(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333945
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】義足足部デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/66 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
A61F2/66
【請求項の数】32
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-503639(P2016-503639)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-514505(P2016-514505A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014055411
(87)【国際公開番号】WO2014147070
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月26日
(31)【優先権主張番号】1350323-0
(32)【優先日】2013年3月18日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515261974
【氏名又は名称】セー・リンデエクステンド・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・リンデ
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ・クリンテング
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−503867(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0203640(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0167731(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0271434(US,A1)
【文献】
特表2013−512043(JP,A)
【文献】
特表2007−502629(JP,A)
【文献】
特開2012−040379(JP,A)
【文献】
米国特許第04959073(US,A)
【文献】
特開平11−265960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足指部(11)、足首部(12)、およびかかと部(13)を有する義足足部デバイス(10)であって、
結合デバイスに、および/または肢切断者の手足の基部に接続されるように構成された取付けユニット(14)と、
前記取付けユニット(14)から前記足首部(12)を通って前記足指部(11)に向けて延在する上側前足部材(16)であって、少なくとも1つの細長い、曲線を成す前足部板ばね(17)、および前記上側前足部材(16)の前記足指部(11)を少なくとも2つの部分に分割する少なくとも1つの長手方向に延在する分割スロット(20)を備える上側前足部材(16)と、
前記取付けユニット(14)から前記足首部(12)を通って前記かかと部(13)に向けて延在するかかと部材(22)であって、少なくとも1つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備えるかかと部材(22)と、
前記足指部(11)において前記上側前足部材(16)に、また前記かかと部(13)において前記かかと部材(22)に取り付けられる下側足部材(25)と、
を備え、
前記下側足部材(25)が、その長手方向長さに沿って横方向に一体であり、
前記下側足部材(25)が、13MPa未満の引張り係数(E)を有するエラストマー系接着剤により、前記上側前足部材(16)に接続されることを特徴とする義足足部デバイス(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの分割スロット(20)が、前方足指部(21)から前記取付けユニット(14)に向けて、前記上側前足部材(16)の長手方向長さの15〜50%に沿って、より好ましくは、25〜35%に沿って、最も好ましくは、約30%に沿って延在する長さを有する、請求項1に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項3】
前記エラストマー系接着剤が、前記足指部(11)において前記上側前足部材(16)と前記下側足部材(25)の間の第1の接着域(28)に塗布され、前記第1の接着域(28)が、前方足指部(21)から、前記上側前足部材(16)の前記少なくとも1つの分割スロット(20)の長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、30〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%で前記足首部(12)に向けて長手方向に延在し、また前記分割スロット(20)から横方向に、幅の30〜60%、好ましくは、40〜55%、および最も好ましくは、50%で延在する、請求項1または2に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項4】
前記エラストマー系接着剤が、前記かかと部(13)において前記かかと部材(22)と前記下側足部材(25)の間の第2の接着域(29)に塗布される、請求項1から3のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項5】
