特許第6333996号(P6333996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333996がんを予防または治療するための、ブロモドメイン阻害化合物およびそれを含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333996
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】がんを予防または治療するための、ブロモドメイン阻害化合物およびそれを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20180521BHJP
   C07D 495/14 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C07D487/04 156
   C07D487/04CSP
   C07D495/14 E
   A61P35/00
   A61K31/5517
【請求項の数】12
【全頁数】74
(21)【出願番号】特願2016-561662(P2016-561662)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公表番号】特表2017-510605(P2017-510605A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】KR2015003530
(87)【国際公開番号】WO2015156601
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/977,370
(32)【優先日】2014年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516142104
【氏名又は名称】カイノス・メディスン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KAINOS MEDICINE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】オー、ス−スン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ミンジョン
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1993/007129(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/033268(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/084693(WO,A1)
【文献】 特表2013−510122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D487/00−491/22
C07D493/00−497/22
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
1は、水素、C1〜10アルキル、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、アリール、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここでRa、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【化2】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群から選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体。
【請求項2】
式(II):
【化3】
[式中、
Xは、CまたはSであり、
1は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここでRa、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2およびR4は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【化4】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体。
【請求項3】
1が、C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル、アラルキルまたはNRbRb’であり、ここでRbおよびRb’は、それぞれ独立に、水素もしくはC1〜6アルキルであり、
2が、水素、C1〜6アルコキシ、−CONHRd、または
【化5】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基であり、
3が、ハロであり、
Rdが、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、Sであり、
1が、C1〜6アルキルまたはNRbRb’であり、ここでRbおよびRb’は、それぞれ独立に、水素もしくはC1〜6アルキルであり、
2およびR4が、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
3が、ハロである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
1) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
2) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルエタンスルホネート;
3) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルプロパン−1−スルホネート;
4) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルシクロプロパンスルホネート;
5) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルベンゼンスルホネート;
6) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
7) (R)−(6−(4−シアノフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート
8) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルスルファメート;
9) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルジメチルスルファメート;
10) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメチルスルファメート;
11) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
12) (R)−(8−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
13) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−(1−(2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
14) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−((2−ヒドロキシエチル)カルバモイル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
15) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメタンスルホネート;
16) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルスルファメート;
17) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルジメチルスルファメート;および
18) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメチルスルファメートからなる群から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬組成物であって、活性成分としての請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記薬学的に許容される担体が、結合剤、フィラー、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤および香味剤からなる群から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、化学療法剤を含む少なくとも1つの追加の医薬剤をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
非ヒト哺乳動物における前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法であって、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体をその必要がある前記非ヒト哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項10】
非ヒト哺乳動物における前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法であって、
(i)その必要がある前記非ヒト哺乳動物に、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体と薬学的に許容される担体とを含む第1の組成物を投与する工程、および
(ii)その必要がある前記非ヒト哺乳動物に、化学療法剤を含む少なくとも1つの追加の医薬剤を含む第2の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の組成物と第2の組成物とが、同時に、または逐次的に任意の順序で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬の製造への請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ブロモドメインアンドエクストラターミナルドメイン(BET:bromodomain and extra terminal domain)タンパク質を阻害する化合物、その調製の方法、それを含む医薬組成物、および本化合物を用いて前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
遺伝子発現は、種々の異なる機構によって、いくつかの異なるレベルで調節される。エピジェネティック機構は、ヌクレオチド配列の変更を伴わないDNAを修飾すること、またはDNA分子を包んでおりDNA結合タンパク質、たとえば転写因子の接近を制限しているヒストンを修飾することによって、遺伝子発現を調節する。ヒストン修飾としては、アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化等が挙げられる。これらの修飾は「書込み」と呼ばれ、「書込み」を担う酵素は「ライター」と呼ばれる。また、これらのヒストン修飾は可逆性であり、逆向きの機構を働かせる酵素、たとえばヒストンデアセチラーゼおよびヒストンデメチラーゼは、「イレイサー」と呼ばれる。
【0003】
これらのエピジェネティックな修飾は、通常、いわゆる「リーダー」によって認識され、その結果、各書込み−読取りの組合せの具体的なクロマチン状況に依存して、遺伝子発現の活性化または抑制が生じる。ブロモドメイン(BRD)含有タンパク質は、BRDを介してアセチル化ヒストンと結合する。BRDの長さは、約110アミノ酸鎖長である(P.Filippakopoulosら、Cell、2012、149、214−231)。この高度に保存されているブロモドメインは、4つの逆平行αヘリックスと2つの連結ループとから構成されており、いくつかの異なるクラスのタンパク質、たとえば、ヒストンアセチラーゼ、真核生物の転写因子および共調節因子、DNAヘリカーゼ、クロマチンリモデリング複合体などにおいて見出される。
【0004】
ブロモドメインアンドエクストラターミナルドメイン(BET)タンパク質は、2つのブロモドメインと1つのエクストラターミナルドメイン(ET)とを有する、ブロモドメイン含有タンパク質のサブファミリーである。このサブファミリーは、BRD2、BRD3、BRD4およびBRDT(BRD5)を含む4つの構成要素から構成されている。BETタンパク質は、いくつかの転写プログラムにおいて重要な役割を果たし、炎症およびがんなど、数種のヒト疾患の原因となる異常転写事象に関与する(A.C.Belkinaら、Nature Reviews Cancer、2012、12(7)、465−477;およびR.K.Prinjhaら、Trends in Pharmacological Sciences、2012、33、146−153)。BRD2、BRD3およびBRD4の無調節な発現は、ヒトにおいて発がんの原因となる。ヒトBRD3(9q34.2)またはBRD4(19p13.1)遺伝子とNUT遺伝子(15q14)との間での相互染色体転座は、NUT正中線癌(NMC)および高死亡率の侵襲性がんの原因となる融合したオンコプロテインを産生する(C.A.Frenchら、Cancer Research、2003、63(2)、304−307;およびC.A.Frenchら、Oncogene、2008、27、2237−2242)。BRD4は、黒色腫においては上方調節されている場合が多い(M.F.Seguraら、Cancer Research、2013、73(20)、6264−6276)。
【0005】
BETタンパク質の小分子阻害薬は、BRDとアセチル化ヒストンとの結合を防止するものが多数開発されている(S.Mullerら、MedChemComm、2014、5、288−296)。これらの化合物の大半は、アセチル化リジン模倣体であり、血液がんおよび固形がん、たとえば、混合系統白血病(MLL)融合白血病(Dawson MAら、Nature、2011、478、529−533)、多発性骨髄腫(J.E.Delmoreら、Cell、2011、146、904−917;およびAristeidis Chaidosら、Blood、2014、123、697−705)、神経膠芽腫(Zhixiang C.ら、Clinical cancer research、2013、19、1748−1759)、神経芽細胞腫(J.A.Mertzら、Cancer Discovery、2013、3、308−323)、前立腺がん(A.Wyceら、Oncotarget、2013、4、2419−2429)、肺がん(Shimamura T.ら、Clinical cancer research、2013、19、6183−6192)、黒色腫(M.F.Seguraら、Cancer Research、2013、73(20)、6264−6276)、ならびに自己免疫疾患に対して、強い抗腫瘍活性を示す。注目すべきことに、BRD阻害薬は、多くの異なる種類のがんの細胞増殖に決定的に重要な効果を及ぼす癌遺伝子c−mycの発現を阻害した。したがって、BRD阻害薬またはBETタンパク質阻害薬は、前がん性の転換またはがんを予防または治療する新しいクラスの治療薬である可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、ブロモドメイン含有タンパク質、たとえばBRD2、BRD3およびBRD4を選択的に阻害する新規の化合物を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、活性成分としてこの化合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、この化合物を用いて前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法を提供することである。
【0009】
本発明の一側面によれば、式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、
1は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここでRa、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【0012】
【化2】
【0013】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群から選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]
の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体が提供される。
【0014】
また、式(II):
【0015】
【化3】
【0016】
[式中、
Xは、CまたはSであり、
1は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここでRa、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2およびR4は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【0017】
【化4】
【0018】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]
の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体が提供される。
【0019】
本発明の別の側面によれば、前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬組成物であって、活性成分としての式(I)もしくは(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物が提供される。
【0020】
本発明のさらなる側面によれば、哺乳動物における前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法であって、式(I)もしくは(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体をその必要がある哺乳動物に投与することを含む、方法が提供される。
【0021】
本発明のまたさらなる側面によれば、前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬の製造への式(I)もしくは(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体の使用が提供される。
【0022】
本発明の化合物は、がん治療において、スルホネート誘導体およびスルファメート誘導体を有さない他のブロモドメイン阻害薬に比して、より強力、より代謝的に安定かつより有効であり得る。さらに、本発明の化合物は、in vivoにおける優れた薬理学的および薬物動態学的特性を呈し得る。
【0023】
前述した以外のものを含めた本発明の目的および特徴は、添付の図面と併せて考えれば、以下の本発明の説明から明らかになるものと予想される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】マウスにおいてPO投与経路を通った場合の化合物1の薬物動態を示す。
図2】ラットにおいてPO投与経路を通った場合の化合物1の薬物動態を示す。
図3】イヌにおいてPO投与経路を通った場合の化合物1の薬物動態を示す。
