特許第6333899号(P6333899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333899コークス化されたアップグレーディング剤の再生を介する高品質合成ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333899
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】コークス化されたアップグレーディング剤の再生を介する高品質合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/72 20060101AFI20180521BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C10J3/72 Z
   C10G11/18
【請求項の数】28
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-160525(P2016-160525)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-88855(P2017-88855A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】4266/MUM/2015
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】515012077
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ムクティヤール,サドゥーラー
(72)【発明者】
【氏名】バヌプラサード,サヤパネニ ゴピナート
(72)【発明者】
【氏名】サイドゥル,ガダリ
(72)【発明者】
【氏名】ダライ,エスワール プラサッド
(72)【発明者】
【氏名】シン,サンジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】クマラン,サテーシュ ヴェタークンネル
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャルヤ,デバシス
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ブリジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ダス,ビスワプリヤ
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05362380(US,A)
【文献】 特開昭59−054602(JP,A)
【文献】 米国特許第04316794(US,A)
【文献】 特開昭55−104920(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/123487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J、C10G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
残渣炭化水素油原料のアップグレーディングに伴って、合成ガスを製造する方法であって、
ライザーリアクターにおいて残渣炭化水素油原料を分解して、分解生成物および使用済みアップグレーディング剤を得ること残渣炭化水素油原料のアップグレーディングの後に改質器において、ライザーリアクターから得られた使用済みアップグレーディング剤上に堆積したコークス1〜5重量%を再生し、水素に富んだ合成ガスおよび部分的に回復したアップグレーディング剤を得ること、および、改質器からの部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼器に導入することを含み、
ここで改質器は、該改質器において部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼させる前記燃焼器から供給される熱のみで650〜850℃の温度に保持され、蒸気および溶油性有機金属添加剤を含み、酸素含有ガスを含まず、該溶油性有機金属添加剤の金属がアルカリおよびアルカリ土類金属および遷移金属から選択される
前記方法。
【請求項2】
さらに燃焼器において750℃〜950℃の範囲の温度で、かつ、酸素含有ガス流の存在下で、部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼させ、回復したアップグレーディング剤および排ガスを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
改質器の温度が、回復したアップグレーディング剤を燃焼器から改質器へ循環させることによって保持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、回復したアップグレーディング剤を燃焼器から改質器へ導入することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼させることに伴って、任意に、硫黄および窒素不純物が少ない炭化水素蒸気を燃焼器に導入することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
さらに、燃焼器からの回復したアップグレーディング剤およびライザーからの使用済みアップグレーディング剤を、改質器に導入する前にミキサーにおいて組み合わせることを含み、ミキサーが改質器の外側に位置するか、改質器の一部を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
改質器に導入する前に、ストリッパーにおいて、使用済みアップグレーディング剤がライザーから得られた分解生成物から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
残渣炭化水素油原料のアップグレーディングに伴って、水素に富んだ合成ガスを製造する方法であって、当該方法が以下:
a)550℃〜650℃の範囲の温度で、原料と回復したアップグレーディング剤とを接触させることによって、ライザーリアクターにおいて残渣炭化水素油原料を分解して、分解生成物および使用済みアップグレーディング剤を得ること;