前記上側前足部材(16)が、前記足指部(11)において接続された少なくとも2つの細長い、曲線を成す前足部板ばね(17)を備え、前記前足部板ばね(17)が、前記足首部(12)において前記少なくとも2つの前足部板ばね(17)の間で第1の間隙(18)を画定する分岐しかつ前方に凹形の弧を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項6】
前記上側前足部材(16)が、前記足指部(11)において接続された2つの細長い、曲線を成す前足部板ばね(17)を備え、前記前足部板ばね(17)が、前記足首部(12)において前記前足部板ばね(17)の間で第1の間隙(18)を画定する二叉に分かれかつ前方に凹形の弧を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項7】
前記上側前足部材(16)の前記前足部板ばね(17)が、第3の接着域(30)に塗布されるエラストマー系接着剤により接続され、前記第3の接着域(30)が、前方足指部(21)から、前記前足部板ばね(17)の前記少なくとも1つの分割スロット(20)の長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、35〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%に沿って前記足首部(12)に向けて長手方向に延在し、また前記分割スロット(20)から横方向に、長さの少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%、および最も好ましくは、90%で延在する、請求項5または6に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項8】
前記かかと部材(22)が、少なくとも2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備え、前記かかと部板ばね(23)が、前記取付けユニット(14)から前記足指部に向けて下方および前方に延在し、前記足首部(12)に沿って湾曲し、かつ前記かかと部(13)に向けて後方に延在し、前記足首部(12)において前記少なくとも2つのかかと部板ばね(23)の間に第2の間隙(24)を画定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項9】
前記かかと部材(22)が、2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備え、前記かかと部板ばね(23)が、前記取付けユニット(14)から前記足指部に向けて下方および前方に延在し、前記足首部(12)に沿って湾曲し、かつ前記かかと部(13)に向けて後方に延在し、前記足首部(12)において前記2つのかかと部板ばね(23)の間に第2の間隙(24)を画定する、請求項1から8のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項10】
前記かかと部板ばね(23)が、第4の接着域(31)に塗布されるエラストマー系接着剤により接続される、請求項8または9に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項11】
前記第1の接着域(28)および前記第2の接着域(29)に塗布される前記エラストマー系接着剤が、前記第3の接着域(30)および前記第4の接着域(31)に塗布される第2のエラストマー系接着剤よりも低い引張り係数(E)を有する第1のエラストマー系接着剤である、請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7を引用する請求項10に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項12】
前記第1のエラストマー系接着剤が、5MPa未満、より好ましくは、3MPa未満、最も好ましくは、1MPaの引張り係数(E)を有する、請求項11に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項13】
前記第2のエラストマー系接着剤が、13〜7MPa、より好ましくは、12〜8MPa、最も好ましくは、10MPaの引張り係数(E)を有する、請求項11に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項14】
前記前足部板ばね(17)、前記かかと部板ばね(23)、および前記下側足部材(25)が、可撓性および弾力性のある材料から作られる、請求項1から13のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項15】
前記可撓性および弾力性のある材料が、樹脂基体に炭素繊維を有する複合材料である、請求項14に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項16】
前記可撓性および弾力性のある材料が、炭素繊維または繊維ガラスである、請求項15に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項17】
足指部(11)、足首部(12)、およびかかと部(13)を有する義足足部デバイス(10)であって、
結合デバイスに、および/または肢切断者の手足の基部に接続されるように構成された取付けユニット(14)と、
前記取付けユニット(14)から前記足首部(12)を通って前記足指部(11)に向けて延在する上側前足部材(16)であって、少なくとも1つの細長い、曲線を成す前足部板ばね(17)、および前記上側前足部材(16)の前記足指部(11)を少なくとも2つの部分に分割する少なくとも1つの長手方向に延在する分割スロット(20)を備える上側前足部材(16)と、
前記取付けユニット(14)から前記足首部(12)を通って前記かかと部(13)に向けて延在するかかと部材(22)であって、少なくとも1つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備えるかかと部材(22)と、
前記足指部(11)において前記上側前足部材(16)に、また前記かかと部(13)において前記かかと部材(22)に取り付けられる下側足部材(25)と、
