特許第6333898号(P6333898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333898
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180521BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61B5/05 382
   G01N24/08 520Y
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-159264(P2016-159264)
(22)【出願日】2016年8月15日
(62)【分割の表示】特願2012-5244(P2012-5244)の分割
【原出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-190093(P2016-190093A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜種 慎一
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−101133(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/053012(WO,A1)
【文献】 特開2010−220859(JP,A)
【文献】 特開2008−264499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪抑制プレパルスと、画像再構成用のエコーデータを収集するためのデータ収集用パルス列とを有するパルスシーケンスであって、前記脂肪抑制プレパルスから前記データ収集用パルス列の先頭までの間に所望の脂肪抑制度に調整可能な遅延時間を有するパルスシーケンス、を設定する設定部と、
前記設定部にて設定した前記パルスシーケンスに基づく高周波パルス及び傾斜磁場パルスを被検体に印加して前記エコーデータを収集するデータ収集部と、
収集した前記エコーデータから前記被検体の画像を再構成する画像生成部と、
を備え、
前記データ収集用パルス列は複数の励起パルスを有し、
前記脂肪抑制プレパルスと前記データ収集用パルス列の先頭までの間には、前記複数の励起パルスの間隔と同じ間隔を有する複数のダミーパルスが設けられ、
前記遅延時間は、前記ダミーパルスの数を変更することによって調整される、
磁気共鳴撮像装置。
【請求項2】
前記遅延時間に関する遅延情報が、変更可能に入力される入力部、をさらに備え、
前記遅延時間は、入力された前記遅延情報に基づいて設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項3】
前記遅延時間に関する遅延情報が、変更可能に入力される入力部、をさらに備え、
前記遅延時間は、入力された前記遅延情報に基づいて設定され、
前記ダミーパルスの数は、前記脂肪抑制プレパルスと前記データ収集用パルス列の先頭までの時間を、前記励起パルスの間隔で除して求められる、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項4】
前記脂肪抑制プレパルスは、周波数選択的に脂肪の縦磁化を略90度のフリップ角で倒すCHESSパルスであり、
前記遅延時間は、前記CHESSパルスから前記データ収集用パルス列の先頭までの時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項5】
前記脂肪抑制プレパルスは、周波数選択的に脂肪の縦磁化を90度より大きく180度より小さいフリップ角で倒すSPIRパルスであり、
前記遅延時間は、前記SPIRパルスによって倒された脂肪の縦磁化がゼロとなった時点から前記データ収集用パルス列の先頭までの時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項6】
前記データ収集用パルス列は、位相エンコード量ゼロに対応するエコーデータが最初に収集されるパルス列である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項7】
前記データ収集用パルス列は、(a)セントリックオーダによる位相エンコード量の順序、(b)位相エンコード量ゼロから位相エンコード量が正の方向に増加し、正の最大値に達した後には極性を変えて負の最大値からゼロの方向に向かって減少する位相エンコード量の順序、または、(c)位相エンコード量ゼロから位相エンコード量が負の方向に増加し、負の最大値に達した後には極性を変えて正の最大値からゼロの方向に向かって減少する位相エンコード量の順序、でエコーデータを収集するパルス列である、
