(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333934
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】乳がんの検出を補助する方法、ポリペプチドプローブセット、およびポリヌクレオチドアレイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20180521BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20180521BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20180521BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20180521BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20180521BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
G01N33/574 AZNA
G01N33/53 N
G01N37/00 102
C12M1/00 A
C12Q1/68 A
C12N15/00 F
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-243039(P2016-243039)
(22)【出願日】2016年12月15日
(62)【分割の表示】特願2013-524261(P2013-524261)の分割
【原出願日】2011年8月15日
(65)【公開番号】特開2017-83455(P2017-83455A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2016年12月15日
(31)【優先権主張番号】61/373,359
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507080994
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS,a body corporate acting on behalf of ARIZONA STATE UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】501218245
【氏名又は名称】ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート インク.
【氏名又は名称原語表記】Dana−Farber Cancer Institute, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラベア、ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、カレン スー
(72)【発明者】
【氏名】ワルストロム、ガリック
(72)【発明者】
【氏名】シバニ、サハル
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラン、ニロシャン
【審査官】
赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/030845(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/083252(WO,A2)
【文献】
国際公開第2005/010180(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/073694(WO,A1)
【文献】
FEBS J., 2009, 276(23), pp.6880-6904
【文献】
J. Proteome Res., 2008, 7(4), pp.1490-1499
【文献】
ANDERSON K. et al.,Using custom protein microarrays to identify autoantibody biomarkers for the early detection of brea,[online], [retrieved on 2015-09-04], <URL: http://cancerres.aacrjournals.org/content/69/2_Supplement
【文献】
The Open Biomarkers Journal, 2010, 3, pp.13-20 (Epub 2010 Mar 25)
【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 2002, 99(10), pp.6919-6924
【文献】
NCBI, [online], GEO Profiles ID:48492828,2007/09/30, [retrieved on 2017.03.22],URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geoprofiles/48492828
【文献】
NCBI, [online], GEO Profiles ID:42677179,2007/06/13, [retrieved on 2017.03.23],URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geoprofiles/42677179
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53−33/68
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳がんの検出を補助する方法であって、
(a)乳がんのリスクを有する対象者から得られた適切な体液試料をポリペプチドプローブセットと接触させるステップであって、前記ポリペプチドプローブセットは、ATP6AP1(配列番号13)、またはその抗原性フラグメントと、任意選択でPDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、およびこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上のポリペプチドとを含み、接触は、体液試料中の抗体が前記ポリペプチドプローブセットのポリペプチドに選択的に結合するのに適した条件下で行われる、ステップと、
(b)体液試料中における前記ポリペプチドプローブセットのポリペプチドに対する抗体の存在を検出するステップとを含み、
前記ポリペプチドプローブセットのポリペプチドに対する抗体の存在は対象者における乳がんの可能性を示す、方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドプローブセットは、ATP6AP1(配列番号13)、またはその抗原性フラグメントと、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、およびこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上のポリペプチドとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象者は、乳房組織、リンパ節、もしくは腋窩における1つ以上のしこり、乳房の大きさもしくは形状の変化、皮膚えくぼ、陥没乳頭、自然発生的な片側乳頭分泌、乳がんの家族歴/個人歴を有するか、または、前記対象者は前記対象者を乳がんに罹患しやすくするBRCAもしくは他の遺伝子の突然変異のキャリアである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記乳がんの可能性はI期またはII期の乳がんの可能性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記体液は血清または血漿を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