を備え、
前記下側足部材(25)が、その長手方向長さに沿って横方向に一体であり、
前記上側前足部材(16)が、前記足指部(11)において接続された少なくとも2つの細長い、曲線を成す前足部板ばね(17)を備え、前記前足部板ばね(17)が、前記足首部(12)において前記少なくとも2つの前足部板ばね(17)の間で第1の間隙(18)を画定する分岐しかつ前方に凹形の弧を形成し、
前記上側前足部材(16)の前記前足部板ばね(17)が、第3の接着域(30)に塗布されるエラストマー系接着剤により接続され、前記第3の接着域(30)が、前方足指部(21)から、前記前足部板ばね(17)の前記少なくとも1つの分割スロット(20)の長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、35〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%に沿って前記足首部(12)に向けて長手方向に延在し、また前記分割スロット(20)から横方向に、長さの少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%、および最も好ましくは、90%で延在することを特徴とする義足足部デバイス(10)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの分割スロット(20)が、前方足指部(21)から前記取付けユニット(14)に向けて、前記上側前足部材(16)の長手方向長さの15〜50%に沿って、より好ましくは、25〜35%に沿って、最も好ましくは、約30%に沿って延在する長さを有する、請求項17に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項19】
前記上側前足部材(16)が、前記足指部(11)において接続された2つの細長い、曲線を成す前足部板ばね(17)を備え、前記前足部板ばね(17)が、前記足首部(12)において前記前足部板ばね(17)の間で第1の間隙(18)を画定する二叉に分かれかつ前方に凹形の弧を形成する、請求項17または18に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項20】
前記かかと部材(22)が、少なくとも2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備え、前記かかと部板ばね(23)が、前記取付けユニット(14)から前記足指部に向けて下方および前方に延在し、前記足首部(12)に沿って湾曲し、かつ前記かかと部(13)に向けて後方に延在し、前記足首部(12)において前記少なくとも2つのかかと部板ばね(23)の間に第2の間隙(24)を画定する、請求項17から19のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項21】
前記かかと部材(22)が、2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備え、前記かかと部板ばね(23)が、前記取付けユニット(14)から前記足指部に向けて下方および前方に延在し、前記足首部(12)に沿って湾曲し、かつ前記かかと部(13)に向けて後方に延在し、前記足首部(12)において前記2つのかかと部板ばね(23)の間に第2の間隙(24)を画定する、請求項17から20のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項22】
前記かかと部板ばね(23)が、第4の接着域(31)に塗布されるエラストマー系接着剤により接続される、請求項20または21に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項23】
前記前足部板ばね(17)、前記かかと部板ばね(23)、および前記下側足部材(25)が、可撓性および弾力性のある材料から作られる、請求項17から22のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項24】
前記可撓性および弾力性のある材料が、樹脂基体に炭素繊維を有する複合材料である、請求項23に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項25】
前記可撓性および弾力性のある材料が、炭素繊維または繊維ガラスである、請求項24に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項26】
足指部(11)、足首部(12)、およびかかと部(13)を有する義足足部デバイス(10)であって、
結合デバイスに、および/または肢切断者の手足の基部に接続されるように構成された取付けユニット(14)と、
前記取付けユニット(14)から前記足首部(12)を通って前記足指部(11)に向けて延在する上側前足部材(16)であって、少なくとも1つの細長い、曲線を成す前足部板ばね(17)、および前記上側前足部材(16)の前記足指部(11)を少なくとも2つの部分に分割する少なくとも1つの長手方向に延在する分割スロット(20)を備える上側前足部材(16)と、
前記取付けユニット(14)から前記足首部(12)を通って前記かかと部(13)に向けて延在するかかと部材(22)であって、少なくとも1つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備えるかかと部材(22)と、
前記足指部(11)において前記上側前足部材(16)に、また前記かかと部(13)において前記かかと部材(22)に取り付けられる下側足部材(25)と、
を備え、
前記下側足部材(25)が、その長手方向長さに沿って横方向に一体であり、