ことを特徴とする請求項6に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項8】
前記データ収集用パルス列は、FFE(Fast Field Echo)法に従うパルス列である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号から画像を再構成する撮像装置である。
【0003】
磁気共鳴撮像の分野において、被検体内の脂肪からの信号(脂肪信号)を不要信号として抑制する各種の脂肪抑制法が知られている。従来から一般的に用いられている脂肪抑制法には、CHESS(chemical shift selective)法、SPIR(spectral presaturation with inversion recovery)法(SPECIRとも言う)、STIR(short TI inversion recovery)法などがある。
【0004】
このうち、CHESS法は、水プロトンと脂肪プロトンの共鳴周波数が3.5ppm異なることを利用して、脂肪信号のみを周波数選択的に抑制する方法である。このため、CHESS法は周波数選択的脂肪抑制法とも呼ばれる。CHESS法では、データ収集に先立って、脂肪の共鳴周波数をもつ高周波パルス(CHESSパルスと呼ばれる)を、通常90°のフリップ角で被検体に印加する。CHESSパルスの印加によって、脂肪の縦磁化のみが周波数選択的に90°倒れる。その後、spoiler pulseと呼ばれる傾斜磁場パルスを印加すると脂肪の横磁化が分散、消失する。そして、spoiler pulse印加後にデータ収集を開始すると、脂肪信号が抑制された状態でのデータ収集が可能となる。
【0005】
SPIR法も水プロトンと脂肪プロトンの共鳴周波数の差を利用する周波数選択的脂肪抑制法の1つである。SPIR法においても、脂肪の共鳴周波数をもつ高周波パルス(SPIRパルスと呼ばれる)をデータ収集に先立って被検体に印加する。ただし、SPIRパルスのフリップ角は通常90°から180°の間に設定される。SPIRパルスが印加されると、脂肪の縦磁化が周波数選択的にフリップ角に応じた角度だけ倒れる。SPIRパルスのフリップ角は90°から180°の間であるため、印加直後の脂肪の縦磁化は負の値をとる。その後、縦緩和によって脂肪の縦磁化は時間と共に増加し、負の値からゼロ点(null point)を通って、正の値に回復していく。縦緩和の回復速度は脂肪の縦緩和(T1緩和)によって定まる。SPIRパルスの印加時から、画像再構成用のデータ収集開始まで(より厳密には、データ収集の最初の励起パルス印加時まで)の時間をSPIR法における反転時間(TI:inversion time)と呼ぶ。SPIR法では、上記の反転時間を、SPIRパルスの印加から脂肪の縦磁化がゼロ点をクロスするまでの時間に一致させることにより、脂肪信号が抑制された状態で水信号のみからのデータ収集を行うことができる。
【0006】
上記2つの撮像法はいずれも周波数選択的脂肪抑制法であるが、これに対して、STIR法は非周波数選択的脂肪抑制法である。STIR法は、脂肪信号と水信号の縦緩和時間(T1緩和時間)の差を積極的に利用して、即ち、脂肪信号の縦緩和時間が水信号の縦緩和時間よりも短いことを利用して、脂肪を抑制する撮像法である。データ収集に先立って、フリップ角が180°の非周波数選択的な高周波パルス(STIRパルス)を被検体に印加し、脂肪プロトンと水プロトンの縦磁化を同時に180°倒し、双方を負の値にする。脂肪信号と水信号の縦磁化は、STIRパルスの印加後いずれの正の方向に回復していくが、脂肪信号の縦緩和時間の方が水信号の縦緩和時間よりも短いため、脂肪信号の縦磁化の方が先にゼロ点(null point)に達する。SPIR法と同様に、STIRパルスの印加時から、画像再構成用のデータ収集開始まで(より厳密には、データ収集の最初の励起パルス印加時まで)の時間をSTIR法における反転時間(TI:inversion time)と呼ぶ。STIR法では、上記の反転時間を、STIRパルスの印加から脂肪の縦磁化がゼロ点をクロスするまでの時間に一致させることにより、脂肪信号が抑制された状態で水信号のみからのデータ収集を行うことができる。
【0007】
STIR法は、非周波数選択的脂肪抑制法であるため静磁場の不均一性の影響を受けにくいという利点がある。しかしながら、データ収集時において、水信号の縦磁化(負の値)がSTIRパルスを印加しない場合と比べて小さく、このため、SN比が小さくなる、或いは、所定のSN比を確保しようとすると撮像時間が長くなる、という欠点がある。
【0008】
これに対して、CHESS法やSPIR法は周波数選択的脂肪抑制法であるため、CHESSパルスやSPIRパルスの印加によっても水信号の縦磁化は影響を受けず、STIR法のようなSN比の低下は起こらない。しかしながら、これらの撮像法は周波数選択的脂肪抑制法であるため磁場分布の影響を受けやすく、静磁場B0やRF磁場B1に空間的な不均一性があると、抑制後の脂肪の空間分布も不均一となりやすい。