乳がんの検出を補助する方法に用いるためのポリペプチドプローブセットであって、
ATP6AP1(配列番号13)、またはその抗原性フラグメントと、任意選択でPDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、およびこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上のポリペプチドとを含み、かつ前記ポリペプチドプローブセットに含まれる異なるポリペプチドは100個以下である、ポリペプチドプローブセット。
【請求項7】
前記ポリペプチドプローブセットは、ATP6AP1(配列番号13)、またはその抗原性フラグメントと、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、およびこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上のポリペプチドとを含む、請求項6に記載のポリペプチドプローブセット。
【請求項8】
支持体上に存在する、請求項6または7に記載のポリペプチドプローブセット。
【請求項9】
溶液中に存在する、請求項6または7に記載のポリペプチドプローブセット。
【請求項10】
50個以下の異なるポリペプチドを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドプローブセット。
【請求項11】
25個以下の異なるポリペプチドを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドプローブセット。
【請求項12】
乳がんの検出を補助する方法に用いるためのポリヌクレオチドアレイであって、
(a)支持体と、
(b)前記支持体に結合した、ATP6AP1(配列番号13)、またはその抗原性フラグメントをコードする単離核酸と、任意選択でPDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、BAT4(配列番号5)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、GPR157(配列番号43)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、RAC3(配列番号15)、EIF3E(配列番号39)、ATF3(配列番号19)、SOX2(配列番号31)、BDNF(配列番号17)、ZNF510(配列番号53)、およびこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の単離核酸と
を含むポリヌクレオチドアレイであって、前記ポリヌクレオチドアレイに含まれる異なる単離核酸は100個以下である、ポリヌクレオチドアレイ。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドアレイは、ATP6AP1(配列番号13)、またはその抗原性フラグメントをコードする単離核酸と、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、BAT4(配列番号5)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、GPR157(配列番号43)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、RAC3(配列番号15)、EIF3E(配列番号39)、ATF3(配列番号19)、SOX2(配列番号31)、BDNF(配列番号17)、ZNF510(配列番号53)、およびこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の単離核酸とを含む、請求項12に記載のポリヌクレオチドアレイ。
【請求項14】
核酸プログラム型タンパク質アレイ(Nucleic Acid Protein Programmable Array)である、請求項12または13に記載のポリヌクレオチドアレイ。
【請求項15】
50個以下の異なる単離核酸を含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドアレイ。
【請求項16】
25個以下の異なる単離核酸を含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳がんの早期発見用バイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府の権益について
本研究は、早期発見研究ネットワーク(Early Detection Research Network)により授与された助成番号第7U01CA117374号により一部資金提供を受けた(NIH/NCI 7U01CA117374)。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
背景
早期発見および治療における近年の進歩にもかかわらず、乳がんは米国の多発的かつ重要な健康問題であり続けている。II期およびIII期の乳がんと診断された女性は遠隔再発のリスクが高く、またこれらの女性のうち最大で半数が、現在の治療法では依然不治の転移性疾患を発症することになる。この背景のもと、初期の疾患を検出することが可能なバイオマーカーの探索、ならびに疾患の進行および再発の監視に、懸命な努力がなされている。分子を標的とする治療法の出現で、がんの生物学的サブタイプに関連するバイオマーカーは、治療的介入に対する応答を予測するのに有用な可能性がある。
【0004】
がん患者の血清を健康な対照者の血清と区別するための、プロテオミクスに基づいた手法は、複雑なタンパク質混合物中の少量のタンパク質フラグメントの同定の難しさ、タンパク質の不安定性、および患者集団内のタンパク質含量の生来のばらつきが課題となってきた。腫瘍抗原に対する自己抗体(AAb)は、安定であり、特異性が高く、血清からの精製が容易であり、かつ十分にバリデーションされた二次試薬で容易に検出されるため、潜在的ながんバイオマーカーとして他の血清タンパク質よりも優れた長所を有する。該自己抗体は、がん血清を対照血清と区別する高い特異性を有するが、ほとんどの腫瘍AAbが示す感度は不十分である。多数の抗原を並行して試験することは、免疫診断法として使用するための腫瘍特異抗体の診断価値を高める役割を果たす可能性がある。
【0005】
タンパク質マイクロアレイは、免疫応答をスクリーニングするための腫瘍抗原を提示する新たな基盤を提供する。従来のELISA法と比較すると、タンパク質マイクロアレイは何百もの腫瘍抗原を同時に提示かつ評価することができる。各タンパク質の所在位置は予め知られており、かつ表示の問題がない、すなわち全てのタンパク質が、たとえまれなタンパク質であっても等しく(通常は二連(duplicate)で)表示されるので、応答は迅速に同定される。タンパク質は、1アッセイにつき血清を数マイクロリットルしか必要としない単一の顕微鏡用スライド上に整列配置される。包括的なタンパク質腫瘍抗原アレイを生成するために、予測される腫瘍抗原に加えて既知の腫瘍抗原も含められてよい。初期に実現可能性がある程度実証されたにもかかわらず、タンパク質マイクロアレイは、アレイ上にスポットするためのタンパク質の生産、精製、および品質管理に関連する労力および技術上の問題により、加えて標的AAbの下流のバリデーションアッセイに伴う困難により、未だ広くは使用されていない。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、