前記かかと部材(22)が、少なくとも2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備え、前記かかと部板ばね(23)が、前記取付けユニット(14)から前記足指部に向けて下方および前方に延在し、前記足首部(12)に沿って湾曲し、かつ前記かかと部(13)に向けて後方に延在し、前記足首部(12)において前記少なくとも2つのかかと部板ばね(23)の間に第2の間隙(24)を画定し、
前記かかと部板ばね(23)が、第4の接着域(31)に塗布されるエラストマー系接着剤により接続されることを特徴とする義足足部デバイス(10)。
【請求項27】
前記少なくとも1つの分割スロット(20)が、前方足指部(21)から前記取付けユニット(14)に向けて、前記上側前足部材(16)の長手方向長さの15〜50%に沿って、より好ましくは、25〜35%に沿って、最も好ましくは、約30%に沿って延在する長さを有する、請求項26に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項28】
前記かかと部材(22)が、2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね(23)を備え、前記かかと部板ばね(23)が、前記取付けユニット(14)から前記足指部に向けて下方および前方に延在し、前記足首部(12)に沿って湾曲し、かつ前記かかと部(13)に向けて後方に延在し、前記足首部(12)において前記2つのかかと部板ばね(23)の間に第2の間隙(24)を画定する、請求項26または27に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項29】
前記かかと部板ばね(23)が、第4の接着域(31)に塗布されるエラストマー系接着剤により接続される、請求項26から28のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項30】
前記前足部板ばね(17)、前記かかと部板ばね(23)、および前記下側足部材(25)が、可撓性および弾力性のある材料から作られる、請求項26から29のいずれか一項に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項31】
前記可撓性および弾力性のある材料が、樹脂基体に炭素繊維を有する複合材料である、請求項30に記載の義足足部デバイス(10)。
【請求項32】
前記可撓性および弾力性のある材料が、炭素繊維または繊維ガラスである、請求項31に記載の義足足部デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、下腿人工装具に関し、より詳細には、自然の足の動作特性をシミュレートする下側の義足足部(prosthetic foot)に関する。
【背景技術】
【0002】
義足足部は、義足(leg prosthesis)の非常に重要な構成要素である。義足足部は、ユーザが歩行し、走り、または立っている場合に、筋肉の動作と適正に協調するようにいくつかの運動度合いに応じて撓みながらエネルギーを確実に蓄積し、かつ解放する必要がある。さらに、義足足部は、比較的安価であることが望ましい。最近の数年間で、この分野では大幅な進歩が行われてきているが、その多くは、機械的に複雑であり、またいくつかの可動部分を使用する。このようなデバイスは、良好で、信頼性のある性能特性を提供するが、そのコストおよび複雑さにより、特に、大量の用途で、かつこのようなデバイスをサポートし、維持するための高度な技術的基盤を有していないユーザコミュニティにおいては、その使用が限定される。
【0003】
繊維ガラス/エポキシ、および炭素繊維/エポキシ複合材料などの複合材料技術の発展、ならびに義足足部へのそれらの組込みは、義足足部の性能特性および感触を改善しており、装着者に改善された移動性を与えている。しかし、足が、変化するまたは平坦ではない地形で使用される場合、横方向もしくは左右の回転に焦点を当てた設計はほとんどない。自然の足の前足部およびかかとは、地形の変化に適応するために内側から外側方向に転動して回転する。従前の設計の人工的な足の多くには、通常、このような横方向の転動動作のできない一体の足が組み込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、関節を成すばね部材を含んでいないが、関節を成すばね部材を含むように模倣して、なお快適で、自然の足の動作をする義足足部を提供することである。本発明の義足足部は、定期的な点検または調整を必要とせず、生産コストが比較的低い。さらに、義足足部の特有の設計により、それは、平坦ではない地形で使用されたとき、向上した転動動作および安定性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、自然の足の足指部、足首部、およびかかと部に、それぞれ、位置が対応している足指部、足首部、およびかかと部を有する義足足部デバイスにより達成することができる。義足足部デバイスは、自然の足の長手方向延長部に対応する、かかと部から足指部までの長手方向延長部と、自然の足の長手方向に対して直角に人工装具デバイスを横断して延在し、かつその幅に対応する横方向延長部とを有する。義足足部デバイスは、結合デバイスに、かつ/または肢切断者の手足の基部に接続されるように構成された取付けユニットを備える。取付けユニットは、有利には、足首部に、または自然の足に足首の上の位置に配置される。
【0006】
義足足部デバイスは、取付けユニットから足首部を通って足指部に向けて、前方および下方に延在する弾力性のある上側前足部材をさらに備え、当該上側前足部材が、少なくとも1つの細長い、曲線を成す前足部板ばねと、足指部を少なくとも2つの部分に分割する少なくとも1つの長手方向に延在する分割スロットとを備える。
【0007】