図4】MV4−11ヒト白血病異種移植片における化合物1の腫瘍成長阻害(TGI)活性を示す。
【発明の詳細な説明】
【0025】
本発明の説明において使用する用語は、当業者には十分理解されると考えられるが、本発明の説明を容易にするために、また、用語の使用について例示的な例を提供するために、ここで用いる場合の定義を記載する。
【0026】
用語「アルキル」は、ここでは、ノルマル、第二級、第三級または環状の炭素原子を含有する炭化水素[たとえば、直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基、分枝状の飽和脂肪族炭化水素基、または飽和もしくは不飽和非芳香族炭化水素単環もしくは多環系(例:シクロアルキル)]を指すために使用する。用語「アルキル」が炭素原子数への言及を伴わずに使用されている場合は、C1〜10アルキルを指すと理解されたい。
【0027】
用語「アリール」は、ここでは、1〜3個の芳香族環を有する環状の芳香族炭化水素基を指すために使用する。アリール基は、ヘテロシクロ、シクロアルキルまたはヘテロアリール環である第2または第3の環が縮合しているものであってもよいが、但しその場合、結合点は、環系のアリール部分となろう。「アリール」基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、ビフェニル、インダニル、アントラシル(anthracyl)またはフェナントリルに加え、それらの置換誘導体が挙げられる。
【0028】
用語「ヘテロアリール」は、ここでは、芳香族環中の炭素原子のうち少なくとも1個が、酸素、窒素およびイオウから選択されるヘテロ原子により置きかえられているアリール基を指すために使用する。窒素および/またはイオウであるヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素であるヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい。ヘテロアリール基は、5〜6員の単環系、7〜11員の二環系、または10〜16員の三環系であってもよい。
【0029】
用語「アルケニル」は、ここでは、2〜10個の炭素原子を含有し、かつ、水素が2個外れることによって形成される少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を指すために使用する。
【0030】
用語「アルキニル」は、ここでは、2〜10個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を指すために使用する。
【0031】
用語「アルコキシ」は、ここでは、酸素原子を介して親分子部分に付加されている、ここで定義するとおりのアルキル基を指すために使用する。
【0032】
用語「アラルキル」は、ここではアリール−アルキル基(ここでアリールおよびアルキルは、本明細書で定義される通りである)を指すために使用する。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。
【0033】
用語「アリールオキシ」は、ここでは、酸素原子を介して親分子部分に付加されている、ここで定義するとおりのアリール基を指すために使用する。
【0034】
用語「カルボシクリル」(単独または別の用語との組合せで)は、ここでは、3〜14個の炭素環原子(「環原子」は、結合し合って環状置換基の1つ以上の環を形成している原子である)を含有する、飽和型で環状(すなわち「シクロアルキル」)、部分飽和型で環状(すなわち「シクロアルケニル」)、または完全不飽和型(すなわち「アリール」)のヒドロカルビル置換基を指すために使用する。カルボシクリルは、単一の環であってもよく、この場合、典型的には、3〜6個の環原子を含有する。
【0035】
用語「シクロアルキル」は、ここでは、完全飽和型であるまたは1つ以上の不飽和結合を有するが芳香族基にはならない、3〜12個の炭素原子を含有する単環式または多環式(例:二環式、三環式等)の炭化水素を指すために使用する。
【0036】
用語「シアノ」は、ここでは、−CN基を指すために使用する。
【0037】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、ここでは、−Cl、−Br、−Iまたは−Fを指すために使用する。
【0038】
用語「ハロアルキル」は、ここでは、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置きかえられているここで定義するとおりのアルキルを指すために使用する。
【0039】
用語「ヘテロシクリル」は、ここでは、少なくとも1個のヘテロ原子、たとえば窒素、酸素またはイオウを含めて3〜12個の原子を有する、飽和型(例:「ヘテロシクロアルキル」)、部分不飽和型(例:「ヘテロシクロアルケニル」もしくは「ヘテロシクロアルキニル」または完全不飽和型(例:「ヘテロアリール)の環系を包含するために使用する。
【0040】
用語「第1の」および「第2の」は、ここでは、2つの化合物間または2つの組成物間を区別する目的で使用しており、記載からより明らかになるものと予想される。
【0041】
語句「医学的有効量(medically effective amount)」は、特定の疾患、病態もしくは障害を治療する;特定の疾患、病態もしくは障害に関連する1つ以上の症状を改善、緩和もしくは軽減する;および/またはここでより詳細に記載されている特定の疾患、病態もしくは障害の症状もしくはそれらに関連する病理過程の開始を遅延させるもしくは予防する、組成物または化合物の量を意味する。
【0042】
用語「薬学的に許容される担体」は、ここでは、ここに記載されている組成物または化合物の投与、送達、保管、安定性のうち任意の1つ以上において有用な、任意の化合物または組成物または担体媒体を意味するために使用する。
【0043】
薬学的に許容される担体としては、限定されるものではないが、希釈剤、水、生理食塩水、適当なビヒクル(例:リポソーム、微小粒子、ナノ粒子、エマルションおよびカプセル)、緩衝液、医療用の非経口ビヒクル、賦形剤、水溶液、懸濁液、溶媒、エマルション、界面活性剤、キレート化剤、可溶化剤、塩、着色料、ポリマー、ヒドロゲル、界面活性物質、乳化剤、アジュバント、フィラー、保存剤、安定化剤、油、結合剤、崩壊剤、吸収剤、フレーバー剤などが挙げられ、当技術分野において広く公知のとおりである。
【0044】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0045】
本発明は、式(I):
【0046】
【化5】
【0047】
[式中、
1は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここでRa、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【0048】
【化6】
【0049】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群から選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]
の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体を提供する。
【0050】
好ましくは、R1は、C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル、アラルキルまたはNRbRb’であり、ここでRbおよびRb’は、それぞれ独立に、水素もしくはC1〜6アルキルであり、
2は、水素、C1〜6アルコキシ、−CONHRd、または
【0051】
【化7】
【0052】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基であり、
3は、ハロであり、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである。
【0053】
また、本発明は、式(II):
【0054】
【化8】
【0055】
[式中、
Xは、CまたはSであり、
1は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここで、Ra、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2およびR4は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【0056】
【化9】
【0057】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]
の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体を提供する。
【0058】
好ましくは、XはSであり、
1は、C1〜6アルキルまたはNRbRb’であり、ここでRbおよびRb’は、それぞれ独立に、水素もしくはC1〜6アルキルであり、
2およびR4は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
3は、ハロである。
【0059】
本発明によるより好ましい化合物の例は、
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルエタンスルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルプロパン−1−スルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルシクロプロパンスルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルベンゼンスルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(6−(4−シアノフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルスルファメート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルジメチルスルファメート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメチルスルファメート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(8−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−(1−(2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−((2−ヒドロキシエチル)カルバモイル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメタンスルホネート;
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルスルファメート;
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルジメチルスルファメート;および
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメチルスルファメートである。
【0060】
本発明の化合物は、BRD含有タンパク質、たとえばBRD2、BRD3およびBRD4を選択的に阻害するスルホネート誘導体およびスルファメート誘導体を含む。
【0061】
本発明の化合物は、in vitro効力については、BRD結合およびがん細胞増殖阻害活性アッセイを用いて評価した。本化合物のin vivo有効性は、がん誘導された動物モデルを用いることによって確認されている。本発明の化合物は、アセチル化ヒストンペプチドに対するBRD結合活性の有意な阻害、ならびにマウス、ラットおよびイヌにおける優れた薬物動態特性を呈した。
【0062】
本発明の化合物は、がん細胞の成長を阻害するためにin vitroもしくはin vivoで使用してもよく、またはその必要がある哺乳動物を治療するためにin vitroもしくはin vivoで使用してもよい。
【0063】
式(I)または(II)の化合物は塩を形成することができ、この化合物の塩は、本発明の範囲内に含まれる。
【0064】
用語「塩」または「薬学的に許容される塩」は、ここで用いる場合、化合物の無機または有機塩を指す。これらの塩は、たとえば、式(I)または(II)の化合物を、媒体中、たとえばその中で塩が形成され次いで沈殿する媒体中、または水性媒体中で、ある量、たとえば当量の酸または塩基と反応させ、続いて凍結乾燥させることによって調製することができる。代表的な塩としては、硫酸水素塩、硫酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩などが挙げられる。塩としては塩基性塩を挙げてもよく、塩基性塩には、アルカリおよびアルカリ土類金属、たとえばカルシウム、ナトリウム、リチウム、マグネシウムおよびカリウムをベースにしたもの;または有機塩基、たとえば有機アミン(例:ジシクロヘキシルアミン、t−ブチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、プロカイン、モルホリン、N−メチルピペリジン、ジベンジルアミンなど)を用いたもの;またはアンモニウム塩としてのものがある。
【0065】
式(I)または(II)の化合物は、溶媒和されている形態で存在しても溶媒和されていない形態で存在してもよい。本発明の化合物の溶媒和物は、化合物が1以上の溶媒分子と物理的に結び付いた状態になる(たとえば、イオン結合および/または共有結合によって)合成プロセスにおいて形成してもよい。任意で、本発明の化合物は、これを所望の量の最適な溶媒(例:有機溶媒、水、またはそれらの混合物)に溶解して溶液を形成すること、この溶液を周囲温度より高い温度で加熱すること、および溶媒和物の結晶を形成するのに十分な速度でこの溶液を冷却することによって、溶媒和物に変換させてもよい。溶媒和物は、次いで、当技術分野で公知の方法を用いてさらに単離してもよい。適当な溶媒和物の例としては、メタノレート(methanolate)、エタノレート(ethanolate)、水和物(この場合の溶媒分子は水である)などが挙げられる。
【0066】
式(I)または(II)の化合物は、不斉またはキラル中心を含有してもよいことから、異なる異性体形態で存在し得る。本発明の化合物のすべての立体異性体(例:幾何異性体、光学異性体など)、エナンチオマー形態、ジアステレオマー形態、互変異性形態および位置異性体も、本発明の範囲内に含まれる。第1の立体配座形態の化合物は、当技術分野で公知の方法、たとえばクロマトグラフィーや結晶化、および特定の所望の立体配座形態を選択的にもたらす合成方法を用いることによって、第2の異なる立体配座形態の化合物と分離させることができる。
【0067】
さらに、本発明は、前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬組成物であって、活性成分としての式(I)もしくは(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0068】
前がん性の転換またはがんは、自己免疫疾患、上皮性腫瘍、黒色腫、白血病、たとえば急性前骨髄球性白血病、リンパ腫、固形または非リンパ系腫瘍、たとえば骨原性肉腫、大腸がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、脳腫瘍、子宮頸がんおよび肺がんからなる群から選択される。
【0069】
本発明による医薬組成物は、必要に応じて1回または複数回投与して、組成物の医学的有効量、たとえば、組成物の投与を受ける個体においてBRDを阻害することによって疾患、障害または病態の変調を媒介するのに有効な量を送達し得る。たとえば、本発明の化合物を含む医薬組成物の医学的有効量は、化合物と接触している細胞の中に入り込み細胞内でBRDを阻害することになる量であり得る。本医薬組成物のそのような医学的有効量は、投与様式、投与用の製剤、変調させる対象となる疾患、この組成物の投与を受ける個体のサイズおよび健康状態などの因子、ならびに当技術分野に精通した医療専門家が考慮することができる他の因子によって決まってこよう。
【0070】
投与されることになる医薬組成物の量は、0.01ミリグラムから約1,000ミリグラムまで、より典型的には、1日当たり約1ミリグラムから1日当たり約200ミリグラムまで、変動し得る。当業者は、本発明の化合物の医学的有効量を決定するために、薬物送達および薬物動態に関する既知の原理およびモデルを適用して、前臨床試験および臨床試験において試験すべきと思われる投与量の範囲を突き止めることができる。
【0071】
薬学的に許容される担体は、結合剤(例:シロップ、ソルビトール、ガム、コーンスターチ、ゼラチンおよびアラビアガム)、フィラー(例:ラクトース、糖、デンプンおよびリン酸カルシウム)、賦形剤(例:リン酸二カルシウム)、崩壊剤(例:植物デンプンおよびアルギン酸)、滑沢剤(例:ステアリン酸マグネシウム)ならびに香味剤(例:甘味剤、天然および人工のフレーバー)からなる群から選択してもよい。
【0072】
薬学的に許容される担体は、組成物の保管、安定性、投与および送達のうち1つ以上を容易にし得る。担体は微粒子であってもよいことから、本組成物は、たとえば粉体または固体の形態であってもよい。担体は半固体、ゲルまたは液体の調合物であってもよいことから、本医薬組成物は、摂取する、注射する、塗布する、または他の形で投与してもよい。担体は気体であってもよいことから、本医薬組成物は、吸入されてもよい。
【0073】
本発明の化合物を含有する医薬組成物を経口投与する場合、適当な製剤は、錠剤、カプレット剤、カプセル剤などの形態で提供してもよく、そのような製剤中に、典型的には、本発明の化合物は、単独の活性成分として、または追加の1つ以上の医薬剤との組合せで、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁液として、所定の量にて存在してもよい。そのような経口製剤は、コーティングするまたはコーティングしないことで、製剤の崩壊および/または吸収を改変してもよい。コーティングは、当技術分野で公知の従来のコーティング剤および方法を用いて実施してもよい。
【0074】
その必要がある個体への本発明の化合物または医薬組成物の投与様式は、医薬組成物の送達に適している、かつ、BRDを阻害することによる疾患、障害または病態の治療に特に適していることが当技術分野で公知の任意の様式であってもよい。本医薬組成物は、静脈内に、腹腔内に、経口的に、皮下に、筋肉内に、鼻腔内に、経皮的に、灌流により、また、蠕動技術(peristaltic technique)により、投与してもよい。
【0075】
本発明による医薬組成物は、少なくとも1つの追加の医薬剤をさらに含んでもよい。
【0076】
具体的には、本医薬組成物は、疾患、障害または病態、すなわち前がん性の転換またはがんを治療するための他の療法、たとえば1つ以上の追加の医薬剤とさらに組み合わせてもよい。そのような併用療法は、同時的に、逐次的に、または本発明の組成物と他の療法とを交互に行う投与法にて、施してもよい。
【0077】
加えて、本発明のBRD阻害活性を有する化合物は、前がん性の転換またはがんの治療に使用する際、組み合わせることによりがん細胞のアポトーシスおよび/または成長阻害を相乗的に増強する可能性がある1つ以上の化学療法剤と併用してもよい。
【0078】