【0009】
そこで、SN比の低下が少ない周波数選択的脂肪抑制法において、空間的に均一に脂肪を抑制することが可能な撮像法が提案されている。例えば、特許文献1には、SPIRパルスを印加した後さらにCHESSパルスを印加し、その後データ収集を開始する撮像法が記載されている。この撮像法によれば、SPIR法で消え残った脂肪信号がCHESSパルスの印加によってさらに低減されるため、空間的に均一に、かつ高い抑制度で脂肪信号を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−264499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
引用文献1に記載の脂肪抑制方法は、脂肪を空間的に均一に、かつ高い抑制度で抑制することができるため、脂肪抑制の観点からは非常に有効な撮像法である。その一方で、画像診断上、脂肪が抑制されすぎることによって、かえって不都合となる場合もある。例えば、造影剤を注入して乳房等の腫瘍を診断する画像診断がその一例である。腫瘍の周囲には多数の乳腺が存在する。腫瘍が存在すると、造影剤が腫瘍部に到達したときの腫瘍からの信号強度は、周囲の乳腺からの信号強度よりも通常高い。脂肪抑制の程度が適度であれば、空間的に広がりをもつ残留した脂肪信号が多数ある乳腺信号を覆うため、乳腺信号は目立ちにくくなり、この結果腫瘍からの信号を識別することが容易になる。
【0012】
一方、脂肪が空間的に均一に抑制され過ぎると乳腺信号が目立つようになる。特に、乳腺の数は多いため、たとえ腫瘍からの信号強度が乳腺からの信号強度よりも高くとも、腫瘍周囲にある乳腺信号によって、腫瘍信号の識別が困難となってくる。
【0013】
そこで、脂肪の抑制度をただ単に大きくするのではなく、抑制度を所望の値に調整することができる磁気共鳴撮像装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態の磁気共鳴撮像装置は、脂肪抑制プレパルスと画像再構成用のエコーデータを収集するためのデータ収集用パルス列とを有するパルスシーケンスであって、前記脂肪抑制プレパルスから前記データ収集用パルス列の先頭までの間に所望の脂肪抑制度に調整可能な遅延時間を有するパルスシーケンス、を設定する設定部と、前記設定部にて設定した前記パルスシーケンスに基づく高周波パルス及び傾斜磁場パルスを被検体に印加して前記エコーデータを収集するデータ収集部と、収集した前記エコーデータから前記被検体の画像を再構成する画像生成部と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】磁気共鳴撮像装置の全体構成例を示す図。
図2】良好な脂肪抑制特性を有する従来のパルスシーケンスの一例を示す図。
図3】脂肪抑制度の調整が要望される背景を説明する図。
図4】第1の実施形態のパルスシーケンスの一例を示す図。
図5】第2の実施形態のパルスシーケンスの一例を示す図。
図6】ダミーパルス数と脂肪信号の回復との関係を測定した結果の一例を示す図。
図7】第2の実施形態のパルスシーケンスの詳細例を示す図。
図8】データ収集用パルス列内における位相エンコードの順序例を示す図。
図9】第2の実施形態における脂肪抑制プレパルスの他の例を示す図。
図10】第3の実施形態のパルスシーケンスの一例を示す図。
図11】第4の実施形態のパルスシーケンスの一例を示す図。
図12】第4の実施形態におけるデータ収集用パルス列内における位相エンコードの順序例を示す第1の図。
図13】第4の実施形態におけるデータ収集用パルス列内における位相エンコードの順序例を示す第2の図。
図14】第4の実施形態におけるデータ収集用パルス列内における位相エンコードの順序例を示す第3の図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
(1)磁気共鳴撮像装置
図1は、本実施形態における磁気共鳴撮像装置1の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴撮像装置1は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24、傾斜磁場コイル26、送信用或いは受信用のRFコイル28、制御系30、被検体(患者)Pが乗せられる寝台32等を備える。さらに、制御系30は、静磁場電源40、シムコイル電源42、傾斜磁場電源44、RF送信器46、RF受信器48、寝台駆動装置50、シーケンスコントローラ56、コンピュータ58等を備えている。また、コンピュータ58は、その内部構成として、演算装置60、入力装置62、表示装置64、記憶装置66等を有している。