b)使用済みアップグレーディング剤をストリッパーにおいて分解生成物から分離すること、および、使用済みアップグレーディング剤を改質器に移すこと;
c)600℃〜850℃の範囲の温度で、改質器において、金属がアルカリ、アルカリ土類金属および遷移金属から選択される有機金属添加剤と一緒に、空気/酸素のいずれも含まない蒸気を加えることによって、使用済みアップグレーディング剤上に堆積したコークスを再生し、水素に富んだ合成ガスおよび部分的に回復したアップグレーディング剤を得ること、および部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼器に移すこと;
d)750℃〜950℃の範囲の温度で、燃焼器において、部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼させ、酸素含有ガスの蒸気および任意に硫黄および窒素不純物が少ない炭化水素流の存在下で、残渣コークスを除去し、回復したアップグレーディング剤および排ガスを得ること;
e)回復したアップグレーディング剤を改質器に戻して移し、改質器の温度を保持すること:および
f)回復したアップグレーディング剤を改質器からライザーに循環させること
を含む、前記方法。
【請求項9】
さらに、燃焼器からの回復したアップグレーディング剤およびライザーからの使用済みアップグレーディング剤を、改質器に導入する前にミキサーにおいて組み合わせることを含み、ミキサーが改質器の外側に位置するか、改質器の一部を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、冷却器において改質器から得られた合成ガスを冷却すること、および統合されたサワーシフトリアクターシステムを通過させ、純粋な水素を得ることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
燃焼器から得られた排ガスを、動力回収タービンに通過させ、蒸気を発生させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
回復したアップグレーディング材料がGeldart Group Aに属する多孔性流動性ミクロ球状粒子からなる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
回復したアップグレーディング材料が、アルミナ、シリカアルミナ、カオリンクレイまたはこれらの混合物から構成された多孔性流動性ミクロ球状粒子からなる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
残渣炭化水素油原料が、ビチューメン、減圧残油、減圧スロップ、常圧残油、アスファルト、ビスブレーカータール(visbreaker tar)および重質原油からなる群から選択され、顕著な量のコン炭素、ニッケル、バナジウム、ナトリウム、塩基性窒素および硫黄不純物を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
回復したアップグレーディング材料が20〜200ミクロンの範囲の粒径、1200〜1600kg/m3の範囲の粒子密度および80m2/gを超える表面積をもつ、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
有機金属添加剤の金属が、アルカリの族からNaおよびK;アルカリ土類族からMgおよびCa;および遷移の族からFeが選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
水素に富んだ合成ガス(無水ベース)が、50〜70体積%の水素、12〜18体積%の一酸化炭素、10〜15体積%の二酸化炭素、1〜4体積%のメタンならびにH2SおよびCOSなどのサワーガスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
回復したアップグレーディング材料が、燃焼器から改質器に戻り移され、改質器において温度が保持される、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法のためのシステムであって、当該システムが以下:
a)残渣炭化水素油原料を分解するためのライザーリアクター[1]を含む分解ゾーン;
b)分解生成物[7]および使用済みアップグレーディング材料[8]を分離するためのリアクターとストリッパー[2]を兼ねる容器;
c)使用済みアップグレーディング剤の再生のための改質器[3]および燃焼器[4]を含む2段階の再生ゾーン;
d)燃焼器[4]からの回復したアップグレーディング剤とストリッパー[2]からくる使用済みアップグレーディング剤とを混合するためのミキサー[2A];および
e)回復したアップグレーディング剤の再利用のための燃焼器[4]から改質器[3]への手段[16]を含む循環ゾーン
を含む、前記システム。
【請求項20】
分解ゾーンがさらに以下;
a)残渣原料[5]および流動化と噴霧を兼ねる媒体[6]を注入するための手段;および
b)回復したアップグレーディング材料[17]を改質器[3]からライザーリアクター[1]へと注入するための手段;
を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
改質器[3]が部分的に回復したアップグレーディング材料を燃焼器[4]へ移すための手段[12]を具備し、前記手段[12]がリフトラインを介する固体の循環を制御するためのプラグバルブを有するリフトラインを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
さらに以下:a)冷却器[18、20]において合成ガス[11]を冷却する手段;
b)圧縮機[19]において合成ガス[11]を圧縮する手段;
c)COSをH2Sに変換し、統合されたサワーシフトリアクターシステム[21]を使用する水―シフト反応によってさらなるH2に変換する手段;および
d)圧力変動吸着[22]を使用してガスの混合物からH2を分離する手段
を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
冷却器[18]が100〜300℃の範囲の温度を有し、冷却器[20]は200〜300℃の範囲の温度を有する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
圧縮機[19]が合成ガスを30kg/cm2までの圧力に圧縮し、圧縮された合成ガスが得られる、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