そのような化学療法剤としては、限定されるものではないが、LSD1ブロッカー、ペルオキシソーム増殖活性化因子受容体(PPAR:peroxisome proliferating-activator receptor)リガンド(例:ロシグリタゾン);アルキル化剤(例:窒素マスタード、たとえばメクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミドおよびメルファラン;ニトロソウレア、たとえばストレプトゾシン、カルムスチンおよびロムスチン;アルキルスルホネート、たとえばブスルファン;トリアジン、たとえばダカルバジンおよびテモゾロミド;エチレンイミン、たとえばチオテパおよびアルトレタミン;ならびに白金ベースの薬物、たとえばシスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン(oxalaplatin));代謝拮抗薬(例:5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、ペメトレキセド、ペントスタチンおよびチオグアニン);抗腫瘍性抗生物質(例:アントラサイクリン、たとえばダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシンおよびイダルビシン;ならびにアクチノマイシン−D、ブレオマイシン、マイトマイシン−Cおよびミトキサントロン);トポイソメラーゼ阻害薬(例:トポイソメラーゼI阻害薬、たとえばトポテカンおよびイリノテカン;ならびにトポイソメラーゼII阻害薬、たとえばエトポシド、テニポシドおよびミトキサントロン);有糸分裂阻害薬(例:タキサン、たとえばパクリタキセルおよびドセタキセル;エポチロン、たとえばイクサベピロン;ビンカアルカロイド、たとえばビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン;ならびにエストラムスチン);コルチコステロイド(例:プレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびデキサメタゾン);プロテオソーム阻害薬(例:ボルテゾミブ);標的療法薬(例:イマチニブ、ゲフィチニブ、スニチニブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、トラスツズマブおよびボルテゾミブ);分化誘導剤(differentiating agent)(例:レチノイド、トレチノインおよびベキサロテン);ならびにホルモン剤(例:抗エストロゲン薬、たとえばフルベストラント、タモキシフェンおよびトレミフェン;アロマターゼ阻害薬、たとえばアナストロゾール、エキセメスタンおよびレトロゾール;プロゲスチン、たとえばメゲストロールアセテート;エストロゲン;抗アンドロゲン薬、たとえばビカルタミド、フルタミドおよびニルタミド(nilutamde);黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)としても公知のゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)のアゴニストまたはアナログ、たとえばロイプロリドおよびゴセレリン)が挙げられる。
【0079】
さらに、本発明は、哺乳動物における前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法であって、式(I)もしくは(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体をその必要がある哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0080】
哺乳動物は、ヒトであってもよい。
【0081】
この方法において、1つ以上の本発明の化合物は、単独の医薬剤として医学的有効量で投与してもよく、または医学的有効量の本発明の化合物が医学的有効量の少なくとも1つの追加の医薬剤と共に投与される併用療法で投与してもよい。
【0082】
したがって、前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法は、(i)その必要がある哺乳動物に、式(I)または(II)の化合物と薬学的に許容される担体とを含む第1の組成物を投与する工程;および(ii)その必要がある哺乳動物に、化学療法剤を含む少なくとも1つの追加の医薬剤を含む第2の組成物を投与する工程を含み得る。
【0083】
本方法において、第1の組成物と第2の組成物とは、同時に、または逐次的に任意の順序で投与される。
【0084】
加えて、本発明は、前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬の製造への本発明の化合物の使用を提供する。
【0085】
本発明は、また、本発明の化合物または医薬組成物およびその使用についての取扱説明書を含むキットを提供する。
【0086】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく本発明をさらに例証することを意図している。
【0087】
NMRスペクトルは、外径5mmのチューブ(Norell,Inc.、507−HP)に入ったCDCl3およびDMSO−d6溶液中で30℃にて記録し、Varian VNMRS−400を用い400MHzにて1Hについて収集した。化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(TMS=0.00ppm)に対してppm単位で表す。LC/MSは、FINNIGAN Thermo LCQ Advantage MAXのイオントラップ質量分析計、Agilent LC1200シリーズ[カラム:YMC Hydrosphere(C18、Φ4.6×50mm、3μm、120Å、40℃)、実施条件:ESI(+)イオン化モード;流量=1.0mL/分;移動相=0.01%ヘプタフルオロ酪酸(HFBA)および1.0%イソプロピルアルコール(IPA)、水またはCH3CN中]にて行った。
【0088】
例1〜5
【0089】
【化10】
【0090】
式中、
1は、先に定義したものと同じ意味を有する。
【0091】
工程1:(S)−メチル2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−3−ヒドロキシプロパノエート(中間体2)の調製
【0092】
【化11】
【0093】
(L)−セリンメチルエステルHCl(5.00g、32.1mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(THF)(64.3mL)溶液に、トリエチルアミン(TEA)(9.85mL、70.7mmol)、続いて(Boc)2O(7.46mL、32.1mmol)のTHF(30mL)溶液を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて12時間撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物を酢酸エチル(EtOAc)と水とに分配した。水層をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物(7.16g、>99%)が無色の油として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0094】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.54 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 4.39 (brs, 1H), 3.96 (ABX, JAB = 11.2 Hz, JBX = 3.6 Hz, 1H), 3.89 (ABX, JAB = 11.2 Hz, JAX = 3.6 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 2.81 (brs, 1H), 1.46 (s, 9H).
工程2:(S)−3−tert−ブチル−4−メチル2,2−ジメチルオキサゾリジン−3,4−ジカルボキシレート(中間体3)の調製
【0095】
【化12】
【0096】
(S)−メチル2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−3−ヒドロキシプロパノエート(6.16g、28.1mmol)および2,2−ジメトキシプロパン(34.4mL、281mmol)の乾燥アセトン(55mL)溶液に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(BF3・OEt2)(0.214mL、1.68mmol)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて12時間撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物をジクロロメタン(DCM)で希釈し、50%NaHCO3水溶液および水で2回洗浄した。分離された有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=10:1)によって精製すると、標題化合物(6.75g、93%)が黄色の油として得られた。
【0097】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): (回転異性体から2組) δ 4.38 (dd, J = 6.8, 2.8 Hz, 1H), 4.15 (ddd, J = 9.2, 9.2, 7.2 Hz, 2H), 3.76 (s, 3H), 1.83 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 1.42 (s, 9H).
δ 4.49 (dd, J = 6.8, 2.8 Hz, 1H), 4.05 (ddd, J = 9.2, 9.2, 3.2 Hz, 2H), 3.76 (s, 3H), 1.64 (s, 3H), 1.50 (s, 12H).
工程3:(S)−3−(tert−ブトキシカルボニル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン−4−カルボン酸(中間体4)の調製
【0098】
【化13】
【0099】
(S)−3−tert−ブチル−4−メチル2,2−ジメチルオキサゾリジン−3,4−ジカルボキシレート(6.75g、26.0mmol)のTHF(80mL)および水(40mL)溶液に、水酸化リチウム水和物(1.20g、28.6mmol)を、室温にて加えた。反応混合物を室温にて12時間撹拌した。揮発性溶媒が蒸発した後、残留物をEtOAcで希釈し、2N HCl水溶液で中和し、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物(6.32g、99%)が得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0100】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): (2組の回転異性体) δ 4.40-4.51 (m, 1H), 4.17-4.28 (m, 1H), 4.11-4.15 (m, 1H), 1.62および1.67 (sおよびs, 3H), 1.51および1.54 (sおよびs, 3H), 1.43および1.51 (sおよびs, 9H).
工程4:6−メトキシ−2−メチル−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−4−オン(中間体6)の調製
【0101】
【化14】
【0102】
2−アミノ−5−メトキシ安息香酸(5.00g、29.9mmol)と無水酢酸(28.2mL、299mmol)との混合物を4時間還流させ、次いで、真空濃縮した。残留物をトルエンで希釈し、2回真空濃縮することで、残存する酢酸を除去した。残留固体をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=3:1→1:1→1:2)によって精製すると、標題化合物(5.68g、99%)が淡黄色の固体として得られた。
【0103】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.56 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 8.8, 3.2 Hz, 1H), 3.90 (s, 3H), 2.45 (s, 3H).
工程5:N−(2−(4−クロロベンゾイル)−4−メトキシフェニル)アセトアミド(中間体7)の調製
【0104】
【化15】
【0105】
6−メトキシ−2−メチル−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−4−オン(5.68g、29.7mmol)のトルエン(66mL)/Et2O(33mL)溶液に、0℃にて、(4−クロロフェニル)マグネシウムブロミド(35.7mL、35.7mmol、1M THF溶液)を滴加した。反応混合物を室温に温め、1時間撹拌した。1N HCl水溶液でクエンチした後、分離された水層をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物が得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0106】
LC/MS m/z 303.99 [M+H]+, Rt = 0.64分
工程6:(2−アミノ−5−メトキシフェニル)(4−クロロフェニル)メタノン(中間体8)の調製
【0107】
【化16】
【0108】
工程5で得られた未精製のN−(2−(4−クロロベンゾイル)−4−メトキシフェニル)アセトアミドをEtOH(60mL)に溶解し、次いでそこに6N HCl水溶液(23mL)を加えた。反応混合物を2時間還流させ、真空濃縮した。残留物をEtOAcに溶解し、1N NaOH水溶液で中和した。分離された水層をEtOAcで2回抽出し、合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=10:1→7:1→5:1)によって精製すると、標題化合物(2工程で5.10g、65%)が黄色の固体として得られた。
【0109】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.63 (dd, J = 6.4, 1.6 Hz, 2H), 7.44 (dd, J = 6.8, 1.6 Hz, 2H), 7.00 (dd, J = 8.8, 3.2 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.71 (brs, 2H), 3.66 (s, 3H).
工程7:(S)−tert−ブチル4−((2−(4−クロロベンゾイル)−4−メトキシフェニル)カルバモイル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン−3−カルボキシレート(中間体9)の調製
【0110】
【化17】
【0111】
(S)−3−(tert−ブトキシカルボニル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン−4−カルボン酸(4.78g、19.5mmol)のDCM(100mL)溶液に、N−メチルモルホリン(2.57mL、23.4mmol)、続いてクロロギ酸イソブチル(3.07mL、23.4mmol)を、0℃にて加えた。室温にて30分間撹拌した後、(2−アミノ−5−メトキシフェニル)(4−クロロフェニル)メタノン(5.10g、19.5mmol)をこの混合物に加えた。その結果得られた混合物を室温にて一晩撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、2N HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液および水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=5:1→3:1→1:1)によって精製すると、標題化合物(8.50g、89%)が粘稠性の黄色の油として得られた。
【0112】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): (回転異性体から2組) δ 10.83および10.73 (brsおよびbrs, 1H), 8.56 (brs, 1H), 7.69 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.98 (brs, 1H), 4.21-4.51 (m, 3H), 3.76 (s, 3H), 1.84および1.79 (sおよびs, 3H), 1.59および1.57 (sおよびs, 4H), 1.46 (s, 3H), 1.24-1.29 (m, 5H).
工程8:(S)−2−アミノ−N−(2−(4−クロロベンゾイル)−4−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシプロパンアミド(中間体10)の調製
【0113】
【化18】
【0114】
(S)−tert−ブチル4−((2−(4−クロロベンゾイル)−4−メトキシフェニル)カルバモイル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン−3−カルボキシレート(3.00g、6.14mmol)のMeOH(30mL)溶液に、濃度5%のHCl(6.0mL)を室温にて加えた。反応混合物を5時間還流させ、次いで真空濃縮した。残留物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、標題化合物が黄色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0115】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.33 (s, 1H), 8.42 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.13 (dd, J = 9.2, 2.8 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 3.94 (ABX, JAB = 10.7 Hz, JBX = 5.5 Hz, 1H), 3.79 (ABX, JAB = 10.7 Hz, JAX = 4.9 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.58 (dd, J = 5.6, 5.2 Hz, 1H), 2.01 (brs, 2H).*OHピークは観察されなかった。
【0116】
工程9:(S)−5−(4−クロロフェニル)−3−(ヒドロキシメチル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ[e][1,4]−ジアゼピン−2(3H)−オン(中間体11)の調製
【0117】
【化19】
【0118】
工程8で得られた未精製の(S)−2−アミノ−N−(2−(4−クロロベンゾイル)−4−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシプロパンアミドをEtOH(30mL)に溶解し、反応混合物を一晩還流させ、真空濃縮すると、標題化合物(2.10g、>99%)が黄色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0119】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.95 (brs, 1H), 7.54 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.11 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 4.39-4.45 (m, 1H), 4.21-4.25 (m, 1H), 3.80 (dd, J = 7.2, 5.2 Hz, 1H), 3.74 (s, 3H), 2.83 (m, 1H).