支持体に結合した、ATP6AP1(配列番号13)、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、CTBP1(配列番号29)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された少なくとも2つの異なる単離ポリペプチド
を含むポリペプチドプローブセットを提供する。
【0007】
第2の態様では、本発明は、
(a)支持体と、
(b)該支持体に結合した、ATP6AP1(配列番号14)、PDCD6IP(配列番号22)、DBT(配列番号26)、CSNK1E(配列番号10)、FRS3(配列番号4)、RAC3(配列番号16)、HOXD1(配列番号8)、SF3A1(配列番号2)、CTBP1(配列番号30)、C15orf48(配列番号36)、MYOZ2(配列番号34)、EIF3E(配列番号40)、BAT4(配列番号6)、ATF3(配列番号20)、BMX(配列番号46)、RAB5A(配列番号24)、UBAP1(配列番号48)、SOX2(配列番号32)、GPR157(配列番号44)、BDNF(配列番号18)、ZMYM6(配列番号42)、SLC33A1(配列番号12)、TRIM32(配列番号38)、ALG10(配列番号28)、TFCP2(配列番号50)、SERPINH1(配列番号52)、SELL(配列番号56)、ZNF510(配列番号54)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された、ポリペプチドをコードする少なくとも2つの異なる単離核酸と
を含むポリヌクレオチドアレイを提供する。
【0008】
第3の態様では、本発明は、乳がんを検出する方法であって、
(a)乳がんのリスクを有する対象者から得られた適切な体液試料を、ATP6AP1(配列番号13)、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、CTBP1(配列番号29)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上の単離ポリペプチドと接触させるステップであって、接触は、体液試料中の抗体が該1つ以上のポリペプチドに選択的に結合するのに適した条件下で行われる、ステップと、
(b)体液試料中における該ポリペプチドに対する抗体の存在を検出するステップと
を含み、
該1つ以上のポリペプチドに対する抗体の存在は対象者における乳がんの可能性を示す、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、
(a)支持体に結合した、ATP6AP1(配列番号13)、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、CTBP1(配列番号29)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINH1(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された少なくとも2つの異なる単離ポリペプチド、
を含むポリペプチドプローブセットを提供する。
【0010】
4988個の腫瘍抗原から抗原特異的な抗体(AAb)を選択するための連続スクリーニング戦略を使用して、乳がん早期発見用の119個のAAb新規バイオマーカー候補が同定された。盲検化バリデーション研究から、上記に列挙されたような、これらのバイオマーカー候補のうち28個について裏付け証拠が得られた。したがって、本発明のポリペプチドプローブセットは、例えば、初期の乳がんのような乳がん患者由来の体液試料中の腫瘍抗原特異的自己抗体を検出するために、使用可能である。該ポリペプチド、そのアミノ酸配列およびその核酸配列の説明は表1に提供されている。
【0011】
様々な実施形態において、ポリペプチドプローブセットは、列挙されたポリペプチドのうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27個もしくは28個すべて、またはこれらの抗原性部分を含む。
【0012】
好ましい実施形態では、プローブセット中の少なくとも2つの異なる単離ポリペプチドは、ATP6AP1(配列番号13)、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、HOXDl(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、BAT4(配列番号5)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAPl(配列番号47)、GPR157(配列番号43)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINHl(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択される。したがって、様々な実施形態において、ポリペプチドプローブセットは列挙されたポリペプチドのうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個もしくは22個すべて、またはこれらの抗原性部分を含む。さらなる好ましい実施形態では、プローブセットは、ATP6AP1(配列番号13)および他の列挙されたポリペプチドのうち少なくとも1つ、またはこれらの抗原性部分を含む。したがって、様々な実施形態において、ポリペプチドアレイは少なくともATP6AP1および他の列挙されたポリペプチドのうち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26個もしくは27個、またはこれらの抗原性部分を含む。
【0013】
好ましい実施形態では、プローブセットはATP6AP1(配列番号13)、CTBP1(配列番号29)、EIF3E(配列番号39)、ATF3(配列番号19)、SOX2(配列番号31)およびBDNF(配列番号17)のうち少なくとも2、3、4、5個もしくは6個すべて、またはこれらの抗原性部分を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸サブユニットのポリマー、アミノ酸類似体、またはペプチドミメティック(タンパク質およびペプトイドを含む)を指すために該用語の最も広い意味で使用される。ポリペプチドは、天然に存在する完全長のタンパク質もしくはそのフラグメント、天然に存在するポリペプチドの(酵素消化によるなどの)被処理形態、化学合成されたポリペプチド、または組換え発現されたポリペプチドであってよい。ポリペプチドは、D‐アミノ酸およびL‐アミノ酸のうち少なくともいずれか、および任意の他の合成アミノ酸サブユニットを含むものであってよく、また任意の他の種類の適切な修飾、例えば限定するものではないがペプチドミメティック型結合および還元型ペプチド結合を包含することができる。
【0014】