デバイスは、取付けユニットから足指部に向けて前方および下方に延在し、足首部を湾曲して通り、その後、かかと部に向けて後方に延在する弾力性のあるかかと部材を有し、当該かかと部材は、少なくとも1つの細長い、曲線を成すかかと部板ばねを備える。義足足部デバイスはまた、歩行のために地面または地表に係合するように構成された下面を備えた弾力性のある下側足部材を有する。下側足部材は、義足足部デバイスの前足部材およびかかと部材の下に配置される。概して、義足足部デバイスの前足部材およびかかと部材は、下側の足プレートの下面が、歩行中に実質的に水平な地面に係合したとき、下側の足プレートの上の垂直方向に位置する。代替的に、下側の足部材の下面は、靴の内側に係合することができる。弾力性のある下側足部材の上面は、足指部において前足部材に、かつかかと部においてかかと部材に取り付けられ、その長手方向長さに沿って横方向に一体である。
【0008】
弾力性のある上側前足部材は、取付けユニットに接続され、かつ取付けユニットから足首部を通って足指部に向けて延在しており、当該上側前足部材は、少なくとも1つの細長い、曲線を成す前足部板ばねを備える。少なくとも1つの曲線を成す前足部板ばねは、取付けユニットに結合され、自然の足の足指位置に対応する位置で終了する。取付けユニットは、結合デバイスに、かつ/または肢切断者の手足の基部に接続されるように構成された上端部と、上側前足部材に面する底面とを有する。有利には、取付けユニットの底面は、上側前足部材が取付けユニットから足首部を通り足指部に向けて前方および下方に延在するとき、上側前足部材の傾斜角と一致するように面取りされている。取付けユニットの上端部は、義足足部デバイスと結合デバイスの間の角度、および/または肢切断者の手足の基部への角度を調整するように変更可能であると有利である。
【0009】
義足足部デバイスは、取付けユニットから足首部を通り、かかと部に向けて延在する弾力性のあるかかと部材を含み、当該かかと部材は、少なくとも1つの細長い、曲線を成すかかと部板ばねを備える。当該少なくとも1つの細長い、曲線を成すかかと部板ばねは、前足部材に接続され、または取付けユニットに直接結合され得る。それは、足指部に向けて、下方および前方に延在し、足首部に沿って湾曲し、自然の足のかかと位置に位置するかかと部に向けて後方に延在する。
【0010】
義足足部デバイスは、自然の足の足指、およびかかと位置にそれぞれが位置する足指部からかかと部へと延在する弾力性のある下側足部材をさらに含む。弾力性のある下側足部材は、足指部において前足部材に、またかかと部においてかかと部材に取り付けられる。下側足部材は、その長手方向長さに沿って横方向に一体のものである、すなわち、それは分割スロットを含まない。弾力性のある下側足部材は、自然の足の長手方向長さに対応する長さだけ延在し、かつ基本的に平坦かつ水平にすることができる。しかし、下側足部材は、母指球(ball)およびかかと位置の領域に下方の湾曲部もしくは谷部を、また自然の足の足指および足弓(arch)位置に上方の湾曲部もしくはピーク部を含む湾曲部を有することができる。
【0011】
前足部およびかかと部板ばね、ならびに上記で述べた下側足部材は、力を受けると曲がり、偏向してエネルギーを蓄積し、その後に力が除去されると、エネルギーを放出してその元の形状に戻ることのできる材料から作られる。板ばねは、可撓性があり、かつ弾力性があると有利であり、複合物とすることができ、また樹脂基体にグラファイト繊維などの繊維を含むことができる。ばねは、横方向もしくは左右方向に真っ直ぐ、または平坦にすることができるが、長手方向に、または足指からかかと方向に湾曲している。
【0012】
上側前足部材の少なくとも1つの板ばねは、足指部を少なくとも2つの部分に分割する、少なくとも1つの長手方向に延在する分割スロットを有する。有利には、少なくとも1つの前足部材は、足指部を2つの部分に分割する、1つの長手方向に延在する分割スロットを含む。したがって、前足部材の少なくとも1つの前足部板ばねは、垂直に二叉に分かれて足指端部から取付けユニットに向けて延在する(すなわち、それは、板ばねを切断している)。分割スロットは、前足部材の長手方向長さに沿って延在し、足指部を横方向に、実質的に2つ以上の等しい部分に分割する。本発明の一実施形態では、分割スロットは、少し中心からずれて位置することができる、すなわち、分割スロットは、足指部を横方向に2つの等しくない部分に分割する。自然の足の内側部分に対応する部分が、より小さくなっており、それにより、自然の足の親指をシミュレートしていると有利である。一実施形態では、少なくとも1つの前足部材は、2つの長手方向に延在する分割スロットを含み、足指部を3つの部分に分割する。さらなる一実施形態では、少なくとも1つの前足部材は、3つの長手方向に帯びる分割スロットを含み、足指部を4つの部分に分割する。
【0013】
1つまたは複数の分割スロットは、足指部が、より独立して、より自然の足と同様に撓むことを可能にし、平坦ではない地形に足が対応できるようにする。しかし、少なくとも1つの分割スロットを有する少なくとも1つの板ばねが、足指部で一体である、すなわち、分割スロットを含まない下側足部材に接続されることが重要である。一体の下側足部材(すなわち、分割スロットを有しない板ばね)を有する利点は、分割スロットを備えるものと比較して数多くある。本発明の義足足部デバイスのものとして一体の下側足部材を用いると、義足足部デバイスには、人工装具を偏らせたときの負荷中に、前足部全体にわたりより均等に配分される弾力性が与えられる。
【0014】
さらに、一体の下側足部材を用いると、義足足部デバイスは、板ばねのいずれかの厚さを増加させる必要なく、より安定になる。前足部板ばねと下側足部材が共に二叉に分かれる場合、板ばねは、義足足部に必要な安定性を提供するためにより厚くする必要がある。板ばねの増加した厚さは、義足足部において全体的に剛性が増加し、かつ弾力性を低下させる。これは、60kgの人が滑らかな地形を歩いていたとき、1.5cmの高さの小さな障害物を踏みつけた場合の試行で証明された。前足部材と下側足部材の両方が分割スロットを含んでいる義足足部を装着したとき、義足足部は、装着者が障害物を踏んだとき7°調整した。これは、本発明の義足足部を装着したときの14〜15°の調整であることと比較すべきである。
【0015】
