特許第6333968号(P6333968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333968高圧タービンのためのトラニオン、およびこのようなトラニオンを含むターボジェットエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333968
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】高圧タービンのためのトラニオン、およびこのようなトラニオンを含むターボジェットエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/18 20060101AFI20180521BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20180521BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20180521BHJP
   F01D 11/02 20060101ALI20180521BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20180521BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F01D25/18 C
   F02C7/00 F
   F02C7/28 Z
   F01D11/02
   F01D25/00 F
   F01D25/00 M
   F16J15/447
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-518569(P2016-518569)
(86)(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公表番号】特表2016-521823(P2016-521823A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】FR2014051420
(87)【国際公開番号】WO2014199083
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】1355443
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュデ,モーリス・ギー
(72)【発明者】
【氏名】クーロンボー,ローラン・ジャック・ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ガラン,ファブリス
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0107522(US,A1)
【文献】 特開2009−2348(JP,A)
【文献】 特開2005−54781(JP,A)
【文献】 特表2010−530491(JP,A)
【文献】 特開2013−19323(JP,A)
【文献】 特表2014−517198(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0189356(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0196140(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0056749(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0179935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/18
F01D 11/02
F01D 25/00
F02C 7/00
F02C 7/28
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧タービンシャフト(9)と低圧タービン(8)のシール支持部(26)の内面(34)との間に配置されることが意図された、高圧タービン(11)のためのトラニオン(23)であって、トラニオン(23)が低圧タービンシャフト(9)の回りに回転駆動されるとき、トラニオン(23)とシール支持部(26)との間を通り抜ける傾向がある油(H2)が、遠心効果によって液滴発射伸長部(32)からシール支持部(26)の内面(34)のフレア部分(33)に向かって射出されるように、シール支持部(26)の内面(34)のフレア部分(33)に面して延びるように配置された液滴発射伸長部(32)を備え、トラニオン(23)は、トラニオン(23)の外面(25)に配置された凹部(38)をさらに備え、凹部(38)はトラニオン(23)とシール支持部(26)との間の油(H2)の通り抜けを阻止し、遠心効果によってシール支持部(26)の内面(34)に向かって油(H2)を脱離させ、液滴発射伸長部(32)は、トラニオン(23)が回転駆動されるとき、遠心効果によって油(H2)を凹部(38)に向かって案内する傾向がある、トラニオン(23)の回転軸(X)に対して傾斜した外面(35)を有する、高圧タービン(11)のためのトラニオン(23)。