さらに、方法が合成ガスからの純粋な水素の製造を含む、請求項8に記載の方法であって、該方法が以下:
a)合成ガス[11]を冷却器[18]において所定の温度範囲に冷却すること;
b)工程(a)の合成ガス[11]を圧縮機[19]において所定の高圧に圧縮し、圧縮された合成ガスを得ること;
c)工程(b)の圧縮された合成ガスを冷却器[20]において所定の温度範囲に冷却すること;
d)工程(c)の圧縮された合成ガスを統合されたサワーシフトリアクターシステム[21]に移し、COSからH2Sに変換し、水―ガスシフト反応によってさらなるH2に変換すること;および
e)圧力変動吸着[22]を使用してシフトリアクター流出物から純粋なH2を得ること:
を含む、前記方法。
【請求項26】
合成ガスを100〜300℃の温度範囲に冷却するために、合成ガスの冷却が行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
圧縮された合成ガスを得るために、合成ガスの圧縮が30kg/cm2までの圧力で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
圧縮されたガスを200〜300℃の温度範囲に冷却するために、圧縮された合成ガスの冷却が行われる、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は残渣炭化水素油原料(residual hydrocarbon oil feedstock)をアップグレーディングすることによる水素に富んだ高品質の合成ガスの製造方法、およびアップグレーディング材料に関する。本発明はまた、水素に富んだ高品質の合成ガスを調製する装置を提供する。さらに本発明はまた、合成ガスから純粋な水素を製造するシステムおよび方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
合成ガス(syngas)としても知られている合成ガス(Synthesis gas)は、主に一酸化炭素(CO)および水素(H)を含むガスの混合物である。それは、頻繁に二酸化炭素およびまた窒素を含有する。一般的に、合成ガスは任意の炭素質材料から製造され得る。特に、農業廃棄物、林産物、草、および他のセルロース系材料などのバイオマスもまた、合成ガスに変換され得る。合成ガスの組成は方法、原料および製造に使用する酸化剤の種類に大きく依存する。合成ガスの発熱量は、合成ガスの具体的な化学組成に依存する。ガス化由来の合成ガスは、組成、発熱量および他の汚染物質の点で、蒸気メタン改質から製造された合成ガスとは異なる。空気吹きガス化装置から製造された合成ガスは、典型的にはN50%およびCO5〜20%、ならびにこのガスの使用量を最終的に制限する120Btu/ftまでも低い発熱量を有する。
【0003】
合成ガスは、化学およびバイオ精製(bio-refining)産業におけるプラットフォーム中間体(platform intermediate)であり、膨大な数の用途を有する。合成ガスは、液体燃料、アルコール、酢酸、ジメチルエーテルおよび他の多くの化学製品を含めた広範囲の化学製品を製造するための原料として使用され得る。これらの化学物質は、ディーゼル燃料、ガソリンおよび他の液体燃料中にブレンドするか、または直接それらとして使用することができる。合成ガスはまた熱および電力を製造するために直接燃焼させることもできる。アルコールが化石燃料以外のフィード材料から製造される場合、石油ベース燃料および燃料添加剤に代わるアルコールの置換は、特に環境に優しくなり得る。しかしながら、合成ガスを遠くの精製所や化学処理プラントに輸送することは現実的ではないため、この合成ガスは、リソースサイト(resource site)で、直接製造され、燃料および/または化学製品に変換する必要がある。
【0004】
より費用効率よく合成ガスを製造するために、改善された方法が必要とされている。合成ガスの生成は、潜在的に費用のかかる工程であるため、合成ガス生成のためのいくつかの代替の方法が開発されてきた。
【0005】
合成ガス生成のための一つの代替法は、二酸化炭素とメタンとの間の触媒または熱改質反応(典型的には乾燥改質という)を伴う。この方法の魅力的な特徴は、二酸化炭素を合成ガスに変換することである:しかしながら、この方法は、急速な炭素堆積の問題を有する。炭素堆積またはコークス形成反応は、合成ガスを生成するものとは別の反応であり、合成ガス形成反応に続いて起こる。しかしながら、乾燥改質におけるメタンの反応は、あまりにも遅いので、高い変換率のために長い滞留時間を必要とし、これらの長い滞留時間がコークスの形成につながる。このプロセスから形成される一酸化炭素に対する水素の比は、典型的には約1.0である。
【0006】
2つ目の合成ガス生成のための代替法は、酸素を使用したメタンの部分酸化を伴い、ここで酸素は空気、濃縮空気、または90%を超える、好ましくは99%を超える純度の酸素であり得る。このプロセスから形成される一酸化炭素に対する水素の比は、典型的には約2.0である。しかしながら、商慣行では、炭素形成を制御するために、典型的には、ある程度の量の蒸気が部分酸化改質器に添加され、当該蒸気の添加がH/CO比を2.0よりも上に増加させる傾向がある。同様に、比を2.0に近く調整するための試みにおいて、比較的少量のCOをフィードガス混合物へ添加することが一般的である。
【0007】
3つ目の試みは、LPGおよびCOの混合物を使用したH/CO比0.5〜1で合成ガスを製造することである(Calcorプロセス)。Hydrocarbon Processing, Vol. 64, May 1985, pp. 106-107、および、「A new process to make Oxo-feed」,Hydrocarbon Processing, Vol. 66, July 1987, pg. 52参照。しかしながら、多くの天然ガスリソースサイト、特にストランデッド天然ガスサイト(the stranded natural gas sites)は、天然ガスからLPGおよびCOを分離するのに利用可能なインフラを有さない。
【0008】
合成ガスの製造に続いて、多くの方法および触媒が、輸送燃料および化学物質の製造のために提案されてきた。しかしながら、合成ガスからの燃料および化学物質の製造のための伝統的な方法は、まず、パラフィンワックス生成物の生成を伴い、その後燃料および/または化学物質へと精製される。当該精製工程は、資本集約的で、操作が複雑であり、したがってこの精製システムを実現するためには大きなプラントサイズを必要とする。