【0018】
静磁場用磁石22は静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給される電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24はシムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0019】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、およびZ軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。なお、図1においては、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向、鉛直方向をY軸方向、これらに直交する方向をX軸方向としている。
【0020】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、およびZ軸傾斜磁場コイル26zを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、およびZ軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続されている。
【0021】
各傾斜磁場電源44x、44y、44zから傾斜磁場コイル26x、26y、26zにそれぞれ供給される電流により、X軸、Y軸、およびZ軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
【0022】
装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。スライス方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の各傾斜磁場は、静磁場に重畳される。
【0023】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルスを生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、RFパルスを送信すると共に被検体からの磁気共鳴信号(MR信号)を受信する送受信用全身コイル(WBC:whole body coil)や、寝台32または被検体Pの近傍に設けられる受信専用のコイル(ローカルコイルとも呼ばれる)などがある。
【0024】
RFコイル28で受信したMR信号は、信号ケーブルを介してRF受信器48に供給される。
【0025】
RF受信器48は、受信したMR信号に対して、前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
【0026】
演算装置60は、プロセッサ等を備えて構成されており、磁気共鳴撮像装置1全体のシステム制御を行う他、画像再構成処理や各種画像処理を行う。
【0027】
シーケンスコントローラ56は、コンピュータ58の記憶装置66に記憶された所定の撮像条件やパルスシーケンス、およびこれらに基づく演算装置60の指令に従って、傾斜磁場Gx、Gy,GzおよびRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、これらのR傾斜磁場Gx、Gy,GzおよびRFパルスに応答して受信されたMR信号を、生データ(raw data)としてRF受信器48から入力し、演算装置60に出力する。
【0028】
演算装置60は、入力した生データに対して、逆フーリエ変換等を含む再構成処理や各種の画像処理を行って被検体の画像データを生成する。生成された画像データは、表示装置64に表示される。入力装置62は、ユーザ操作による撮像条件や各種情報の入力に使用される。
【0029】
本実施形態においては、上記演算装置60は、種々のパルスシーケンスを含む撮像条件を設定する設定部として機能する。後述する脂肪抑制プレパルスと画像再構成用のエコーデータを収集するためのデータ収集用パルス列とを有するパルスシーケンスはこの設定部にて設定される。また、脂肪抑制プレパルスからデータ収集用パルス列の先頭までの間に設けられる調整可能な遅延時間や、後述するダミーパルス数等も設定部にて設定される。
【0030】
設定部にて設定されたパルスシーケンス等の撮像条件に基づき、シーケンスコントローラ56はRF送信器46や傾斜磁場電源44を駆動し、設定されたパルスシーケンスに基づくRFパルスや傾斜磁場パルスを、RFコイル28や傾斜磁場コイル26x、26y、26zを介して被検体に印加する。これらの印加に応じて被検体から発生する磁気共鳴信号(MR信号)はRF受信器48で受信され、エコーデータ(生データ)としてシーケンスコントローラ56に送られる。このように、上記のシーケンスコントローラ56、RF送信器46、傾斜磁場電源44、RFコイル28、傾斜磁場コイル26x、26y、26z、RF受信器48等は、本実施形態におけるデータ収集部を構成する。