本明細書中で使用されるように、「抗原性フラグメント」は、免疫応答を生じさせることができる、列挙されたポリペプチドのうち少なくとも4アミノ酸の任意の部分である。様々な好ましい実施形態において、抗原性フラグメントは、列挙されたポリペプチドのうち少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15l、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300アミノ酸配列、または全アミノ酸配列である。
【0015】
任意の他の実施形態と組み合わせることが可能な様々なさらなる好ましい実施形態において、ポリペプチドプローブセットは、20,000個以下の異なるポリペプチド、またはこれらの抗原性部分を含み、好ましくは10,000;5,000;1,000;500;250;100;75;50;45;40;35;30;28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3個以下または2つの異なるポリペプチドを含む。上記および他の実施形態において、プローブセット中の同じポリペプチドの2以上の抗原性部分は、1つのポリペプチドまたはその抗原性部分としか見なされない。
【0016】
当業者には当然のことであるが、参照物、対照物、位置的マーカー、または追加のマーカーとして、プローブセットにさらなるポリペプチドまたは他の分子を含めることが望ましい場合もある。任意の適切なそのようなさらなるポリペプチドまたは他の分子が使用されうる。典型的な追加のポリペプチドマーカーには、限定するものではないがp53、CTBP1、RAC3、および活性化転写因子3(ATF3)が挙げられる。典型的な解析対照物にはヒトIgGおよび空スポット(プローブセットが支持体上に存在する場合)が挙げられる。列挙されたポリペプチドに対する自己抗体に結合することができる限り、該ポリペプチドの任意部分がプローブセットに使用されてもよいし、全体が使用されてもよい。
【0017】
ポリペプチドプローブセットは所与の目的に有用な任意の形態で存在することができる。様々な好ましい実施形態において、該ポリペプチドプローブセットは、溶液中に存在してもよいし、凍結乾燥されても、凍結されても、基材上に固定化されてもよい。
【0018】
1つの好ましい実施形態では、ポリペプチドは基材上に固定化される。ポリペプチドを該支持体上に固定化するための任意の適切な技術が使用可能である。一実施形態では、核酸プログラム型タンパク質アレイ(Nucleic Acid Protein Programmable Array)(NAPPA技術が使用されうる。NAPPAアレイは、標的タンパク質をコードする完全長cDNAをアレイの各フィーチャにプリントすることにより生成される。次いでタンパク質が無細胞系によって転写および翻訳され、タンパク質に融合させたエピトープタグを使用してその場に固定化される。他の適切な固定化法には、限定するものではないが、ルシフェラーゼ免疫沈降システム(LIPS)、Luminex(登録商標)ビーズ、96穴ディッシュのウェル、標準的な免疫ディップスティックアッセイ、標準的なELISAアッセイが挙げられる。
【0019】
本明細書中で使用されるように、アレイはポリペプチドの任意の配列構成または配置構成であってよい。一実施形態では、ポリペプチドはアレイ上の特定かつ同定可能な位置にある。当業者であれば、多くのそのようなアレイ上のポリペプチド順列が可能であることを認識するであろう。別の非限定的な実施形態では、アレイ上の別個の位置はそれぞれ別個のポリペプチドを含む。
【0020】
任意の適切な支持体が使用されうる。そのような支持体の例には、限定するものではないが、マイクロアレイ、ビーズ、カラム、光ファイバー、ワイプ、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、ジアゾ化メンブレン(紙またはナイロン)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミックス、金属、メタロイド、半導体材料、被膜ビーズ、磁気微粒子;プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレン;およびゲル形成材料、例えばタンパク質(例えばゼラチン)、リポ多糖類、シリケート、アガロース、ポリアクリルアミド、メタクリル酸メチルポリマー;ゾルゲル液;多孔性ポリマーヒドロゲル;ナノ構造化表面;ナノチューブ(例えばカーボンナノチューブ)、ならびにナノ粒子(例えば金ナノ粒子または量子ドット)が挙げられる。
【0021】
一実施形態では、支持体は固体支持体である。ポリペプチドを結合させることが可能な任意の適切な「固体支持体」を使用可能であり、例えば、限定するものではないが、デキストラン、ヒドロゲル、シリコン、石英、他の圧電材料、例えばランガサイト(La
3Ga
5SiO
14)、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、ジアゾ化メンブレン(紙またはナイロン)、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミックス、金属、メタロイド、半導体材料、被膜ビーズ、磁気微粒子;プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレン;ならびにゲル形成材料、例えばタンパク質(例えばゼラチン)、リポ多糖類、シリケート、アガロースおよびポリアクリルアミドが挙げられる。
【0022】
任意の適切な大きさの固体支持体が使用されうる。1つの非限定的な例としては、固体支持体は寸法がおよそ76mm×25mm(3インチ×1インチ)のスライドからなる。
本発明のすべての実施形態において、プローブセットのポリペプチドは、検出可能部分のようなタグをさらに含むことができる。これは、ポリペプチドプローブセットが溶液中にあるか、またはプローブセット中の異なるポリペプチドを支持体上の異なる配置場所によって識別することができない任意の他の様式である場合に特に好ましい。そのような実施形態では、プローブセット中に存在する異なるポリペプチドまたはその抗原性フラグメントが、相違によって検出可能なタグの使用を通じて、当業者に既知の技術を使用して識別可能であることが特に好ましい。タグは、共有結合、例えば限定するものではないがジスルフィド結合、水素結合、静電気結合、組換え融合および立体配座結合を通じてポリペプチドに連結されうる。別例として、タグは、1つ以上の連結化合物によってポリペプチドに連結されうる。ポリペプチドにタグをコンジュゲートするための技術は当業者に良く知られている。検出可能なタグを含む、プローブセットのポリペプチドは、診断に関して、例えば、試料中の該ポリペプチドに対する抗体の存在を評価するために、また、その結果として乳がんの存在を検出するかまたは臨床試験手順の一部として乳がんの発症もしくは進行を監視するために、使用可能である。任意の適切な検出タグ、例えば、限定するものではないが酵素、補欠分子団、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性物質、陽電子放出金属、および非放射性の常磁性金属イオンが使用されうる。使用されるタグは、使用される特定の検出/分析/診断の技術および方法のうち少なくともいずれか、例えば(組織)試料の免疫組織化学的染色、フローサイトメトリー検出法、レーザースキャンニングサイトメトリー検出法、蛍光免疫検定法、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、バイオアッセイ(例えば中和アッセイ)、ウェスタンブロッティングの適用などに応じて変化することになろう。組織試料の免疫組織化学的染色については、好ましいタグは検出可能な生成物の生産および局所堆積を触媒する酵素である。ポリペプチドの免疫組織化学的視覚化を可能にするために該ポリペプチドに一般的にコンジュゲートされる酵素はよく知られており、例えば、限定するものではないが、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびウレアーゼが挙げられる。視覚的に検出可能な生成物の生産および堆積のための一般的な基質も当業者に良く知られている。ポリペプチドはコロイド金を使用して標識されてもよいし、