下側足部材は、13MPa未満のヤング率(E)を有するエラストマー系接着剤により、前足部材およびかかと部材に接続される。本明細書で使用される場合、ヤング率(引張り係数としても知られている)という用語は、下側足部材を前足部材およびかかと部材に接続するために使用されるエラストマー系接着剤など、弾性材料の剛性の測定を意味するように意図されている。ヤング率は、引張り荷重または圧縮荷重下で、等方性の弾性材料から作られた片の寸法の変化を計算する。例えば、それは、例えば、接着剤などの材料サンプルが、張力下でどのくらい伸びるか、または圧縮下でどれだけ縮むかを予測する。ヤング率は、圧力の単位、パスカル(PaもしくはN/m
2、またはm
-1×kg×s
-2)で表されるが、本発明で使用される場合、より実際的な単位はメガパスカル(MPaまたはN/mm
2)である。
【0016】
剛性のある材料は、高いヤング率を有し、弾性荷重下でその形状をわずかにだけ変えるだけである(例えば、ダイヤモンド)。可撓性のある材料は、低いヤング率を有し、その形状を大幅に変える(例えば、ゴム)。下側足部材を前足部材およびかかと部材に接続するために使用されるエラストマー系接着剤は、弾力性および可撓性を足に提供するのに十分な可撓性を有するべきであるが、立っている、歩行する、走る、およびジャンプするなど、通常の使用中に装着者の荷重に耐えるのに十分な剛性を有するべきである。有利には、下側足部材を前足部材およびかかと部材に接続するために使用されるエラストマー系接着剤は、13MPa未満のヤング率(E)を有するべきである。
【0017】
少なくとも1つの分割スロットは、前足部材の長さの15〜50%、より好ましくは、25〜35%、最も好ましくは、約30%に沿って前方足指部から延在することのできる長さを有する。これは、長手方向に前足部材の半分未満、より好ましくは、約1/3が、1つまたは複数の分割スロットを含むことを意味する。
【0018】
エラストマー系接着剤は、前足部材と下側足部材の間の第1の接着域に塗布され、当該第1の接着域は、長手方向に前方足指部から、前足部材の少なくとも1つの分割スロットの長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、30〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%で足首部に向けて延在し、当該分割スロットから当該義足足部の横方向に、幅の30〜60%、好ましくは、40〜55%、および最も好ましくは、50%で延在している。
【0019】
これは、エラストマー系接着剤が、可能な第1の接着域、すなわち、前足部材と下側足部材の間の接触に利用可能な領域の一部にだけ塗布されることを意味する。当該第1の接触域は、横方向に左右に、また前方足指部から足の長手方向に、前足部材が湾曲して、下側足部材から離れて上方に偏向するまで延在する、前足部材と下側足部材の間の領域を含む。当該上側前足部材と下側足部材の間の当該第1の接着域は、前方足指部から、すなわち、足指部の先頭端部から、前足部材の長手方向に足首部に向けて、少なくとも1つの分割スロットの各側部の長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、30〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%で延在し、また横方向に、1つまたは複数の分割スロットの両側から開始して、当該横方向に、幅の30〜60%、好ましくは、40〜55%、および最も好ましくは、50%の範囲にわたる。これは、第1の接着域が、概して、前方足指部から延在する、分割スロットの各側部の近くの領域の範囲にわたることを意味している。分割スロットから横方向に、下側足部材と前足部材の間の最も外側の領域は、エラストマー系接着剤がなく、前足部材および下側足部材が、足指部で互いに対して自由に動くことが可能になる。しかし、エラストマー系接着剤は、分割スロットそれ自体には塗布されないことが重要である。
【0020】
エラストマー系接着剤は、かかと部における前足部材と下側足部材の間の第2の接着域に塗布される。
【0021】
前足部材は、前方に分岐した、わずかに凹形の弧を形成する、足指部において接続された少なくとも2つの細長い、曲線を成す前足部板ばねを備えることができ、それは、足首部における少なくとも2つの前足部板ばねの間に間隙を画定することができる。有利には、前足部材は、足首部における当該2つの前足部板ばねの間に間隙を画定する垂直に二叉に分かれた、前方に凹形の弧を形成する2つの前足部板ばねを備える。少なくとも2つの前足部板ばねの間の間隙は、互いに独立している前足部板ばねが、力を受けて偏向してエネルギーを蓄積し、かつ力が除去されるとエネルギーを放出してその元の形状に戻るので、当該上側前足部材に改善された弾力性を与え、それにより、義足足部の全体の弾力性が向上する。前足部板ばねが取付けユニットに取り付けられる位置において、少なくとも2つの前足部板ばねのそれぞれの間に位置するダンパが存在すると有利である。ダンパは、当該前足部板ばね間に間隙を提供するのを支援することになる。
【0022】
前足部材の前足部板ばねは、第3の接着域に塗布されるエラストマー系接着剤により接続され、当該第3の接着域は、長手方向に前方足指部から、前足部板ばねの分割スロットの長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、35〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%で足首部に向けて延在し、かつ前足部板ばねの当該分割スロットから横方向に、幅の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%、最も好ましくは、少なくとも90%で延在する。
【0023】
