8乃至
図13に示す各製造方法によれば、
図7に示す、一方の弾性表面波変換器10がダウン方向のすだれ状電極12aを有し、他方の弾性表面波変換器10がアップ方向のすだれ状電極12bを有する弾性表面波フィルタ30を好適に製造することができる。
【0055】
図8に示す方法では、まず、基板11の上の、アップ方向のすだれ状電極12bを有する一方の弾性表面波変換器10に対応する位置に、第1の金属膜41aを付着する(
図8(A)参照)。ここで、基板11は、例えば、128°YカットX方向伝搬の基板、またはカット角が120〜136°カットの範囲のYカットX方向伝搬の基板から成っている。また、第1の金属膜41aは、例えば、Cr、Al、Cu、またはAu/Crから成っており、この第1の金属膜41aを、膜厚比(H
el/X
01またはH
el/X
02)が0.014、またはその0.7〜1.3倍の範囲で付着させる。
【0056】
第1の金属膜41aが付着した基板11の上に、マスクを用いて、各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12に対応するパターンを残してレジスト膜42を形成する(
図8(B)参照)。さらにその上に、第2の金属膜41bを付着する(
図8(C)参照)。ここで、第2の金属膜41bは、例えば、AlまたはCuから成り、Alから成る場合、膜厚比0.01、Cuから成る場合、膜厚比0.007、またはそれらの0.7〜1.3倍の範囲で付着させる。その後、レジスト膜42を、その上に付着した第2の金属膜41bとともに除去する(
図8(D)参照)。さらに、第2の金属膜41bに覆われた部分を残して、第1の金属膜41aをエッチングにより除去する(
図8(E)参照)。こうして、弾性表面波フィルタ30を製造することができる。
【0057】
また、
図9に示す方法では、まず、基板11の上の、アップ方向のすだれ状電極12bを有する一方の弾性表面波変換器10に対応する位置に、誘電体膜43を付着する(
図9(A)参照)。誘電体膜43が付着した基板11の上に、マスクを用いて、各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12に対応するパターンを残してレジスト膜42を形成する(
図9(B)参照)。その後、レジスト膜42に覆われた部分を残して、誘電体膜43をエッチングにより除去する(
図9(C)参照)。その上に、金属膜41を付着する(
図9(D)参照)。その後、レジスト膜42を、レジスト膜42の上に付着した金属膜41とともに除去する(
図9(E)参照)。こうして、弾性表面波フィルタ30を製造することができる。
【0058】
また、
図10に示す方法では、まず、基板11の上に、マスクを用いて、送信側の弾性表面波変換器10のすだれ状電極12に対応するパターンを残して第1のレジスト膜42aを形成する(
図10(A)参照)。その上に、第1の金属膜41aを付着し、第1のレジスト膜42aを、第1のレジスト膜42aの上に付着した第1の金属膜41aとともに除去する(
図10(B)参照)。その上に、マスク合わせ法を用いて、他方の弾性表面波変換器10に対応するパターンを残して第2のレジスト膜42bを形成する(
図10(C)参照)。さらにその上に、第2の金属膜41bを付着する(
図10(D)参照)。その後、第2のレジスト膜42bを、第2のレジスト膜42bの上に付着した第2の金属膜41bとともに除去する(
図10(E)参照)。こうして、弾性表面波フィルタ30を製造することができる。
【0059】
また、
図11に示す方法では、まず、基板11の上の送信側の弾性表面波変換器10に対応する位置に、第1の金属膜41aを、受信側の弾性表面波変換器10に対応する位置に、第2の金属膜41bを付着する(
図11(A)参照)。その上に、マスクを用いて、各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12に対応するパターンを残してレジスト膜42を形成する(
図11(B)参照)。その後、レジスト膜42に覆われた部分を残して、第1の金属膜41aおよび第2の金属膜41bをエッチングにより除去し、さらにレジスト膜42を除去する(
図11(C)参照)。こうして、弾性表面波フィルタ30を製造することができる。
【0060】
また、
図12に示す方法では、まず、基板11の上に、マスクを用いて、各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12に対応するパターンを残してレジスト膜42を形成する。次に、リフトオフ法により、第1のマスク44aで、受信側の弾性表面波変換器10に対応する位置を覆った後、その上に第1の金属膜41aを蒸着する(