【0031】
シーケンスコントローラ56に送られたエコーデータ(生データ)に対して、演算装置60は、逆フーリエ変換等を含む再構成処理や各種の画像処理を行って被検体の画像データを生成する。つまり、演算装置60は本実施形態における画像生成部として機能する。
【0032】
(2)パルスシーケンス(第1の実施形態)
前述したように、不要信号としての脂肪信号を抑制するための撮像法として種々のパルスシーケンスが提案されている。図2(a)は、特許文献1に開示されている脂肪抑制用のパルスシーケンスの一例を従来例として示す図である。また、図2(b)は、このパルスシーケンスでの、脂肪信号の縦磁化の変化の様子を模式的に示す図である。図2(a)に示すパルスシーケンスでは、周波数選択的RFパルス、即ち、脂肪の共鳴周波数をもつSPIRパルス(第1の脂肪抑制パルス)と、同じく脂肪の共鳴周波数をもつCHESSパルス(第2の脂肪抑制パルス)を、データ収集に先立つプレパルスとして被検体に印加する。SPIRパルスのフリップ角は通常90°から180°の間に設定される。またCHESSパルスのフリップ角は90°に設定される。
【0033】
SPIRパルスが印加されると、図2(b)に示すように、脂肪の縦磁化が周波数選択的にフリップ角に応じた角度だけ倒れる。SPIRパルスのフリップ角は90°から180°の間であるため、印加直後の脂肪の縦磁化は負の値をとる。その後、縦緩和によって脂肪の縦磁化は時間と共に増加し、負の値からゼロ点(null point)を通って、正の値に回復していく。縦緩和の回復速度は脂肪の縦緩和(T1緩和)によって定まる。SPIRパルスの印加から縦磁化がゼロ点まで回復するまでの時間をこの撮像法における反転時間(TI:inversion time)と呼ぶことにする。図2(a)に示すパルスシーケンスでは、SPIRパルスの印加から反転時間(TI)後にCHESSパルスを印加する。
【0034】
静磁場(B0)と高周波磁場(B1)が空間的に完全に均一であり、かつ脂肪の縦緩和時間が完全に同一の値を取る理想的な状況では、SPIRパルスの印加から反転時間後に脂肪の縦磁化は空間的などの位置においてもゼロ点を通る。しかしながら、静磁場(B0)や高周波磁場(B1)は空間的に完全には均一にならない。この結果、SPIRパルス印加直後の縦磁化−M0’は、図2(b)に示すように、空間的に完全には均一とならず、反転時間TI後においても完全にはゼロとならない。
【0035】
そこで、図2(a)に示すパルスシーケンスでは、SPIRパルスの印加から反転時間TI後に第2の脂肪抑制パルスとしてのCHESSパルスを印加する。CHESSパルスを印加のより、反転時間TIにおいて消え残っている脂肪の縦磁化が90°倒される。その後、図2(a)に示すようにスポイラパルスを印加して脂肪の横磁化成分を分散、消失させる。その後、例えば、FFE(Fast Field Echo)法に従うパルス列を用いて、即ち、フリップ角の小さな複数の励起パルスを用いて位相エンコード量を変えながらエコーデータを収集する。
【0036】
図2(a)に示すパルスシーケンスでは、SPIRパルスとCHESSパルスの2つの周波数選択的脂肪抑制パルスを用いることにより、空間的に均一にかつ十分に脂肪信号を抑制することができる。
【0037】
しかしながら、前述したように、画像診断上、脂肪が抑制されすぎることによって、かえって不都合となる場合もある。図3はその一例を説明する図である。図3は、造影剤を注入して乳房等の腫瘍を診断する診断画像を1次元(例えばX方向)で見たときの概念図である。腫瘍の周囲には多数の乳腺が存在する。腫瘍が存在すると、造影剤が腫瘍部に到達したときの腫瘍からの信号強度は、周囲の乳腺からの信号強度よりも通常高い。脂肪抑制の程度が適度であれば、空間的に広がりをもつ残留した脂肪信号が多数ある乳腺信号を覆うため、乳腺信号は目立ちにくくなり、この結果腫瘍からの信号を識別することが容易になる。一方、脂肪が空間的に均一に抑制され過ぎると乳腺信号が目立つようになる。特に、乳腺の数は多いため、たとえ腫瘍からの信号強度が乳腺からの信号強度よりも高くとも、腫瘍周囲にある乳腺信号によって、腫瘍信号の識別が困難となってくる。この傾向は、特にMIP(maximum intensity projection)画像において顕著になる。
【0038】
以下に説明する本実施形態のパルスシーケンスでは、脂肪の抑制度を一律に決めるのではなく、パルスシーケンスの中に調整可能なパラメータを設け、このパラメータを調整することによって脂肪抑制度を調整可能とし、その結果、多数の乳腺信号の中から腫瘍信号を検出することを容易にしている。以下、本実施形態のパルスシーケンスについて具体的に説明する。