これは、エラストマー系接着剤が、可能な第3の接触域の一部だけに塗布されることを意味する。当該第3の接触域は、前足部板ばねの一方の側から他方の側へと横方向に延在し、かつ足の長手方向に前方足指部から、前足部板ばねが湾曲し、足首部において偏向して互いに離れるまで延在する、前足部板ばね間の接触に利用可能な域、すなわち、前足部板ばね間の足指部全体の範囲にわたる。前足部板ばねの間の当該第3の接着域は、前方足指部、すなわち、足指部の先頭端部から、前足部板ばねの長手方向に足首部に向けて、少なくとも1つの分割スロットの各側部における長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、35〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%で延在し、かつ横方向に1つまたは複数の分割スロットの両側から開始して、当該横方向に、幅の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%、および最も好ましくは、少なくとも90%の範囲にわたる。これは、第3の接着域は、概して、前方足指部から延在する、分割スロットの両側に隣接する領域を含むことを意味する。2つの前足部板ばねの間の横方向の最も外側の領域には、エラストマー系接着剤がなく、前足部板ばねが、足指部の外側縁部に沿って互いに対して自由に動くことが可能になる。しかし、エラストマー系接着剤は、分割スロットそれ自体に塗布されないことが重要である。
【0024】
かかと部材は、取付けユニットから下方および前方に足指部に向けて延在し、足首部に沿って湾曲し、その後、かかと部に向けて後方に延在する、少なくとも2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばねを備えることができる。有利には、かかと部材は、足首部において当該かかと部板ばねの間の間隙を画定する、かかと部において接続される2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばねを備える。少なくとも2つの前足部板ばね間の間隙は、互いに独立している板ばねが、力を受けると偏向してエネルギーを蓄積し、力が除去されるとエネルギーを放出してその元の形状に戻るので、当該かかと部材に改善された弾力性を与える。当該かかと部板ばねは、第4の接着域に塗布されるエラストマー系接着剤により互いに接続される。
【0025】
第1および第2の接着域に塗布されるエラストマー系接着剤は、第3および第4の接着域に塗布される第2のエラストマー系接着剤よりも低い引張り係数(E)を有する第1のエラストマー系接着剤とすることができる。異なる引張り係数を有するエラストマー系接着剤が、歩行中に義足足部の弾力性および可撓性を改善するために異なる接着域で使用されると有利である。
【0026】
より高い引張り係数を有するエラストマー系接着剤を用いることは、接着部位の剛性、およびさらに耐久性を改善するが、同時に、接着の弾力性を低くすることになる。低い引張り係数を有するエラストマー系接着剤は、弾力性を大幅に改善するが、接着部位の耐久性を低下させることになる。したがって、本発明におけるエラストマー系接着剤の使用は、最適な歩行に対して最大の弾力性を有する義足足部を提供することと、ストレスに絶えず曝された足に必要な耐久性を提供するのに十分な剛性を有する人工装具を提供することの間の微妙なバランスである。第1のエラストマー系接着剤は、5MPa未満の、より好ましくは、3MPa未満の、最も好ましくは、約1MPaの引張り係数(E)を有すると有利であり、また第2のエラストマー系接着剤は、13〜7MPaの、より好ましくは、12〜8MPaの、最も好ましくは、約10MPaの引張り係数(E)を有すると有利である。
【0027】
前足部板ばね、かかと部板ばね、および下側足部材は、樹脂基体に繊維を含む複合材料など、可撓性があり、かつ弾力性のある材料から作られる。可撓性があり、かつ弾力性のある材料が炭素繊維または繊維ガラスであると有利である。
【0028】
義足足部デバイスの特有の設計は、歩行中に、前足部材の少なくとも2つの前足部板ばね、および下側足部材が協動できるようにし、それにより、地形に対する改善された適応性を有する、安定しているが同時に可撓性のある義足足部が作成できるようになる。可撓性の低い、または厚さのある板ばねから作られた義足足部が、平坦ではない地面もしくは小石により偏りが生じたとき、障害物に適応するには剛性があり過ぎて、足が地面との接触を確立するために、体が横方向に位置を変えるように試みることにより、てこの作用で、それ自体の位置を変えることになる。てこの作用は、ユーザにてこの力を打ち消すように試みさせるが、ユーザが障害物の上に立ってしまう結果となる。
【0029】
薄い板ばねは、一体の下側足部材に取り付けられた前足部材の二叉に分かれた足指部、ならびに前足部材およびかかと部材に当該下側足部材を取り付ける異なる引張り係数を有するエラストマー系接着剤の使用と併せて共に働き、平坦ではない地形で使用されたとき、向上させた転動動作および安定性を提供する義足足部を形成することになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の義足足部デバイスの実施形態の斜視図である。
【
図5】本発明の義足足部デバイスのさらなる実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明は、添付した図面1〜図面4で示された例示的な実施形態を参照して、非限定的な方法で、かつより詳細に述べられており、
図1〜
図3は、異なる角度から見た本発明の義足足部10の概略図を示している。本発明の義足足部デバイス10は、自然の足の足指位置、足首位置、およびかかと位置にそれぞれが対応している足指部11、足首部12、およびかかと部13を有する。義足足部デバイス10は、結合デバイス(図示せず)、および/または肢切断者の手足の基部に接続されるように構成された取付けユニット14を備える。取付けユニットの上端部15は、義足足部10と肢切断者の下肢(図示せず)との間の角度を変更するように調整可能であり得る。
【0032】
少なくとも1つの細長い、曲線を成す前足部板ばね17を備える、弾力性のある上側前足部材16は、取付けユニット14に接続され、そこから足首部12を通って足指部11の方向に延在する。有利には、前足部材16は、足指部11に接続された、少なくとも2つの細長い、曲線を成す前足部板ばね17を備え、2つのわずかに凹形の弧を形成し、かかと部12において2つの前足部板ばね17の間に第1の間隙18を画定する。