【請求項2】
凹部(38)が、トラニオン(23)の外面(25)に配置された環状溝である、請求項1に記載のトラニオン。
【請求項3】
トラニオン(23)とシール支持部(26)との間にラビリンスシールを形成するのに適した一連の径方向フランジ(27)を備える、請求項1または2に記載のトラニオン。
【請求項4】
低圧圧縮機(7)、高圧圧縮機(10)、高圧タービン(11)、および低圧タービン(8)を備えるターボジェットエンジン(1)であって、
低圧圧縮機(7)を低圧タービン(8)に連結する低圧タービンシャフト(9)と、
低圧タービンシャフト(9)の周りに延び、高圧圧縮機(10)を高圧タービン(11)に連結する高圧圧縮機シャフト(12)とをさらに備え、
低圧タービン(8)は、フレア部分(33)を有する内面(34)を与えるシール支持部(26)を備え、高圧タービン(11)は、低圧タービンシャフト(9)と低圧タービン(9)のシール支持部(26)の内面(34)との間に配置された請求項1から3のいずれか一項に記載のトラニオン(23)を備える、ターボジェットエンジン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧タービンのためのトラニオン、およびこのようなトラニオンを含むターボジェットエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
二連ボディのターボジェットエンジンは、2つの回転ボディ、すなわち低圧ボディおよび高圧ボディを備え、それらの回転は独立している。それぞれのボディは、圧縮機および圧縮機を駆動するタービンを含む。この目的のために、それぞれのボディは、圧縮機を回転駆動するための、タービンを圧縮機に連結するシャフトも含む。
【0003】
低圧タービンシャフトは、低圧圧縮機を低圧タービンに連結する。高圧圧縮機シャフトは、高圧圧縮機を高圧タービンに連結する。
【0004】
このようなターボジェットエンジンにおいて、高圧圧縮機シャフトは、低圧タービンシャフトの周りに同軸に延びている。
【0005】
また、高圧圧縮機シャフトは、シャフトの受け側端部(高圧タービンに連結された端部)の位置に配置された端部トラニオンを備える。端部トラニオンの機能は、高圧圧縮機シャフトと低圧タービンシャフトとの間に配置された4番ベアリングを支持することである。
【0006】
ベアリングの潤滑は、ベアリングの中を通して油を循環させることによって保証される。高圧圧縮機シャフトの回転によって作り出される遠心効果によって、油は、ベアリングの中を通って循環し、再利用するために、ターボジェットエンジンの下流に排出される。
【0007】
このようなターボジェットエンジンが作動しているとき、フュームの出現が示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ターボジェットエンジンが始動するときに生じるフュームを減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らによって行われた調査により、ターボジェットエンジンのいくつかの高温領域に油が蓄積することによってフュームが生成し、ターボジェットエンジンの上流への油の逆流によって生じる油の蓄積が、特にターボジェットエンジンが低速で回転しているときに生じるということが明らかにされた。
【0010】
この問題は、低圧タービンシャフトと低圧タービンのシール支持部の内面との間に配置されることが意図された、高圧タービンのためのトラニオンであって、トラニオンが低圧タービンシャフトの回りに回転駆動されるとき、トラニオンとシール支持部との間を通り抜ける傾向がある油が、遠心効果によって液滴発射伸長部からシール支持部の内面のフレア部分に向かって射出されるように、シール支持部の内面のフレア部分に面して延びるように配置された液滴発射伸長部を備えることを特徴とするトラニオンによって、本発明の範囲内で解決される。
【0011】
液滴発射伸長部は、油がトラニオンとシール支持部との間を何とかして通り抜ける前に、トラニオンに沿って循環する油をシール支持部の内面のフレア部分に向かって射出する。したがって、この配置により、ターボジェットエンジンの上流への油の上昇が制限される。
【0012】
トラニオンは、さらに、以下の特徴を有することができる。
【0013】