【0039】
図4(a)は、第1の実施形態のパルスシーケンスを説明する図であり、図4(b)は、脂肪信号の縦磁化の振る舞いを模式的に示す図である。第1の実施形態のパルスシーケンスは、脂肪抑制用のプレパルスとして、図2(a)と同じくSPIRパルスとCHEAAパルスの2つの周波数選択的脂肪抑制パルスを用いているものの、データ収集用のパルス列と、脂肪抑制用プレパルスとの間に調整可能な遅延時間Tを設けている点が図2(a)に示す従来のパルスシーケンスと大きく異なる。
【0040】
前述したように、SPIRパルスで負の値に倒された脂肪の縦磁化は反転時間TI後にほぼゼロ点に回復し、その時点におけるCHESSパルスの印加により十分に抑制される。CHESSパルス印加直後にデータ収集用のパルス列を開始すると、脂肪抑制度が極めて高い状態でのデータ収集が可能であるが、脂肪信号が抑制され過ぎて、画像診断上かえって好ましくない場合がある。
【0041】
一方、CEHSSパルスの印加によってゼロに抑制された脂肪信号は、その後ゆっくりと回復していく。脂肪信号の回復の程度、即ち、脂肪信号の大きさはCEHSSパルスの印加からの経過時間に依存する。
【0042】
そこで、第1の実施形態のパルスシーケンスでは、脂肪抑制用のプレパルスの印加(より具体的には、CHESSパルスの印加)からデータ収集用のパルス列の先頭までの間に、何も印加しない遅延時間Tを設けており、遅延時間Tを適宜調整することによって一旦抑制された脂肪信号の回復の大きさを調整し、結果的に脂肪抑制度を調整している。
【0043】
(3)第2の実施形態
図5(a)は、第2の実施形態のパルスシーケンスを説明する図であり、図5(b)は、このパルスシーケンスによる脂肪信号の縦磁化の振る舞いを模式的に示す図である。第2の実施形態と第1の実施形態との相違点は、第1の実施形態のパルスシーケンスが、脂肪抑制用のプレパルスとデータ収集用のパルス列の先頭までの間に何も印加しない調整可能な遅延時間を設けているのに対して、第2の実施形態のパルスシーケンスは、脂肪抑制用のプレパルスとデータ収集用のパルス列の先頭までの間に複数のダミーパルスを設けている点である。
【0044】
ダミーパルスはデータ収集を伴わないRFパルスであり、ダミーパルスの間隔はデータ収集用パルス列内の各励起パルスの間隔と同じ間隔に設定される。また、ダミーパルスの中心周波数は、不要信号である脂肪の共鳴周波数ではなく、所望信号である水の共鳴周波数に一致させている。
【0045】
第1の実施形態のパルスシーケンスは、調整可能な遅延時間を設けたことにより、脂肪信号抑制度を所望の値に調整することが可能であるものの、データ収集用パルス列が遅延時間経過後に直ぐに開始されるため、所望信号(この場合水信号)に対して過渡的な変動が発生し、この過渡的な信号変動によってアーチファクトが生じる可能性がある。
【0046】
これに対して、第2の実施形態のパルスシーケンスでは、データ収集用パルス列の励起パルスと同じ間隔、同じ中心周波数のRFパルスをダミーパルスとして複数設けているため、データ収集用パルス列の開始時点において水信号の励起状態が定常状態に到っており、データ収集用パルス列の開始直後から安定した水信号の収集が可能となる。この結果、上記の過渡的な信号変動によるアーチファクトを抑制することができる。
【0047】
一方、ダミーパルスの中心周波数は脂肪信号の共鳴周波数とは異なるため、ダミーパルスの印加によって脂肪信号の振る舞いはそれ程影響を受けない。したがって、ダミーパルスの数を調整することは、CHESSパルスの印加後の遅延時間を調整して脂肪信号の回復の程度を調整することと実質的に等価となる。
【0048】
図6は、ダミーパルスの数と脂肪信号の回復の程度を測定した結果の一例を示す図である。図の横軸がダミーパルス数であり、縦軸が正規化した脂肪信号の大きさである。測定は、所定の領域に脂肪を模擬したファントムを左右の2つの位置に配置して行った。図6より、ダミーパルス数を調整することにより、脂肪信号の大きさを広い範囲に亘って調整できることがわかる。
【0049】
図7は、第2の実施形態のパルスシーケンスのより具体的な例を示す図である。図7において、上段がRFパルス、2段目がスライス選択用の傾斜磁場パルス、3段目が位相エンコード用の傾斜磁場パルス、4段目がリードアウト用の傾斜磁場パルス、5段目がエコーデータを示している。
【0050】
なお、図7に例示するデータ収集用パルス列、および以下に説明するデータ収集用パルス列は、FFE(Fast Field Echo)法に従うパルス列を用い、フリップ角の小さな複数の励起パルスを用いて位相エンコード量を変えながら高速でエコーデータを収集するものである。しかしながら、本実施形態に適用可能なデータ収集用パルス列は、FFE法に限定されるものではなく、例えば、SE(Spin Echo)法、高速SE(FSE)法、FSE法にハーフフーリエ法を組合せたFASE(Fast Asymmetric SE)法、或いはEPI(Echo Planar Imaging)法でもよい。