33P、
32P、
35S、
3Hおよび
125Iのような放射性同位元素で標識されてもよい。プローブセットのポリペプチドは、当分野で周知の方法によりキレート剤を介して直接または間接的に放射性核種に結合させることができる。
【0023】
第2の態様では、本発明は、ポリヌクレオチドアレイであって:
(a)支持体;および
(b)該支持体に結合した、ATP6AP1(配列番号14)、PDCD6IP(配列番号22)、DBT(配列番号26)、CSNK1E(配列番号10)、FRS3(配列番号4)、RAC3(配列番号16)、HOXD1(配列番号8)、SF3A1(配列番号2)、CTBP1(配列番号30)、C15orf48(配列番号36)、MYOZ2(配列番号34)、EIF3E(配列番号40)、BAT4(配列番号6)、ATF3(配列番号20)、BMX(配列番号46)、RAB5A(配列番号24)、UBAP1(配列番号48)、SOX2(配列番号32)、GPR157(配列番号44)、BDNF(配列番号18)、ZMYM6(配列番号42)、SLC33A1(配列番号12)、TRIM32(配列番号38)、ALG10(配列番号28)、TFCP2(配列番号50)、SERPINHl(配列番号52)、SELL(配列番号56)、ZNF510(配列番号54)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された、ポリペプチドをコードする少なくとも2つの異なる単離核酸、を含むポリヌクレオチドアレイを提供する。この態様では、該アレイは、例えば、初期の乳がんのような乳がんの患者の腫瘍抗原特異的自己抗体を検出するためにも使用されうる。支持体に核酸を結合させるために任意の適切な技術が使用されうる。一実施形態では、支持体のフィーチャに、標的タンパク質、またはその抗原性フラグメントをコードするfcDNAをプリントすることによりNAPPAアレイが生成される。支持体に核酸をプリントするための他の技術も、使用可能でありかつ当分野において周知である。
【0024】
様々な実施形態において、アレイは、支持体に結合した、列挙された核酸のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27個または28個すべてを含む。
【0025】
好ましい実施形態では、少なくとも2つの異なる単離核酸は、ATP6AP1(配列番号14)、PDCD6IP(配列番号22)、DBT(配列番号26)、CSNK1E(配列番号10)、FRS3(配列番号4)、HOXD1(配列番号8)、SF3A1(配列番号2)、C15orf48(配列番号36)、MYOZ2(配列番号34)、BAT4(配列番号6)、BMX(配列番号46)、RAB5A(配列番号24)、UBAP1(配列番号48)、GPR157(配列番号44)、ZMYM6(配列番号42)、SLC33A1(配列番号12)、TRIM32(配列番号38)、ALG10(配列番号28)、TFCP2(配列番号50)、SERPINHl(配列番号52)、SELL(配列番号56)、ZNF510(配列番号54)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択されたポリペプチドをコードする。したがって、様々な実施形態において、ポリヌクレオチドアレイは、支持体に結合した、列挙された核酸のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個、もしくは22個すべて、またはこれらの抗原性フラグメントを含む。
【0026】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも2つの異なる単離核酸は、ATP6AP1(配列番号14)および少なくとも1つの他の列挙された核酸、またはこれらの抗原性部分をコードする。したがって、様々な実施形態において、ポリヌクレオチドアレイは、支持体に結合した、少なくともATP6AP1および他の列挙された核酸のうち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26個、もしくは27個すべて、またはこれらの抗原性部分を含む。
【0027】
別の好ましい実施形態では、少なくとも単離核酸は、ATP6AP1(配列番号13)、CTBP1(配列番号29)、EIF3E(配列番号39)、ATF3(配列番号19)、SOX2(配列番号31)およびBDNF(配列番号17)のうち2、3、4、5個、もしくは6個すべて、またはこれらの抗原性部分をコードする。
【0028】
任意の他の実施形態と組み合わせることが可能な様々なさらなる好ましい実施形態において、アレイは、20,000個以下の異なる核酸を含み、好ましくは、10,000;5,000;1,000;500;250;100;75;50;45;40;35;30;28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3個、または2個以下の異なる核酸を含む。
【0029】
当業者には当然のことであるが、対照物、位置的マーカーとして、または追加マーカーとして、他のポリペプチド、例えば、限定するものではないがp53、CTBP1、RAC3および活性化転写因子3(ATF3)をコードする核酸を支持体上に配置することが望ましい場合もある。
【0030】
ポリペプチドまたはその抗原性フラグメントであって該ポリペプチドに対する自己抗体に結合することができるものをコードする限り、列挙された核酸の任意の一部分または全体が支持体に結合されうる。
【0031】
第1の態様において開示された定義およびすべての実施形態が、この第2の態様に適用される。
第3の態様では、本発明は、乳がんを検出する方法であって;
(a)乳がんのリスクを有する対象者から得られた適切な体液試料を、ATP6AP1(配列番号13)、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、RAC3(配列番号15)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、CTBP1(配列番号29)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、EIF3E(配列番号39)、BAT4(配列番号5)、ATF3(配列番号19)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、SOX2(配列番号31)、GPR157(配列番号43)、BDNF(配列番号17)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINHl(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択された1つ以上の単離ポリペプチドと接触させるステップであって、接触は、体液試料中の抗体が該1つ以上のポリペプチドに選択的に結合するのに適した条件下で行われる、ステップと;
(b)体液試料中における該ポリペプチドに対する抗体の存在を検出するステップと
を含み、
1つ以上のポリペプチドに対する、体液試料中の抗体の存在は、対象者の乳がんの可能性を示す、方法を提供する。
【0032】