工程10:(S)−3−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−オン(中間体12)の調製
【0120】
【化20】
【0121】
未精製の(S)−5−(4−クロロフェニル)−3−(ヒドロキシメチル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ[e][1,4]−ジアゼピン−2(3H)−オン(1.90g、5.74mmol)のDMF(30mL)溶液に、イミダゾール(0.665g、9.77mmol)、続いてt−ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS−Cl)(1.30g、8.62mmol)を、室温にて加えた。反応混合物を室温にて12時間撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物をEtOAcで希釈し、2N HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液、水およびブラインで続けて洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=7:1→5:1→3:1)によって精製すると、標題化合物(2.30g、90%)が白色の固体として得られた。
【0122】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.27 (brs, 1H), 7.51 (dd, J = 8.4, 2.0 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.4, 2.0 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.08 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 4.56 (ABX, JAB = 10.1 Hz, JAX = 6.5 Hz, 1H), 4.29 (ABX, JAB = 10.1 Hz, JAX = 6.7 Hz, 1H), 3.74 (dd, J = 6.8, 6.0 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 0.94 (s, 9H), 0.18 (s, 3H), 0.16 (s, 3H).
工程11:(S)−3−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−チオン(中間体13)の調製
【0123】
【化21】
【0124】
410(1.00g、2.25mmol)と炭酸ナトリウム(0.238g、2.25mmol)とのTHF(23mL)中の混合物を、室温にて1時間撹拌し、0℃に冷却した。(S)−3−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−オン(2.00g、4.49mmol)のTHF(5.0mL)溶液を反応混合物に加えた後、反応混合物を0℃で30分間、次いで室温にて3日間、撹拌した。その結果得られた混合物をセライトパッドに通して濾過した後、濾液を真空濃縮した。残留物をEtOAcに溶解し、飽和NaHCO3水溶液で2回およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=5:1)によって精製すると、標題化合物(1.48g、71%)が粘稠性の油として得られた。
【0125】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.77 (brs, 1H), 7.51 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.4, 2.4 Hz, 2H), 7.20 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.08 (dd, J = 9.2, 3.2 Hz, 1H), 6.76 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 4.63 (ABX, JAB = 10.1 Hz, JBX = 7.3 Hz, 1H), 4.47 (ABX, JAB = 10.1 Hz, JAX = 5.5 Hz, 1H), 3.88 (dd, J = 7.2, 5.6 Hz, 1H), 3.74 (s, 3H), 0.93 (s, 9H), 0.17 (s, 3H), 0.15 (s, 3H).
工程12:(R,Z)−N’−(3−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−イリデン)アセトヒドラジド(中間体14)の調製
【0126】
【化22】
【0127】
(S)−3−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−チオン(1.48g、3.21mmol)のTHF(32mL)溶液に、ヒドラジン一水和物(0.604mL、19.3mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて3時間撹拌し、0℃に冷却した。TEA(2.68mL、19.3mmol)、続いて塩化アセチル(1.37mL、19.3mmol)を加えた後、反応混合物を室温にて12時間撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物をDCMに溶解し、水で洗浄した。分離された有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物が白色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0128】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.66 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.17 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.04 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 6.65 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 4.49 (ABX, JAB = 9.9 Hz, JBX = 6.9 Hz, 1H), 4.30 (ABX, JAB = 9.9 Hz, JAX = 5.9 Hz, 1H), 3.97 (dd, J = 6.6, 6.4 Hz, 1H), 3.71 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 0.93 (s, 9H), 0.15 (s, 3H), 0.12 (s, 3H).
工程13:(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体15)の調製
【0129】
【化23】
【0130】
先の未精製の(R,Z)−N’−(3−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−7−メトキシ−1H−ベンゾ−[e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−イリデン)アセトヒドラジド(1.61g、3.21mmol)のTHF(30mL)溶液に、酢酸(6.00mL、105mmol)を室温にて加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、標題化合物(2工程で1.48g、95%)が粘稠性の黄色の油として得られた。
【0131】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.20 (dd, J = 9.2, 2.8 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 4.71 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 4.17 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 2.61 (s, 3H), 0.95 (s, 9H), 0.21 (s, 3H), 0.17 (s, 3H).
工程14:(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]−トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(中間体16)の調製
【0132】
【化24】
【0133】
(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(1.48g、3.06mmol)のTHF(15mL)溶液に、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)(6.13mL、6.13mmol、1M THF溶液)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて12時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。この混合物をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ→EtOAc:MeOH=8:1→4:1)によって精製すると、標題化合物(983mg、87%)が黄色の固体として得られた。
【0134】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.22 (dd, J = 8.8, 3.2 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 4.64 (ABX, JAB = 11.6 Hz, JBX = 5.6 Hz, 1H), 4.53 (ABX, JAB = 11.6 Hz, JAX = 6.8 Hz, 1H), 3.24 (dd, J = 6.4, 6.0 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H), 2.64 (s, 3H).*OHピークは観察されなかった。
【0135】
LC/MS m/z 369.2 [M+H]+, Rt = 2.45分.
例1
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f]−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物1)の調製
【0136】
【化25】
【0137】
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]−トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(中間体16、50.0mg、0.136mmol)のDCM(3.0mL)溶液に、メタンスルホニルクロリド(MsCl)(0.0210mL、0.271mmol)、続いてTEA(0.0470mL、0.339mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を0℃にて15分間撹拌し、DCMで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(56.0mg、92%)が黄色の油として得られた。
【0138】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.24 (dd, J = 9.2, 2.8 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 5.30 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JBX = 7.1 Hz, 1H), 5.17 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JAX = 6.5 Hz, 1H), 4.46 (dd, J = 6.8, 6.4 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.21 (s, 3H), 2.63 (s, 3H).
LC/MS m/z 447.1 [M+H]+, Rt = 2.87分
例2
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルエタンスルホネート(化合物2)の調製
【0139】
【化26】
【0140】
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]−トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(中間体16、0.100g、0.271mmol)のDCM(3.0mL)溶液に、エタンスルホニルクロリド(70.0mg、0.542mmol)、続いてTEA(0.0940mL、0.678mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて5時間撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1→5:1)によって精製すると、標題化合物(68.0mg、54%)が褐色の油として得られた。
【0141】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.24 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 5.28 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JBX = 6.9 Hz, 1H), 5.18 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JAX = 6.3 Hz, 1H), 4.46 (dd, J = 6.8, 6.8 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.33 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.63 (s, 3H), 1.50 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
LC/MS m/z 461.2 [M+H]+, Rt = 3.17分
例3
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルプロパン−1−スルホネート(化合物3)の調製
【0142】
【化27】
【0143】
(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体15、50.0mg、0.136mmol)のDCM(1mL)溶液に、プロパン−1−スルホニルクロリド(30.5μL、0.271mmol)、続いてTEA(47.2μL、0.339mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて3時間撹拌し、DCMで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(63.0mg、98%)が白色の固体として得られた。
【0144】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.23 (dd, J = 9.0, 3.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 5.27 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JBX = 6.4 Hz, 1H), 5.18 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JAX = 7.6 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.27 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.63 (s, 3H), 2.15-1.93 (m, 2H), 1.12 (t, J = 7.4 Hz, 3H).LC-MS m/z 475.1 [M+H] +, Rt = 3.13分.
例4
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルシクロプロパンスルホネート(化合物4)の調製
【0145】
【化28】
【0146】
(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体15、60.0mg、0.163mmol)のTHF(0.81mL)溶液に、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LHMDS)(1.6M、THF中、0.122mL、0.195mmol)、続いてシクロプロパンスルホニルクロリド(0.249mL、0.244mmol)を、−78℃にて加えた。反応混合物を室温に温め、室温にて一晩撹拌した。飽和NH4Cl水溶液でクエンチした後、この混合物をDCMで希釈し、2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(33.0mg、43%)が黄色の固体として得られた。
【0147】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.56 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.23 (dd, J = 9.0, 2.2 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.32 (ABX, JAB = 10.2 Hz, JBX = 5.6 Hz, 1H), 5.23 (ABX, JAB = 10.2 Hz, JAX = 8.0 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 2.73-2.65 (m, 1H), 2.63 (s, 3H), 1.37-1.33 (m, 2H), 1.20-1.15 (m, 2H).
LC-MS m/z 473.2 [M+H] +, Rt = 3.31分.
例5
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルベンゼンスルホネート(化合物5)の調製
【0148】
【化29】
【0149】
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]−トリアゾロ−[4,3−a][1,4]−ジアゼピン−4−イル)メタノール(中間体16、50.0mg、0.136mmol)のDCM(3.0mL)溶液に、ベンゼンスルホニルクロリド(48.0mg、0.271mmol)、続いてTEA(0.0470mL、0.339mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて3時間撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(14.0mg、20%)が褐色の油として得られた。
【0150】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.02 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.69 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.59 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.50 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.38 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (dd, J = 8.8, 2.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 5.02-5.12 (m, 2H), 4.45 (dd, J = 8.0, 4.8 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 2.60 (s, 3H).
LC/MS m/z 509.2 [M+H]+, Rt = 2.94分
例6
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物6)の調製
【0151】
【化30】
【0152】
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノールを調製する手順を繰り返したが、但し、2−アミノ安息香酸(2.0g、14.6mmol)を2−アミノ−5−メトキシ安息香酸の代わりに使用した。(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(596mg、1.76mmol)のDCM(8.0mL)溶液に、MsCl(0.274mL、3.52mmol)、続いてTEA(0.613mL、4.40mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて4時間撹拌した。DCMで希釈した後、その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(645mg、88%)が黄色の油として得られた。
【0153】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.74 (td, J = 7.7, 1.6 Hz, 1H), 7.55-7.46 (m, 5H), 7.36 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.32 (ABX, JAB = 10.1 Hz, JBX = 6.7 Hz, 1H), 5.17 (ABX, JAB = 10.1 Hz, JAX = 6.9 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 3.21 (s, 3H), 2.67 (s, 3H).
LC-MS m/z 417.2 [M+H] +, Rt = 2.59分.
例7
(R)−(6−(4−シアノフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物7)の調製
【0154】
【化31】
【0155】
例1による手順を繰り返したが、但し、1,4−ジブロモベンゼン(4.19g、0.18mmol)を(4−クロロフェニル)マグネシウムブロミドの代わりに使用したところ、標題化合物(23mg、47%)が得られた。
【0156】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.73 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.45 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.28-7.25 (m, 1H), 6.84 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 5.31 (ABX, JAB = 10.4 Hz, JBX = 7.1 Hz, 1H), 5.20 (ABX, JAB = 10.4 Hz, JAX = 6.1 Hz, 1H), 4.51 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.20 (s, 3H), 2.64 (s, 3H).
LC-MS m/z 438.2 [M+H] +, Rt = 2.89分.
例8
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルスルファメート(化合物8)の調製
【0157】
【化32】
【0158】
工程1:塩化スルファモイル(2M CH3CN溶液)(中間体17)の調製
【0159】
【化33】
【0160】
撹拌棒およびゴム隔壁を備えた丸底フラスコに、サルファーイソシアナチジッククロリド(sulfurisocyanatidic chloride)(200mg、1.41mmol)を入れた。フラスコを0℃に冷却し、次いで、HCO2H(288μL、7.50mmol)をそこに滴加した。0℃にて5分間激しく撹拌した後、CH3CN(0.70mL)をこの混合物に加えた。混合物を0℃にて1時間激しく撹拌し、一晩かけて室温に温めたところ、標題化合物のCH3CN溶液(およそ2M)が得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0161】
工程2:(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルスルファメート(化合物8)の調製
【0162】
【化34】
【0163】
((R)−6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(中間体16、50.0mg、0.136mmol)のDMF(0.70mL)溶液に、NaH(55重量%、8.87mg、0.203mmol)、続いて塩化スルファモイル(2M CH3CN溶液、0.203mL、0.406mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて35分間撹拌し、次いで、EtOAcで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(48.0mg、79%)が白色の固体として得られた。
【0164】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.54 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.24 (dd, J = 9.4, 2.6 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.86 (s, 2H), 5.33 (dd, J = 18, 10 Hz, 1H), 5.04 (dd, J = 10.4, 5.6 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 2.63 (s, 3H).
LC-MS m/z 448.2 [M+H] +, Rt = 2.97分.