トラニオンは、トラニオンの外面に配置された凹部を備え、凹部はトラニオンとシール支持部との間の油の通り抜けを阻止し、遠心効果によってシール支持部の内面に向かって油を脱離させる。
【0014】
凹部はトラニオンの外面に配置された環状溝である。
【0015】
液滴発射伸長部は、トラニオンが回転駆動されるとき、遠心効果によって油を凹部に向かって案内する傾向がある、トラニオンの回転軸に対して傾斜した外面を有する。
【0016】
トラニオンは、トラニオンとシール支持部との間にラビリンスシールを形成するのに適した一連の径方向フランジを備える。
【0017】
本発明は、低圧圧縮機、高圧圧縮機、高圧タービン、および低圧タービンを備え、
低圧圧縮機を低圧タービンに連結する低圧タービンシャフトと、
低圧タービンシャフトの周りに延び、高圧圧縮機を高圧タービンに連結する高圧圧縮機シャフトとをさらに備え、
低圧タービンは、フレア部分を有する内面を備えるシール支持部を具備し、高圧圧縮機シャフトは、予め規定され、低圧タービンシャフトと低圧タービンのシール支持部の内面との間に配置されたトラニオンを備える、ターボジェットエンジンにも関する。
【0018】
他の特徴および利点は、単なる例示であり限定されない以下の説明から現れ、添付図面に対して考慮されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】長手方向部分における二連ボディのターボジェットエンジンを概略的に示す図である。
図2】従来のトラニオンを備えるターボジェットエンジンの4番ベアリングを潤滑するための油の循環を概略的に示す図である。
図3】本発明の実施形態に従うトラニオンを備えるターボジェットエンジンの4番ベアリングを潤滑するための油の循環を概略的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に従うトラニオンを備えるターボジェットエンジンの4番ベアリングを潤滑するための油の循環を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において、図示されたターボジェットエンジン1は、ケーシング2、ファン3、低圧ボディ4、高圧ボディ5、および燃焼チャンバ6を備える。
【0021】
低圧ボディ4は、低圧圧縮機7、低圧タービン8、および低圧圧縮機7を低圧タービン8に連結する低圧タービンシャフト9を備える。低圧タービンシャフト9は、ターボジェットエンジン1の長手方向軸Xに沿って延びている。低圧タービン8は、低圧タービンシャフト9を介して低圧圧縮機9を回転駆動できる。低圧ボディ4の全ては、ケーシング2に対して軸Xの回りに回転駆動される。
【0022】
高圧ボディ5は、高圧圧縮機10、高圧タービン11、および高圧圧縮機10を高圧タービン11に連結する圧縮機シャフト12を備える。高圧圧縮機シャフト12は、(すなわち、軸Xを軸とする)低圧タービンシャフト9に対して同軸に低圧タービンシャフト9の周りに延びている。高圧タービン11は、高圧圧縮機シャフト12を介して高圧圧縮機12を回転駆動できる。高圧ボディ5の全ては、ケーシング2に対して軸Xの回りに回転駆動される。
【0023】
作動しているとき、低圧ボディ4および高圧ボディ5は、互いに独立してケーシング2に対して回転駆動される。このようにして、タービンシャフト9および圧縮機シャフト12は、ターボジェットエンジン1の長手方向軸Xの回りに互いに独立して回転駆動される。
【0024】
ターボジェットエンジン1が作動しているとき、空気13がファン3によって吸引され、ターボジェットエンジン1の上流から下流に循環する、主空気流14および副空気流15に分かれる。
【0025】
主空気流14は、低圧圧縮機7、高圧圧縮機10、燃焼される燃料と主空気流が混合される燃焼チャンバ6、高圧タービン11、および低圧タービン8を連続して通ってターボジェットエンジン1の中を上流から下流に流れる。高圧タービン11および低圧タービン8の中に主空気流14を通すことにより、タービンシャフト9および圧縮機シャフト12を介して高圧圧縮機10、低圧圧縮機7、およびファン3を回転駆動するタービン11,8を回転させる。
【0026】
シャフト9,12は、加圧されたベアリングチャンバの中に収納されたベアリング16,17,18,19によって回転状態で支持され案内される。
【0027】
したがって、(それぞれ「1番ベアリング」および「2番ベアリング」と称される)第1ベアリング16および第2ベアリング17は、低圧圧縮機の円板支持部20と、ターボジェットエンジンのケーシング2との間に間置されている。
【0028】
(「3番ベアリング」と称される)第3ベアリング18は、高圧圧縮機シャフト12の第1端部21に配置され、第1端部21は高圧タービン10に連結されている。第3ベアリング18は、高圧圧縮機シャフト12とケーシング2との間に間置されている。
【0029】