図12(A)参照)。その後、第1のマスク44aを取り除き、リフトオフ法により、第2のマスク44bで、他方の弾性表面波変換器10に対応する位置を覆った後、その上に第2の金属膜41bを蒸着する(
図12(B)参照)。その後、第2のマスク44bを取り除き、レジスト膜42を、レジスト膜42の上に付着した第1の金属膜41aおよび第2の金属膜41bとともに除去する(
図12(C)参照)。こうして、弾性表面波フィルタ30を製造することができる。
【0061】
また、
図13に示す方法では、まず、基板11の上に、各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12に対応するパターンで、第1の金属膜41aを付着し、その上に第2の金属膜41bを付着する。さらに、一方の弾性表面波変換器10に対応する位置の上に、レジスト膜42を形成する(
図13(A)参照)。その後、レジスト膜42に覆われた部分を残して、第2の金属膜41bをエッチングにより除去し、さらにレジスト膜42を除去する(
図13(B)参照)。こうして、弾性表面波フィルタ30を製造することができる。
【0062】
なお、
図8乃至
図13に示す製造方法は、
図7に示す弾性表面波フィルタ30を製造するのに好適に使用することができるが、
図5および
図6に示す弾性表面波フィルタ30も同様の方法により製造することができる。
【実施例1】
【0063】
図5に示す、それぞれダウン方向のすだれ状電極12aを有する1対の弾性表面波変換器10を向い合せた構成を有する弾性表面波フィルタ30について、周波数特性のシミュレーションを行った。各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12aは、それぞれ
図2に示す構成を有しており、(2)式(k=1)を満たすよう調整されている。N=400、D
0=0.3、K=10、a
i=1.0、b
i=1.0の場合についてのシミュレーション結果を、
図14(a)に示す。また、比較のため、N=400、D
0=0.3、K=0、a
i=1.0の場合(正電極23と負電極24とが互いに隣接する部分の長さが、全て同じ長さの場合)についてのシミュレーション結果を、
図14(b)に示す。
【0064】
図14(b)に示すように、K=0で、正電極23と負電極24とが互いに隣接する部分の長さが全て同じ長さの場合には、通過帯域およびカットオフ特性に大きなリップルが認められるが、
図14(a)に示すように、正電極23と負電極24とが互いに隣接する部分の長さが、両端の電極に向かって徐々に短くなる場合には、通過帯域の特性はフラットで、シャープなカットオフ特性が得られており、リップルが抑制されていることが確認された。
【実施例2】
【0065】
図6に示す、ダウン方向のすだれ状電極12aを有する弾性表面波変換器10と、アップ方向のすだれ状電極12bを有する弾性表面波変換器10とを向かい合わせた構成を有する弾性表面波フィルタ30について、周波数特性のシミュレーションを行った。各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12a,12bは、それぞれ
図2に示す構成を有している。なお、(2)式による調整は行っていない。N=400、D=0.2、K=10、a
i=1.0、b
i=1.0の場合についてのシミュレーション結果を、
図15に示す。
【0066】
図15に示すように、カットオフ特性はややシャープさに欠けているが、通過帯域の特性はフラットで、リップルが抑制されていることが確認された。また、
図14(a)と比べて、通過帯域幅が狭くなっているが、これは、(2)式による調整を行っていないため、送信側の弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で励振または受信する弾性表面波の中心周波数と、受信側の弾性表面波変換器10のすだれ状電極12で励振または受信する弾性表面波の中心周波数とが異なっているためであると考えられる。
【実施例3】
【0067】
図5に示す、それぞれダウン方向のすだれ状電極12aを有する1対の弾性表面波変換器10を向い合せた構成を有する弾性表面波フィルタ30について、周波数特性を求める実験を行った。各弾性表面波変換器10のすだれ状電極12aは、それぞれ
図2に示す構成を有しており、(2)式(k=1)を満たすよう調整されている。また、N=200、D
0=0.2、K=10、a
i=1.0、b
i=1.0である。実験で得られた周波数特性を、
図16に示す。
【0068】
図16に示すように、カットオフ特性は、ややシャープさに欠けているが、通過帯域の特性は、比較的フラットであることが確認された。また、
図14(b)と比べると、通過帯域やカットオフ特性でのリップルが抑制されていることも確認された。