例9
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルジメチルスルファメート(化合物9)の調製
【0165】
【化35】
【0166】
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルスルファメート(97.0mg、0.217mmol)のDMF(0.11mL)溶液に、NaH(55重量%、20.8mg、0.476mmol)、続いてヨウ化メチル(MeI)(54.2μL、0.866mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて2時間撹拌し、EtOAcで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物を分取用HPLCによって精製すると、標題化合物(38.0mg、37%)が白色の固体として得られた。
【0167】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.23 (dd, J = 9.0, 3.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 5.23 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JBX = 5.9 Hz, 1H), 5.12 (ABX, JAB = 10.3 Hz, JAX = 7.7 Hz, 1H), 4.47 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.01 (s, 6H), 2.63 (s, 3H).LC-MS m/z 476.2 [M+H] +, Rt = 2.92分.
例10
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメチルスルファメート(化合物10)の調製
【0168】
【化36】
【0169】
工程1:メチルスルファモイルクロリド(中間体18)の調製
【0170】
【化37】
【0171】
メチルスルファミン酸(100mg、0.900mmol)のトルエン(1.0mL)溶液に、PCl5(187mg、0.900mmol)を窒素雰囲気下にて加えた。反応混合物をゆっくり加熱して80℃とし、4時間撹拌した。冷却して室温になってから反応混合物を真空濃縮すると標題化合物(99.0mg、85%)が得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0172】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 13.8 (brs, 1H), 2.96 (s, 3H).
工程2:(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメチルスルファメート(化合物10)の調製
【0173】
【化38】
【0174】
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(50.0mg、0.136mmol)のDMF(0.70mL)溶液に、NaH(55重量%、8.87mg、0.203mmol)、続いてメチルスルファモイルクロリド(52.7mg、0.407mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて40分間撹拌し、EtOAcで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(45.0mg、72%)が白色の固体として得られた。
【0175】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.54 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.23 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 5.23 (brs, 1H), 5.25 (ABX, JAB = 10.2 Hz, JBX = 6.2 Hz, 1H), 5.05 (ABX, JAB = 10.2 Hz, JAX = 7.0 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 2.90 (d, J = 5.2 Hz, 3H), 3.83 (s, 3H), 2.63 (s, 3H).
LC-MS m/z 462.2 [M+H] +, Rt = 2.95分.
例11
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物11)の調製
【0176】
【化39】
【0177】
工程1:(R)−8−ブロモ−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体19)の調製
【0178】
【化40】
【0179】
(Z)−N’−((R,Z)−7−ブロモ−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−イリデン)アセトヒドラジドを同様の様式で合成した。このとき、2−アミノ−5−ブロモ安息香酸(2g、9.26mmol)を出発材料として用いた。(Z)−N’−((R,Z)−7−ブロモ−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−2−(3H)−イリデン)アセトヒドラジド(115mg、0.209mmol)のTHF(30mL)溶液に、酢酸(395μL、6.90mmol)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。その結果得られた混合物を真空濃縮した後、残留物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、標題化合物(2工程で105mg、94%)が粘稠性の黄色の油として得られた。
【0180】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.81 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.51 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.70 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 4.15 (t, J = 6.2 Hz, 1H), 2.62 (s, 3H), 0.95(s, 9H), 0.20 (s, 3H), 0.17 (s, 3H).
工程2:(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体21)の調製
【0181】
【化41】
【0182】
(R)−8−ブロモ−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(110mg、0.207mmol)、1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(52.0mg、0.248mmol)、ジオキサン(8.0mL)および水(4.0mL)を入れた乾燥丸底フラスコを真空排気し、窒素を数回再充填した。Pd(PPh34(24.0mg、0.021mmol)およびK2CO3(57.2mg、0.414mmol)を室温にて加えた後、反応混合物を4時間還流させた。冷却されて室温になってから反応混合物を水(5.0mL)で処理し、次いでセライトパッドに通して濾過した。濾液を飽和NaHCO3水溶液(5.0mL)とDCM(10mL)とに分配した。分離された水層をDCMで抽出し、合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(65.0mg、59%)が黄色の固体として得られた。
【0183】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.75 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.57 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.72 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 4.21 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 3.95 (s, 3H), 2.65 (s, 3H), 0.95 (s, 9H).
工程3:(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(中間体22)の調製
【0184】
【化42】
【0185】
(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(65.0mg、0.122mmol)のTHF(1.0mL)溶液に、TBAF(244μL、0.244mmol、1M THF溶液)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。この混合物をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ→EtOAc:MeOH=8:1→4:1)によって精製すると、標題化合物(23.0mg、45%)が黄色の固体として得られた。
【0186】
LC/MS m/z 419.12 [M+H]+, Rt = 0.24分.
工程4:(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物11)の調製
【0187】
【化43】
【0188】
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メタノール(23.0mg、0.055mmol)のDCM(0.50mL)溶液に、MsCl(8.56μL、0.115mmol)、続いてTEA(19.1μL、0.137mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて4時間撹拌した。DCMで希釈した後、その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(14.0mg、52%)が黄色の固体として得られた。
【0189】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.78 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.56 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.46 (s, 1H), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.31 (ABX, JAB = 10.4 Hz, JBX = 7.0 Hz, 1H), 5.18 (ABX, JAB = 10.4 Hz, JAX = 6.6 Hz, 1H), 4.50 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 3.95 (s, 3H), 3.20 (s, 3H), 2.67(s, 3H). LC-MS m/z 497.3 [M+H] + Rt = 3.06分.
例12および13
【0190】
【化44】
【0191】
例12
(R)−(8−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物12)の調製
工程1:2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)アセトアミド(中間体24)の調製
【0192】
【化45】
【0193】
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(200mg、1.03mmol)と2−ブロモアセトアミド(213mg、1.54mmol)とCs2CO3(1.27g、3.92mmol)とのCH3CN(5.0mL)中での混合物を90℃にて3時間撹拌した。冷却されて室温になってから反応混合物を水で希釈し、EtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物(174mg、67%)が白色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0194】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.89 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 6.21および5.41 (brs, 2H), 4.83 (s, 2H), 1.32 (s, 12H).
工程2:(R)−2−(4−(4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)アセトアミド(中間体26)の調製
【0195】
【化46】
【0196】
(R)−8−ブロモ−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(300mg、0.564mmol)、2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)アセトアミド(142mg、0.564mmol)、ジオキサン(2.0mL)および水(1.0mL)を入れた乾燥丸底フラスコを真空排気し、窒素を数回再充填した。Pd(PPh34(65.2mg、0.056mmol)およびK2CO3(156mg、1.13mmol)をこの混合物に室温にて加えた後、反応混合物を4時間還流させた。冷却されて室温になってから反応混合物を水(5.0mL)で処理し、次いでセライトパッドに通して濾過した。濾液を飽和NaHCO3水溶液(5.0mL)とDCM(10mL)とに分配した。分離された水層をDCMで抽出し、有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc/MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(194mg、60%)が黄色の固体として得られた。
【0197】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.85 (s, 1H), 7.75 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.55 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.49-7.44 (m, 2H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.83 (s, 2H), 4.71 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 4.18 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 3.73 (s, 2H), 2.64 (s, 3H), 0.94 (s, 9H), 0.20 (s, 3H), 0.16 (s, 3H).
工程3:(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)アセトアミド(中間体28)の調製
【0198】
【化47】
【0199】
(R)−2−(4−(4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)アセトアミド(194mg、0.337mmol)のTHF(2.0mL)溶液に、TBAF(673μL、0.673mmol、1M THF溶液)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。この混合物をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ→EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(73.0mg、47%)が黄色の固体として得られた。
【0200】
LC/MS m/z 462.32 [M+H]+, Rt = 0.20分.
工程4:(R)−(8−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物12)の調製
【0201】
【化48】
【0202】
(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)アセトアミド(73.0mg、0.158mmol)のDCM(0.80mL)溶液に、MsCl(24.6μL、0.316mmol)、続いてTEA(55.1μL、0.395mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて12時間撹拌し、DCMで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物を分取用HPLCによって精製すると、標題化合物(36.0mg、43%)が白色の固体として得られた。
【0203】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.82 (s, 1H), 7.79 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.53 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.49 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.32および5.78 (brs, 2H), 5.29 (ABX, JAB = 10.5 Hz, JBX = 6.1 Hz, 1H), 5.16 (ABX, JAB = 10.5 Hz, JAX = 6.7 Hz, 1H), 4.83 (s, 2H), 4.47 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 3.18 (s, 3H), 2.65 (s, 3H).
LC-MS m/z 540.3 [M+H] + Rt = 2.83分.
例13
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−(1−(2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物13)の調製
工程1:N,N−ジメチル−2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)アセトアミド(中間体25)の調製
【0204】
【化49】
【0205】
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(100mg、0.515mmol)と2−クロロ−N,N−ジメチルアセトアミド(58.3μL、0.567mmol)とCs2CO3(252mg、0.773mmol)とのDMF(3.0mL)中の混合物を90℃にて3時間撹拌した。冷却されて室温になってから反応混合物を水で処理し、EtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物(106mg、74%)が白色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0206】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.81 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 4.99 (s, 2H), 3.07 (s, 3H), 2.98 (s, 3H), 1.31 (s, 12H).
工程2:(R)−2−(4−(4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−N,N−ジメチルアセトアミド(中間体27)の調製
【0207】
【化50】
【0208】
例12の工程2による手順を繰り返したが、但し、中間体25を中間体24の代わりに使用したところ、標題化合物(66.0mg、45%)が黄色の固体として得られた。
【0209】
LC/MS m/z 604.48 [M+H]+, Rt = 0.28分.
工程3:(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−N,N−ジメチルアセトアミド(中間体29)の調製
【0210】
【化51】
【0211】
例12の工程3による手順を繰り返したが、但し、中間体27を中間体26の代わりに使用したところ、標題化合物(35mg、72%)が黄色の固体として得られた。
【0212】
LC/MS m/z 490.3 [M+H]+, Rt = 0.31分.
工程4:(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−(1−(2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物13)の調製
【0213】
【化52】
【0214】
(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)−N,N−ジメチルアセトアミド(15.0mg、0.031mmol)のDCM(0.5mL)溶液に、MsCl(4.77μL、0.061mmol)、続いてTEA(10.7μL、0.077mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて3日間撹拌し、DCMで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(11.9mg、68%)が黄色の固体として得られた。
【0215】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.82-7.76 (m, 3H), 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.50 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 5.32 (ABX, JAB = 10.2 Hz, JBX = 6.8 Hz, 1H), 5.18 (ABX, JAB = 10.2 Hz, JAX = 7.2 Hz, 1H), 5.02 (s, 2H), 4.49 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.21 (s, 3H), 3.12 (s, 3H), 3.01 (s, 3H), 2.67 (s, 3H).
LC-MS m/z 568.3 [M+H] + Rt = 2.71分.
例14
(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−((2−ヒドロキシエチル)カルバモイル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物14)の調製
【0216】
【化53】
【0217】
工程1:2−(ジベンジルアミノ)エタノール(中間体31)の調製
【0218】
【化54】
【0219】
2−アミノエタノール(500mg、8.19mmol)およびTEA(2.74mL、19.7mmol)のEtOH(11mL)溶液に、EtOH(2.0mL)中の塩化ベンジル(1.90mL、16.4mmol)を室温にて加えた。反応混合物を12時間還流させた。揮発性物質の蒸発後、残留物をジエチルエーテルで希釈した。この混合物をジエチルエーテルで抽出し、希釈し、2N HCl水溶液で抽出した。分離された水層をNa2CO3で中和し、ジエチルエーテルで抽出した。分離された有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物(980mg、50%)が得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0220】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.36-7.15 (m, 10H), 3.63 (s, 4H), 3.58 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 2.67 (t, J = 5.2 Hz, 2H)*OHピークは観察されなかった。
【0221】
工程2:2−(ジベンジルアミノ)エタノールヒドロクロリド(中間体32)の調製
【0222】
【化55】
【0223】
2−(ジベンジルアミノ)エタノール(980mg、4.06mmol)のジエチルエーテル(1.0mL)溶液に、HCl(2Mエーテル溶液、2.0mL)を0℃にて加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌し、次いで真空濃縮すると標題化合物(980mg、87%)が白色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0224】
1H-NMR (400 MHz, D2O): δ 7.40-7.21 (m, 10H), 4.27 (s, 4H), 3.72 (t, J = 5.0Hz, 2H), 3.13 (t, J = 5.0 Hz, 2H)*2HClピークおよびOHピークは観察されなかった。
【0225】
工程3:N,N−ジベンジル−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エタンアミン(中間体33)の調製
【0226】
【化56】
【0227】
2−(ジベンジルアミノ)エタノールヒドロクロリド(980mg、3.55mmol)のDCM(5.0mL)溶液に、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)(485μL、5.32mmol)を滴加した。反応混合物を室温にて一晩撹拌し、次いで飽和Na2CO3水溶液中に注いだ。水層をDCMで抽出し、Na2SO4で乾燥させ、真空濃縮すると標題化合物(1.00g、87%)が得られ、これを、精製せずに次の工程で使用した。
【0228】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.58-7.12 (m, 10H), 4.57 (s, 1H), 3.94-3.79 (m, 2H), 3.67 (brs, 4H), 3.58-3.43 (m, 2H), 2.71 (brs, 2H), 1.64-1.42 (m, 6H).