【0051】
一方、いずれの種類のデータ収集用パルス列においても、データ収集用パルス列の先頭の位相エンコード量は、ゼロまたはゼロに近い値が好ましい。位相エンコード量がゼロ近傍のエコーデータは画像全体のコントラストを支配する重要なデータであり、位相エンコード量がゼロ近傍のエコーデータをデータ収集用パルス列の先頭近傍に設けることにより、調整後の脂肪抑制度がより敏感に反映された画像を得ることができる。
【0052】
データ収集用パルス列の先頭の位相エンコード量をゼロに設定する場合においても、種々の形態が考えられる。図8はその例のいくつかを示す図である。
【0053】
図8(a)は所謂セントリックオーダでの位相エンコード量の順序を示す図である。ダミーパルスの後のデータ収集用パルス列では、位相エンコード量がゼロ(k)のエコーデータを最初に収集し、その後、符号を正負に交互に変えながら、位相エンコード量を、k、k−1、k、k−2のように順次増やしている。図8(b)は、ダミーパルスの後、位相エンコード量ゼロ(k)から位相エンコード量を正の方向に増加させ、正の最大値に達した後には極性を変えて負の最大値からゼロの方向に向かって減少させる位相エンコード量の順序を示している。また、図8(c)は、ダミーパルスの後、図8(b)とは逆に、位相エンコード量ゼロ(k)から位相エンコード量を負の方向に増加させ、負の最大値に達した後には極性を変えて正の最大値からゼロの方向に向かって減少させる位相エンコード量の順序を示している。
【0054】
第1の実施形態における調整可能な遅延時間Tや、第2の実施形態における調整可能なダミーパルスの数は、入力装置62を介してユーザが具体的な数値を入力することができる。また、第2の実施形態では、遅延時間Tをユーザが入力し、入力された遅延時間Tを、別途設定されているデータ収集用パルス列の励起パルスの間隔(TR)で除してダミーパルス数を求めても良い。除算自体は装置が行う。この場合、励起パルスの間隔を変更した場合でも、遅延時間Tは一定に保たれるので、常に同じ抑制度の脂肪信号強度が得られる。
【0055】
また、遅延時間Tやダミーパルスの数の数値を直接入力するのではなく、脂肪抑制度の程度を例えば、「大」、「中」、「小」の3段階程度に区分し、この区分を遅延時間に関する遅延情報としてユーザが入力するようにしても良い。この場合、「大」、「中」、「小」の区分に応じて予め割り付けられている遅延時間Tやダミーパルスの数の数値を装置が設定することになり、ユーザの操作負担が軽減される。
【0056】
ここまでは、脂肪抑制プレパルスとして、SPIRパルスとCHESSパルスからなる2つの周波数選択的脂肪抑制パルスの組み合わせの例を説明してきたが、本実施形態における脂肪抑制プレパルスはこれに限定されるものではない。
【0057】
例えば、図9(a)に示すように、SPIRパルスと、ほぼ同位置に設けられる連続する2つのCHESSパルスの組み合わせを脂肪抑制プレパルスとしてもよい。或いは、図9(b)に示すように、1つのCHESSパルスを脂肪抑制プレパルスとしてもよい。また、図9(c)に示すように、1つのSPIRパルスを脂肪抑制プレパルスとしてもよい。図9(c)の場合、調整可能な遅延時間は、SPIRパルスによって倒された脂肪の縦磁化がゼロとなった時点からデータ収集用パルス列の先頭までの時間である。また、ダミーパルスは、脂肪の縦磁化がゼロとなった時点からデータ収集用パルス列の先頭までの間
に挿入されることになる。
【0058】
(4)第3の実施形態
図10(a)は、第3の実施形態のパルスシーケンスを説明する図であり、図10(b)は、このパルスシーケンスによる脂肪信号の縦磁化の振る舞いを模式的に示す図である。第3の実施形態と第2の実施形態との相違点は、第2の実施形態のパルスシーケンスにおけるダミーパルスのフリップ角が、データ収集用のパルス列の励起パルスのフリップ角と同じであるのに対して、第3の実施形態では、ダミーパルスのフリップ角をデータ収集用のパルス列の励起パルスのフリップ角よりも大きく設定している点にある。
【0059】
例えば、データ収集用のパルス列(FFE法)内の各励起パルスのフリップ角が10°〜20°であるのに対して、ダミーパルスのフリップ角を、例えば60°と大きく設定する。
【0060】
ダミーパルスのフリップ角を大きく設定することにより、図10(b)に示すように、脂肪の回復量が大きくなることが知られている。そこで、第3の実施形態では、この特性を利用し、ダミーパルスのフリップ角をデータ収集用のパルス列の励起パルスのフリップ角よりも大きく設定している。この結果、脂肪の回復時間を早めることが可能となり、少ない数のダミーパルスで所望の脂肪抑制度を達成することができる。このため、パルスシーケンス全体が短くなり、データ収集時間を短縮することができる。