(「4番ベアリング」と称される)第4ベアリング19は、高圧圧縮機シャフト12の第2端部22に配置され、第2端部22は高圧圧縮機11に連結されている。第4ベアリング19は、高圧圧縮機シャフト12と低圧タービンシャフト9との間に間置されている。
【0030】
図2において、高圧圧縮機シャフト12は、その第2端部22の位置に従来の端部トラニオン23を備える。ベアリング19は、低圧タービンシャフト9と高圧圧縮機シャフト12のトラニオン23との間に間置されている。
【0031】
トラニオン23は、ボルト締めフランジ40によって高圧タービン10の円板39に取り付けられている。換言すると、トラニオン23は、フランジ40によって高圧圧縮機シャフト12に回転するように固定される。
【0032】
また、ベアリング19の外側リング28は、(「4番ベアリングナット」と称される)ナット29によってトラニオンに取り付けられ、ピン30およびサークリップ31は、トラニオン23の環状溝37の中で保持されている。
【0033】
トラニオン23と円板39と外側リング28とナット29とのアセンブリは、低圧タービンシャフト9に面して延びる内面24を示す。
【0034】
高圧圧縮機シャフト12が回転駆動されるとき、遠心効果によってその内面24に沿って循環する油H1をターボジェットエンジンの下流に案内するように、内面24は、ターボジェットエンジン1の下流に向かって広がっている。ベアリング19を潤滑する油H1は、再利用するためにベアリングチャンバに向かって排出される。
【0035】
また、トラニオン23は、低圧タービン8のシール支持部26の内面34に面して延びる外面25を有する。
【0036】
トラニオン23の外面25は、トラニオン23と低圧タービン8のシール支持部26との間にラビリンスシールを形成する一連の径方向フランジ27を備える。
【0037】
また、空気は、ベアリング19のベアリングチャンバを加圧状態に維持するために、トラニオンの外面25とシール支持部の内面34との間に注入される。
【0038】
遠心効果によってシール支持部の内面34に沿って循環する油H1をターボジェットエンジンの下流に案内するように、低圧タービン8のシール支持部26は、ターボジェットエンジン1の下流にフレア部分33を有する内面34も備える。
【0039】
図2に示すように、高圧シャフト12が軸Xの回りに回転駆動されるとき、油H2は、ターボジェットエンジン1の下流でシール支持部26に沿って上昇することによって、トラニオン23とシール支持部26との間を通り抜けることがあるということに留意する。油H2は、ターボジェットエンジン1の高温部品に浸潤することがあり、好ましくないフュームを出現させることがある。特に、ターボジェットエンジン1が低速で作動し、遠心効果がトラニオン23とシール支持部26との間の油H2の通り抜けを阻止するのに不十分であるときに、この現象が示された。
【0040】
図3および図4において、高圧圧縮機シャフト12は、本発明の実施形態にかかる端部トラニオン23を備える。
【0041】
ベアリング19は、低圧タービンシャフト9と高圧圧縮機シャフト12のトラニオン23との間に間置されている。
【0042】
図3および図4に示すトラニオン23は、シール支持部26の内面34のフレア部分33に面して延びる液滴発射伸長部32を備える点で図2のトラニオン23とは異なる。
【0043】
液滴発射伸長部32は、サークリップ31を受け止めるためにトラニオン23に配置された環状溝37を越えて延びている。
【0044】
このようにして、トラニオン23が低圧タービンシャフト9の回りに回転駆動されるとき、トラニオン23の外面25とシール支持部26の内面34との間を通り抜ける傾向がある油H2は、遠心効果によって、液滴発射伸長部32からシール支持部26の内面34のフレア部分33に向かって射出される。
【0045】
その後、油H2は、再利用するために、遠心効果によってシール支持部の内面33に沿ってターボジェットエンジン1の下流に案内される。
【0046】
また、トラニオン23は、トラニオンの外面25に配置された凹部38を備え、凹部38は環状溝の形に形成されている。
【0047】
環状溝38は、遠心効果によって、シール支持部26の内面34のフレア部分33に向かって油を脱離させることによって、トラニオン23の外面25とシール支持部26の内面34との間の油H2の通り抜けを阻止する。
【0048】
また、液滴発射伸長部32は、高圧圧縮機シャフト12の回転軸Xに対して傾斜した外面35を有する。外面35は、トラニオン23が回転駆動されるときに遠心効果によって油H2を凹部38の方に案内する傾向があるように傾斜している。
【0049】
最後に、トラニオン23は、トラニオン23の外面25とシール支持部26の内面34との間にラビリンスシールを形成する一連の径方向フランジ27を備える。
図1
図2
図3
図4