工程4:2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エタンアミン(中間体34)の調製
【0229】
【化57】
【0230】
N,N−ジベンジル−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エタンアミン(1.00g、3.07mmol)およびPd/C(5重量%、327mg、0.154mmol)のEtOH(15mL)懸濁液を、水素雰囲気下(バルーン)で室温にて一晩撹拌した。セライトパッドに通して濾過した後、濾液を真空濃縮すると標題化合物(430mg、96%)が無色の油としてもたらされ、これを、さらに精製せずに次の工程に使用した。
【0231】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 4.60 (brs, 1H), 3.93-3.84 (m, 1H), 3.83-3.76 (m, 1H), 3.56-3.44 (m, 2H), 2.92 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 2.29 (brs, 2H), 1.65-1.46 (m, 6H).
工程5:(R,E)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−スチリル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体36)の調製
【0232】
【化58】
【0233】
(R)−8−ブロモ−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体19、460mg、0.865mmol)、(E)−スチリルボロン酸(256mg、1.73mmol)、ジオキサン(3.0mL)および水(1.5mL)を入れた乾燥丸底フラスコを真空排気し、窒素を数回再充填した。Pd(PPh34(100mg、0.0860mmol)およびK2CO3(239mg、1.73mmol)をこの混合物に加えた後、反応混合物を3時間還流させた。冷却されて室温になってから反応混合物を水(5.0mL)で処理し、次いでセライトパッドに通して濾過した。濾液を飽和NaHCO3水溶液(5.0mL)とDCM(10mL)とに分配した。分離された水層をDCMで抽出し、有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(389mg、81%)が褐色の固体として得られた。
【0234】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.82 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.57 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.53-7.48 (m, 3H), 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.41-7.34 (m, 4H), 7.32 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 4.72 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 4.20 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 0.95 (s, 9H), 2.66 (s, 3H), 0.21 (s, 3H), 0.18 (s, 3H).
工程6:(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボン酸(中間体37)の調製
【0235】
【化59】
【0236】
(R,E)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−スチリル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(310mg、0.558mmol)の、CCl4(0.80mL)、CH3CN(0.80mL)および水(1.2mL)中の溶液に、NaIO4(478mg、2.23mmol)およびルテニウム(III)クロリド(3.94mg、0.0150mmol)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて3日間撹拌した。反応混合物をDCMで2回抽出し、分離された有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=5:1)によって精製すると、標題化合物(70.0mg、25%)が褐色の固体として得られた。
【0237】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.38 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.18 (s, 1H), 7.57 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.72 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 4.17 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 2.69 (s, 3H), 0.94 (s, 9H), 0.20 (s, 3H), 0.17 (s, 3H).*COOHピークは観察されなかった。
【0238】
工程7:(4R)−2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)エチル4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボキシレート(中間体38)の調製
【0239】
【化60】
【0240】
(R)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボン酸(70.0mg、0.141mmol)のDMF(0.70mL)溶液に、2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エタンアミン(30.7mg、0.211mmol)、(1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム3−オキシドヘキサフルオロホスフェート)(HATU)(80.0mg、0.211mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(36.9μL、0.211mmol)を室温にて加えた。その結果得られた混合物を室温にて2時間撹拌した。この混合物を真空濃縮した後、残留物をEtOAcで希釈し、水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=10:1)によって精製すると、標題化合物(44.0mg、50%)が黄色の固体として得られた。
【0241】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.16 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.84 (s, 1H), 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.18 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 4.71 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 4.91 (s, 1H), 4.13 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 3.91-3.84 (m, 1H), 3.83-3.72 (m, 2H), 3.71-3.63 (m, 1H), 3.60-3.51(m, 1H), 3.45-3.35 (m, 1H), 2.65 (s, 3H), 1.56-1.44 (m, 6H), 0.94 (s, 9H), 0.20 (s, 3H), 0.16 (s, 3H).
工程8:(4R)−2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)エチル6−(4−クロロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボキシレート(中間体39)の調製
【0242】
【化61】
【0243】
(4R)−2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)エチル4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボキシレート(44.0mg、0.0700mmol)のTHF(0.35mL)溶液に、TBAF(141μL、0.141mmol、1M THF溶液)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて2時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。この混合物をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ→EtOAc:MeOH=9:1)によって精製すると、標題化合物(30.0mg、83%)が黄色の固体として得られた。
【0244】
LC/MS m/z 510.23 [M+H]+, Rt = 0.31分
工程9:(4R)−2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)エチル6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4−(((メチルスルホニル)オキシ)メチル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボキシレート(中間体40)の調製
【0245】
【化62】
【0246】
(4R)−2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)エチル6−(4−クロロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボキシレート(30.0mg、0.0590mmol)のDCM(0.30mL)溶液に、MsCl(9.17μL、0.118mmol)、続いてTEA(20.5μL、0.147mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて2時間撹拌し、DCMで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ→EtOAc:MeOH=9:1)によって精製すると、標題化合物(30.0mg、87%)が黄色の泡として得られた。
【0247】
LC/MS m/z 588.2 [M+H]+, Rt = 0.42分.
工程10:(R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−((2−ヒドロキシエチル)カルバモイル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート(化合物14)の調製
【0248】
【化63】
【0249】
(4R)−2−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)エチル6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4−(((メチルスルホニル)オキシ)メチル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−8−カルボキシレート(30.0mg、0.0510mmol)のMeOH(0.26mL)溶液に、p−トルエンスルホン酸(p−TsOH)(0.97mg、5.10μmol)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて2時間撹拌し、DCMで希釈した。その結果得られた混合物を飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物を分取用HPLCによって精製すると、標題化合物(5.8mg、23%)が黄色の泡として得られた。
【0250】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.27 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.91 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.13 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 4.58 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 3.68 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.48 (t, J = 5.4 Hz, 2H),3.23 (s, 3H), 2.69 (s, 3H).*OHピークおよびNHピークは観察されなかった。LC-MS m/z 504.1 [M+H] + Rt = 3.03分.
例15
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメタンスルホネート(化合物15)の調製
【0251】
【化64】
【0252】
工程1:3−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル(中間体42)の調製
【0253】
【化65】
【0254】
2−クロロ−1−(4−クロロフェニル)エタノン(15.5g、66.4mmol)のEtOH(101mL)溶液に、KCN(10.8g、166mmol)の水(10mL)溶液を加えた。反応混合物を室温にて4時間撹拌し、次いで、水およびDCMで希釈した。この混合物を酢酸(20mL)で処理した。分離された有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、標題化合物(11.8g、99%)が黄色の固体としてもたらされた。
【0255】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.88 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.06 (s, 2H).
工程2:(2−アミノ−4,5−ジメチルチオフェン−3−イル)(4−クロロフェニル)メタノン(中間体43)の調製
【0256】
【化66】
【0257】
3−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロパンニトリル(12.0g、66.8mmol)、2−ブタノン(5.98mL、66.8mmol)およびモルホリン(5.82mL、66.8mmol)のEtOH(191mL)溶液に、イオウ(2.14g、66.8mmol)を室温にて加えた。反応混合物を18時間還流させ、室温に冷却し、水中に注いだ。この混合物をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=1:1)によって精製すると、標題化合物(8.97g、51%)が黄色の固体として得られた。
【0258】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.47 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.43 (brs, 2H), 2.14 (s, 3H), 1.56 (s, 3H).
工程3:(S)−tert−ブチル−4−(3−(4−クロロベンゾイル)−4,5−ジメチルチオフェン−2−イルカルバモイル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン−3−カルボキシレート(中間体44)の調製
【0259】
【化67】
【0260】
(S)−3−(tert−ブトキシカルボニル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン−4−カルボン酸(中間体4、0.886g、3.61mmol)のDCM(9mL)溶液に、N−メチルモルホリン(NMM)(0.397mL、3.61mmol)、続いてクロロギ酸イソブチル(0.474mL、3.61mmol)を、0℃にて加えた。この混合物を室温にて30分間撹拌した。(2−アミノ−4,5−ジメチルチオフェン−3−イル)(4−クロロフェニル)メタノン(中間体43、0.800g、3.01mmol)を混合物に加えた後、反応混合物を室温にて2日間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、2N HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液および水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=5:1→3:1→1:1)によって精製すると、標題化合物(1.80g、88%)が粘稠性の黄色の油として得られた。
【0261】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): (回転異性体から2組) δ 11.4 (brs, 1H), 7.53 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.65-4.13 (m, 3H), 2.26 (s, 3H), 1.84および1.79 (sおよびs, 3H), 1.68 (s, 3H), 1.57および1.56 (sおよびs, 4H), 1.47 (s, 3H), 1.29-1.24 (m, 5H).
工程4:(S)−2−アミノ−N−(3−(4−クロロベンゾイル)−4,5−ジメチルチオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシプロパンアミド(中間体45)の調製
【0262】
【化68】
【0263】
(S)−tert−ブチル−4−(3−(4−クロロベンゾイル)−4,5−ジメチルチオフェン−2−イルカルバモイル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン−3−カルボキシレート(1.30g、2.64mmol)のMeOH(13mL)溶液に、濃HCl(2.64mL、4.34mmol)を室温にて加えた。反応混合物を1時間還流させ、次いで真空濃縮した。残留物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、標題化合物(770mg、82%)が黄色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0264】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 12.1 (s, 1H), 7.59 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.03 (dd, J = 10.6, 5.0 Hz, 1H), 3.82 (dd, J = 10.6, 5.4 Hz, 1H), 3.65 (t, J = 4.8 Hz, 1H), 2.28 (s, 3H), 1.72 (s, 3H).*NH2およびOHに由来する3つのプロトンは観察されなかった。
【0265】
工程5:(S,Z)−5−(4−クロロフェニル)−3−(ヒドロキシメチル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−オン(中間体46)の調製
【0266】
【化69】
【0267】
(S)−2−アミノ−N−(3−(4−クロロベンゾイル)−4,5−ジメチルチオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシプロパンアミド(770mg、2.18mmol)と酢酸(AcOH)(3.12mL、54.6mmol)とのトルエン(10mL)中の混合物を2時間還流させ、次いで真空濃縮すると、標題化合物(723mg、99%)が黄色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0268】
LC/MS m/z 335.1[M+H]+, Rt = 0.46分.
工程6:(S,Z)−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−オン(中間体47)の調製
【0269】
【化70】
【0270】
(S,Z)−5−(4−クロロフェニル)−3−(ヒドロキシメチル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ−[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−オン(723mg、2.16mmol)のDMF(11mL)溶液に、イミダゾール(250mg、3.67mmol)、続いてTBDMS−Cl(488mg、3.24mmol)を、室温にて加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌した。真空濃縮した後、残留物をEtOAcで希釈し、2N HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液、水およびブラインで続けて洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=7:1→5:1→3:1)によって精製すると、標題化合物(417mg、43%)が白色の固体として得られた。
【0271】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.30 (s, 1H), 7.46 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.58 (dd, J = 10.4. 7.2 Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 10.4, 6.0 Hz, 1H), 3.86 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 2.29 (s, 3H), 1.60 (s, 3H), 0.93 (s, 9H), 0.16 (s, 3H), 0.14 (s, 3H).