【0033】
この実施形態では、2つの曲線を成す前足部板ばね17は、取付けユニット14に結合され、前方および下方に延在し、自然の足の足指位置の部位で終了する。取付けユニットの底面19は、上側前足部材16と同じ傾斜角に一致するように面取りされている。ダンパ(図示せず)を、取付けユニット14において2つの前足部板ばね17の間に配置して、当該前足部板ばね17の間に間隙18を提供するとともに、取付けユニット14との接続部において、互いに対する当該板ばねの摩擦を阻止することができる。
【0034】
上側前足部材16の少なくとも1つの前足部板ばね17は、足指部11を少なくとも2つの部分に分割する、少なくとも1つの長手方向に延在する分割スロット20を有する。上側前足部材16は、
図1〜
図4で見られるように、1つの分割スロット20を有すると有利である。分割スロット20は、前方足指部21から、前足部材16の長さの15〜40%、より好ましくは、25〜35%、最も好ましくは、約30%に沿って延在する長さを有する。これは、長手方向に、前足部材16の半分未満、より好ましくは、約1/3が分割スロット20を含むことを意味する。
【0035】
義足足部デバイス10は、取付けユニット14に接続されかつそこから足首部12を通ってかかと部に向けて延在する少なくとも1つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね23を備える弾力性のあるかかと部材22を含む。
図1〜
図4は、取付けユニット14から下方および前方に足指部に向けて延在し、足首部12に沿って湾曲し、かつかかと部13に向けて後方に延在する2つの細長い、曲線を成すかかと部板ばね23を備えた義足足部のかかと部材22を開示している。第2の間隙24は、足首部12において、2つのかかと部板ばね23の間に形成される。ダンパ(図示せず)を、取付けユニット14における2つのかかと部板ばね23の間に配置して、当該かかと部板ばね23の間に間隙を提供するとともに、取付けユニット14との接続部において、互いに対して当該板ばねの摩擦を阻止することができる。
【0036】
義足足部デバイス10は、自然の足の足指位置およびかかと位置にそれぞれが位置する、足指部11からかかと部13へと延在する弾力性があり、かつ横方向に一体の下側足部材25をさらに含む。弾力性のある下側足部材25は、当該足指部11において前足部材16に、かつかかと部13においてかかと部材22に取り付けられる。弾力性のある下側足部材25は、足の長手方向長さに延在し、基本的に平坦かつ水平であるが、自然の足の母指球およびかかと位置の領域で下方の湾曲または谷26と、自然の足の足指および足弓位置で上方の湾曲またはピーク27とを含む湾曲を有することができる。
【0037】
下側足部材25は、13MPa未満のヤング率(E)を有するエラストマー系接着剤により、前足部材16およびかかと部材22に接続される。
【0038】
エラストマー系接着剤は、前足部材16と下側足部材25の間の第1の接着域28に塗布される。
図4で分かるように、当該第1の接着域28は、長手方向に前方足指部20から、前足部材16の少なくとも1つの分割スロット20の長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、35〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%で足首部12に向けて延在し、また当該分割スロット20から当該義足足部の横方向に、幅の30〜60%、好ましくは、40〜55%、および最も好ましくは、50%で延在する。分割スロット20から横方向に、下側足部材25と前足部材16の間の最も外側の領域には、エラストマー系接着剤がなく、前足部材16および下側足部材25が、足指部11において互いに対して自由に動くことが可能になる。しかし、分割スロット20それ自体には、エラストマー系接着剤が塗布されないことが重要である。エラストマー系接着剤は、かかと部13において前足部材16と下側足部材の間の第2の接着域29に塗布される。
【0039】
前足部材16の前足部板ばね17は、第3の接着域30に塗布されるエラストマー系接着剤により接続される。
図4で分かるように、当該第3の接着域30は、長手方向に前方足指部20から、前足部板ばね17の分割スロット20の長さの25〜60%に沿って、より好ましくは、35〜55%に沿って、最も好ましくは、40〜50%で足首部12に向けて延在し、また前足部板ばね17上の当該分割スロット20から横方向に、幅の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも75%、および最も好ましくは、90%で延在する。かかと部板ばね23は、第4の接着域31に塗布されるエラストマー系接着剤により互いに接続される。
【0040】
図5および
図6は、義足足部デバイス10のさらなる実施形態を開示する。この実施形態では、前足部材16およびかかと部材22は、下側足部材25より狭い。前足部材16の、また特にかかと部材22のより狭い形状は、歩行中に側方に曲がるまたはねじれる、向上させた能力を人工装具デバイスに提供する。さらに、下側足部材25は、下側足部材25の足指部とかかと部の中間に位置する「腰部(waist)」、すなわち、横方向に足部材25を狭くした部分を備える。この「腰部」は、義足足部デバイスに、地面の凹凸に対して良好に適合できるようにする。
【符号の説明】
【0041】
10 義足足部デバイス
11 足指部
12 足首部
13 かかと部
14 取付けユニット
15 取付けユニットの上端部
16 上側前足部材
17 前足部板ばね
18 第1の間隙
19 取付けユニットの底面
20 分割スロット
21 前方足指部
22 かかと部材
23 かかと部板ばね
24 第2の間隙
25 下側足部材
26 下方の湾曲または谷
28 第1の接着域
29 第2の接着域
30 第3の接着域
31 第4の接着域