【0061】
第3の実施形態他の変形例として、ダミーパルスの夫々のフリップ角を一定ではなく、変化させてもよい。例えば、ダミーパルスのフリップ角の変化を緩やかにするため、ダミーパルスの夫々のフリップ角を徐々に大きくするように設定する。例えば、励起パルスのフリップ角を20°とするとき、ダミーパルスのフリップ角を20°から60°までリニアに変化させる。
【0062】
(5)第4の実施形態
図11(a)は、第4の実施形態のパルスシーケンスを説明する図であり、図11(b)は、脂肪信号の縦磁化の振る舞いを模式的に示す図である。縦じかの振る舞い自体は、第1〜第3の実施形態と大きく異ならない。ここまでの実施形態のパルスシーケンスでは、脂肪抑制用プレパルスとデータ収集用のパルス列との間にデータ収集を行わない遅延時間を設けたり(第1の実施形態)、脂肪抑制用プレパルスとデータ収集用のパルス列との間にデータ収集を行わないダミーパルスを設けたり(第2、第3の実施形態)していた。
【0063】
これに対して、第4の実施形態では、脂肪抑制用プレパルスの直後にデータ収集用のパルス列を設ける一方、データ収集用パルス列の中の位相エンコード量ゼロ(k)に対応する励起パルスと、データ収集用パルス列の先頭との間に、位相エンコード量ゼロ以外に対応する調整可能な数の複数の励起パルスを設けるパルスシーケンスとしている。
【0064】
図12(a)は、第2の実施形態における位相エンコードの順序の一例を示しており、図8(b)と同じ図である。第2の実施形態では、ダミーパルスの後に、位相エンコード量ゼロ(k)からスタートするデータ収集用パルス列を有している。
【0065】
これに対して、図12(b)、(c)は、第4の実施形態のパルスシーケンスにおける位相エンコードの順の一例を示す図であり、いずれもダミーパルスを設けることなく、脂肪抑制用プレパルスの直後から画像再構成に使用するエコーデータの収集を開始する。ただし、位相エンコード量ゼロ(k)に対応する励起パルスは、これまでの実施形態のようにデータ収集用パルス列の先頭ではなく、データ収集用パルス列の中ほどにある。そして、データ収集用パルス列の先頭から位相エンコード量ゼロ(k)までの間には、位相エンコード量がゼロ以外のエコーデータを収集するための複数の励起パルスが、その数を調整可能にして配置される。データ収集用パルス列の先頭から位相エンコード量ゼロ(k)までの間の励起パルスの数を調整することによって、位相エンコード量ゼロ(k)の時点における脂肪信号の大きさを調整することができる。つまり、第4の実施形態においては、データ収集用パルス列の先頭から位相エンコード量ゼロ(k)までの間にある励起パルスは、データ収集用の励起パルスとしての機能と、第2、第3の実施形態におけるダミーパルスとしての機能を兼用するものである。この結果、パルスシーケンスの長さを短くすることが可能となり、データ収集時間を短縮することができる。
【0066】
データ収集用パルス列は、図12(b)、(c)に示すように、その先頭が負の位相エンコード量に対応し、負の位相エンコードから位相エンコード量が正の方向に所定のステップで増加するパルス列の場合、先頭の負の位相エンコード量を調整可能とすることで、位相エンコード量ゼロ(k)までの励起パルスをダミーパルスとしての機能させたときのダミーパルス数を調整できる。
【0067】
一方、データ収集用パルス列が、図13(a)、(b)に示すように、その先頭が正の位相エンコード量に対応し、正の位相エンコードから位相エンコード量が負の方向に所定のステップで減少するパルス列の場合、先頭の正の位相エンコード量を調整可能とすることで、位相エンコード量ゼロ(k)までの励起パルスをダミーパルスとしての機能させたときのダミーパルス数を調整できる。
【0068】
この他、図14(a)、(b)に示すように、データ収集用パルス列の先頭から位相エンコード量ゼロ(k)までの間に、位相エンコード量の絶対値の大きいものから順に配置し、これらの大きな位相エンコード量に対応する励起パルスをダミーパルスと兼用させるようにしてもよい。
【0069】
以上説明してきたように、上述した各実施形態のパルスシーケンスを有する磁気共鳴撮像装置によれば、脂肪の抑制度をただ単に大きくするのではなく、抑制度を所望の値に調整することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
1 磁気共鳴撮像装置
30 制御系(データ収集部)
58 コンピュータ
60 演算装置(設定部、画像生成部)
62 入力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14