【0009】
世界の重または低API(American Petroleum Institute)比重原油の資源は、従来の軽質原油の2倍以上である。これらの重質原油の処理は、より高い精製所のマージンを提供する。従来のコーキング方法を介した、より高いコークス形成特徴を伴う高残渣物のアップグレーディングは、副生成物として、かなりの量の低価値の石油コークスの生成をもたらす。ディレードコーキングおよびフルードコーキング方法は多量の低価値の石油コークスを生産し、これは典型的にはコン炭素の1.5倍であり、これはコン炭素27%と供にVR40%を有する重質原油の処理が毎100MTの原油当たり、副生成物として16MTのコークスを製造するであろうことを意味する。コークスの価格は、原油価格との比較のとおり極めて低く、原油価格の約1/10であり、それが精製所のマージンを激しく侵食する。現在のシナリオにおいて、これまで原油の質を劣化させるという観点から、精製所のマージンを維持することは、より多くの液体およびより少ないコークスなどの低価値副産物をもたらす残渣のアップグレーディングから得られた利益率に依存している。
【0010】
触媒分解プロセスを介して、より高いグレードの油を製造することが可能である。原料は、過度の再生器温度により、550℃以下で沸騰する軽質残留油に制限される。かかる場合において、触媒冷却器は、典型的には、再生器の温度を制限するために余分な熱を回収するために使用される。触媒不活性化の増加によって、新鮮な触媒の追加速度もまた加速する。触媒冷却器(内部または外部冷却)の使用および新鮮な触媒の追加速度の増加をもってしても、手に負えないコークス収率および100%重質残渣物との燃焼の熱によって、軽質残留油と一緒に550℃以上で沸騰する10〜30%重質残渣含有物が処理され得る。さらに、かかる触媒冷却器は高価であり、信頼性に欠ける。
【0011】
従来技術において、循環流動床における重質残渣物の分解の間に発生する余分なコークスおよび燃焼の熱を処理するために、様々な技術が提案されている。米国特許番号4412914、4425259、4450241、4915820、6491810、6585884、6913687、7699975、7744753、7767075、7915191、7932204、7935245および8518334は、酸素含有ガス、COおよび蒸気を使用した残渣原料の分解中に堆積するコークスのガス化の様々な技術を説明している。これらの方法はCOおよび/または酸素含有ガスをガス化剤として使用するため、製造された合成ガスは多量のCOを含有し、またその発熱量は極めて低い。
【0012】
したがって、かなりの量のコン炭素を含有する低価値残油流を、不純物が少ない低沸点生成物および水素に富んだ高品質合成ガスに変換することができる方法の需要がある。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、残渣炭化水素油原料をアップグレーディングする方法の間に、水素に富んだ合成ガスを製造する方法であって、該方法は、蒸気を有し、かつ、酸素含有ガスのない改質器において、ライザーから得られた使用済みアップグレーディング剤を部分的に再生し、水素に富んだ合成ガスを得ることを含み、使用済みアップグレーディング剤がコークス1〜5重量%を構成し、改質器が外部熱の供給なしで650〜850℃の温度で保持される、前記方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、50〜70体積%の水素、12〜18体積%の一酸化炭素、10〜15体積%の二酸化炭素、1〜4体積%のメタンならびにHSおよびCOSなどのサワーガスを含む(無水ベース)高品質の合成ガスに関する。
【0015】
さらに本発明は、残渣炭化水素油原料をアップグレーディングする方法の間に、水素に富んだ合成ガスを製造する方法に関し、該方法は以下:
a)550℃〜650℃の範囲の温度で、原料と回復したアップグレーディング剤(rejuvenated upgrading agent)とを接触させることによって、ライザーリアクターにおいて残渣炭化水素油原料を分解して、分解生成物および使用済みアップグレーディング剤を得ること;
b)使用済みアップグレーディング剤をストリッパーにおいて分解生成物から分離すること、および、使用済みアップグレーディング剤を改質器に移すこと;
c)600℃〜850℃の範囲の温度で、改質器において、アルカリ、アルカリ土類金属または遷移金属添加剤から選択される有機金属添加剤と一緒に、空気/酸素のいずれも含まない蒸気を加えることによって、使用済みアップグレーディング剤上に堆積したコークスを再生し、水素に富んだ合成ガスおよび部分的に回復したアップグレーディング剤を得ること、および部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼器に移すこと;
d)750℃〜950℃の範囲の温度で、燃焼器において、部分的に回復したアップグレーディング材料を燃焼させ、酸素含有ガスの蒸気および任意に硫黄および窒素不純物が少ない炭化水素流の存在下で、残渣コークスを除去し、回復したアップグレーディング剤および排ガスを得ること;
e)回復したアップグレーディング剤を改質器に戻して移し、改質器の温度を保持すること:および
f)回復したアップグレーディング剤を改質器からライザーに循環させること
を含む。
【0016】
さらにまた本発明は、残渣炭化水素油原料をアップグレーディングする方法の間に、水素に富んだ合成ガスを製造するためのシステムに関し、当該システムは以下:
a)ライザーリアクター[1]を含む分解ゾーン;
b)改質器[3]および燃焼器[4]を含む2段階の再生ゾーン;および
c)燃焼器[4]から改質器[3]への回復したアップグレーディング材料の再利用のための手段[16]を含む循環ゾーン
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、高濃度のコン炭素を含有する残渣油を、より高いグレードの油および高品質の合成ガスにアップグレーディングすることを含む方法の概略図を示す。
図2図2は、図1の方法に加えて、燃焼器においてSおよびNが少ない炭化水素流を流すことを含む方法の概略図を示す。
【0018】
発明の記載