本発明者らは、列挙されたポリペプチドのうち1つ以上に対する自己抗体の存在が、乳がんの正の予測因子であることを発見しており、したがって本発明の方法は、有益な診断上かつ予後上の情報を主治医に提供する。
【0033】
本明細書中で使用されるように、「乳がんのリスクを有する」対象者は、乳がんのリスクグループに入るとみなされる任意のヒトである。一実施形態では、対象者は女性である。他の実施形態では、対象者は、該対象者の乳房組織、リンパ節、もしくは腋窩における1つ以上のしこり;乳房の大きさもしくは形状の変化;皮膚えくぼ;陥没乳頭;自然発生的な片側乳頭分泌;乳がんの家族歴/個人歴;を有するか、または、乳がんに罹患しやすい素因であるBRCAもしくは他の遺伝子の突然変異のキャリアである。
【0034】
適切な体液試料には、血清、血漿、CSF、胸膜液、滑液、乳頭分泌物、唾液が挙げられる。好ましい実施形態では、体液試料は血清または血漿である。
一実施形態では、乳がんのリスクを有する対象者由来の試料中の、該ポリペプチドに対する相当量の抗体の存在は、該対象者の乳がんの可能性を示すことができる。別の実施形態では、ポリペプチドに対する抗体が、乳がんのリスクを有する対象者由来の試料中に、対照試料(すなわち乳がんではない対象者由来の試料)より高いレベルで存在する場合、その乳がんのリスクを有する対象者は乳がんの可能性を有する。その後、乳がんの可能性を有する対象者は、当業者に周知の標準的な診断法、例えばマンモグラフィ、生体組織検査法、または乳房MRIを使用して、実際の乳がんの存在に関して検査を受けることができる。様々な実施形態において、該方法は症例の少なくとも70%、より好ましくは症例の少なくとも75%、80%、85%、90%、またはそれ以上において正確な診断をもたらす。好ましい実施形態では、乳がんの可能性はI期またはII期の乳がんの可能性である。
【0035】
様々な実施形態において、該方法は、乳がんのリスクを有する対象者から得られた血清のような体液試料を、列挙されたポリペプチドのうち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27個、もしくは28個すべて、またはこれらの抗原性フラグメントと接触させるステップを含む。様々な実施形態において、列挙されたポリペプチドのうち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27個、もしくは28個すべて、またはこれらの抗原性フラグメントに対する抗体の体液試料中における存在は、該対象者の乳がんの可能性を示す。
【0036】
好ましい実施形態では、1つ以上の単離ポリペプチドは、ATP6AP1(配列番号13)、PDCD6IP(配列番号21)、DBT(配列番号25)、CSNK1E(配列番号9)、FRS3(配列番号3)、HOXD1(配列番号7)、SF3A1(配列番号1)、C15orf48(配列番号35)、MYOZ2(配列番号33)、BAT4(配列番号5)、BMX(配列番号45)、RAB5A(配列番号23)、UBAP1(配列番号47)、GPR157(配列番号43)、ZMYM6(配列番号41)、SLC33A1(配列番号11)、TRIM32(配列番号37)、ALG10(配列番号27)、TFCP2(配列番号49)、SERPINHl(配列番号51)、SELL(配列番号55)、ZNF510(配列番号53)、またはこれらの抗原性フラグメントからなる群から選択される。したがって、様々な実施形態において、該方法は、乳がんのリスクを有する対象者から得られた血清試料を、列挙されたポリペプチドのうち2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個、もしくは22個すべて、またはこれらの抗原性フラグメントと接触させるステップを含む。
【0037】
さらなる好ましい実施形態では、該方法は、乳がんのリスクを有する対象者から得られた血清試料のような体液試料を、ATP6AP1(配列番号13)またはその抗原性フラグメントと接触させるステップを含む。この実施形態では、該方法は、該血清試料を、他の列挙されたポリペプチドのうち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26個、もしくは27個すべて、またはこれらの抗原性部分と接触させるステップをさらに含むことができる。
【0038】
好ましい実施形態において、該方法は、乳がんのリスクを有する対象者から得られた血清試料のような体液試料を、ATP6AP1(配列番号13)、CTBP1(配列番号29)、EIF3E(配列番号39)、ATF3(配列番号19)、SOX2(配列番号31)、およびBDNF(配列番号17)のうち2、3、4、5個、もしくは6個すべて、またはこれらの抗原性部分と接触させるステップを含む。
【0039】
1つの好ましい実施形態では、該方法は、血清試料のような体液試料を、本発明の第1の態様の任意の実施形態のポリペプチドアレイと接触させるか、または、本発明の第2の態様の任意の実施形態によるアレイと、コードされたタンパク質が無細胞系によって転写および翻訳され、該タンパク質に融合されたエピトープタグを使用してその場に固定化された後に接触させる、ステップを含む。
【0040】
当業者には当然のことであるが、他のポリペプチドに対する自己抗体について試験することが望ましい場合もあり、したがって該方法はそのようなさらなる自己抗体、例えばp53、CTBP1、RAC3、および活性化転写因子3(ATF3)に対する抗体に関して試験するステップを含むことができる。
【0041】
「結合」は、抗体と抗原(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子)との任意の検出可能な相互作用、例えば、限定するものではないが、共有結合、イオン結合、塩橋、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性/親水性相互作用、静電的相互作用、立体相互作用、その他の会合、または先述のいずれかの任意の組み合わせ、を含むことができる。当業者には当然のことであるが、アレイ相互作用は化学結合を必要としない。
【0042】
一実施形態では、本発明の任意の実施形態によるアレイのようなプローブセットは、血清試料のような体液と、該体液中の抗体による該プローブセット中の抗原への結合に適した条件下で、接触させ;結合しない抗体は洗浄され、結合した抗体は、標識済み二次抗体のような標識済み二次試薬によって検出される。抗原(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子)に対する特異型の抗体の結合を促進する適切な条件および試薬は、十分に当業者の水準範囲内にある。したがって、本発明の方法は、使用されるいかなる特定の種類の結合条件によっても限定されない。そのような条件は、試料の種類、結合相互作用の望ましいストリンジェンシー、および結合溶液中の競合物質の性質、プローブセット中の分子の種類(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)、プローブセットの種類、ならびに、プローブセットが支持体上に存在する実施形態については、支持体の種類、および支持体上に配列される分子の密度に応じて変化することになろう。好ましい実施形態では、該条件は、結合しない抗体を除去するためのステップを含む。そのようなステップの必要性の判断、およびそのようなステップのための適切な条件は、十分に当業者の水準範囲内にある。
【0043】