工程7:(S,Z)−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−チオン(中間体48)の調製
【0272】
【化71】
【0273】
410(206mg、0.464mmol)と炭酸ナトリウム(49.2mg、0.464mmol)とのTHF(5mL)中の混合物を、室温にて1時間撹拌し、0℃に冷却した。(S,Z)−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−オン(417mg、0.929mmol)のTHF(1.0mL)溶液を混合物に加えた後、反応混合物を、0℃にて30分間、次いで室温にて5日間、撹拌した。セライトパッドに通して濾過した後、濾液を真空濃縮した。残留物をEtOAcに溶解し、飽和NaHCO3水溶液で2回およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=5:1)によって精製すると、標題化合物(90.0mg、21%)が粘稠性の油として得られた。
【0274】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.89 (brs, 1H), 7.45 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.67 (dd, J = 10.2. 5.4 Hz, 1H), 4.44 (dd, J = 9.4, 7.4 Hz, 1H), 4.00 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 2.31 (s, 3H), 1.62 (s, 3H), 0.93 (s, 9H), 0.18 (s, 3H), 0.16 (s, 3H).
工程8:(Z)−N’−((R,Z)−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−イリデン)アセトヒドラジド(中間体49)の調製
【0275】
【化72】
【0276】
(S,Z)−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−チオン(202mg、0.434mmol)のTHF(2.0mL)溶液に、ヒドラジン一水和物(82.0μL、2.61mmol)を0℃にて加えた。反応混合物を室温にて3時間撹拌し、0℃に冷却した。TEA(363μL、2.61mmol)、続いて塩化アセチル(185μL、2.61mmol)を混合物に加えた後、反応混合物を室温にて12時間撹拌した。真空濃縮した後、残留物をDCMに溶解し、水で洗浄した。分離された有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると標題化合物(204mg、93%)が白色の固体として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0277】
LC/MS m/z 505.2 [M+H]+, Rt = 0.29分
工程9:(R)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(中間体50)の調製
【0278】
【化73】
【0279】
(Z)−N’−((R,Z)−3−((tert−ブチルジメチルシリルオキシ)メチル)−5−(4−クロロフェニル)−6,7−ジメチル−1H−チエノ[2,3−e][1,4]ジアゼピン−2(3H)−イリデン)アセトヒドラジド(204mg、0.404mmol)と酢酸(763μL、13.3mmol)とのTHF(2.0mL)中の混合物を12時間還流させた。真空濃縮した後、残留物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、標題化合物(195mg、92%)が粘稠性の黄色の油として得られ、これを、さらに精製せずに次の反応に使用した。
【0280】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.75-4.68 (m, 2H), 4.18 (dd, J = 7.2, 5.6 Hz, 1H), 2.67 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 1.70 (s, 3H), 0.95 (s, 9H), 0.21 (s, 3H), 0.18 (s, 3H).
工程10:(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メタノール(中間体51)の調製
【0281】
【化74】
【0282】
(R)−6−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)−4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン(195mg、0.402mmol)のTHF(2.0mL)溶液に、TBAF(805μL、0.805mmol、1M THF溶液)を室温にて加えた。反応混合物を室温にて一晩撹拌し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチした。この混合物をEtOAcで2回抽出した。合わされた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ→EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(110mg、73%)が白色の固体として得られた。
【0283】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.66 (dd, J = 11.2, 7.2 Hz, 1H), 4.54 (dd, J = 11.6, 5.6 Hz, 1H), 4.26 (t, J = 6.2 Hz, 1H), 3.23 (brs, 1H), 2.69 (s, 3H), 2.42 (s, 3H), 1.69 (s, 3H).
工程11:(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメタンスルホネート(化合物15)の調製
【0284】
【化75】
【0285】
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メタノール(48.0mg、0.131mmol)のDCM(1.0mL)溶液に、MsCl(20.4μL、0.261mmol)、続いてTEA(45.5μL、0.327mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて2時間撹拌し、DCMで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(46.0mg、78%)が黄色の固体として得られた。
【0286】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.36 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.32 (dd, J = 10.4, 6.4 Hz, 1H), 5.18 (dd, J = 10.4, 6.8 Hz, 1H), 4.48 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 3.21 (s, 3H), 2.69 (s, 3H), 2.43 (s, 3H), 1.71 (s, 3H).
LC-MS m/z 451.1 [M+H] +, Rt = 3.21分
例16〜18
【0287】
【化76】
【0288】
例16
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルスルファメート(化合物16)の調製
【0289】
【化77】
【0290】
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メタノール(中間体51、85.0mg、0.228mmol)のDMF(1.0mL)溶液に、NaH(55重量%、15.0mg、0.342mmol)、続いて塩化スルファモイル(中間体17、342μL、0.684mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて40分間撹拌し、EtOAcで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(78.0mg、76%)が白色の固体として得られた。
【0291】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.45 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.36 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.63 (s, 2H), 5.36 (dd, J = 10.4, 8 Hz, 1H), 5.05 (dd, J = 10.6, 5.4 Hz, 1H), 4.47 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 2.69 (s, 3H), 2.43 (s, 3H), 1.71 (s, 3H).
LC-MS m/z 452.1 [M+H] +, Rt = 2.99分.
例17
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルジメチルスルファメート(化合物17)の調製
【0292】
【化78】
【0293】
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルスルファメート(化合物16、58.3mg、0.129mmol)のDMF(645μL)溶液に、NaH(55重量%、12.4mg、0.284mmol)、続いてMeI(32.3μL、0.516mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を0℃にて40分間撹拌し、EtOAcで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物を分取用HPLCによって精製すると、標題化合物(31.0mg、50%)が白色の固体として得られた。
【0294】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.45 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.25 (dd, J = 10.4, 6.0 Hz, 1H), 5.12 (dd, J = 9.8, 7.8 Hz, 1H), 4.49 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.01 (s, 6H), 2.68 (s, 3H), 2.43 (s, 3H), 1.71 (s, 3H).
LC-MS m/z 480.2 [M+H] + , Rt = 3.00分.
例18
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメチルスルファメート(化合物18)の調製
【0295】
【化79】
【0296】
(R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メタノール(中間体51、20.0mg、0.0540mmol)のDMF(0.27mL)溶液に、NaH(55重量%、3.51mg、0.0800mmol)、続いてメチルスルファモイルクロリド(中間体18、9.18μL、0.161mmol)を、0℃にて加えた。反応混合物を室温にて1時間撹拌し、EtOAcで希釈した。その結果得られた混合物を2N HCl水溶液および飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残留物をSiO2カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH=10:1)によって精製すると、標題化合物(15.0mg、60%)が白色の固体として得られた。
【0297】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 5.26 (dd, J = 10.8, 6.4 Hz, 1H), 5.14-5.19 (m, 1H), 5.07 (dd, J = 10.4, 6.8 Hz, 1H), 4.48 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 2.91 (d, J = 5.6 Hz, 3H), 2.69 (s, 3H), 2.43 (s, 3H), 1.71 (s, 3H).
LC-MS m/z 466.2 [M+H] +, Rt = 2.98分.
試験例1
ブロモドメイン結合アッセイ(BRD4 Alpha−screenを用いた阻害薬のIC50測定)
ブロモドメイン結合アッセイをReaction Biology(PA、米国)において行い、本発明の化合物がAlpha−screenアッセイ法によって、ヒトBRD4ブロモドメイン1を阻害する程度を試験した。
【0298】
N末端にHisタグを有する大腸菌(E. coli)において発現された組換えヒトBRD4ブロモドメイン1を酵素標的として使用した。
【0299】
5番、8番、12番および16番のリジンがアセチル化されているヒストンH4の1〜21番アミノ酸を含有しビオチンとコンジュゲートされている合成ペプチド(SGRGACKGGACKGLGACKGGAACKRH−GSGSK−ビオチン)は、Milliporeから購入した。
【0300】
BRD4−1(44〜170番アミノ酸;Genbankアクセッション番号NM_058243)は、N末端にHisタグを有する大腸菌(E. coli)において発現された[Ni−NTA spin Kit Handbook(Qiagen)、第2版、1月、2008を参照のこと]。ニッケルキレートALPHAアクセプタービーズ(Perkin Elmer)は、BRD4−1を特異的に結合させるために使用し、ALPHAストレプトアビジンドナービーズ(Perkin Elmer)は、ビオチニル化されたH4ペプチドを特異的に認識するという理由で使用した。BRD4−1を合成ペプチドと結合させたところ、ドナービーズとアクセプタービーズとが近接し、それにより、ALPHAシグナルの低減に対してALPHAシグナルの増大がもたされる。
【0301】
BRD結合アッセイは、50mM Hepes(pH7.5)と100mM NaClと0.05%CHAPSと0.1%BSAと1%DMSOとを含む混合物において実施した。25℃にて60分のアッセイ反応時間の後、ストレプトアビジンドナービーズおよびニッケルキレートアクセプタービーズを用いて結合程度を測定した。ALPHAシグナルは、Enspire(Ex/Em=680/520〜620nm)で検出した。IC50値は、用量応答曲線のフィッティングにより計算した。すべてのIC50値は、最低4つの決定値の幾何平均値である。これらのアッセイの結果は、全般に、報告された平均の3倍以内となった。
【0302】
結果を表1に示す。
【0303】
試験例2
増殖阻害活性試験
例1〜18で得られた化合物の血液がん細胞および充実性腫瘍に対するIC50(uM)を測定して、増殖阻害活性を確認することにした。
【0304】
ヒト前立腺腺癌細胞株LnCAP[ATCC(登録商標)、CRL−1740]およびヒト白血病細胞株MV4−11[ATCC(登録商標)、CRL−9591]を使用して、化合物1〜18ががん細胞成長を阻害する程度を試験した。試験用の細胞の濃度は6.7×103細胞/mlに調整し、培養培地は10%FBSを添加したものを用い、条件は温度37℃、5%CO2および湿度95%とした。培養培地およびFBSは、GIBCOから購入した。こうして得られた細胞懸濁液90μLを2つの96ウェルプレートに加えて最終細胞密度を600細胞/ウェルとし、続いて、プレートの各ウェルに培養培地10μLを加えた。このプレートを、加湿されたインキュベーター内で37℃、5%CO2にて一晩インキュベートした。
【0305】
化合物1〜18をジメチルスルホキシド(DMSO)またはストック溶液であるリン酸緩衝溶液(PBS)でそれぞれ溶解して、DMSOを用いた試験化合物の200倍溶液(2mM)を調製した。次いで、こうして得られたDMSO溶液を培養培地またはPBSで20倍希釈して、10倍希釈標準溶液(working solution)を得た。10倍希釈標準溶液(薬物溶液)10μLを各ウェル(各濃度につき3つ)に分注した。培養培地中のDMSOの最終濃度は、0.5%[v/v]であった。
【0306】
細胞生存能は、CellTiter−Glo(登録商標)(CTG)アッセイを用いて決定した。CellTiter−Glo(登録商標)100μLを等体積の培養細胞に加えて、EnVision Multi Label Readerにて発光を読み取った。結果を表1に示す。
【0307】
試験例3
ヒト/マウス肝ミクロソーム安定性
ヒトおよびマウスの肝ミクロソームクリアランスアッセイを、CROWN Biosciences(Taicang、中国)において行った。ヒト肝ミクロソーム(カタログ番号X008067、ロット番号KQB)およびマウス肝ミクロソーム(カタログ番号M1000、ロット番号1210302)は、それぞれ、CelsisおよびXenotechから購入した。
【0308】
試験化合物ストック溶液5μLを1:1のメタノール/水(最終濃度:100μM、50%MeOH)495μLで希釈し、それぞれの肝ミクロソーム溶液534μLと合わせた(最終濃度:1.111μM、0.555%MeOH)。肝ミクロソーム溶液の最終濃度は、1mL当たりタンパク質0.7mgであった。
【0309】
肝ミクロソーム溶液のインキュベーションは、96ウェルプレート中で37℃にて実施した。肝ミクロソーム溶液90μLをブランクに加え、試験化合物の希釈標準溶液90μLをブランク以外のすべてのプレートに加えた。