本発明は様々な改変および/または代替の方法および/または組成物に対して感受性であるが、その具体的な態様を図中の例によって示し、詳細を以下に記載する。しかしながら、開示された特定の方法および/または組成物に本発明を限定することを意図するものではなく、逆に、本発明は本発明の精神および添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲内に入るすべての改変、均等物、および代替物をカバーするものであると理解すべきである。
【0019】
図は、開示を不明瞭にしないために、本明細書中の記載の利益を有する当業者にとって容易に明らかになるであろう詳細とともに、本発明の態様を理解するのに関連する具体的な詳細を示す。
【0020】
以下の記載は、単に例示的な態様であり、決して本発明の範囲、適用可能性または構成を限定するものではない。むしろ、以下の記載は、本発明の例示的な態様を実施するための便利な例証を提供する。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された要素の機能および配置において、記載された態様に対する様々な変更がなされてもよい。
【0021】
本発明は、アップグレーディング材料上に堆積した残渣コークスの燃焼の間に、方法の内側で発生する熱以外の外部の熱源の供給なしで、空気/酸素の不存在下、蒸気でのコークスの部分再生による、水素に富んだ高品質の合成ガス(synthesis gas)または合成ガス(syngas)の製造方法を提供する。別の側面において、本発明はまた水素に富んだ高品質の合成ガスの製造のための装置も提供する。本発明のさらなる側面は、純粋な水素の製造のためのシステムおよび製造方法を提供する。
【0022】
よって、本発明の側面は、コン炭素などの高濃度の不純物を含有する残渣炭化水素油原料または残油フィード[5](残渣炭化水素油原料および残油フィードは本発明の文脈において区別しないで使用され得る)を、より高いグレードの油および大量の水素を含有する高品質の合成ガスへとアップグレーディングすることを含む方法が、ライザーリアクター[1]を含む分解ゾーン、改質器[3]および燃焼器[4]を含む2段階の再生ゾーン、および燃焼器[4]から改質器[3]への回復したアップグレーディング材料の循環のための手段[16]を含む循環ゾーンを具備することを提供する。
【0023】
本発明の別の側面は、分解ゾーンが、残渣炭化水素油原料または残油フィードを注入するための手段[5]、蒸気などの流動化と噴霧を兼ねる媒体を注入するための手段[6]、および回復したアップグレーディング材料をライザーリアクターまたは分解ゾーン[1]に導入するための手段[17]含むことを提供する。再生ゾーン(改質器[3])からくる回復したアップグレーディング材料またはアップグレーディング剤は、ライザーリアクターにおける流動化媒体に乗せられるであろう。残渣炭化水素蒸気が回復したアップグレーディング材料[17]と接触するとすぐに、ライザーリアクター[1]において即時原料気化が起こる。
【0024】
残渣炭化水素原料油または残油フィードの注入の前に、原料または残油フィードの炭化水素流を過熱蒸気と予備混合し、その後、それを分解リアクター/ライザーリアクター[1]に注入する間に、高剪断力をかけることによってノズルを使用して分散させ、それを小さな液滴にする。炭化水素における蒸気分散液は、炭化水素混合物の分圧、平均分子量および沸点を低下させ、その結果、最大量の原料がフィード混合ゾーンの温度で速やかに気化される。フィード噴霧とは別に、ある量の蒸気をまた、フィード注入点の下流で注入し、分解リアクター内の分圧を減少させることもできる。本発明における油に対する全蒸気の比は、0.3〜1.5wt/wtの範囲内であろう。
【0025】
残渣フィードはまた、ナフサ、精製所の燃料ガスまたは他の適切な蒸気などの他の希釈剤、あるいは、本発明の分解ガスなどのガスと組み合わせて分解リアクターに充填して、高沸点油フィードの気化−噴霧化を補助してもよい。
【0026】
本発明のアップグレーディング材料は微粒子からなり、ここでこれらの微粒子は、FCC触媒調製という従来技術を使用して、すなわち所望の化学組成物の溶液を調製し、その後スプレー乾燥し、焼成することによって調製される。典型的に、これらの材料は10未満のMAT活性により特徴付けられるとおり、極めて低い酸性分解活性を有する。しかしながら、私たちの発明は低活性アップグレーディング材料だけに制限されるものではない。循環するアップグレーディング材料上の総堆積金属は1〜2重量%ほど高くなり、循環するアップグレーディング材料上の金属レベルは、新鮮なアップグレーディング材料のシステムへの添加速度を調整することによって制御される。
【0027】
残渣原料が、ライザーリアクターにおいて、再生されたアップグレーディング材料/回復したアップグレーディング剤と接触する際、ライザーリアクターの長さに沿って、原料は気化され、炭化水素の分解が起こり、より軽い炭化水素生成物が得られる。残渣分子は一般に、金属、窒素、その他、金属、窒素、硫黄などのヘテロ原子により結合したシートの異なる層で作られ、一般にポルフィリン、および/またはコン炭素として存在する。
【0028】
これらの分子は極めて高い分子量であり、通常550℃未満で気化しない。分解の間、これらの化合物はアップグレーディング材料の表面にコークスとして堆積する。よって、形成されたコークスは、アップグレーディング材料の孔中に堆積し、したがって表面領域を塞ぐ。原料中のコン炭素値が増加するにつれて、コークス生成が増加する。アップグレーディング材料上にあるコークスはアップグレーディング材料の循環速度、フィード気化に依存して変化してもよく、次に分解リアクターの出口温度に依存する。
【0029】
本発明の別の側面は、分解生成物[7]および使用済みアップグレーディング材料[8](使用済みアップグレーディング材料および使用済みアップグレーディング剤は本発明の文脈において区別しないで使用され得る)は、リアクターとストリッパーを兼ねる容器[2]において分離され、ここで使用済みアップグレーディング材料は、アップグレーディング材料の間質腔(interstitial space)および孔中に存在する炭化水素を剥離した後、改質器[3]に移される。使用済みアップグレーディング材料[8]は、1〜5重量%のコークスを構成し、フィードおよび操作条件の種類に依存する。アップグレーディング材料の表面に薄層の形態で均一に分散されたコークスは、ディレードコーキング法で発生する高密度冷石油コークスよりも高い反応性をもたらす。以下、アップグレーディング材料上に堆積したコークスを新生コークスという。