任意の種類の標識済み二次試薬標識、例えば、限定するものではないが放射性同位元素標識、蛍光標識、発光標識、および電気化学的標識(すなわち、検出が標識の電位を検出することからなる、様々な中間電極電位を備えた抗体標識物)を、本発明の方法において使用することができる。好ましい実施形態では、蛍光標識または電気化学的標識が使用される。検出可能な標識からのシグナルの検出は十分に当業者の水準範囲内にある。例えば、蛍光アレイリーダは、基材上の電位を記録するための機器と同様に当分野においてよく知られている(電気化学的検出については、例えば、J.ワング(J. Wang)、「電気化学(Analytical Electrochemistry)」、Vol.、第2版、ニューヨーク、ワイリー‐VCH(Wiley -VCH)、2000年、を参照されたい)。さらなる実施形態では、検出可能な標識は量子ドットを含む。一実施形態では、二次標識、例えば、限定するものではないが抗体に結合する二次抗体またはリガンドが使用されうる。多数のポリペプチドがプローブとして使用される実施形態では、上記に議論されるように、該ポリペプチドが相違によって識別可能であることが望ましい。さらなる実施形態では、各ポリペプチドに結合した抗体は、抗融合タグ抗体を用いた染色および該二次抗体から生成される蛍光強度シグナルの測定により定量される。体液試料中におけるポリペプチドに対する抗体の存在を検出するステップは、当分野の標準的な方法によって遂行されうる。適切な条件および試薬は、本明細書中の教示に基づけば当業者には理解されるであろう。ポリペプチドに対する抗体の存在は、上述の抗体を利用するイムノアッセイ法により測定されうる。そのようなイムノアッセイ法には、限定するものではないが、直接的または間接的なイムノアッセイ、例えば、競合的結合アッセイ、非競合的結合アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学法、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、サンドイッチアッセイ、ゲル内拡散免疫拡散アッセイ、凝集反応アッセイ、ドットブロット法、蛍光免疫アッセイ、例えば蛍光活性化細胞選別法(FACS)、化学発光イムノアッセイ、イムノPCR法、プロテインAもしくはプロテインGイムノアッセイ、ウエスタンブロット法のような免疫電気泳動アッセイ、ならびに科学文献および特許文献において一般的に使用されかつ広く記載されるその他のアッセイ、ならびに商業的に使用される多数の方法が挙げられる。
【0044】
酵素免疫測定法の場合、酵素は、通常はグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩によって二次抗体にコンジュゲートされる。しかしながら、容易に認識されることであるが、当業者に周知の各種の様々な連結技法が存在する。一般に使用される酵素には、特に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β‐ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。特異的酵素と共に使用される基質は一般に、対応する酵素により加水分解された際に検出可能な変色を生じるように選択される。例えば、パラニトロフェニルリン酸はアルカリホスファターゼコンジュゲートと共に使用するのに適しており、ペルオキシダーゼコンジュゲートについては1,2‐フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般に使用される。さらに、上述の色素形成基質ではなく、蛍光生成物を生じる蛍光原基質を使用することも可能である。そして、適切な基質を含有する溶液は三次複合物に添加される。該基質は二次抗体に連結された酵素と反応して定性的な可視シグナルを生じ、該シグナルは、通常は分光測光法によりさらに定量されて、分泌タンパク質またはそのフラグメントの量的評価が得られてもよい。別例として、フルオレセインおよびローダミンのような蛍光化合物が、抗体の結合能力を変化させることなく該抗体に化学的に接続されてもよい。特定波長の光を用いた照射により活性化された時、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収して該分子において興奮状態を引き起こし、その後特有のより長い波長の光が放射される。該放射は、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特有の色として現れる。免疫蛍光検査法およびEIA技法はいずれも当分野において非常によく確立されており、本発明の方法に特に好適である。しかしながら、放射性同位元素のような他のレポーター分子、化学発光分子または生物発光分子も使用されうる。
【0045】
さらなる実施形態では、ポリペプチドに対する抗体の存在はウエスタンブロット解析法の使用により決定されてもよい。該技法は一般に、分子量に基づきゲル電気泳動によって試料抗体タンパク質を分離するステップと、該抗体タンパク質を、ニトロセルロースフィルタ、ナイロンフィルタ、または誘導体化ナイロンフィルタのような適切な固体支持体に転写するステップとを含む。試料は、試料抗体に特異的に結合するポリペプチドまたはその抗原性フラグメントとともにインキュベートされ、得られた複合体が検出される。ポリペプチドは直接標識されてもよいし、別例としてポリペプチド‐抗体複合体に特異的に結合する標識二次抗体を使用して後で検出されてもよい。抗体結合試薬は、例えばプロテインAであってもよいし、他の抗体であってもよい。抗体結合試薬は放射性同位体標識されてもよいし、酵素に連結されてもよい。検出は、オートラジオグラフィ、熱量測定反応または化学発光によるものであってよい。この方法により、試料抗体量の定量、および電気泳動時のアクリルアミドゲル内の泳動距離を示すメンブレン上の相対的地位による該抗体の同一性の決定の両方が可能となる。第1および第2の態様において開示された定義およびすべての実施形態は、この第3の態様に適用される。
【0046】
実施例
独自のNAPPAタンパク質マイクロアレイが、早期乳がん患者の血清中の腫瘍抗原特異的AAbを検出するために使用された。4988個の腫瘍抗原からの、AAbを選択するための連続スクリーニング戦略を使用して、本発明者らは、乳がん早期発見用の119個のAAbバイオマーカー候補を同定した。盲検化バリデーション研究から、これらのバイオマーカー候補のうち28個について裏付け証拠が得られた。
【0047】
これらの分析において使用された血清は、NCI早期発見研究ネットワーク(NCI Early Detection Research Network)およびNCI乳がんSPOREプログラム(NCI Breast SPORE program)の支援のもとフォックスチェイスがんセンター(Fox Chase Cancer Center)(FCCC)およびデューク大学病院(Duke University Medical Center)(DUMC)から入手した。血清は、FCCCの早期乳がん患者に由来するものであり(53症例/53対照例)、対照血清には性別一致および年齢一致(±2年)がなされた。すべての試料は、がんの診断に先立つ通常のマンモグラフィの時点で入手され、過去に遡って選定された。良性の乳房疾患について管理するために、本発明者らは、DUMCから初期の浸潤性乳がん患者および年齢を一致させた(±3年)良性の乳房疾患対照者の独立した血清セットを入手した(102症例/102対照例)。これらの試料は、標準化された試料採取プロトコールを使用して採取され、使用時まで−80℃で保管された。症例および対応対照例は同時に処理された。施設内治験審査委員会の承認の下、すべての対象者から書面による同意が得られた。
【0048】