【0310】
こうして得られたすべてのプレートを水浴中で37℃にて10分間温め、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(Sigma、カタログ番号N0505、ロット020M7009V)42mgとイソクエン酸(Sigma、カタログ番号I1252、ロット119K1099)84mgとイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(Sigma、カタログ番号I2002、ロット086K7055、タンパク質1mg当たり15単位)0.478mLとを含むNADPH補因子溶液10μLを水浴中で37℃にて5分間温めたものをプレートに加えた。その結果得られたプレートを次の順序で37℃にてインキュベートした:T60(試験化合物を肝ミクロソーム溶液およびNADPHで37℃にて60分間インキュベートした)、T30(同様に30分間)、およびT10(同様に10分間)。低温(4℃)のストップ溶液[内部標準としてトルブタミド500nMを含んだアセトニトリル(ACN)]300μL、および開始時のプレート(T0:一切の反応を生じていない親化合物が100%である)に入れるNADPH補因子溶液10μLを、プレートに加えた。反応は、低温(4℃)のストップ溶液300μLを、最初にT10、次いでT30、さらにT60という順序で他のプレートに加えることによって停止させた。
【0311】
サンプルは、4,000rpmで20分間遠心分離し、これをBioanalytical Servicesに送って液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)/MS(Waters UPLC/API4000、10μL注入)による分析にかけた。結果を表1に示す。
【0312】
【表1】
【0313】
表1に示すように、例1〜18の化合物は、良好な酵素結合活性、ならびにLnCAP(ヒト前立腺腺癌)およびMV4−11(ヒト白血病)に対するがん細胞増殖阻害活性を呈した。さらに、これらの化合物は、ヒトおよびマウスの肝ミクロソームにおいて極めて安定であった。
【0314】
さらに、化合物1および2の、追加的ながん細胞株、すなわち、OPM−2[多発性骨髄腫、DSMZ(登録商標)、ACC50]、A375[悪性黒色腫、ATCC(登録商標)、CRL−1619]、SK−LU−1[腺癌、ATCC(登録商標)HTB−57(商標)]、RS4;11[急性リンパ芽球性白血病、ATCC(登録商標)CRL−1873(商標)]、MOLM13[急性骨髄性白血病、DSMZ(登録商標)、ACC554]、HL60[急性前骨髄球性白血病、SIBS(登録商標)、TCHu23]、MOLT−4[急性リンパ芽球性白血病、SIBS(登録商標)、TCHu37]、Daudi[Bリンパ腫、ATCC(登録商標)CCL−213(商標)]、MDA−MB−435[乳がん、ATCC(登録商標)HTB−129(商標)]、およびNCI−H526[変異小細胞肺がん、ATCC(登録商標)CRL−5811(商標)]に対する増殖阻害活性を、試験例2に記載されている方法に従って試験した。結果を表2に示した。
【0315】
【表2】
【0316】
表2に示すように、化合物1および2は、充実性腫瘍細胞株において良好な増殖阻害活性を示した。
【0317】
試験例4
動物における薬物動態(PK)
化合物1、2、7、8、11および15の薬物動態を、ICRマウス(生後6〜8週、20〜25g)を用い、それぞれ、用量レベル10mg/kgでの静脈内(IV)投与後、および用量レベル10mg/kgでの経口(PO)投与後に、評価した。特筆すれば、化合物1の追加の用量レベルは30mg/kgであった。
【0318】
血清中の化合物を分析するために、24時間にわたる心臓穿刺によって血液試料を採取した。スパイクされる血漿20μLを96ウェルプレート中に加え、それにより得られた沈殿タンパク質に、10倍容の、アセトニトリル(ACN)中の内部標準(IS)を加えて徹底的に混合し、4,000rpmで10分間遠心分離した。こうして得られた上清150μLを、予めラベルを付けておいた別の96ウェルプレートに移し、水150μLと混合した。この混合物5μLまたは10μLをLC−MSシステム中に以下の条件下:
カラム:API−4000+Waters UPLC(TCLM08)、
移動相 水:MeOH=100:0、30:70、5:95、および100:0(v/v%)、
流量:0.45mL/分
で注入した。
【0319】
定量下限(LLOQ)は、1ng/mLであった。化合物の薬物動態パラメーター、すなわち、半減期(T1/2)、クリアランス(CL)、最高血漿中濃度(Cmax)、平均滞留時間(MRT)およびバイオアベイラビリティー(F%)、血漿曝露量(AUC)は、Phoenix WinNonlin6.3(ノンコンパートメントモデル)を用いて計算した。マウス薬物動態の結果を表3に示す。
【0320】
【表3】
【0321】
表3に示すように、試験した化合物は、IV経路とPO経路の両方において、優れたマウスPKを呈した。
【0322】
また、化合物1のマウス薬物動態を図1に示す。図1に示すように、化合物1は、血漿曝露量において良好な用量線形性を示した。
【0323】
また、化合物1の薬物動態は、Sprague Dawley(SD)ラットを用いても評価し、評価はそれぞれ、用量レベル3mg/kgまたは10mg/kgでのIV投与後、および用量レベル3mg/kgまたは10mg/kgでのPO投与後に行った。分析手順は先に記載したとおりであり、ラット薬物動態の結果は表4および図2に示す。
【0324】
【表4】
【0325】
表4に示すように、化合物1は、優れたラットPKプロファイルを示した。
【0326】
さらに、イヌにおける化合物1の薬物動態を、ビーグル犬を用いて評価し、評価はそれぞれ、用量レベル3mg/kgでのIV投与後、および用量レベル3mg/kgでのPO投与後に行った。分析手順は先に記載したとおりであり、イヌ薬物動態の結果は表5および図3に示す。
【0327】
【表5】
【0328】
化合物1のイヌPKデータは、IVおよびPOにおける血漿曝露量に優れていた。このことは、バイオアベイラビリティー(%)が高いことを示している。
【0329】
試験例5
MV4−11ヒト白血病モデルマウス異種移植片における化合物1の有効性
化合物1の腫瘍成長阻害(TGI)活性を、MV4−11ヒト白血病マウス異種移植片を用いて試験した。
【0330】
腫瘍成長阻害は、in vivoのマウス皮下異種移植モデル(MV4−11細胞株、ATCC(登録商標)、CRL−9591)において観察した。6〜8週齢かつ体重およそ18〜22gのNOD/SCID雌マウス合計48匹をHFK(Beijing HFK Bio−Technology Co.Ltd.)から購入し、腫瘍接種に用いた。
【0331】
MV4−11細胞株はin vitroで維持し、条件は、10%ウシ胎仔血清を添加したIMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地)中、37℃、空気中5%CO2雰囲気下とした。腫瘍細胞は、トリプシン−EDTA処理によって、週2回、慣例的に継代培養した。指数増殖期にある成長中の細胞を収穫し、腫瘍接種のために計数した。処理は、腫瘍サイズがおよそ150〜200mm3に達した時点で開始した。
【0332】
各マウスには、腫瘍を発現させるために、MV4−11腫瘍細胞(1×107細胞)をPBS 100ulとmatrigel(商標)100ulとの混合物の形で右側腹に皮下接種した。各群につき合計48匹のマウスを用いた。処置した化合物の量は、動物体重1キログラム(kg)当たりの化合物のミリグラム(mg)(mg/kg、mpk)で表す。試験化合物の投与経路は、PO(経口)注射であった。3つの群、すなわち、ビヒクル群(対照群)、50mpk群(50mpkの化合物1をPO注射により処置)および100mpk群(100mpkの化合物1をPO注射により処置)のマウスを用いた。全体の投与スケジュールは、処置を5日間(5日オン)、続いて2日間は非処置(2日オフ)を2サイクルとした。
【0333】
腫瘍サイズは、カリパスを用いて4日毎に1回測定し、腫瘍体積は、式1を用いてmm3単位で表した:
[式1]
V=0.5a×b2
(式中、
aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)。
【0334】
3つの群の腫瘍成長阻害率[TGI率(%)]の結果を図4に示す。また、体重変化率[BW変化率(%)]を、ビヒクル群の値との比較で表6に示した。
【0335】
【表6】
【0336】
図4および表6に示すように、化合物1は、ビヒクルの値(0%)との比較で、100mpkでは84%[TGI率(%)]、50mpkでは77%を示した。また、BW変化率(%)は非常に低かった。
以下に、出願当初の請求項を実施の態様として記載する。
[1] 式(I):
【化80】
[式中、
1は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここでRa、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【化81】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群から選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体。
[2] 式(II):
【化82】
[式中、
Xは、CまたはSであり、
1は、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルC3〜10シクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルC1〜10アルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロ、シアノ、ORa、NRbRb’およびCORcからなる群から選択され
ここでRa、Rb、Rb’およびRcは、水素、C1〜10アルキル、C1〜10アルキルアリール、C3〜10シクロアルキル、C3〜10シクロアルキルC1〜10アルキル、C1〜10アルキルシクロアルキル、ホルミル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ハロC1〜10アルキル、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールC1〜10アルキル、ヘテロアリールアリール、縮合ビシクリル、ビアリール、アリールオキシアリール、ヘテロアリールオキシアリール、アリールオキシヘテロアリール、ヘテロアリールオキシヘテロアリール、C2〜10アルケニル、C2〜10アルキニル、アジド、ニトロおよびシアノからなる群からそれぞれ独立に選択され、
2およびR4は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORd、−CONHRd、ならびに
【化83】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
3は、水素、ヒドロキシル、ハロ、C1〜6アルキル、ハロC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ニトロ、シアノ、CF3、−OCF3、−COORdおよび−CONHRdからなる群から選択され、
Rdは、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである]の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体。
[3] R1が、C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル、アラルキルまたはNRbRb’であり、ここでRbおよびRb’は、それぞれ独立に、水素もしくはC1〜6アルキルであり、
2が、水素、C1〜6アルコキシ、−CONHRd、または
【化84】
からなる群から選択されるヘテロ芳香族基であり、
3が、ハロであり、
Rdが、C1〜3アルキルまたはヒドロキシC1〜3アルキルである、[1]に記載の化合物。
[4] Xが、Sであり、
1が、C1〜6アルキルまたはNRbRb’であり、ここでRbおよびRb’は、それぞれ独立に、水素もしくはC1〜6アルキルであり、
2およびR4が、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
3が、ハロである、[2]に記載の化合物。
[5] 1) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
2) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルエタンスルホネート;
3) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルプロパン−1−スルホネート;
4) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルシクロプロパンスルホネート;
5) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルベンゼンスルホネート;
6) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
7) (R)−(6−(4−シアノフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート
8) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルスルファメート;
9) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルジメチルスルファメート;
10) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−メトキシ−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメチルスルファメート;
11) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−8−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
12) (R)−(8−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−6−(4−クロロフェニル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
13) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−(1−(2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
14) (R)−(6−(4−クロロフェニル)−8−((2−ヒドロキシエチル)カルバモイル)−1−メチル−4H−ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−4−イル)メチルメタンスルホネート;
15) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメタンスルホネート;
16) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルスルファメート;
17) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルジメチルスルファメート;および
18) (R)−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)メチルメチルスルファメートからなる群から選択される、[1]または[2]に記載の化合物。
[6] 前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬組成物であって、活性成分としての[1]または[2]に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
[7] 前記薬学的に許容される担体が、結合剤、フィラー、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤および香味剤からなる群から選択される、[6]に記載の医薬組成物。
[8] 前記医薬組成物が、化学療法剤を含む少なくとも1つの追加の医薬剤をさらに含む、[6]に記載の医薬組成物。
[9] 哺乳動物における前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法であって、[1]または[2]に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体をその必要がある前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
[10] 哺乳動物における前がん性の転換またはがんを予防または治療するための方法であって、
(i)その必要がある前記哺乳動物に、[1]または[2]に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体と薬学的に許容される担体とを含む第1の組成物を投与する工程、および
(ii)その必要がある前記哺乳動物に、化学療法剤を含む少なくとも1つの追加の医薬剤を含む第2の組成物を投与する工程を含む、方法。
[11] 前記第1の組成物と第2の組成物とが、同時に、または逐次的に任意の順序で投与される、[10]に記載の方法。
[12] 前がん性の転換またはがんを予防または治療するための医薬の製造への[1]または[2]に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体の使用。
図1
図2
図3
図4