【0030】
アップグレーディング材料上に堆積した新生コークスは、空気/酸素のいずれもなしで、蒸気[9]を高品質合成ガス[11]の製造のための改質器[3]へ導入することによって部分的に再生される。別の側面において、本発明は蒸気でコークスの部分再生速度を向上させ、そのため、好適な注入手段[10]を介して改質器[3]に、溶油性有機金属添加剤を注入することによりアップグレーディング材料の表面上に、蒸気でのコークスの部分再生を促進する金属を堆積させすることによって、アップグレーディング材料上のコークスの反応性を向上させる方法を提供する。有機金属添加剤はまたリアクターストリッパー[2]の高密度床(dense bed)に注入することもできる。部分的に回復したアップグレーディング材料/剤[12]は、その後、酸素含有ガス[13]の蒸気で残渣コークスを燃焼させるために燃焼器[4]に移され、排ガス[15]が製造される。
【0031】
本発明の別の側面は、排ガスが、大気に放たれる前の動力生成のための動力回収タービン[24]および蒸気の生成のための廃熱回収ボイラー[25]に送られる前に、触媒微粉の除去のための微粒子除去システム[23]に送られることを提供する。
【0032】
本発明の別の側面はまた、循環ループ[16]によって回復したアップグレーディング材料を燃焼器[4]から改質器[3]へと循環することによって、改質器[3]における蒸気でのコークスの部分再生の吸熱反応を行うために必要とされる熱を供給するための方法を提供する。回復したアップグレーディング材料[17]は、その後移送ラインによって改質器[3]からライザーリアクター[1]へと移される。
【0033】
本発明の別の側面において、燃焼器[4]から再利用される回復したアップグレーディング材料(回復したアップグレーディング材料および回復したアップグレーディング剤は本発明の文脈において区別しないで使用され得る)は、ストリッパーから改質器[3]に入る前に、ミキサー[2A]において使用済みアップグレーディング材料と適切に混合される。ミキサー[2A]は、改質器[3]の外側に配置されるか、または設計要件に依存して、改質器[3]の一部を形成する。典型的なFCCプロセスにおいて、コークスの完全な燃焼によって放出された反応の熱から、分解の吸熱を供給するために、および炭化水素フィードおよび蒸気を反応温度に加熱するために、多量の熱が燃焼器からライザーに移されるのは公知の事実である。すなわち、燃焼器におけるコークスの燃焼によって放出された熱によって、リアクター側の熱要件が満たされる。この方法において、燃焼器においてコークスの燃焼によって放出された熱は、リアクター側に、ならびに、改質器の吸熱反応に必要とされる熱を供給する。燃焼器[4]および改質器[3]の温度は、再利用比、すなわちストリッパー[2]からくる使用済みアップグレーディング材料に対する燃焼器からくる回復したアップグレーディング材料の質量比によって保持される。
【0034】
本発明は燃焼器[4]および改質器[3]容器の大きさを大きくするが、しかしそれは、純粋な酸素を使用する操作と比較して、操作の多大な費用を節約し、合成ガスの品質および量を大いに増大させる。
【0035】
改質器[3]は、部分的に回復したアップグレーディング材料を燃焼器[4]に移すための手段[12]を有する。部分的に回復したたアップグレーディング材料の燃焼器[4]への移送はリフトラインを使用して行う。リフトラインを介した固体の循環は、改質器の底部に配置されたプラグバルブの開口部を介して制御される。
【0036】
本発明のもう一つの側面は、高品質合成ガスを製造するため、および同時にシステムの熱収支を保持するためのプロセスを提供し、ここで改質器[3]において蒸気でより多くのコークスを改質すること、および、燃焼器[4](図2)において、硫黄および窒素が少ない外部の炭化水素流を残渣コークスと一緒に燃焼させることによって、合成ガスの量はさらに増大し、より少ない量のコークスを燃焼させることで、燃焼器の温度を保持するための適切な手段[14]を介して、燃焼器[4]の所望の温度が保持される。よって、硫黄および窒素の不純物が少ない炭化水素流を燃焼することによって、SOxおよびNOxの排出量の削減が達成される。コークスに存在する主要量の硫黄および窒素は、硫化水素および改質器[3]の下流セクションにおいて除去されるアンモニアに変換される。
【0037】
本発明のまた別の側面は、改質器[3]において、ガス化剤としての蒸気を使用して外部の炭化水素流を改質すること、および、燃焼器[4]において、全コークスを燃焼することによって、高収率の合成ガスを得るための方法を提供する。本発明の一つの側面において、アップグレーディング材料は、燃焼器[4]〜改質器[3]〜燃焼器[4]の間で循環され、燃焼器および改質器の所望の温度が保持される。かかる配置において、使用済みアップグレーディング材料[8]は、ライザーリアクターのストリッパーまたはライザーゾーン[1]から燃焼器[4]へ直接移される。この態様において、全コークスが燃焼器で燃焼される際、SOxおよびNOxの排出量は最大となる。
【0038】
本発明のさらなる側面は、改質器[3]によって必要とされる全熱量が燃焼器[4]から供給されることを提供する。言い換えれば、改質器[3]において行われる反応に必要な温度条件は、続くセクションで議論しているとおり、燃焼器[4]から発生する熱によって供給され、制御される。750〜950℃の範囲のより高い温度で操作する燃焼器[4]からの熱い回復したアップグレーディング材料は、再利用されるか、または改質器[3]に戻り循環され、改質器[3]において温度が保持される。
【0039】
以下は、改質ゾーン[3]および燃焼ゾーン[4]において生じる主反応である。
【数1】
【0040】
上記ガスの組み合わせとの可能な多くの他の反応があるが、それはあまり重要ではない。改質器を純粋に蒸気で操作する際、過剰な蒸気の存在下および高水素雰囲気により、反応1、2および3が主要な役割を果たす。
【0041】
上記スキームから、反応1は吸熱性であり、および2、3および4は発熱性であり、反応1は反応2および3を促すため、全体的な反応は吸熱性であり、吸熱は反応5および6のわずかな関与で増加する。反応1は高温(>650℃)で有利であり、必要とされる過熱を提供するための任意の追加酸素源が合成ガスの品質を劣化させ、COなどの温室ガスを増加させるであろう。本発明において、改質器[3]によって必要とされる全熱量は燃焼器[4]から供給される。