フレキシブルなドナーベクター系に入った配列確認済みの完全長cDNA発現プラスミドは、ハーバード大学プロテオミクス研究所(Harvard Institute of Proteomics)から入手されたものであり、公的に利用可能である(ウェブサイトdnasu.asu.edu/DNASU/を参照)。これらは、LRレコンビナーゼ(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド)を使用してT7系の哺乳類発現ベクターpANT7_GSTに変換された。発現プラスミドは大腸菌(E.coli)DH5αに形質転換され、1.5mLのテリフィック培地(terrific broth)およびアンピシリン(100μg/mL)で増殖させた。DNAは、Biomek(登録商標)FX(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter, Inc.)、カリフォルニア州フラートン)ラボラトリーオートメーションワークステーションを使用して、NucleoPrep(登録商標)II陰イオン交換樹脂(マッハライ・ナーゲル社(Macherey-Nagel Inc.)、ペンシルバニア州ベスレヘム)を用いて精製された。全溶液の自動添加は、Matrix WellMate(商標)(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)、ニューハンプシャー州ハドソン)迅速多量液体分注器を使用して遂行された。精製DNAは、0.6倍量のイソプロパノール添加に続く5000rcfにて30分間の遠心分離処理により沈殿させた。該DNAペレットは200μLの80%エタノールで洗浄され、5000rcfで15分間遠心分離処理され、乾燥され、dH
2O中に再懸濁された。ビーズアレイELISAについては、大量のDNAが標準的なNucleobond(商標)調製方法(マッハライ・ナーゲル社、ペンシルバニア州ベスレヘム)を使用して調製された。
【0049】
プラスミドDNA(1.5μg/μL)には、アレイ表面上にプリントされる前に、該DNAに捕捉抗体(50μg/mL、抗GST抗体、GEヘルスケアバイオサイエンス(GE Healthcare Biosciences)、ニュージャージー州ピスカタウェイ)または抗FLAG抗体(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ミズーリ州セントルイス)、タンパク質架橋剤(2mM、BS3、ピアス(Pierce)、イリノイ州ロックフォード)およびBSA(3mg/mL、シグマ・アルドリッチ)が補足された。試料はすべて、300μmの固体タングステン製ピンを備えたGenetix QArray2(商標)を使用して、アミン処理されたスライドガラス上にプリントされた。アレイは気密容器内に室温で保管され、遮光された。プリントされたDNAは、以前に公表されたプロトコールを使用して、in situで転写および翻訳された。タンパク質発現は、1:200に希釈された抗GST MAb(セルシグナリング(Cell Signaling)、マサチューセッツ州ダンバーズ)を使用して検出された。血清抗体の検出については、アレイは、0.2%のTween(登録商標)20を含む5%PBSミルク中で1:300〜1:600に希釈された血清とともにインキュベーションされた。すべてのインキュベーションは、別途記載のないかぎり混合しながら4℃で一晩(コーニング(Corning)ハイブリダイゼーションチャンバ)実施された。アレイ上での検出は、HRPとコンジュゲートされた抗ヒトIgG(ジャクソンイムノリサーチラボ(Jackson ImmunoResearch Labs)、ペンシルバニア州ウエストグローブ)を使用して実施された。スライドは、チラミドシグナル増幅(Tyramide Signal Amplification)試薬(パーキンエルマー(PerkinElmer)、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して製造業者の説明書に従い蛍光検出のために現像された。スライドは、パーキンエルマーのProScanArray(登録商標)HTを用いて走査され、画像はMicro Vigeneソフトウェア(ヴィジーン・テック(Vigene Tech)バージョン2.9.9.2)を使用して定量された。高免疫原性のEBV由来抗原であるEBNA‐1が、陽性対照抗原用のN末端およびC末端フラグメントとして含められた。陰性対照には、空ベクターおよびDNA無しの対照が含まれた。アレイの整列用の位置合せスポットは、プリントされた精製ヒトIgGタンパク質であった。
【0050】
最初のスクリーニング段階については、FCCC由来の53症例および53対照例の血清が、NAPPAタンパク質アレイ形式で提示された4,988個の抗原についてスクリーニングされた。各アレイは、最初に非スポット部の第一四分位数によって概算されたバックグラウンドシグナルを除去すること、次に、中央値スケールの生の強度データを対数変換してデータを同じスケールとし、かつシグナルの範囲全体にわたる分散を安定化することによって、標準化された。当初の4,988個の抗原由来の候補抗原は、該抗原が2つの異なる基準すなわち:1)区分回帰法を用いた症例および対照例の第95百分位数の比較、ならびに、2)対照例の第95百分位数より高い強度を備えた症例の割合の、偶然観察される期待数との比較(p値≦0.05)を満たした場合に選択された(n=217)。さらなる抗原(n=544)が、強度および特異度低下(症例/対照例)に基づいて順位付けされた。これら761個の候補抗原の独立したアレイは、DUMC由来の良性の乳房疾患を有する76例の対照例および102例の患者血清で構成された年齢を一致させた血清の完全に独立したセットであってトレーニング用セットとバリデーション用セットとに無作為に分けたものを用いてスクリーニングされた。本発明者らはこれらのアレイを以下のように標準化した。第1に、本発明者らは、強度の生データに3つの係数すなわち:すべての抗原の強度の中央値を同じプレートの抗原の強度の中央値で割ったもの、すべての抗原の強度の中央値を同じピン内位置にプリントされた抗原の強度の中央値で割ったもの、およびすべての抗原の強度の中央値を同じピンでプリントされた抗原の強度の中央値で割ったもの、を連続的に乗じることにより、プレートおよびピンに関連する強度の差を除去した。これらのスケーリングにより、9%の中央値分散低減を生じた。本発明者らは、中央値の絶対偏差が3倍を超えて異なる二連の抗原対を除去し、その結果スポットの0.5%が除去された。第3に、本発明者らは強度の生データを上記のように再度スケーリングし、二連の抗原対を平均した。最後に、本発明者らは、対照スポット(DNA無し)の強度の第一四分位数を差し引くことによりバックグラウンドシグナルを除去し、超過分の強度を超過分の強度の中央値で割った。
【0051】
本発明者らは、各抗原についての症例および対照例の標準化された強度を比較する根拠として部分的な受信者動作特性曲線下面積(pAUC)を使用した。具体的には、本発明者らは偽陽性率が最大5%までであるpAUCを使用した。各抗原について、本発明者らは、pAUCが、症例と対照例との間に差がないことを表す45度の線の受信者動作特性曲線下の同じ部分的面積である0.00125より大きいという仮説について検証した。本発明者らは、トレーニング用セットを使用してp値0.05未満で119個の抗原バイオマーカー候補を同定し、このうちの28個を、バリデーション用セットを使用して確認した(p<0.05)。この28個の乳がんバイオマーカーについてのトレーニングおよびバリデーションの統計値は表1に提供されている。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]