【0042】
蒸気でのコークスの部分再生のための触媒として作用する有機金属添加剤の注入によって、アップグレーディング材料の上に金属が堆積した。蒸気でのコークスの部分再生における触媒の役割は、反応の速度を増加させることである。触媒効果は温度の上昇とともに減少するため、改質器温度を850℃を超えずに維持することが望ましい。650℃未満の改質器温度で、メタン生成が促進するのがみられる。蒸気が過剰に存在する場合、触媒は反応1および2を促すのにより効果的である。
【0043】
使用済みアップグレーディング材料の上の選択金属の最適濃度は1000〜2000ppmwであり、それを超えると、それがさらに表面領域を減少させるといった無視できる効果または負の効果のいずれかが観察される。合成ガスは50〜70体積%のH、12〜18体積%のCO、10〜15%のCO、1〜4%のCHならびにHSおよびCOSなどのサワーガスを含み(無水ベース)、主に原料の硫黄含有量および合成ガスの発熱量に依存するこれらの濃度は、220〜250BTU/SCFの範囲である。
【0044】
水素に富んだ高品質合成ガスの製造方法は、改質器における蒸気でのより多くのコークスの部分的な再生を伴い、および燃焼器において硫黄および窒素が少ない外部の炭化水素流を燃焼することは、燃焼器においてより少ない量のコークスを燃焼することによって、燃焼器の温度を保持する。この方法はシステムの熱収支を保持するのに役立つ。これはさらに、燃焼器にいて硫黄および窒素が少ない炭化水素流を燃焼することおよび改質器において蒸気でよりコークスを改質することによる使用済みアップグレーディング材料の再生の間、SOxおよびNOxの排出量の削減に役立つ。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明の別の側面は、合成ガスから純粋な水素を製造するためのシステムを提供し、これは圧縮機[19]で合成ガスを所定の30kg/cm(g)までの高圧力に圧縮する前に、合成ガスを100〜300℃に冷却するための冷却器[18]を含む。冷却器は、蒸気の製造のために合成ガスから熱を取り出すためのボイラーであってもよい。圧縮された合成ガスは冷却器[20]において200〜300℃に冷却され、その後統合されたサワーシフトリアクターシステム(Integrated Sour-Shift Reactor System)[21]に送られ、ここでCOSはHSに変換され、さらなるHが水蒸気とCOの水〜ガスシフト反応により製造される。水素は、その後圧力変動吸着(Pressure Swing Adsorption)[22]を使用してシフトリアクター流出物から分離する。あるいは、改質器は30kg/cmgまでの高圧力で操作することができる。かかる場合において、上述の合成ガス圧縮機は必要ない。
【0047】
したがって、本発明の主な態様は残渣炭化水素油原料をアップグレーディングする方法の間に、水素に富んだ合成ガスを製造する方法に関し、当該方法は蒸気を有し、かつ、酸素含有ガスのない改質器において、使用済みアップグレーディング剤を部分的に再生し、水素に富んだ合成ガスを得ることを含み、ここで、使用済みアップグレーディング剤はコークス1〜5重量%を構成し、改質器は外部熱の供給なしで650〜850℃の温度で保持される。
【0048】
他の態様において、改質器の温度は燃焼器から改質器への回復した剤を循環させることによって保持される。
別の態様において、水素に富んだ合成ガスを製造するための方法は、さらに、改質器においてアルカリおよびアルカリ土類金属添加剤から選択される油溶性有機金属添加剤を注入することを伴う。
【0049】
一つの別の態様において、改質器からの部分的に回復したアップグレーディング剤は燃焼器に移され、燃焼器において酸素含有ガス流の存在下、750℃〜950℃の範囲の温度で部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼させ、回復したアップグレーディング剤および排ガスが得られる。
さらなる態様において、水素に富んだ合成ガスを製造するための方法は、部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼する間に、硫黄および窒素不純物が少ない炭化水素流を燃焼器に導入することを任意に含む。
【0050】
またさらなる態様において、水素に富んだ合成ガスを製造する方法は、燃焼器からの回復したアップグレーディング剤およびライザーからの使用済みアップグレーディング剤を、改質器に導入する前にミキサーにおいて組み合わせることを含み、ここでミキサーは改質器の外側に位置するか、改質器の一部を形成する。
さらに別の態様において、改質器に導入する前に、使用済みアップグレーディング剤を、ストリッパーにおいて、ライザーから得られた分解生成物から分離する。
【0051】
他の態様において、本発明は、残渣炭化水素油原料をアップグレーディングする方法の間に、水素に富んだ合成ガスを製造する方法に関し、当該方法は以下:
a)550℃〜650℃の範囲の温度で、原料と回復したアップグレーディング剤とを接触させることによって、ライザーリアクターにおいて残渣炭化水素油原料を分解して、分解生成物および使用済みアップグレーディング剤を得ること;
b)使用済みアップグレーディング剤をストリッパーにおいて分解生成物から分離すること、および、使用済みアップグレーディング剤を改質器に移すこと;
c)600℃〜850℃の範囲の温度で、改質器において、アルカリ、アルカリ土類金属または遷移金属添加剤から選択される有機金属添加剤と一緒に、空気/酸素のいずれも含まない蒸気を加えることによって、使用済みアップグレーディング剤に堆積したコークスを再生し、水素に富んだ合成ガスおよび部分的に回復したアップグレーディング剤を得ること、および部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼器に移すこと;
d)750℃〜950℃の範囲の温度で、燃焼器において、部分的に回復したアップグレーディング材料を燃焼させ、酸素含有ガスの蒸気および任意に硫黄および窒素不純物が少ない炭化水素蒸気の存在下で、残渣コークスを除去し、回復したアップグレーディング剤および排ガスを得ること;
e)回復したアップグレーディング剤を改質器に戻して移し、改質器の温度を保持すること:および
f)回復したアップグレーディング剤を改質器からライザーに循環させること
を含む。
【0052】
さらなる態様において、水素に富んだ合成ガスを製造する方法は、燃焼器からの回復したアップグレーディング剤およびライザーからの使用済みアップグレーディング剤を、改質器に導入する前にミキサーにおいて組み合わせることを含み、ここでミキサーは改質器の外側に位置するか、改質器の一部を形成する。
【0053】
さらに別の態様において、本発明はさらに冷却器において改質器から得られた合成ガスを冷却すること、および統合されたサワーシフトリアクターシステムを通過させ、純粋な水素を得ることを含む。
また別の態様において、本発明は燃焼器から得られた排ガスを、動力回収タービンに通過させ、蒸気を発生させることを含む。
【0054】
一つの別の態様において、回復したアップグレーディング材料は、1〜2重量%の範囲の全金属堆積を有するGeldart Group Aに属する多孔性流動性ミクロ球状粒子からなる。
さらに別の態様において、残渣炭化水素油原料の分解のプロセスにおいて使用された回復したアップグレーディング材料は、アルミナ、シリカアルミナ、カオリンクレイまたはこれらの混合物から構成された多孔性流動性ミクロ球状粒子からなる。
【0055】
別の態様において、回復したアップグレーディング剤は20〜200ミクロンの範囲の粒径、1200〜1600kg/mの範囲の粒子密度および80m/gを超える表面積をもつ。
さらに別の態様において、残渣炭化水素油原料は、ビチューメン、減圧残油、減圧スロップ、常圧残油、アスファルト、ビスブレーカータール(visbreaker tar)、重質原油、などからなる群から選択され、顕著な量のコン炭素、ニッケル、バナジウム、ナトリウム、塩基性窒素および硫黄不純物を含有する。
【0056】
さらなる態様において、改質器に蒸気と一緒に添加される有機金属添加剤は、アルカリの族からNaおよびK;アルカリ土類金属の族からMgおよびCa;および遷移の族からFeが選択される。
またさらなる態様において、改質器に蒸気と一緒に添加される有機金属添加剤は、NaおよびKなどのアルカリの族から選択される。
【0057】
別の態様において、改質器に蒸気と一緒に添加される有機金属添加剤は、MgおよびCaなどのアルカリ土類の族から選択される。
また別の態様において、改質器に蒸気と一緒に添加される有機金属添加剤は、Feなどの遷移の族から選択される。
【0058】
さらなる態様において、改質器に添加された有機金属添加剤は、改質器において、アップグレーディング材料上に堆積されるコークス上に選択金属の堆積をもたらし、ここでアップグレーディング材料上の選択金属の濃度は1000〜2000ppmwの範囲にある。
好ましい態様において、アップグレーディング材料のコークス上に堆積した金属は1〜2重量%の範囲にある。
【0059】
一つの別の好ましい態様において、回復したアップグレーディング材料は燃焼器から改質器に戻り移され、改質器の温度が保持される。回復したアップグレーディング材料の再循環は、改質器のための熱源として機能し、それゆえこのプロセスにおいて外部の熱源は必要ない。
別の態様において、改質器からの回復したアップグレーディング材料は移送ライン[17]によって、ライザーリアクターに移される。
好ましい態様において、本発明は、50〜70体積%の水素、12〜18体積%の一酸化炭素、10〜15体積%の二酸化炭素、1〜4体積%のメタンならびにHSおよびCOSなどのサワーガスを含む合成ガス(無水ベース)に関する。
【0060】
他の態様において、本発明は、残渣炭化水素油原料をアップグレーディングする方法の間に、水素に富んだ合成ガスを製造するためのシステムに関し、当該システムは以下:
a)ライザーリアクター[1]を含む分解ゾーン;
b)改質器[3]および燃焼器[4]を含む2段階の再生ゾーン;および
c)燃焼器[4]から改質器[3]への回復したアップグレーディング剤の再利用のための手段[16]を含む循環ゾーン
を含む。
【0061】
別の態様において、分解ゾーンはさらに以下;
a)残渣原料[5]および流動化と噴霧を兼ねる媒体[6]を注入するための手段
b)アップグレーディング材料[17]を改質器[3]からライザーリアクター[1]へと注入するための手段;および
c)分解生成物[7]および使用済みアップグレーディング剤[8]を分離するためのリアクターとストリッパーを兼ねる容器
を含む。
【0062】
さらに別の態様において、改質器[3]は部分的に回復したアップグレーディング剤を燃焼器[4]へ移すための手段[12]を具備し、ここで前記手段[12]はリフトラインを介する固体の循環を制御するためのプラグバルブを有するリフトラインを含む。
【0063】
さらなる態様において、水素に富んだ合成ガスを製造するためのシステムは、さらに以下:
a)冷却器[18、20]において合成ガス[11]を冷却する手段;
b)圧縮機[19]において合成ガス[11]を圧縮する手段;
c)COSをHSに変換し、統合されたサワーシフトリアクターシステム[21]を使用する水―シフト反応によってさらなるHに変換する手段;および
d)圧力変動吸着[22]を使用してガスの混合物からHを分離する手段
を含む。
【0064】
さらなる態様において、冷却器[18]は100〜300℃の範囲の温度を有し、冷却器[20]は200〜300℃の範囲の温度を有する。
また別の態様において、圧縮機[19]は合成ガスを30kg/cmまで圧縮し、圧縮された合成ガスが得られる。
【0065】
さらに別の態様において、本発明は水素に富んだ合成ガスを製造する方法に関し、ここで合成ガスからの純粋な水素は以下の工程:
a)合成ガス[11]を冷却器[18]において所定の温度範囲に冷却すること;
b)工程(a)の合成ガス[11]を圧縮機[19]において所定の高圧に圧縮し、圧縮された合成ガスを得ること;
c)工程(b)の圧縮された合成ガスを冷却器[20]において所定の温度範囲に冷却すること;
d)工程(c)の圧縮された合成ガスを統合されたサワーシフトリアクターシステム[21]に移し、COSからHSに変換し、水―ガスシフト反応によってさらなるHに変換すること;および
e)圧力変動吸着[22]を使用してシフトリアクター流出物から純粋なHを得ること:
において製造される。
【0066】
さらに別の態様において、合成ガスを100〜300℃の温度範囲に冷却するために、合成ガスの冷却を行う。
さらなる態様において、圧縮された合成ガスを得るために、合成ガスの圧縮を30kg/cmまでの圧力で行う。
さらなる態様において、圧縮されたガスを200〜300℃の温度範囲に冷却するために、圧縮された合成ガスの冷却を行う。
図1
図2